TechCrunchはApple(アップル)がIntel(インテル)のモデム事業部の支配権を握る契約を結んだことを確認した。価格は10億ドル(約1087億円)前後で、知的所有権、製造設備、リース物件、社員の全てを含む。特に社員は 2200人全員がAppleに加わる。この契約により、Intelが保有していた分を加わることができたためAppleが保有するワイヤレステクノロジー関係の特許は1万7000件以上になる。
Appleのシニア・バイス・プレジデントであるJohny Srouji(ジョニー・スロージ)氏はプレスリリースで以下のようにコメントしている。
我々は長年にわたってIntelと協力関係にあった。消費者に世界で最高の体験を届けようとするAppleの情熱をチームは分かち合い、チームは一丸となってテクノロジーの進展に努めてきた。我々のセルラーテクノロジーグループは、買収より多数の優秀なエンジニアを迎え入れ、大きく成長する。Appleのクリエイティブかつダイナミックな企業文化は元Intelのエンジニアが活躍するのにふさわしいものと確信する。今回の買収により、我々はイノベーションの基礎となるべき重要な知的所有権を多数入手した。これは今後のApple製品の開発に大きく寄与するだろう。Appleの製品の差別化はさらに進む。
契約の締結発表はTechCrunchでも報じたとおり、しばらく前から流れていた情報が事実だったことを確認するものとなった。AppleがIntelのワイヤレスモデム事業を入手しようとした背景としてQualcomm(クアルコム)との関係がここ数年緊張したものになっていたことを考える必要がある。AppleはQualcommが設定したライセンス料金が高すぎるとして訴訟を起こした。両社はこの4月に和解し訴訟を終結させたものの、AppleはスマートフォンのモデムチップでQualcommに縛られることを強く嫌った。
この買収は Appleは2020年中にもスタートするはずのモバイルネットワークの5G化に向けた準備の一環だと見られている。5GテクノロジーはIntelとQualcommが二分しているが、Intelはこの10年間のスマートフォンブームに出遅れた感があり、5GソリューションではQualcommにやや劣るものと見られている。
Appleは最近デバイスのパーツをすべて内製しようとする攻勢を強めているが、今回買収もこの動きと整合する。CEOのティム・クック氏は10年前に内製化の方向を打ち出していた。クック氏は声明で「我々はプロダクトに使用される主要なテクノロジーを所有し、あるいはコントロールを握っておく必要があると考える。我々は自ら大きな貢献ができる分野にのみ進出すべきだ」と述べている。
今回の契約ではスマートフォン向け以外のモデム・テクノロジーを独自に開発しり権利をIntelは引き続き保持する。つまり各種のパソコン、IoTといったハードウェアだ。これには自動運転車も含まれる。IntelのCEOであるRobert Holmes Swan(ボブ・スワン)氏はプレスリリースで次のようにコメントしている。
今回の合意により、我々はさらに効果的に5Gネットワークの開発に注力することができるようになった。Intelが長年にわたって開発してきたモデムテクノロジーと知的財産を利用する権利は引き続き保持される。我々は以前からApple深い敬意を払ってきた。移籍するエンジニアにとってAppleは最良の舞台を提供するものと信じる。ネットワークのキャリア、接続プロバイダ、クラウド事業者などが必要とするテレコム機器の開発、製造に用いられるモデムチップを始め、Intelは引き続き消費者がもっとも必要とするワイヤレステクノロジーを提供し、5Gネットワークの実現に向けて全力を挙げていく。
この後、司法省の反トラスト法に基づくものなど規制当局の審査が行われるが、Appleでは第4四半期中にこの買収手続きを完了できると考えている。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook)