米国下院議会が遠隔投票を承認、ただし技術は未定

米国下院議会は、米国時間5月15日に新型コロナウイルスのパンデミックに対応するための下院965号決議が採択されたことで、その歴史上で初めての遠隔投票が可能になった。

マサチューセッツ選出のJim McGovern(ジム・マクガバン)下院議員が提出したこの議案は、社会が正常に戻るまでの45日間、議員による代理投票と委員会への遠隔参加を認めるというものだ。

下院決議965号はまた、国会議事堂の外からのデジタル投票を超党派で研究する仕組みを確立することにより、米国議会の運用方法を恒久的に変える可能性もある。

その指示によれば「下院管理委員会の議長は、野党幹部と協議の上、下院議会での遠隔投票を可能にする技術の有効性について調査し、下院議会での遠隔投票に使用できる実施可能で安全性が保証された既存技術を決定した後、下院に対して証明しなければならない」とされている。

これまでの下院の規定では、本人の直接投票のみが認められていた。上院議会では、いまだに声による「賛成」と「反対」を集計用紙に記録している

5月15日の議会の同意は、新型コロナウイルス(COVID-19)が米国中のあらゆる組織に対して、主にデジタルツールを駆使して長年の慣習を改めるよう迫っていることのひとつの表れだ。

下院決議965号が求める短期と長期のそれぞれの対応に、下院議会がどのような技術を導入するのか、詳細はまだ不透明だ。

この代理投票の合意により、下院議員は指名された議事堂内の代理人を通じて遠隔投票できるようになる。つまり事実上の議会の代打だ。公聴会の遠隔参加においては、Google MeetやMicrosoft Teamsといったいくつかのオプションが選択できる。先週、上院議会で証言を行ったAnthony Fauci(アンソニー・ファウチ)博士はZoomを使用した。

長期的な遠隔投票の手段については、下院運営委員会の議長Zoe Lofgren(ゾーイ・ロフグレン)氏(民主党カリフォルニア州選出)と、下院決議965号に反対票を入れた野党Rodney Davis(ロドニー・デイビス)氏(共和党イリノイ州選出)に委ねられている。

ロフグレン氏は5月15日の下院決議965号を支持する声明で、それがどのようなシステムになるかを、こう説明している。「議場での投票では、議員主導の遠隔管理による承認を組み合わせた安全性が保証された電子メールシステムを信頼することになります。このシステムでは、代理投票用として安全性が保証された電子メールを使用します。つまり、サイバーセキュリティーの観点からよく理解されていて、非常に低い帯域幅に対応した、堅実で、既知の、回復力のある技術です」。

もちろんその前に、ロフグレン氏と共和党下院議員デイビス氏は、ほぼすべての案件で両党が対立している今の状況下で合意を得なければならない。下院決議965号の採決は、党によってくっきり割れた。民主党議員の217名は賛成票を投じたが、共和党議員は誰ひとりとしてこの議案を支持しなかった。

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これまで下院議会は、遠隔投票を求める声に抵抗してきた。911事件の後、そして2001年の炭疽菌攻撃の後にも、同様の対策が必要だとの議論があった。だがそれは有権者の代表として議会で実際に投票する姿を見てもらいたいという、昔からの願望によって掻き消されてしまった。

この2カ月間で下院議会は、国中がテクノロジーを利用した対策で遠隔化が進む中、人と人が直接面と向かう米国最後の職場となりそうだ。

3月に新型コロナウイルスが米国を襲った直後、下院議員Eric Swalwell(エリック・スウォルウェル)氏(民主党カリフォルニア州選出)は、アーカンソー州選出の共和党下院議員Rick Crawford(リック・クロフォード)氏と共同で、特別な状況化で議員が公聴会に遠隔参加し投票できるようにする決議案を提出したことがある。

画像クレジット:Bill Dickinson / Getty Images

だがそれは、その当時、議会をそのまま存続させ、初めての新型コロナウイルス景気刺激法案を通すために議員の出席を望んでいた下院議長Nancy Pelosi(ナンシー・ペロシ)氏によって拒否されてしまった。

それから2カ月、200名のアメリカ人の命が失われてようやく、下院議会で最も重要な手続きに、その231年の歴史で初めて変革をもたらす影響力が新型コロナウイルスにあることがわかってきた。

人による直接投票は、間もなく2段認証のデジタル投票に置き換えられそうだ。それは、各地を回って有権者と話をし、ワシントンD.C.と地元との間に時間を割いてきた政治家の長年の慣習を変えることになるだろう。

画像クレジット:Brendan Hoffman / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

Twitter、2018年米国中間選挙の候補者に専用ラベルを付与

2018年の米国中間選挙を前に、Twitterはそのカオス的プラットフォームで誤情報が広まるのを防ぐべく、ビジュアルな対策を講じる。先週同社は、立候補者のプロフィールに「選挙ラベル」を付与することをブログで発表した。

「Twitterは、有権者が正確な情報や資料、最新ニュース、選挙候補者、当選者などを探すために最初に訪れる場所になった。われわれはこの責任を重く受け止め、Twitterを利用する人々が一次資料や信頼できる情報を見分ける方法を新たに開発している」と発表文で語った。

ラベルには政府庁舎の小さなアイコンと、候補者が目指す役職、出馬する州や地域を表すテキストからなる。ラベル情報はツイートがサイト外に埋め込まれた際にも表示される。

このラベルは5月30日から表示が開始され、州知事、上院、および下院の候補者が対象になる。

Twitterは、超党派非営利団体であるBallotpediaと協力して候補者ラベルを作成する。Ballotpediaは今回の提携を発表した声明で、プロセスを説明している

Ballotpediaは米国の人口上位100都市および全米、州規模で今後実施される全選挙(法案投票を含む)の候補者を対象としている。各州の予備選挙後、BallotpediaはTwitterに、11月の候補者名簿に載る知事および議員の候補者情報を提供する。Twitterは各候補者の同意を得た後、それぞれのプロフィールにラベルを付与する。

候補者情報の正当性を検証する専用プロセスを開発したことはTwitterが正しい道へと進む第一歩だ。2016年米国大統領選挙における海外からの偽情報流布の発覚が取り沙汰される中、2018年に失敗を繰り返さないためにTwitterやFacebookは断固とした行動が必要だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook