SpaceX、ドラゴンによる初の有人飛行は2018年を予定

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SpaceXは、NASAのミッションとして有人のDragon宇宙船を2017年中に打ち上げる予定にしていた。当初の予定より半年ほど遅れることとなったが、打ち上げは2018年に行う予定であることが発表された。9月の爆発事故をうけてFalcon 9の燃料搭載プロシージャの改善作業を行なっていたことも一因だ。

事故直後、SpaceXは「デザイン面、システム面、手順面」に及ぶ「調査と改善」が必要となると話していた。この作業に注力していたことにより、有人宇宙船の発射予定が遅れることとなったわけだ。重大事故につながった原因の特定については最終的に完了したともしている。「事故調査の作業と並行してNASAとの連携作業も進めてきており、予定していたマイルストンをすべてクリアして、打ち上げ予定を決定することができました」とSpaceXは話している。

ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、宇宙船に乗員が搭乗している状態で外部から燃料補給を行うというプランは変更になるのではないかとのこと。ただしこの件につきNASAの担当者たちは公式な声明をいっさい行なってはいない。

SpaceXの方は、宇宙飛行士たちが搭乗する宇宙船への燃料補給の仕組みは完成しつつあるとしている。そして今後も実験などを重ねつつ、必要な変更を行っていくことになっていると述べている。

無人飛行実験は2017年11月に行われる予定だ。SpaceXによればDragon宇宙船は10回のミッションを行うことができるように設計されているとのこと。2017年中にはこの無人飛行実験の他にも宇宙服やパラシュート、ロボットアームなどの実験を行なっていくことになるとしている。

同じく商用有人宇宙ロケットの開発を目指すボーイングは2018年6月に最初のテストを行うことになっている。そして有人でのテストも8月に行うとしており、ボーイングおよびSpaceXはスケジュール的にもごく近いなかで競い合うこととなる。予定通りにすべてことが進めば、SpaceXの無人テストが2017年11月で、有人宇宙飛行が2018年5月となる。この通りに進行すれば、SpaceXが少々先行することにはなるわけだ。

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(翻訳:Maeda, H

SpaceXのFalcon 9、爆発の原因はヘリウムタンクの亀裂か

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SpaceX社は、9月1日のFalcon 9ロケットの爆発を引き起こした原因の可能性についていくつかの答を得たようだ。ロケットは、発射台上で発射前準備を行っている最中に爆発した。負傷者はいなかったが、SpaceX社は原因の特定に苦労していて、これまでにほんの僅かの情報しか公表されていなかった。

本日、SpaceX社の更新されたブログ記事では、SpaceX、FAA、NASAそして空軍によろ合同調査の結果、第二段ロケットの液体酸素タンクの一部であり液体燃料ロケットの設計の重要な部分である、極低温ヘリウムシステムに起きた亀裂が、おそらく原因であろうと指摘している。これが意味することは、1つには、このエラーは、2015年のCRS-7 Falcon 9が上昇中に爆発した例とは関係していないということである(SpaceX社の発表による)。

これは良いニュースである。発射システム自身を除けば、LC-40(問題の発射台)は爆発全体からは相対的に影響を受けていないように見えるからである。SpaceX社によれば、発射台自身の制御システムと同様に、近くの支援施設や建物は「そのまま」で「良い動作状態」に保たれているということである。

一方、SpaceX社はまた、そのホーソン工場本社における製造および生産チームや施設が調査の結果「無罪放免となった」と語っている。これは、新しいロケットとコンポーネントの生産に向けて、ビジネスが通常通り継続されることを意味している。

調査チームは、上述したヘリウムシステムを原因として特定したが、亀裂が始まった原因を調査する必要はまだ残されている。SpaceX社は、打ち上げ業務に戻る時期を11月と予想していると述べているが、調査の結論はまだ保留中である。

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(翻訳:Sako)

SpaceXの火星植民トランスポーターは野心満載

Dragon Mars LandingArtist's rendition of a Dragon spacecraft landing on the surface of Mars.Credit: SpaceX

イーロン・マスクが、SpaceX社の将来に焦点を当てたプロジェクトの1つは、以前考えられていたものよりも更に野心的であるかもしれないと述べて皆の気を惹いた。SpaceX社のCEOはTwitterで、同社の火星植民トランスポーター(MCT:Mars Colonial Transporter)に新しい名前が必要になることを発表した。なぜならそれは「火星を超えて行ける」からだ。

MCTは火星をはるかに超えて行くことができることが分かった、新しい名前が必要だ…

これを受けて、マスクのフォロワーたちの間で早速命名コンテストが始まった、有力なものの1つには「ハート・オブ・ゴールド号」が挙げられたが、これは銀河ヒッチハイクガイドに出てくる名前で、マスクが「フィクションの中で、好きな宇宙船だ」と言ったことがある。Serenityは落選かも、少なくともMillennium FalconはSpaceX社の既存の再利用可能なロケットシリーズのために使われているが。

マスク自身も自分のアイデアを披露している:

究極宇宙船バージョン2というのはどうかな?それは究極ではないし、バージョン1も存在しないからというのが理由だけど。

MCTはSpaceXの人員輸送用クラフトである、同社の大規模場Rapterロケットエンジンと組み合わせて、最初の人類を火星に送り届けるようにデザインされている。2022年には無人で打ち上げ、そして2024年には人間を搭乗させた最初の飛行が予定されている。マスクの魅力的な発表はタイムリーだった。わたしたちにはMCTについてもっと知らなければならないし、そのミッションについても9月27日の国際宇宙会議(International Astronautical Congress)で明らかにする必要がある、そこではSpaceX社のCEOが特別基調講演を行うことになっている。基調講演のタイトルとして予定されているのは「人類を複惑星種(Multiplanetary Species)にしよう」である。

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(翻訳:Sako)

初期ステージベンチャーファームPearのデモデイ報告

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昨日(米国時間9月1日)、パロアルトにある法律事務所の広大な駐車場は、沢山のTeslaで埋められていた。天井の高い会議室には100人のトップ投資家たちが集まった。ここで彼らは、13のスタートアップが、自分たちに注目すべき理由を述べる各4分間のプレゼンテーションに耳を傾けた。

登壇したスタートアップは、みなおよそ起業半年以内のものばかりで、すべて現役の学生または最近の卒業生が率いている。いずれも創設3年のPearによるLaunchpadプログラムのメンバーなのである。Pearは初期ステージベンチャーファームであり、毎年トップ校に通う、会社を作りたいコンピューターサイエンスの学生を募集して、オフィスと同時に、使用目的に制限も義務もない5万ドルを提供している(最近まで、同社Pejman Mar Venturesとして知られていた)。

これまでのところ、Pearはこれらの学生チームを賢く選んできたようだ。1年前にプレゼンテーションを行った8つのグループのうち1つのスタートアップはGoogleに買われ、他に4つがシード資金調達に成功している。Pearが開始された2014年の最初のクラスからも、スタートアップのFancyThatがPalantirに買われている

明らかに、昨日集まったベンチャーキャピタリストたちは、熱狂的なようだった。Canaan PartnersのパートナーであるRoss Fubiniはプレゼンテーションの途中で「今年一番のデモイベントに思える」とツイートしている。別の投資家、Lux CapitalのパートナーShahin Farshchiは、イベント後私たちに語った「素晴らしかったね、全ての人に対して何かしらの意味で。消費者向けの会社、分析とAIの会社、そして私のような投資家のためのディープテクノロジーも」。

そこに参加しておらず、おそらく好奇心旺盛な読者のために、以下にその内容を紹介しよう:


Allocate.aiこの会社は、AI搭載のタイムシートを作成している。これは作業チームがどこにどのように時間を使うべきかをより良く理解する手伝いをするプロダクトだ。(スタンフォード大学とカリフォルニア大学サンタバーバラ校出身の)創業者たちによると、米国では4500万人がタイムシートに記入していて、これによる時間的損失は金額にして110億ドルに達するとの推定である(その時間に価値がありながら、1日15分以上を請求に必要な情報収集に使っている弁護士のことを想像してみると良い)。彼らはそれをより効率化し、市場をさらに大きなものにすることができると主張している。もしあなたが同意し、彼らに連絡をとりたい場合は、founders@allocate.aiまで。


BlackSMSこの技術を使ってユーザーは、暗号化されパスワードで保護され、自己消去を行うiMessagesを送信することができる。メッセージは偽の代替テキストの内に隠したり保護したりすることができる。これは様々なケースで有効だろうと私たちを感心させた。これについて私たちが正しいことを願おう。その20歳の創設者、Tyler Weitzman – 中学時代から30あまりのアプリを構築してきたと言う – は、「BlackSMSにすべてを賭ける」ためにスタンフォード大学を中退した。

詳しく知りたければ、TCが今年の前半に書いたより長い記事を、ここで読むことができる。Weitzmanに連絡するには、founders@black-sms.comに電子メールを送れば良い。


Capella Spaceこのデータ会社は、靴箱サイズの衛星群を介して宇宙から持続的かつ信頼性の高い情報を提供することができると言っている。他のスタートアップの衛星とはどのように異なるのだろうか?その技術は合成開口レーダー(SAR)を使っている。これが意味することは、雲を通り抜ける電波の反射を使い太陽光の反射を必要としないため、夜や厚い雲に覆われているときでも、地球の表面に向けて電波を送り画像を得ることができるということだ。(他の多くの衛星群はその代わりに、光学技術に依存している)。

Capellaには競合他社がいて、Ursa Space Systemsもその1つである。 Ursaは現在、旧来の(つまり大きくて嵩張る)衛星に搭載された合成開口レーダーを使って得た情報を顧客に売っていて、そして独自の衛星群を開発することを計画している。しかし、現時点では勝負の行方はまだ見えていない。founders@cappellaspace.comで創業者に連絡することができる。


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DeepLIFT Technologiesこの会社は、入力を観察し繰り返されるパターンや他のものを識別することによって、任意のディープラーニングプロセスを理解し説明することができると言う、一連のアルゴリズムを開発した。

なぜ彼らのように、機械学習が上手くいく理由をわざわざ掘り下げるのだろう?1つの理由は、規制当局が「ブラックボックス」技術に対する押し戻しを始めているからである。最も顕著なのは、最近EUが機械学習モデルが、EU市民に影響を与える判断に利用される場合、その内容について「説明を受ける権利」を保証する法案を制定させる条項を導入したことだ。

創設者は、同社は資金を調達していないと言っている(私たちがこれを信じるかどうかは別として)。彼らはまた、現在彼らの技術は全米8箇所のゲノム研究室で使用中で、既にGoogleのモバイル開発チームとAlphabetのライフサイエンスの子会社であるVerilyを含んだ形で、Alphabet社からの強い関心が寄せられていると語った。彼らへの連絡先はfounders@deeplift.aiである。


Hotlineこのスタートアップは、ファンが直接有名人とつながることができる、メッセージングベースのプラットフォームを提供する。今のところ、それはFacebookのメッセンジャー、SMS、およびKikを使って単一のスレッドを介した通信を可能にする。基本的なアイデアは、メッセージングにTwitterのような対話性をもたらすことである。例えば、ランナーのウサイン・ボルトのファンは、おそらくボルトと1分でつながり、すぐにスイマーであるマイケル・フェルプスと、プラットフォームを変えたり他のダイアログボックスを開いたりせずにやりとりをすることが可能になる。

ハーバード大学、アマゾン、マッキンゼー – 創設者たちは印象的な経歴を持っているが、正直このプロダクトにはそのような雰囲気は漂っていない。大切なことかどうかは分からないが、早期のSnapchatのことを思わせることはなかった。彼らへの連絡先はfounders@hellohotline.comである。


Kofaこのスタートアップの技術は、あらゆる場所でアナリストを「スーパーチャージ」する。売り文句はこうだ:アナリストたちは予測モデリングや地理空間分析と膨大なその他の材料を理解しようとして苦労しているが、それは企業における彼らの役割の中心ではない。Kofaは、彼らにこの問題の一部を解決するための再利用可能なポイントアンドクリックのツールを与えると言う。その技術はまた、アナリストが互いの仕事の上に、別の仕事を構築することを可能にする。

私たちは、これがどの程度ユニークなのかはわからないが、Kofaの創設者は以前FancyThatを設立した者たちだ。彼らはPalantirに在籍していたが(前述したようにPalantirはFancyThatを買収した)、今年の初めに同社を離れ再び自分たち自身で起業した。これまでのところは上手くやっているようだ。彼らは既にいくつかのプリシード資金を調達していて、読者がこの記事を読む時には顧客と「6桁の契約を締結しつつある」ということだ。


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Motifこのスタートアップが目指しているのは、カスタマーサービス担当者が、簡単かつ即座に助けを求めているユーザーの画面を引き継ぐことである。これらすべてが1行のJavaScriptで実現されている。Motifはまた、事前に定義されたユーザーアクションの前後5分間のユーザーの画面を、サポート企業が記録することができるようにする。もし最初に心に浮かんだことが「プライバシーはどうなる?」ならば、目を閉じて、最後に画面上にあるものについて、電話越しにだれかに説明しようとしたとき、それがどれくらい時間がかかったかを思い出してみよう。Motifが、今後このような苦悩から私たちを救うことができるなら、私たちはそれを受け容れる。

チームの大きさがどれほどかは明らかではない。創業者Allan Jiangは現在スタンフォード大学でコンピュータサイエンスを学んでいて、2018年に卒業予定であることは確かである。彼への連絡はfounders@usermotif.comへ。


Novaこの会社は移民が米国の会社からのローンにアクセスすることを助けようとしている。米国の貸金業者には移民のクレジット履歴に簡単にアクセスする手段がないため、通常移民からのローンの申し込みは不可能ではないにせよ、とても困難である可能性が高い。ではNovaのソリューションは?世界中のグローバルな信用調査会社と貸し手を接続することだ。移民はNovaと提携している金融機関に融資を申請し、貸し手はAPIを経由して得られる情報を使って意思決定を行う。なおAPIで取得されるファイル1件ごとに貸し手はNovaに30ドルを支払う。これで完了だ。

同社は、2ヶ月前に開業し、既に3金融機関と提携している。創業者たち(全員がスタンフォード)に連絡する際にはfounders@neednova.comへ。


Plutoこのスタートアップは、小売業者が顧客を獲得するための新しいチャネルとして、メッセージングアプリを活用することを助ける、SaaSプラットフォームを提供する。例えばトリーバーチのようなブランドは、もはやメールプロモーションや広告だけに頼るというわけにはいかない。Plutoの技術を用いれば、顧客がFacebookメッセンジャーを開けた際に、後で買うためにオンラインショッピングカートに保存してまだ買っていないカラープロックPコートについて、企業から顧客にリマインダーを送ることができる。いままで行われてこなかったことだ。

創業者への連絡はfounders@getpluto.coまで。


Script写真を撮り、それをオンラインステッカーに変換し、メッセージングアプリを離れることなく送る。または友人や他のコミュニティのステッカー作品にアクセスして、会話を離れることなく、彼らのステッカーを送信する。

Hotlineと同様に、私たちにとってこの会社は、会社としては物足りなく、単なる機能提供のためには過剰のような気がするのだが、しかし機能も増え多くの人びとがこれを「選んで」いるようである。Scriptの創業者チーム(全員がスタンフォードから)によれば、過去4ヶ月間でサービスを知った何千人ものユーザーが、既に320万ステッカーを作成したそうである。役立つ情報かどうかは不明だが、CEOのKatia Ameriは同社を開始する前に、Pearのベンチャーアソシエイトとして2年間を過ごしている。

Ameriと彼女の共同創業者たちへの連絡はfounders@script.meへ。


Synocateこのスタートアップは、大学入学やキャリアアドバイスのための市場を構築中である。まず手始めに入試小論文を提出しようとする高校生のためのエッセイ編集ツールの提供を開始し、1エッセイにつき49ドルで、彼らが入学しようとしている大学の学生からのフィードバックを行っている。

特に目新しいものを聞くことはできなかった:野心的な高校生とその親の要望に応えようとする沢山のスタートアップが既に存在している。そして、それはとても巨大な市場であり、圧倒的に成功しているものは存在していない。創業者への連絡はfounders@synocate.comへ。


xSeerカーネギーメロンその他のPh.Dのチームによって設立されたこの会社は、数10億のデータポイントを取り込み、直感的に大規模なスケールで可視化を行う洗練されたビジュアル分析ソフトウェアを作成している。例えば保険会社などの顧客企業が、現在ターゲットにしておらず、本来ならばターゲットにするべき人たちを発見することなどを容易にする。

もしもっと詳しい情報のために創業者たちに連絡をしたい場合(彼らはまた秀逸なデモプログラムも持っている)はfounders@xseer.ioへ。


Viz私たちにとっては、この会社が1番興味深いものに思えた(Farshchiも同意見だ)。一言で言えば、それは一般的には放射線科医や他の技術者の専門知識を必要とする、超音波診断に対するディープラーニングの適用である。不安な患者たちが長い間待ち望んでいたものになる可能性がある。具体的には、そのソフトウェアは、超音波診断画像を他の数百万の画像や動画(ひとりの放射線科医師が一生に見ることのできる以上の数だ)と比較することによって、担当医師が画像を解釈する能力を上げ、迅速な対応がとれるようにする。

これは「熱い」領域だ。数年前、起業家Jonathan Rothbergは、Technology Review誌のインタビューで、新しい種類の超音波画像診断システムの開発に対して1億ドルを投資したと語った。その新しいシステムは「聴診器程度に安価」で「医者の効率を100倍にする」ものだということだった。最初は腰部の診断に焦点を当てているVizは、そのソフトウェアを使って、既存の機械で同じ仕事ができるようにすることを目指している。

創業者たちへの連絡はfounders@viz.aiへメールを送ること。

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(翻訳:Sako)

SpaceXの爆発事故が宇宙ビジネスに与える影響は


9月1日9時07分(東部標準時間)頃(日本時間1日22時07分)、SpaceX社が土曜日の打ち上げの準備のために行っていたルーチン着火テストの最中に壊滅的な爆発事故が発生した。

幸いなことに、負傷者は報告されなかったが、搭載貨物だったAmos-6衛星はFalcon 9と共に破壊された。約2億ドルの衛星Amos-6は、静止軌道へ打ち上げられ、Facebook主導のInternet.orgの一環として、アフリカの様々な場所にインターネット接続を提供する予定だった。

爆発の原因はまだ不明なものの、イーロン・マスクは、爆発が上段の酸素タンク付近で起きたことをTwitterで述べている。

Amos-6はFacebookの最初の衛星になる筈だった。現在アフリカに居るMark Zuckerbergは、Facebookのポストで爆発に対する失望を表明した。

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ロケットの爆発が発生したときに、宇宙業界では3つの疑問が話題になる。最初は、爆発による損傷と原因の根本についてである。第二は、この爆発が原因となるであろうスケジュールの遅れと、影響を受ける他の顧客について。最後が、この爆発が打ち上げプロバイダの信頼性に与える影響についてである。

損害評価

今回、ロケットと搭載物の両者が破壊され、何百万ドルもの機器が灰燼に帰した。その上、ケープカナベラルのロケット発射台に対する重大な損傷があるだろう。幸いなことに、試験点火中の発射台には労働者がいなかったため、負傷者は報告されていない。

この損害は誰が負うのか?まあ、高価な搭載物を積んだロケットの場合、通常は宇宙保険会社がその大部分がカバーする。CNBCは「一握りの保険会社に、年間約7億5000万ドルほどの保険料が払われ、年間50件ほどの有保険打ち上げが行われています」と指摘している。

統計的に言えば、米国の打ち上げの9件に1件は失敗する可能性がある、よってもし1億ドルを超える搭載物を送り出そうとしているのなら、保険をかけることがおそらく賢明だ。SpaceX社に限って言えば、失敗率はより低くFalcon 9の29件の発射中ただ2件だけが失敗に終わっている(最初の失敗は2015年6月)。

しかしながら、今回のケースは非常に珍しいものである。なぜなら爆発がエンジンの点火前に起きているからだ。SpaceNewsのPeter B. de Seldingによれば、発射保険はエンジン点火後に初めて有効になるということだ。しかし、被害は海洋貨物保険として知られている別のタイプの保険によってカバーされる可能性がある。

しかし、これは発射台やSpaceXの車両、そして衛星をカバーするのだろうか?これがどのようになるかに関しては、私たちは成り行きを見守るしか無い。

スケジュールの遅れ

どのような企業にせよ、ロケットの失敗は遅延を招く。遅延の期間は原因の根本に依存している。もしそれがSpaceX社の技術的エラーの場合には、長期間の遅延が予想される。もしそれがSpaceX社側の人的エラーの場合には、遅延はおそらく短期間に留まるが、信頼性の高い打ち上げプロバイダとしての評判が傷つくおそれがあるだろう。

昨年の6月、国際宇宙ステーションに物資を運ぶFalcon 9ロケットが、発射後わずか数分で爆発した。このときはSpaceX社が最終的に打ち上げに戻るまでに半年かかっている。しかし、その復帰は派手だった:その復帰飛行は、初めてのロケット再着陸を行うものだったのだ。

今年、SpaceX社は2015年に比べて3倍の打ち上げを計画していた、これが意味することは、今回の爆発が後に控える自分たちの打ち上げにどのように影響するかを不安に思っている多くの顧客がいるということだ。

そうした顧客のひとつが米航空宇宙局(NASA)である。Falcon 9を使った国際宇宙ステーションへの貨物補給ミッションは、11月に予定されていた。SpaceX社は貨物契約以外にも、NASAの商業乗組員プログラムに、2社のうちの1社として選ばれている(もう1社はボーイング)。

SpaceX社は、もともと2017年の8月に、ISSへの同社による最初の有人打ち上げを提供することを計画していた。ボーイング社の商業乗組員のための機材の準備が遅れていたため、SpaceX社が宇宙飛行士を登場させて打ち上げる最初の民間企業なることが予想されていた。SpaceX社が遅延する可能がでてきたため、競争の行方は不透明なものになった。

Falcon Heavyロケットの初打ち上げと再着陸を行ったロケットの初再打上げ(両者とも本年後半に予定されている)といった、他のSpaceX社の大きなマイルストーンも、おそらく遅れることになるだろう。

信頼性への懸念

ロケット打ち上げの世界では、信頼性が至上命題である。あなたが仮に最も安いプロバイダーで、顧客が2億ドルの搭載貨物を託すのには不安を抱えていたとしても、それは変わらない。

SpaceX社は、最も安い打ち上げプロバイダの一つであるという特徴を押し出して事業を行って来た。例えばSpaceX社の直接の競争相手の1つであるUnited Launch Allianceと比べても、かなり安価である。ULAはその価格を公表してはいないものの、いくつかのケースで、顧客はULAの代わりにSpaceXを選択することで40%の節約を実現している。

しかしULAの高い値札は、搭載貨物が行くべきところに届く、という安心感をもたらしている。ULAは2006年以来、わずか2件の部分的な失敗を除き、ほぼ完璧な発射記録を保っているが、その一方SpaceX社は過去15ヶ月に2つの大きな失敗を経験している。

SpaceX社の信頼性についてどのような判断を下すにせよ、まずは今日の爆発について多くのことを学ばなければならない。しかし現時点での大きな疑問は;この失敗の真因は何であったのか、誰に落ち度があり、どれほど速やかにその原因を取り除けるのかである。

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(翻訳:Sako)

SpaceXのFalcon 9がケープカナベラルにて爆発炎上

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更新情報:SpaceXからの情報によれば、人的被害はないとのこと。ただしロケットおよび積荷はすべて失われた。

多くの目撃者情報によれば、SpaceX Falcon 9ロケットが、ケープカナベラルの発射台におけるテスト中に爆発したとのことだ。9月3日土曜日に発射される予定で、Facebook初となる衛星を打ち上げることになっていた。

衛星の名前はAmos-6で、FacebookのInternet.orgイニシアティブで用いるブロードバンド接続を提供する予定となっていた。Facebookおよびフランスの衛星プロバイダーであるEutelsatが9500万ドルと5年の歳月をかけて開発したKaバンドの通信システムが搭載されていた。

地元の防災対策室からの情報によれば、周辺地域に被害が及んだという情報はないとのことだ。

以下の各ツイートは英文のまま掲載しておきます。

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(翻訳:Maeda, H

SpaceX、年内にも再利用ロケットを使ってSES衛星を打ち上げへ

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ルクセンブルクに拠点をおく、衛星関連事業を展開しているSESが、初めてSpaceXのFalcon 9を再利用することで合意にいたったとアナウンスしている。

再利用ロケットを利用した打ち上げは年内を目処に行われる予定であるとのこと。実現すればSpaceXは新たな一歩を踏み出すこととなる。これまでにイーロン・マスク率いるSpaceXは、9機の第一段ロケット回収に成功している。しかしまだ再利用して、再度宇宙に向かわせるところまではいっていなかったのだ。

SpaceXの話によると、今回再利用するのは4月にISS関連のCRS-8のミッションに利用し、無人船により回収したものであるとのこと。無人船での回収に初めて成功したときのものだ。

静止衛星ビジネスで世界最大のSESは年初より、SpaceX初となる再利用ロケットにより宇宙に資材を打ち上げることに強い興味をもっていると表明してきていた。

ちなみに、SpaceXとSESのつながりは以前からのものだ。2013年にSpaceXを利用してSES初となる商用静止衛星を打ち上げたのだった。

3月にもSESは、SpaceXのロケットを使ってSES-9衛星を静止軌道に打ち上げている。これは第一段ロケットを無人船で回収しようとして打ち上げたものであったが、このときには回収に失敗している

数ヶ月のうちにも打ち上げられるSES-10は、ラテンアメリカの通信用途で用いる衛星を打ち上げることになっている。

ロケットを実際に再利用することで、新しい時代を切り開くことになると考えています。低コストで資材を打ち上げられるようになり、積荷の制限などももう少し柔軟に考えられるようになるでしょう。技術面および運用面で高い信頼性を誇るSpaceXと、今回の合意に至ったことを嬉しく思っています。
SESチーフ・テクノロジーオフィサーMartin Halliwell

再利用が可能となれば、打ち上げコストは大幅に下がることとなる。コストが下がれば宇宙ビジネスが大幅に拡大することになり、それを目指してSpaceXやBlue Originは数々の困難に立ち向かっているのだ。

SpaceXのプレジデントであるGwynne Shotwellは3月、Falcon 9の第一段ロケットを再利用することで、30%のコスト削減ができると見込んでいると述べている

宇宙船などを宇宙に送り出したあとのロケットを再利用することは、全体を迅速に再利用するための第一段階となるものです。SESは何年にもわたって、SpaceXの取り組みに積極的に協力してくれています。最初の再利用ロケットで、SES-10を打ち上げることになることを嬉しく思っています。
プレジデント兼チーフ・オペレーティングオフィサー Gwynne Shotwell

今回の打ち上げのコストについてはSESから情報を得ることはできなかった。「正確な金額については非公開としています。しかしSpaceXのFalcon 9を再利用することにより、信頼性のあるロケットを手軽に使えるようになり、発射コストを引き下げると同時に発射回数を増やすことになっていくでしょう。安価にかつ自由に宇宙にアクセスできることは私たちのビジネスにとって非常に重要なことであり、発射ロケとの再利用はまさに大きな可能性をひらくっことになるのです。

なおSpaceXは今年、2015年比で3倍のロケット打ち上げを行いたいと発表している。またファルコンヘビー(Falcon Heavy)の初打ち上げも計画されている。今年も残り4ヵ月。目標をすべて達成することとなれば、SpaceXにとってもとても重要な1年として記録されることになるのだろう。

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(翻訳:Maeda, H

NASA、ISSに商用利用を予定する新ドックの設置作業中(ライブ映像あり)

将来に予定されるISSの商用ロケット利用に備える準備のため、NASAの宇宙飛行士たちが作業を行なう。2017年よりボーイングやSpaceXなどによる人員の投入および帰還のために利用される予定の、新しいドックを準備するのだ。一般の企業がこのような行為を行うのは初めてのこととなり、ロシア独占の時代が変わることになる。

作業を行なっているのはNASAのKate RubinsとJeff Williamsで、東部標準時の08:05より行われる。IKEAのコーヒーテーブルを組み立てるよりもはるかに難しい作業となるのは間違いない。作業は6時間半を予定しており、主要作業はSpaceXによって7月20日に運ばれて8月17日に梱包を解かれたドッキングアダプターの設置だが、その前にさまざまな準備作業が予定されている。

Rubinsにとっては最初の宇宙空間での作業となる。Williamsはこれまでに3度の船外作業を経験している。

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(翻訳:Maeda, H

15万RPMで回る小型モーターが人工衛星の姿勢を保つ

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ASUのFemtosatのような小さな衛星の設計において空きスペースはとても貴重である。

これからの宇宙で必要なのは小さいことだ:トースターサイズのCubesatsや1インチのFemtosats混雑する宇宙を飛ぶさまを想像して欲しい。新しく発明された小さくて強力なモーターはそのビジョンとしっかり手を取り合い、燃料を使うことなく自身の位置制御を行うことができる小さな宇宙船を作ることを可能にする。

さてまずは、少々エンジニアリングのレッスンを。科学の時間だ!

高速モーターを製作中のTüysüz(写真手前)

高速モーターを製作中のTüysüz(写真手前)

人工衛星や探査機のようなユニットのうち、特に小さくて長距離の宇宙飛行ミッションを遂行するものにとって、クリティカルな加速や操作以外の目的に燃料を利用することは実際的ではない。結局のところ、ヒドラジン(燃料)が不足したからといってNew Horizons(NASAが運用している太陽系外縁天体の探査を行う無人探査機)に再び給油することはできないのだ。そこで宇宙船の姿勢の微調整を行うためには、しばしばリアクションホイールが利用されている。

基本的に、それは衛星の内部に取り付けられて一定の速度で回転するフライホイールである − そしてその速度を調節することによって(例えばY軸の周りの反時計方向の速度を落とすことによって)、衛星からの反力が生じる。全ての作用には反作用(リアクション)があるということを覚えているだろうか?この場合反作用は、どれくらいホイールの速度が変化したかに比例して、衛星を重心の周りに回転させる。

とても速く回転するものの例に倣い、リアクションホイールは、ボールベアリングを使用している。しかし、これらのベアリングは、時間の経過により磨耗するし、ダメージを与えるかもしれないものを取り除いて真空を保ちながら慎重に密封されなければならない。ハッブル宇宙望遠鏡では2つのホイールが交換されたし、探査機ケプラーの場合は姿勢制御ホイールの故障によって機能が失われてしまった。それだけではない、たとえ予定通りのオペレーション下でも、それぞれのベアリングのわずかな歪みの集積が、搭載科学機器に干渉し得る振動を発生させるのだ。

これは解くべき課題である 。

チューリッヒ工科大学(ETH)のArda Tüysüzと大学からスピンオフしたCeleroton社の彼の仲間たちは、もっと良い手段があるべきだと考えた。そして、それはあったのだ!実際、その解決法はとてもシンプルで、どうして何年も前からそうしなかったのかと不思議に思うほどなのだ:それはベアリングの代わりに磁石を利用するやりかただ。

「それについては特に新しいものは何もありません。電気工学、磁気軸受、基本的な物理的原理の理解 − すでにすべてがあったのです」と Tüysüzはチューリッヒ工科大学のニュースリリースで述べている

ホイールを磁気で浮揚させることで、あらゆる種類の問題が回避され、新たな可能性の扉が開いた。例えばそのひとつとして、ベアリングをなくすことにより、真空にした領域や、潤滑その他のことが不要になることが挙げられる。振動はなく、交換する必要もない。そしてもちろん浮遊するローターは摩擦や機械的磨耗にはほとんど影響を受けないため、これまでのリアクションホイールに比べて速く回転させることができるのだ、それもはるかに高速に。

Tüysüzが説明した、システムの初期のプロトタイプ。

Tüysüzが説明した、システムの初期のプロトタイプ。

ベアリングを使うホイールが一般的には数1000RPMで回るのに比べて、この浮遊ホイールは驚くべきことに最大15万RPMもの速さで回ることが可能である。このことが意味することは、同じサイズのベアリング式モーターに比べて10から20倍もの増幅したパワーを発揮することができるということだ。しかしより重要なことは、同じレベルのパワーを既存のものの10分の1のサイズで得ることができることを意味していることだ。

小さな宇宙船にとってこれはとても素晴らしいことである:コンパクトで、効率的で、決して磨耗しない強力な回転モーター。ほんの数立方インチを節約できるだけで、あらゆるミッションのために巨大な恩恵がもたらされるのである – その空間は他の機器やバッテリーや燃料などに使用することもできるし、打ち上げ重量を減らすために空のままにしておくこともできる。

欧州宇宙機関が、たとえ現在モーターがプロトタイプ段階であったとしても、このシステムに興味を持ったとしても不思議ではない。

TüysüzとETHの同僚たち、そしてCelerotonは共同で、その開発の詳細をカプリ島での会議で発表された論文の中で公開している。

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(翻訳:Sako)