Googleアシスタントが視線操作のデバイスにも対応

日常的にデバイスとのやりとりを視線追跡に頼っている人は強力なツールを手に入れることになった。Googleアシスタントだ。視線を音声ベースのインターフェイスに置き換えることで、アシスタントの複数の統合とコミュニケーションツールがTobii Dynavoxデバイスの機能を向上させる。

GoogleアシスタントはTobiiのアイトラッキングタブレットやモバイルアプリにタイルとして加えることができ、そこにはよく使うアイテムを並べた大きなカスタマイズ可能なグリッドが表示され、ユーザーはそれを見て起動する。これはGoogle(グーグル)がサポートしている他のソフトウェアやハードウェアのインターフェイスの仲介役として機能する。

例えば、スマート家電は特定の障害を持つ人にとっては非常に便利だが、一部の身体が不自由な人にとっては視線追跡デバイスのインターフェースに簡単にアクセスできない可能性があり、他の手段を必要としたり、ユーザーが実行できるアクションを制限したりすることもある。Googleアシスタントは多種類のそんなデバイスに、最初から対応しているのだ。

Tobii DynavoxのCEOであるFredrik Ruben(フレドリック・ルーベン)氏は「身の回りの物と『世界』をコントロールできることが、ユーザーにとって一番大切だ。Googleアシスタントのエコシステムにはほぼ無限の可能性がある」と語る。

Googleアシスタントのタイルに置かれるコマンドやアプリはユーザーがセットアップでき、「今日はカレンダーに何がある?」のような質問も自動化できる。セットアップにはGoogleのアカウントが必要なだけで、Google Homeアプリへ最初にTobii DynavoxのSnap Core Firstという不思議な名前の視線追跡デバイスをスマートスピーカーもしくはディスプレイとして登録する。するとAssistantのタイルを加えられるようになり、話し言葉でコマンドをカスタマイズする。

画像クレジット:Google / Tobii Dynavox

ルーベン氏によると、Googleのソフトウェアの統合は「技術的には簡単で」「私たちのソフトウェア自体がすでに多様なアクセスニーズをサポートしており、サードパーティのサービスもローンチできるため、Googleアシスタントのサービスとも相性が良い」とのことだ。

Tobiiが提供しているアイコンのライブラリ(点灯する矢印、開いたドア、閉じたドアなど)を、簡単にGoogleアシスタントのショートカットとして使うこともできる。

これはグーグルにとって同社が開発した一連の興味深いアクセシビリティーサービスの最新のものだ。その他にもリアルタイムの書き起こしや、グループビデオ通話で手話が使われたときの検出、標準的でない発音に対する音声認識などがある。まだウェブの多くが離れた場所からはアクセスできないが、少なくとも大手テクノロジー企業は時折、良い仕事をしている。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:GoogleGoogleアシスタントアクセシビリティ

画像クレジット:Google / Tobii Dynavox

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アクセシビリティにおける次世代のブレイクスルーは文字通り「あなたの頭の中」にある

視覚障がい者にとってのテクノロジーの未来を予想することは、おそらくあなたが考えるよりも簡単だ。2003年に私はAmerican Foundation for the Blindが出している「Journal of Visual Impairment & Blindness」に「あなたの手の中で」というタイトルの記事を書いた。iPhoneが登場する4年前だが、支援技術の中心はデスクトップPCからスマートフォンへ移行すると私は自信をもって予想することができた。

私は「100ドル(約1万600円)を切った携帯電話は、見えない人のために見て、読めない人のために読み、話せない人のために話し、覚えられない人のために覚え、迷ってしまった人を案内することができるようになるだろう」と書いた。ありそうもないようにも思えたかもしれないが、その当時の技術のトレンドを見ると、そうした移行は必然だった。

私たちは今、同じような時期にいる。だから12月2〜3日にバーチャルで開催されるイベントのSight Tech Globalに参加できることをたいへん楽しみにしている。このイベントにはトップクラスの技術者が集い、AIや関連テクノロジーが、視覚障がい者のためのアクセシビリティと支援技術がめざましく進化する新しい時代をどう先導するかが議論される。

未来を目指すために過去を振り返ってみよう。1990年代に、私は支援技術起業家のパイオニアで視覚に障がいのあるJoachim Frank(ヨアヒム・フランク)氏と一緒にドイツの都市、シュパイヤーを歩いていた。ヨアヒム氏は私に、その時点で支援技術にできることと対比して本当はどうして欲しいか、空想を語ってくれた。彼は街を歩きながら、技術が進化したら自分にとってはこんなふうに役に立つという印象に残るストーリーを3つ話した。

  • 街やスーパーマーケットを歩くときに、看板をすべて読み上げて欲しいわけではない。でも、カスラーキプヒェン(好物の燻製ポークチョップ)を売っているという看板があってそれがお得な値段だったら、私の耳元でささやいて欲しい。
  • 向こうから若い女性が歩いてきたら、その人が結婚指輪をつけているかどうかを知りたい。
  • 誰かが私の後を2ブロック付けてきていて、その男が強盗だとわかっているなら、そのことを知りたい。そして歩く速度を上げ、50メートル前進し、右へ曲がり、さらに70メートル進めば警察に着くと教えて欲しい!

ヨアヒム氏の話に私は圧倒された。彼は短い散歩の間に、テクノロジーは自分のために何ができるかについての大胆なビジョンを細かいところに捕らわれず簡潔に語った。お金を節約し、新しい友人に出会い、自身の安全を守って欲しいと彼は望んでいた。視覚に障がいがない人と同等の能力に止まらず、さらにそれを上回りたいと望んでいた。そして特に「彼について」、そして「彼の」希望やニーズを理解するツールを望んでいた。

私たちは、ヨアヒム氏の夢を現実にできる時期に近づいている。アシスタントが耳元でささやくのか、ダイレクト神経インプラントを使って通信するのかは問題ではない。おそらく今後、 両方とも出てくる。しかしテクノロジーの細胞間結合のネクサスは頭の中で動き、アクセスの平等を実現するためのパワフルな道具になるだろう。サービスとしての知覚を持つ新しいテクノロジースタック。アルゴリズムによる識別を上回る対応策。テクノロジーのパーソナライズ。手頃な価格。

そうしたエクスペリエンスは、クラウドの豊富なアプリケーションとたやすく利用できるテクノロジースタックの上に構築されるだろう。テクノロジーにアクセスするコストが安くなればなるほど、プロダクトデザイナーはすばやく作り、実験することができる。最初のうちは高価でも、おそらくは障がい者以外の人々にも採用されるようになれば、それほど時間はかからずに価格は下がる。視覚障がい者向け技術に関する私のキャリアは、読み取り技術の価格を半額の5000ドル(約52万8000円)に引き下げたことで大きな話題となった読み取り機の開発から始まった。今ではそれより性能の良いOCRをスマートフォンの無料アプリで利用できる。

我々がどのようにしてヨアヒム氏の夢を現実にし、多くの視覚障がい者のニーズを満たすかを、12月2〜3日のSight Tech Globalで詳しく掘り下げる。そしてこのイベントでは、テクノロジーのツールであなたの想像をどのように実現できるかを世界有数のエキスパートとともに探る。これはたいへん興味深い。

登録は無料で、誰でも参加できる。

日本語版注:本稿を執筆したJim Fruchterman(ジム・フルヒターマン)氏は、社会貢献活動を支援する技術開発者の非営利団体、Tech MattersおよびBenetechの創業者だ。

カテゴリー:イベント情報
タグ:アクセシビリティSight Tech Global

画像クレジット:RyanJLane / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

視覚障がい者が自動運転タクシーを呼ぶ際の困難をWaymoはどう解決か、12月のSight Tech Globalで探ろう

想像してほしい。視覚に障がいがあって車の運転ができないとしたら、あなたの生活はどう変わるだろうか。私はそれを毎日、家で目の当たりにしている。私の妻は法律で認められる盲人で、とても忙しい人なのだ。妻はUberとLyftを敬愛している。いつでも、どこへでも行ける素晴らしい選択肢を提供してくれているからだ。だから1年前、Waymoの自動運転タクシーにちょっと乗る機会を得たときに、彼女はどれほど喜んだか。セイフティドライバーは彼女に、シートベルトを締めて「スタート」ボタンを押すように言った。まったくなんということか。スタートボタンはどこにあるの?

彼女の外出の用件はフェニックスですでにサービスを開始しているWaymoの自動運転タクシー開発におけるアクセシビリティへの取り組みについて話すことだったので、私たちは皆笑ってしまった。WaymoはフェニックスのFoundation for Blind Children(FBC)と緊密に連携して体験のフィードバックを集め、サンフランシスコのLighthouse for the Blindにも助言を求めている。12月2~3日に開催されるバーチャルイベントのSight Tech Globalでは、Waymoのアクセシビリティへの取り組みを紹介する。このイベントは、AI関連テクノロジーが障がい者支援技術やアクセシビリティに今後どのような影響を与えるかをテーマとする。参加は無料で現在登録を受け付けている

Waymoのアクセシビリティのセッションには重要な人物が3人登場し、Waymoの取り組みを紹介する。Clement Wright(クレメント・ライト)氏(LinkedIn)はWaymoでユーザーエクスペリエンスとアクセシビリティを担当するプロダクトマネージャーだ。ライト氏は、障がいを持つ人も含めてすべての利用者が安全で快適で便利にWaymoの完全ドライバーレスサービスを利用できるよう努めている。Marc Ashton(マーク・アシュトン)氏(LinkedIn)は、フェニックスに本拠地を置くFoundation for Blind ChildrenのCEOで、視覚障がい児教育のリーダーとして全米で知られている。自身の息子に視覚障がいがあることからアシュトン氏はこの分野に関心を持ち、2007年にCEOになった。Bryan Bashin(ブライアン・バシン)氏(Lighthouse for the Blindサイト)はサンフランシスコにあるLighthouse for the BlindのCEOだ。このNPOはカリフォルニアのほか世界中の視覚障がい者に教育、トレーニング、支援、コミュニティを提供している。バシン氏は大学生の頃から視覚に障がいがあり、キャリアの大半を視覚障がい者の平等、アクセス、トレーニング、メンタリングに捧げてきた。

Waymoはアクセシビリティに優れた自動運転車両の利用を追求しているが、これは簡単なチャレンジではない。ライト氏は「現在、タクシードライバーは厳密な運転以外の業務をこなしている。ドライバーはピックアップ時に窓を開けて乗客と話したり、乗客が車を見つけられるようにしたりする。我々がWaymo Driverの構築にあたって取り組んでいる最大の課題のひとつは、人間の乗務員がいない車で利用者の付加的なニーズを理解することだ」と語る。

WaymoはFBCの成人メンバーと連携し、Waymoタクシーを呼ぶときに使うモバイルアプリのフィードバックを得ている。例えばアプリからタクシーのクラクションを鳴らして車を見つけるメカニズムなどだ。ライト氏は「特定の人々、例えば視覚障がい者を支援するために組み込んだ機能が実はその他の利用者にもとても役立つということを、我々は何度も目にしてきた。このことから我々はインクルーシブデザインにさらに幅広く取り組むようになった。特定の利用者のニーズから重要な課題を理解し、それを活かしてすべての人に役立つソリューションを構築する」と語っている。

自律車両には、法律上の盲人である130万人の米国人などの障がい者が安全で効率よく目的の場所へ移動できるようにする可能性がある。Waymoがプロダクト開発サイクル全体でアクセシビリティにどう取り組んでいるかを詳しく知り、全盲とロービジョンの両方のユーザー、そして視覚障がいをもつ人々の代表にあたる協力組織からのフィードバックが開発プロセスにおいて果たす重要な役割を探ろう。12月2~3日に開催されるSight Tech Globalのセッションに参加してほしい。今すぐ無料で申し込める

Sight Tech Globalではスポンサーを募集している。現在、Verizon Media、Google、Waymo、Mojo Vision、Wells Fargoがスポンサーとなっている。イベントはボランティアによって運営され、イベントの収益はすべてシリコンバレーにあるNPOのVista Center for the Blind and Visually Impairedの収入となる。

画像クレジット:Waymo

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(翻訳:Kaori Koyama)

12月開催のSight Tech Globalでスクリーンリーダー「JAWS」アーキテクトが講演

視覚障がい者にとって、驚くほど高度なコントロールと読み上げおよび点字の出力精度を備えたJAWSは、Windows PCを操作する自由の代名詞だ。JAWSはキーボードドリブンのアプリケーションで、ウェブサイトやWindowsソフトのGUIベースのインターフェイスを操作できるようにする。JAWSを使いこなす人がPCを操作する様子を聞けば、操作する人のスピードとJAWSから返ってくる機械音声の早口に驚嘆するはずだ。ちなみにJAWSはJob Access With Speechの頭文字をとった名前である。

自宅のオーディオスタジオにいるJAWSアーキテクトのグレン・ゴードン氏

JAWSは25年近くスクリーンリーダーの分野をリードし、世界中で何十万もの人々に使われている。現代の支援技術の中で最も素晴らしい功績のひとつであることは間違いない。25年以上にわたってJAWSのアーキテクトを務めているGlen Gordon(グレン・ゴードン)氏をSight Tech Globalのプログラムに迎えることになった。Sight Tech Globalは2020年12月2~3日に開催されるバーチャルイベントで、AI関連テクノロジーが障がい者支援技術やアクセシビリティに今後どのような影響を与えるかをテーマとする。参加は無料で現在登録を受け付けている

生まれつき視覚に障がいのあるゴードン氏は「グラフィカルユーザーインターフェイスをアクセシブルにすることができるかどうかまったくわからなかった時代にWindowsを使いたいと思ったわがままな願望」からアクセシビリティに関心を持った。同氏はUCLAアンダーソンスクールでMBAを取得し、「アクセシブルでないソフトウェアを使う厳しい体験と大変なフラストレーション」を通じてソフトウェア開発を学んだ。オーディオとブロードキャスティングに詳しく、Freedom Scientific社のポッドキャスト、FSCastのホストでもある。

JAWSの最新のパブリックベータでは、この名高いソフトウェアの未来が垣間見える。ユーザーの音声コマンドで動作する「ボイスアシスト」が搭載され、画像の説明がこれまで以上にスムーズになったのだ。どちらも、Freedom ScientificのJAWSチームがJAWSやFUSION(JAWSと画面拡大ソフトのZoomTextを組み合わせたツール)で使っているAIテクノロジーのおかげだ。このアップデートでJAWSの難題が2つ解決される。おじけづいてしまうユーザーもいるほどのキーボードのコマンドセットの複雑さと、画像を十分に説明しているとは限らないaltタグだ。

ゴードン氏は「JAWS、ZoomText、Fusionの今後のバージョンでは、自然言語処理によりスクリーンリーダーのコマンドの多くを話し言葉で実行できるようになる。おそらくすべてのコマンドをしゃべるのは望ましくないだろうが、あまり使わないコマンドにボイスアシスト機能を使えば覚えなくてはならないキーの組み合わせを最小限にすることができる」と説明する。

「大まかに言うと、小さなコマンドセットで効率よく使えるようにしたいと思っている。これは基本的には、我々のプロダクトをもっと賢くし、ユーザーのしたいことやニーズをそれまでのアクションに基づいて予測できるようにするという意味だ。そこに至るプロセスは精度が低く、我々は引き続きユーザーからのフィードバックをもとに優れた機能にしていく」(ゴードン氏)。

次世代のスクリーンリーダーではさまざまなテクノロジーとともにAIが活用される。このことは、2020年12月2〜3日に開催されるSight Tech Globalの主要なトピックとなるだろう。無料のパスを今すぐ申し込もう

Sight Tech Globalではスポンサーを募集している。現在、Verizon Media、Google、Waymo、Mojo Vision、Wells Fargoがスポンサーとなっている。イベントはボランティアによって運営され、イベントの収益はすべてシリコンバレーにあるNPOのVista Center for the Blind and Visually Impairedの収入となる。

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(翻訳:Kaori Koyama)

12月開催のSight Tech Globalでメガネに取り付ける視覚障がい者支援デバイスのOrCam開発者が講演

テクノロジーの進化をデバイスの小型化と性能で測るなら、イスラエルのOrCam Technologiesは好調だ。同社のOrCam MyEyeはメガネのつるにフィットし、これまでの同種の製品よりずっとパワフルで小さい。2020年7月にAIベースの新しいスマートリーディング(PR Newswire)ソフトウェアがリリースされて、このデバイスはテキストやラベルを「読む」だけでなく、名前で人を特定したり周囲の重要なものごとを説明したりできるようになった。AIベースのスマート音声アシスタントで、主に視覚障がい者であるユーザーとやりとりをすることもできる。

バーチャルイベントのSight Tech Globalで、OrCamの共同創業者で共同CEOのAmnon Shashua(アムノン・シャシュア)教授が講演をする。2020年12月2~3日にバーチャルで開催されるこのイベントは、AI関連テクノロジーが障がい者支援技術やアクセシビリティに今後どのような影響を与えるかをテーマとする。参加は無料で、現在事前登録を受け付けている

シャシュア氏はテクノロジーの世界では傑出した存在だ。OrCamの共同創業者であることに加え、自動車の安全性向上や自律運転ナビゲーションのためのコンピュータビジョンのセンサーとシステムを提供するMobileyeの創業者でもある。Mobileyeは2017年に、Intelに153億ドル(約1兆6300億円)で買収された。これはイスラエル企業の単一の買収としては史上最大規模だ。

シャシュア氏はおばの勧めでOrCamを始めた。視力を失いつつあったおばは、甥のシャシュア氏に科学者、そしてAIの専門家としての並はずれた才能を生かして助けて欲しいと願っていた。シャシュア氏はその目標を胸に、共同創業者のZiv Aviram(ジブ・アビラム)氏とともに2010年にOrCamを始めた。同社はIntelなどの投資家から1億3040万ドル(約138億3500万円)を調達し(Reuters記事)、OrCam MyEyeデバイスを50カ国以上、数万人のユーザーに販売している。OrCam MyEyeの米国での価格は3900ドル(約41万円)で手頃な価格ではないが、同社は生産が増えればデバイスの価格は今後下がっていくとしている。

障がい者支援技術の新時代を迎え、オフラインで動作する軽量のOrCam MyEyeのアプローチは挑戦的なものだ。このデバイスはTIMEのBest Invention of 2019に選出されている(TIME記事)。高度なセンサーと電子機器の小型化は、支援技術の基盤となるこじんまりとしたセンサーアレイにつながるだろうか?AIベースの自然言語処理は必要に応じて連携して動作する、多目的でカスタマイズ可能なパーソナルアシスタントにつながるだろうか?

「OrCamの計画では、究極の支援技術はコンピュータビジョンと自然言語処理のバランスをうまくとったものでなくてはならない。例えば最近公開した『スマートリーディング』機能は、どのテキスト情報を抽出してユーザーに伝えるかをデバイスに教えるためにNLP(自然言語処理)を利用している。ユーザーはNLPを利用して、自分が何を知りたいかを正確に指定できる。その例として、最近搭載した『オリエンテーション』機能を使うとユーザーはデバイスに対して、シーンの中にあるオブジェクトを説明しそのオブジェクトに向かって音声でガイドするようにと指示することができる。『オリエンテーション』機能は語彙の面でも、『トイレの看板が見えたら教えて』というような探索の面でも、見えている範囲の中で空いている場所はどこかという障害物回避の面でも向上している。こうした要求を実現するための技術的な課題は、コンピューティングとアルゴリズムの進歩にまさに大きく依存している」とシャシュア氏は語る。

さらにシャシュア氏は語る。「私のいう『コンピューティング』とは、処理性能を小型化する傾向がますます強くなり、小さなバッテリー駆動のフットプリント上で高度なアルゴリズムを動かせるようになるということだ。私のいう『アルゴリズム』とは、人間の知性を模倣するディープテックがますます高度になるということだ。この2つが組み合わされて、視覚障がい者支援技術の将来に強い影響力がもたらされる」。

シャシュア氏は1985年にテルアビブ大学で数学とコンピュータサイエンスの学士を取得し、1989年にワイツマン科学研究所でコンピュータサイエンスの修士号を取得した。1993年にはマサチューセッツ工科大学(MIT)の人工知能研究所に勤務しながら脳・認知科学の博士号を取得した。

Sight Tech Globalは12月2〜3日に開催されるバーチャルイベントで、参加は無料だ。現在、事前登録を受け付けている

Sight Tech Globalではスポンサーを募集している。現在はVerizon Media、Google、Waymo、Mojo Vision、Wells Fargoがスポンサーとなっている。イベントはボランティアによって運営され、イベントの収益はすべてシリコンバレーにあるNPOのVista Center for the Blind and Visually Impairedの収入となる。

関連記事:OrCamがAIを活用した聴覚補助デバイスを発表

カテゴリー:イベント情報

タグ:アクセシビリティ OrCam

画像クレジット:Jonathan Hepner

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(翻訳:Kaori Koyama)

12月開催のSight Tech Globalでマイクロソフトの研究者が視覚障がいに対する「パーソナル」なAIのあり方を語る

Microsoft(マイクロソフト)の主任研究員であるCecily Morrison(セシリー・モリソン)博士が視覚障がい者にとってAIがどう役立つかを研究しているのは、強い個人的な思いによるものだ。博士の7歳の息子が視覚障がい者だからというだけではない。人を助けるパワフルなAI関連テクノロジーは、それぞれの人の環境や能力に応じてサポートするパーソナルなものであるべきだとの信念があるからだ。

Microsoft Research Cambridgeでヒューマン・コンピュータ・インタラクションやAIについて研究しているモリソン博士は「ユーザーが自分の体験をパーソナライズできるような新しいAIテクノロジーが登場するだろう」と言う。「一人ひとり、すべての人が異なる。障がいがあるというラベルは、同じラベルを持つ別の人と同じニーズを持つという意味ではない。それぞれに固有のニーズに合わせて体験をパーソナライズするために、新しいテクニックによって障がい者の情報のニーズをごくわずかなサンプルでAIに教えることができる。テクノロジーは障がいというラベルのためのものではなく、パーソナルなニーズのためのものになる」。

画像クレジット:Cecily Morrison

モリソン博士は12月2日と3日に開催されるバーチャルのグローバルイベント、Sight Tech Globalで講演をする。Sight Tech Globalは、AI関連テクノロジーによって視覚障がい者のアクセシビリティの未来がどのように具体化されるかを考えるイベントだ。先日、TechCrunchで開催が発表され、現在は事前登録を受け付けている

モリソン博士は現在、全盲やロービジョンの人々に対するAIの可能性を探るいくつかの研究プロジェクトに関わっている。例えばProject Tokyo(Microsoft発表)では、周囲の状況に関する情報をリアルタイムで提供し、意味づけのスキルと能力を拡張する方法を研究している。

研究チームは全盲やロービジョンの人々と緊密に連携し、その体験とニーズに基づいて研究をしている。「きわめて重要なのは、全盲やロービジョンの人々の能力を高めるためにテクノロジーは何ができるのかを考えることだ。視覚障がい者の多くは高度なストラテジーをもって周囲を認識し意味づけている。AIテクノロジーは、情報のギャップをカバーすることでこうした高い意味づけのスキルをさらに強化するものでなくてはならない。テクノロジーは視覚の代わりではなく、人が生活の中ですでに持っている情報を補強するものと捉えることが大切だ」。

視覚障がいの子を持つ母親としてモリソン博士は「違う視点で世界を見てきたし、他の立場では見ることも参加することもなかったであろうコミュニティに参加してきた」という。このことは間違いなく博士の研究を後押ししてきた。インクルーシブデザインのプロジェクトであるProject Torino(Microsoftブログ)は、視覚障がいを持つ子どもたちがプログラミングを学ぶというニーズから発想を得ている。このプロジェクトから、視覚の程度を問わず7〜11歳の子どもが計算論的思考と基本的なプログラミングを学ぶための物理プログラミング言語が作られた。この取り組みがCode Jumperというプロジェクトにつながり、視覚障がい者の教育や自立支援に取り組むNPOのAmerican Printing House for the Blindから有料で販売されている。

視覚障がいを持つ7〜11歳の子どもたちと緊密に連携して試行錯誤することで、このプロジェクトが成功した。そしてモリソン博士は、対象となる人々と研究者が緊密に連携する重要性について理解を深めた。さらに博士は、視覚に制限のある人々は一般に、テクノロジーに対して際立ったアーリーアダプターであると指摘する。

モリソン博士は次のように語る。「エージェントを利用した空間で、我々は全盲やロービジョンの人々とともに研究をしてきた。なぜなら、我々がエージェントの研究を始めた時点では、一般の人はエージェントのヘビーユーザーではなかったからだ。それどころか、ほとんどの人がエージェントはおもちゃだと考えていた。その一方で視覚障がい者はエージェント技術のアーリーアダプターでありヘビーユーザーだった。彼らはエージェント技術の可能性を広げるための大きな力になった。テクノロジーを日常的に使っていなければ、今後どうなるかを想像することはできない。能力の高い視覚障がい者のグループと協力して、未来のエージェントが私たちすべてにとってどのようなものになるかを考えることができる。これはインクルーシブデザインの好例だ」。

モリソン博士はケンブリッジ大学でコンピュータサイエンスの博士号を取得し、コロンビア大学バーナードカレッジで民族音楽学の学士号を取得した。パートナーと2人の子どもがいて、子どものうち1人は視覚に障がいがある。

現在、Sight Tech Globalでは事前登録を受け付けている。メインプログラムは無料で視聴できる。

Sight Tech Globalはスポンサードを受けて開催するイベントで、これまでにWaymoGoogle、Wells Fargo、TechCrunch、Verizon Mediaがパートナーとなっている。収益はすべてNPOのVista Center for the Blind and Visually Impaireの収入となる。スポンサーシップについての問い合わせはsponsor@sighttechglobal.comまで。

画像クレジット:Sight Tech Global

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(翻訳:Kaori Koyama)

視覚障がい者のためのAI視覚をテーマとするSight Tech Globalカンファレンス開催

テクノロジーに関わる者にとって視覚にハンディキャップがある人々を助けるツールの開発に挑戦することはこの上ない喜びだ。シリコンバレーの伝説的なビジョナリーであるRay Kurzweil(レイ・カーツワイル)は1976年にテキスト読み上げデバイスを発表している。この種の製品として商業的に初の試みだった。視覚障害者団体、NFB(National Federation of the Blind)のプレスカンファレンスで卓上に置く複写機のような箱型の機械であるカーツワイル・リーディン・マシンが披露された。 当時の価格で5万ドルだった。

カーツワイルの製品をはじめとするこうしたパイオニア的なデバイスはテクノロジーにもビジネスにも非常に大きな影響を与えていった。現在、リーディングマシンの後継にあたるのはMicrosoft(マイクロソフト)のSeeing AIアプリだ。これはAIを利用した機械視覚でカーツワイルの時代には想像もできなかったような正確さでテキストを認識し、読み取ることができる。しかもスマートフォンさえ持っていれば誰でも無料で使えるのだ。

こうした急速なテクノロジーの進歩がSight Tech Globalカンファレンスを可能にした。2020年12月2日と3日に開催されるこのバーチャルイベントには世界中からこの分野の最新のテクノロジーが結集し、専門家がAI視覚的によるアクセシビリティーを助けるテクノロジーの驚くべき進展が今後世界をどのように支えていくか討論する。

Microsoft Seeing AIは、自動運転車や人間と混じって安全に作業ができるロボットを可能にしたのと同じテクノロジーに基づいている。その昔シリコンバレーのトップエンジニアにとってさえ難問だった人に代わってコンピュータに対象を認識させるという課題だ。

視覚を失った人々の立場からすると、現在のテクノロジーは驚くべきものだ。 わずか10年前に予想もできなかったほどのレベルに達している。コンピュータースクリーンを読み上げてくれるJAWSやSeeing AIのような専用アプリは素晴らしいツールだ。同時にこれを可能にしているモバイルネットワークやスマートフォンやマートデバイス、マップやナビアプリなどはハンディキャップの有無に関わらず人々の生活を一変させた。しかしながら、こうした豊富なテクノロジーは十分にその可能性を活かされておらず、危険の種類、アクセシビリティに関する公的基準によっても異なるが、視覚的ハンディキャップのある人々のバリアを十分に取り除くには至っていない。視覚障害者は未だに杖や盲導犬あるいは目の見える人の介助に頼らざるを得ず、ウェブサイトを使おうとしても大きな困難に直面するし、大勢の人々が集まる席でも見えないことによって孤立を感じている。

今や高速道路ならコンピューターは人手を借りずに時速110kmで安全に車を走らせることができる。ところが歩道で目の見えない人を安全に時速4kmで歩かせることができるデバイスは手に入らない。

ソーシャルメディアサービスは瞬時に数十億人のユーザーから一定の基準で対象を選び出すことができる。しかし目の見えない人は自分の前に立っている人物が誰でどんな様子であるか簡単に知ることができない。現代の優れたテクノロジーの多くは AIを活用しているが、簡単に手に入り、生活を明るいものにし、現実に役立つような次世代ツールとして現実化されていない。なるほどマイクロソフトやApple(アップル)のような大企業、有名大学からスタートアップまでさまざまな研究、開発が進められている。しかしこうした研究が困難であり歩みも遅いことは否定できない。視覚的なハンディキャップを持つ人々はかつて SF作家のWilliam Gibson(ウィリアム・ギブソン)が述べたように、「未来はすでにそこに来ている。ただし公平に分配されていないだけだ」という世界に生きている。

こうした状況がSight Tech Globalカンファレンスにインスピレーションを与えた。カンファレンスに参加するのはこの分野のトップに加えて人間とコンピューターの相互作用の専門家、プロダクトデザイナー、ベンチャー起業家、ビジョナリーなどの多様なエキスパートだ。参加者は介助テクノロジーの未来と同時にアクセシビリティのあるべき姿を検討する。これらのエキスパートの多くは自分自身も視覚に障害を持つ人々だ。イベントの主催者はどんな議論であれプロダクトの開発であれ、視覚障害を持った人々のコミュニティが直接関わるのでなければ役に立つものになることはできないと固く信じている。シリコンバレーには優れたテクノロジーがあるが、こうしたコミュニティを直接に持っているわけではない。

2日間のプログラムは、すべてオンライン上で展開される。バーチャルのメインステージは世界に公開されライブあるいは録画でストリーミングされる。視聴は無料だ。一方、25ドル(約2660円)で販売されるプロパスは新製品の紹介、講演者などとのQ&A、バーチャルネットワーキングなどのスペシャルセッションへの参加が可能となる。カンファレンスへの参加申し込みは近く開始されるが、TechCrunchはこのスレッドで新しい情報をアップデートする。

現在、アクセシビリティの増進のために様々なイベントが世界中で開催されており、 そうしたイベントの主催者、スポンサー、関係者に深く敬意を表するものだ。Sight Tech Globalはこうした既存のイベントを補完するものであり、高度なテクノロジーとそれを利用するプロダクトやサービスが将来どのような現実の体験の変化をもたらしていくのかという困難な質問に答えることを目的としている。もちろん開発にあたっては障害を持つ人々のコミュニティと手を携えなければならないし、使い勝手やメンテナンス、販路と価格などのプロダクト的、社会的要素もとても大きなものとなる。

いろいろな意味でSight Tech Global カンファレンスはTechCrunchがこの4年間、マサチューセッツ工科大学やカリフォルニア大学バークレー校と提携しAIやロボティクスをテーマに開催してきたカンファレンス(未訳記事)のフォーマットに大きなヒントを得ている。こうしたカンファレンスではTechCrunchの編集者、ライターがトップエクスパートに厳しい質問をぶつけるという形をとってきた。 質問はオートメーションの将来から機械の自律化、職が奪われるという副作用のリスク、AIモデル作成にあたっての人間のバイアスなど広く分野のすべてに及んだ。TechCrunchの編集者、ライターは他のエキスパートと並んで今回のカンファレンスでもモデレーターを務める。

Sight Tech Globalのファウンダーとして私、Ned Desmond(ネッド・デズモモンド)はTechCrunchで8年間にわたってカンファレンスを組織してきた経験を生かしていく。TechCrunchと親会社のVerizon Mediaは多くの面で重要な援助を与えてくれた。私が視覚障がい者コミュニティとの関連を深めたのは妻であるJoan Desmond(ジョーン・デズモンド)が法的に視覚障害者であることに大きく負っている。

スポンサーからの協賛金およびチケットの売り上げはシリコンバレーで75年前から視覚障がい者のために活動してきたNPOであるVista Center for the Blind and Visually Impairedの収入となる。Vista CenterはSight Tech Globaイベントの主催者であると同時に同団体の執行理事長であるKarae Lisle(カレー・ライル)氏がイベントの実行委員長を務める。我々はプログラムの企画と運営にあたって経験豊富なボランティアチームを編成しており12月の2日と3日は濃密な意義ある時間となるはずだ。

我々は様々な形でのスポンサーを歓迎しており、ブランドサポートからコンテンツ提案に至るまで様々な協賛のオプションがある。関心がある場合は次のアドレスにメールされたい。

sponsor@sighttechglobal.com

カンファレンスは現在企画の途中であり、ここ数週間のうちに講演者、セッションがさらに具体化される予定だ。プログラミング委員会にはBenetech / TechMattersのJim Fruchterman(ジム・フルクターマン)氏、Verizon MediaのLarry Goldberg(ラリー・ゴールドバーグ)氏、FacebookのMatt King(マット・キング)、UC Santa CruzのRoberto Manduchi(ロバート・マンドゥキ教授)が加わっている。提案、意見などあれば、info@sighttechglobal.comまで。

質問やプロモーションへの協力のアイディアについても info@sighttechglobal.comへのメールをお願いしている。

関連記事:自身も視覚障がいを持つ開発者がMicrosoft Seeing AIによるアクセシビリティ改善について語る

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タグ:アクセシビリティ 人工知能

画像クレジット:Sight Tech Global

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(滑川海彦@Facebook

自身も視覚障がいを持つ開発者がMicrosoft Seeing AIによるアクセシビリティ改善について語る

マイクロソフトのCEOを務めるSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏は2016年のBUILDカンファレンスでエンジニアのSaqib Shaikh(シャキブ・シェイク)氏を紹介し、彼の情熱と思いやりが「世界を変えるだろう」と述べた。

この予言は正しかった。シェイク氏はその後、目が見えないあるいは視覚障がいのあるユーザー向けのスマートフォンアプリ「Seeing AI」を共同開発し市場に送り出した。このアプリは AI の応用がアクセシビリティの改善にどれほど役立つかをよく示すケースとなっている。Seeing AIはスマートフォンカメラを利用し その場の情景を認識して描写してくれる。

例えば、人物の人数、性別、表情などを音声で告げる。また手書きのものを含め文章を撮影すると読み上げてくれる。紙幣であれば額面を対象物の色も分かる。アプリの最新バージョンではハプティック・テクノロジーを利用しておりユーザーは人物などの対象の位置を振動で知ることができる。このアプリは3年前の発表以来2000万回利用されている。現在のバージョンは日本語を含む8カ国語がサポートされている。

視覚障がい者のアクセシビリティを改善するテクノロジーをテーマとするオンライン・カンファレンス「Sight Tech Global」でシェイク氏が講演することになったのはうれしいニュースだ。シェイク氏はAIテクノロジーの急速な進歩がいか視覚障がい者の生活の質を改善しつつあるかを解説する。TechCrunchなどがメインスポンサーを務めるSight Tech Globalは、視覚障がい者を支援する活動を75年以上続けてきたVista Centerが主催する。このオンライン・カンファファレンスは最近TechCrunchで開催の詳細を発表した(未訳記事)。

シェイク氏は7歳の時に視力を失い、盲学校で学んだ。ここで視覚障がい者に「話しかける」ことができるコンピューターに魅了された。その後、英国のサセックス大学でコンピュータ科学を学んだ。シェイク氏によれば「大学卒業後常に夢見ていたのはいついかなる時でも自分の身の回りに誰がいて何が起きているのかを教えてくれるようなテクノロジーだった」という。同氏はこの夢の実現に向かって歩み続けた。

2006年にマイクロソフトに入社し、2014年と2015年の一週間に及ぶ定例ハッカソンでAIを視覚障がいのあるユーザーのためのソフトウェアの開発を試みた。その後間もなくSeeing AIは同社の公式プロジェクトとなり、 シェイク氏のフルタイムの業務となった。開発には同社のCognitive Services APIが決定的な役割を果たしたという。現在同氏は視覚障がい者のためにAIを役立てるチームのリーダーとして活動している。

シェイク氏は「AI について言えば障がいを持つユーザーは最も有望なアーリーアダプターだと思う。視覚障がい者は何年も前から本を音声録音によって利用してきた。人間の読み上げに代わるものとしてOCRやテキスト読み上げのテクノロジーなどが開発された。これらは初期のAIの応用といえる。現代ではコンピューターは高度な AI を利用して視覚的認識によって、文章化して読み上げることができる。このテクノロジーには数多くのユースケースが見出されている。しかし最も有望な分野は視覚障がい者に対して周囲の状況を認識し音声で教えるものだ。これは視覚障がい者の能力を信じがたいほどアップさせる」と説明する。下のビデオはマイクロソフトが2016年にリリースしたものでシェイク氏とSeeing AIプロジェクトをフィーチャーしている。

Seeing AI はAI テクノロジーがほとんど知性を持つように振る舞うツールを実現できるという例のパイオニアだろう。 このアプリは単に文書を読み上げるだけではなく、文章を正しく読み取れるようにするためにスマートフォンをどちらに動かせば良いかユーザーに教えてくれる。また目の前に誰かがいることを教えてくれるだけでなく(事前に名づけていれば)名前や簡単な見た目も教えてくれる。

Sight Tech Globalでシェイク氏はSeeing AIの将来に加えてクラウド・コンピューティングの発達、ネットワーク遅延の低下などによるアクセシビリティの改善、AIアルゴリズムによる高度なデータセットの利用などについてビジョンを語る予定だ。

Sight Tech Globalは、12月2日〜3日に開催される。参加は無料だが、事前登録がこちら必要だ。公式Twitterは@Globalsightとなる。カンファファレンスではスポンサーを募集中で、さまざまな支援の道がある。関心を持った企業は、運営事務局のメールにぜひ問い合わせてほしい。

画像クレジット:Saqib Shaikh

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

米国障害者法は施行30周年を迎えるが、テック業界のアクセシビリティ対応はまだ始まったばかり

Americans with Disabilities Act of 1990(1990年障害のあるアメリカ人法)が制定されて以来、数十年にわたり、建物、企業、法律は、さまざまな障害を持つ人たちに合わせて、徐々に変化を遂げてきた。今週で施行30周年を迎える同法がテック業界に与えてきた影響は極めて大きいが、やるべきことはまだ山積みだ。

ADAは施行当初、主に、建物や政府資源(公共サービス)に適用されていたが、時の経過とともに(改善や改正が施され)その適用範囲はかなり広範囲に拡大された。家庭用コンピュータ、ウェブ、そしてアプリが普及するにつれ、これらもADAの対象となったが、どの程度まで適用するかについてはまだ議論が続いている。

この記事では、テック業界が障害者の生活をどのように改善してきたか、現時点で何が不足しているか、という点について、いくつかの有名企業や障害者擁護団体に意見を尋ねた。

回答の内容を見ると、テック企業が障害者の生活にどのくらい貢献してきたか、という話題がやはり最も多かったが、同時に、最近ようやく製品開発プロセスに何らかの意味ある形で障害者を加えるようになった(が、まだ多くの点で十分とは言えない)テック業界に対する提言(とご批判)も頂いた。

Claire Stanley(クレア・スタンリー)氏、米国視覚障害者協議会、擁護/支援活動スペシャリスト

「テック企業は本当に多くの扉を開けてくれた」とスタンリー氏は言う。「例えば書籍。視覚障害者用の書籍を手に入れたい場合、10年前であれば、米国議会図書館が音声に変換してくれるまで待たなければならなかった。今は、Kindleや電子書籍リーダーがあるので、発売と同時に購入できる。以前より格段に早く手に入るようになった」。

「視覚障害者が職場でできることも増えた。ただ、アクセシビリティテクノロジーの使用を前提に設計されていないソフトウェアも数多く存在する、という点は指摘しておきたい。最初からスクリーンリーダーの使用を念頭に置いて設計してくれると大変助かるが、そうでない場合、別の新しい問題が起こる」とスタンリー氏は言う。

「テック企業はアクセシビリティなど念頭にない。だから、スクリーンリーダーがまったく使えない製品を設計する。私の理解では、最初からスクリーンリーダーを念頭に置いて設計すれば、互換性を持たせるのは簡単なはずだ。WCAGというガイドラインがある。プログラマーなら、このガイドラインをざっと眺めるだけで、『なるほど。わかった』となるはずだ。それに、よく聞く話だが、視覚障害者が使える製品を作れば、それは健常者にとっても優れた製品になる」とスタンリー氏は付け加えた。

まさにこの問題を緩和しようとしたのがFable(フェイブル)だ。フェイブルは、QAプロセスでアクセシビリティ対応についてテストすることを事前に考えていなかった企業のソフトウェアテスト担当者を対象に、さまざまな障害を持つ人たちの声をサービスとして提供している。

関連記事:障がい者が開発段階から参加して使いやすい製品デザインを目指すFableプラットフォームとは?

新しく登場した各種デバイスやサービスも視覚障害者の世界を一変させている。

「音声読み上げソフトを使う人が増えているため、点字を読める人は少なくなっているが、新しい設計の点字リーダーが登場しており、価格も安くなっている。私も自分の点字リーダーをいつも持ち歩いている」とスタンリー氏は言う。

もちろん、視聴覚障害者にとって、点字は今でも欠かせないものだ。最近、ある父親が娘に点字を教えようとして、自力で安価な点字教育デバイスを作ったという例もある。20年前には決してできなかった話だ。

「4年前にはAira(アイラ)というアプリが発売された。基本的には、スマートフォンの動画画面を介して、電話の相手が質問に答えて、必要なことを教えてくれるという仕組みだ。私も日頃から使っている。最近のバージョンではAIが組み込まれ、標識を読むといった簡単なことならAIが対応してくれるようになった」とスタンリー氏は言う。

「私たちは自律走行車の分野についても精力的に取り組んできた。自律走行車が実用化されれば、視覚障害者だけでなく、他の障害を持つ人たち、高齢者や子どもにも、多くの可能性が開けるだろう。実用化にはまだ時間がかかることはわかっているが、幸いにも、企業の担当者や議員と実際に会って、自律走行車のアクセシビリティについて話し合う機会を持つことができている」と同氏は付け加えた。

Eve Andersson(イブ・アンダーソン)氏、Google(グーグル)、アクセシビリティ担当取締役

「私が最も注目すべきだと感じているのは、キャプション技術の進歩だ。私がグーグルに入社してから2年後の2009年に、グーグルではAIを使ってYouTube(ユーチューブ)上で自動キャプション機能を導入した。その8年後には、音響効果(笑い、音楽、拍手など)をキャプションする機能を導入して、動画コンテンツをより視聴しやすくした」とアンダーソン氏は言う。

同氏によると、キャプションは当初、聴覚障害者や難聴者のアクセシビリティを実現するために開発されたものだが、音声をオフにした状態や他の言語で動画を観たいという多くの健常者の間でもすぐに利用されるようになったという。

「言語を理解して表示または翻訳できるようにコンピュータをプログラミングすることにより、あらゆる人に役立つさまざまな技術を進歩させることができる。例えば、音声認識や音声アシスタントにより、現在利用されている音声テキスト変換機能(Google Docsの音声入力機能やChrome OSの書き取り機能など)が実現した」と同氏は語る。

ライブの文字起こし機能もテック企業が開発した技術の1つだ。この機能により、聴覚障害者は相手とその場で直接会話できるようになった。

「ADAが施行される前は、物理世界の中に視覚障害者や弱視者がアクセスできない部分が残されていた。しかし現在、米国では、ほぼすべての標識の下に点字が表示されている。おかげで、Google BrailleBackTalkBack点字キーボードなどの製品を開発する道が開けた。どちらも点字ユーザーが必要な情報を入手し、周囲の世界と効率的にコミュニケーションすることを可能にする。『物理世界を障害者がアクセスできるものにする』というADAの精神のおかげで、イノベーションが促進されている。例えば、Lookoutというアプリを使えば、視覚障害者は自分の周りに何があるのかを知ることができる」とアンダーソン氏は言う。

「最近グーグルが検討している領域の1つに、テクノロジーを活用して認識障害者にやさしいものを作るという分野がある。これはさまざまなニーズがある本当に広い分野だが、ほとんど未開拓のままだ」と同氏は言う。Androidの「アクションブロック」はこの分野の初期の試みで、複数の手順からなるプロセスを1つのボタンで簡単に実行できるようにするものだ。アクションブロックの開発チームは、スマート機器を使いこなすのに苦労している人たちに役立つような機能にするために、大規模な改良を予定している。

「従業員、コンサルタント、ユーザーの中で障害を持つ方々に、製品の開発プロセス、研究分野やイニシアチブに常に最初から参加してもらえるよう、業界として取り組む必要がある。障害者や、家族に障害者がいる方々にチームに加わってもらうことで、その体験を開発の場に持ち込んでもらい、結果としてより良い製品ができるようにしたい」と同氏は語る。

Sarah Herrlinger(サラ・ヘリンガー)氏、Apple(アップル)、グローバルアクセシビリティポリシー担当ディレクター

「アクセシビリティは基本的に文化の問題だ。アップルは創業当初から、アクセシビリティ機能を人権と考え、この基本理念は現在でもアップルが設計するすべてのものにおいて明白に実践されている」とヘリンガー氏は語る。

月並みな声明に聞こえるかもしれないが、アップルの歴史はこの声明が実践されてきたことを証明している。アップルが他社に先立つこと数十年前からアクセシビリティ機能の開発に取り組んできたことはよく知られている。TechCrunchのコラムニストSteve Aquino(スティーブ・アキノ)氏は数年にわたり、アップルのアクセシビリティ機能への取り組みについて取材してきた。概要をわかりやすくまとめたのがこちらの記事だ。

Image Credits: Apple

発売当初からアップルの主力製品となっているiPhoneは、アクセシビリティを実現するメインプラットフォームでもある。

「主流の消費者向け製品としてのiPhoneがもたらした歴史的影響について書かれた記事はよく目にする。しかし、iPhoneとその他のアップル製品が障害者の人生を一変させてきたということはあまり理解されていない。iPhoneは、時と共に、最もパワフルで人気のあるアシスタントデバイスとなった。iPhoneは、あらゆる人が日常的に使うデバイスにアクセシビリティをシームレスに組み込むことができることを示したという意味で、従来の枠にはまった考え方を打ち破った」とヘリンガー氏は言う。

最も多くの人が助けられている機能はおそらくVoiceOverだろう。VoiceOverは画面の内容をインテリジェントに読み上げて、視覚障害者のユーザーがOSを簡単に操作できるようにするものだ。最近、VoiceOverのユーザーが自身の体験を投稿して、数百万ビューを獲得している。

一方、テック業界に不足している部分について、ヘリンガー氏は次のように説明してくれた。「レプリゼンテーション(自分が社会の構成員として認識されている状態や感覚)とインクルージョンは必要不可欠だ。アップルは、障害者コミュニティでよく言われる『Nothing about us without us(私たち抜きに私たちのことを決めるな)』というスローガンが真実だと確信している。アップルはアクセシビリティ専任チームを1985年に設置したが、インクルージョンに関するすべてのことがそうであるように、アップルではアクセシビリティもすべての社員の仕事だ」。

Melissa Malzkuhn(メリッサ・マルツクーン)氏、Gallaudet University(ギャローデット大)

Motion Light Lab(モーションライトラボ)創業者兼クリエイティブディレクター
「アクセシビリティを保護する法律がなければ、誰もそれを実装しようとしないだろう」とマルツクーン氏は率直に語る。「ADAはアクセシビリティの推進に大いに役立ったが、同時に、人々の考え方や社会的責任のとらえ方も大きく変わった。ソーシャルメディアでは、自分の投稿のアクセシビリティを向上させることは社会的責任であると認識する人が増えている。すべての個人、さらには、大小問わずすべての企業が、社会的責任を果たすようになることを願う」と同氏は言う。

ギャローデット大学は、「聴覚障害者と難聴者にとってのバリアフリー」を目指して、聴覚障害者・難聴者コミュニティ向けに膨大なリソースと教育を提供している。同大学の職員が長年使用してきたテクノロジーの多くは大きく進歩している。多くの主流ユーザーたちがビデオ会議の類いをこぞって利用するようになり、聴覚障害者向けの機能に改善の余地があると感じたためだ。

「ビデオ会議ではかつてないほど多くのオプションが使えるようになっており、継続的に改良されている。また、ビデオリレーサービスの使い勝手も着実に向上している」とマルツクーン氏は説明する。同氏によると、音声テキスト変換も大きく進歩しており、実用化も本格的に行われている。例えば、ギャローデット大学のTechnology Access Program(テクノロジーアクセスプログラム)はGoogleのLive Transcribeと共同研究を進めてきた。

「言語マッピング処理や、ジェスチャーや手話の認識に関する初期の先駆的な研究にはワクワクする」とマルツクーン氏は付け加えた。ただ、ジェスチャーや手話の認識については実用化はまだ先の話だ。一方で、手話グローブに関するさまざまな試みについて、同氏は、「手話グローブにはうんざりしている。聴覚障害者にこれを着けさせればコミュニケーションの問題はなくなる、という一方的な考え方を助長するだけだ。コミュニケーションにかかる負荷を障害者側に一方的に押しつけても問題は解決しない」と、手厳しく批判する。

「AppleのiPadは聴覚障害を持つ子どもたちの読書体験に対する考え方に革命をもたらしたと言ってよいと思う。当学のモーションライトラボでは、手話による動画と文章を同じインターフェイスで操作できるバイリンガルのお話し本アプリを開発した。ただし、テクノロジーが、誰にもある思いやりの心に取って代わることは決してない。必要なのは、テクノロジーの有無に関係なくコミュニケーションしたいという姿勢があるかどうかだ。少し手話を覚えるだけでもコミュニケーションに大いに役立つ」と、マルツクーン氏は語る。

また、マルツクーン氏はインクルージョンの価値を強調し、聴覚障害者の雇用や対応にまったく手つかずの状態の企業を手厳しく批判した。

「聴覚障害者を雇用している企業は正しく理解している。インクルーシブな設計とアクセシビリティは重要かつ製品設計に『不可欠』なものと考えて注力している企業も、正しく理解している。そのような企業の製品は例外なく、アクセシビリティの低い製品より優れている」と同氏は語り、アクセシビリティの低い製品を作る企業は『深刻な不作為』という罪を犯していると指摘する。「多くの企業が聴覚障害者の助けになる製品を作ろうとしているが、開発の初期段階から聴覚障害者が参加していなければ、障害者にとって良いものはできない。インクルーシブな設計にはまずインクルーシブなチームが必要だ」と同氏は言う。

投資家もアクセシビリティと聴覚障害に取り組むスタートアップに目を向ける必要がある。成長中の聴覚障害コミュニティがそうであるように、聴覚障害に特化したスタートアップも資金と助言を必要としている。

また、マルツクーン氏は、企業が聴覚障害者や難聴者を、最終製品の消費者としてだけでなく、一人前のユーザーとして考えるようになってほしいと指摘する。

「これは私の仕事の原動力になっている。私たちは誰もがテクノロジーを設計できるように常にツールを提供する必要がある。そして、聴覚障害者にトレーニングと教育を施し、それらのツールを使えるようにする責任がある。そうすることにより、設計や構築が行えて、システムのアーキテクトとなり、システムをプログラミングすると同時にテクノロジーのエンドユーザーにもなれる、次世代の若い聴覚障害者たちを育成できる」とマルツクーン氏は語った。

Jenny Lay-Flurrie(ジェニー・レイフレリー)氏、Microsoft(マイクロソフト)、アクセシビリティ担当最高責任者

「個人的には、ADAによって、キャプショニングと通訳のテクノロジーが一段と高いレベルで認識され提供されるようになったと感じている。どちらも私にとって、職場でも家庭でも、そして医療など生きていく上で不可欠なサービスを受ける上でも欠かすことのできないテクノロジーだ。テクノロジーによって、ADAの精神の下、これまで不可能だったことを可能にする力を障害者に与えるソリューションを開発する道が開かれ、万人を益する素晴らしいイノベーションが生まれる。一大変革をもたらすには、まずアクセシビリティの向上に優先的に取り組む必要がある」とレイフレリー氏は語る。

グーグルのイブ・アンダーソン氏と同様、レイフレリー氏も、最近の大きな進歩としてキャプショニングに注目している。

「キャプショニングは、他のアクセシビリティ技術と同様、ますます日常生活に溶け込んでいる。キャプショニングは過去30年で大きく進化を遂げ、この5年間は、AIとMLのおかげで進化がさらに加速した。AIキャプショニングはTeamsにも統合されており、コロナ禍の最中、Teams Captioningの使用率が数か月前の30倍になるなど、その効果を目の当たりにしている」と同氏は言う。

「Seeing AI、Learning Tool、Xbox Adaptive Controllerなど、アクセシビリティ技術も多様化が進んでいる。マイクロソフトがインクルーシブな設計を重視するようになったためだ。上記の製品も障害者の協力を得て、障害者のために開発され、視覚障害、識字障害、運動障害のためのブレイクスルー技術も生まれている」と同氏は語る。

Adaptive Controllerは、ここ数年で最も驚かされたハードウェアの1つだ。これは、ゲームをプレーし、コンピュータとコンソールを操作するための極めて互換性の高いデバイスで、多大な努力と多額の投資が生み出した成果であることは間違いない。

アクセシビリティは「まだ閉じたままだが、何が何でも早急に開けなければならない扉」の1つだとレイフレリー氏は言う。「Seeing AIはAIの大きな可能性を示していると思うが、今後、AIとML、およびARmによって、身体障害の分野で広く何ができるようになるのか、今後が楽しみだ。マイクロソフトは、障害者が直面している最大の課題のいくつかをAIによって解決できると確信している。AI for Accessibilityプログラムが、インクルージョン改革を推進するためのマイクロソフトの取り組みで重要な役割を果たしている理由もそこにある」と同氏は続ける。

レイフレリー氏は、インクルーシブ性を会社のプロセスに組み込む方法についても話してくれた。マイクロソフトがこの問題に関してリーダー的役割を果たしてきたことを考えれば、当然のことだ。

「アクセシビリティを避けて通ることはできない。それは、ビジネスとエコシステムに組み込まれていなければならず、管理と調整を必要とする。アクセシビリティを実現するにはまず人だ。我々は、インクルーシブな文化と人材のパイプラインをどのように創り上げるかに注力してきた。まだ成長と学習を続けている段階だが、Autism Hiring Playbook(自閉症を持つ人材の採用ガイド)、Accessibility at a Glance(アクセシビリティ早わかり)トレーニングリソース、Supported Employment Program Toolkit(援助付き雇用プログラムツールキット)、Inclusive Design Toolkit(インクルーシブ設計ツールキット)といったリソースを介して学習した内容を、他の組織と共有するという対策も講じてきた」と同氏は言う。

「当然だが、どこから始めて、どのようなペースで進めるのかは組織によって異なる。まずは、アクセシビリティを設計に組み込む必要性を認識することが第一歩だ。アクセシビリティというレンズを通して製品開発のライフサイクルの成熟度を評価し、障害者支援機能を後付けで追加するのではなくプロセスに最初から組み込むようにすることが特に重要だ。ここでやるべきことはまだある。それが完了するまでは、『アクセシビリティが確保されているかどうか判断に迷う場合は、確保されていないということだ』というのが私のモットーだ」とレイフレリー氏は語った。

Mike Shebanek(マイク・シェバネク)氏、Facebook(フェイスブック)、アクセシビリティ担当部長

「スマートフォンの可搬性、使いやすさ、値ごろ感、組み込みのアクセシビリティのおかげで、障害者の接続性、モビリティ、自立性は今、30年前は誰も可能と思わなかったレベルまで向上している。デバイスの音声合成、音声認識、音声制御などの音声テクノロジーが登場したことで、障害者の生活の質は格段に改善された」とシェバネク氏は言う。

「フェイスブックはReact Nativeを開発し、オープンソースにすることで、デベロッパーがアクセシビリティ対応のモバイルアプリを作成できるようにした。また、ウェブアクセシビリティのグローバルなデジタル規格を策定して、すべての人がアクセシビリティの高いインターネット体験を得られるようにした」と同氏は続ける。

他の回答者と同じように、シェバネク氏もテック企業は開発の初期段階からアクセシビリティのニーズと手法を検討する必要があること、開発プロセスとテストプロセスに参加させる障害者の数を増やすことを提案する。

機械学習はいくつかの大きな問題を自動的に解決するのに役立っている。「フェイスブックではMLを使って自動動画キャプショニングを実行し、代替テキストを自動作成して、視覚障害者向けに音声による写真の説明を提供している。しかし、これらのイノベーションが実現されたのはごく最近のことだ。テック業界は今やっと、障害者のニーズに真剣に向き合い始め、これから30年で実現できそうなサービスの、ほんのさわりを形にし始めたところだ」とシェバネク氏は語る。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:アクセシビリティ

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(翻訳:Dragonfly)