ウミトロンが水産養殖向けに高解像度海洋データ提供サービスを開始、比較分析やスマホチェックも可能に

Umitoron Puls

IoT機器などを駆使して養殖産業のディスラプトを推進しているシンガポール拠点のウミトロン(UMITRON)は7月28日、ウェブ上で海洋環境データを可視化する「UMITRON PULSE」(ウミトロンパルス)の提供を開始した。衛星リモートセンシング技術を活用し、世界中のさまざまなエリアの海洋データを高解像度で日次確認できるようになる。

魚介類や海藻類の養殖事業者とって海の状態を知ることは非常に重要で、給餌や採苗、出荷の時期などに大きな影響を与える。同社によると高解像度の海洋データを取得できることで、生育に適した状態の把握や有害なプランクトン繁殖などのリスクなどを回避できるとのこと。

  1. California wave height

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具体的にUMITRON PULSEでは、海水温、塩分、溶存酸素、クロロフィル濃度、波高の海洋データを提供。高解像度データなので、画面内で拡大・縮小することで、局所的なデータと広範囲データを容易に確認できるのが特徴だ。当日の海洋データはもちろん、48時間以内の海洋環境変化を予測する機能も提供する。近日中には、海洋環境データ種類の増加、各種データの毎時更新、過去の海洋データとの比較分析機能も実装される。モバイル版アプリも目下開発中とのこと。

現在、前述の5種類の当日付けの海洋データを閲覧できる無料プランを用意しており、誰でも登録・利用できる。そのほかの機能使いたい場合は、月額プランに加入する必要がある。

海上で魚の食欲を即時判定して給餌を完全自動化、ウミトロンが魚群食欲解析システムを開発

UMITRON(ウミトロン)は8月14日、海上自律型の魚群食欲解析システム「UMITRON FAI(Fish Appetite Index)」を開発したことを発表。これは機械学習によって魚の餌食いをリアルタイムで自動評価するアルゴリズムで、愛媛県愛南町に導入済みの同社開発のスマート給餌機「UMITRON CELL」と連携することで、養殖事業の効率化を図ることが可能になる。

具体的には、魚の遊泳データを自動蓄積→リアルタイムで摂餌状況をスコア化→スコアに応じた給餌制御を実現する。同社によると、水産養殖では生産コストの大半を給餌が占め、これまでは洋上に浮かべた生け簀に生産者が毎日にように船で近づき、魚の様子を見ながら給餌する必要があった。魚の生育管理には知識や経験値が必要なため、少人数で養殖事業を展開している場合は、生産者の負担が大きかったという。UMITRON FAIとUMITRON CELLを利用することで、リアルタイムかつ自動で適切な無人給餌が可能になるとのこと。

UMITRON CELLでは、魚が給餌している様子を撮影し、その動画から魚の状態を自動的にスコア化する。これを現場担当者が後からスコアの良し悪しを基に給餌量を調整。そのほか、生育期間中の魚の摂餌状況の時系列データや、複数の生け簀同士での餌食い状況も比較できる。

UMITRON FAIのデータを基に考案した給餌改善計画は、スマートフォンを使ってUMITRON CELLの給餌スケジュールに反映できる。同社による、UMITRON CELLのみでは給餌調整のために洋上作業が時間が必要だったが、UMITRON FAIによりこの時間が不要になるほか、短期間で給餌変更のトライアンドエラーも可能になるとしている。

これらのシステムを活用して同社は、水産現場における社内での知見の資産化、洋上作業を減らすことによる労働環境の改善、無駄餌の早期発見を通した海の保全、魚の早期成長や給餌コストの最適化による経営改善をサポートしていくとのこと。同社ではすでに、UMITRON CELLを利用する既存ユーザー向けにベータ版の配布を開始。また、給餌船などの養殖向け大型設備にUMITRON FAIをはじめとした同社のソフトウェアを連携するパートナーの募集も開始している。

スマホで魚の餌やりを遠隔管理、水産養殖スタートアップのウミトロンに新プロダクト

水産養殖業が抱える課題の解決をめざすスタートアップのウミトロンは1月25日、新プロダクトの「UMITRON CELL」を発表。導入第一弾として、愛媛県愛南町の養殖現場への設置を開始したと発表した。

UMITRON CELLは、スマートフォンを活用して生簀(いけす)への餌やりを遠隔管理することができるスマート自動給餌機だ。生簀への餌やりは洋上で行うため、天候不良時には危険な環境下での作業となる。そのため、餌やりを遠隔管理できるCELLを利用すれば、作業員の労働環境の改善が見込める。ムダな餌やりを削減することは環境負荷の低減にもつながるだろう。また、作業員がもつ餌やりの量などのノウハウをデータ化することで、業務プロセスを体系化できたり、それを次の世代に伝承しやすいことなどもメリットの1つだ。

同社はこれまでにも、IoTにより餌やりを最適化するプロダクト「UmiGarden」を提供していたが、UmiGardenは給餌機と魚をモニタリングするカメラや魚群探知機が相互に通信するタイプであるのに対し、CELLはそれらの機能を一括して提供する一体型のプロダクトという点で異なる。ウミトロン代表取締役の山田雅彦氏によれば、これにより「システムの安定性、基本スペック向上による解析の自由度、電源供給量の増加」を実現したという。

ウミトロンはCELLの第二ロットの製造をすでに進めており、一般販売の計画を視野に入れながら実証実験のパートナーを広く募集中だ。

ウミトロンがチチカカ湖でサーモントラウト向けIoTプロジェクト開始

Peru-Lake-TIticaca水産養殖に取り組むスタートアップ企業であるウミトロン(UMITRON)は12月4日、ペルーの大手信用組合であるAbacoとその子会社のPiscisとともに、米州開発銀行(IDB)グループのIDB Labから総額2.3億円のプロジェクト資金の獲得を発表した。

この資金を利用して、ペルーのチチカカ湖にお けるサーモントラウト養殖の効率化に取り組む。このプロジェクトは、ウミトロンのテクノロジーが地域経済の活性化と養殖環境の持続可能性の改善に繋がるとの期待からIDB Labによる支援が決定したとのこと。

Trout-salmon琵琶湖の12倍のスケールを誇るチチカカ湖は、年間を通した安定的な気候と水資源の豊富さから、ペルーにおけるサーモントラウト生産地として発展している。世界的なサーモントラウトに需要により、チチカカ湖での生産量は2016年に10万トン、2030年には22万トンを上回るペースで増加すると予測されているそうだ。

sdrしかし現在、チチカカ湖で養殖は人の手で日々餌やりをしているほか、餌代がコスト全体の70%を占めているという。また、水産養殖を持続可能な産業として継続させて行くには過給餌による環境負荷を低減させることが重要。ここでウミトロンのシステムを活用することで、ペルーの生産者はスマートフォンにインストールしたアプリを通して魚の観察や餌やりが可能になるとのこと。

同社は、IoT、衛星リモートセンシング、AIをはじめとした技術を利用して「UmiGarden」と呼ばれるシステムを提供しており、これを導入することでスマホでの魚の観察や餌やりが可能になる。これらの作業はすべてログに記録され、最適な給餌を学習していく仕組みだ。

世界的なサケ、マスの需要逼迫もあり、漁業を安定した産業として持続させるには養殖技術の進化や作業の効率化は急務。ウミトロンのシステムが今後ペルーでどのように貢献するのか、今後の展開にも注目したい。

水産養殖の課題解決をめざすウミトロンが3億円の追加調達、養殖専用の保険を開発中

IoTや衛星データの活用により水産養殖の課題解決を目指すUMITRONは9月11日、スパークス・グループが運営する未来創生ファンドより約3億円を調達したと発表した。これは2018年6月に発表した約9.2億円の資金調達に続くもので、本ラウンドでの調達総額は約12.2億円となる。

UMITRONは日本の起業家3人がシンガポールで立ち上げた水産分野のスタートアップ。IoT、衛生リモートセンシング、AIなどのテクノロジーを活用することで水産養殖に関連する課題の解決を目指している。そのソリューションの1つが、魚のエサやりを自動化する「UmiGarden(ウミガーデン)」だ。

生簀にUmiGardenを設置すると、センサーによって飼育状況が自動でモニタリング・記録される。それによって得た魚群データが解析され、エサやりの最適なタイミングや量が把握できるという仕組みだ。スマホを通じて遠隔でのエサやりも可能となる。

UmiGardenによって生産者が抱える負担の軽減をめざすUmitron。でも、水産養殖の“課題”はそれだけじゃない。自然の海を利用する養殖ならではの自然災害リスクもその1つだ。同社によれば、海面養殖はグローバルで現在の100倍以上の生産ポテンシャルがあるとする研究結果はある。だがその一方、2016年にチリで発生した赤潮の被害総額が800億円以上にのぼるなど、養殖経営の安定性の向上も乗り越えなければならない課題の1つだ。

そのため、ウミトロンではIoTなどのテクノロジーによって生簀内の状況を判断し、その時価総額を推算する技術を開発。例えばクルマのように、魚という資産の価値を定量化することで水産養殖専用の保険を提供するための研究開発に取り組んでいる。

同社は2018年8月より水産養殖保険のためのデータサービスの実証実験を開始。今後同社は、この保険サービスの開発を共同で進めるパートナーを国内外で募集するという。

「地球に持続可能な水産養殖を実装する」9.2億円調達のウミトロンが開発する養殖テクノロジー

海の持続可能な開発を、IoTなどのテクノロジーを使った水産養殖により実現を目指す——6月21日にシードラウンドで総額約9.2億円の資金調達を発表したウミトロン。水産分野のアーリーステージ投資では、世界でも過去最大級となる規模の調達となった。

「我々はアジアを起点に、はじめからグローバルを狙っている」こう話すのは、シンガポールに本社、日本に開発拠点を持つウミトロンの共同創業者でマネジングディレクターの山田雅彦氏だ。TechCrunch Japanでは山田氏に、ウミトロン創業の背景や展開するサービス、今回の調達について話を聞いた。

リアルインダストリー、水産業にデータ活用を

ウミトロンは2016年4月の創業。創業メンバーは代表取締役の藤原謙氏、マネジングディレクターの山田雅彦氏、画像処理と機械学習を専門とするエンジニアの岡本拓磨氏の3人だ。

藤原氏は、東京工業大学で宇宙工学を専攻し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)で人工衛星の研究開発に従事した。その後カリフォルニア大学バークレー校へ留学し、三井物産にキャリア入社。衛星データを活用した農業ベンチャーへの投資などを担当してきた。

その中で藤原氏は、今度は新たな食料源としての水産養殖に興味を持つ。中でもアジアでは昔から魚を食べる習慣があり、全世界の魚の消費の3分の2を占める。アジアを起点にグローバルも狙える——そう考え、藤原氏はウミトロンの創業に至る。

平成28年度水産白書より

山田氏もまた、大学では宇宙工学を専攻し、衛星開発を研究していた。藤原氏と同様にデータ利用に関心があり、九州大学卒業後は三井物産へ入社。オーストラリアで気象情報を活用して電力の需給情報を予想し、電力先物取引や電力会社の収益モデル構築などに従事した。

その後山田氏は、AIベンチャーのメタップスへ転職。メタップスではデータのマネタイズ、具体的にはスマートフォンユーザーの決済や行動履歴から消費行動を予測する、といったことを行っていた。メタップスの東証マザーズ上場を機に、新しいことを始めたい、との思いから、ウミトロン創業に参画。再びリアルインダストリーを舞台にデータを活用する道を進むこととなった。

岡本氏は東京理科大学で画像解析を専攻。グリーでソーシャルゲームのフルスタックエンジニアとしてゲームのプラットフォームを開発していた。その後メタップスへ移り、アプリや動画の解析システムのネイティブアプリ・SDK・サーバーサイド開発に従事。リアルインダストリーでのデータ活用に興味を持ち、ゲームアプリ開発の世界からウミトロンへ参画した。

山田氏は「水産養殖の市場は人口増加率をはるかに上回る速度で成長を続けている、成長分野だ」と話す。「昔から人手をかけられてきた農耕・牧畜と比較して、魚だけは漁獲(漁猟による漁業)中心のまま。テクノロジーの発展にともない、漁業にも技術を適用できるのではないかということで、ウミトロンを立ち上げた」(山田氏)

成長産業の水産業を持続可能にする養殖テクノロジー

日本では少子化が進んでいるが、世界的には人口増は続いていて、国連の発表によれば2050年には97億人にもなることが予想されている。そうした中で、アジアを中心に動物性タンパク質の需要は拡大を続けている。

一方、食料を生産する耕地の面積や単位面積あたりの収穫量には限界がある。漁獲中心だった水産業でも、マグロをはじめとした水産資源の減少が危惧され、近畿大学のマグロ完全養殖の研究に注目が集まるなど、水産養殖への期待は高まっている。

実際、漁獲による水産物の生産量は1980年代後半から頭打ちの状況だ。それに比べ、養殖による生産量は拡大を続けている。

平成29年度水産白書より

「ウミトロンのミッションは地球に持続可能な水産養殖をもたらすこと」と山田氏は語る。「今までは生産者の経験やノウハウに頼っていた養殖を、コンピュータで置き換えられるのではないか」ということで、同社のファーストプロダクトとして、2017年6月に開発されたのが「UmiGarden(ウミガーデン)」だ。

上の写真はウミガーデンが養殖いけすの中央に設置(山田氏は“デプロイ”と表現していた)されている様子だ。イメージセンサーを海中に設置して魚群をストリーミングし、スマートフォンアプリから魚に餌やりができる。

水産養殖では餌やりが大きな課題となる。養殖業者にとって餌やりは毎日行うもの。しかし気象などの海洋条件によってはいけすに近づけないこともある。これが陸地で行う農耕・牧畜とは大きく異なる点だ。

また、餌代は生産コストの5割以上を占める。山田氏によると、5割というのは比較的餌代がかからないサーモンでの数字で、マダイやブリ、マグロではもっと高くなるとのこと。マダイのいけす1つあたりで年間1000万円、1事業者あたり30〜100のいけすを持つので、多いところでは年間10億円が餌代として費やされているという。

ウミガーデンのコンセプトは「家から魚を育てられる」こと。養殖業における作業は餌やり以外にもあるが、まず最初のステップとして餌の課題を解決するところからウミトロンは着手した。

「餌やりの回数は従来1日2〜3回で、人間の生活サイクルに合わせた形だった。でも野生の魚は食べたいときにはいつでも食べられる状態。そこで1時間おき、30分おきなど、高頻度で少量ずつ餌を与える試みも行っている」(山田氏)

ウミトロンでは「餌やりソリューション」としてウミガーデンを提供しつつ、バックエンドでは機械学習による遊泳解析も実施。魚がお腹がすいているかどうかを知るための分析を進めている。「解析精度が向上すれば、お腹が減っているときだけ餌をやることも可能になってくる。現在はタイマーを生産者が設定して、半自動で餌やりを行っているが、将来は技術的には自動化も可能となるだろう」と山田氏は述べている。

餌やりについては、生産者以外にも影響を及ぼす課題がほかにもある。地球規模で問題視される「過給餌」、餌のやり過ぎによる生態系の破壊だ。

2016年、南米のチリで起きた記録的な赤潮。赤潮はプランクトンが大量増殖することで起きるが、原因の一つとして、サケ養殖のため必要以上に餌を与えたことが挙げられている。チリの例では生態系全体に被害を及ぼし、養殖場だけでも2000万匹を超えるサケが窒息死、その被害額は約1000億円にも上っている。

山田氏は「魚が欲しいときにだけ餌やりをすることで、養殖を最適化することが可能になる」という。「過給餌をなくして養殖を最適化できれば、漁業は農業に比べてよりサステナブルなタンパク質の供給源となる産業だ。ただし漁獲のままでは、例えばマグロの取り過ぎでサバ・イワシが増え、餌となる小魚が減少するなどの問題は起こる。海でも農牧業と同様に、自然界から切り離して漁獲から養殖にシフトすることが持続可能性につながる」(山田氏)

山田氏は「生産者の餌やりの動向も分析・学習することで、魚の生存率を高めたり、育成を早めたりする餌のやり方も将来可能になるだろう」と話し、「魚のデータ、水産者のデータ、海洋データを利用して、養殖コンピュータを作ることをウミトロンでは目指している」と語る。IoT、衛星リモートセンシング、AIをはじめとしたテクノロジーを使い、持続可能な水産養殖のコンピュータモデルの開発を進めるという。

デザインシンキングで消費者・生産者のユーザー体験を変えたい

6月8日付けで実施されたウミトロンの資金調達では、産業革新機構D4V、藤代真一氏、松岡剛志氏ら個人投資家が出資に参加した。

出資した産業革新機構について山田氏は「成長産業である水産分野でプロフィットを目指すことに加えて、海のサステナブルな利用という面での公益性も評価してもらっている」と述べている。

また、D4Vについては「デザインファームのIDEOの共同創業者トム・ケリー氏も参画するVCで、デザインシンキングでプロダクトの価値向上を図りたい我々の意思と一致するところが大きい。水産はIT分野では珍しい産業なので、ユーザー体験を変えたい」と山田氏は話している。

「ユーザーとして想定しているのは2方面」と山田氏。ひとつは最終消費者のユーザー体験だ。

「天然水産物より養殖のほうが良い点はいくつもあるが、それが理解されていない。養殖では餌がコントロールできることで、水銀のない、妊婦さんでも食べられる魚や寄生虫のいない魚ができる。魚だけが『野生のほうがいい』というのは建設的ではない。養殖のプラスの要素をより知ってもらえるようにしたい」(山田氏)

もうひとつは生産者のユーザー体験。「ゲーム業界などと比較すると、水産業と新しいテクノロジーとの間にはギャップがある。テクノロジーを取り入れることで経済性も生産効率も上がる。これを分かってもらうため、ユーザー体験を変えていきたい」と山田氏は語る。

調達資金について山田氏は「技術をコアに成長していくための採用強化と、既存事業のデータ解析や産業のデジタル化を強化し、ハードウェアの開発、量産化も進める」と話している。また研究開発も強化していくということだ。

テクノロジーで水産養殖の課題解決へ、ウミトロンが9.2億円を調達——IoTでエサやりを最適化

テクノロジーの活用によって水産養殖の課題解決を目指すUMITRON(ウミトロン)は6月21日、産業革新機構、D4V、藤代真一氏、松岡剛志氏ら個人投資家を引受先とする第三者割当増資により約9.2億円を調達したことを明らかにした(実施したのは6月8日)。

ウミトロンの設立は2016年。JAXAにて人工衛星の研究開発に従事した後、三井物産で農業ベンチャーへの新規事業投資や事業開発支援をしていた藤原謙氏。大学大学在学中に超小型衛星開発に携わり、三井物産やメタップスで働いていた山田雅彦氏。グリーやメタップスでエンジニアとして活躍していた岡本拓麿氏の3人が共同で立ち上げた水産分野のスタートアップだ。

現在はシンガポールに本社、日本に開発本部を持ち、IoTや衛生リモートセンシング、AIなどの技術を使って持続可能な水産養殖の仕組み作りに取り組んでいる。

ウミトロンが現在展開しているのは、データをもとに魚のエサやり(給餌)を最適化するIoTサービス「UmiGarden(ウミガーデン)」だ。

ユーザーは生簀にウミガーデンを設置後アプリにユーザー情報を登録しておく。するとセンサーによって飼育状況が自動でモニタリング・記録され、得られた魚群データを解析すればエサやりの最適なタイミングや量が把握できるようになる。

ウミガーデンではスマホを通じて遠隔からエサやりをコントロールできるので、リアルタイムで量を調整することも簡単。エサ代はもちろん、生産者の負担を削減する効果もある。2018年6月には愛媛県愛南町と技術検証のための研究契約を締結。ウミガーデン20台を養殖生産者に提供し、エサ代の削減と働き方改革に向けた実証実験に取り組む計画だ。

ウミトロンによると現在の水産養殖において給餌が事業コスト全体の50%以上を占め、生産者の利益を圧迫する要因になっているという。加えて過剰な給餌は海の富栄養化や赤潮の原因にもなるなど、海洋資源にも影響を及ぼすそうだ。

同社では今回調達した資金をもとに既存サービスの事業基盤と研究開発体制を強化していく方針。世界中の養殖ノウハウを集積したコンピュータモデルを開発・提供することで、水産資源の持続可能な生産環境の構築を目指す。