上のビデオで紹介される4500ドルのカメラは、現実世界を仮想世界に変える。Matterportのハードウェア製品は不動産売買の代理店に重宝されてきたが、今日シリーズCで3000万ドルを獲得した同社は、そのお金と、同社のソフトウェアと、GoogleのProject Tangoとのパートナーシップにより、高価なカメラを使わなくても、歩きながらスマートフォンを振り回すだけで、まわりの世界をVR(仮想現実)としてとらえ、保存する技術を目指す。
たとえば、ぼくが仕事をしているサンフランシスコのアートギャラリーThe SubをMatterportでVR化すると、下図のようになる。
上のようにインテリア空間をVRとして捉えるためには、Matterportがそれを民主化するまでは5万ドルぐらいの費用がかかった。しかし同社はそのカメラをこれまでに数千台売り、それらが何万もの仮想シーンを作り出し、毎月120万あまりのユニークビューワーがその仮想空間の中をぶらついた。CEOのBill Brownによると、“売れ行きが好調だからすぐに黒字になった”そうだ。
でも同社は、単なるカメラ企業で終わりたくない。今回得られた資金で、同社は強力なソフトウェア企業にもなり、いろんな映像を縫い合わせてVRを作れるようになりたい。そのビジネスは、今後、スマートフォンで撮られた大量の映像が洪水のように流入してくるようになれば、爆発的な人気を獲得するだろう。専用カメラから、そこらのスマートフォンへ、という大革命だ。
上のビデオではMatterportのカメラやソフトウェアとともに、Brownへのインタビューも見ることができる。
Matterportは2010年のXbox Kinectのハッキングブームから生まれた。ファウンダのMatt Bellは当時、ジェスチャ認識の企業で仕事をしていたが、そこは、5万ドルのカメラと熟練工を使って大きなCADファイルを作り、それらに専用のアプリケーションでアクセスしていた。しかしBell自身は、150ドルのKinectのパワーに感嘆していた。彼は、比較的安いデバイスで同じ技術を動かせるかもしれない、と考え、誰もが部屋を3Dで捉えて、それにWebからアクセスすることができるのではないか、と思った。
BellはDavid Gausebeckと組んだ。GausebeckはCAPTCHAによる商用のセキュリティシステムを初めてPayPalで考案した人物だ。二人はY Combinatorの傘下に入り、2012年にはDCMから160万ドルのシード資金を獲得した。さらにその後は、多くのVCから計840万ドルをシリーズAとして調達した。
1年前にMatterportは自分たちの技術の商業化に目覚め、とくに不動産業界に売り込んで行くための資金として1600万ドルのシリーズB資金を調達した。不動産代理店のために物件の写真を提供している企業も、ターゲットにした。
しかしモバイルがメインのターゲットになるにつれて、プロ用の4500ドルのVRカメラを売ることが次第に重荷になってきた。画期的なパートナーシップを結んだGoogleのProject Tangoも、スマートフォンのカメラをスキャナとして使って、室内のVRマッピングをしている。IntelがVRセンサハードウェアRealSenseを出すという話があり、Googleはスキャニングのソフトウェアをパワーアップしようとしていた。そういった中で、Matterportは、スマホの映像を縫い合わせて没入的なVRシーンを作ろうとしていた。
下のビデオは、TangoとMatterportのパートナーシップの成果だ:
今回得られたシリーズCの3000万ドルは、優秀な技術チームを作ってモバイルのVRスキャニング技術を実用化することに投じられる。またそのほかのデベロッパたちがMatterportの映像縫い合わせ技術を使ってユーザにVR体験を提供できるために、SDKとAPIを作らなければならない。
VRのモバイル化にとってMatterportが必須の技術なら、同社の未来の快調ぶりは今からすでに約束されている。もう、不動産代理店にカメラを売ることがメインのビジネスではない。現代はソーシャルメディアと、テキスティングと、写真と、ビデオがコミュニケーションを支えている。そこにMatterportの技術が加われば、もう、ただパーティーの写真を共有するだけではなくて、360度の没入的な視野で、遅まきながら、そのパーティーの会場に自分が“いる”ことが、可能になるのだ。
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)