“自分を複製することによって生き延びるデータベース”…Cockroach LabsのCEO Spencer Kimballは、同社の覚えやすい社名とその価値命題の関係をこう説明する*。エンタープライズ・サービスは混みあった市場だが、Cockroachはテクノロジー世界の高名なVCたちに愛されてきた。今日(米国時間5/10)は2700万ドルのシリーズB資金を、Redpointがリードし、Benchmark, GV, Index Ventures, そしてFirstMarkが参加したラウンドで調達した。〔*: cockroach, ゴキブリ, グローバルな熱核戦争に生き残る唯一の高等生物がゴキブリだ、と言われる〕。
同社のプロダクトCockroachDBは、最適化によってデータベースのダウンタイムを極小にするオープンソースのサービスだ。あなたがどこかのWebサイトを訪れるたびに、あるいは銀行口座をチェックするたびに、大好きなSNSにログインするたびに、あなたが必要とする情報をそれらのサイトのデータベースが提供する。
CockroachDBは文字通りあの昆虫のように自分自身を複製してそこら中に拡散するから、単一の無防備な標的になることがない。ゴキブリは、全生物が滅びる最後の世界大戦にも生き残る。同社はこの機能のことを、マルチアクティブ・アベイラビリティ(multi-active availability, 多重活性可用性)と呼ぶ。あなたの会社の製品やサービスが、どれだけ広範囲に採用されていても、致命的エラーを抑止することはつねに最優先事項だ。
新たな資金の導入に加えてCockroachは今日(米国時間5/10)、そのプロダクトのバージョン1.0を公式に発表した。Kimballによると、ベータ期間、あるいはそれよりも前から、スタートアップたちを中心とする熱心な顧客たちは、まだ正式なデプロイには適さないとされる段階のサービスを実装してきた。それは一見怖い話だが、この三年間同社がやってこれたのも、熱心なコミュニティのおかげだ。
“5か月後に1.1、その後は6か月ペースでアップデートしていく”、とKimballは語る。
最初GitHub上の(==オープンソースの)プロジェクトだったCockroachだが、今後は有料のエンタープライズユーザーを収益源にしていく予定だ。その有料バージョンには、エンタープライズのサポートのほかに、分散バックアップと分散リストアの機能が含まれる。大量のデータを管理し重要な業務を抱えるユーザーには、必須の機能だ。
中国の複合テクノロジー企業Baiduは、Cockroachの初期からの顧客のひとつだ。同社はこれまでCockroachのテスト役を買って出て、一日に20億のINSERTを処理し、それと並行して、悪夢のようなシナリオの数々をシミュレートしてシステムの自己回復力をテストしてきた。
Kimballが語る、年内に実現したい課題は、営業チャネルの拡大などのありきたりのものではなく、彼が地理的分割(geo-partitioning)と呼ぶ機能の実装だ。それは、カラムのレベルでの複製を地理的に細かい粒度で行う、という、複製のコントロールの細分化だ。
Cockroachが自分をGoogleのCloudSpannerから差別化する大きな要因が、オープンソースだ。地理的分割も、大きな差別化要因になるだろう。複製の細粒度化によってレイテンシーが減るだけでなく、データの独立性(他に侵されないこと)もよりしっかりと守られる。