IMAXがVRアーケードの夢をあきらめる、VR商用化の目玉まだ見つからず

映画の世界にこれまでで最大のスクリーンを持ち込んだ企業が、VRの画面をユーザーの顔の数インチ先に置くことには失敗した。同社は今日(米国時間12/13)、SECに提出した書面の中で、ロサンゼルスの主力館も含め三つ残っている仮想現実センターのすべてを閉鎖する、と発表した。

書面に曰く:

同社が前に発表したその仮想現実パイロット事業の戦略的見直しに次いで、同社はその残存するVR立地を閉鎖し、一部のVRコンテンツへの投資を償却する。

Varietyによると、ロサンゼルスとバンコク、そしてトロントの館は2019Q1に閉鎖される。

オープン時には相当騒がれたVRセンターだったが、同社は早々に、その経済性に見切りをつけたようだ。今日の発表の前にIMAXは、7館のうち4館をすでに閉鎖していた。

関連記事: IMAX、世界に「VR体験センター」を開設へ。独自のVRカメラも開発

アメリカのアーケード・シーンの復活を夢見ていた仮想現実スタートアップの多くが、今日のニュースを見て冷や汗をかいたかもしれない。でもIMAXの取り組みは大成功にならなかったけど、閉鎖することは何もなかった昔に戻ることではない。〔アーケード, arcade, 日本語では“ゲーセン”。〕

今年の初めにIMAXは、Googleと共同開発していたVRカメラの開発を休止したことを確認した

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Nvidia、時価総額半減で厳しい局面に――暗号通貨、ライバル、中国、いずれも逆風

Nvidiaの株価は上場以来の最高値を付けた後、数週間後に最安値に転落した。

これほど短い期間に時価総額の半分近くを失うというのは容易ならざる事態だ。テクノロジー分野では瞬きするくらいのあいだに鉄壁とみえたビジネスが消え失せるという例の一つをNvidiaは実証した形だ。Nvidiaはチップ・メーカーとして確固たる地位を確立するためにビジネスのコアとなるプロダクトを拡大する長期計画を実行に移してきたが、ここに来て強烈な逆風に苦しめられている。

振り返ってみると、NvidiaはまずGPU(グラフィカル・プロセス・ユニット)の有力メーカーだった。Nvidiaの優秀なGPUはゲームからCADまでさまざまな並列処理に用いられた。プロダクトは機能、信頼性ともに高く、NvidiaがGPUマーケットで大きなシェアを得ることを助けた。

しかし高度ななグラフィカル・レンダリングを必要とするマーケットは比較的小さく、ここ数年Nvidiaは新しい応用分野の開発に熱心だった。この分野には人工知能、機械学習、自動走行車、暗号通貨などが含まれていた。これらはすべて強力な並列処理を必要とし、Nvidiaの得意とする分野だった。

この戦略はおおむね成功した。ここ数年、Nvidiaのチップは暗号通貨スタートアップでひっぱりだことなり、世界的なチップの供給不足を引き起こし、 コアなゲーマーの間に不満が高まったほどだった。

これはNvidiaの収入を大きく押し上げた。 2013年の8-10月の四半期の収入が10.5億ドルだったのに対し、2年後の同期は2015年は13.1億ドルと伸びはゆっくりしていた。これは成熟した市場のトップメーカーの場合珍しいことではない。しかしNvidiaが精力的に新応用分野の開拓を始めると成長は一気に加速した。今年の直近の四半期の収入は32億ドルと2013年の3倍になっている。これにともなって株価も急伸した。

ところがNvidiaの新分野への進出は多方面で障害に突き当たっている。中でも最悪の影響を与えたのがここ数ヶ月の暗号通貨価格のクラッシュだ。これによって暗号通貨市場そのものから火が消えた。打撃を受けたのはNvidiaだけではない。暗号通貨のマイニング処理に最適化したチップを製造していたBitmain暗号通貨バブルの破裂でいきなり失速している。今週、同社はイスラエル・オフィスの閉鎖を発表した。

Nvidiaの今年の収入を見ればこの問題の影響は明らかだ。今年、収入はこの3期続けて31億ドルから32億ドルであり、ほとんどフラットだった。一部ではこの状態はクリプト二日酔いと呼んでいるらしい。しかし暗号通貨はNvidiaが対処を求められている問題の一つに過ぎない。

高度な並列処理を必要とする次世代コンピューティング分野でNvidiaはスタートアップも大企業も含まれる強力なライバルの出現に悩まされている。ライバルには本来Nvidiaのユーザーと目される企業も入っている。たとえば、Facebookは独自の並列処理チップを開発中だと報じられたAppleは何年も前からそうしているし、Googleもこの分野に参入した。Amazonも精力的だ。Nvidiaにもちろんライバルと戦うノウハウがあるが、ライバル各社はそれぞれの応用分野を熟知しており、きめて優秀なアプリケーションを開発できる。このマーケットでトップを維持するには非常に激しい競争に勝ち抜かねばならない。

新分野におけるアプリケーションの開発競争に加えて、地政学的緊張の高まりもNvidiaに打撃となっている。2週間前にDan StrumpfとWenxin FanがWall Street Journalに書いているとおり、Nvidiaは米中貿易摩擦の高まりに直接影響を受けている。

…Nvidiaの昨年の収入、97億ドルのうち20%は中国からのものだった。 Nvidiaのチップは急成長中の中国のAI産業における各種プロダクト〔を始め〕各種のプロダクトに組み込まれて利用されている。

Nvidiaは両大国の緊張の高まりは…中国がアメリカ製品に対する依存度を下げるために独自チップの開発に力を入れる結果となり…Nvidiaの長期計画にとってマイナスの要素となると懸念している。

暗号、ライバル、中国。この三重苦がこの半月でNvidiaの時価総額の半分を失わせた理由だ。中国問題については次に述べる。

山積する中国問題

ハロン湾(ベトナム) 撮影:Andrea Schaffer/Flickr (Creative Commons)

South China Mornng Postによれば、アメリカを中心とするインターネット企業に現地法人の設立を要求する新しい法律をベトナムが制定したため、Googleが対応を検討しているという。Googleはベトナムの新法に対応すべく現地オフィスを開設しようとしていると報じられていた。同様の問題は中国でも起きるはずだ。

昨日、GoogleのCEO、スンダル・ピチャイが「当面中国に再参入する計画はない」と議会で証言したことは興味深い。ベトナムは、他の多くの国と同様、国家主権が個人情報にも及ぶことを明確にした法律を制定した。これによれば、ベトナムで得られたデータはベトナム国内に保存される必要がある。Googleの手は縛られることになる。中国は当面の悪役だが、ローカル・データへのアクセスを制限しようとする保護主義的動きは中国だけに限られたものではない。

報道によれば、日本の携帯大手3社がHuaweiとZTEの製品を、通信設備から排除する方針を固めたという。これにHuaweiの副会長の逮捕というニュースが続いた。これで日本のキャリヤの中国企業の製品の排除の方針はますます固まったはずだ。 Huaweiの排除はもともとFive Eyesと呼ばれる情報交換協定に加盟している英語圏5ヵ国(アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)が決定したものだが、日本はこれに加入していない。日本がHuawei、ZTEを排除することになれば、他のアジア諸国にも波及する可能性が出てくる。そうなれば影響は大きい。

一方、Baidu(百度)は中国を代表する検索エンジンを提供する企業だが、中国政府の監査により、他の80以上の中国企業と共に企業情報を偽っていたことが判明している。 これはBaiduにとって極めて思わしくないニュースであり、 ここ数日、株価は最低水準に落ちた。過去52週の最高値は284.22ドルだったものが、今日の寄り付きは180.50ドルだった。

情報を求む

パートナーのArmanと私は引き続きシリコンバレーのビジネスを取材している。過去数日、投資家やサプライチェーン関係者に取材した結果を上にまとめた。ただしNvidiaの状況は氷山の一角に過ぎない。さらなる情報や分析があれば、danny@techcrunch.comにご連絡いただきたい。

このコラムの執筆にあたってはニューヨークのArman Tabatabaiが協力した。

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滑川海彦@Facebook Google+

ナショナル・ジオグラフィック、YouTubeで新作VRシリーズ公開

National GeographicYouTubeはVR体験ができる新シリーズの提供を今日、ボツワナのオカバンゴデルタのバーチャル冒険で開始した。

“地球最後の野生地”の一つと言われるオカバンゴでのVR旅行は、National GeographicがYouTubeと計画している没頭体験3部作の第1作目だ。

4つのパートで構成され、National Geographicの探検隊が地球上で最も生物が多様である場所の一つとして知られるアフリカ南部最大の湿地を横断する様を追う。

「包括的で没頭するようなコンテンツがずっと続き、視聴者を直接我々の探検隊と、そして共有されるべき世界のストーリーに結び付けられる」とNational Geographicでビデオ・没頭体験を担当するシニアディレクターJenna Pirogは声明で述べている。「我々はYouTubeとの長期パートナーシップを期待している。YouTubeとの連携で、没頭的なテクノロジーとインパクトのあるストーリーを結びつけることにおいて我々は業界の立役者となる」。

各5分のエピソードで、視聴者はボツワナの自然を体験できる。そこでは、最も多くのゾウの群がライオンやチーター、野犬、数百種もの鳥とともに暮らしている。

National GeographicフェローのSteve Boyes博士は、アンゴラ、ナミビア、南アフリカの科学者のチームとともに川や河口を探検するために毎年オカバンゴを訪れている。

VR体験は金曜日にNat Geo WILDで放映されるオカバンゴについてのドキュメンタリーを含んだものとなる。

VRはNational GeographicのYouTubeチャンネル、ウェブサイト、GoogleのDaydreamプラットフォームのVRアプリで閲覧でき、最初のエピソードは今日公開された。続編は火曜日にリリースされる。VR用に作られたコンテンツはデスクトップやモバイルでも閲覧できる。

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(翻訳:Mizoguchi)

スマホで手軽にできるAR対戦アプリ「ペチャバト」はガチで身体を動かすシューティングゲーム

AR技術を使ったゲーム、といえば「ポケモンGO」を思い浮かべる人が多いだろうか。最近さまざまなARゲームが登場しているが、今日登場したのは身体を「ガチで」動かすゲーム。12月12日に正式リリースされた「ペチャバト」(iOS版)は、スマホで手軽にできるAR対戦シューティングアプリだ。

ペチャバトは、4人まで参加できる対戦型。スマートフォンを使って、雪合戦やドッジボールのように、タップして「弾」を投げ合い、相手のスマホの位置に表示される「的」に弾が当たってインクがはじけたら得点になる。必殺技を当てることができれば、より多く得点できる。

攻撃を当てながら相手の攻撃を避け、相手のHPを削りきるか、制限時間終了時によりHPが残っていたユーザーが勝利となる。

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ペチャバトを開発したのは、2017年8月創業のGraffity。空間を複数人のスマホで共有して“見る”ことができる、独自のAR技術が実装されていることが、ゲームのカギとなっている。

冒頭にも挙げたポケモンGOは、スマホで手軽に遊べる点はペチャバトと同じ。ただ、今年中に予定されている対戦モードの実装は、もうちょっとだけ待たなければならないようだ。

また先日、プロリーグ立ち上げが発表された対戦型ARスポーツ「HADO」では、リアルタイムに試合が楽しめるが、ヘッドマウントディスプレイとアームセンサーを装着してプレイするスタイルは「スマホで手軽に」というのとは、ちょっと違う。

Graffity代表取締役の森本俊亨氏は「スマホ同士でAR空間を、1秒以内という瞬時で共有できる体験を提供するのは、世界中でも初めてのことではないか」と話している。そして、ポケモンGOの対戦対応も相まって「AR共有の形が変わり、これから多くのアプリが出るのでは」と推測する。

「AR空間共有の一つの事例として、雪合戦や鬼ごっこのようなオフラインにデジタル化を持ち込んだ、世界初の事例がペチャバト。とてもイノベーティブなプロダクトだと考えている」(森本氏)

12月初めごろから一部ユーザーにテスト公開されてきたペチャバトは、ユーザー同士の招待により広まり、1週間で1万バトルの対戦が繰り広げられたという。ユーザーは、男子高校生・大学生を中心に想定しているそうだ。

利益化については「順調に推移したところで、ソーシャルゲームとしての課金と広告によるマネタイズを検討している」とのこと。広告については「当初は動画広告を想定しているが、AR独自の価値を使ったものも開発していきたい」と森本氏は話している。またAndroid版についても、iOS版での検証後に開発を予定。来年中には海外への展開も考えているという。

すべての現実空間を3次元データ化するARCloud構想

Graffityでは、これまでにも空間上に落書きを保存してほかのユーザーと共有できる「Graffity」を2017年11月にリリース。AR体験を共有できるビデオチャットアプリなども打ち出し、グローバルでの検証を行ってきた。

森本氏は「ARで人と人とのつながりにイノベーションを起こしたい」と話す。これまでコンシューマー向けのARプロダクトにフォーカスして開発してきているが、森本氏はそのこだわりについて「B2CのARは大きな領域。2019年、2020年に向けて本格的に立ち上がる分野だと考えている。その大きなところを取りに行きたい」と述べている。

Graffityはペチャバト正式リリースと同時に、総額8000万円の資金調達を実施したことも明らかにしている。第三者割当増資の引受先は國光宏尚氏、佐藤裕介氏、古川健介氏、中川綾太郎氏、伊藤将雄氏、大冨智弘氏、ほかエンジェル投資家2名とベンチャーキャピタル1社(企業名は現段階では非公開)。GraffityにとってはプレシリーズA調達に当たる。

調達資金は「人材獲得とマーケティングに投資する。またもちろん、プロダクトを育てることにも使っていく」と森本氏は話す。さらに「すべての現実空間を3次元データとしてクラウドに保存する」という「ARCloudプラットフォーム」構想についても説明。そこにも投資していく、と語っている。

これは実に壮大な構想で、2次元でそれを実現してGoogle マップに落とし込んだ、Googleがやっていそうな計画だ。森本氏は、ARCloudプラットフォームの実現には「データ、それもリアルタイムでのデータ取得が大事になる」という。

「Googleは屋外データは着々と取得していると思うが、我々は屋内・室内の3次元データをゲーミフィケーションで取っていこうと考えている。それがGraffityの中長期的なビジョンだ」(森本氏)

またB2Cプロダクトへのこだわりを見せた森本氏だが、「B2Bについてもいろいろと技術提供を始める準備をしている」とのこと。「これから他社とのコラボレーションで研究開発を本格化させる」と述べていた。