ビットコイン取引所QUOINEが本社を日本に移し15Mドルを調達、金融サービス事業者向けB2B展開に本腰

QUOINE

ビットコイン取引所を運営するQUOINEは、ジャフコをリードインベスターとして15Mドルの資金を調達した(プレスリリース)。今後、日本を含むアジア市場でビットコイン取引所の市場1位を狙う。日本の仮想通貨法(改正資金決済法)成立を受け、複数の金融サービス事業者向けに同社の仮想通貨取引エンジンをOEM提供するB2Bの事業にも本腰を入れる。

QUOINE(「コイン」と読む)は2014年11月にシンガポールで設立されたが、今回の資金調達に先立って2016年3月末に本社機能を日本法人に移し、また2016年4月1日付けで栢森 加里矢(かやもり かりや)氏がCEOとして着任している。栢森氏の前職はソフトバンクグループのシニアバイスプレジデントでアジア統括を担当。今までは投資家の立場でQUOINEに参画してきた。なおQUOINEは2014年末に1.8Mドルの資金を調達している。

日本のビットコイン取引所を運営する企業の資金調達の事例を見ると、2016年4月にbitFlyerが約30億円を調達し(関連記事)、2016年4月から5月にかけてビットコイン取引所Zaifを運営するテックビューロが約7.2億円を調達している(関連記事追加調達のプレスリリース)。今回の15Mドル(プレスリースは「約17億円」と表記)は大きい数字だ。なお、海外メディアではこの後の追加調達の金額を含めて「QUOINEが20Mドルを調達」と報じている記事もある。

B2Bで仮想通貨取引エンジンを提供

Mike Kayamori Picture

QUOINEのCEOに就任した栢森 加里矢氏。

取材で印象に残ったのは「B2Bに本腰を入れる」との方向性を聞けたことだ。自社の仮想通貨取引エンジンのB2B展開に取り組む。「我々の強みは毎秒100万件をアップタイプ99.99%で処理できる堅牢な仮想通貨取引エンジンにある。これを複数の金融事業会社に提供していく。すでに使って頂いている事業者もいる」(栢森氏)。

B2B強化を打ち出した背景には、日本でこの2016年3月に仮想通貨を扱う法案(改正資金決済法)が提出されて5月には成立したことがある。「法案成立により、今後は仮想通貨取引所だけでなく従来の証券会社やFX業者など金融サービス事業者が仮想通貨をサービスに加える。それらの企業に仮想通貨の取引用取引エンジンを提供していく」(栢森氏)。

栢森氏は、携帯電話ビジネスに例えて「MVNE(仮想移動体サービス提供者)のようにイネーブラーの立場になる」と付け加えた。大手の携帯電話事業者(MNO)の回線を借りてビジネスをするMVNO(仮想移動体通信事業者、いわゆる「格安SIM」の事業者)のイネーブラーとなるMVNEのように「多くの個性的なプレイヤーが仮想通貨ビジネスを立ち上げられるイネーブラーになりたい」。

金融機関の技術、ノウハウを仮想通貨ビジネスに

QUOINEシンガポール法人の前CEOだったMario Gomez Lozada氏は、栢森氏のCEO着任以降はQUOINEのCTO、プロダクト担当プレジデントとして事業を支える。栢森氏の説明によれば、QUOINE設立のきっかけはクレディスイス日本法人のCTO/CIOだったMario Gomez Lozada氏と栢森氏が共鳴したことだった。「Marioは、メリルリンチとクレディスイスで金融プラットフォームを作ってきたプロ。仮想通貨ビジネスの新しい世代を担うのは彼のような人材だ」(栢森氏)。栢森氏がQUOINEの取引エンジンに自信を持っているのも、金融機関譲りの技術やノウハウが強みになると考えているからだ。

「仮想通貨取引所のハッキング事件も内部犯行による例が多い。我々は金融機関のノウハウを生かした厳しいプロセスを定めている」(栢森氏)。

ブロックチェーンによる「金融の民主化」の波に乗りたい

Quoine_20162Q-BTCTransactions

QUOINEのビットコイン取引高の推移。

 

B2Bに本腰を入れる一方で、従来からのビットコイン取引所のビジネスも拡大していく。QUOINEの1日あたりビットコイン取扱高を見ると、2015年10-12月の四半期が4700BTC/日、2016年1-3月の四半期で7388BTC/日、2016年4月〜5月の2カ月で1万2507BTC/日と、急激に数字が伸びている(グラフを参照)。背景としてビットコイン市場全体の取引高が急増していることがあるが、QUOINEがビットコイン市場の活性化に対応して、着実に実績を上げていることを数字が示しているともいえる。

ビットコイン取引所は日本に複数ある中で、QUOINEはまだ知名度が低い。シンガポールが本拠地だったこともあり、日本でのメディア露出も乏しかった。「今までマーケティング活動はほとんどやってこなかった」(栢森氏)。今後は、日本を含むアジア市場で積極的にビットコイン取引所としてのシェアを拡大していきたい考えだ。「アジア市場で1位を狙う」。中国市場への参入は難しいと見ているが、一方でこれまでのキャリアを振り返りつつ、「ソフトバンクグループではインド事業を1から立ち上げた。インド市場は必ず取りたい」(栢森氏)と話す。

資金調達後の見通しを聞いた。「金融サービスは公共性、社会性が重要だ。長く続け、大きなビジネスにしたい」。栢森氏に言わせれば、現状の仮想通貨ビジネスの規模は他の金融分野と比べてまだまだ無視できるほど小さく「今後1000倍以上にスケールする可能性がある」と見ている。栢森氏の構想によれば、仮想通貨取引所の次の段階は「ユビキタスウォレット」だ。法定通貨(ドル、円など)建て金融サービス(クレジットカード、デビットカード)、仮想通貨、企業ポイント、ギフトカード、プリペイド通信料など、複数のサービスを一般消費者が(例えばスマートフォン上で)ワンストップで利用できる「ユビキタスウォレット」が普及すると見て、QUOINEはウォレットの事業者に取引エンジンを提供していく。事業会社のB2Cの情報システムとブロックチェーンの間の橋渡しをし、ワンストップで必要な機能を提供してくれるサービス(あるいはミドルウェア)の需要は今後高まっていくはずだ。

「ブロックチェーンで民主化された未来の金融機関を作り上げていく」と栢森氏はビジョンを語った。

クラウド家計簿提供のBearTail、今度は経費精算サービスの提供を開始

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スマホでレシートを撮影するだけで全自動で家計簿を作成できるクラウド家計簿サービス「Dr.Wallet」。このサービスを提供するBearTailが、今度はビジネスパーソンをターゲットにした新サービスを公開した。同社は12月24日、クラウド経費精算サービス「Dr.経費精算」ベータ版の提供を開始した。サービスは月額980円(30日間無料)。2016年1月には法人向けプランの提供も予定する。

Dr.経費精算は個人時事業主や中小企業向けの経費精算サービス。スマートフォンアプリやウェブサイトにて領収書を撮影して送信するだけで、データ化、さらに仕訳までを行う。登録されたデータは事後の編集も可能。データはExcel、CSV形式で提供される。

もともとBearTailが提供してきたDr.Walletでは、撮影したレシートのデータを、画像認識とクラウドソーシングの手入力で処理。目視をはさむことで高い精度を提供していた。今回提供を開始したDr.経費精算ではそのノウハウをいかしてサービスを提供しているという。

経費精算の自動化と聞いて気になるのは、交通系ICカードの読み込みだ。例えば先行する経費精算サービスであるクラウドキャストの「Staple」などは5月にICカードの読み込みに対応。この機能のリリース後にユーザーを拡大しているといった話を以前の取材で聞いた。

BearTailでもそのあたりのニーズは意識しているようで、ベータ版では交通経路検索機能により、駅名からの料金登録をまず実現。今後は「2016年早いタイミングで予定している正式版では、ICカードのNFC読み込み、オンライン利用明細の自動取り込みの機能も追加する予定」(BearTail代表取締役の黒崎賢一氏)としている。

Fintechという言葉でひとくくりにするワケではないが、電子帳簿保存法の改正を受け、2017年度にもスマートフォンで撮影した領収書での経費精算が可能になると見込まれていることからも、この領域のスタートアップの動きは活発。BearTailもそこに着目した。「今後クラウド化が進んでこなかった経費精算サービスが一気にクラウド化すると考えている。帳票入力や回覧・保管にかかわる経費精算関連市場は1兆円とも言われるが、その中でデファクトスタンダードを目指す」(黒崎氏)

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