研究結果:Bitcoinを150ドルから1000ドルにつり上げたのはひとりの仕業だったらしい

Neil Gandal、JT Hamrick、Tyler Moore、Tali Obermanという4人の研究者が、Bitcoinの価格操作について興味深い論文を書いた。“Price Manipulation in the Bitcoin Ecosystem”[Bitcoinエコシステムにおける価格操作]という題名でJournal of Monetary Economics誌の最新号に掲載された同論文は、いかにBitcoinエコシステムが悪役たちによって操作されているかを説明している。

多くの人々にとって、Bitcoin市場が1人か2人のビッグプレーヤーによって動かされていることは明らかだ。「この論文ではBitcoin通貨交換所のMt. Goxで行われた疑わしい取引行為の影響を特定し分析する。同交換所では約60万bitcoins(BTC)、1.88億ドル相当が詐取されてきた」と研究者らは書いた。「対象の期間中、米ドル-BTC交換レートは疑わしい取引のあった日に平均4%上昇しているのに対しそれ以外の日にはわずかに下落している。厳密な分析と堅牢な検証の結果、疑わしい取引行為が米ドル-BTC交換レートに前例のない急騰を生じさせた可能性は高い。2013年終わりの2カ月間に、レートは150ドルから1000ドルへと急上昇した。

研究の結果、価格操作が起きた多くのケースで、原因は初期のBitcoinを含め様々な仮想通貨市場が極めて薄かったためだとわかった。「時価総額の著しい増大にもかかわらず、2013年(調査の対象期間)のbitcoin市場と同じく他の仮想通貨市場も非常に薄い。仮想通貨の種類は調査対象期間の80から現在は843にまで増えた。市場の多くが薄く、価格操作の対象になりやすい。

問題の価格操作はMarkusとWillyと呼ばれる2つのボットによって行われ、一見正規の取引に見えるが実際には所有していないbitcoinを使っていた。Mt. Goxがハックされた際、複数のこうしたボットが偽の取引を生成しBTC価格を操作することで数百万ドルを手にした。

公開されているMt. Goxの取引高には偽取引も含まれており、非常に大きい取引が行われていることを市場に発信した。事実、偽取引行為を別にしても、どの主要交換所でもbitcoinと米ドルの取引量はボットが活動していた日の方がずっと多かったと論文は書いている。もちろん、これに伴って増加した「ボット以外」の取引は、手数料取っているMt. Goxの利益を生んだ。

しかしWillyボットは別の目的にも使われた可能性が高い。Mt. Gox崩壊直後にReddit記事が採用したある理論によると、ハッカーらは2011年6月に膨大な量(約65万)のbitcoinをMt. Goxから盗み出し、同交換所のオーナーであるMark Karpalesは非常措置をとってこの損失を数年間隠し続けた。

結論は単純だ。もしBitcoinがまともに扱ってほしければ、これほど簡単に、また合法的に市場が操作されるべきではおそらくない。分散化は規制にとって変わるべきものだが、まともに扱われるまでの道のりが長いことは明らかだ。「主要な金融機関が仮想通貨資産に投資し、各国がbitcoinによる支払いシステムの合法化を進める中(日本は2017年4月)、仮想通貨市場がどれほど操作の影響を受けやすいかを理解することは重要だ。われわれの研究はその第一歩である」と研究者らは書いている。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Bitcoin、3000ドル超えで史上最高値を更新

Bitcoinの価値が過去最高の1 coin当たり3000ドルに達し、待望の分裂に始まった激動の一週間を終えた。

CoinbaseKrakenといった人気の取引所の何か所かで1 bitcoinの価値が3000ドルを超え、一カ月前より485ドルの高値となった。今年5月、Bitcoinは急騰して初めて2000ドルを超え、6月には3000ドル近くまで上がったが、後に暴落した

過去12時間、分裂によって30%下げていたbitcoinの価値は10%以上跳ね上がった。中国のOkCoinなどいくつかの取引所は、1 bitcoin当たり3200ドル以上の値を付けている。

結局、この急騰によってbitcoinの時価総額は500億ドルを超えた ―― Coinmarketcap.comによると本稿執筆時点で $51,737,289,581。

bitcoinの価値が1 coin当たり3000ドルを超えた時のグラフ

この通貨の主たる不安要素は、分裂の可能性を巡る不確定さだ。bitcoinコミュニティーの一部が、bitcoinの処理速度低下を防止するための変更を要請した。その結果がBitcoin Cash(BCH)と呼ばれる分裂で、8月1日に起きた。

BCHは従来のbitcoinブロックチェーンを踏襲する、すなわちBTCを持っている人は誰でもBCHを利用できる。しかし、当初は分裂後の通貨に対応していない取引所もあり、 Coinbaseもその一つだ。顧客らはCoinbaseからcoinを引き出し、法的行動をとるという脅しもあったため、Coinbaseは方針を変更し、1月1日までにBCHの引き出しを可能にすると約束した。ただし現時点で取引きが可能になるかどうかは不明だ。

BCHは最初の一週間、bitcoin基準からみてもかなり激しく変動した。

新通貨は555ドル前後で誕生し、水曜日には727ドルでピークを迎えた。その後現行価格の220ドルへと下落し、対照的にbitcoinは3000ドルの大台を超えた。

Bitcoin Cash、一週目の取引状況(via Coinmarketcap.com)

専門家はBCHの長期的未来に対して懐疑的だ。それは現時点では不安定な価値をつける以外に何もできることがないからだ。将来十分な数の企業やデベロッパーを引き寄せることができれば変わる可能性もあるが、BCHの採掘がbitcoinと比べて困難であることは多くのマイナー(採掘者)にとって理にかなっていない。それも将来調整される可能性はあるとCoindeskの最新記事が示唆しているが、現時点ではまだbitcoinの方が実入りの良い選択だ。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

明日のBitcoin分裂を前に、やるべきことはこれだ

8月1日を目前に控え、あのBitocoin「ハードフォーク」が、暗号化通貨のカジュアルユーザーの間にちょっとした混乱を呼んでいる。知っておくべきことはこれだ。

簡単に言って、Bitcoinキャッシュ対応を明確に表明している取引所を使っている人や、自身のプライベートキーを管理できている人は問題ない。Coinbaseのような、Bitcoin Cashに対応していない取引所にbitcoinを預けている人は、Bitcoin Cashで取引きするつもりがないのでない限り、今すぐbitcoinを移動すべきだ。いずれにせよプライベートキーを自分で管理しておくのは良い考えで、そうすれば過去に利用したことのあるどの取引所からでもbitcoinを引き出すことができる。

もっと詳しく知りたい人は、Coindeskに行けば、最新情報がある。

ウォレットはどれを使う?

どんな場合も要点は単純:キーは自分で管理しなければならない。

私が使っているのはTrezor hardware walletElectrumで、持っているわずかばかりのBTCをそこで管理している。人によって結果は違うので特定の製品をを積極的に推すことはしない。私の心に潜む皮肉屋はどのツールも取引所も信用していない。

以下に、パソコン上にElectrumウォレットを作り、そこに手持ちのBTCを入れるやり方を示す。十分注意してほしい。全額を送り込む前に必ず少額でテストすること。

  1. 11.png

  2. 21.png

  3. 31.png

  4. 41.png

  5. 51.png

  6. 61.png

  7. 71.png

それでも私は怖い

無理もない。それは、難解で、不安・疑念・不信(FUD)につけこむ積極的キャンペーンを特徴とするテクノロジーに対する、健全な態度と言える。もしあなたが、老後の蓄えをBitcoinにつぎ込んでいるのなら、フォーク前日の一本の記事以上にこの件を調べていることと願っている。いくらかでも持っているひとは、手持ちのBitcoinをパソコン上のローカルウォレットに移して、なりゆきを見守っていてほしい。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

MuleSoftは上場初日に46%アップで終わる、エンタープライズ系テク企業への市場の信頼厚し

今年最初のエンタープライズ系テクノロジー企業のIPOは、レースの始まりを告げた。

MuleSoftは企業顧客、たとえばNetflixやSpotifyなどが、いろんなサービスやアプリケーションのAPIを統合的に使って自らのビジネスニーズを満たすタスクを助けている。その同社は今日、17ドルのIPO価格に対して24ドル75セント、46%のプレミアムで引けた。その17ドル自体も、予想レンジの14-16ドルより上だった。

同社はIPOで2億2100万ドルを調達できたが、17ドルではなく20ドルだったらもっと調達できただろう。銀行家たちは通常、初日のご祝儀として20-30%の短期上昇を期待する。同社の価格が低すぎたら、彼らはお金を“テーブルの上に残した”(持ち帰らなかった)ことになる。

Snapの場合も同様で、やはり17ドルのレンジを超え、初日には大きく上がった。しかし2週間後の現在は、すでに20ドル以下になっている。

主に機関投資家と、引き受け銀行と仲の良い高資産の個人たちが17ドルでアクセスするのがIPOのスタンダードだが、今日(米国時間3/17)のMuleSoftは24ドル25セントで明けたから、24ドル75セントの仕舞いは、ふつうの投資家にとってかなり小さな儲けだ。

MuleSoftは金曜日(米国時間3/17)に、“MULE”というチッカーでニューヨーク証券取引所に上場した。NYSE(ニューヨーク証券取引所)にとってそれは、Snapの上場に続く再度の勝利だ。

MuleSoftは昨年の売上が1億8770万ドルで、2015年に対し1億1030万ドルの増、前年比では5760万ドルの増だ。純損失は4960万ドルで、前年の6540万ドルから減った。

【中略】

同社の最大の株主(17.1%)であるLightspeed Venture PartnersのパートナーRavi Mhatreによると、彼は初期からMuleSoftが良い投資対象だと認識していた。なぜなら同社は、ファウンダーたちが“明確なビジョンを”持っていたからだ。LightspeedはSnapとNutanixの最近のIPOでも投資したが、Mhatreが言う、勝者を見分けるコツとは、それが“スケーラブルで粘り強い”企業であることだ。

Battery VenturesのDharmesh ThakkerはMuleSoftへの投資の機会を逸したが、一般的にエンタープライズ系企業のIPOに対して楽観的だ。消費者向け企業のIPOと違ってエンタープライズ系のIPOは、“爆発的な上がり下がりがなくて安定成長が期待できる”からだ、と彼は言う。エンタープライズ系企業は、そのビジネスモデルに関しても、将来の予期不能の激変がないことが期待できる。だから、上場企業として適格なのだ。

【後略】

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Bitcoinには深刻なイメージの問題がある

世の中には「信者」というものがいる。何かの製品なりアイディアなりを熱狂的に支持し、他人がその「聖牛」を拝跪叩頭しないと怒り出す人々だ。Notion Ink信者、Apple信者、Blackberry信者、ワクチンで自閉症になる説の信者、9/11はアメリカ政府の自作自演説の信者、等々だ。こういう信者たちはその対象を全身全霊で擁護し、批判者には限りない憎悪を燃やす。歴史家のウィル・デュラントは「信念が歴史を作る―ことに間違った信念が」と述べた。古来、間違った信念に殉じて死んだ人間は数知れない。

私が思うに、Bitcoinは「間違った信念」ぎりぎりのところに位置している。

念のために言っておくが、私はBitcoinのファンだ。このシステムの価値を理解しているし、第三者が追跡できないシームレスな世界的資金移動システムが必要であることも疑っていない。しかしBitcoinのイメージには大きな問題がある。

Bitcoin信者は「自由の戦士」を自認し、部外者を声高に攻撃し、勝ち誇った調子で成果を語る傾向がある。Redditの/r/bitcoinフォーラムなどがその典型だが、どこそこのカフェが、どこそこの歯医者がBitcoinを受け入れたというようなことを際限なくまくしたてている。こういう些細な勝利には何の意味もない。そういったものは企業や組織の単なるPR作戦にすぎず、どのみちBitcoinはその場で現実の通貨に交換されてしまう。Bitcoinが世界的に成長しているかどうかとは無関係だ。

しばらく前に例のウィンケルヴォス兄弟がBitcoinを助ける白馬の騎士となって登場した。ところがウィンケルヴォス兄弟は「Bitcoin市場に対する一切の規制に反対する」と主張している。これは良識あるユーザーを遠ざけるだけの結果に終わった。現在Bitcoinを受け入れている大規模な合法的サイトは家具通販のOverstock(とSacramento Kingsの試合のチケット)くらいなもので、後はドラッグ流通に使われているのが実態だ。気まぐれな独裁者が支配するバナナ共和国の通貨よろしく乱高下し、なんの規制も受けない通貨に一般消費者が金を投じるはずがない。この欠陥を正す方法はいろいろ考えられるが、ウィンケルヴォス兄弟の「一切の規制に反対する」という主張はそのどれにも当てはまらない。

それにbitcoinユーザーには女嫌いの性差別主義者というイメージがつきまとう。Arianna Simpsonが集会に参加してひどい目にあったというエピソードはbitcoin文化の全体を代表するものではないだろうが、ひとつの好ましからざる傾向を表している。 またこの記事もそういうことになるだろうが、bitcoinを少しでも批判すると無数の攻撃が返ってくる。bitcoinの支持者が女性差別主義の偏狭なオタクだというイメージを払拭したいなら、まず自らを改める必要があるだろう。

TechCrunch自身もコメント欄には強制力のあるハラスメント禁止規則が必要だということを(遅まきながら)気づいた。これはあらゆるコミュニティーに当てはまる。間違った教条の信者はたいてい手遅れになってか気づくのだが、ファナティックな態度は自らを窮地に追い込むばかりだ。しかもbitcoinはまだ幼年期にあり、大企業が所有し、管理する新しい暗号化資金転送システムがいくつも生まれようとしている。モバイル決済サービスのStripeも暗号化通貨の実験を準備しているという噂だ。VisaやMasterCardが暗号化資金移動テクノロジーを採用しない理由はない。

BitcoinはInternetのような存在として自らを確立しなければならない。しかしインターネットとは異なり、一般ユーザーが利用したくなるような価値あるユースケースはまだ存在せず、進むべき方向は不明だ。インターネットは商品流通のあり方を一変させた。しかしbitcoinにはAmazon.comのような信頼できる安定したビジネス・プラットフォームがない。あちこちで「お山の大将」が大言壮語しているだけだ。Bitcoinは自らが何者であるか明確なメッセージを発しなければならない。そのメッセージとは「無料の資金移動」である。それ以外のもろもろはその後に起きる二次的な作用にすぎない。しかし現状ではBitcoinの発するメッセージは不明瞭であり、はっきり聞き取ることができない。まずそこから変えていく必要がある。

Image: 画像: Shutterstock photo

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


Appleは全企業保有現金の10%を持っている? ちょっと違う

Wall Street Journal:今Appleは全企業保有現金の10%を所有している。Moody’s調べ

QZ:Appleは米国全企業保有現金の10%を押さえている

実際は:Appleの国内および国外保有現金をもし総合すれば、米国企業保有現金の10%程度に相当する、ただし金融機関を除く。つまり、たまたま米国に本社を置く一国際企業を米国企業と呼び、その保有現金を算出し、米国企業で最も現金豊富な分野を除外して人為的に制約した集計値と比べると、全企業保有現金の10%に相当するという意味だ。

これはWall Street Journalの見出しより、ずっと印象に乏しく、QZの記事よりかなり割引かれている。しかし、われわれは少々杓子定規になりすぎたようだ。ちょっとAppleの隠し金庫をのぞいてみよう。

2013年5月21日付内部文書に、Appleが納税を逃がれるために、様々な事象を処理している方法 ― 完璧に合法かつ予想された行動 ― が示されている。これによると同社は現金1450億ドルを保有しており、その70%に当たる1020億ドルは海外にある。

つまり、国際複合企業体たるAppleは、1020億ドル相当の現金、現金相当物、および有価証券を、有名無実の母国であるアメリカ合衆国の外部に持っている。現金は一部の国境を越えては移動できない。もしAppleがその現金を「母国」に持ち込みたければ、苛酷な法人税を払う必要がある。つまり、同社の現金の大部分は永続的国外追放状態にある。

よって、これをわれわれが米国企業と見做せる会社の管轄下にあるとして勘定することは、合理的定義を曲げることになる。

Appleの国内保有現金は約430億ドルだ(国内外比率に関しては5月のデータが最新)。Wall Street Journalの記事は、Moodyによると米国企業保有現金合計は1兆4800億ドルであると報じている。したがってAppleの国内現金はこの数字の約3%だ。少々印象に欠ける。

しかし、一企業の国内保有現金を他社の総保有現金と比較するうえで、そこにはさらなる混乱の元がある。比較対象は(全企業ではなく)非金融機関企業だけだ。われわれは真理とはほど遠い位置にいる。

それでもAppleは莫大な富を持っており、アクティビスト・投資家のカール・アイカーンは、同社に対して900億ドルの株式買い戻しプログラムを要請中であることを発表した。Appleの現金持ち高を抑制するためだ。

保有現金を比較する真っ当なやり方は、Moody’sが格付けする1000社(同社が1.48兆ドルという数字を算出する元にしたと思われる)の明細を調べ、国内現金は国内と、国外は国外と比べることだ。ただし、米国を拠点と呼ぶ一国際企業の部分集合と比較したければの話だが。

裕福な国際企業すべての総保有現金高を比べる方が、ずっと興味深いだろう。お楽しみあれ。

トップ画像提供:Steve Snodgrass

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)