ポーラとANAが宇宙でも使える化粧品を共同開発、2023年の商品化を目指す

ポーラとANAが宇宙でも使える化粧品を共同開発、2023年の商品化を目指す

ポーラ・オルビスホールディングスANAホールディングスは9月11日、「宇宙ライフを美しく快適に」をコンセプトとして製品を共同開発するプロジェクト「CosmoSkin」を発表した。プロジェクト第1弾として宇宙でも使える化粧品の共同開発を開始し、まずは2023年の商品化を目指す。

CosmoSkinは、宇宙を意味する「Cosmos」と、肌を意味する「Skin」を組み合わせた言葉。ポーラ・オルビスグループは、肌の知見や製剤技術を活かし宇宙ライフに適した化粧品の研究開発を実施、ANAホールディングスは地上よりも宇宙環境に近いといわれている航空機内を実証実験の場として提供する。

ポーラとANAが宇宙でも使える化粧品を共同開発、2023年の商品化を目指す

ポーラ・オルビスグループでは、同社グループが目指す将来像に有用なヒントを得ること、またイノベーションの活性化を目的として宇宙に関する取り組みを行っている。2018年に、化粧品の既存の枠を超えた新価値創出を狙い研究戦略・知財戦略を策定し、研究成果のグループ最適配分の役割を担う「マルチプルインテリジェンスリサーチセンター」(MIRC)を発足させたことを機に、宇宙への取り組みを開始したという。

ANAホールディングスでは、新たな収益事業のひとつとして宇宙事業を検討する部門横断型プロジェクトを2018年1月に立ち上げ。宇宙旅行をはじめ宇宙輸送や衛星データ活用など新しいビジネスモデルの検討を進めている。

また、2019年の宇宙ビジネスアイデアコンテスト「S-Booster」において、ポーラ・オルビスグループの「美肌ウェルネスツーリズム」がANAホールディングス賞を受賞し、現在共同で事業化検討しているという。この連携をきっかけに、今回の共同開発プロジェクト「CosmoSkin」を開始した。

近い将来、民間宇宙旅行が可能になるとされることから、両社協力のもと、宇宙ライフを美しく快適にするための化粧品づくりを目指すという。さらには、宇宙という極限状態を想定しながら製品開発を進めることで、地上も含めた新たな豊かな生活につなげられるとしている。

例えば、極度に乾燥し水が貴重な船内環境に対応には、従来にない機能性が求められ、重力の小さい環境ではこれまでとは全く違った使用方法が求められる。これらが化粧品に革新を生む可能性を考えているという。

また限られた船内空間での微小重力生活では、全身に様々な変化が起こるとともに、メンタルウェルネスの維持などが課題となる。これらを解決するための技術は、高齢化社会や、コロナ禍の行動が制約されるニューノーマルにおいても、健康の維持・増進に役立つものとしている。

また、快適で楽しい宇宙ライフのための技術は、地上でのメンタルヘルス向上にも貢献するという。資源が極端に限られる・ゴミを最小限に減らすといった制約に合わせて技術を進化させると、そのまま地上における資源の有効活用・再利用などのサステナビリティ向上に活用することが期待できるとしている。

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女性向けヘルスケアD2Cブランド「WRAY」がローンチ、第1弾ラインナップのサプリメントや美容液など展開

女性向けヘルスケアD2Cブランド「WRAY」がローンチ、第1弾ラインナップのサプリメントや美容液など展開

WRAY(レイ)は9月2日、PMS(月経前症候群)やホルモンバランスのサイクルによる不調に着目し、女性の心・体・肌のリズムをサポートするセルフケアブランド「WRAY」をローンチ。第1弾ラインナップとして、「サイクルバランスサプリメント」(サプリメント)、「サイクルバランスセラム」(美容液)、「シルクウォーマー」(腹巻)の3製品を公式サイトにおいて発売すると発表した。

一部予約販売のほか、シルクウォーマーは9月下旬より予約販売開始予定。また、ローンチ記念としてサプリメントと美容液の2点セットを期間・数量限定30%割引の特別価格で予約販売する。

サイクルバランスサプリメントの価格は、税抜8400円(252粒/3ヵ月分)、サイクルバランスセラムは税抜8500円(50mL)、シルクウォーマーは税抜5800円。サイクルバランスサプリメント、サイクルバランスセラムは別途定期便を用意し、初回60%オフなどの価格設定がなされている。

WRAYは、生理やホルモンバランスに左右されず、安定した毎日を過ごしてほしいという思いから、第1弾ラインナップとして先の3製品を展開。

日本製にこだわり、サイクルバランスサプリメントは、婦人科医監修のもと心・体・肌のリズムをサポートする成分を配合。安心して口にできるよう、化学合成由来の添加物は使用せず、天然由来成分を採用している。また適切な製造管理と品質管理が認められたGMP工場で製造を行っている。

サイクルバランスセラムは、吹き出物や肌荒れが気になる生理前の期間のスペシャルケアとして、周期的な肌荒れを防ぐ美容液。女性ホルモンの働きが低下し、男性ホルモンの働きが優位になる時期の過剰な皮脂分泌を抑え、 肌荒れを予防する成分と合わせて、保湿・ハリをもたらす成分も配合。

100%天然シルク製のシルクウォーマーは、超薄手の生地で洋服にひびかず、季節を問わずお腹から腰、お尻まで温めるという。また、伸縮性を持たせるため天竺編みで編み上げ、3D⽴体裁断で身体にフィット。縫い⽬を外側にすることでチクチクを軽減した。

2020年4月設立の同社は「女性のベストパフォーマンスをサポートする」をミッションに掲げ、女性がホルモンバランスや年齢による体調の変化に振り回されず、社会でも家庭でも笑顔でパフォーマンスを発揮できるようサポートを行う。生理周期に基づくサブスクリプションモデル、パーソナライズアプローチなど、フェムテック×D2Cブランドとしての施策を積極的に展開していくという。

ブランド名・社名「WRAY」(レイ)の由来は、「W=women」(女性)+「ray」(一条の光、光線、広がる光)とし、「女性が光り輝き、誰かの光になり、広がっていくように」という思いを込めているという。エンパワメントや相互扶助をキーワードに女性の活躍、QOL向上をリードする企業を目指すとしている。

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カテゴリー:フェムテック

タグ:WRAY

フェムテックは細分化により妊娠計画以上の事業に成長する

女性にフォーカスしたヘルスプロダクト(フェムテックとして知られている)は、PitchBookにあるアナリストのメモによると、細分化を通じて成長する準備が整っている。生殖に関する問題にフォーカスした従来のものから対象を広げ、女性に影響を及ぼす数多くの健康問題に取り組んでいる起業家にチャンスがあるとみている。

フェムテックはヘルステックの中でも「かなり未開発」の分野だ。分析では、女性が医療に年間いくら使っているか、それはおおよそ最大5000億ドル(約53兆円)だ。一方で女性の健康問題に向けられているヘルスケアのR&Dがいかに少ないか、それはわずか4%だ。その格差を強調している。

メモによると、昨年女性にフォーカスしたヘルスプロダクトのグローバルマーケットは8億2060万ドル(約865億円)を生み出し、2030年末までに少なくとも30億ドル(約3160億円)に達すると予想されている。フェムテックへの2019年のVC投資は5億9210万ドル(約624億円)で、2018年の6億2030万ドル(約654億円)からわずかに減った。今年の投資額はこれまでのところ57件のディールで3億7620万ドル(約400億円)となっていて、2019年と同じようなペースだ。

PitchBookは従来の妊娠に関するもの以外のフェムテックに成長のチャンスがあるととらえていて、それには次のようなものがある。女性の10人に1人が患っているとされる痛みを伴う子宮の内膜の病気である子宮内膜症、「一般的な健康&病気管理のためのパーソナライズされている女性専用のアプローチ」、中でも心臓の健康、疼痛管理、糖尿病と体重の管理、閉経への移行などにフォーカスしているものだ。

「フェムテックはまだニッチな産業である一方で、世俗的な要因でこの分野における新たな成長機会が拡大すると確信している」とアナリストのKaia Colban(カイア・コルバン)氏とAndrew Akers(アンドリュー・エイカーズ)氏は書いている。「ここには、ベンチャーがサポートするテクノロジーコミュニティにおける女性代表者の増加、女性の健康問題に対する意識の高まり、アフリカやアジアの一部の国の女性でみられる感染症の流行なども含まれる」

「さらには、フェムテックプロダクトの大半は従来、妊娠に関する健康にフォーカスしてきたが、女性の健康研究への新たなアプローチが新規のプロダクトやサービスにつながると確信している」

この分野の垂直的拡大はテーラーメイド医療の世界的な成長によって推進されている。テーラーメイド医療業界は2025年までに3兆2000億ドル(約337兆円)に達し、その間の CAGR(年平均成長率)は10.6%と予想されている。

ベンチャーコミュニティにおいて女性は過小評価されてきたが、それは投資家が女性の健康問題を解決するプロダクトにそれほど注意を向けてこなかったことの表れだ。男性の投資家への説明はフェムテックスタートアップにとってハードルとなっている。投資家はまた「かなりの」エグジットの記録をどちらかといえばしっかり追跡していなかったためにサブカテゴリーに冷淡だったと想像される。

「2019年にあったフェムテックのエグジットは6件のみだった。それでもエグジット額は2018年に比べて64%増えている」とノートにはある。「近年の最大のエグジットには、Progyny(プロジニー)の1億3000万ドル(約137億円)のIPO、Procter & Gamble(プロクターアンドギャンブル)による1億ドル(約105億円)でのThis is L買収が含まれる。Progynyの株価は上場から8カ月でおおよそ倍になった」

PitchBookでは、今年のVCのわずか14%が女性創業のスタートアップに向かう、と予想している。さらに、創業メンバーに少なくとも女性1人がいるスタートアップは17%にすぎないとも指摘している(フェムテックのスタートアップではこの割合は相当なものだが、それでもPitchBookが追跡しているフェムテックスタートアップにおいては69%だ。ここには、スキンケアや美容など医学的なものではない女性向けのプロダクトを手掛けているスタートアップは含まれない)。

「ただ、男性の投資家がフェムテックマーケットのチャンスを認識し、VCの世界でジェンダーの多様性が広がるにつれ、こうしたバリアは少なくなるはずだと考えている」と付け加えている。女性が創業した企業の投資に対する売上は男性が所有する企業の2倍超となっていて、こうした要素はさらに多くの投資家を振り向かせることになるかもしれない。

この業界を成長させる鍵となる別の要素は、助長するような法的環境、予防薬とホリスティック・ヘルス(全体的な健康)の高まり、パーソナライズされたプロダクトをよりアクセスしやすくまた手ごろ価格にしているAIや「クラウドベースの情報学」のような健康テクノロジーの発達だ。

M&Aは、健康全般やウェルネス部門のフェムテックスタートアップにとって最も一般的なものだとPitchBookは指摘している。ほとんどの企業がプロダクト1つだけを展開するが、フェムテック産業の成熟がプロダクトの多様化につながり、M&Aによってさらに後押しされるかもしれない。直近では、妊娠にフォーカスしたアプリが更年期の分野に足を踏み入れている例もあり、生殖スタートアップにとってチャンスが広がっていることをうかがわせる、としている。

画像クレジット: WOCinTech Chat / Flickr under a CC BY-SA 2.0 license.

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(翻訳:Mizoguchi

痛くない乳がん用診断装置開発の東大発スタートアップ「Lily MedTech」がNEDOに採択され約2.4億円獲得

痛くない乳がん用診断装置開発の東大発スタートアップ「Lily MedTech」がNEDOに採択され約2.4億円の助成獲得

リング型の超音波振動子を用いた革新的な乳房用画像診断装置の開発を行う東大発スタートアップ「Lily MedTech」は8月24日、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下NEDO)が実施する、2020年度「研究開発型スタートアップ支援事業/ Product Commercialization Alliance」(PCA)に採択され、約2.4億円の助成対象に決定したと発表した。

Lily MedTechが開発する乳房用超音波画像診断装置は、ベッド型をしており、ベッド上部に空いた穴の中の水槽にリング状の超音波振動子を搭載。女性がベッドにうつ伏せになり、乳房を水槽に入れることで、乳房全体の3D画像を自動で取得できる。

同装置は非接触のため、マンモグラフィのような圧迫による痛みはなく、超音波を使用するので被ばくのリスクもないという。また、乳房を下垂させた状態で自動撮像を行うため、操作者に依存せず、再現性の高い画像が取得できるという特徴を備えている。

今後国内外へ装置を広く浸透させ、より多くの女性が乳がん検診を受けやすい環境を作るため、同事業のコスト改善のための改良開発を行っていくとしている。

NEDOは、持続可能な社会の実現に必要な技術開発の推進を通じて、イノベーションを創出する、国立研究開発法人。リスクが高い革新的な技術の開発や実証を行い、成果の社会実装を促進する「イノベーション・アクセラレーター」として、社会課題の解決を目指している。

Lily MedTechは、女性に優しい乳がん診断を目指す女性起業家による東京大学発のスタートアップ企業。2019年12月9日に「第一種医療機器製造販売業」の許可を取得、現在は量産体制の構築と、発売に向けた社内体制の構築に注力している。

東京大学医学系研究科・工学系研究科での研究技術を基に、リング型の超音波振動子を用いた革新的な乳房用画像診断装置「リングエコー」を開発を進行。

現在の乳がん検診にはX線マンモグラフィやハンドヘルド型の超音波が用いられており、マンモグラフィは圧迫による乳房の痛み、X線照射による被ばくリスク、デンスブレスト(高濃度乳房)に対する検出精度低下などの課題があり、ハンドヘルド型の超音波はがん発見が検査技師の技術に依存するという課題を抱えているという。

これに対しLily MedTechのリングエコーは、被ばくリスクや圧迫による痛みがなく操作者の技術に依存しない装置として期待されている。

仕事、恋愛、結婚、出産、育児など、公私ともに選択肢が多い世代の女性が、乳がんによりその選択肢を奪われないよう、また乳がん罹患前と生活が大きく変わることのないよう、少しでも貢献するため日々開発を進めているとしている。

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きっかけは原因不明の体調不良、40代女性起業家が更年期夫婦向けサービスに込める想い

女性特有の美容や健康課題にまつわるFemTech。BLASTが販売しているナプキン不要の生理用ショーツ「Nagi」は販売開始から1週間で2000枚を完売したほか、妊活・不妊治療領域D2CのMEDERIが3000万円調達するなど日々注目されている分野だ。しかし、これまであまり更年期については語られていない。

更年期はライフステージが変わる閉経前後の40代〜50代の女性に突然訪れる。主な症状は頭痛や肩こり、イライラや不眠など、重いときは家事や仕事が手につかなくなり、約20%の女性が退職する経験している。日経BP総研によると更年期女性の人口は1200万人と言われている。

「更年期は風邪や疲労と区別がつきにくいため、表面化しづらいという課題がある」と話すのは、更年期夫婦向けコミュニケーションサービス「wakarimi」(ワカリミ)を運営する44歳の高本玲代氏。wakarimiはLINEを使い、その日の女性の体調を確認できたり、個別相談をしたりすることができるサービスだ。

自身も更年期やそれに伴う夫婦間のコミュニケーションで悩んだ経験から、サービスの開発にたどりついたという。更年期の課題やwakarimiの開発背景について話を聞いた。

高本玲代:セブン&アイ、帝人を経てスタートアップの世界に入り、ヘルスケア分野で2つの事業に関わる。2016年には米国MBAを取得。2020年4月、女性の起業家輩出に特化したインキュベーション事業「Your」を運営するuni’queよりwakarimiをローンチ。

更年期が原因で夫婦ゲンカの日々、症状を夫に知ってもらうサービスを自ら開発

高本氏が起業を検討し始めたのは2016年。夫の海外赴任を機に米国へ移住した際、現地のスタートアップ企業と接点を持ったことがきっかけだ。

「日本では長年、大手企業で働いていましたが、自分にはスタートアップ企業のほうが向いていると思いました。意思決定の早さや年功序列ではなく、一人ひとりに裁量がある働き方が合っていたからです。経営にも興味を持ったので、働きながら大学院でMBAを取得しました。その後、帰国が決まったので、日本でスタートアップを起業することにしたんです」。

事業内容を更年期に定めたのは、自身の原体験にある。40歳を過ぎたあたりから体調の思わしくない日が増えたという。疲れが長引き、仕事のパフォーマンスに支障をきたすように。さらに夫とのケンカも増え、夫婦間のコミュニケーションで悩むようになった。原因を探るため医療機関で働く友人に相談したところ、返ってきたのは「更年期ではないか」という返答。

「実際に病院で検査をしたところ、予想どおり更年期と診断されました。漢方を飲めばある程度症状は和らぎますが、それでも落ち込んだりイライラしたりしてしまい、夫に強く当たったりしてしまう日もありました」。

日本ヘルスケアアドバイザーズの調査によると、3割のカップルが「更年期にケンカが増えた」と答えており、さらに「10人に1人は離婚を考えたことがある」と回答している。

「更年期について『誰にも相談できない』と答えた女性は5割以上います。かつての私のように『症状を夫に理解してもらい関係を良好に保つにはどうしたらいいのか悩んでいる女性のために、更年期夫婦向けコミュニケーションサービスを立ち上げることにしました」と同氏。

地方に住む子育て中の女性でも起業できるチャンスに出会えた

しかし高本氏が置かれていた環境は起業に向いているとは言い難かった。

「働き方に制限があったため、VCからの資金調達は難しいと想定していました。当時の私は夫の仕事の関係で神戸に住んでおり、小さい子供2人の子育てをしている真っ最中。さらにFemTechはまだ新しい分野ということもあり、VCに提案しても『もっと市場の大きい事業にピボットしてほしい』と言われてしまうこともあると起業家仲間に聞きました」。

資金調達のためにいろいろなイベントや勉強会に足を運んでいるなか出会ったのが、uni’que(ユニック)の運営する女性の起業家輩出に特化したインキュベーション事業のYour(ユア)だ。

事業計画を提出して採択されたら、Yourのメンバーが一緒に立ち上げをサポートし新規事業プロジェクトとして発足することができるというシステム。さらに、事業が一定のバーを超えれば子会社化し株式取得のうえ、代表に就任できる。

「子育てとの両立を前提として、伴走しながらサポートしてくれますし、リモートでやり取りができたので地方で子どもを育てている私にとってとても合っている仕組みでした。事業に対しても『更年期という明確なペインに夫婦間コミュニケーションという解決がユニークで、かつ更年期のみならず将来的に幅広いライフステージへの拡張性がある』という評価をいただけたので、wakarimiを事業化することができました」。

責任感の強い女性は「更年期をわかってほしい」と言えない傾向がある

Yourからは立ち上げ資金に加え、デザイナーやエンジニアのメンバーがフルサポート。約1カ月の開発期間を経て、2020年4月にベータ版をローンチした。40代以上の夫婦40組に約4週間利用してもらいヒアリングをしたところ、課題に上がったのが女性側からの「夫に使ってほしいと頼みにくい」という声。

「女性は責任感が強い人が多いので、『更年期だからわかってほしい』と言い出しにくいことがわかりました。さらに『使うことを断られたらどうしよう』と不安に思ってしまうようでした。もともとは40代〜50代の男女両方をターゲットにしていましたが、これらの意見を踏まえ、正式版は男性からの利用開始を働きかけるように大きくシフトしています」。

2020年4月に正式ローンチしたwakarimiは、サービスを通じ男性側から女性側に体調を確認できるプログラムになっている。ユーザーからは「1カ月の間で女性の体調が何日悪いのか数値化されるので心身の辛さが理解できた」や「パートナーが寄り添ってくれるようになり、毎日が楽しくなりました」という声も聞かれるようになったという。

現在は個人向けだが、今後は法人や自治体に対し社員のウェルビーイング向上を目的とした福利厚生の一環として導入をアプローチしていく予定だ。

カテゴリー:フェムテック

タグ:wakarimi

妊活・不妊治療領域D2C「MEDERI」がTLMやエンジェル投資家から3000万円の資金調達

MEDERI ubu メデリ ウブ

自宅でできるもっとも身近な妊娠準備をコンセプトにプロダクトを展開するMEDERI(メデリ)は7月31日、第三者割当増資として3000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先はリード投資家のTLM、個人投資家複数名。調達した資金は、主にプロダクトの拡充、プロモーション活動に用いる。

MEDERIは2020年3月にウーマンウェルネスブランド「Ubu」(ウブ)をローンチ。20〜30代の女性へ妊娠・出産・不妊治療に関する「正しい知識」の伝達や、自分と向き合う時間の確保、マインドセットの実現をサポートしている。

第1弾プロダクトであるサプリメントとコーチングの定期ボックス「Ubu Supplement」は、クラウドファンディングにて先行会員募集プロジェクトを実施。公開24時間で目標金額200万円を達成し、終了時点で150名以上の方からの支援があった。

MEDERI ubu メデリ ウブ

また2020年7月30日、公式ECサイトにて感染症や妊娠と重要な関わりがあることがわかっている膣内フローラのチェックキット「Ubu Check kit」について、100名限定で先行予約販売を開始した(9月上旬配送予定)。

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女性向けヘルスケアD2Cブランド「WRAY」が約4500万円の資金調達を実施、月経前症候群の悩みにアプローチ

WRAY 月経前症候群(PMS)の悩みにアプローチ

女性向けヘルスケアD2Cブランド「WRAY」(レイ)を展開するWRAYは7月30日、第三者割当増資として、総額約4500万円(資本準備金を含む)の資金調達を実施した。引受先は、マネ―フォワードベンチャーパートナーズが運営するアントレプレナーファンド「HIRAC FUND」、サニーサイドアップグループの100%子会社サニーサイドアップパートナーズ、個人投資家。

2020年4月設立の同社は「女性のベストパフォーマンスをサポートする」をミッションに掲げ、女性がホルモンバランスや年齢による体調の変化に振り回されず、社会でも家庭でも笑顔でパフォーマンスを発揮できるようサポートを行う。

その第1弾として月経前症候群(PMS)の悩みにアプローチするセルフケアプロダクトブランドとして、WRAYを立ち上げ。2020年8月の商品発売および人材採用に向け、資金調達を実施した。

また、生理周期に基づくサブスクリプションモデル、パーソナライズアプローチなど、フェムテック×D2Cブランドとしての施策を積極的に展開していくという。商品はすべてMade in Japanで、工場と直接取引により中間コストの削減、職人の品質へのこだわりを商品づくりに反映するとしている。

WRAYの独自調査結果によると、女性の約8割が生理前にイライラや気持ちの落ち込み、肌荒れ、腰痛など、心身に体調不良を感じているという。

これらの症状は月経前症候群(PMS)と呼ばれ、生理周期によるホルモンバランスの変化によって引き起こされる。PMSの症状は様々で、重い場合には吐き気などの食欲不振、うつ状態など重篤な症状として現れることもある。これらの症状に対して多くの女性は周囲に助けや理解を求めず、ひとりで我慢するか、市販の鎮痛剤の内服が解決策の主流とされてきた。しかし、低用量ピルの服用で緩和は可能であるものの、通院や診察を伴うため、時間的制約や精神的なハードルから活用に踏み切れずにいる女性は少なくないという。

PMS症状の緩和としては、ピル以外にもサプリメントの飲用による栄養補助や、身体の冷え予防などのセルフケアも期待できるという。WRAYでは同社メディアを通して最適な選択肢を探す支援を行いながら、婦人科医師監修のPMS対策サプリメントなどPMS対策プロダクトを展開するとしている。

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世界中の日本酒消費者・ソムリエと酒蔵をつなぐSakeistアプリをKhariisが公開

Khariis Sakeist

Khariis(カリス)は6月23日、世界における日本酒の消費市場拡大およびプロモーションを目的に、海外の消費者・ソムリエと日本の酒蔵がつながるアプリ「Sakeist」(サケイスト)のiOS版Android版を公開した。公開時のバージョンは日本語および英語のみサポートしており、2020年以内にフランス語版をリリース予定。

Sakeistでは、ユーザーが日本酒ラベルをスマホで撮影すると、お酒の画像がSNSのニュース・フィードのように表示される日本酒版SNS機能を用意。レビュー投稿可能なほか、世界中のレビューを閲覧できる(自動翻訳機能搭載)。世界中のSakeistユーザーが、自分が知らなかった日本酒に出合いやすくしている。

また日本酒自体については、ワインテイスティングを軸としたマトリックス「Tasting Matrix」によりどんな味わいなのかひと目でわかるようにしたほか、酒蔵公式の画像により造り手の歴史背景も解説。日本酒を扱うレストランの検索も行え、もし登録がない場合は、Sakeistユーザーが自分で新たに登録できる。

Khariis Sakeist

「日本酒クイズ」では、日本人をはじめ海外の消費者やソムリエが日本酒造りにおける手間のかけ具合がわかるよう、さまざまなクイズを用意。「用語ディクショナリー」では日本酒ラベルに記載されている「山田錦」「あらばしり」「袋しぼり」など、日本酒特有の専門用語を検索し学べるようにしている。
Khariis Sakeist

日本酒輸出市場は、和食が2013年にユネスコ「伝統的無形文化遺産」として登録されたことなどがあり右肩上がりに成長を続けており、2019年の輸出総額は約234億円に上るという。しかし、日本酒ラベルの多くは日本語のみが記載されており、「純米大吟醸」のような種別を表す用語の意味を理解できる消費者は海外では極めて少ない状況にある。そのため、海外における消費者数・消費量の拡大において日本酒業界は課題を抱えている。

Khariis Sakeist

さらに、海外ソムリエと消費者の多くは日常的にワインを愛飲しているため、ワイン目線での用語解説や味わいについての多言語での解説・紹介する情報源が求められているそうだ。世界のワイン業界では、ワイナリー(造り手)のストーリーが重要視されるものの、日本酒の酒蔵ごとのストーリーを英語などで紹介する例が少なく、課題となっていた。

これら状況の解決とともに、日本酒を「世界酒」として定着させることを目指し、消費者・プロフェッショナル(ソムリエ)・酒蔵が繋がる強固なコミュニティの育成も目指し、KhariisはSakeistアプリを2019年から開発したという。

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フェムテック業界で活躍する5人のCEO

女性特有の健康ニーズは大手テック企業に長い間顧みられていなかった。そんな中、2016年、タンポンの代替製品を開発したFLEX(フレックス)の売上は400万ドル(約4億3000万円)避妊薬配送ウェブプラットフォームであるNurx(ナークス)の売上は530万ドル(約5億7000万円)を記録した。なおNurxはその後、9340万ドル(約100億円)を達成している。

この2つの企業は、その年に開催されたY Combinatorのデモデーに参加した100社を超す企業の中で、最も多くの資金を調達したトップ10企業にランクインした。2014年から2017年3月までにフェムテック企業は11億ドル(約1200億円)を調達し、その成長は今も続いている。

CEOや創設者であるKindbody(カインドボディ)のGina Bartasi(ジーナ・バルテージ)氏、Gennev(ジェネヴ)のJill Angelo(ジル・アンジェロ)氏、Milk Stork(ミルクストーク)のKate Torgersen(ケイト・トルゲルセン)氏、Cora(コーラ)のMolly Hayward(モリー・ヘイワード)氏、Lioness(ライオネス)のLiz Klinger(リズ・クリンガー)氏に、彼女らの企業が最初にこの分野に参入して以来、どのように進化してきたのか話を聞いた。まったくの未開拓であったこの分野も今や、女性による女性のためのコミュニティとしての基盤が出来上がっているようだ。

ニューヨークに拠点を置くテクノロジーベースの不妊治療企業、KindbodyのCEO兼創設者のバルテージ氏は言い放つ。「投資家たちが『勢いを妨げる原因となるものは何か、事業の障害となるものは何か』などの質問を投げかけてくるとします。そんな場合私は『女性が昔ながらの方法で受胎し、大学院や医学部、ビジネススクールへも行かず20歳台前半で子供を生んだとしたら、その時こそ、この不妊治療分野は終わりを迎えると思います』と答えるでしょう。そんな可能性は極めて低いでしょうけれど」。

Kindbodyはバルテージ氏が立ち上げた3社目の不妊治療スタートアップ企業だ。彼女自身が不妊治療を経験した後、これらのスタートアップ企業を起業した。当時生後8カ月になる双子兄弟を授乳していたトルゲルセン氏。4日間の出張があった際、約8リットルの母乳を搾ってスーツケースに入れて持ち帰るはめになった。それがきっかけとなって業界初の母乳配送サービスを開始したのだ。こういった選択肢は以前はなかった。需要はあったにしても、それは十分認識されてこなかったのだ。

生理と膀胱ケアのCoraを創設したヘイワード氏は、「過去4〜5年の間に、不妊治療から授乳や性的健康、性的充足にいたるまで、女性の生活のさまざまな分野が、商取引、ビジネス、ビジネスソリューションなどを通して注目されるようになってきたのは、本当に素晴らしいことです」と語った。

フェムテックは女性に限定されたものではない

ただし、フェムテックには一部グレーな分野がある。例えば、不妊治療は常にこの分野の主流であった。Kindbodyはバルテージ氏の3社目のスタートアップ企業であるが、不妊治療はなにも女性の健康に限定された分野ではない。

「不妊問題の50%は男性に関連しているのです」と彼女は言う。「男性にも直接的に影響があるのにもかかわらず、男性はそれについて語らない。語るのは女性だけです」彼女によると、同性カップルが養子を迎えるのではなく、Kindbodyを利用することが増えてきているとのことである。

女性の性的健康とウェルネスに関連する企業は時にフェムテックから(主に外部の企業から)排除され、また含まれている場合には非難されることもある。例えば、多くの投資家に活用されている市場戦略情報企業であるCB Insightsは、定期的にフェムテックについて独自のアイディアに関するデータを発信している。

業界初のスマートバイブレータブランド、LionessのCEO兼共同創設者のクリンガー氏は「ほとんどの場合、Lionessや性的充足に関連するあらゆる企業はCB Insightsの視野に入っていません」と言う。

我々はCB Insightsにコンタクトを取り、最新のフェムテックマップを入手した。しかし、女性の健康に関連するスタートアップ企業の最新のデータマップの中に、性的充足を中核とする(または性的充足に関連する)女性の健康関連スタートアップ企業は、ただの1社も見つけることができなかった。評論(Punditry)ではなくて確率(Probability)についてのインサイトを発信することで、「最も優秀な企業群から支持されている」と自らを喧伝する市場戦略情報企業が、そのマップに300億ドル規模のセックステクノロジー産業を含めていないのは興味深い。我々が女性の性的充足に関連するブランドを見つけた唯一の場所は、2020年の「バレンタインデー」テクノロジーの市場マップであった。

画像提供元: CB Insights

クリンガー氏は、元社員や現在の社員と話す中で、この排除の原因かもしれないと思われる噂を聞いた。

「市場戦略情報企業の大手クライアントがFortune 500企業であることと個人的なものが相まって、性的充足に関連するスタートアップ企業を後退させる動きがあると聞きました」市場戦略情報企業は、性的充足に関連するスタートアップ企業が、これらのクラアントの関心の対象だとは思っていないのだ。

これらの課題は、女性の性的充足に焦点を当てた企業にとってつきものであるように見える。そのためクリンガー氏は、資金調達における最もうれしい驚きは、誰が投資するのか、しないのかが非常にはっきりしていたことだと述べた。

バルテージ氏は彼女が立ち上げた最初の企業、Fertility Authority(ファーティリティオーソリティ)がこの分野に参入した2008年以降、マクロ経済のトレンドが確かに勃興しており、これにより従来に比べて資金調達がスムーズに行えるようになったことを指摘した。新型コロナウイルス(COVID-19)蔓延前の評価額が約20億ドルだった彼女の2番目の会社Progyny(プロジニー)もその1社だ。

「異性同士のカップルは子供を持つことを控え、結婚もすぐにはしないようになっていますが、同性のカップルが子供を持つことが増えています。これは比較的新しい傾向です。5年から10年前の同性カップルの場合養子を取ることはあったのですが、現在は彼女らが人工授精を利用する傾向が急激に高まっています」とバルテージ氏は語った。

さらに彼女は、結婚してから子供を持つという従来の流れに逆らい、卵子の凍結保存をする独身女性の数の多さについても言及した。

閉経期の女性のための初のオンラインクリニック、GennevのCEO兼創設者のアンジェロ氏も、女性を取り巻く主要メディアや会話が全体的に変化しつつあると述べた。

「50歳を超えたジェニファー・ロペスがスーパーボウルのハーフタイムショーに起用されています。ローラ・ダーンやレネー・ゼルウィガーも50歳を超えていますが、キャリアの中で最高となるオスカー賞を獲得しましたね。グウィネス・パルトローがGoopで閉経について語る時代になりました」。

教育がフェムテックの成長を支える

この分野の企業が資金調達に関する様々な課題を抱えているなか、各社のCEOは女性のヘルスケアに関して投資家を教育することがいかに重要かを語っている。

「人々がこの分野のことを知らなかったため、私はセールストークの中で、売り込みよりも教育に力をいれていたように感じます」とアンジェロ氏はGennev立ち上げの際に資金調達を開始した2015年当時のことを思い返す。

これは、健康と生殖に関する教育システムに明白なギャップがあることを浮き彫りにしている。

バルテージ氏は「みなさんの受けた教育はどう妊娠を避けるかであって、どう妊娠するかではありません」と指摘した。「そして、これは本当に誰も知らないことですが、最も生殖力の高い女性と男性が、女性の排卵期にタイミングを見計らってセックスをしても、毎月の自然受胎の可能性はわずか20%にすぎません。50%や60%ではないのです」。

ヘイワード氏が創設したCoraは、生理用品を入手できない女性や少女にオーガニック製品を提供することにより社会的な影響力を及ぼす企業として事業を開始した。生理用品を利用できないことが原因で少女たちは学校へ行けなくなり、男子から遅れを取る結果となる。

ヘイワード氏は「起業家として、そうした経験や、それがどんなにひどいものか、またそれを変えるチャンスがある理由を説明するために、もっと多くのことに取り組む必要があります」と語った。

同様にクリンガー氏は、最も性的充足を認識していないと思われる人こそ最も興味を持っていることに気付いた。

「当社の投資家は、性的玩具が違法であるタイや、テキサスといった伝統的に保守的な土地の方たちです。人々が性的充足と教育を求めていることに気がついた後は、誰を対象に話せばよいかずっと簡単にわかるようになりました」。

活動の中心にあるのは教育であるため、この大変な仕事には少なくともささやかな達成感が伴う。

「私が母乳育児について説明し人々が耳を傾けてくれると、投資に結びつくかはさておき、母乳育児についての人々の認識が高まり、普及に繋がっているという手応えを感じられます」とトルゲルセン氏は述べた。3児の母である彼女は、より多くの人が母乳育児について学ぶことで、他の母親の生活がずっと楽になることを期待している。

2020年は女性が米国の労働力の多数派に

労働力の半数近くが女性となり、管理職の半数以上を女性が占めるようになった。このため、従業員の保持を目指す企業は、従来取り組んだことのない方法で女性の健康ニーズに対応する必要がある。フェムテックは、ソリューションのみならず、他では入手できない(あるいは確立すらされていない)データや情報を提供する最前線に立っている。

これこそ、Milk Storkが創設後またたく間に大きく成長した理由だ。「当社の最初のプレスリリースはFortune誌に取り上げられ、10日もたたないうちに世界でも有数のコンサルティング会社の1社から連絡を受けました。その会社は北米の従業員向けの福利厚生の一環として当社を利用することを望んでいました」とトルゲルセン氏。

彼女は母親たちと女性が圧倒的に多い人事部を称賛する。「私が本当に素晴らしいと感じるのは、母乳育児への認識を高めているのが母親たちであることです。彼女らはもともと購買者としてMilk Storkを利用していましたが、会社側にMilk Storkにかかった費用の払い戻しを求めたり、社内の同僚女性のための福利厚生の一環として会社がサービスを提供することを求めたのです」。

1カ月を経ずして、トルゲルセン氏のチームはMilk Storkを福利厚生の一環として提供する企業向けのソリューションをまとめ上げた。これは創設時には十分確立されていなかったサービスであった。「フェムテックの女性達が改善しようとしている事は、長いこと人の目にふれることがないものだったのです」。

バルテージ氏は、患者が投薬、処方、結果の傾向をより適切に理解できるよう、医師が患者への実践で得た知見をどう共有するかについて論じた。Kindbodyは患者に対し、これらの知見をこれまでに以上に公開し、利用できるようにしている。

「当社には、患者さんが確認できる予測アルゴリズムがあります。これは完全な透明性を持つものです。患者さんは年齢、妊娠歴、卵巣予備能(当社の血液検査によって確認)を入力し、予測アルゴリズムが妊娠の可能性をはじき出します。予測される卵子数も示されます。完全な透明性を可能にするデータがあるため、患者さんと医師の間の自信や信頼関係が高まります」。

クリンガー氏のLionessは、オーガズム関し、これまでにないデータ追跡をすることに重点を置いている。彼女は、性的充足について単に学ぶだけでは価値を見出せない人のために、バイブレーターの使用に関する情報の医学的用途を指摘した。

「一部の人のために、特定の投薬治療や健康状態が彼らの性的充足にどのように影響しているのか、またその逆も追跡しています」女性の性的パフォーマンスについての不安はほとんど議論されないため、これは極めて有益だ。

一方Gennevは、閉経期について初となるアセスメントを公開した。これは誰にでも利用可能だ。「誰もが頼りにできるような、閉経期に関する情報が無いのです」とアンジェロ氏。

Gennevは、アンケートから収集したデータを用いて、閉経期の情報を提供している。「当社はロードマップを作りテクノロジーを用いて予測を行い、患者さんが閉経期を経験するにあたり、これからどうなるのか、現在どの地点にいるのかを理解できるよう支援を行います」。

新型コロナウイルスのパンデミックにより自宅待機という新しい基準がもたらされたが、Gennevはこの生活環境に対する解決策にも取り組んでいる。今月初めに同社は、以前から提供している遠隔医療サービスに加え、医師へのリモートアクセスを提供するHealthFixサービスを開始した。

「当社はHealthFixメンバーシップを拡充し、閉経期の問題を管理するために健康指導者と連携して会員の生活上の行動変化を促すだけではなく、産婦人科医も巻き込んでいます。

チームは25人で編成されています。つまり会員は医療チーム、コーチ、医師が1つにまとまったチームを手頃な価格のベーシックなメンバーシップで利用できるということです。当社はただごく少数のトップ1%の女性のための企業ではなく、全ての女性に向けた企業なのです」とアンジェロ氏は語った。

現在、様々な事柄について将来に向けた動きが停止しているように感じられるが、新基準に関する議論が始まった現在でも、長らく顧みられてこなかったフェムテックの持続的成長は確実だ。

アンジェロ氏は、「人々がなんの知識も持っていない分野では競争は好ましいことです。全員の知名度が上がるからです」と述べたが、これは我々が話しを聞いた各CEOから寄せられた感情を代表するものだ。

競争ついてバルテージ氏は「この分野の仲間意識やお互いの高め合いは素晴らしいものです。競争はこの女性グループの全員が機会を共有し、助け合っている証拠です」と語った。

証拠は数字に表れている。2019年にフェムテックは7億5000万ドル(約810億円)近くを調達した。フェムテックは希望するヘルスケアサービスを見つけられなかった女性たちによって設立されている。女性が抱える問題は少なくない。そのため、歴史的に女性が少数派に過ぎなかった分野に彼女らが進出し続ける現在、多様なソリューションの余地と需要が存在するのである。

Rae Witte    寄稿者プロフィール

Rae Witteはニューヨークをベースに活動するフリーランスジャーナリストである。音楽、スタイル、スニーカー、アート、デート、そして、これらとテクノロジーがどのような関わりを持っているのかをテーマとしている。彼女の記事は、i-D、The Wall Street Journal、Esquire、Forbesなどで読むことができる。

画像クレジット: Sai Pee/EyeEm / Getty Images

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(翻訳: Dragonfly)

LINEで生理日を予測、パートナーとも共有できる「ペアケア」にサブスクプラン追加

LINEを使った生理日予測サービス「ペアケア」を提供するEntaleは3月26日、有料のサブスクリプションプラン「ペアケアプレミアム」の正式リリースを発表した。

この手の生理日予測では、iPhoneならデフォルトで使える「ヘルスケア App」の周期記録や、ダウンロード数1300万を超える大御所「ルナルナ」をはじめ、複数のアプリやサービスが既に存在する。これまでのサービスと後発のペアケアとでは、どこが大きく違うのか。Entale代表取締役CEOの酒匂ひな子氏は「LINEで友だち追加するだけで使えること」かつ「パートナーのLINEアカウントと連携でき、情報共有できること」を挙げる。

LINEならアプリなしでも男性に「生理」の情報を共有できる

女性の生理周期の長さや“ピリオド”の前後に現れる症状は、個人差がとても大きい。しかも日本では、生理について、女性同士でも話すことがためらわれる風潮もある。男性であるパートナーにはなおさら相談しづらく、理解してもらうことを我慢したり諦めたりする人も多いだろう。

ところが実は、男性の側ではパートナーの女性が生理中かどうかや、今の体調、これからの予定を知りたがっている人が少なくなく、約7割に上るという調査(マイナビウーマン、2015年4月)もある。具合の悪いパートナーを支えてあげたい、一緒に旅行に行くなら彼女の体調が良いときを選びたい、といったニーズもあるだろうし、「雰囲気で察してよ!」と後から怒られるよりは、はじめから言ってくれた方がいい、ということもあるのかもしれない。

女性の健康・生活に関わる課題をテクノロジーで解決する「FemTech(フェムテック)」と呼ばれる領域は、日本国内でも盛り上がりを見せており、2025年の国内市場規模は約5兆円と予想されている(Frost & Sullivan社、2018年1月)。そうした背景と市場環境の下、Entaleでは「女性はもちろん、男性も生理についてパートナーと語れるようになれば、お互いにより生活しやすいのでは」とペアケアを開発したという。

ペアケアは、LINEで友だち登録をし、女性の場合は生理期間、生理周期と生年月日などの簡単な質問に答えるとすぐに利用開始できる。カレンダー画面では、生理日を記録したり、予測日を確認したりすることが可能。経血量や今の身体的・精神的症状、ピルの服用状況を記録しておくこともできる。

またパートナーに招待リンクを送り、LINEアカウントと連携すると、カレンダーや今日の調子など、情報を共有することができるようになる(ちなみにパートナー共有は女性同士でも可能)。パートナーが旅行や外出の予定を立てやすくなる、今まで相手に明示的に言えなかった・聞けなかった体調や生理の状況を間接的に伝える・知ることができるといったメリットがある。

プラットフォームとしてLINEを選んだ理由について、酒匂氏は「毎日のコミュニケーションで使っているツールだから、誰にでも使いやすい。また共有機能を持つ他社アプリもあるが、LINEなら、インストールすることのハードルもなく、アプリのアイコンが画面に表示されることもないため、男性でも使いやすい」と説明する。

インターフェースについては、こんな工夫もしていると酒匂氏は言う。「アプリでよくあるのが、生理周期や症状の入力が面倒で、忘れることも多いという点だが、日常的に使うツールだから忘れにくくなる。またセンシティブで憂鬱な情報の入力に対して、かわいいクマのキャラクターがアクションをし、アドバイスを届けるようにして、『入力=作業』感をなくすようなユーザー体験を心がけている」(酒匂氏)

トーク画面でクマのキャラクターがアドバイス。記録忘れを防ぐ工夫も。

こうした工夫の結果もあって、生理日以外の症状等の情報も7割のユーザーが入力してくれているということだ。

「女性にはメモや手帳に予定を入れるのが楽しいという人が多く、記録すること自体にモチベーションがあることは分かっている。だから、記録のしやすさにはこだわっている。デザイナー出身ということもあり、ユーザー体験の面ではほかには負けないようなプロダクトにしたいし、自信もある」(酒匂氏)

「将来的には『痛い』『生理が来るのが遅い』『生理周期がズレている』『この時期は眠い』などの情報を元に、ユーザーが個人的に気付きを得て、どうすればより快適になるか、というところまでやりたいと考えているので、症状を入れてもらうことは大事」と酒匂氏。「かわいいアイコンなども活用して、入力を楽しく、続けられるようにしている」と語る。

情報入力はアイコンタップで行える

初日の登録4000件、男性ユーザーが女性に勧めるケースも

酒匂氏はエウレカでデザイナーのインターンとして、2011年4月からアプリ「Pairs」の立ち上げに携わり、入社した後、2016年からはプロダクトマネジャーも兼任してきた人物だ。2018年2月にエウレカを退職してからは、フリーランスとして美容医療の口コミサービス「TRIBEAU」やママ友マッチングアプリ「mamagirl-link」などのサービスに関わっている。

Entale代表取締役CEO 酒匂ひな子氏

エウレカ退職の時点から、デザイナーとしての独立というよりは、プロダクトによる事業運営で起業し、「デザイナー出身起業家のロールモデルになりたい」と考えていた酒匂氏は、2019年3月よりペアケアを作り始めたそうだ。

2019年9月までの半年間は、マネタイズを含めたプロダクトの方向性を検討していたというが、「まずは使ってもらわなければ分からない」とリリースを決断。FemTechの盛り上がりや、同時期に立ち上がった“生理をもっとオープンに語ろう”というムーブメントも後押しとなった。

リリースされた9月6日当日だけで、4000人の登録があったというペアケア。「Twitterで知ってもらったエンジニアやデザイナーを中心に、男性からの登録も多く、男性が女性のパートナーを誘ってくれた」(酒匂氏)とのことで、現在も男性ユーザーが全体の約2割を占めるという。登録数は開始月の9月末には1万人に到達、2020年3月現在で6万人を突破した。

実はパートナー共有機能については、リリース時点で入れるかどうか迷っていたと酒匂氏はいう。「他社では共有機能は有料で提供しているところもある。しかし、LINEで生理周期の管理ができるというだけでは、プロダクトとして弱いし、“生理をもっとオープンなものにしよう”というムーブメントともそぐわない。パートナーにも生理について知ってもらうことは大切なこと。だからこそ、押しつけがましくなく、無料でも使えるLINE上のプロダクトとしてスタートすることにした」(酒匂氏)

そんなペアケアに、今回追加されたのが有料のサブスクリプションプラン、ペアケアプレミアムだ。プレミアムプランでは、「排卵予定日3日前に通知を送信」「基礎体温の記録やグラフ閲覧」「最長2年分のデータ確認」「フリー記述のメモ欄」といった機能が利用できるようになる。

ペアケアプレミアムの利用料金は、現在はキャンペーンにより、1カ月プランで400円/月、12カ月プランでは3000円(250円/月)の特別価格となっている(通常は12カ月プランで312円/月)。

ところで、ペアケア自体はもともと「妊活」を謳っていない。「多様化の時代、誰もが妊娠したいと思って、生理周期を管理しているわけではない」(酒匂氏)というのがその理由だ。男性から見たときに「妊活アプリ」に見えてしまうと、元の趣旨から外れるということもある。

ただし、パートナー共有機能があることで、妊活で利用したいというニーズは確実にあった。「問い合わせは月に何十件とあった」そう。そこで、妊活で求められる基礎体温の記録や排卵日の予測といった機能を、オプションとして提供することにしたと酒匂氏は説明する。

マネタイズ面では「広告は入れたくない。また海外アプリなどでよくある、無料でサービス提供する代わりにデータを他社に提供するモデルも批判が強く、取り入れたくなかった」と述べている酒匂氏。「ユーザーにプロダクトの価値を感じてもらって、長く運営したかったので、オプションでのサブスクモデルを採用した」という。

「将来的には6万人のユーザーをもっと拡大し、この領域で長期的には国内ナンバー1のサービスを目指したい。また個人差の大きな分野のサービスとして、機能面ではパーソナライズも進めたい。自分の状態を可視化することで、医師への説明や、会社での生理休暇申請の際などにも役立ててもらえる。ピルや漢方薬の選択なども含め、ユーザーのセルフケアに参考になるようなサービスとしていきたい」(酒匂氏)

フェムテック専門ファンド「フェルマータ ファンド」が始動、妊活デバイスや衛生用品のスタートアップに出資予定

fermata(フェルマータ)とMistletoe Japan(ミスルトウ・ジャパン)は2月3日、国内外のフェムテック関連企業の支援を目的として、fermata Fund(フェルマータ・ファンド)を共同出資で設立した。2020年秋をめどに、25億円規模の1号ファンド「fermata Fund」を始動させる予定だ。アドバイザーには、連続起業家でMistletoe創業者の孫 泰蔵氏、The 15th Rock Ventures、白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長の海老根真由美氏が名を連ねる。

フェムテックとは、生理や妊娠をはじめとした女性の健康課題を解決するためのテクノロジーを指す。同社調べによると、全世界でのフェムテック領域への投資額はこの7年間で約60億円から約750億円まで成長しているという(出典元:Marks, Gene. 2019)。女性の社会進出が進んだ欧米だけではなく、今後はアジア・アフリカでの急成長が期待できる新たな産業で、2025年の市場規模は5兆円と予想されているそうだ(出典元:Frost & Sullivan 2018)。

fermataは、医療、パブリックヘルス、ビジネス、デザイン、マーケティングなどの専門家で構成される、2019年10月に設立された企業。市場調査から本格マーケット参入、ユーザーコミュニティとの接点までを提供し、フェムテック関連企業のサポートに取り組んでいる。Mistletoe Japanは、孫 泰蔵氏が率いるスタートアップ支援プロジェクトだ。事業のコアになるアイデアや技術を持った創業者と、同社が共同創業して、サービスや製品の開発を進めるという、従来のベンチャーキャピタルとはアプローチが少し異なる。

1号ファンドとなるfermata Fundの出資予定企業としては、妊活デバイスを開発するLady Technologies、衛生用品の開発・販売を手掛けるCome&goneが決まっている。

「スマートタンポン」で子宮内膜症を発見するNextGen Janeが1億円超を調達

いわゆる「フェムテック」(女性向けビジネス)のスタートアップが資金調達する話題には事欠かない。理由は明白だ。

世界の不妊治療サービス市場は2023年までに310億ドルに達し、2016年の2倍近くになると、コンサルタント会社のAllied Market Researchは予測している。こうした市場機会の成長と並行して、多くの女性が自らのリプロダクティブヘルス(性と生殖に関連する健康)の情報を欲しがっているが、15分の診察ではその目的は達成できない。

最新のベンチャー資金を受け取ったNextGen Janeは設立4年半のカリフォルニア州オークランド拠点の会社で、タンポンに吸収された血液を使って子宮内膜症を始め、子宮頸がんその他の疾患の早期マーカーを発見しようとしている。

同社は米国時間4月1日に900万ドル(約1億円)のシリーズA調達ラウンドをMaterial Impactのリードで完了したことを発表した。Material Impactは本誌が昨年11に報じた素材技術に特化した新しいファンドだ。同ラウンドには他に、Access Industries, Viking Global Investors, Liminal Ventures、さらにハーバード医科大学とスタンフォード大学のPhDらを含む多数の著名なエンジェルが参加した。

同社のアプローチはこれまで女性が受けていた苦痛に比べてはるかに受け入れやすい。現在子宮内膜症細胞を見つけるためには骨盤腔に小型カメラを挿入しなくてはならない(注記:通常女性がここに行き着くのは、著しい苦痛に耐えたあげく医者に飛び込んだ後である)。 NextGen Janeのやり方では、約2時間装着した専用タンポンをホームキットに含まれる試験官に入れ検査機関に送り返して分析する。

もちろん、まずは研究が必要であり、FDAの認可もまだ受けていない。実際、証明もされていない。

今回の資金調達でそれが変わるかもしれない。先月のTechnology ReviewのインタビューでNextGen Jane CEOで共同ファウンダーのRidhi Tariyal氏は、臨床試験は設計済みで準備はできているが、経血の診断効果を確立するために約800人の女性で試験する資金が必要だと語った。この資金によって、同社は約2年間有効な量のデータを取得することができるとTariyal氏は言った。

不妊治療の専門家は、女性が自分の生殖能力を知るためのホームキットをスタートアップが作るトレンドには概して懐疑的だ。提供される情報には一定の価値を認めているものの、抗ミュラー管ホルモン(AMH)の測定のように目的を達成できることが証明されているホームキットでさえも、女性を助ける以上に混乱させることを恐れている。

NextGen Janeはこれまでに230万ドルの資金を調達している。ちなみにTechCrunchはフェムテック投資の急速な上昇について詳細な記事を書いている。誰がどれだけなぜ調達したのか、ここで詳しく読むことができる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook