AppleはIBMと戦略的提携関係を結んだことを発表した。これによりIBMの150以上のエンタープライズ向けITアプリとツールがAppleのプラットフォームにネーティブで移植される。同時にIBMは世界各国でAppleのiPhoneとiPadを顧客企業に販売する。CNBCのインタビューに答えて、AppleのCEO、Tim CookとIBMのCEO、Virginia Romettyは「AppleとIBMはぴったりと合うジグソーパズルのピースのような関係だ」とその提携が理想的であることを強調した。
この提携によってAppleはIBMのビッグデータとそのアナリティクス処理能力にアクセスできるようになる。またIBMと提携して開発されるクラウドアプリは「下はiPhoneやiPad」までサポートする。これにより、iOSベースのクラウド・サービスはセキュリティー、アナリティクス、大規模モバイルデバイス管理ツールなどが飛躍的に強化される。
いわゆるiOS向けのIBM MobileFirstソリューションはさまざまな業種の特殊な企業ニーズに合致したアプリを提供する。CookとRomettyは航空機のパイロットの支援アプリを例に挙げた。またAppleは、IBMの10万人もの業種ごとの深い現場知識を持つコンサルタントの力を借りられるのはAppleがエンタープライズ・アプリを開発する上でこのうえない助けとなると指摘した。
ここ数年、企業へのiPadの普及とiPhone、BYOD〔私物デバイス持ち込み〕のトレンドなどにより、Appleのエンタープライズ分野への参入の条件が整いつつあった。
AppleとIBMがまず参入を狙う分野はプレスリリースによれば、小売、ヘルスケア、金融、保険、旅行、運輸、テレコムなどになるという。アプリケーションのリリースはこの秋から来年いっぱいかけて順次行われる。その内容はクラウドストレージ、セキュリティー、MDM〔モバイルデバイス管理〕からプライベートなアプリ・ストアまでエンタープライズ・システムの全分野にわたる。つまりGoogleが展開しつつあるPlay for Enterpriseに似ているが、Appleの場合は、IBMという膨大な実績を持つエンタープライズ分野の第一人者の力を借りることができるわけだ。
この提携にはAppleCare for Enterpriseも含まれ、顧客のIT部門に対し、24時間年中無休のサポートを電話とオンラインで提供する一方、IBMの社員はオンサイトでのサポートを行う。IBMは企業顧客に対してiPhoneとiPadの販売(リースを含む)を行う。
業界アナリストのTim Bajarinは、「この提携はGoogleとMicrosoftのエンタープライズ向けモバイル戦略にとって大きな打撃だ」 と指摘する。
Googleの次世代モバイルOS、Android Lの発表が近づく中、AppleとIBMの提携は今後さらに深化し範囲を広げていきそうだ。いずれにせよ、今秋にも始まるというこの提携に基づくアプリのリリースに注目だ。
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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+)