ドイツの産業用ロボット向けノーコードプログラミングスタートアップのWandelbotsが約32.2億円を調達

ドイツのドレスデンに拠点を置くWandelbotsは、83Northが主導したシリーズBで3000万ドル(約32億2000万円)を調達した。他にNext47ならびにMicrosoftのM12ベンチャー投資部門も今回の調達に参加している。Wandelbotsは、非プログラマーが産業用ロボットに簡単にタスクを「教える」ことができるようにすることを目指すスタートアップだ。

Wandelbotsは調達資金を利用して、ハンドヘルドのコードフリーデバイスであるTracePenの市場デビューを加速させる予定だ。TracePenを使うことで人間のオペレーターは産業用ロボットが模倣すべき望ましい振る舞いを、すばやく簡単に実演してみせることができる。通常、特定のタスクを実行するようにロボットをプログラミングするためには、目的を達成するための非常に専門的なスキルセットを持つプログラマーが必要なだけでなく、膨大な量のコードを書くことも求められる。これに対してWandelbotsは、ロボットに何をしたいかを示すだけでプログラミングを簡単にできるようにしたいと考えている。そして新しいタスクを実行したり、組立ラインの他の場所に組み込むために再プログラミングする際には、また別の振る舞いを示せば良い。

Wandelbotsがこうしたことを可能にするために開発したソフトウェアは、もともとドレスデン工科大学のコンピュータサイエンス学部で行われていた研究から生まれたものだ。このスタートアップは、2017年のTechCrunch Disrupt Battlefieldコンテストのファイナリストであり(未訳記事)、2018年にはPaua Ventures、EQT Venturesなどが率いたシリーズAラウンドで、680万ドル(約7億3000万円)を調達した。

Wandelbotsにはすでに、Volkswagen(フォルクスワーゲン)、BMW、Infineon(インフィニオン)などの大手企業を含む、複数の著名なクライアントを抱えている。そして米国時間6月17日には、その製品TracePenを初めて一般向けに販売し始める。同社のテクノロジーは、産業用ロボットのプログラミングに、何カ月もの時間とそれに関連するコストを費やしているすべての人たちを救える可能性を秘めている。そして最終的には以前は予算要件から諦めざるを得なかった小規模な企業でも、この種のロボットを実用的に活用できる可能性が生まれるのだ。

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電子メールでWandelbotsのCEOで共同創業者であるChristian Piechnick(クリスチャン・ピエニック)氏に対して、 Tesla(テスラ)を含む企業たちが、これまで以上に工場を自動化しようとする際に直面する課題を、彼らのプラットフォームは解決することができるのかと質問した。

「自動化に関わる破綻現象は、ロボットによる自動化によって導入された柔軟性のなさ、複雑さ、コストによって引き起こされました」とピエニック氏はメールで返信してきた。「普通人びとは、ロボットの総所有コストの75%がソフトウェア開発によるものであることを意識していません。ロボットによって引き起こされる問題が利益を殺していたのです。これこそがまさに、私たちが取り組んでいる問題です。私たちはメーカーの方々が、これまでにない柔軟性でロボットを使用できるようにし、ロボットの利用コストを大幅に削減します。当社の製品は、ノンプログラマーが簡単にロボットに新しいタスクを教えることを可能にすることで、見つけるのが困難でコストのかかるプログラマーの関与を減らすことができるのです」。

Wandelbotsが今週発表するデバイスならびにコンパニオンプラットフォームであるTracePenは、実際には元からあるビジョンを進化させたものだ。元のビジョンでは、スマートな衣服を使用してリアルタイムで人間の行動を完全にモデル化し、ロボットの指示に変換することに重点を置いている。ピエニック氏によると、TracePenへ向けた会社のピボットは同じ基礎となるソフトウェア技術を採用しているものの、プロセスと操作の面では顧客が既にいる場所により近い場所で使えるようになっており、それでも元のコスト削減と柔軟性という性質を失っていないという。

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私はピエニック氏に、新型コロナウイルス(COVID-19)とそれがWandelbotsのビジネスにどのように影響したかについて質問した。それに対する彼の答えは、それが自動化への需要を押し上げ、その自動化に役立つ効率性への需要を様々な目立つ形で押し上げているというものだった。

「新型コロナウイルスは、様々な形でグローバルな製造業の考え方に影響を与えてきました」と彼は書いている。「まず、グローバルに分散したサプライチェーンのリスクを軽減するために、リショアリング(海外に出した拠点を国内に呼び戻すこと)を行なうという大きな傾向があります。ボリュームを拡大し、品質を確保し、コストを削減するためには、先進国にとって自動化は当然の結果です。私たちは、ほぼ即座にROIを実現できる技術と、非常に短い市場投入時間によって、時流に乗ることができています。さらには、人間の労働者への依存と職場の制約(例えば労働者間の距離)が、自動化の需要を途方もなく増大させているのです」。

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(翻訳:sako)

ジャケットを着るだけでロボットのプログラムを可能にするWandelbotsが77億円を調達

産業用ロボットは、2020年までに2000億ドル(約22兆7000億円)相当の規模に成長する勢いだ。産業用ロボットには、自動機械の限界を押し広げ、既存技術を打ち壊す人工知能の革新的な利用という、他の最先端分野と共通する側面がある。だが、ひとつだけ大きく異なるのは、どのロボットメーカーも独自のソフトウエアやオペレーティング・システムを使っているため、ロボットのプログラムが大変に難しく、時間も費用もかかるという点だ。

ドイツのスタートアップWandelbots(ドイツ語の「変化」ち「ロボット」をかけ合わせた造語)は、その問題を回避する革新的な方法を考え出した。独自開発のソフトウエアを使い、数十個のセンサーを内蔵したジャケットを着ることで、業界に普及している12のメーカーの、ほぼすべてのロボットに動きを教えられるというものだ。

「どのロボットにも同じ方法で動きが教えられる、共通の言語を提供しています」と、CEOのChristian Piechnickはインタビューに答えている。基本的には、それぞれのソフトウエアがどのように作られているかを解析して、Linuxのような、すべてに共通する基盤を作ったというわけだ。

フォルクスワーゲン、インフィニオン、ミデア(美的集団)との大きな契約を獲得したこのドレスデンのスタートアップは、600万ユーロ(約7億7400万円)の資金を調達した。次のレベルへの成長と中国進出に打って出るためのシリーズA投資だ。これは、Paua VenturesEQT Ventures、その他の名前を明かさない以前からの投資家から提供された(昨年のDisrupt Battlefieldで最終選考に残ったころ、まだ起業前だった同社はシード投資を受けていた)。

Pauraは、革新的なソフトウエア企業を支援してきた実績があり(Stripeにも投資している)、EQTは、未公開株式投資会社とつながり、これを自己資本全体をかける勢いの戦略的投資と位置づけている。

GeorgPüschel、Maria Piechnick、Sebastian Werner、Jan Falkenberg、Giang Nguyenとともに大学で同じ研究を行い、彼らと共同でWandelbotsを設立したPiechnickは、産業用ロボットのプログラムには、通常3カ月ほどの期間がかかり、専門のシステム管理者を雇うなど、ロボットの価格の他に多額の費用が必要となると話している。

Wandelbotsのジャケットを着れば、技術的な知識のない人でも、この作業を10分で行えるようになる。コストも10分の1だ。

「激しく変化する自動化業界で競争力のある製品を提供するには、生産と製造プロセスの自動化の分野のコストを低減し、作業速度を大幅に高める必要があります」とVolkswagen Sachsen GmbHの新交通および革新部門の責任者Marco Weißは声明の中で話している。「Wandelbotsの技術は、自動化に多大な可能性をもたらします。Wandelbotsの製品を使えば、ロボットの設置から調整まで、プログラミングの知識が限られている人間でも、驚くほど早く行えます」

現時点では、Wandelbotsの主眼はロボットアームのプログラミングに置かれている。Amazonその他の企業の倉庫で物品を運んでいる移動機械ではない。つまり、産業ロボットのこの2つの形態間の競争という観点からすると、今のところこれらが激しくぶつかり合う可能性はないということだ。

しかし、Amazonは倉庫以外にも活動の領域を広げようとしている。たとえば、食料品の注文に応じて、コンピュータービジョンとロボットアームが状態のいい果物や野菜を選別して箱に詰めるといった仕事だ。

Amazonなどの企業から発生した革新的技術は、ロボットメーカーにプレッシャーを与えることもある。しかし、Piechnickは、これまでほとんど影響は見られなかったし、今後も(彼の会社のように、利便性を高める技術を持つ企業にチャンスが与えられることは)少ないだろうと話す。

「ロボット用のオペレーティング・システムを作る試みは何度も行われてきましたが、その都度、失敗しています」と彼は言う。「ロボットには、リアルタイムのコンピューティングや、安全の問題、その他無数の要素があり、求められているものがまったく異なるからです。稼働中のロボットは、スマートフォンよりもずっと複雑な存在なのです」と彼は話し、さらに、Wandelbotsが発明した技術が、現在、大量に特許申請中であることを明かした。それは、ロボットに行動を教えるためのソフトウエアであり、何をどのように教えるかによってロボットの機能性を高めることができるというものだ(ジャケット以外の方法も現れるかも知れない)。

人工知能が平凡な事務作業を肩代わりするなど、ロボットによる仕事の自動化を進める他の企業と同様、Piechnickも、彼が作るものや、ロボットの普及が人の仕事を奪うことがないように気をつけている。排除するのではなく、その人に別の仕事を与えることで、ビジネスの視野が広がり、これまで人間にはなし得なかったような仕事が可能になるという。

「私たちが関わってきた企業で、人をロボットに置き換えたところはひとつもありません」と彼は話す。それは、機械を、よりよい機械に置き換えるだけのことだという。「作業効率が上がり、コストが下がれば、有能な人間を、より重要な仕事に割り当てることができます」

現在、Wandelbotsの契約相手は大企業ばかりだが、ゆくゆくはスモールビジネスをターゲットにしたいと彼は考えている。

「これまで、中小企業にはロボットは投資利益率が悪すぎました」と彼は言う。「私たちの技術が、それを変えます」

「Wandelbotsは、産業ロボットの訓練と利用に革新をもたらし、大量に普及させる要の企業になります」とPaua Venturesの共同経営者Georg Stockingerは声明の中で述べている。「この数年間で、ロボットのハードウエアの価格は急激に低下してきました。あとは、Wandelbotsが産業の自動化に残された障壁を取り払うだけです。簡単で素早い導入と訓練。この2つの要素が、次なる産業革命の波を引き起こす、ものすごい嵐になりあす」