Googleがブランド力のあるサイトを高評価する傾向があることは以前からいわれていますが(
参考インフォグラフィック)、今回はそんなGoogleのブランド贔屓についてSEOの専門家が意見を熱く交わした記事を。 — SEO Japan
今年行われたSMXでのランド・フィッシュキン氏によるキーノート、「The SEO Revolution Will Not Be Televised」(SEO革命は放映されません)は、大勢のオーディエンスを魅了していたが、私もそのうちの一人であった。同氏は、アクティブなプレゼンターであり、優秀なマーケッターでもある。個人的な意見だが、実際に賞賛に値する人物だと思う。
Moz Founder and COO Rand Fishkin discusses Google’s bias toward strong brands with Bryson Meunier.
とは言ったものの、プレゼンの最中に、「検索結果のブランドの独占および贔屓が、ついに現実のものになった」と発言した際は、思わず耳を疑った。
弊社、Resolutionでは、世界で有名な企業を何社か顧客に持っているが、本当にGoogleが大手ブランドを贔屓しているなら、これほど早いペースで弊社が収益を伸ばすことは不可能であり、実際に、ブランドは、SEOに今まで以上に資金を投じている。
これは、2014年にSEOの予算を増やす予定があると答えた社内のマーケッターは47%(エージェンシーのマーケッターに関しては、実に69%)であった一方、減らすと答えたマーケッターは5%のみであった現状と一致する。
Googleが、自然にブランドを贔屓しているなら、なぜ、ブランドは、わざわざSEOに多額の資金を投じる必要があるのだろうか?代わりに、ブランディングに資金を投じるべきではないのだろうか?答えは明らかだと私は思う。Googleの検索では、ブランディングだけでは、目立つことが出来ないため、SEOにも投資しているのだ。
また、2年前、SMX Westでのアーロン・ウォール氏が行った主張への反対の証拠を示したことがあったが、個人的な見解では、この傾向は今でも変わっていないと考えている。
Googleの1ページ目で有名なサイトを含むクエリが、過去2年で約27%増加したことを示すMozcastのグラフをランド・フィッシュキン氏は、プレゼンで紹介していた。そこで、その見解をより深く理解するため、実際に本人に連絡を取ることにした。
私は、この問題を過去に議論したことがあり、ブランドへの贔屓が存在すると言う主張には、懐疑的な立場を取っている。しかし、闇雲に信じているわけではなく、あくまでも科学者として、この問題に向き合っている。そのため、ブランドへの贔屓が実在し、実証するデータがあるなら、喜んで考えを変える用意はある。
ランド・フィッシュキンの提言: ブランドになれ…と言うけれど
フィッシュキン氏に実際に話を聞き、そして、プレゼンを聞いた限りでは、全体的なメッセージに関しては、誤っていないと私は思った。ブランドへの贔屓が話題になる度に、Googleの偽善者行為が指摘されるか、あるいは、競争の激しいキーワードにおいて、ブランドには勝てないと言う不満が噴出する。しかし、ランド・フィッシュキン氏は、正々堂々と勝負し、ブランドになれと提言している。
ブランドの構築に苦労している会社が、検索においても苦労しているとしても、このプレゼンのアドバイス自体は間違えていない。
ターゲットにするキーワードには、現実的な視点で考える必要がある — 知名度、予算、そして、リソースの面で全て上回るサイトと競争する方針は、現実的とは言えない。SEERのウィル・レイノルズ氏が、3月にオレゴンで行われたIRCE Focus: Web Designのプレゼンテーションで、この点を巧みに実証していた。レイノルズ氏は、Googleが、キーワード[dresses]で、Macys.comよりも、レイノルズ自身が運営する知名度の低いドレスストアをなぜ上位にランク付けするべきなのかと力説していた。
このような大手企業のサイトを、一時的な小手先の手法を用いて倒そうとするのではなく、サイトと製品の質を改善して、アウェアネス、自然のリンク、そして、シェアを増やしていくべきである。ビジネス、そして、ブランドを構築することに力を入れる必要があり、ブランドの強さ、人気、そして、オーソリティの代わりのような扱いを受ける数値ばかりに固執しないでもらいたい。
ちなみに、私はこの考え方を100%支持している。ただし、ブランドの贔屓に関する考え方は変わらない。私は今でもブランドの贔屓は存在しない、と言う立場を取っており、万が一、存在するとしても、それは因果関係ではなく、相互関係によるものだと考えている。事実、誰でも知っているような有名なブランドの中には、ブランド名自体は有名であっても、Google検索で苦戦しているものもある。ブランドがスパムを行うことが出来る点、そして、実際にスパムを行うと、一般のサイトと同じように、Googleにペナルティーを科される点を覚えておこう。
そもそもブランド贔屓とは?
Google検索が、ブランドによって独占されている、とはどんな状態を指すのだろうか?ブランディングの「他の製品と見分けるため、あるいは、区別するために、名前、シンボル、もしくは、デザインを作る」と言う定義は、曖昧であり、ウェブサイトのあらゆるアイテムが含まれてしまうことになる。 プレゼンでの発言の真意をフィッシュキン氏に尋ねてみたところ、次のような答えが返ってきた:
SEOの関係者は、Googleが、ノンブランドよりもブランドを優先する、と昔から推測していたことを私は強調したかった。事実、Googleの重役は、「ブランドは、清潔な状態を取り戻すための解決手段だ」と何度も発言しており、また、Googleの社内では、積極的にSEOを行うウェブサイトが、良質なコンテンツと優れた製品を提供するサイトよりも優先されるのは、おかしいと言う考えが根強く存在すると私は思っている。さらに、ペンギン、ハミングバード、そして、パンダ等のアルゴリズムの変更(そして、その他の小規模な変更)により、検索結果で、ブランドを目立たせるための全面的な贔屓が強くなっている。
その上、アルゴリズムの贔屓と共に、ブランドを助ける二次的なインパクトが数多く存在する。Googleは、ソーシャルシグナル、ユーザーデータのシグナル、利用データのシグナル、そして、各種のデータを利用することが可能であり、Googleに評価される優れたアイテムをブランドはより多く持っていると言える。また、事実として、過去5年間、多くのブランドが、SEOに真剣に資金を投じるようになり、目標達成に向けて力を入れている。
さらに、私はRap Geniusが10日間のペナルティーを受けた後、Googleに復帰した件に関する意見を尋ねた。すると、ランド・フィッシュキン氏は、Googleがブランドを贔屓している領域をもう一つ挙げた:
Rap Geniusの件は、ブランドが、小さなサイトとは別の扱いを受けている何よりの証拠である。Rap Geniusは、検索結果を操作する試みを行ったために、ペナルティーを受けたものの、すぐに復帰した。小規模なサイト(あるいは、知名度の低いブランド)のSEOを実施したことがある専門家なら、ペナルティーが、数ヶ月間、数年間、あるいは、Rap Geniusが行ったような行為に手を染めた場合は、永遠に続くことを理解している。その他にもExpedia、BMW、そして、Google自身も、操作を試みた結果、ペナルティーを受けていたが、通常のGoogleの懲罰と比べると、警告程度でしかなかった。
つまり、ランド・フィッシュキン氏は、Google検索におけるブランドの独占に貢献している5つのファクターがあると指摘している:
- 検索結果でブランドをより目立たせるアルゴリズムの贔屓。
- ユーザーが期待する大きなブランドを検索結果で優先することをGoogleが明言している。この方針は、最終的に、アップデートによって、優先されるようになる。
- 理論上、必ずしもノンブランドではなく、ブランドを支援する各種のデータをGoogleが利用することが出来る。
- ブランドが、SEOの取り組みを強化し、ノンブランドによる上位へのランクインがますます難しくなっている。
- ペナルティーに関して、Googleがブランドを大目に見る傾向がある。
これは、過去に同じ主張を行った大勢の人物が挙げる理由と同一である。
ブランドの贔屓の定義はこれで終わったので、ランド・フィッシュキン氏が挙げた5つのファクターを一つずつ詳しく見ていこう。
1. アルゴリズムのアップデートにおける贔屓
ペンギン、パンダ、そして、その他のアップデートによって、ブランドと比べて、小規模なウェブサイトがダメージを受けてきた経緯は、誰もが知っている。しかし、Googleのアップデートによる、ネガティブな影響をブランドが受けていないことにはならない。
Demand Mediaと言うサイトを覚えているだろうか?同サイトに関する関心が最高潮に達していた時、Demand MediaのIPOは、15億ドル前後の時価総額を記録していた。しかし、Google検索で目立つために、薄っぺらいコンテンツを作っていたその他の小さなブランドと同じようにパンダによって、Demand Mediaは壊滅的なダメージを受けたのであった。また、パンダは、有名な自動車雑誌のMotor Trend、さらに、Yahoo!が所有するAssociated Content(その後、Voiceに名称を変更)も攻撃していた。
ブランドは、ペンギンにも痛めつけられていた。Dish Networkは、ペンギンがリリースされると、トラフィックを27%落としていた。Salvation Army、REEDS Jewelers、そして、その他の有名なブランドもペンギンアップデートが原因で、検索結果でのビジビリティを大幅に失っていた。
このようなメジャーなアルゴリズムのアップデートによって、さらに多くの小規模なサイトが、壊滅状態に追い込まれたのであろう。それは、残念だったとしか言いようがない。しかし、Googleは、薄っぺらいアフィリエイトのコンテンツをターゲットにしていることを明言しており、また、大きなブランドよりも、アフリエイトや小さなサイトの方が多いのが現実である。
その上、経験上、大きなブランドは、通常、評判を貶める可能性がある行為に関しては、嫌う傾向がある。ブランドにとっては、ペンギンとパンダが一掃を試みた類のランキングを操作する短期的な戦略からは、得られるものが少なく、反対に、失うものが多い。ブランド贔屓の複雑な局面を取り上げるまでもなく、これだけでも、大きなブランドよりも、小さなブランドの方が、アップデートの影響を受ける理由は明らかである。
2. Google内に存在するブランド贔屓
確かに、エリック・シュミット氏は、2008年にパブリッシャーとエディターに向けて、「ブランドは問題ではなく、解決策である。ブランドは、清潔な状態を取り戻すための解決策だ」と発言していた。しかし、この発言の直後に、次のように述べていたことはあまり知られていない:
Googleは、パブリッシャーの方々に成功して欲しいわけではない。ランキングを上げる基本は、関連性を上げることだ。
センセーショナルな見出しが報道されるものの、それが真実の全てではない。
Googleの従業員は、他の機会でも、アルゴリズムに加える変更において、ブランド贔屓が存在すること、あるいは、ペナルティーに関して、特別扱いしていることを否定している。例えば、Googleのスパム対策を統括するマット・カッツ氏は、2009年にこのように語っていた:
Googleの社内では、少なくとも、検索ランキングチームにおいては、ブランドのことを考えていない。代わりに、信頼、オーソリティ、評判、PageRank、質の高さ等を考慮している。
フィッシュキン氏によるプレゼンと同じようなプレゼン、そして、「現在、ブランドはメジャーなランキングの要素になった」と断言するこの記事と同じような記事に何度も遭遇しているため、Googleは、態度を明らかにする必要があると私は思った。しかし、この記事を投稿するにあたって、Googleにチャンスを与えたものの、「現時点で、特に言うことはありません」と言う答えが返ってきた。
この問題は、大半のSEOの関係者がGoogleを信頼していない事実と関連しているのではないだろうか。しかし、「ブランドは、清潔な状態に戻す解決策だ」と言う発言を信じているにも関わらず、その他の発言には耳を塞いでしまうのは、矛盾しているとしか言いようがない。
Googleは、信頼、オーソリティ、評判、そして、高品質を贔屓しているが、このような要素はブランドに限定されているわけではない。サイトの品質に向上をブランドの構築と結びつけて考えることは可能だが、同じだとは限らないことを理解しておく必要がある。
3. Googleのリンクシグナルを超越した多様化はブランドに有利に働く
この主張は、Googleが、リンクのデータを軽視し、代わりに、ソーシャルシグナル、ユーザーのデータ、エンティティ等を網羅するようになると、ブランドが最も得をする、と言う考えに基づいている。この考えが正しいとは私には思えない。
FacebookとTwitterで特に人気が高いエンティティ(人物、地名等)のタイプを見ていくと、ソーシャルメディアでファンとフォロワーを獲得する点に関しては、ミュージシャンが圧倒的に強いことが分かる。
FacebookとTwitterでフォローされているエンティティを分類すると、ブランドはその他のエンティティと比べて、シェアされている回数が圧倒的に少ない(クリックすると拡大して閲覧することが可能)。
また、「ブランド」を拡大して解釈し、その他のサイトとの違いを示す名前を持っていることを理由に、全ての上位のサイトをブランドと認識したとしても、この名前がなくても健闘しているノンブランドは存在する。
例えば、Zyngaが所有するゲーム、Texas Holdem Pokerは、ブランドではないものの、15位であり、7000万名のFacebookのフォロワーを抱えている。同様に、basketball(バスケットボール)は、5700万人にいいね!されており、football(サッカー)は、4400万人に、そして、pizza(ピザ)は、それぞれ、3300万人にいいね!されているが、どれもブランドではない。反対に、2013年のブランドリストで94位であったPizza Hutのフォロワーは、ノンブランドのピザのフォロワーの3分の1である。
ブランドはエンティティであり、そのエンティティは、ハミングバード、そして、ナレッジグラフのおかげで、優遇されるはずだが、エンティティだと言う理由でブランドが、Google検索で活躍しているとすると、ブランドであると言う事実は、二次的だと言っても過言ではない。
そこで、フィッシュキン氏に、ブランドではなく、エンティティを思い描いているのではないか、と尋ねたところ、「確かにその通りだが、名前がよく知られている強力/影響力の強いブランドは、さらにシグナルを加えており、その結果、エンティティを優遇する機能を超えて、ランキングを強化している可能性がある」とフィッシュキン氏は指摘した。
4. ブランドはSEOに力を入れている
この点に関しては異論は全くない。様々な規模のブランドが、実際に、SEOを始めとするデジタルマーケティングに力を入れている。
ブランディングサービスを提供するInterbrand社が世界の一流ブランドと特定したブランドのうち、66%はウェブサイトで何らかの形でSEOを実施している。LinkedInで、ブランド名と用語「SEO」を検索すれば誰にでも分かることだが、一流ブランドの多くは、SEO専用の従業員を抱えるか、業者にアウトソースし、フルタイムで実施させている。実は、この比率は66%を上回る可能性がある。なぜなら、SEOを実施した経験を持つデジタルマーケティングのエキスパートを抱えているものの、SEOを実施している、もしくは、実施したことがあると明記していない企業が多く存在するためだ。
ただし、ブランドが、ある程度、力を入れていると言っても、SEOが有効だとは限らない。SEOを実施していると認めたブランドのうち、63%が、2012年以来、検索結果でのビジビリティが下がったと指摘している。SEOのスタッフは、状況を変えるために採用されたはずだが、力を入れ始めたばかりであり、まだ結果は出ていないのが現実である。
ブランドの66%がSEOを実施するものの、必ずしも成果が表れているわけではない。
それでも、資金を投じていることは事実だ。SEMPOは、今年、State of Search(検索の現状)レポートでここまで詳しいデータをリリースしているわけではないが、昨年、同サイトは、SEOに300万ドル以上投じたと答えた企業が5%に達し、前年の1%から増加したと報告していた。
SEMPOの図表 — 300万ドル/年以上をSEOに費やす会社が5%を占める。
このグラフからは、SEOに資金を投じるサイトが、大きなブランドなのか、あるいは、規模は小さいものの予算を潤沢に持つブランドなのかを判断することは出来ない。しかし、その多くは、平均的なSearch Engine Landの読者の方々が携わるウェブサイトよりも、規模が大きいのではないだろうか。
5. Googleは大きなブランドに甘い
この点に関しては、納得できる部分もある。大規模なブランドのサイトで14年間に渡ってSEOを実施してきたが、小さなブランドでは手が届かないレベルの技術にアクセスしていた大企業は1社しかない。反対に、その他のサイトと同じように、ウェブマスター向けのヘルプフォーラムに質問を投稿するよう求められることの方が多い。この扱いは矛盾している。
多くのSEO業者と同様に、私は世界的な企業のSEOを担当したことがあるが、マット・カッツ氏を含む、Googleのエンジニアと会って、ランキングの改善について話し合ったことはない。このような事態がクライアントに起きるのは、異例であり、先程も申し上げた通り、1度しか見たことがない。
Rap Geniusに関しては、ブランドと言うよりも、ベンチャーキャピタルに支えられたスタートアップであり、Googleは、同じような違反を行ったサイトと比べて、甘い処分を与えたと言えなくもなく、残念であった。しかし、Rap Geniusは、今でも同分野のAZLyricsに負けている。歌詞を探す際には、いずれかのサイトを指定しているわけではないため、ブランディングが原因ではない。
ペナルティーが軽いと言う主張は、全てが正しいわけではない。大きなブランドが、インデックスから削除されると、たとえ2週間であれ、多くの小規模なサイトが一生かかっても得られないような金額の収益を失ってしまう。
数年前、ある企業から相談を受けたことがある。この企業が採用していた大手のSEO業者が、リンクを購入したため、ナビゲーショナルな用語で1ヶ月間に渡って、6ページ目に格下げされてしまったようだ。同社は、売り上げが100万ドル減ると推測していた。この業者は秘密保持契約を結んでいるため(そもそも、SEOコミュニティにとって、発表するメリットはない)、メディアで報じられることはなかったが、実際に起きた出来事である。100万ドルが、軽いと思うなら、私よりもSEOで利益を得ているとしか考えられない。
しかし、確かに、Googleは、ペナルティーに関しては、ブランドを大目に見ている節がある。ランド・フィッシュキン氏が、プレゼンで説明していたように、無理もない処置だと言える。ユーザーが欲しい情報を見つけることが出来ず、検索の質が下がるなら、必要以上に長くインデックスから排除するのは、自殺行為に等しい。
例えば、The Sandlotと言うシカゴ北西部の郊外に個人的に好きなハンバーガーショップがある。以下に、今年のGoogleトレンドの検索量を掲載する:
大半の小さなブランドと同様に、シカゴ北西部のハンバーガーショップ、The Sandlotは、Googleトレンドに登録されていない。
ご覧のように、登録する上で十分な量の検索が行われていない(残念で仕方がない。是非、この店のTwo-n-Twoを試して欲しい)。
そして、次に、The Sandlotに味が近いと言う意見が多いFive Guysの検索ボリュームを記したチャートを掲載する:
Five Guysの検索は多く、大きなブランドに対するペナルティーが長期化されると、ユーザーが困る。
Googleが、The Sandlotを検索結果から消しても(The Sandlotはウェブサイトを持っていないため、簡単に消すことが出来る)、どこに行ってしまったのかと考え、店舗に足を運んで、SEOのプロを雇った方が良い、とおせっかいを焼く人はほとんどいないはずだ。大半のユーザーは、別のハンバーガーショップを検索する。
一方、もしも、GoogleがFive Guysを検索結果から消してしまったら、大勢のユーザーが気に掛けるはずだ。なぜ、Five Guysを検索しているのに、Five Guysの情報をGoogleが返してくれないのか分からず、Yahoo!やBingで代わりに検索を行う人も出てくるかもしれない。
Five Guysをインデックスから外す行為が、Googleの検索の品質を落とすと思うなら、McDonald’sを結果から外したら、どうなってしまうか考えてもらいたい。ブランドに加え、検索エンジンのユーザーまでもがペナルティーを与えられるようなものだ:
McDonald’sに長期間に渡ってペナルティーを与えると、McDonald’sを検索したユーザー、そして、Google自身も困る。
そのため、確かに、ある意味、ブランドを大目に見る傾向はある。なぜなら、Googleは、ユーザーが求めている結果を提供する必要があり、そのユーザーはブランドを求めているためだ。その他のエンティティにも言えることだが、ブランドは、別のサイトが取って代わることが出来ない特徴を持っている。
2年間で27%増加した理由
それでは、ブランド贔屓が、アルゴリズムに反映されていないとしたら、Google.comの1ページ目の「Big 10」を含むクエリが、過去2年間で、27%増加しているのはなぜだろうか?実は、様々な理由が考えられる。
まず、ここで取り上げている問題を確認しておこう。フィッシュキン氏が、プレゼンで取り上げたMozcastのチャートでは、Googleの1ページ目での、以下の「Big 10」のドメインを含むクエリの比率が記されていた。
ランド・フィッシュキン氏がプレゼンで用いたスライド — 過去2年における1000のキーワードでの、大きなサイトによるランキングが、12%から16%に改善されたことが、ブランドの独占を証明している。
以下に、2014年5月8日時点での、Big 10を挙げていく。ただし、米Googleで多くのビジビリティを獲得しているサイトに応じて、サイトが変動する可能性がある:
- en.wikipedia.org
- www.amazon.com
- www.youtube.com
- www.ebay.com
- www.facebook.com
- www.webmd.com
- www.walmart.com
- www.pinterest.com
- twitter.com
- allrecipes.com
Mozcastが追跡した1000のキーワードにおいては、ピーク時で、上のドメインは、クエリの16%で1ページ目に掲載され、最も低い時点では、12%近くまで下がっていた。Mozは、過去2年間で、27%の割合で増加していると指摘していた。
この増加は、検索結果でのブランドの独占を示唆しているのだろうか?私が示唆していないと思う理由を幾つか挙げていく:
1. 大きなサイトではあるが、必ずしも大きなブランドではない。トップ 10のサイトのうち、Interbrandの2013年版トップ 100ブランドに入っていたブランドは、3-5つのみであった。その他のサイトは、明らかに大きなサイトではあるが、ブランドが大きければ大きい程、Google検索で取り上げてもらえる確率が高いと言う主張を証明しようとしているなら、「Big 10」の70%が、ブランドの規模を計測するプロの基準で大きなブランドではないなら、この理論には無理がある。
また、トップ 10のブランド(Interbrandのリストによると)は、Big 10には入っていないため、27%の増加に、ブランドの規模や力が関係している可能性は低い。
2. ブランドは、追跡したクエリの84%に対して、1ページ目の検索結果に掲載されていない。この場合、独占と言うと、少なくとも50%を支配する必要があるのではないだろうか?12%から16%に上がっただけでは、どう考えても独占とは程遠い。
3. そもそも、クエリのうちブランドの用語が占める比率が分からない。1000のクエリと言うだけでは、その全てが、Facebookに関わるクエリなら、検索結果の1ページ目でFacebook.comが占める割合は、16%を超えるはずである。クエリがブランドの用語でも、ナビゲーショナルな用語でもないなら、それはまた別の問題だが、Mozcastの説明では、この点には一切触れられていない。
16%と言う比率が、検索結果のブランドの独占状態を表していると考えたとしても、その他の、より可能性の高い理由が原因だと考慮すること出来るのではないだろうか?:
A. 大きなブランドと品質、オーソリティとリンクの間に強い相互関係が存在する。これは必ずしも因果関係を示しているわけではない。
B. Googleは、様々な事柄に関連するサイトに見返りを与えており、そのうちの一部がブランドである。SEMRushとSearchMetricsで上位のサイトが持つ共通点を確認したところ、最も目立った共通点は、そのうちの幾つかが大きなブランドであった点ではなく、多くのトピックに関連している点であった。
大きなブランドと考えるかどうかは別にして、Wikipediaが、InterbrandがNo.1に選んだブランド、Apple.comよりも8倍多くの検索トラフィックを獲得しているのは、Wikipediaがより大きなブランドであるからではない。コンピュータとiPhoneだけでなく、様々な事柄に関連しているため、Appleよりも多くのトラフィックを獲得しているのだ。
事実、SEMRushによると、Wikipediaは、Apple.comよりも、キーワードの数自体が、8倍多いようだ。SEMRushでApple.comがトラフィックを獲得している領域を調べてみると、その多くが、Appleとは関係のないナビゲーショナルなキーワードであることが分かる。App Storeのおかげで、Appleは、インターネットで有数のブランドにおいて1ページ目にランクインしており、そのため、自分達のブランドの力に加えて、トラフィックを獲得する原動力となっているのだ:
AppleのApp Storeは、ナビゲーショナルな用語に対する関連性を高める基盤となる(クリックすると、拡大して表示することが可能)。
C. Googleは、エンティティに見返りを与えており、ブランドは、そのエンティティのタイプの一つである。
D. Googleが大きなブランドを重視している理由として挙げた上の根拠は、アルゴリズムとは全く関係がない(ブランドに長期間にわたって罰を与えると検索の品質を落とす、ブランドもSEOに力を入れている等)。
結局、疑いは晴れず
ブランドが、Google検索において、他のサイトよりも優先されていると考えることになった要因について、インタビューに応じてくれたフィッシュキン氏に感謝している。本人にも伝えたように、私は大勢の人達がフィッシュキン氏を知る前から、同氏のレポートを読んできたし、たとえ、同意することが出来なくても、その意見を尊重してきた。
フィッシュキン氏と同じように、私も疑り深い人間であり、疑り深い人間と言う者は、オッカムのかみそり論(出来るだけ仮定を少なくして、証明を行うべきと言う理論)を持ち、身近な問題を理解するために不要なセオリーを除外する傾向がある。この問題を詳しく検証してみた結果、ブランド贔屓が、様々な形式において、存在するとは、今でも私には思えない。データが、このセオリーを裏付けていない。観測された現象は、データがなくても、説明することが出来る(はずである)。
SMX Westでのランド・フィッシュキン氏のプレゼンに刺激を受けて、ブランドの構築を始めたなら、そのまま続けてもらいたい。先程も申し上げた通り、「弱点を探して、利用する」SEOの時代は幕を閉じつつあり、終わって良かったと私は思っている。 この手法は、消費者にとって、全く役に立つことはなく、SEOではなく、単なるスパムである。
しかし、ブランドを構築する際は、それだけやっていれば、Google検索で上位にランクインすることが出来ると考えないでほしい。会社、そして、SEOにとって、ブランドを構築することで得られるメリットは存在するが、Google検索で上位にランクインする要素は、もう少し奥が深い。
追伸
重要な考えを一緒に積み上げていくことを目指し、私は、投稿する前に、この記事の最終的な草稿をフィッシュキン氏に読んでもらった。草稿に関する同氏のフィードバックを以下に掲載し、その後に、私のレスポンスを綴っていく。
2段落目で、ブランドが、SEOで成功をしていたら、会社が今ほど順調に成長していなかった、と指摘しているが、この論理は、あまりにも大ざっぱであり、関係がないように思える(私の主張、そして、取り上げてられていたアーロン・ウォール氏の主張と比べて)。事実、主張を弱めてしまっている。
ご指摘には感謝する。ブランドがSEOで成功していたら、私の会社が今ほど順調に成長していなかったことは重要ではない。弊社は、様々な規模のブランドをSEOで成功させるべく支援している。もちろん、SEOにおける成功が、私の会社にマイナスに働くことはなく、恐らく、間接的にではあるが、ある程度プラスに働いているのだろう。とりわけ、ブランドの構築に全く時間を費やしていないなら、尚更である。
しかし、現実として、ブランディングに莫大な資金を投資し、大規模な、信頼されるブランドを作り上げたものの、SEOの業者を雇って、検索でのビジビリティを改善している企業は多く、ブランディングが、Googleで目立つために一番重要だと言う見解には、やはり賛同しかねる。
ブランディングはSEOの一部であり、既にブランド構築を行っているブランドは、SEOにも投資するべきだと言っているように聞こえるが、この主張は、私が今までのキャリアの中で仕事をした大勢の重役クラスには通じない。必ずしも私の理論ではないが、重役の多くは、既に信頼されるブランドを構築しているため、SEOを不要だと考え、代わりに予算をブランディングに割り当てることを望む。フィッシュキン氏が、この主張とは、距離を置いていることが分かり、ほっとした。しかし、このように解釈されていても、何ら不思議はない。
「ブランドはスパムをする可能性があり、– 実際にスパムをすると、他のサイトと同じように、Google検索でペナルティーを科される」と指摘しているが、この業界の関係者なら、誰も賛同しないはずだ。確かに大きなブランドもペナルティーを科されるものの、ペナルティーの厳しさは、大きなブランドではないサイトとは大きく異なる。
この点に関しては、記事の後半で説明している。ペナルティーは異なるものの、期間以外にも、厳しさを示す要素は存在する。事実、ブランドは、収益の面で、大きなダメージを受け、そして、検索エンジンのユーザーが、人気の高いブランドを検索するものの、当該のブランドが表示されない場合、検索の品質が下がってしまう。また、この手の話をする関係者の多くは、大きなブランドを顧客に持っていないと私は考えているため、私の主張が受け入られないのは、無理もないのかもしれない。
ブランドとして、Demand Mediaを挙げていたが、私は(そして、他の大勢のSEO関係者も)、Demand Mediaが、数あるメディアサイトの中で、サイト、そして、コンテンツにおいて、強力なブランドを作る取り組みを思い切り失敗させたサイトだと考えている。事実、Demand Mediaは、圧倒的に劣悪なブランドを持つ、圧倒的に大きな会社である。そのため、Demand Mediaが提供するゴミを一掃する行為は、Googleがブランドを優先する典型的な例だと私は思う。
この指摘は興味深く、ある程度、同意することが出来る。しかし、マーケティングにおけるブランドの基礎的な定義を大きく超えており、この点を説明するために別の用語を利用するべきだと私が考える根拠を後押ししている。
Demand Mediaは、明確に、その他の製品とは異なるアイデンティティを確立し、差別化を行った。さもなければ、ここまで大きく成長することは不可能であったはずだが、Google検索ではプラスに働かなかった。 プレゼンで用いられていたブランディングと言う用語は、品質、オーソリティ、そして、信頼性により力を入れる取り組みを意味していたのだろうが、範囲が広いブランドの領域を外し、品質、オーソリティ、そして、信頼性と言ってくれていたら、混乱をある程度抑えることが出来たはずであった。
個別の例と総合的なスタッツを比較する手法は、主張を行う上で、全く向いていない。Googleが一部のブランドにペナルティーを与えているからと言って、あるいは、一部の大きな企業が苦戦しているからと言って、ブランドが、総じて、ビジビリティを失っているとは言い難い。
だからこそ、Interbrandのデータで補足をした。ブランディングのエキスパートが、世界で大きなブランドとして選んだ100のブランドは、総合的に見て、Google検索でビジビリティを失っていた。しかし、個々の例を見ていくと、現実が、「Googleがあらゆるケースでブランドを贔屓している」と言うセオリーと矛盾している点を裏付けられる。
マット・カッツ氏の言葉: 「ブランドに関して考えているわけではない。信頼性、オーソリティ、評判、PageRank、高い品質等を重視している」は、Googleのブランド贔屓の典型的な例である。なぜなら、ブランドとノンブランドの最大の違いは、(PageRank & 品質が高くても)消費者の信頼、オーソリティ、そして、評判を持っているかいないかの違いだからだ。
この点には、同意しかねる。Merriam-Webster(辞書)も同意しないはずだ。Entrepreneur.comはブランディングを、「他の製品と見分けるため、あるいは、区別するために、名前、シンボル、もしくは、デザインを作る」マーケティングの取り組みと定義していた。
フィッシュキン氏が、ブランド構築を、消費者の信頼、オーソリティ、そして、評判の構築と考えていることは良く分かった。しかし、Googleは、一部の専門家の見解とは異なり、ブランドをランキングの要素とは見ていない。Googleは、良質なブランドの副産物を見ているだけであり、それが、消費者の信頼であり、オーソリティであり、そして、評判なのだ。また、Googleは、ブランドのコンセプトを持ち出すことなく、今までもこういった要素を見てきた。
ブランドのコンセプトを持ち出すと、不要に物事を複雑にしてしまい、問題にぶつかってしまう。消費者の信頼、オーソリティ、そして、評判を確立したブランドを作るだけでは、Google検索で良い結果を残すことは出来ない。事実、Interbrandがリストアップした全てのブランドが、この3つの要素を全て兼ね備えている。
Google検索をブランドが独占する時代が到来したと言うニュースを聞き、大喜びした、大きなブランドの従業員は絶対に大勢いるはずだ。SEOが滅亡し、予算を別の場所に当てることを願っている人達のことだ。この点に触れているわけではないようだが、このような考えには反対する。なぜなら、実際に予算をSEOから外してしまうと、損をしてしまうからだ。
この引用を使って、主張を裏付けようとしているが、実は逆効果だ。記事の後半で、ブランドのみに限られたことではないと指摘しているが、実際には、間違いなく、ブランド、そして、ブランディングの領域であり、ブランド構築をマーケティングの一部として実施することを私が勧める理由である。
ブランド構築に力を入れる方針を勧めることに、全く問題はない。ただし、Googleがブランドを重視しているのではなく、ブランド構築の副産物として考慮している要素を見ている点を、オーディエンスが理解していることが前提である。また、ブランド構築に多くの時間を費やし、Google検索にほとんど影響が現れない可能性がある点を理解していることも前提である。プレゼンテーションのリアクションを見る限り、この点は全く理解されていないと思う。
Interbrandの選択を妥当なリストとして利用するのは、如何なものかと思う。なぜなら、私は「大きなブランド」のみを取り上げているのではなく、ブランディングに力を入れ、ブランドの要素 — 個性、信頼、評判、オーソリティ、消費者の認識 — を手に入れたサイトを対象としているからだ。
確かにその通りだが、リストアップされたブランドは、莫大な資金を投じ、世界有数のブランドを作り出した企業ばかりである。Google検索でビジビリティを失っている事実は、「ワールドワイドなブランドに近づくと、Googleの検索システムで(直接敵、そして、間接的に)より多くのメリットを得られる」と言うフィッシュキン氏のセオリーとは相容れない。Googleでのビジビリティを失っているのは、ワールドワイドなだけでなく、規模が大きく、信頼されているブランドであり、Googleのシステムで大きなメリットを得られるはずではなかったのだろうか?
長過ぎて読まなかった方のためのまとめ
この記事では、ブライソン・ムニエ氏とランド・フィッシュキン氏が、Google検索におけるブランド贔屓について、議論を行っている。どちらも強固なブランドの構築は、SEOを含む、様々な理由で、重要だと考えている。しかし、ムニエ氏は、ブランドの構築が、Google検索のビジビリティを高めると言う主張を裏付けるデータが十分ではないと指摘している。
この記事の中で述べられている意見はゲストライターの意見であり、必ずしもサーチ・エンジン・ランドを代表しているわけではない。
この記事は、Search Engine Landに掲載された「Quantifying Brand Bias In Search Results With Rand Fishkin Of Moz」を翻訳した内容です。
大半はランド・フィッシュキンの考察ではありましたが、SEOの今後もふまえて色々と勉強になる内容でした。オーソリティを益々重視していくであろうGoogleのアルゴリズム、ブランドが結果有利になることは自然の流れというか仕方ない気もしますが、コンテンツマーケティング等を活用して自分自身でブランドを作っていくこともまだまだ可能。「結局有名ブランドには勝てない」と諦めず、チャレンジしていきたいものですね。 — SEO Japan [
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