CruiseとWaymoを追う中国の自律走行車企業AutoXがサンフランシスコでテスト開始へ

米国とお膝元の中国の両方で事業展開する自律走行車企業AutoX(オートエックス)は、最大のライバル企業が商用化に向け忍び寄っているサンフランシスコに進出する。

2016年からサンノゼ広域圏で車両のテストを行ってきたAutoXは、ロボタクシー事業を開始し、サンフランシスコにオペレーションセンターを建設する計画を明らかにした。このセンターでは、車両のハウジング、メンテナンス、充電のほか、車両が現地で収集したデータの処理、センサーのキャリブレーションなどを行う予定だ。Professor Xとも呼ばれる、AutoXのCEOであるJianxiong Xiao(ジアンション・シャオ)博士によると、同社はサンフランシスコのローカルチームを構築するために採用を行っているとのことだ。

AutoXはまず、同社の最新の第5世代AVプラットフォームと冗長ドライブバイワイヤシステムを搭載したハイブリッド車のFiat Chrysler Pacifica(フィアット・クライスラー・パシフィカ)を用いて、人間の安全オペレーターが運転席に乗り込んでのテストを始める予定だ。同社はすでに、カリフォルニア州自動車局(DMV)から、人間の安全オペレーターが乗り込んでの試験が可能な「ドライバー付き試験許可証」と、人間の安全オペレーターなしで試験が可能な「ドライバーレス試験許可証」の両方を取得している。しかし、AutoXのドライバーレス試験許可は第3世代の車両に対するものであり、またエリアがサンノゼに厳しく限定されているため、同社はサンフランシスコの最新システムを使ったドライバーレス試験も行うために、DMVにその許可の拡大をリクエストする必要がある。

Dongfeng Motor(東風汽車)の支援を受けているAutoXは、サンフランシスコでのテストのためにいつドライバーなしにする予定かは明言しなかったが、サンノゼでのドライバーレステストは継続すると述べた。

AutoXは、Cruise(クルーズ)やWaymo(ウェイモ)といった企業が実際に商業運転を開始している中で、サンフランシスコに進出する。Cruise、WaymoどちらもDMVから車両配備の許可を得ており、自律走行車を使った運行で課金することができる。Cruiseはまだ、ロボットタクシーサービスの料金を請求する前に、カリフォルニア州公益事業委員会から最終的な許可を得る必要があるが、General Motors(ゼネラルモーターズ)傘下の同社は、ドライバーレスの配車サービスを一般向けに開始する際に、投資家のソフトバンクから13億5000万ドル(約1564億円)を追加で調達したばかりだ。

DMVが2日に発表した年次離脱報告書によると、Waymoは2021年にカリフォルニア州の公道で230万マイル(約370万キロメートル)の自律走行を行っており、これは競合他社を大きく上回っている。そして、Cruiseが人間のセーフティドライバーの有無にかかわらず、約90万マイル(約144万キロメートル)を走行して2位だった。

同データによると、安全オペレーター付きで約5万マイル(約8万キロメートル)しか走行していないAutoXは、自社車両のドライバーレステストを一切報告していない。とはいえ、AV開発企業は、プライベートコースやクローズドコースで行ったテストを報告する必要はない。

AutoXはカリフォルニア州に車両44台を保有しているとのことだ。DMVのデータによると、2021年にAutoXの自律走行テストに使用されたのは全車両のうちわずか6台だった。同社は、新型コロナウイルス感染症の影響でテストの規模を縮小したことが原因だとしているが、2022年は再び強化する。

また、AutoXは中国でも大規模な事業拡大を図っており、1000台のロボタクシーを広州、上海、北京、深センの各都市に配備しているという。同社はロボタクシーの乗車回数は公表していない。

AutoXは、計算プラットフォームや各種センサーを含むフルスタックハードウェアの自社開発能力を頻繁にアピールしている。このような技術の開発に加え、サンフランシスコでの事業拡大や中国でのロボタクシーの増車などを考えると、相当な額の資金が必要になる。

同社が最後に公に発表した資金調達は2019年のシリーズAで、この投資によりAutoXの総調達額は1億6000万ドル(約185億円)となった。参考までに、AutoXの中国における競合他社のほぼすべてが2021年に資金調達を行っている。Momenta(モメンタ)は12億ドル(約1390億円)、Pony.ai(ポニーエーアイ)は11億ドル(約1274億円)を調達し、WeRide(ウィーライド)は5カ月の間に6億ドル(695億円)超を、比較的若い企業のDeeproute.ai(ディープルートエーアイ)は2021年9月時点で3億5千万ドル(約405億円)を調達している。

AutoXがなぜ少ない資金でこれだけの事業を行えるのかという疑問に対して、シャオ氏はTechCrunchに、確かに今後数カ月のうちに資金を調達しようとしているが、これまでの投資家からの支援に加え、ロボタクシーサービスに対する中国の巨大市場に頼っていると語った。

画像クレジット:AutoX

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

2021年に急成長した中国のロボタクシー(専門用語と美辞麗句が溢れるリリースから実際のところを解析)

自動運転車を手がける中国のスタートアップは、自社の自律走行車両への乗客を獲得するため、軍拡競争を繰り広げている。数週間ごとに、また1つの大手企業が新しいパイロットプログラムや小規模サービスを開始するための認可を得たというニュースが届く。

これらのプレスリリースは、規制に関する専門用語や、企業の発展を誇示するための美辞麗句が多く、わかりにくい。そこで、中国の主要なロボタクシー事業者であるAutoX(オートX、裹動智駕)、Baidu(バイドゥ、百度)、Deeproute.ai(ディープルートAI、元戎啓行)、DiDi(ディディ、滴滴出行)、Momenta(モメンタ)、Pony.ai(ポニーAI、小馬智行)、WeRide(ウィーライド、文遠知行)の2021年の進捗状況をこの投稿にまとめ、それぞれの発表から実際にどのようなことがわかるのかを解析した。

中国では多くの大手企業が以前から有人車両(保安運転手が乗車する自動運転車)や無人車両の試験運行を行っているため、この投稿では、定期的に行なわれている一般向けサービスに焦点を当てる。これらの企業は、ロボタクシーに関わるコスト、安全性、規制を調整しながら、自動運転トラック、貨物運搬車、市バスなど、より早く規模を拡大できる分野にも乗り出している。とはいえ、やはり長期的にはロボタクシー分野に重点を置いていくことに変わりはない。

中国の自動運転区域について留意すべき点

本題に入る前に、中国の自動運転車事業に特有の状況をいくつか取り上げる。

  • 中国国内の道路事情は場所により大きく異なる可能性がある。例えば、深圳郊外の工業団地で自動運転車の試験走行を行う場合、都市部にある繁華街の蛇行する道路で行うよりも道路状況はずっと楽である。
  • 自動運転車に関する規制は、それぞれの省で異なる可能性に加え、同じ都市であっても地区によって異なる場合がある。ある都市において完全無人の自動運転走行試験を行う承認を得た企業が、必ずしも他の企業より技術的に進んでいるとは限らない。単に、連携する地元の規制当局が自動運転に対して進歩的な姿勢を有しているからだという場合もある。
  • スマート交通を成長戦略として掲げている地方行政もある。当然、自動運転車を手がけるスタートアップの支援にも熱心だ。国や都市レベルの規制が制定されるよりずっと前に、当局がその管轄区域内で無人運転の試験を行うことを非公式に承認する場合もある。
  • 行政支援は、税制優遇措置、有利な土地利用の機会や安価なオフィススペースの提供などの形で現れることもある。これが、中国の主要な自動運転車のスタートアップが、深圳、広州、上海、蘇州などの十分な資金力のある都市に集中している理由の1つだ。
  • 中国の地方行政は、自動運転のような新技術の開発に拍車をかけるため、たびたび実証区を設置する。こうした取り組みにより、企業は成熟産業を規制する通常の制約を受けることなく、試験を行うことができる。
  • 今日現在、中国のどの都市も無人ロボタクシーの許可を出していない。この許可が下りればサンフランシスコで Waymo(ウェイモ)やCruise(クルーズ)が行っているように、自動運転車が保安運転手なしで一般市民を輸送することが可能になる。

AutoX

深圳に本社を置き、カリフォルニアに研究開発センターを持つAutoXは、プリンストン大学の元教授、肖健雄氏により、2016年に設立された。出資者には、Alibaba(アリババ、阿里巴巴集团)、MediaTek(メディアテック、聯發科技)、中国国営自動車メーカーSAIC(サイク、上海汽車集団)などが名を連ねる。

深圳のAutoXのロボタクシー(画像クレジット:AutoX、2021年)

事業状況

2020年8月、AutoXは上海の嘉定区で、有人運転ロボタクシーの一般向けサービスを開始した。利用者はAlibabaのナビゲーションマップ「Amap(エーマップ、高徳地図)」を通じて配車予約ができる。AutoXによると、中国の大手配車サービスプラットフォームでロボタクシーのサービスが利用可能になったのはこれが「初めて」だという。

上海郊外の嘉定区には、上海汽車集団、Volkswagon(フォルクスワーゲン)、NIO(ニーオ、上海蔚来汽車)、トヨタ自動車、Baidu、DiDi、Delphi(デルファイ)といった大手自動車メーカーやOEMがオフィスを構えている。2020年の発表によると、AutoXは100台の「自動運転車」を市内の公道で走らせる契約を上海政府と結んだ。

2021年1月、AutoXは「スマートシティ」として生まれ変わりつつある深圳の工業地帯、坪山区で無人ロボタクシーのサービスを開始した。11月には、同社はこのプログラムが168平方キロメートルの坪山区全域をカバーしたと発表した。これはマンハッタンの約3倍の広さに相当する。

ちょうど1カ月前、AutoXは深圳の公道に25台の無人自動運転車を配備し「試験走行」を実施した。中国の自動車ニュースブログは、AutoXが地元の交通規制当局の許可を得ずにこれを進めたと報じている。一方、同社はTechCrunchに対し「政府の支援」を得たと語った。当時、我々は関連部門と連絡を取ることはできなかった。

AutoXによると、同社は合わせて「数百台」のロボタクシーを路上で走行させているという。

関連記事:自動運転ユニコーンAutoXが中国初のロボタクシーのテストを深センでスタート

米国での試験走行

2021年11月現在、AutoXはカリフォルニア州で無人および有人車両の試験走行を許可されている。

OEMパートナー

AutoXは、ホンダFiat Chrysler(フィアット・クライスラー)と共同で、中国でのロボタクシーの開発を進めている。

Baidu Apollo Go

「Apollo Go(アポロ・ゴー)」は、2000年に設立された北京のインターネット企業である検索エンジン大手Baiduの自動運転車プロジェクトである。Baiduは  2015年末、多くの競合するスタートアップが誕生したのとほぼ同時期に、自動運転車部門を始動させた。

Baidu「Apollo Go」のロボタクシーサービス(画像クレジット:Baidu、2021年)

事業状況

2021年11月、Apollo Goは北京の中国における「初の商用自動運転車実証区」で、有料でのロボタクシーサービスの提供が認められた。

Apollo Goにとって公道での「初の商用展開」となった67台の車両では、乗車した保安運転手が監視を行った。このサービスはApollo Goのアプリから配車が可能で、毎日午前7時から午後10時まで運行が実施された。

Apollo Goは、中国の「初の商用ロボタクシー実証区」に参加できたが、対価を目的とした乗車提供はBaiduのこのサービスが初めてではなかった(ネタバレ:以下のWeRide.aiの項を参照)。とはいえ、このイベントにはかなりの象徴的な重要性があった。60平方キロメートルに及ぶこの実証区は、亦荘郊外における国家レベルの経済プロジェクトである北京経済技術開発区の区域内に位置している。このイベントで、ロボタクシー事業者が乗客のデータを活用し、サービス価格を設定する方法について規定する規制の枠組みが導入されたのだ。首都におけるこのような動きは、中国全土のモデルとなる可能性がある。

亦荘が推進しているのは、ロボタクシーだけでない。「コネクテッドカー実証区」はその他のタイプの自動運転車にも対応している。2021年、JD.com(JDドットコム、京東商城)やMeituan(メイトゥアン、美団)を含む多くの大手テック企業が、実証区での無人配送用ミニバンの試験走行を開始した。

Apollo Goの無料版は、広州、長沙、滄州の一部地域で一般公開されており、現在は上海で早期テスターを募集している

米国での試験走行

2021年11月現在、Apollo Goはカリフォルニア州で無人および有人車両の試験走行を許可されている。

OEMパートナー

Apollo Goのロボタクシー車両は、国営メーカーFAW(第一汽車集団)のHongqi(ホンチー、紅旗)電気自動車(EV)スタートアップのWM Motor(WMモーター、威馬汽車)、国営メーカーGAC(広州汽車集団)のEVブランド「Aion(アイオン)」、国営メーカーBAIC(北京汽車集団)のEV新ブランド「ARCFOX(アークフォックス)」から提供されている。

Deeproute.ai

深圳に拠点を置くディープルートは、設立からわずか2年の企業としてはかなりの進展を遂げている。2019年、創業者の周光氏は、自動運転車ベンチャーのRoadstar.ai(ロードスター・エーアイ、星行科技)を会社の内紛により辞したのち、ディープルートを設立した。この若い起業家は、すぐに新しい試みへの支持を集めた。2021年9月、ディープルートはAlibabaや中国の自動車メーカーGeely(ジーリー、吉利汽車)などの出資者から、シリーズBラウンドで3億ドル(約340億円)もの資金を調達した

Deeprouteのロボタクシーサービス(画像クレジット:Deeproute.ai、2021年)

事業状況

7月、ディープルートは本社に近い深圳の繁華街、福田区の公道に、20台の有人ロボタクシーを配備した。同本社は香港、深圳両行政が設立した  技術協力区の区域内にある。

同社が4月に深圳の交通規制当局から許可を得て開始したロボタクシーサービスは、現在のところ無料で一般利用できる。TechCrunchに語ったところによると、将来的には有料化する予定だという。

2021年3月、中国国営メーカーの東風汽車集団と共同開発したディープルートのロボタクシーが、武漢で一般向けに無料乗車の提供を開始した。中国中部の都市武漢も、中国の自動運転車分野のパイオニアを目指す候補地の1つだ。

米国での試験走行

2021年11月現在、ディープルートはカリフォルニア州で有人自動運転車両の試験走行を許可されている。

OEMパートナー

ディープルートと東風汽車は、2022年までに200台以上のロボタクシーを配備することを予定している。

DiDi

配車サービス大手のDiDiは、2019年に自動運転車の子会社を設立し、新会社のために5億ドル(約570億円)を迅速に調達している(当時業界で唯一最大の資金調達ラウンドだった)。これにもかかわらず、ロボタクシー開発の動きは予想より静かだった。

DiDiが他の問題に気を取られていたとしても、無理はない。2021年、米国で上場した直後、同社は中国の規制当局から徹底的なデータ調査を受けている。この中国配車サービス大手は12月、ニューヨーク証券取引所から上場廃止となることを発表した

DiDiのロボタクシーサービス(画像クレジット:DiDi、2020年)

事業状況

DiDiのロボタクシーは、2020年6月に上海の一部地域で乗車サービスを開始した。同社は、2020年末までにロボタクシーサービスを北京と深圳に拡大し、2021年には中国国外にもこの事業を展開すると述べていたが、その進捗状況はいまだ更新されていない。同社はまた、2030年までに配車サービスプラットフォームを通じて100万台以上の「自動運転車」を運用するという野心的な目標も掲げている

米国での試験走行

2021年11月現在、DiDiはカリフォルニア州で有人自動運転車両の試験走行を許可されている。

OEMパートナー

2021年4月、DiDiはジーリー傘下のVolvo(ボルボ)から同社の海外向けロボタクシー車両の提供を受けると発表した

Momenta

レベル4の完全自動走行技術にのみ注力するロボタクシー事業者が多いなか、創業5年のMomentaは、自動車メーカー向けに先進運転支援システム(ADAS)の売り込みも行っている。このアプローチにより短期的な収入が得られる他、手頃なコストでアルゴリズムの学習用データを蓄積することができる。一方、同社が実際の無人運転技術に十分なリソースを投入しているかどうかについては、業界関係者から疑問の声が上がっている。

Momentaと上海汽車集団が共同開発したロボタクシー(画像クレジット:Deeproute.ai、2021年)

それでも、蘇州に拠点を置くMomentaは、中国で最も資金提供を受けている自動運転車のスタートアップの1つとなっている。General Motors(ゼネラルモーターズ)、Daimler(ダイムラー)、Bosch(ボッシュ)、トヨタ自動車、中国国営自動車メーカー上海汽車集団から、二―オの創業者ウィリアム・リー氏が監督するファンド、Nio Capital(二―オキャピタル)まで、名だたる出資者から合わせて12億ドル(約1370億円)を調達しているのだ。

同業他社の多くが、研究開発部隊の設置や試験走行を米国で行っている一方、Momentaは国際展開の拠点としてドイツを選んだ。2021年、同社は出資者であるダイムラーの本拠地、シュトゥットガルトにオフィスを開設した。

事業状況

2021年12月、Momentaと上海汽車集団は、上海の一部地域で無料のロボタクシーサービスを開始した。利用者は毎日午前8時から午後10時まで、上海汽車集団のアプリを通じて有人運転のロボタクシーを呼び出すことができる。このプログラムでは「20台の車両を用いて将来的な商用利用のための試験と検証を行っている」とMomentaは述べている。同プログラムは、今後数カ月のうちに蘇州と深圳で展開される予定だ。

Momentaは、上海に隣接する豊かな都市、蘇州の政府から多大な支援を得ている。国務院国有資産監督管理委員会(SASAC)蘇州支部と合弁事業を実施し、同市でのロボタクシー展開を「スケールアップ」させる。SASACは、100社あまりの大規模国有企業を監督する、中国の強力な政府機関である。

OEMパートナー

Momentaはロボタクシーの車両に関して上海汽車集団と協業している。両社は2022年までに中国全土に200台の車両を配備することを目標に掲げた

Pony.ai

Pony.aiは、中国で最も評判の高い自動運転車の専門家たちを輩出してきた、Baiduの自動運転車部門のベテラン2人により、2016年に設立された。広州とカリフォルニアにオフィスを構える同社は、トヨタ自動車の支援を受け、これまでに10億ドル(約1140億円)以上を調達している。

PonyのLexusのロボタクシー(画像クレジット:Pony.ai、2021年)

事業状況

Baiduと同様に、Pony.aiも2021年11月、北京のスマートカー実証区で有料のロボタクシーサービス事業を実施するための承認を得た。「PonyPilot+」と呼ばれるこのサービスは、これまで同エリア内で無料の乗車サービスを行っていた。

「PonyPilot+」は、2021年7月、上海の自動車産業の中心地である嘉定区で始動した。6月には、広州で既存のロボタクシーに加え、完全無人の自動運転車を配備している

米国での試験走行

11月、カリフォルニア州車両管理局は、フリーモントで起きた衝突事故の報告を受け、無人自動運転の試験許可を一時停止にするとPony.aiに通知した。Pony.aiが規制当局から許可を得てから6カ月後の決定だった。カリフォルニア州での同社の有人自動運転の試験許可には影響がなかった。

OEMパートナー

トヨタ自動車の「Lexus(レクサス)」、Hyundai(ヒュンダイ)の他、中国のBYD(ビーワイディー、比亚迪汽车)や「アイオン」など、複数のメーカーの車両をPony.aiのロボタクシーとして利用している。

WeRide.ai

WeRide.aiとPony.aiは多くのルーツを共有している。どちらも広州とカリフォルニアに拠点があり、創業者はBaiduの自動運転車チーム出身者だ。WeRide.aiは2017年に設立され、2021年だけで6億ドル(約686億円)以上を調達した。国営メーカーの広州汽車集団やルノー・日産・三菱アライアンスなどが出資者に名を連ねる。

東風汽車が提供するWeRideのロボタクシー(画像クレジット:WeRide、2021年)

東風汽車が提供するWeRideのロボタクシー/写真:WeRide2021年)

事業状況

2019年11月、WeRide.aiの有人運転ロボタクシーは、広州の144平方キロメートルのエリアで一般乗車を開始した。このサービスは、中国南部で最大のタクシー会社である国営の白雲タクシー会社(白雲出租汽車公司)と連携して実施している。

北京でのBaiduやポニーの有料サービスに先駆けて、WeRide.aiはサービス開始当初から、広州のタクシー料金に相当する金額を乗車料として受け取ってきた。

これは、競合同士が自社プログラムに中国で「初」という称号を得るため躍起になるという、よくある状況の例だ。このような主張そのものは有効だが、よく見極める必要がある。ある業界関係者によると「北京の方が政策を先導する上での影響力はある」が、企業にとっては有料ロボタクシーサービスを実施する場所が北京であろうと広州であろうと、その差は「それほど大きくない」という。

「北京でも広州でも、その都市が友好的な政策をとっていれば、それは良いニュースです。つまりは、ロボタクシー企業は実運用のための試験ができればいいのです」と、同関係者は語った。

WeRide.aiは、武漢でも有人運転のロボタクシーサービスを実施している。

米国での試験走行

2021年11月現在、WeRide.aiはカリフォルニア州で無人および有人車両の試験走行を許可されている。

OEMパートナー

WeRide.aiとその戦略的投資家である広州汽車集団が12月に発表したところによると、今後数年で「数万台」のロボタクシーを配備する予定であるという。

画像クレジット:Traffic jam during sunset / Getty Images

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Dragonfly)

事故の根本的問題解決のため超高解像度レーダーを自動運転車に搭載、中国AutoXがArbe Roboticsと提携

テルアビブに拠点を置く超高解像度レーダーのスタートアップArbe Roboticsに、新たな顧客が加わった。中国の自動運転会社AutoXが、同社のレベル4自動運転車に搭載するArbeベースのレーダーシステムを40万台調達したのだ。

両社は声明の中で、Arbe Roboticsのプラットフォームは自転車や歩行者などの交通弱者を正確に認識したり、静止物を検出したり、レーダー画像のあいまいさによる誤警報の除去など、最近の自動運転車事故の原因となっている「根本的な問題」を解決すると述べた。

Arbe Roboticsは独自の2K解像度、毎秒30フレームの画像処理技術を用いて、現在市販されているどのレーダーよりも100倍詳細な画像を提供するとしている。

Arbe RoboticsのKobi Marenko(コビ・マレンコ)CEOは最近のウェブウェブキャストで、同社はすでにティア1の自動車サプライヤー5社と提携しており、チップメーカーのNVIDIAとも提携していると述べた。さらに著名でない配送ロボット会社と「世界最大級の自動車会社」の2社から、追加発注を受けていると付け加えている。

AutoXはAlibaba(アリババ)、Shanghai Motors(上海汽車)、MediaTek(メディアテック)などの支援を受け、中国での自動運転車展開の最前線に立ってきた。同社は本社がある中国最大の都市の1つである深圳で、安全運転手のいない公道での自動運転のテストを行った中国初の企業だ。また、上海では自動運転タクシー「RoboTaxi」のサービスを開始している。

関連記事:自動運転ユニコーンAutoXが中国初のロボタクシーのテストを深センでスタート

またAutoXはカリフォルニア州で人間のセーフティードライバーをともなわない自動運転テストを開始するための許可を得ており、これはWaymoとNurに次いで3社目の許可となった。

今回の提携はテルアビブを拠点とするArbe Roboticsが、特別目的買収会社であるIndustrial Tech Acquisitionsとの合併により、7億2200万ドル(約780億円)の株式評価額で上場すると発表した数週間後に発表された。この動きはM&G Investment Management、Varana Capital、Texas Ventures、Eyal Waldmanなどの投資家による1億ドル(約110億円)のPIPE(非公開投資)によって支えられた。

マレンコ氏はウェブキャストの中で、Arbe Roboticsの収益は2021年にはわずか700万ドル(約7億6000万円)に止まると見積もっており、投資家が同社の技術に期待をよせていることは明らかだ。さらに同氏は2025年には収益が3億ドル(約320億円)を超え、わずか4年間で4185%も増加すると予想している。

関連記事:自動運転車両開発のAutoXがカリフォルニア州で無人運転テスト許可を取得

カテゴリー:モビリティ
タグ:Arbe RoboticsAutoXレーダー

画像クレジット:AutoX

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:塚本直樹 / Twitter

自動運転ユニコーンAutoXが中国初となる無人ロボットタクシーのテストを深センでスタート

中国・深センの住民たちは、米国時間12月3日から真の意味での無人運転車を目にしている。Alibaba(アリババ)、MediaTek、Shanghai Motorsの支援を受けるスタートアップAutoXは、深センのダウンタウンに25台の無人運転車を配備し、中国で初めてとなる安全のための運転手や遠隔操作員の担当者なしで公道を自律して走る無人運転車のテストを行う。

AutoXの広報担当者は、まだこのロボタクシーは一般には公開されていないとTechCrunchに語っている。

このマイルストーンは、AutoXがカリフォルニア州からドライバーレステスト開始の許可を得てからわずか5カ月後のことであり、WaymoとNuroに続くものだ。

また中国が深センから上海まで規制上のハードルをクリアにし、補助金をアピールし、5Gインフラを整備することで自動運転車のスタートアップを誘致しようとしているのは、同国がスマートドライブ産業において米国の都市と同等にしたいと考えていることを示している。

その結果、各々の都市には、深センのAutoXとDeeproute.ai、広州のPony.aiとWeRide、蘇州のMomenta、そして北京のBaiduのApollo fleetなどといった企業が事業を展開することになっている。自動運転車のメーカー各社は、従来の自動車メーカーと密接に協力して、自社の車をよりスマートにし、将来の輸送に適したものにしようとしている。

「私たちは地方自治体から支援を得ています。深センでは自動運転車の法制化が急速に進んでいます」とAutoXの担当者は語っている。

ドライバーをフロントから、オペレーターをリモートセンターからなくすという決定は、中国で最も人口の多い都市の1つで行うには大胆な動きのように思える。AutoXは、XCUという独自の車両制御ユニットを装備しており、それは中国の都市の複雑な道路シナリオを処理するために必要な処理速度と計算能力を有していると主張している。

「『XCU』は、このような状況に対応するために何層にもおよぶ冗長性を提供します」とAutoXは、万が一マシンが故障した場合の車両の反応を尋ねられたときに答えた。

同社はまた、過去数年間に100台のロボットタクシーを使って、中国で最も密集した都市部を「何百万マイルもの距離」も走行した経験から学んでいると強調している。ライバル企業もまた、研究開発とパイロットテストに多額の投資をする一方で、自動運転アルゴリズムをトレーニングするために走行距離を積極的に稼いでいる。AutoX自身は、これまでに1億6000万ドル(約166億3000万円)以上を調達している。

関連記事
自動運転車両開発のAutoXがカリフォルニア州で無人運転テスト許可を取得
中国初の自動運転ユニコーン企業Momentaは利益よりもデータを追う

カテゴリー:モビリティ
タグ:AutoX自動運転ロボタクシー中国

画像クレジット:

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

自動運転車のスタートアップのAutoXが上海でロボタクシーサービスを開始

自動運転車のスタートアップのAutoX(オートX)は中国時間8月17日、上海地区における自動運転タクシーサービスの一般営業開始を発表した。シンプルにRoboTaxi(ロボタクシー)と名付けられたサービスで、すでにDidi(ディーディー)との競争に直面している。中国最大の配車サービスプラットフォームを提供するDidiは、6月末に上海で自身のロボタクシーパイロットプログラムを開始(South China Morning Post記事)していた。

AutoXのRoboTaxisはまず、100台の車両が嘉定地区で利用可能になる予定だ。配車は、地図ならびに移動予約アプリであるAutoNavi(オートナビ)を通して予約する。このアプリは、AutoXへ投資する企業の1つであるAlibaba(アリババ)が所有するものだ。深圳に本社を置くAutoXは、昨年中国最大の自動車メーカーの1つであるDongfeng Motor(東風汽車)、Alibaba、Plug and Play(プラグ・アンド・プレイ)の中国ファンドといった支援者から1億ドル(約107億円)のシリーズA資金を調達した(KrASIA記事)。

AutoXのサービスは、Didiの自動運転タクシーパイロットプログラムと競合することになるだろう。Didiのパイロットプログラムも、上海の中心部にかなり近いものの混雑度が低い、広大な郊外地区の嘉定地区で運行されている。Didiのサービスは、新しい自動運転子会社のためにソフトバンクを含む投資家から5億ドル(約533億円)を調達(CNBC記事)したことが発表されてから、数週間後に開始された。Didiの野心的な目標は、2030年までに100万台を超える自動運転車を展開することだ。

AutoXとDidiはどちらも、Pony.ai(ポニーAI)、Baidu(バイドゥ)、WeRide(ウィーライド)といった中国のライバル企業が手掛ける自動運転タクシーサービスと競合している。どの企業もすでに、他の都市でロボタクシープログラムを展開している。一方Momenta(モメンタ)のように、自動運転タクシー用のソフトウェアを開発してパートナーに販売することに注力(未訳記事)している企業も、複数存在している。このことはさらに多くのロボタクシー群を生み出すことになるだろう。Momentaの進捗の一部は中国政府からの支援によるものである。なぜなら中国政府は、新型コロナウィルの経済的影響を相殺しようと(新華網記事)、自動運転、5G、人工知能などの産業に、大規模な資金を投入しているのだ。

TechCrunchに対してAutoXの最高執行責任者(COO)であるJewel Li(ジュエル・リー)氏は、競争の状況について「同社の強みはOEM業者とAlibabaを含む投資家リストだ」と語った。これが意味するのは、AutoXの支援者たちは単なる資金提供者というだけではなく「自動運転に対してモビリティとロジスティクスの両方でユースケースを提供できるということです。この投資家ポートフォリオは、中国市場だけでなく、世界的にも類を見ないものです」とリー氏は語る。

同社はまた「深圳の南山区にもロボットタクシーを保有しており、人口密度の高い都市部での自動運転の経験を会社に提供できている」と同氏は付け加えた。

AutoXは現在、カリフォルニア州では3番目の、そして中国だけに焦点を当てた企業としては唯一の、完全無人ロボタクシー許可を得ている。この許可をリー氏は「自動運転業界で最高の標準」だと呼んでいる 。なおカリフォルニア州でほかの2社は、Waymo(ウェイモ)とNuro(ニューロ)だ。

AutoXのRoboTaxisは、上海を拠点とするタクシー業者Letzgo(レッツゴー)のアプリからも予約できるようになる予定だ。両社は中国時間8月17日、4月にオープンしたAutoXの上海オペレーションセンターでLetzgoのスタッフに、RoboTaxiを運営してもらう戦略的パートナーシップを発表した。AutoXには、ヨーロッパでロボタクシーサービスを展開する計画もある。

関連記事:自動運転車両開発のAutoXがカリフォルニア州で無人運転テスト許可を取得

原文へ]

(翻訳:sako)