バイオテックの実験を自動化する安上がりなロボットを作ったOpenTrons、生命科学のためのPCを自称する

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ロボットを作っているOpenTronsが、ウェットラボの実験を迅速かつ安上がりに行えて、自動化もできる、と称する装置を考案した。

ライフサイエンス(生命科学)の研究は、今でもその多くが手作業で行われている。OpenTronsはその、往々にしてかったるい過程を、ロボットとソフトウェアの組み合わせで減らそうとしている。

“要するに生物学者という人種は毎日々々、小さなガラス瓶から別のガラス瓶へ少量の液体を移すことが仕事さ。それを、手に持った小さなピペットでやる人もいれば、10万ドルもするロボットを使う人もいる。うちのは、3000ドルのロボットだ”、とOpenTronsの協同ファウンダーWill Canineが説明する。

Canineによれば、これまでの高価なマシンは、コンピュータに譬えれば‘メインフレームマシン’だ。でもその後コンピュータの世界には安価なPCが登場した。彼は、自分たちのマシンが生物学自動化実験装置のPCである、と信じている。

昔の高価なマシンは、専門の技術者がつきっきりで動かす必要があったが、Canine曰くOpenTronsは“ツールを民主化”し、プロトコルの共有化を可能にする。彼らの3000ドルのマシンはWebブラウザーからコントロールでき、ユーザーである研究者はプロトコルをクラウドからダウンロードして実験を行える。もはや、専門の技術者が最初にコードを作らなくてもよい。

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Canineが挙げるユースケースの中には、作物を生命工学でなんとかしたい、と考えている農家や、自分ちのガレージで新しいスーパー素材を開発している科学者などがいる。“これからは、こういう人たちのためのツールを作っていきたいんだ”、と彼は語る。

彼らと同じくY Combinator出身のTranscripticは、パロアルトでバイオテックのラボをクラウドサービスとして提供している。そこは主に、ロボットを使って実験的な薬の試験をしている。Canineによれば、同社はコンペティターというよりもむしろパートナーだ。“うちはPC、彼らはクラウドだ”、と彼は言う。

“Transcripticみたいなアウトソースするラボも含めて、ラボサービスやツールにとって難関は標本の入手だ。だからラボのソフトウェアをAmazon Web Servicesにデプロイするときみたいに、OpenTronsを使えば、標本をTranscripticのクラウドラボに送ることができる”。

OpenTronsは中国で行われたHaxclr8trでローンチし、2014年にはKickstarterで成功した。そのときの製品は、大腸菌にDNAを挿入するマシンだった。今ではOpenTronsのロボットは50種以上あり、個人のラボや大学などで活躍している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

唯一のハードウェアアクセラレータを自称するHaxlr8rがHaxに改名、卒業生たちの販売流通体制のための新事業を開始

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これまでHaxlr8rは、アイデアやプロトタイプ段階のハードウェアスタートアップがプロダクトの実際の製造に漕ぎ着けるまでの過程を支援してきたが、でも、製品が実際に完成してから、そのあとはどうするのだ? やっと物を作れるようになった企業は、今度は製品の販売や流通のための方法が必要だ。

そこでHaxlr8rは、社名をもっと分かりやすい覚えやすい”Hax”に改め、すでに製品が完成しているハードウェアスタートアップの、マーケティングと流通という厄介な問題の解決を支援する、新しい事業を立ち上げた。それはHax Boostと名づけた新しいアクセラレータで、9月に事業を開始し、ハードウェアスタートアップによる流通チャネルや小売パートナーの発見と開拓を支援する。

Hax Boostの6週間の特訓プログラムでハードウェアスタートアップは、流通チャネルの開拓や、サプライ・チェーンとロジスティクスの最適化、営業部門の作り方育て方、小売パートナーや流通企業とのコネの作り方、などを勉強する。多くのアクセラレータと同様に、その間、企業としての通常の操業時間もあり、またメンターたちから指導を受ける時間もある。今回のそれは、流通戦略とその改善について教えてくれる先生たちだ。

6週間はアクセラレータの事業期間としては短いが、ほとんどの企業が、その期間が終わったあとも指導やアドバイスを受けることになる。Hax Boostは全過程を終了した企業の持ち分の2%を取る。9月から始まる最初の‘学期’の受け付けは、7月11日が締め切りだ。

Hax Boostはサンフランシスコで‘開校’するが、従来どおりのハードウェアアクセラレータはHax Acceleratorと名を改めて継続する。こちらは、7月学期の申し込み受付が5月23日までだ。

また、〜Boostを‘卒業’したハードウェアスタートアップには、最大で20万ドルの開業資金が提供される。ただし資金の提供は、次の学期からだそうだ。

以上の発表が行われた翌日である今日(米国時間5/11)は、同社のデモデーが行われる。そこにどんなプロダクトが登場するか、詳しくはまた別の記事でご報告しよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

HAXLR8Rのレポートに見る、ハードウェアスタートアップのトレンドと予想

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深圳市(中国)に拠点をもつハードウェアスタートアップをインキュベートするHAXLR8Rが、興味深いレポート「Hardware Trend 2015」を2月末にリリースした。少し時間が経っているが、2015年のハードウェアスタートアップのトレンドを知るには非常に有用な資料だから、その要点と、目を引いたプロダクトをいくつかTechCrunch Japanでも紹介しよう。

ちなみに、HAXLR8Rは去年、本家TechCrunch「Lean Hardware」というハードウェアスタートアップ関連の連載をしてきた(日本語には未訳)。HAXLR8Rを含む中国語圏の動向を伝える記事としては、「米西海岸と急接近、中国深圳や香港、台湾に根付くハードウェアスタートアップの今」も参考にしてほしい。

さてレポートだが、以下の構成となっている。

1. Hardwear Trends
2. Fundings & Exits
3. Ecosystem Growth
4. Lifestyle
5. Personal Health
6. 3D Printing
7. Smart Home
8. AR/VR
9. Drones
10. Robotics
11. Twelve wares to avoid
12. Prototyping
13. Manufacturing
14. China Rising

HAXLR8Rのジェネラル・パートナーであるBenjamin Joffeによると、レポートの要旨は以下の通りだ。

  • レポートではハードウェアスタートアップへの投資とイグジットをピックアップしている。2014年には多くのハードウェアスタートアップに投資され、Oculus VR、Beats Electronics、Nest Labsんどがその地歩を固めた。
  • ハードウェアスタートアップのエコシステムは、ハッカースペース、メーカーズフェア、インキュベーター等により急成長している。
  • ウェアラブル、トラッキングデバイスのマーケットは活況となってきている。トラッキングデバイス、新センサーは、ヘルスケアや身体能力強化にフォーカスしてきている。
  • 3Dプリントは商品として認知されてきている。
  • スマートデバイスはドア鍵、ドアベル、セキュリティカメラ、サーモスタットから家庭内に浸透してきている。
  • AR、VRは消費者へのリーチ寸前で2015年クリスマスにはヒットすると予測している。
  • ドローンとロボットは拡大している。ロボットはワークショップ、ラボや家庭に入ってきている。清掃、調理、サービス、庭掃除、保管、ピンポンで遊んでくれるなど多岐ににわたる。
  • プロトタイプ製作は以前より安価、簡単、迅速になったプラットフォームがでてきている。電子回路をプリントできるものまで出てきている。
  • 深圳がハードウェアスタートアップのプロトタイプ製作、製品製造の拠点となってきている。
  • 中国と深圳はグローバルスタートアップに目を向けている。
  • これからは構造がシンプルな製品はみな”Xiaomization”されるリスクにさらされる(Xiaomi(小米)の新しい流通モデルに破壊されるリスク)。Xiaomi は既にSamsung、GoPro、Dropcamなど多くと競合関係になっている。

レポートの中にあることだが、大きなトレンドとして「深圳がハードウェアのシリコンバレー化してきた」ということがある。かつては中国といえば低レベルな製品を安価に製造するだけの工場と思われていたのが、現在は様変わりしている。深圳ではその地域一帯が工場で埋め尽くされており、しかもユニークなプロトタイプ製作と量産のエコシステムを形成しているのである。深圳、香港、台湾では以前よりもプロトタイプ製作が容易になってきているようだ。

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深圳の電子部品マーケットは数十の高層ビルにわたって展開されている。これは一見秋葉原と同じようなマーケットに見えるが、深圳のマーケット店舗は周辺の工場と直結しており、単品〜1000個のパーツまで柔軟に供給できるようになっているのが異なる点であろう。

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さて、レポートは192ページにわたるスライドになっているが、この中から興味深かったプロダクトを搔いつまんで紹介しよう。

Shot Stats Challenger

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KickStarterプロジェクト。 テニスをする人はすぐにわかると思うが、打球時の衝撃を和らげるゴム製品と同様な、ガットとガットの間に装着するタイプのもので、Bluetoothでスマートフォンと通信し、ラケットスイングのスピードを測定したり、ガットの衝撃からラケットのどの部分でボールを捉えているかチェックできる。

Roadie

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ライブ中にMCをしながらギターのチューンを変えるのは結構大変な作業だ。MCに集中するとチューンができない、チューニングに集中するとMCがとまってしまう、というジレンマに遭遇する。多勢のオーディエンスの前で無言でペグをまわしているときほど気まずい瞬間はない。しかも、あわててしまうとチューンがぴったり合わなかったりする。そんなギタリストの救世主がRoadieかもしれない。従来はチューナーのメーターを見ながら手動でギターのペグをまわしていたのを、チューナーとモータが一体化してペグまで自動でまわしてチューンしてくれる。これならMCで談笑しながらチューンも自動で完了させることが可能となる。

Giant 3D Printer

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3Dプリンタは色々なバリエーションが出てきて、プリントできるサイズも大きなものが可能となってきている。中国の巨大な3Dプリンタは1日で10棟の家を建てることが出来る。しかも1棟50万円程度と安価である。荒天や極寒においてもほぼ自動で短時間に家が建つのであれば、災害時の仮設住宅建設などに最適かもしれない。

Beddit

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薄いシーツ型センサーを布団に敷いて睡眠をモニタし、スマートフォンアプリにデータを送信。睡眠が浅いときに目覚まし機能がはたらく。いろんな睡眠時の情報をモニタしてくれる。

Mousr

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ネコを家の中だけで飼っている家庭が増えてきた。しかし、ネコは元々は野生動物。家の中の環境に慣れているはずがない。ネコは本来1日20回狩りをするという。家の中で飼われてそんないつもの行動が制限されてしまってはネコにとって大きなストレスとなる。ストレスが溜まったばかりに飼い主に面倒を起こしたりする。そこで、Mousrは、ロボットネズミとしてネコから逃げ回り、ネコの狩猟行動をシミュレートしてあげる優れものだ。これで家庭内も円満に。

Copenhagen Wheel

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米国発のスタートアップSuperpedestrian社が開発した、自転車の後輪ホイールを交換するだけで電動アシスト自転車にすることができるCopenhagen Wheel。製品名のCopenhagenは自転車大国デンマークの首都名が由来。ホイールの赤い円盤内にモーター、バッテリー、ジャイロなどを搭載。

HUVr

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ハードウェアスタートアップの中には駄目なものも出てきている。例えばHUVrだ。これはホバーボードをうたっていたが全くのフェイクだった。あったらいいなと誰もが夢想するものだが、現実はあまくはなかった。反重力でも何でもいいから実現されることを願っている。

Hendo

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ところがカリフォルニアのスタートアップHendo Hoverは、レンツの法則を応用して強力な地場を発生させ浮上させるホバーボードをKickstarterで資金調達完了してしまった。1台約100万円だが既にKickstarterでの予約は完売状態。HUVrのフェイク動画から考えたら夢のようだし、夢を実現してしまうところがまたすばらしい。

OTTO hackable Camera

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オークランドに拠点を置くの Next Thing Co.がつくったスマホアプリと連動するGIF動画を簡単に制作できるデバイス(カメラ)だ。カメラのクランクをひっぱってまわすだけでGIF動画が撮影でき、画像エフェクトもかけられる。Wifiでスマホアプリと同期して、アプリ上で撮ったGIF動画を友人と共有したりできる。

以上スライドの中からいくつか紹介したがこれ以外にも192ページにわたってスライドレポートになっているので2015年ハードウェアトレンドを占うのに参考にしてみてはどうだろうか。

Hiroki Takeuchi / POYNTER CEO Ph.D)

留守中の家をチェックしてくれる、簡単セキュリティシステムのPoint

家を空けている間、家の中のすべてのものについて、盗まれていないと自信を持って言える人はどのくらいいるだろうか。家の中を荒らされても気づかない人も多いのではなかろうか。と、そんな「気づかない人」のためのプロダクトがKickstarterキャンペーン中だ。自信のない人はぜひPointをチェックしてみて欲しい。

Pointは基本的に、大きな音を検知するためのセンサーだ。ガラスが割れる音やドアが開く音を検知することができる。また動きを検知することもできるようになっている。何らかのアクションを検知したらオーナーに通知を送ることができる。通知を見たオーナーは、秘密裏に配置しておいた攻撃ドローンを出撃させることもできるし、あるいは地元の警察に連絡をするというようなアクションをとることができる。

製作したのはNils Mattisson、Fredrik Ahlberg、Marcus LjungbladおよびMartin Lööfだ。もともとはスウェーデン発だが、現在はサンフランシスコを拠点としている。MattissonはAppleのExploratory Design部門で働いていた経験ももつ人物だ。

「こうしたデバイスが欲しいという、自分たちの欲求に基づいて製作しました。外出時にも家内の安全を確認したいと思ったのです。これまではカメラと、難しげなセキュリティシステムを配置するのが一般的でした。しかしそこまでしなくても、効果的な対策を講じることができるはずだと考えたのです」とMattissonは言っている。

ちなみに、デバイスで検知した音は、デバイス内部でのみ用いられ、すなわちクラウドにアップロードされることはないとのこと。ネットワーク経由で送られるのは通知のみであり、検出したデータが送られることはないのだとのことだ。

接続はWiFi経由で行われ、バッテリー持続時間は1年間だ。

「Pointは、目立たず、シンプルであることを心がけました。テクノロジーが周囲の環境にとけこみ、そしてでしゃばらないでいるというのが、将来に向けての方向性であると考えているからです。世の中にはスマートを名乗るデバイスがたくさんありますが、多くは検知したデータをそのままネットワークにフィードするという、スマートとは程遠い振る舞いをするデバイスが多いように見受けます」とMattissonは言っている。そうした中でスマートであろうと心がけるPointは、温度計機能ももち、また外部から内部侵入者に向けて音声を伝えるための機能ももっている。

ホームセキュリティ関係は、まさに旬とでもいうべき状況ではある。ScoutSimplisafeの名前を思い起こす人も多いことだろう。しかしこのPointは69ドルで、Kickstarterキャンペーンはすでに目標額を調達している。あとで追加すべきセンサーというのがあるわけでもない。外見もなかなかクールだ。家の中に貴重な唐代の壺があったにしても、安全に、心配なく過ごせそうな気がする。

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(翻訳:Maeda, H