ブランド委託販売「RECLO」が2.4億円調達、グノシーと提携効果は限定的かも

高価格帯のブランド品を委託販売できる「RECLO(リクロ)」は、「フリマするほど暇じゃない人」をターゲットにしたアプリだ。フリマアプリはスマホで撮影した商品を気軽に出品できる気軽さが受けているが、リクロは宅配キットを取り寄せて商品を送るだけで、あとは勝手にブランド品の真贋判定や値付け、撮影、出品までを肩代わりしてくれる。リリースから約半年で17万ダウンロードに達したリクロだが、12月10日に第三者割当増資を実施して2億4500万円を調達した。引受先はB Dash Venturesやフューチャーインベストメントなど。

リクロは在庫を持たないオンライン委託販売であるため、出店コストがかさみがちな既存の買取業者と比べて、2~3倍の出品者への高額還元が可能なのだという。平均落札金額は3万円台で、ユーザーは落札金額の50〜70%を受け取れる。サービス開始当初、出品アイテムの多くは業者から仕入れていたが、現在は半数以上が個人のクローゼットに眠るリユース品。7月には、これまで出品しなかったユーザーを獲得するために、アプリで商品を撮影するだけで無料で査定してもらえる機能を追加した。現在は1日あたり約50件を査定しているという。

1カ月あたりの出品数は約2000〜3000アイテム。個人の出品数を押し上げているのは「セレブ」の存在だと、アクティブソナーの青木康時社長は語る。「セレブが参加するパーティーに紹介づてで足を運んで、交流かたがたリクロのことを知ってもらっている。セレブの方が出品するアイテムは総じて状態が良いものばかり。一度出品していただくと『また半年後に来て』と言われることも少なくない」。さらに、セレブからは高級インテリアや家電の出品を依頼されることも多く、今後は商品の横展開も視野に入れたいという。

グノシー経由でブランド品は売れるか

12月10日からは、ニュースアプリ「Gunosy(グノシー)」が手がける新サービス「Gunosy Platform」と提携。グノシー上でブランド品を最大90%で販売する「RECLO チャンネル」を12月中旬に、48時間限定のタイムセールで食品や雑貨を販売する「FLIP チャンネル」を10日に新設する。各チャンネルはグノシーの画面右下に追加されるチャンネルボタンや、グノシーのタイムライン上に掲載されるネイティブ広告を通じて誘導され、グノシー内でそのまま購入できる。

グノシーは11月、ユーザー目標数にちなんだ「5000万人都市構想」を発表。5000万人都市の舞台となるのがGunosy Platformで、リクロのほかに、家計簿サービス「マネーフォワード」やIPサイマルラジオ「radiko.jp」、宅配クリーニング「Lenet(リネット)」など11社14サービスと提携し、それぞれグノシーから利用できるようになっている。

Gunosy Platformは、あたかも1つの都市に各種店舗があるような状態にして利便性を高めようとするもの。とはいえ、タダでニュースを読みに来たユーザーが、どれだけブランド品に興味を持つかは未知数だ。その反面、ユーザーがファッションコーディネートを投稿できる「iQON(アイコン)」では、アプリ経由の売上が月間10億円近くに上るという。「もともと財布を持ってきていない」ユーザーが相手でも、アプローチの仕方次第ではECが成立する事例もあるわけだ。Gunosy Platformについて青木氏は「少なくとも、リクロがグノシーのアクティブユーザーの目にとまる機会が得られるのは大きい」と話している。


Frilの月間物流総額は5億円–「空中戦」も必要になったフリマアプリ市場

スマホ向けフリマアプリの元祖であるFablicの「Fril」。若い女性に特化したこのアプリだが、現在の月間物流総額は5億円以上、アプリのダウンロード数は150万件以上になっているという。

福岡で7月17〜18日に開催されている招待制イベント「B Dash Camp 2014 in Fukuoka」の2日目のセッション「新興eコマース〜新たなトレンドを作り出せるか?」に登壇したFablic 代表取締役社長の堀井翔太氏が明らかにした。

このセッションでは堀井氏のほかにアクティブソナー 代表取締役社長の青木康時氏、BASE 代表取締役鶴岡裕太氏が登壇。それぞれのビジネスについて語った。

「空中戦」も必要になったフリマアプリ市場

Fablicは、これまでほとんどメディアでビジネスの話をしたことがなかったし、アプリのダウンロード数をはじめとした情報を発信してこなかった。しかしここに来て数字を公開した堀井氏は、「今は競合も十数個ある。そういう(情報を非公開にする)フェーズではない」と語る。

競合とされる後発の「メルカリ」は、14億円超の大型調達、テレビCMなども奏功して大きくユーザーを拡大。1周年を迎えた2014年7月時点で、月間流通総額は10億円、ダウンロード数350万件という数字を発表している。

こういった状況に対して堀井氏は、「メルカリやGunosyなどは大きな資本を調達して勝負している。今まではプロダクトを磨いて、リテンション伸ばして…としてきたが、最近の戦い方はテレビCMなども含めて『空中戦』もするような状況にシフトしている」と語る。

Open Network Labのインキュベーションプログラム出身のスタートアップということで、デジタルガレージグループからシードマネーを調達しているFablic。1期目から黒字化して資金調達の必要もなかったとのことだが、今後は資金調達してテレビCMを放送することも検討しているという。さらに、ユーザーのニーズも多いことから、一部のユーザーに限定してフルフィルメントサービスを試験的に提供していることも明かされた。

BASEは「カート」ではなく「決済」

手軽にウェブショップを構築できる「BASE」を提供するBASE。個人だけでなく、中小企業を中心とした法人もサービスを利用している。最近では芸能人やニコニコ生放送の“生主”のような売り手も登場しており、数千万円から億単位の売上を実現しているショップもあるそうだ。

サイバーエージェントやグローバルブレインなどから資金を調達し、現在はユーザーの拡大フェーズにあるという。クレジットカードの決済手数料などは徴収しているものの、サービスの利用手数料は無料。「売上はゼロと言っていい」(鶴岡氏)状況だそうだ。「(調達によって)うちのようなところがどんどん攻めていけるのはありがたいし、EC(領域)自体を評価して頂いていると思っている」(鶴岡氏)

鶴岡氏はBASEについて、「本質は決済を提供するサービス」と語っている。カート機能でのマネタイズはあまり考えていないそうで、将来的には、決済、金融といった領域でのマネタイズをやっていくそうだ。

サービス開始当初は、ブラケットの「STORES.jp」と比較されることが多かったBASE。「初期はSTORES.jpもあったことで認知度が上がった」(鶴岡氏)とも語るが、スタートトゥデイがブラケットを買収したこともあって状況は変わったという。「最近は自社でどれだけがんばれるか。突き抜けないといけない」(鶴岡氏)将来的には世界展開で100万店舗を目指す。さらには日本から海外に商品を売るための支援もしていくそうだ。

プラットフォームを目指すアクティブソナー

CtoBtoC型のブランド商品委託販売サービス「RECLO」を提供するアクティブソナー。

こちらの記事にもあるように、米国ではCtoBtoC型のECサイトが複数登場しており、ユーザーのニーズも見えている状況だという。日本では(米国でも先行する)「RealReal」などのプレーヤーはいるが、まだデファクトスタンダードたる位置にあるサービスはない。そこで自らこの領域に挑戦したそうだ。

今後は海外向けに商品を販売していくほか、家具や中古車の販売なども視野に入れるという。また、CtoBtoCは言ってしまえば「小売り」だが、1つ1つの商品を売るということではなく、あくまでプラットフォームとして成長していきたいと語った。

この領域に大手企業が参入することについて尋ねられたところ、「大きいプレーヤーが来るのは脅威だが、狙っているのは(大きいプレーヤーがチャレンジできない)隙間でのおもてなし。ネットサービスでは実現できないフルフィルメントを全部やるというところ」(青木氏)とした。


資産価値15兆円? 押入れ資産を狙うCtoBtoC委託販売が密かな盛り上がり

リサイクルショップ「コメ兵」が5月に発表した調査によると、20歳以上の男女が所有するブランド品の購入金額は1人あたり平均約78万円。そのうち、もう使わなくなったモノの購入時の金額は平均約16万円に上り、日本の人口から推計すると総額15兆円分の資産が家の押し入れに眠っているそうだ。そんな“押入れ資産”に目を付けたスタートアップが昨今、スマホを使って中古ブランド品を委託販売するCtoBtoC型サービスを続々と立ち上げている。

いきなり押入れ資産が15兆円と言われてもピンと来ないが、2014年度の国家予算は約96兆円(財務省の予算政府案)なので、国家予算の約6分の1に相当することになる。野球に例えれば、他球団の4番バッターやエースをカネにモノを言わせて獲得しては、ベンチや2軍で塩漬けにする金満体質球団のようなことが、一般家庭の押入れの中で繰り広げられているのかもしれない。

スマホを使った中古ブランド品の委託販売サービスは、ユーザーが売りたい商品を送料無料で送り、鑑定士の査定結果に納得すれば販売を委託できる。商品の撮影や出品、梱包、配送といった面倒な作業を肩代わりしてもらえるのが特徴だ。いわゆる質屋型サービスの買取在庫や実店舗運営にかかる中間コストが少ない分、高く売れることを謳っている。各社は販売金額の50〜70%を出品者に還元している。買い手としては、鑑定士が査定している安心感から、偽ブランド品をつかまされずに購入できるのが利点といえそうだ。

有力プレイヤーが存在しないCtoBtoCはフリマアプリのような盛り上がりを見せるか?

アメリカでは、セレブ御用達の高級ブランド委託販売サービスとして知られ、約220万人が利用する「RealReal」や、800万ドルを調達した「Threadflip」などが有名。リアルリアルは2013年8月に日本に進出し、シャネルやエルメス、カルティエなどを中心としたラグジュアリーブランドのリセール商品を常時1000点近く扱っている。2014年4月にはルイ・ヴィトンジャパンカンパニーCEOを務めた経歴を持つ藤井清孝氏が社長に就任した。

2014年4月には、グルメ商品の定期購入サイト「smart select」を運営するアクティブソナーが「RECLO(リクロ)」を開始。商品を5日毎に5%ずつ自動的にディスカウントして購入を促す機能などで差別化を図っている。最近ではテレビ東京のドラマ「俺のダンディズム」で紹介されたアイテムを販売するキャンペーンを展開するなどして、登録会員数は5万人を突破。7月17日にはiPhoneで自分の持ち物を撮影し、商品名や状態を投稿することで、リセール相場がわかるアプリを公開し、さらなるユーザー拡大を狙っている。

CtoBtoC型サービスは、過去2カ月間だけでも動きが活発だ。例えば、5月にスタートした「retro.jp」を運営するretroは6月30日、インキュベイトファンドなどを引受先とする総額3000万円の第三者割当増資を実施した。retroの前身は、自社ECやファッションブランドの公式EC運営代行を手がけるZeel。事業譲渡を受ける形で運営しており、ブランド品に対する知識やサポートが強みだとしている。登録会員数は非公表、7月初旬時点では約400点を扱っている。

7月1日には海外ファッション通販サイト「waja」も、アパレルメーカーや個人が出品したブランド品を委託販売する「FASHION CHARITY PROJECT(FCP)」を開始した。ただし、このサービスはあくまでチャリティが目的で、販売代金から手数料40%を差し引いた金額がNPOに寄付される。出品者は販売額の最大50%の寄付金控除を受けられる。このほか、委託販売ではないが、5月にはグリー子会社のグリーリユースがコメ兵と提携し、ハイブランド商品の買取サービス「uttoku by GREE」を開始する動きも見せている。

スマホを使ったECといえば、CtoCのフリマアプリに大手からスタートアップまでが相次いで参入。この市場では、圧倒的なユーザー数を誇るLINE MALLと、14億5000万円を調達してテレビCMを放送するメルカリが他のサービスから頭1つ抜け出ている感もある。一方、CtoBtoC型の委託販売サービスは始まったばかりで、有力なプレイヤーは存在していない。それだけに、押入れ資産を掘り起こす業界が密かに盛り上がってきそうだ。

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