英独禁監視当局がマイクロソフトのNuance買収を調査中

2021年初めに発表された、Microsoft(マイクロソフト)による197億ドル(約2兆2380億円)での音声テキスト化企業Nuance Communicationsの買収は、英国の活発な反トラスト監視当局の注意を引いてきた。そして当局は12月13日、提案されている取引に懸念すべき理由があるかどうかを評価するために第1段階の調査を行っていると発表した

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競争市場局(CMA)が第1段階の調査を開始するかどうかの決定は追って行われる予定だ。

現在のところ、規制当局がこの決定を下すまでの期間は示されていないが、CMAが利害関係者にコメントを求める協議期間は2022年1月10日までとなっている。

買収案に対する独占禁止法上の監視は何カ月にもわたることがあり、少なくとも取引完了に大きな遅れをきたす可能性がある。

CMAはこの件に関する声明の中で「取引が実行された場合、2002年企業法の合併規定に基づく関連する合併状況の創出につながるかどうか、またその可能性があるかどうかを検討しており、もしそうであれば、その状況の創出が英国の商品またはサービスの市場における競争の実質的な低下につながることが予想されるかどうかを検討している」と述べている。

Microsoftは、4月にNuance買収を発表した際に、ヘルスケア分野でのプレゼンスを強化するために音声テキスト化企業を買収すると述べていた。ヘルスケア分野では、Nuanceが多くの臨床医支援製品を開発している(遠隔診療の記録のためのテック、臨床文書作成のための音声認識ツール、AIを活用した放射線診断レポートなど)。

反トラスト規制当局は、今回の買収計画をさらに精査する必要があると判断した場合、第1段階の調査を開始する。その後、まだ懸念すべき理由があると判断した場合、より詳細な第2段階の調査を開始する可能性がある。

また、いずれかの段階で、懸念される競争上の問題がないと判断し、買収を許可することもあり得る。

逆に、懸念がある場合には、買収を実行する前に救済措置が必要と判断したり、買収停止を命じたりする可能性もある。

Nuance買収計画に対するCMAの予備調査について、Microsoftにコメントを求めている。

Amazon(アマゾン)、Apple(アップル)、Google(グーグル)、Microsoft、さらにはFacebook(フェイスブック)などのテック大手は何年もの間、健康状態の追跡やモニタリングなどを行うツールの開発に関心を示してきたが、デリケートな分野への進出は、重要分野のデジタル化が進む中で、企業の支配力や市場力をさらに強めることになるのではないかという懸念がある。

一方、英国では、プラットフォームの力を考慮して国内の競争法を再編成しているところで、「競争促進」の体制を導入し、大企業の市場支配力から中小のイノベーターを保護したいとしている。

競争監視委員会は、CMA内部に設置される新しい部署Digital Markets Unitにハイテク企業を監督する権限を与える法案に先立ち、M&A活動やその他の主要な動き(Googleの戦略的な「プライバシーサンドボックス」計画など)を引き続き監視している。

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最近では、CMAはMeta(元Facebook)に対し、アニメーションGIFプラットフォームGiphyの買収を取り消すよう命令した。これは、これまでハイテク大手のM&Aに異議が唱えられることがほとんどなかったことを考えると、競争監視において注目すべき出来事だ。CMAは、プラットフォームの力と野心に挑戦する最前線にいることを強調している(命令によって面倒な取引破棄が必要な場合もある)。

画像クレジット:Jeenah Moon/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

英政府が国家安全保障と競争に関する懸念でNVIDIAのArm買収に対するより詳細な調査を開始

チップメーカーのNVIDIA(エヌビディア)が英国のチップ設計会社Arm(アーム)を400億ドル(約4兆5820億円)で買収する計画について、英政府は競争市場庁(CMA)に詳細な調査を行うよう指示し、英国の競争規制当局による綿密な調査が行われることになった。

英デジタル長官Nadie Dorries(ナディン・ドリーズ)氏は、競争および国家安全保障上の懸念を理由に、第2段階の調査を実施するようCMAに書面で指示したことを現地時間11月16日に発表した。

英政府は8月にCMAの予備調査の詳細を発表していた。調査では、この買収がデータセンター、IoT(モノのインターネット)、自動車分野、ゲームアプリケーションの市場における「実質的な競争の低下」につながる可能性があるとして、買収にともなう多くの競争上の懸念を指摘していた。

11月16日に公開されたCMAの第1段階報告書は、競争上の理由からより詳細な調査を推奨しているが、国家安全保障上の問題については判断を下していない。

2021年4月、英政府は国家安全保障上の理由で介入通知を出し、CMAに対してより詳細な調査が必要かどうかを判断するために、この取引の影響に関する報告書を作成するよう求めた。

ドリース氏は11月16日、国家安全保障上の利益は依然として「関連性がある」とし「さらなる調査の対象とすべきである」と述べた。

2002年に制定された企業法に基づき、デジタル長官は、国家安全保障上の問題を含むいくつかの公益上の考慮事項に基づいて、合併に介入するための準司法的な決定を下すことができる法的権限を有している。

ドリース氏は声明の中で次のように述べている。「NVIDIAが提案しているArmの買収に関する競争市場庁の『フェーズ1』報告書を慎重に検討し、さらに詳細な『フェーズ2』調査を行うよう要請することにしました。Armは、世界のテクノロジー・サプライチェーンの中で特異な地位にあり、この取引の影響を十分に考慮しなければなりません。CMAは今後、競争および国家安全保障上の観点から私に報告し、次のステップに関するアドバイスを提供します」。

「繁栄するテック部門に対する政府のコミットメントは揺るぎないものであり、外国からの投資を歓迎しますが、今回の取引の影響を十分に検討することは正しいことです」とドリース氏は付け加えた。

第2段階の調査への言及についてNVIDIAにコメントを求めている。

CMAは第2段階の調査を行い、その結果を政府に報告するまでに24週間(8週間の延長の可能性あり)を与えられる。つまり、少なくとも、NVIDIAによるARM買収は、取引の承認を得るまでにさらに数カ月の遅延が生じることになる。

デジタル長官は、国家安全保障上および(または)競争上の理由から、買収に関連して「不利な公益認定」を行うかどうかの決定を下すことになる。

国家安全保障の問題に関する最終的な判断は、英国の国務長官が行う。国務長官は、CMAの最終報告書を受け取ってから30日以内に判断を下す。

ドリース氏は、公共の利益に反する介入理由がないと判断した場合、CMAに案件を差し戻すが、CMAは競争上の理由で反対の助言をする可能性があり、また(あるいは)懸念を解消するために案件に条件を課すことができる。

つまり、国家安全保障上の理由と競争上の理由の両方、あるいはどちらか一方の理由で買収が阻止される可能性があり、承認にはかなりの障壁がある。

しかし、最終的に両方の懸念が解消され承認される可能性もある(CMAの第1段階の調査で重大な懸念が示されたため、競争面で懸念がなくなる可能性は低いと思われる)。

また、救済措置(特定の懸念に対処するための条件や制限)付きで取引が承認される可能性もある。

高まる懸念

NVIDIAによるArm買収計画は、英国内ではすぐに反対の声が上がり、Armの共同設立者の1人は、NVIDIAに買収されないように「ARMを救う」キャンペーンを始めた

世界的なチップ不足により、半導体分野におけるサプライチェーンの安定性への懸念が強まっている(ただし、Armは自社でチップを製造するのではなく、IPの開発やライセンス供与を行っている)。EUは最近、半導体供給に関する地域主権の強化を目的とした半導体法を制定する計画を発表した

欧州連合(EU)も10月末に独自の詳細な調査を発表するなどNVIDIAとArmの取引を直接調査しており、NVIDIAがArmを買収するための新たな障害となっている。

欧州委員会は、CMAの第1段階の調査と同様の見解を示し、NVIDIAとArmの合併に関する予備的分析では、多くの競争上の懸念があると述べた。

「欧州委員会は、合併した企業が、NVIDIAのライバル企業によるArmの技術へのアクセスを制限する能力と動機を持つことになり、提案されている取引が価格の上昇や選択肢の減少につながることを懸念しています」とEUの幹部は先月述べた。「ArmとNVIDIAは直接競合していませんが、ArmのIPは、たとえばデータセンター、自動車、IoTなど、NVIDIAと競合する製品の重要なインプットとなっています」と、競争担当のMargrethe Vestager(マルグレーテ・べステアー)氏は声明で述べた。

「我々の分析によると、NVIDIAによるArmの買収は、ArmのIPへのアクセスを制限または低下させ、半導体が使用されている多くの市場に歪んだ影響を与える可能性があります。我々の調査は、欧州で活動する企業が、最先端の半導体製品を競争力のある価格で生産するために必要な技術への効果的なアクセスを継続できるようにすることを目的としています」。

EUは2022年3月15日までにこの買収を認めるかどうか判断する。

10月のロイター通信の報道によると、欧州委員会はEUの綿密な調査を回避しようとするNVIDIAが先に提示した譲歩案に揺るがなかったという。

画像クレジット:Omar Marques/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

英国の競争・市場庁が、NVIDIAのArm買収に「競争を阻害するおそれがある」との懸念を示す

英国の競争監視機関は、NVIDIA(エヌビディア)が計画しているチップ開発メーカーのArm(アーム)の買収について、深刻な懸念を示した。

この評価は現地時間8月20日、英国政府によって発表された。同政府は今後、競争・市場庁(CMA)に買収案の詳細な調査を依頼するかどうかを決定することになる。

CMAが政府に提出した報告書の要旨では、この買収が実行された場合、合併後の企業は、NVIDIAと競合する半導体チップおよび関連製品を製造する企業が使用するArmのIP(知的財産権のある設計データ)へのアクセスが制限することで、競合企業NVIDIAの競争力を損なう能力と動機を得ることになるという懸念が示されている。

CMAは、競争がなくなると、データセンター、ゲーム、IoT(モノのインターネット)、自動運転車など、多くの市場でイノベーションが阻害され、その結果、企業や消費者にとっては、製品が高価になったり、品質が低下したりする損害を招く恐れがあると懸念している。

NVIDIAが提案した行動的問題解消措置は、CMAによって拒否された。CMAは合併案について競争の面で詳細な調査を行う「第2段階」に移行することを推奨している。

CMAの最高責任者を務めるAndrea Coscelli(アンドレア・コシェリ)氏は、次のようにコメントしている。「我々は、NVIDIAがArmを支配することによって、NVIDIAの競合他社が重要な技術へのアクセスを制限されるという深刻な問題を引き起こし、最終的に多くの重要かつ成長している市場におけるイノベーションが阻害されることを懸念しています。その結果、消費者が新しい製品を入手できなくなったり、価格が上昇する可能性があります」。

「チップテクノロジー業界は、数千億円規模におよび、企業や消費者が日々利用している製品に欠かせません。これには、経済全体のデジタルビジネスを支える重要なデータ処理およびデータセンター技術や、ロボット工学や自動運転車などの成長産業にとって重要な人工知能技術の将来的な開発も含まれます」。

NVIDIAにコメントを求めたところ、以下のような声明が送られてきた。

私たちはCMAの最初の見解に対応し、政府が持つ懸念を解決することができる機会を楽しみにしています。当社では依然として、この買収がArmとそのライセンス企業、市場競争、そして英国にとって有益であると確信しています。

英国のデジタル・メディア・文化・スポーツ省は、同省のウェブサイトに掲載された声明の中で、英国のデジタル担当長官が現在「報告書全文に含まれる関連情報を検討中」であり、CMAに「第2段階」の調査を依頼するかどうかの決定を「そのうち行う」と述べている。

「この決定を下すための期間は定められていませんが、不確実性を低減するため、合理的に実行可能な範囲で、早急に決定を下す必要性を考慮しなければなりません」と、声明では付け加えている。

この買収案は英国内でかなりの抵抗に直面しており、Armの共同設立者の1人を含む反対派は、合併が阻止されることを求めている。

関連記事:NVIDIAのArm買収に国家安全保障上の懸念を理由に英国政府が介入
画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

英国の競争・市場庁がアマゾンとグーグルのフェイクレビュー対応の調査を開始

英国の競争監視当局である競争・市場庁(CMA)がテック大企業に対する新たな調査を開始した。Amazon(アマゾン)とGoogle(グーグル)がどのようにフェイクレビューに対処しているかに的を絞ったものだ。

英国のCMAは2015年からオンラインレビューに関心を向けてきた。

CMAはまた、マーケットプレイスで横行しているとして、フェイクレビューの取引を取り締まろうと2019年にeBay(イーベイ)とFacebook(フェイスブック)に目をつけた。これらのプラットフォームに圧力をかけ続けた結果、CMAは両社からこれまでよりも対策に注力するとの約束を取り付けた。にもかかわらず、Facebookの場合、フェイクレビューを取引していた1万6000ものグループを取り締まったのは2021年4月のことだった。CMAはFacebookが意義ある行動を取るまでに1年以上かかったことに失望を表明した。

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そして現在、CMAはAmazonとGoogleをそのレーダーにとらえた。2社ともユーザーレビューを含むプラットフォームを運営している。これら2社がフェイクレビューから買い物客を守るために十分な行動を取らないことで英国の法律に反したかどうかを決定する証拠を集める、とCMAは話している。

消費者をミスリードする、あるいはミスリードから消費者を守る行動を取らなかった企業は、不正取引から消費者を守るための英国の法律に違反していることになる。

CMAはAmazonとGoogleの調査は2020年5月に開始した初期調査に続くものだと話す。初期調査ではいくつかのプラットフォームの内部システムとフェイクレビューを特定して対処するプロセスの評価にフォーカスしていた。

この調査により、テック大企業であるAmazonとGoogleが下記のことに十分に取り組んできたかどうか懸念が浮かび上がった。

  • フェイク、そしてミスリードするレビュー、あるいは疑わしい行動パターンを検知する。たとえば同じユーザーが似たようなプロダクトや会社を似たような時間帯にレビューしているもの、プロダクトや会社と関係がないもの、あるいはレビュワーが肯定的なレビューを書いて支払いやインセンティブを受け取っていることをうかがわせるものなど
  • 調査し、必要ならばすぐさまフェイクでミスリードするレビューをプラットフォームから削除する
  • フェイクレビューをなくすためにレビュワーや企業に十分な制裁を科す。ここにはこうした種のレビューを何回も書いたり公開したりした人物や企業が含まれる

当局はまた、Amazonのシステムがたとえば他のプロダクトより肯定的なレビューを組み入れるなどして「一部のセラーがプロダクトリストを操作するのを十分に防いだり抑止したりしてこなかった」と指摘した。

結局のところ、問題の販売アイテムとは明らかに無関係の製品特性に真剣に言及しているレビュワーによるプロダクトレビューだけに接しようと、Amazon上のプロダクトレビューをブラウズしたことがない人なんているだろうか。

ローカルビジネスを検索した後にたとえばGoogle Mapsに表示されるユーザーレビューは「スター5つ(あるいはスター1つ)の行動の「特殊なパターン」も表示する。

AmazonとGoogleがフェイクレビューの問題に十分に対応をとってこなかったという懸念を調査していることに関し、CMAのCEOであるAndrea Coscelli(アンドレア・コシェリ)氏は声明で次のように述べた。

我々の懸念はオンラインで買い物する何百万という人々がフェイクレビューを読んでミスリードされ、その後にそうしたレコメンデーションに基づいて金を使うことにあります。と同時に、自社のプロダクトやサービスを最も目立つようにするために一部の会社がスター5つのレビューをつけることができ、法を守っている会社が負ける、というのは純粋に公正ではありません。

我々はAmazonとGoogleが顧客や正直な会社を守るために十分にフェイクレビューを防いだり削除したりしてこなかったという懸念を調査しています。これらテックプラットフォームが責任を取ることは重要で、2社が十分に取り組んでいないことがはっきりすれば何らかの措置を取る準備はできています」

AmazonとGoogleにコメントを求めた。

Googleの広報担当者は次のような声明文をTechCrunchに送ってきた。

当社の厳しい規則は、レビューは実体験に基づくべきだと明白にうたっていて、規則違反を見つけた場合、当社は不適切なコンテンツの削除から、ユーザーアカウントの凍結まで、行動を起こします。ユーザーが関連する有用な情報をGoogleで見つけるのをサポートすべく、業界の先端をいく当社のテクノロジーとレビューのチームがいかに取り組んでいるか共有するために、引き続きCMAに協力することを楽しみにしています。

Amazonの広報担当は以下のように述べた。

顧客の信頼を得るために、フェイクやインセンティブが与えられたレビューがストアに表示されるのを防ぐのにかなりのリソースを注いでいます。顧客がプロダクトで得たエクスペリエンスがレビューに正確に反映されるよう、懸命に取り組んでいます。当社は引き続きCMAの問い合わせに協力します。当社の事業に対して何も結論は出ていないことを言い添えておきます。当社は絶え間なくストアを保護し、レビューを乱用しようとする人の規模やロケーションにかかわらずフェイクレビューを阻止するために行動を起こします。

2021年6月初めのブログ投稿で、おそらくCMAのこの問題に関する意図に気づいているAmazonは「当社のストアで本物のプロダクトレビューだけが許されるよう、絶え間なく刷新しています」と主張し、偽オンラインレビューの問題について語った。そして、実例の統計を示した(2020年だけで2億件超の「疑わしいフェイクレビュー」を顧客が目にする前に「プロアクティブな検出」を使用して阻止した)。

しかしブログ投稿はかなり守勢に立っていた。Amazon外で、特にソーシャルメディアサービスを通じてフェイクレビューを勧誘しようとする悪意ある行為が次第に増している」と述べるなど、フェイクレビュー問題の責任を拡大することを模索している。

Amazonはフェイクレビューを、調整された業界全体のソリューションを要する、業界にまたがる問題にしようとした。その一方で、(名指しはせず)「ソーシャルメディア会社」に矛先を向け、ソーシャルメディアがチェーン内の弱点であると指摘した。

フェイクレビューを促進するのに使われるているサービスを運用しているソーシャルメディア企業が積極的に詐欺やフェイクレビューの抑制に投資し、これらの悪行を阻止するために我々と提携し、消費者が自信を持って買い物できるようにサポートする必要があります。消費者と正直な販売パートナーを完全に守るには、絶え間ないイノベーション、そして業界と法執行当局間の提携が欠かせません。

Amazonのブログ投稿はまた「レビューを買う人やレビューを提供するサービスプロバイダー」などの「悪行」に対して訴訟を起こす既存の取り組みをサポートするために「世界中の」消費者保護規制当局の総合的な援助を求めた。

Amazonはまた、欧州でフェイクレビュープロバイダーに対する「何十もの」差止命令を勝ち取ったとTechCrunchに語った。加えて同社は法的措置を取ることをためらわない、とも付け加えた(例えば差止・強制命令を求めてAMZ Tigers、TesterJobというウェブサイトのオーナーに対する訴状を1月9日にロンドン商事裁判所に出したと同社は述べた)。

CMAの調査が行われていることを考えると、フェイクレビュー供給者に対する訴訟をサポートするよう規制当局の援護を求めるAmazonのブログ投稿は、CMAの視線をFacebookのマーケットプレイスに視線を向けさせようとする先制攻撃のようにみえる。

AmazonとGoogleに対する調査が、おそらく問題を悪化させているソーシャルメディアプラットフォーム上などでのレビュー取引グループの役割にも及ぶのかどうか、TechCrunchはCMAに問い合わせた。

CMAはこの点についてのコメントは控えた。しかしTechCrunchはAmazonとGoogleに対する調査は別物だと理解している。

今後何が起こり得るのかという点に関して、CMAは調査でAmazonとGoogleがさまざまな執行力を持つ英国消費者保護法を遵守しなかったかを考慮する。フェイクレビューの対処方法を変えるために正式なコミットメントを確保したり、必要に応じて裁判に発展させたりすることがあり得る。

しかし差し当たってAmazonとGoogleが法律を守らなかったどうか結論は出ていない。

CMAは予定されている英国の独占禁止法の刷新に準備するためにデジタルマーケットへ注意を次第に向け、テック大企業の規制で積極的に動いてきた。新たな独禁法では、競争を損なうプラットフォームのパワーに対処する体制を敷く模様だ。

CMAはテック大手に対し多くの調査を展開している。ここには、Googleが予定している閲覧追跡クッキーの廃止も含まれる。そしてCMAは最近、AppleとGoogleのモバイルエコシステムの独占に関するマーケット調査も開始した。

関連記事:グーグルのトラッキングクッキーのサポート終了は英国の競争規制当局が同意しない限り実現しない

CMAが主要プラットフォームにフォーカスしていること、そしてフェイクレビューに対して長らく注意を向けてきたことを考えると、Appleがこの問題に関して英国の調査に直面するかどうかを思索するのはおもしろい。

App Storeでのフェイクのレーティングやレビューに関する懸念は提起されている。

たとえば2021年初め、iOSアプリデベロッパーのKosta Eleftheriou(コスタ・エレフテリオ)氏は、App Storeが安全で信用できる場所だと主張することでAppleはアプリを制作するようデベロッパーを勧誘してきたが、デベロッパーの懸命な取り組みから利益を得る詐欺師たちから正当なデベロッパーを守らなかったと主張し、Appleを相手取って訴訟を起こした

CMAはすでにAppleのApp Storeについて取り調べている。Appleが不公正あるいは反競争的な条件をデベロッパーに課しているかどうかを調査すると3月に述べていて、CMAは今後App Storeを注視する。もし反競争的な条件を課していれば、これは最終的にはユーザーの選択肢が少なくなったり、アプリやアドオンに高い料金を払ったりすることになる。

しかし差し当たってCMAのフェイクレビュー問題での注意は公には他のところに向けられている。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグルのトラッキングクッキーのサポート終了は英国の競争規制当局が同意しない限り実現しない

大きな決定だ。Google(グーグル)がサードパーティークッキーのサポート終了に向けて動く中、英国の競争規制当局はこれを阻止できるサイドブレーキを手にする模様だ。Cookieは現在オンライン上のターゲティング広告に使用されているテクノロジーで、進行中の廃止計画によって競争に悪影響が及ぶとされている。

今回の出来事は、Google独自の「プライバシーサンドボックス」について、2021年初めに競争・市場庁(CMA)が行った調査を受けてのものだ。

規制当局は、GoogleがChrome(クローム)上でサポートしているCookieを削除しようとした場合に、少なくとも60日間この動きを停止するよう命じる権限を持つことになる。そのためには、規制当局はGoogleが提示した法的拘束力のあるいくつかの契約に同意する必要があるが、当局は現地時間6月11日、契約に応じる意思を示す通知を発表した。

また、Googleにトラッキングクッキーの廃止を停止するよう命じた段階で状況が思わしくない場合、競争・市場庁は全面的な調査を再開することもできるという。

その上、競争に悪影響を及ぼさない形でGoogleの「プライバシーサンドバッグ」テクノロジーに移行することはできないと規制当局が判断した場合、規制当局はこの広範なテクノロジーの移行を全面的にブロックする権限も有する。しかし、競争・市場庁は本日の発表で、競争に関するこの計画の懸念点はGoogleが提示した一連の契約によって暫定的に解消されたとの見方を示している。

現在は協議委員会が設けられ、業界が同意するかどうかのフィードバックを7月8日まで受け付けている。

競争・市場庁のAndrea Coscelli(アンドレア・コシェリ)主席常任委員は、声明で次のようにコメントしている。

Googleをはじめとする巨大なテクノロジー企業の台頭により、世界各国の競合規制当局は新しいアプローチを必要とする新たな課題に直面している。

そのため、競争・市場庁は世界をけん引して強大なテクノロジー企業と連携し、消費者の利益のためにこれら企業の行動を方向づけ、競争を保護する取り組みを進めている。

Googleから受け取った契約に同意した場合、これらの契約には法的拘束力が生じるため、デジタル市場での競争を促進し、ユーザーのプライバシーを保護しながら、広告を通じてオンライン上のパブリッシャーが売上を確保する権利を保護する助けとなるだろう。

Googleが契約内容を概説したブログ記事には「Consultation and collaboration(話し合いとコラボレーション)」「No data advantage for Google advertising products(Googleの広告製品にデータのアドバンテージはなし)」、そして「No self-preferencing(自社に対するひいきはなし)」という3つの大筋の副見出しが並んでいる。この記事の中で、Googleは競争・市場庁が契約に同意した場合はこれを「世界中で適用する」としており、英国の介入を顕著に示すことになる。

英国のEU離脱によって生じた少々意外な変化の1つは、世界のデジタル広告の規則に関して英国が主な決定を下す立場となった点だろう(欧州連合も大手プラットフォームの運営に関する新しい規則の制定に動いているが、プライバシーサンドボックスに対する競争・市場庁の介入に匹敵するほどの動きは、まだ欧州連合本部からは見られていない)。

Googleが英国の競争介入を世界的に適用するとした決定は、非常に興味深いものだ。もしかすると、競争・市場庁を世界の模範のように見せることで、当庁に提示内容を承諾してもらおうというごますり的な要素もあるのかもしれない。

同時に、ビジネスが求めるのは運営の確実さだ。Googleが(そこそこ)大きな英国市場で認められる規則を最終的にまとめられるのであれば、英国内の監督機関と共同で規則を策定し、それを世界中に展開する形となるため、これは将来他の規制当局が強制措置を取るような事態を回避する近道となる可能性がある。

そのため、Googleは今回の件について、アドテック事業をポストCookieの未来へ移行させる上での、よりスムーズな道のりと捉えているのかもしれない。もちろん、全面的な停止を命じられる事態を避けたいという思いもあるだろう(いや、どうだろうか?どちらの結果でも、Googleにはプラスとなるだろう)。

さらに広く見れば、テンポの速い英国の規制当局と連携することは、Googleにとって政治的なこう着状態やリスクを回避するための戦略とも考えられる。実際、他の市場ではデジタル規制に関する議論でこのような事態が見られているからだ(特に本拠地の米国では、巨大なテクノロジー企業を解体しようとする声が大きくなっている他、実際にGoogleは現在独占禁止法に基づく調査複数受けている)。

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Googleが求めているのは、規制当局の認可を受けた「準拠」のハンコをもらい、自社が築いた広告の帝国を解体する必要はないと証拠で示すことなのかもしれない(あるいは、プライバシー重視の変更を行ってはいけないと規制当局から命令を受けることかもしれない)。

Googleが提示した契約からは、巨大テクノロジー企業の力に立ち向かおうと最もスピーディーに動いた規制当局が、世界中のウェブユーザーに適用される基準と条件の定義づけを支援する立場となることが如実に表れている。少なくとも、より極端な介入が巨大テクノロジーになされない限りはそうだろう。

プライバシーサンドボックスとは

プライバシーサンドボックスは、(ユーザーのプライバシー面で最悪という見方の多い)現行の広告トラッキング手法を代替インフラストラクチャに置き換えるものとして提案されたインターロッキング技術の集合体だ。Googleはこれについて、個人のプライバシー保護の観点ではるかにすぐれていながら、アドテック業界やパブリッシング業界が(Google曰く、今までとほぼ同じように)ウェブユーザーのコーホート(オンラインで閲覧するコンテンツに基づいて「似た興味関心のボックス」別に分類)ごとにターゲティング広告を表示させることで、収益を生み出せるインフラストラクチャだという。

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本提案(これには、Googleが提案する、協調機械学習により生成されたコーホートに基づいた新しい広告IDのFLoCや、Turtledoveを拡張したGoogleの新しい広告提供テクノロジー、Fledgeなどが含まれている)の完全な詳細は、まだ確定されていない。

とはいえ、Googleは2020年1月の時点で、2年以内にサードパーティークッキーのサポートを終了するつもりであることを発表しているため、この厳しいタイムフレームが反対の声を呼び寄せたと思われる。アドテック業界や(いくつかの)パブリッシャーからは、業界レベルの広告ターゲティングが失われると広告の収益に甚大な被害が及ぶおそれがあるとして抵抗の声が上がっている。

競争・市場庁は、Googleが考案した新しいインフラストラクチャへの移行はGoogleの市場権力を増大させるものにすぎないと苦情が上がったことを踏まえ、Googleが計画しているトラッキングクッキーの廃止について調査を開始した。これらの苦情では、サードパーティーが広告ターゲティング用にインターネットユーザーを追跡できないようサードパーティーを締め出しておきながら、Googleは(消費者ウェブサービスを独占しているため)膨大なファーストパーティーデータにアクセスでき、オンラインでのユーザーの挙動を高レベルで把握できるという点が指摘された。

競争・市場庁が本日発表した通知書のエグゼクティブサマリーには、規制当局による適切な監督がない場合、プライバシーサンドボックスが以下の影響を生じさせる可能性があると懸念が示されている。

  • サードパーティーに対してユーザートラッキングに関連する機能を制限しながらもGoogle側の機能を保持することで、広告インベントリを提供する市場、さらには広告テクノロジーサービスを提供する市場の競争をゆがめる。
  • Google独自の広告製品やサービス、さらにはGoogleが所有および運用する広告インベントリをひいきすることで、競争をゆがめる。
  • 個人データをターゲティングや広告提供の目的でどのように用いるかという点で、クロームウェブの各ユーザーが幅広く選択する権利を拒否することで、Googleが持つ明らかに独占的な地位を不当に利用することを容認する。

一方、インターネットユーザーへの広告トラッキングやターゲティングに対するプライバシー面での懸念から、Googleは間違いなくクローム(当たり前だが、ウェブブラウザの市場シェアを独占している)を一新するよう圧力を受けている。他のウェブブラウザが何年もの間トラッカーをブロックするなどしてユーザーをオンライン監視の目から保護する取り組みを自発的にしていることも、この圧力の理由だ。

ウェブユーザーは、不快な広告を非常に嫌がる。彼らがこぞって広告ブロッカーを使うのもそのためだ。データにまつわる数えきれないほどの大スキャンダルも、プライバシーやセキュリティに関する認知度を高めてきた。その上、ヨーロッパをはじめとする国では、ここ数年の間にデジタルプライバシー規制が強化されたり、新たに導入されたりしている。つまり、広告事業がオンラインで行うアクションの「許容ライン」が変わってきているということだ。

しかし、ここでの主な問題は、プライバシーと競争規制がどのように互いに作用(あるいは衝突)するかという点だ。考えが足りず、切れ味の鈍い状態で競争介入が行われた場合、ウェブユーザーのプライバシー侵害を根本的に固定化させてしまうリスクはその顕著な例である。つまり、オンラインプライバシー規制の実施が緩やかな場合、インターネットユーザーに対して同意のない過剰な広告トラッキングやターゲティングを行う事業が利益を拡大する事態を許容することになり、本来の目的が失われてしまうということである。

禁止令発令の権力を振りかざす競争規制当局と、緩やかなプライバシー規制の実施というコンビネーションは、ウェブユーザーの権利を保護する上で理想的とは言えないだろう。

一方、この状況を楽観視するには注意が必要だ。

先月、競争・市場庁と英国個人情報保護監督機関(ICO)は共同声明を発表し、デジタル市場における競争とデータの保護の重要性について述べたが、ここで競争・市場庁によるGoogleプライバシーサンドボックスの調査が、きめ細かな共同作業を必要とするケースの好例として取り上げられているのだ。

共同声明の内容はこうだ。「競争・市場庁と英国個人情報保護監督機関は、Googleやその他の市場参入者と連携してGoogleの提案に関する共通理解を醸成するとともに、提案の詳細が明らかになる過程でプライバシーと競争に関する懸念を払拭できるよう徹底的に取り組む」。

英国個人情報保護監督機関が過去に権利を踏みにじるアドテックに対して実施した措置は、はっきりいうと存在しない。当機関がアドテック業界のロビー活動に対して規制の不履行を選ぶ傾向にあることを踏まえると、英国のプライバシーおよび競争を監督する規制当局が「共同作業」すると述べた事実は、ほんの小さな楽観的要素も打ち消す力があるだろう。

(対して競争・市場庁は英国のEU離脱後に今までより大きな調査権限を手にして以来、デジタル領域に関して非常に積極的に取り組んでいる。ここ数年の間にデジタル広告市場の競争実態が明らかになってきたこともあり、当庁が有する知識は膨大だ。また、当庁は競争重視の制度を監督する新たな機関の立ち上げも進めており、英国はこの機関を通じて大手テック企業の行動を制限する意思を明言している)

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Googleが同意した契約とは

競争・市場庁はGoogleがプライバシーサンドボックスについて「大規模かつ幅広い」契約を提示したとし、その一部として以下を開示している。

  • 競争のゆがみ、またクロームユーザーにとって不公平な規約の強制を回避する形で提案を策定し、実施する義務を負う。目標を確実に達成するため、これには提案の策定時に競争・市場庁と英国個人情報保護監督機関を関与させる義務が含まれる。
  • Googleが提案内容の実施を進める際には、その方法と時期、さらには評価の基準を公表することでGoogleの透明性を向上させる。これには、代替テクノロジーの有効性に関する試験結果を一般に開示する義務が含まれる。
  • サードパーティークッキーの削除後、Googleがデジタル広告の目的で使用または組み合わせる個人のユーザーデータの範囲を大幅に制限する。
  • Googleがサードパーティークッキーの代替となるテクノロジーを設計および運用する上で、競合他社に対し、自社の広告およびアドテック事業に有利になるような不公平な取り扱いをしてはならない。
  • Googleがサードパーティークッキーの削除に着手する際には、着手前の少なくとも60日間を休止期間とする。これは、顕著な懸念事項をGoogleが解消できなかった場合に競争・市場庁が調査を再開し、競争への悪影響を回避すべく、必要であればあらゆる暫定措置を課す機会を確保するためである。

Googleはこのようにも述べている。「この過程で、私たちは競争・市場庁や業界とオープンかつ建設的で継続的な対話を続けていきます。その一環として、競争・市場庁および広範なエコシステムに対し、プライバシーサンドボックス案の開発に関するタイムライン、変更、および試験について積極的に情報を共有し、今まで行ってきた透明性確保のアプローチを踏襲していきます」。

Googleの声明はこのように続く。「競争・市場庁が英国個人情報保護監督機関から直接意見を取り入れる過程で、Googleは競争・市場庁と協力し、新しい提案に関する懸念事項を解消するとともに、試験に用いる評価基準を共同で策定していきます」。

Googleの契約は、競争に直接関連する複数の領域を網羅している。自社へのひいきや、差別撤廃、さらにはサードパーティーと比較して自社のアドバンテージになる可能性のある特定のソースからはユーザーデータを組み合わせないといった規定だ。

一方、競争に関する検討事項の中にはプライバシーも明示的に織り込まれており、競争・市場庁はこれらの契約によって(私たち側に)以下が実現されると述べている。

Googleの提案を計画、実施、および評価する際に考慮に入れる基準を策定する。これは、プライバシーサンドボックス案に関する以下の影響を含めた基準とする。データ保護の原則と照らし合わせた際のプライバシー保護の実態とコンプライアンス。デジタル広告における競争と、とりわけGoogleとその他の市場参入者との競争のゆがみが生じるリスク。パブリッシャーが広告インベントリから収益を生み出す可能性。ユーザーエクスペリエンスとユーザーデータの使用に関する管理権。

英国個人情報保護監督機関の報道官はまた、競争・市場庁の介入を受けてGoogleから受け取った契約のうち、最初に受け取ったものの1つが「プライバシーおよびデータの保護に注力したもの」だったとしきりに述べている。

声明の中で、データ規制当局は次のように補足している。

私たちが受け取った契約は、プライバシーサンドボックス案の評価に際する重要な節目と言える。これらの契約からわかるのは、デジタル市場における消費者の権利を最もよい形で守るには競争とプライバシーの両分野を合わせて考慮する必要があるということだ。

競争・市場庁との最近の共同声明で概説したように、私たちは消費者のデータを合法的かつ責任を持って使用し、デジタルイノベーションと競争を促進することが消費者の利益になると確信している。私たちは引き続き競争・市場庁との建設的かつ密接な関係を強化し、提案を評価する過程で消費者の権益を確実に保護していく。

競争・市場庁の調査に関するこの進展は大小さまざまな疑問を呼んでいるが、そのほとんどは将来の主要ウェブインフラストラクチャについて、またGoogleと英国の規制機関との間でまとめられた変更事項が、世界中のインターネットユーザーにどのような影響を及ぼすのかという疑問だ。

ここでのカギとなる問題は、1つの巨大テクノロジー企業が消費者向けデジタルサービスとアドテックの両業界を複占していることで生じた市場権力の不均衡を修正する上で、監督機関との「共同策定」が本当に最適な方法なのかという点である。

また別の人は、Googleと消費者向けテクノロジーとGoogleのアドテックを解体する他権力乱用を修正する方法はない、それ以外の方法は非常に何もしないのと同じだ、というだろう。

例えばGoogleは、実施前の議論や微調整がいくらあったとしても、結局は変更事項の提案そのものを統括する立場にある。結局船を操縦しているのはGoogleのため、オープンウェブに関してこのような管理モデルを導入するのは許容できないと考える人は山ほど存在している。

しかし競争・市場庁は、せめて今のところはGoogleに全面的に任せたいようだ。

と同時に、注目すべきなのは英国政府と競争・市場庁がより広範な競争重視制度を打ち出そうと動いていることだ。これはGoogleやその他の巨大プラットフォームの今後の運営方法について、より大規模な調査の実施につながるかもしれない。さらなる調査の発生は、まず確実だろう。

とはいえ、今のところGoogleは英国の規制当局と協力状態にあることに喜んでいるようだ。Googleが思いのままに(あるいはしかたなく)細かな変更を重ね、監督機関の気を紛らわせることができるのなら、事業解体を命じられる(実際、競争・市場庁は以前解体に関する意見を募集している)よりも、Googleははるかに安心して状況を見渡せるだろう。

私たちは、Googleに対しプライバシーサンドボックス契約に関するいくつかの質問を提出した(更新:以下にいくつかの回答を記載)。

英国インターネット広告局(IAB)のCEOであるJon Mew(ジョン・ミュー)氏は、進展を受けて発表した声明の中で次のように述べている。

インターネット広告局は、サードパーティークッキーの段階廃止について、広告で賄われるウェブを根本的に改善する機会だと以前から明白に述べてきたため、今回一般的なユーザーIDソリューションすべてが遵守すべきと考える明確な原則を策定した。私は、プライバシーサンドボックスに関する競争・市場庁の調査、加えて競争に与えかねない影響の懸念事項を対処するためのGoogleの契約は、この過程において重要かつ価値のある動きと考える。

これらの契約により、幅広い業界がGoogleの提案について、競争とプライバシーの両面での方針を考慮に入れ、競争・市場庁による規制監督を経て策定されているとの確信を得ることができる。サードパーティークッキーの段階廃止はデジタル広告業界が経験してきた変化の中で最も重大なものであり、この分野における計画が適切な精査を受けるべきなのは当然である。

より広範囲な質問

私たちの質問を受け、Googleからいくつかの追加の背景情報を得ることができた。これらの補足では、Googleはプライバシーサンドボックスのいかなる「共同設計」の提案も拒否すること、そしてこの契約はあくまで競争・市場庁による監督と当庁との連携に関するものだとしている。とはいえ、これはGoogleの屁理屈に過ぎないかもしれない。

Googleはまた、提示した(設計および試験に関する)契約にはプライバシーサンドボックスで提案されているすべてのテクノロジーが記載されていることを認めている。つまり、これは明らかにトラッキングクッキーに限定された契約ではなく、それを置き換える(あるいは置き換えない)すべてのテクノロジーに適用されるということだ。

さらに、Googleはこの契約が正式に合意に至った場合、英国の競争・市場庁に対する契約を世界的に適用すると認めている。

競争・市場庁がトラッキングクッキーを廃止してはいけないと命令した場合、代替案はあるのか、あるいはそうした命令はそのままプライバシーサンドボックスの死を意味するのかという質問に対しては、Googleは明言を避けた。

しかしながら、Googleはプライバシーに関するユーザーの期待に応えなければウェブを危険にさらしてしまうと確信していること、そしてプライバシーサンドボックスプロジェクトの進行に向けて全力で取り組んでいくことを約束した他、競争・市場庁との連携が、移行計画に関する業界の懸念を和らげる助けとなることを願うと述べている。

また、競争・市場庁の議論の結果を待って作業を中断するのではなく、今後もプロジェクトの進行を続けていくとしている。

ただし、規制当局による介入によってプライバシーサンドボックスの本来の実装タイムラインに(遅延などの)変更が生じているかという質問に対しては、回答が拒否された。

プライバシーサンドボックスの管理モデルについて、またGoogleがウェブインフラストラクチャのこれほど核となる部分を再設計するのは公平かどうかという質問については、Googleはワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)などのフォーラムを通じ、業界と連携して進めていると主張した。

しかし、ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアムグループには、Googleの決定に影響を及ぼす力はない。そのため、実際にはGoogleがオンライン業界全体に適用される大規模な再設計を一方的に進めていながら「見せかけのコラボレーション」を行っているのではないかという懸念が一部で上がっているのだ。そして、英国の規制当局を提案の議論に引き込み、アウトリーチを広げる目的で連携を進めていながらも、提案と決定権を持っているのは結局のところGoogleである。

管理面については、独立した立場にあるプライバシーおよびサイバーセキュリティ研究員・コンサルタントのLukasz Olejnik(ルカス・オレイニク)博士(プライバシー保護システムの管理についての著書あり)からTechCrunchに次のような所見が寄せられた。「Googleは確かに最善を尽くしてコラボレーションを進め、さまざまな関係者からの意見を聞こうとしているようだ。例えば、ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアムグループの会場ではこのような場面が見られている。プライバシーサンドボックスに関する管理モデルがあるのかどうか、現時点でははっきりとは分からないが、私には存在しないように思われる。ここでの問題点は、契約の細かな点だ」。

「問題なのは、実装された変更や修正に関して同意する際のプロセスがなければならないという点だ。ふさわしい提案が出されたとして、それが本当に実装される保証はあるだろうか。また、提案に関する今後の維持管理や開発がどうなるのかも不透明だ。これを正当化していいのだろうか」。

「当然、Googleは自社のみが一方的に決定を下せるとは主張しない。その真偽についても、おそらく議論したくはないだろう。私が提案するのは、ユーザーやパブリッシャー、ユーザーエージェント、広告主、そしてプライバシーに関する専門家および研究員といった関係者から意見を受け付けたり、それを代表したりする準公式の管理構造だ。プライバシーを保護する広告システムの導入は今回が初めての試みとなるため、将来にも対応できるシステムにすることが重要だろう」。

他にも、TechCrunchはGoogleに対し、プライバシーサンドボックス案の広告配信について、そして提案されたアーキテクチャがどのようにユーザーのプライバシーを保護すると確信しているかについて伺った。

Googleからは詳しい回答は得られなかったが、トラッキングクッキーを使用した現行のシステム(個人レベルでのターゲティング)と比べ、タートルダヴ案ではプライバシー保護を強化できるとの示唆があった。タートルダヴでは、広告主が1つまたは複数の興味関心グループに基づいて広告を配信し、興味関心グループをユーザーのその他の情報とは組み合わせない仕組みとなっている。

また、この提案で述べられたフレッジはタートルダヴを基盤としており、信頼できるサードパーティーサーバーを導入することで、ブラウザ内に情報を保管することへの懸念に対応するとしている。

Googleは、プライバシーサンドボックスに関して競争・市場庁と協力する過程で、両方のテクノロジー提案の開発および試験についても積極的に連携していくとし、この過程で競争規制当局が英国個人情報保護監督機関から直接意見を取り入れることを補足した。つまり、繰り返しになるが、英国の規制当局は変更案が議論される際にはテーブルの最前列を確保できるということだ。

その上で、提示した契約が市場を安心させる大きな一歩であるとの確信が述べられている。

この「コラボレーション」がプライバシーサンドボックスの「競争重視」の面を促進しながらもユーザーのプライバシーを悪化させることになるのか、今後に注目だ。

そうなれば、競争・市場庁と英国個人情報保護監督機関が主張する(「プライバシーと競争に関する懸念を払拭」するための)共同作業は大きな失敗となってしまう。とはいえ、壮絶なロビー活動を行うアドテックの影響力を前に、ユーザーの権利が今までことごとくプライバシー規制当局に無視されてきたのは事実だ。

それでも、競争規制当局をこの議論に引き入れようとしていることから、アドテック企業は少なくとも主要な問題においては規制当局による措置を実行に移すかもしれない。ヨーロッパの他の地域では、プライバシーの侵害は競争の問題ともみなされている。どのような結末を望むのか、決定には注意が必要だ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:GoogleCookieイギリス競争・市場庁 / CMA広告プライバシー

画像クレジット:Tekke / Flickr under a CC BY-ND 2.0 license.

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

フェイスブックの広告データ利用について英国と欧州の規制当局が競争規則違反の疑いで調査開始

Facebook(フェイスブック)は、欧州で新たに2つの独占禁止法違反の調査を受けている。

英国の競争・市場庁(CMA)と欧州委員会は現地時間6月4日、ソーシャルメディアの巨人であるFacebookの事業に対する正式な調査開始を発表した。そのタイミングはおそらく協調して合わせたものと思われる。

英国と欧州の競争規制当局は、Facebookが広告顧客やSSO(シングルサインオン)ツールのユーザーから得たデータをどのように利用しているかを精査し、特にこのデータを、クラシファイド広告などの市場で、競合他社に対して不公正な手段として利用していないかどうかを調査する。

英国が欧州連合から離脱したことで、英国の競争監視当局は、EUが実施している反トラスト調査と類似または重複する可能性のある調査を、より自由に行うことができるようになった。

Facebookに対する2つの調査は、表面的には類似しているように見える。どちらも広告データをどのように利用しているかに大きく焦点を当てているからだ(とはいえ、調査の結果は異なるかもしれない)。

Facebookが恐れるのは、英国とEUの規制当局が、共同で調査を行ったり、調査結果を相互参照する機会を得て(いうまでもなく、英国とEUの機関間では多少の調査競争が行われる)、両者から規制措置が取られた結果、より高い次元の監視が同社のビジネスに適用されるようになることだ。

CMAは、Facebookがオンライン・クラシファイド広告やオンライン・デートのサービスを提供する上で、特定のデータの収集・使用を通じて競合他社よりも不当に有利な立場にないかということを調査しているという。

つまり、これらの同種のサービスを提供する競合他社に対し、Facebookが不当な優位性を得ているのではないかと懸念していると、英国の規制当局は述べている。

Facebookはもちろん、オンラインクラシファイド広告とオンラインデートの分野で、それぞれFacebook Marketplace(フェイスブック・マーケットプレイス)とFacebook Dating(フェイスブック・デーティング)というサービスを展開して収益を上げている。

CMAのCEOを務めるAndrea Coscelli(アンドレア・コシェリ)氏は、今回の措置に関する声明の中で次のように述べている。「私たちは、Facebookのデータ利用を徹底的に調査し、同社のビジネスのやり方がオンライン・デートやクラシファイド広告の分野で不当な優位性を築いていないかを見極めるつもりです。そのような優位性は、新規事業や小規模事業を含む競合企業の成功を阻むものであり、顧客の選択肢を狭める可能性があります」。

欧州委員会の調査も同様に、Facebookが事業を展開している市場で、広告主から収集した広告データを利用して広告主と競合し、EUの競争規則に違反していないかということに焦点を当てている。

ただし、調査の対象となる市場で特に懸念される例として、欧州委員会はクラシファイド広告のみを挙げている。

EUの調査にはもう1つの要素がある。それは、Facebookが同社のオンライン・クラシファイド広告サービスをソーシャルネットワークに結びつけることが、EUの競争規則に違反していないかを調べることだ。

これとは別の(国による)動きとして、ドイツの競争当局は2020年末、FacebookがOculus(オキュラス)とFacebookアカウントの使用を結びつけていることについて、同様の調査を開始した。このようにFacebookは、米国で2020年12月に提起された大規模な独占禁止法違反の訴訟に加え、欧州でも複数の独占禁止法違反の調査を受けており、各地で苦しい立場に置かれている。

関連記事:Facebookが全米46州からの大型反トラスト訴訟に直面

欧州委員会は「Facebookとも直接競合する企業が、Facebookでサービスを宣伝する際に、商業的に価値のあるデータを同社に提供する場合があります。Facebookはデータを提供した企業と競合するために、そのデータを利用している可能性があります」と、プレスリリースで指摘した。

「これは特に、オンラインクラシファイド広告プロバイダーに当てはまります。多くの欧州の消費者が商品を売買するプラットフォームであるオンラインクラシファイド広告プロバイダーは、Facebookのソーシャルネットワーク上で自社のサービスを宣伝していますが、同時にこれらの業者は、Facebook独自のオンラインクラシファイド広告サービスである『Facebook Marketplace』と競合しています」。

欧州委員会は、すでに実施した予備調査で、Facebookがオンラインクラシファイド広告サービスの市場を歪めている懸念が生じていると付け加えた。委員会は今後、このソーシャルメディアの巨人がEUの競争規則に違反しているかどうかを完全に判断するため、より踏み込んだ調査を行うことになる。

欧州委員会の競争政策で責任者を務めるEVPのMargrethe Vestager(マルグレーテ・ベステアー)氏は、声明の中で次のように述べている。「Facebookは、毎月30億人近くの人々に利用されており、700万社近くの企業がFacebookに広告を出しています。Facebookは、そのソーシャルネットワークのユーザーや閲覧者の活動に関する膨大なデータを収集することができ、それによって特定の顧客グループをターゲットにすることが可能です。私たちは、特に人々が毎日商品を売買し、Facebookがデータを収集している企業とも競合しているオンライン・クラシファイド広告の分野で、このデータがFacebookに不当な競争上の優位性を与えているかどうかを詳細に調査していきます。現代のデジタル経済において、データを使用して競争を歪めることは、許されるべきではありません」。

今回の欧州の独占禁止法に関する調査についてコメントを求められたFacebookは、次のような声明を発表した。

当社は、Facebookを利用する人々の進化する需要に応えるために、常により良いサービスを開発しています。MarketplaceとDatingは、人々により多くの選択肢を提供し、どちらも多くの大手既存企業が存在する競争の激しい環境で運営されています。我々は調査に全面的に協力し、この調査が無意味であることを証明していきます。

これまで(特に) Google(グーグル)やAmazon(アマゾン)のような他の巨大テック企業に対して複数の調査と取締りを行ってきた欧州委員会の競争当局にとって、Facebookはちょっとした盲点だった。

しかし、ベステアー氏のFacebookに対する看過は、これで正式に終了した(Facebook Marketplaceに対するEUの非公式調査は、2019年3月から続いていた)。

一方、英国のCMAは、アドテック複占の翼を切り落とすという計画に基づき、FacebookやGoogleなどの巨大テック企業に真っ向から狙いを定めた、より広範な競争促進規制の改革に取り組んでいる。

関連記事:英国でテック大企業を監視する新部署「DMU」発足、デジタル分野の競争を促進

カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookSNS広告英国欧州EU独占禁止法CMA欧州委員会

画像クレジット:Adam Berry / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NVIDIAのArm買収に国家安全保障上の懸念を理由に英国政府が介入

英国政府は半導体メーカーのNVIDIAによるArm Holdings買収計画に介入し、公益のための監視を始動した。

デジタル・文化・メディア・スポーツ省のOliver Dowden(オリバー・ダウデン)大臣は英国時間4月19日、政府は半導体に関わる契約のあらゆる安全保障問題を調査する意向であると語った

NVIDIA(エヌビディア)による英国企業Arm(アーム)の400億ドル(約4兆3330億円)での買収は2020年9月に発表されたが、未だに規制当局の承認が得られていない。

英国競争・市場庁(CMA)は2021年1月にこの買収提案の調査を開始した。

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NVIDIAの計画に対する国内の反対はすばやく、Armの共同ファウンダーの1人は「Save Arm(Armを救え)」キャンペーンを2020年9月に立ち上げた。そのHermann Hauser(ハーマン・ハウザー)氏は、米国企業によるArmの買収は、米国の利害関係に対する同社の独立性を失わせ、貿易における最も重要な兵器を手放すことで英国の経済主権を脅かすものだと警告した。

関連記事:Arm共同創業者が4.2兆円でのNVIDIAからの買収に反対、独立性確保のため「Save Arm」キャンペーンを開始

デジタル・文化・メディア・スポーツ省による介入(2002年企業法が発効した規制力を使ったもの)は、競争規制当局がフェーズ1捜査を開始するよう指示されたことを意味している。

CMAには7月30日までに大臣に報告しなければならない期限がある。

ダウデン氏は声明で次のように語った。「ARM買収の提案を慎重に検討した結果、本日、国家安全保障を理由に介入命令を発行しました。次の段階として私が関連情報を集めるために、英国の競争・市場庁は、本買収から予測される結果報告を準備中であり、今後の判断に役立てます」。

「私たちは繁栄している英国テック業界を支援し、海外からの投資を歓迎したいと考えていますが、このような取引の招く国家安全保障上の懸念については、慎重に考慮することが適切です」と同氏は付け加えた。

CMAのフェーズ1捜査が完了すると、ダウデン氏には契約を承認する選択肢が生じる。即ち、国家安全保障および競争上の問題が見つからなかった場合、あるいは、指摘された問題の改善を条件に承認するかだ。

ダウデン氏は、さらに捜査を進めるために、CMAに詳細なフェーズ2捜査の実施を命令することもできる。

フェーズ1報告書が提出された後、大臣が次の段階の決定を下すまでの期間は決められていない。ただし、DCMSは「当然実用的」に不確定要素が減り次第、決定は下されるとしている。

ダウデン氏の介入は国家安全保障の理由で実施されているが、NVIDIAのArm買収については、別の懸念も取り沙汰されている。具体的には、英国の雇用およびArmのオープンライセンシングモデルに関してだ。

2020年NVIDIAはこれらの問題を解決するために、Armのライセンシングモデルの維持と英国ケンブリッジのArm事業所の拡張を約束し、英国キャンパスに「新しい卓越したAI研究の世帯的研究拠点」を作ると語った。

しかし、NVIDIA傘下のArmが英国の経済主権に与える結果に対する懸念を和らげるために、どのような商業的譲歩が提案されるのかは想像がつかない。なぜならこれは政治的リスクであり、和らげるためには政治的な、例えば、条約レベルの解決方法が必要になるからだ。それは、NVIDIAの力だけではどうにもならないものだ。

国家安全保障の懸念は、半導体設計や次世代ネットワークのような最先端インフラストラクチャーを供給するテック企業にとって、増大する事業リスクだ。競争が比較的少ない分野では、市場の選択が制限されるだけでなく、政治的思惑を助長させる。

数々の買収提案は、政治経済的情勢の急変を呼ぶ市場統合の引き金だ。

しかし、テック企業の事業は、国家安全保障の名のもとにますます圧迫を受けている。たとえばここ数年、米国政府によるHuaweiなどの中国拠点5Gインフラ供給会社に対する攻撃で、トランプ元大統領は同社による次世代ネットワークの提供を、米国からだけでなく、西側同盟国の国内ネットワークからも追放しようとした。

最近(地理)の政治的圧力は、主要インフラストラクチャー企業だけが標的ではない。トランプ氏は国家安全保障を理由に中国製ソーシャルネットワークのTikTokを揺さぶり落とそうとした。これは、いかにテックツールが地政学的権力に利用され、各国の経済・政治の私欲に後押しされているかを示す好例だ。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:NVIDIAArm HoldingsイギリスCMA

画像クレジット:Chris Ratcliffe/Bloomberg

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

フェイスブックが偽レビューを売買する1万6000のグループを削除、英当局の調査を受けて

英国の競争・市場庁(CMA)の新たな介入を受けて、Facebook(フェイスブック)は同社のプラットフォームで偽のレビューを売買していた1万6000のグループを削除した、とCMAが現地時間4月9日明らかにした。

CMAは2018年にこの問題の調査を開始して以来、偽レビューを売るマーケットプレイスを拡大する場所として同プラットフォームが使われるのを防ぐようFacebookに求めてきた。2019年には偽レビューのセラーに対して行動を取るようeBayとFacebookに圧力をかけている

Facebookが所有するInstagramもまた偽レビュー売買のハブとなっていたことが判明し、当局からさらに圧力をかけられた両社は2020年、狡猾な取引に一層取り組むことを約束した。

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CMAによる直近の介入は2020年のものよりもかなりのものだったようだ。Facebookは前回、188のグループを削除し、ユーザー24人のアカウントを使えないようにした。ただし、Facebookが桁違いの数のグループを削除した今回、いくつのアカウントを禁止そして(あるいは)一時停止としたのかは明らかではない(TechCrunchは問い合わせている)。

【更新】規制当局はミスリードするレビュー、あるいは偽のレビューを取引する個人よりグループの除外に注力しているとTechCrunchは理解している。禁止あるいは一時停止となったユーザーは新しいプロフィールを作成できるが、偽レビューを扱うグループの排除はそうした活動の抑制により効果的な方法だとみられているためだ。

FacebookにはTechCrunchから質問を送ったが、同社は質問にまともに答えず、以下のような声明を送ってきた。

当社はこの問題を解決するために広範囲にわたってCMAと取り組んできました。偽レビューの提供や取引を含め、詐欺や不正行為は当社のプラットフォームでは許されません。当社の安全・セキュリティのチームはこうした行為の防止に引き続き取り組んでいます。

CMAが偽レビュー取引の問題を提起して以来、Facebookはプラットフォーム上で展開されているそうした行為の一掃に十分に取り組んでいないと繰り返し批判されてきた

規制当局は本日、Facebookが「以前の約束を果たすためにプラットフォーム上の偽レビューあるいはミスリードレビューの取引を特定、排除、そして予防する」のに使っているシステムにさらに変更を加えたと述べた。

Facebookが偽レビューの取引に対する取り組みを強化するのになぜ1年以上も、そして注目を浴びる介入を何回も要したのかは不明だ。しかし同社は、新型コロナウイルスパンデミックとそれによる影響(在宅勤務など)でこの問題に取り組むのに利用できるリソースに負荷がかかっていていた、と示唆した(Facebookの年間売上高は2020年に増加したが、経費も同様だった)。

CMAによると、Facebookが偽レビュー対策でシステムに加えた変更には以下のものが含まれる。

  • 偽レビューあるいはミスリードレビューを宣伝、促進、保持するFacebookグループやInstagramプロフィールを繰り返し作るユーザーの使用を一時停止あるいは禁止する
  • 偽レビューのコンテンツの検知・削除を向上させる新たな自動プロセスを導入する
  • FacebookとInstagram上の偽レビューやミスリードレビューのグループやプロフィールを探すための検索ツールを使用しづらくする
  • こうした変更が継続して効果を上げ、再発を防いでいることを確認する専用のプロセスを設ける

そしてまたもや、Facebookがなぜ繰り返し不正行為を行っているユーザーを一時停止にしたり禁止したりしてこなかったのかは不明だ。少なくとも、最低限のことで逃げ切るということでなければ、本当に問題を解決するために実際に誠実な行動を取っていなかったかのようだ。

声明文でのコメントで、CMAのCEOであるAndrea Coscelli(アンドリア・コシェリ)氏は次のように述べて本質的な問題を指摘した。「Facebookはプラットフォーム上のそうしたコンテンツの取引を停止するためにできるあらゆることを行う義務があります、我々が再度調査した後、同社は大きな変更を加えました。しかしこうした問題を解決するために1年以上も要したのは残念です」。

「我々は今後もInstagramも含め、Facebookを注視し続けます。同社が約束を果たしていないことが認められた場合、躊躇せずさらなる行動を取ります」とコシェリ氏は付け加えた。

偽レビューを取引している英国のグループをFacebookのプラットフォームで検索すると、2019年2020年にTechCrunchが同様にチェックしたときよりも明らかに疑わしい検索結果は減っているようだ。ただし検索結果には数多くのプライベートグループが含まれていて、どのコンテンツがメンバーからの勧誘なのか、すぐには確かめられなかった。

TechCrunchはまた、フランスやスペインのような他の欧州マーケット向けのAmazonレビューを提供している数多くのFacebookグループも発見した(とあるグループはAmazon Spainをターゲットとし、レビューに対しPayPalで「料金」を提供する人物をTechCrunchは発見した)。こうしたことからするに、Facebookは英国よりも当局からの介入が少ないマーケットのユーザーによって取引されている偽レビューの対策には英国と同じレベルの注意を払っていないようだ。

スクリーンショット:TechCrunch

カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookCMA / 英競争・市場庁イギリスSNS

画像クレジット:Adam Berry / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

英国でテック大企業を監視する新部署「DMU」発足、デジタル分野の競争を促進

競争がオンラインを健全なものにし、そしてデジタルサービスを利用する消費者が自身のデータに関してより多くの選択肢とコントロールを持てるようにするために、デジタル部門で最も力を持つ企業を規制するというタスクを担う新しい英国の公的機関が現地時間4月7日、発足した。

デジタルマーケットパワーの集中に関する懸念についての数多くのマーケットレビュー研究を受け、2020年11月発表されていたDigital Markets Unit(DMU)はまだ法的権限を持っていないが、英政府は新たな「競争促進体制」のデザインを2021年協議し、議会が承認し次第、DMUに法的権限を持たせる法律を制定すると述べていた。

アドテック大企業Facebook(フェイスブック)とGoogle(グーグル)のマーケットパワーに関する懸念が規制整備へと駆り立てている主な要因だ。

最初の取り組みとしてDMUは、デジタルプラットフォームと、広告でそうしたプラットフォームに頼っている中小企業のようなサードパーティーの間の関係を管理するのに行動規範が役立つかどうかを、将来のデジタル立法に組み込むために調べる。

強力なオンライン監視者の役割はまた、EUの議員たちのターゲットにもなっている。EUの議員たちは、プラットフォーム大企業とそうしたプラットフォーム企業の規約の下で事業を展開している中小企業の間での取引を確実に公正なものにする規制フレームワークを作成することを目的とする法制化を2020年末に提案した

英政府は4月7日、DMUがさまざまなデジタルマーケットにわたるプラットフォームの役割を調べるのに、競争を促すという視点でセクター中立のアプローチを取ると述べた。

DMUは、通信監視機関のOfcomと連携するよう求められてきた。2021年制定される予定の法律(現在Online Safety Billと呼ばれている)の下でソーシャルメディアプラットフォームを規制すべく、英政府は2020年Ofcomにその任務を課した。

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間近に迫った法制化は、いじめからヘイトスピーチ、児童の性的虐待、他のスピーチ関連問題(多くの論争、そしてプライバシーとセキュリティに関連する特定の懸念を巻き起こしているもの)に至るまで、消費者に影響を及ぼすかなり広範のオンライン害を規制しようとしている。その一方で、DMUのフォーカスは事業のインパクトと、デジタルマーケットにおける競争に影響を及ぼし得る消費者コントロールだ。

最初に取り組む業務の一環として、法律体系がプラットフォームとメディアのようなコンテンツプロバイダーの間の関係をどのように管理するかを特に調べるために、デジタル国務長官がDMUにOfcomと連携を取るよう求めた、と政府は述べた。「可能な限りプラットフォームとコンテンツプロバイダーの関係が公正で、合理的なものであるようにすることが含まれる」とプレスリリースにはある。

これはDMUがオーストラリアで議会を通過した最近の法案をかなり参考にしていることを示している。この法律では報道機関のコンテンツを再利用するのに料金を支払うための交渉をプラットフォームに義務付けている。

DMUを抱える英国の競争・市場庁(CMA)は2021年初め、テック大企業と報道機関の料金交渉が合意に至らない場合のために強制仲裁という砦を持つというオーストラリアのアプローチは「賢明だ」とBBCに語っている

DMUはまた、現在数多くのテック大企業の調査を行っているCMAの監視部署と緊密に連携を取る。展開されている調査には、Apple(アップル)とGoogle(グーグル)に対する苦情の検討、そしてFacebook(フェイスブック)のGiphy買収の徹底的な調査が含まれる。

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英国の独禁監視当局がフェイスブックのGIPHY買収を調査中

DMUが緊密に連携をとると政府がいう他の規制当局には、データ保護監視当局(ICO)と金融行動監視機構(FCA)が含まれる。

また、デジタル競争が本質的に自然とグローバルなものになっていることから、DMUは国際パートナーとの調整も取ると政府は述べた。そして、2国間の取り組みを通じて、そしてG7議長国として英国のアプローチをすでに協議していると付け加えた。

「デジタル国務長官は、より良い情報共有、規制と政策のアプローチの協調に関する調整について合意形成を模索していて、デジタルとテックの大臣のミーティングを4月に開催します」とも述べた。

DMUはWill Hayter(ウィル・ハイター)氏が統括する。同氏は、Brexitトランジッション政策に取り組んでいるCabinet Officeでの任務に続き、2021年5月初めに暫定責任者のポストに就任する。規制政策でさまざまな役割を果たしてきた同氏は以前CMUとOfcomでも数年働いていた。

カテゴリー:その他
タグ:イギリス競争・市場庁OfcomDMU

画像クレジット:Feodora Chiosea / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

英国の独禁監視当局がフェイスブックのGIPHY買収を調査中

GIFの流動性に対する潜在的な脅威が英国の競争監視当局を悩ませ続けている。

2020年発表された、Facebook(フェイスブック)の4億ドル(約443億円)でのGIPHY(ジフィー)買収は現在、デジタル広告に関連する競争上の懸念があるとしてCMA(英国競争・市場庁)の徹底的な調査を受けている。CMAは調査して9月15日までに報告書をまとめる。

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当局は2020年夏この買収案件について調査に乗り出し、2021年になってもその調査は続いた。そして先週、CMAは(すでに完了した)FacebookとGIPHYの買収は、Facebookがすでに主要プレイヤーであるデジタル広告マーケットにおける競争をさらに抑制しうると述べ、懸念を示した(Facebookはディスプレイ広告マーケットで50%超のシェアを握っている)。

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当局は、買収の前にGIPHYが自社のデジタル広告提携を英国を含め他国に拡大する計画だったという証拠を見つけた、と述べた。

「もしGIPHYとFacebookが合併したままだったら、GIPHYはデジタル広告を拡大するインセンティブをさほど持たず、ひいてはこのマーケットにおける潜在的な競争の逸失につながる」との考えを文書で示した。

CMAはまた、ソーシャルメディアのライバルに害をもたらし得るFacebook所有のGIPHYが、他社へのアニメーションピクセルの供給を搾る、あるいはライバルにそれまでよりも悪条件でのサインアップ(ライバルにユーザーデータの提出を求めてそれらを広告ターゲティングエンジンに使い、さらにマーケットパワーを得るなど)を求めるテック大企業になることが懸念されると述べた。

現実感3月25日にGIPHYとFacebookは懸念を解消するため5日の猶予が当局から与えられた。懸念を和らげるための法的拘束力のある提案の提出だ。

綿密な調査を行う「第2段階」は、当局に受け入れられる譲歩がなされていたら回避できていただろう。しかし明らかにそうではなく、CMAは4月1日、第2段階の委託を発表した。最後の通知から作業日5日経って発表されたことから、譲歩はなかったようだ。

TechCrunchはFacebookとCMAにコメントを求めた。

Facebookの広報担当は次のように述べた。「当社は引き続きCMAの調査に全面的に協力します。この合併は競争にとって良いものであり、デベロッパーからサービスプロバイダー、コンテンツクリエイターに至るまで、GIPHYや当社のサービスを使う英国のすべての人の利益にかなうものです」。

FacebookはすでにGIPHYの買収を完了した一方で、CMAの調査によってFacebookが自社のビジネスにGIPHYを深く統合する作業は凍結が続いている。

とはいえ、Facebookのデジタル広告分野における独占的な立場を考えると、プロダクトイノベーションを通じてすばやく動くビジネスの必要性は過去数年よりもはるかに差し迫っている。過去においては、当局の干渉なしに市場での優位性を構築していた。

近年、CMAはデジタル広告マーケットに細心の注意を払ってきた。2019年には広告テックを独占しているGoogle(グーグル)とFacebookのパワーに関して重大な懸念を報告した。だが最終レポートの中でCMAは、マーケットパワーの不均衡そのものを解決するために介入するより、政府の法律制定を待つと述べた。

英国は現在、デジタルマーケットでみられる「勝者がすべてを得る」の力学に対する懸念への対応として、テック大企業に的を絞った競争促進の規制を専門とする機関を立ち上げる過程にある。設置されるDigital Market Unitは「数年内に新たなコンプライアンス要件を課されるインターネットプラットフォームのための「競争促進」体制を監督する。

一方、CMAは引き続きテック企業の取引や戦略の変更などを精査する。ここには、他の業者からの苦情を受けてこのほど調査を開始したGoogleのChromeでのサードパーティのCookieに対するサポート打ち切り計画も含まれる。

またCMAは2021年1月にUber(ウーバー)のAutocab(オートキャブ)買収計画も調査していると発表した。しかし3月29日に、両社の間にあるのは「限定間接」の競争だけで、Autocabが将来Uberにとってかなりの、そしてより直接的な競合相手になる可能性が高いことを示す証拠は見つからなかったとして買収取引を認めた。

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CMAはまた、AutocabとUberがタクシー会社に販売する予約と配車のソフトウェアの質を下げることで、Autocabの顧客であるタクシー会社を不利な状況に置こうとしているかどうかも考慮した。しかし第1段階の調査で、もしUberがそうした措置を取っても、タクシー企業は他の信頼できるソフトウェアサプライヤーと委託ネットワークに切り替えられることが明らかになり、これが買収取引を認めることにつながった。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookGIPHYイギリス買収独占禁止法CMA

画像クレジット:Muhammed Selim Korkutata/Anadolu Agency / Getty Images(Image has been modified

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi