開発者を束ねるマネージャーの仕事の内実

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私はソフトウェアエンジニア、執筆家、ジャーナリストであり、マネージャーも務めている。今ままで一番複雑な仕事は、開発者のマネージャーを務めることだった。(最も困難なのではなく、最も複雑な仕事だ。)私はその専門家ではないし、素晴らしいマネージャーを装うつもりもない。しかし、より良いマネージャーになろうとする中で数多くの失敗を繰り返してきたことは事実だ。それらの失敗から学んだことを共有したいと思う。

責任者だからといって、支配するのが仕事ではない

マネジメントにおける最大の矛盾は、役職の階段を上るほど、実際の支配力は失われていくことだ。謙虚なコーダーである分には、コンピューターに対して、どうこうするよう明確な指示を出すことができる。しかしマネージャーになると、他の人が自分の要望を理解し、彼らがそれを時間通り、正確に仕事をこなすことを祈って信じるしかないのだ。

開発者からマネージャーになった人、特に私のような「フルスタック」(あるいは「プログラム愛好者」)の開発者は、ここで問題に直面することが多い。100%コーディングの仕事と100%マネジメントの仕事を行ったり来たりしている人、あるいはどちらも少しずつ行う人は特に顕著に体験するだろう。自分で全てが正確にできているか確認したいという衝動から離れるのが難しいという問題にだ。

更に難しいのは、誰かの仕事を確認する中で「私ならこういう風にはしない」ということと「これは間違っていて、リファクタリングしたり、書き直したり、アサインし直さければならない」ことを区別することだ。経験の浅い開発者には翼を広げるスペースを与えなければならないし、経験豊富な開発者にはその翼で自由に飛べるスペースが必要だ。マネージャーは意図的に一歩下がり、支配を弱めることで、大きな影響力を持つことができると理解しなければならない。

開発マネージャーで、エンジニアのバックグラウンドを持たない人は、更に支配力を持たない。開発における、プロセスや落とし穴への理解も少ない。そのような人に開発マネージャーが務まるのか私は疑問に思っているが、共に働いたあるいは、雇われていた先にそのようなタイプの優秀な人もいた。彼らがもたらす、あるいはもたらすと期待されているのは、クライアント、役員そしてエンドユーザー目線での考えを持ち込み、開発するプロダクトの質を高めることだろう。他人を支配できるという幻想からマネージャーを引き離す効果もあるのかもしれない。開発者からマネージャーに転身した人は、自身を軍隊の司令官であるように考えるが、実際は嵐の中を進む船をなんとか導こうとする航海士なのだ。船員の仕事が実際には重要なのだ。

アジャイルは良い。しかしそもそもアジャイルとは?

皆はプロセスの話をしたがる。私に言わせれば、話しすぎているほどだ。「アジャイル開発」と呼ばれるものの多くは、「スタンドアップ(立って参加する短い会議)」、「スクラム」、「スプリント」といった形式が細部まで定められた特定のプロセスに組み込まれている。これは、アジャイル開発のマニフェストの基本理念である「プロセスやツール以上に個人と互いの交流に重きを置く」と「計画を遂行すること以上に変化に対応することに重きを置く」という項目に対立し、とても皮肉な状況だ。結果的に企業が作成し、熱心に従っているものを見てみると、それはアジャイル開発のプロセス、ツールと計画なのだ。これはとても残念なことだ。スクラムマスターの認定を取得するのは、正しい道ではない。

人が作った特定のプロセスはそれほど重要ではないということだ。私が共に働いた最も優秀なチームは毎日スタンドアップ会議をしていたが、機能不全に陥っていた、今まで出会った中で最悪のチームもそれを行っていた。多くの人は、リーン・スタートアップの実用最小限のプロダクトを作るというアイディアに心を躍らせるが、同時に今は「デザインの時代」であると話し、スタートアップが成功するためには、世に送り出すプロダクトのデザインを最初から美しく、完璧に仕上げなければならないと言う。対面でのミーティングや「カジュアルな交流」は劇的な効果をもたらすこともあるだろうが、何十のタイムゾーンに散らばる100%リモートのチームでも同じことができるだろう。何が正しいのか?いつも答えは決まっている。その状況によるのだ。

早まらないでほしい。整えられたプロセスが全くない方が良いと言っているのではない。重要なのは、プロジェクトを行う手段として選んだシステムやプロセスは流動的で柔軟であるべきで、チームの状況や置かれている文脈によって選ぶべきものが変わってくるということだ。

幸いなことに私は本当に重要なことに気を配る、アジャイル開発の会社に勤めている。アジャイル開発にとって最も重要なことは、その名称が表している。アジャイルでいることだ。つまり、素早く動くということだ。(また、実践的なテストコードを書くことも重要だ。これは名称には含まれていないが、相当重要だと考えている。)コードを頻繁に定期的に世に送り出すことに意味がある。そうしなければ、私の経験上、ソフトウェア開発における停滞は、Lindy効果の対象となる。つまり、停滞している時間が長いほど、停滞から抜け出すのにより多くの時間がかかるということだ。サメのように、動き続けていなければ直に死ぬのだ。

つまらない仕事がマネージャーの職務

マネージャーの仕事とは基本的に、チームのプロダクティビティを高めることだ。そうするのに良い方法は?開発者の邪魔になっている仕事を代わりに行うことだ。つまり、開発者が最も嫌う重要な仕事を見つけ出し、代わりにそれを行うということだ。

ドキュメント作成を好む開発者は少ないだろう。それがマネージャーの仕事になる。テストコードを書くのもとても重要なことだが、開発者の多くは好まないだろう。それもマネージャーの仕事だ。全てのテストコードを書く必要はないが、一例として基準を設定し、物事を動き出させるのに必要な分を書くと良いだろう。コードが書けない場合でも、テストが作成できるくらいは身につけた方が良いだろう。自分でコードが書ける場合は、テストハーネスを全て作り、そこに何かを加える作業が限りなく簡単になるようにすると良いだろう。品質管理は他の誰かの仕事、あるいは職務内容に含まれていないと考えるのは、とても悪いマネージャーだ。

対人間で発生する摩擦にも向き合わなければならない。もし開発者がマネージャーの元を訪れ「重大な問題があり、苦渋の選択ですが、リファクタリングして正さなくてはなりません。期限には間に合わないと思います」と言ってきたのなら、それは称賛すべきことだろう。短期的に見ると痛みを伴うことだとしても、長期的に見ればそれは報われる。そのような技術的な負債を受け入れるのは、長期的にそれがそこには存在しないことが保証されている場合に限るべきだ。

まとめの更に要点だけを言うと:人が問題を起こす

きっと既に知っていることだろうが、残念ながら人は完璧ではない。人は疲れるものだし、間違えるし、マネージャーを無視することもあれば、嫌ったり、いなくなったり、仕事を辞めたり、マネージャーに対して失望するものだ。それは真っ当な理由もなく頻繁に起きる。そして事実は、マネージャーになったのなら、彼らの失敗はマネージャーの失敗であり、彼らの問題はマネージャーの問題であるということだ。早めに慣れよう。人の問題に早く気がつけるように気を配り、不測の事態に対応する方法を準備しておこう。

もう一つ:一人一人、違う方法で違うペースで働くということを覚えておくべきだ。つまり、採用活動がとても重要であるとことを丁寧に言い換えている。何故なら、やはり、人が問題を起こすからだ。

しかし、意外にも、人の問題を減らす方法もある。彼らがマネージャーを軽視したりすることが少なくなり、これが私の今までのキャリアの中で学んだ一番意外なことだった。彼らがマネージャーを信頼できる人だと分かれば、マネージャーも彼らに信頼を置くことができるようになるということだ。これは、本当だ。誓って言う。

絶対に誰にも嘘をつかないことだ。(今までのキャリアの中での最大の賛辞は、退職時の面談で当時の上司に言われた言葉だった。「どうやっているのか分からないが、君が話す時、聞いている人は皆、不誠実の仮面を外すようだ」と言った。)見たままの真実を外交的に伝えることだ。意味を取り違えないでほしい。信頼されるように努るべきということだ。そうした分だけ、他人を信頼することができるようになる。

マネージャーとは根本的には、少し注目を浴びることになった技術開発における翻訳者のようだ

マネージャーの仕事は、プロジェクトの壮大な計画を細部に至る内容と動作に落とし込み、開発者がそれぞれ遂行できるタスクに翻訳することだ。そして、開発者が仕上げたプロダクトをクライアント、役員、ユーザーが理解できるように翻訳することである。更に最も重要なのは、エラー、障壁となる物、そしてチャンスや可能性についてクライアントに対してその詳細を分かりやすく伝えるために翻訳することだ。そうするには、どんなプロの翻訳者でも言うように、創作物について執筆者よりも深く理解しなければならない。執筆者にとっては直感的に理解できるものだが、それを誰もが理解できるように落としこむのがマネージャーの仕事だ。

しかし翻訳者は翻訳した本に対する、栄光や賞賛を受けることはあまりない。(執筆者としての私の考えだ。)彼らの全ての良い判断は、執筆者に帰属するからだ。同様に、ファウンダー( 私たちの場合は、クライアント)が創作物への賛美を受ける。開発者はコードに対して称賛される。誰も美しい子供を見て、助産師の仕事を称えることはないのだ。

なら何故やるのか?上述したように、個々の開発者にはより多くの支配力があるが、影響力はとても少ない。いかに賛美も称賛を受けなかったとしてもマネージャーの判断が、最終的に構築されるプロダクトの良し悪しを決めるのだ。それに価値を感じられないと言うのなら、その人は悪いマネージャーなだけでなく、仕事をするフィールドを間違えていると言えるだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

新興国にインターネットを無料で提供するにはどうしたら良いか?

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編集部記Nathan Eagleは、Crunch Networkのコントリビューターであり、Janaの共同ファウンダーでCEOを務めている。

多くのアメリカ人は「ネットワーク中立性」という言葉を聞くと、無関心な眼差しになり、困惑し、すぐに飽きた顔をする。しかし、インドのような新興市場にとって、ネットワーク中立性は全てに影響する重要な問題だ。

例えば、インドのバンガロールに住む22歳の女性であるPriyaの例をとってみよう。多くのアメリカ人同様、彼女はAndroidを搭載したスマートフォン(90ドル程の端末)を片時も離すことはない。私のように彼女は通勤時間にFacebookにアクセスし、友人たちと毎週お決まりのディナーの予定を決めるために連絡を取る。あなたと同じように、何十個あるアプリを使って、スポーツを観戦したり、ニュースを読んだり、家族の写真を見て楽しんでいるのだ。

しかし、欧米諸国の人には定額料金でモバイルからインターネットを無制限に使う、あるいはWi-Fiホットスポットを利用できる贅沢があるが、Priyaはどのアプリをどの程度の時間使えるかを計算しなければならない。Priyaを含め、インドにおけるモバイル端末の契約者の90%は、高額なデータ従量課金プランを利用しているからだ。

インドでのコネクティビティに関する最も重大な問題は、家計から捻出されるデータ通信料が大きな負担になるということだ。最低賃金で働く人は500MBのモバイルデータプランの通信料を捻出するのに17時間働く必要がある。1時間インターネットに接続するのに、最大3時間働く必要があるということだ。(一方アメリカでは、月額の無制限データプランの料金は、最低賃金で3時間強、働けばまかなえる程度だ。)

これを理由に、Facebookと彼らのInternet.orgのプラットフォームやAirtel Zeroは、インドや他の新興国でカスタマーがアプリを無料で利用できるよう、コストの溝を埋めようとしている。目標はとても素晴らしいものだが、彼らのモデルはネットワーク中立性(ここで、つまらない顔をしないでほしい)の課題に直面する。ネットワーク中立性とは、インターネットのコンテンツは無料で平等に利用されるべきという基本理念だ。

インドを含め他の新興国で議論されるネットワーク中立性の問題は、アメリカ国内での問題よりずっと複雑だ。アメリカでのネットワーク中立性を巡る争いでは、Comcastによる、Netflixや他のストリーミングサービスのコンテンツをストリームする速度をコントロールしようとした問題が最近話題となった。この場合、利用者が映画を鑑賞する際、ロードするのに少し余計な時間がかかってしまう。

インドでは、スピードが問題なのではない。アプリや映画が他のものよりロードするのが少し遅い(これはアメリカで大々的な倫理問題を起こす)という以前に、そもそもアクセスできるかどうかという問題がある。Internet.orgやAirtel Zeroのようなプラットフォームでは一部のインターネットは利用できるが、他のものは利用できない。例えばデータ通信が少ないアプリは利用できるが、他のものは利用できるアプリのリストにすら入らない。

Priyaのような人は、Wikipediaを閲覧したり、Facebookで友人と話す以上のことをしたいと考えている。YouTubeで動画を見たり、ファイル共有のための最新のローカルアプリをダウンロードしたいのだ。彼らは、インターネットの一部ではなく、インターネットでの体験の全てを得たいのだ。(特定のアプリが他のアプリより利用するのに少し時間がかかるという問題の重要性はまだそれほど高くない。)

Internet.orgとAirtel Zeroは、彼らのミッションはインターネットへのアクセスがない人たちにインターネットを届けることだと言う。それは意義あるミッションだ。しかし、彼らのサービスは多くの人に初めてオンラインにアクセスする機会を提供すると同時に、彼らを誘導しているとも言える。

例えばInternet.orgは、あまりに大量のデータを消費せず、Facecbookの参加ガイドラインに準拠するアプリ開発者に対して、サードパーティアプリの開発を認めている。Airtel Zeroでは、承認されたアプリに関しては無料で利用できるが、他のアプリには通常のデータ課金がかかる。

ここ最近巻き起こった抗議は、両社の努力により作られたこの状況では、その地域で開発されたアプリや大企業ではない所のアプリを利用するコストが高くなり、それらが排除されてしまうことに対する抗議だった。Facebookを無料で利用できる場合、新しく立ち上がったスタートアップのソーシャルアプリを高額な金額を払ってまで利用するだろうか?これは全てのコンテンツを公平に扱うオープンなインターネットではないということを意味している。

次の10億人にインターネットを届ける難しさは、新興国でのデータ通信のために使うパイプ、ワイヤーやドローンの費用を負担しなければならないことにある。そして、それを担うのはインド政府ではない。もし、Facebook、Googleや他のAirtelのような大手オペレーターがそれを担うのなら、その意義ある行いのために金銭的なインセンティブを求めるのは当然のことだろう。

他にソリューションは無いのだろうか?という疑問が浮かぶ。

インドのような市場に無料でオープンなインターネットを届けるには、広告に支えられるモデルが最適ではないだろうか。現在あるほぼ全てのメディアはこのモデルを採用している。テレビやラジオの始まりも同じだった。テレビやラジオが初めて登場した時、広告主の存在により、コンシューマーは媒体を無料で消費することができるようになった。ウェブページを見てみても、現在のメディアのほとんどはこのモデルを採用している事実を確認することができる。同じように広告主がアプリやオンラインコンテンツの壁や制限を失くし、無料でアクセスできるようにすることはできないだろうか?

Mozillaはバングラディッシュで Grameenphoneとパートナー契約を結んだ。複数のアフリカ諸国ではOrangeと契約している。これらは広告モデルで、ユーザーに制限のないオープンなインターネットを提供する取り組みである。

バングラディッシュでのGrameenphoneの取り組みでは、ユーザーはモバイルのマーケットプレイスで短い広告を視聴した後、自由に使用できる20MBを毎日付与するというものだ。Orangeは、特的の地域のコンシューマーに対し、Mozillaのスマートフォンを購入した場合、端末と共に定められた時間内での無制限のインターネット利用が提供される。これらの取り組みは、Mozillaが自由に利用できる無料のインターネットアクセスを負担する代わりに、端末の売上を押し上げることが目標だ。

もう一つ例を上げると、インドで大成功を収めたPepsiのキャンペーンがある。FreeCharge(Snapdealに最近 買収されたスタートアップで、インドのコンシューマー向けインターネットセクターでは最大のバイアウトになった)では、Pepsiを買うと、無料でインターネットが利用できる。キャンペーン内容は次の通りだ。ペットボトルのPepsiを購入し、キャップの裏側のコードをモバイル端末に入力すると、10ルピー分のインターネットが自由に使える。FreeChargeは、その10ルピー分で閲覧できる内容や、アクセスに関して何ら制限を設けていない。コンシューマーは自由に利用することができる。

現在、2190億ドルが新興市場での広告に費やされている。しかしその90%以上は、屋外の看板やテレビ広告といった従来の広告媒体に向かっている。テクノロジー関連のコミュニティーが広告主に対して適切な広告プラットフォームを提供できれば、新しくインターネットに接続する多くの人に向けて、自社のブランドを打ち出したいと熱望する企業が必ず現れるだろう。そしてその対価としてインターネットにアクセスするコストを担うことに同意するだろう。そうすれば、広告モデルで無料で視聴できるケーブルテレビやラジオと同じように、広告はインターネットの門番ではなく、ゲートウェイとなることができるはずだ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

13歳の娘に宛てた真剣なキャリアアドバイス

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編集部記:James Altucherは、Crunch Network のコントリビューターであり、Choose Yourself Mediaのファウンダーだ。

彼の執筆した他の記事:How Do I Know If I Should Take A Job At A Startup?10 Reasons To Stay At Your Job

13歳の娘に対して、見栄を張らなければならないようで気恥ずかしいのだが、彼女の方から聞いてきたのだ。私の娘Mollieは、学校のキャリアガイダンスの授業の宿題として、私がどのように生計を立てているのかということを聞いてきた。私は答えに戸惑った。何故なら、私は多様な仕事をしていて、それをどのように彼女に伝えれば良いか分からなかったからだ。

しかし、これは学校が「教育は仕事に直結する」という考えに固執し過ぎていることの表れであると思う。それは、もう事実ではないのだ。

現実には、平均的な人でも人生の中で14の違う仕事を経験し、平均的な大富豪には、7つの異なる収入源があるそうだ。つまり、「一つの仕事に特化した」教育を受けた子供たちは、人生はそのように動いていないということを、難しい道順で学ぶことになる。

世界の移り変りはとても早い。私が今している仕事は、私が13歳の時には存在していなかった。そして、彼女が将来する仕事も、今はまだ存在していないだろう。学習することは、何かを覚えることより重要であるということだ。

宿題の内容な以下のようだった。

あなたの仕事は何ですか?そのキャリアに進むには、どのような教育を受ける必要がありますか?

私は一つ仕事を行っているのではない。そして、今すぐ学校を中退しても私の仕事はできる。Mollieに関しては、今すぐに中退したのならこの質問を続けなくても良くなるので、是非そうしてほしい。

私は、人は愛する人に囲まれ、得意な仕事をし、選択において、ある程度の自律(つまり自由)がある人は、人生を謳歌できると信じている。

恥ずかしい間違いを繰り返す自分を許容しなければならない。

違うことを色々行うことで、人生に自由がもたらされる。その中のいくつかはお金になるが、いくつかはならない。けれど、いずれも自信、人とのつながりと自由をもたらす。これこそ健やかなウェルビーイングを成し遂げるために必要な三要素だ。

私は、本や記事を執筆するライターであり、ポッドキャストで1000万ダウンロードを達成したこともあるポッドキャスターであり、たまに人前で話をすることもある。また、30以上の企業にアドバイスをしたり、投資したりもしている。

そして、多くの失敗を経験した。色々な事をすれば、色々なミスをしでかす。恥ずかしい間違いを繰り返す自分を許容しなければならない。それができれば、最終的に幸せな結末が待っている。

アドバイスする企業に対しては、一つだけ条件を求めている。その企業は、10億人の助けになるかということだ。(少し大げさだったかもしれない。13歳の娘に対してみっともない見栄を張った。100万人辺りが正確だろう。いや、100人でも良い。)

そして重要なことは、今の私の仕事をするのに、正式な教育的な要件は一切必要ないということだ。

仕事のどの部分が好きですか?嫌いな部分はありますか?

私は、過去5年間の友人との出会いに心から喜びを感じている。たくさんの事を学ぶことができた。学びがなかった日など無いといっても過言ではない。

嫌いな部分としては、「ノー」と充分な回数言えなかったことだ。(「The Power of No 訳:「ノー」の持つ力)」という本を執筆しているのにも関わらずだ。)ここに秘密がある。もし「もちろん、引き受けます!」と言えることではないのなら「ノー」と言うべきだ。

もし「もちろん、引き受けます!」と言えることではないのなら「ノー」と言うべきだ。

この素晴らしいテクニックがあっても、それに毎回従うのはとても難しい。人に嫌われたくないために「はい」と言って引き受けてしまったが故に、本当に人をクリエイティブにし、人生に喜びと活力を与えてくれる活動に割く時間が減ってしまうことは良くある。

これを解決する方法を私は知らない。実践あるのみだろう。

典型的な一日はどのような様子ですか?勤務時間について教えてください。

私には決まった勤務時間はない。きっとMollieもそうなるだろう。君には今、学校の時間があるが、それは偽りの勤務時間だ。

ただし。

毎日のルーティンはとても大事だ。一日の中でエネルギーとプロダクティビティは、時間によって変動する。極端な例だが、夜の時間帯の私たちは疲れている。(だから寝るのだ。)夜中に仕事をしたとしても、出来は良くないかもしれない。

私たちの脳のプロダクティビティは、起床していから2時間から4時間後までの間にピークを迎える。

毎日のルーティンはとても大事だ。一日の中でエネルギーとプロダクティビティは、時間によって変動する。

朝の5時に起床したのなら、脳は7時から9時までの間、夜中より100倍活動していることになる。私は5時に起床し、2時間読書をし、その後の2時間を執筆作業に充てている。執筆が私にとっても最も重要な活動だからだ。

その後、散歩やエクササイズをした後、脳の力を必要とする活動の順に時間を充てる。例えば、ビジネスに関するアドバイス(これが先)をし、その後は少ないエネルギーでも行えるタスクなどの処理を行う。

私たちの脳は体重全体のたった2%だが、毎日のカロリーの25%を消費している。この素晴らしいツールの使い方は人の一日の活動の出来を左右するので、とても重要なのだ。

どのように現在の仕事を選びましたか?

私には特定の職はない。

怖くなって仕事を追い求めた事はある。20代の頃、お金が必要だったので、ビジネスを始めた。

君の妹が生まれた時、新しいアメリカ国民が私の家にやってきて、30センチほどの彼女は英語も話せず、歩くことも出来ず、どこでもお漏らしをし、いつでも泣いて、私が面倒を見なければならなかった。それをするには、やはりお金が必要だと思ったのだ。

上手くできる時もあるが、他の時はストレスも多く、上手く対応できない時もあった。時折、逃げ出したくなる時もあったが、そうしなくて良かったと今では思う。何故なら、30センチだった彼女と君が私の人生に今いるからだ。

私は20以上のビジネスを作ったが、その内の17は失敗し、他の3つは上手くいった。ただ、私は子供の頃から書いたり、作ったりするのが大好きだった。私は25年以上にも渡り、ほぼ毎日何かを書いてきた。

私はたくさんの人を知っていて、多くの人たちのことについて書いている。それもあって、ラジオ番組(ポッドキャスト)でインタビューを始めた。起業家(Mark Cuban、 Arianna Huffington)、エンターテイナー(Coolio、 Amanda Palmer)、作家やアスリートといった、人生を良くしようと努力している多くの人に対し、インタビューを行った。

インタビューを通して、彼らから学びを得たかったのだ。番組を聞いている人にも彼らのストーリーを共有したかった。良いインタビューを心がけたが、それは難しいことでもある。練習が必要だ。

10人私のことを好きな人がいたとしても、1人か2人は私を嫌う人が現れる。彼らは出てきて、私に訴えるのだ。物事が順調に進むほど、私の活動が嫌いな人からの言葉を多く耳にすることとなる。なので、人に嫌われる活動をする自分を許さなくてはならない。

また、ビジネスにアドバイスするのも好きな仕事である。多くの人にとって重要な問題を解決しようとしているからだ。

人に影響を与えると、副産物としてお金が得られる。

私はこれらの仕事が好きで、人に対する良い影響があるからこの仕事を選んだ。やりたい仕事を全て特定するのは私には難しかった。それらは頻繁に変わるものでもあると感じていた。人に影響を与えると、副産物としてお金が得られる。本当の価値を探求するほど、この副産物を掘り当てるのが上手くなっていく。

私は結果的に半年ごとに違う活動を行っている。半年後、私はどんな仕事をしているかは見当がつかない。それは誰も分からないことだ。人生の何事も予測することはできないからだ。「Xをする」と宣言したとしても、翌年にはYをしていることも良くあるだろう。それでも良いのだ。

予測不可能なことは、予測可能なことよりも自然なことだ。人間は生来ノマドのように生きるものだ。新しい環境を求め、世界を巡り、今までになかった体験に適応し進化する生き物なのだ。

なので、次の半年でどんな新しい体験に適応しているかは誰にも分からない。しかし、私は自分の活動を楽しんでいて、人の助けになることをし、全ての活動においてクリエイティビティを発揮する仕事をしたいと考えている。

キャリアの選択において、若い世代にどんなアドバイスを贈りますか?

好奇心を持って、質問をすること。

下らない質問だと思った時でも、その質問を必ずすることだ。質問をするのが恥ずかしい場合は、質問を2つすることだ。

君の母はちょっとしたコツを心得ている。彼女はカンファレンスに出席し、質疑応答の時間の時は、質問を考える前に手を上げるのだ。必然的に質問を考えなければならなくなる。

そうしなければ、他の人と同列にいることになる。その列から外に出なければ、全体がどのように動いているかを把握することはできない。

好奇心が私たちの脳という名のエンジンを動かしている。好奇心は、まだ誰も知らないことを学ぶための助けになる。そして自分が何をしたいか、どんな人になりたいか、質問することを恐れる人よりどんな問題を素早く解決できるようになりたいかが分かるようになる。

そして2つ目。いつも健康に気をつけること。気分が優れない時にクリエイティブになることはできない。7年置きに全身の古い細胞は死んで新しい細胞に入れ替わっている。

細胞はどこから来るのか?ほとんど食べた物から構成されている。ジャンクフードを食べれば、ジャンクフードできた身体になる。健康的な食事をしていれば、健康的な身体になるだろう。

毎日の時間は、私たちが活動できる唯一の時間だ。

もう一つ覚えておいてほしい。「人は、自分の周りにいる5人の人の平均である」という言葉をだ。良心的で、クリエイティブで、賢い人に囲まれているなら、君も良心的で、クリエイティブで賢くなる。これは「感情の細胞」と読んで良いだろう。半年もすれば、100%変わるものだ。

毎日、少しでも良いからクリエイティブな活動をすることだ。文章を書いたり、読んだり、絵を書いたり、アイディアを10個書いたりなどだ。「クリエイティブな細胞」ができあがる。これは私なりの生物学だ。

最後に。毎日の時間は、私たちが活動できる唯一の時間だ。後悔は過去で既に息絶えている。将来への不安は、予想することはできない。なので、今ある物に対して感謝すべきだろう。喜びのある人生と世界は何でも自由に描いて良いキャンパスのようなものだ。美しい絵を描こう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

金融業界が滅んだとしても、それはミレニアル世代の責任ではない

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アメリカ全土の多くのミレニアル世代は、家を所有することを拒んでいるミレニアル世代は不要な物は買わない。不要な物を販売して成り立っているビジネスは追放されるだろう。彼らは、労働市場も「ミレニアル世代の価値観」に塗り替えよう としている。ミレニアルが価値を置くのはこれ、ミレニアルの価値観はこう。論争を巻き起こしているこの重要な議題について、様々な記事が見られるようになった。

ミレニアル世代の私はこれに著作権を申請し、この話題が登場する度に、ロイヤリティが得られるようにしたい。 ハッピーバースデーの曲のようにだ。

私はこの世代間の無意味な論争を他の人と同じくらい嫌っている。しかし、近い年に生まれた人は似たようなことを人生で経験するという動かない事実もある。私の世代は若い頃に9・11、アフガニスタンやイラクでの戦争を目撃し、社会に出て働き始めようとする頃には、世界的な金融危機が起きた。私たちの世界観に影響を与えていないはずがない。

銀行の他にも、私たちの世代を対象とするビジネスは苦戦を強いられることになるだろう。彼らはミレニアル世代に何を提供すべきか検討がつかず、準備もできていないだろうから。しかし中でもミレニアル世代が、「San Andreas」の映画の中のサンフランシスコのように完璧な倒壊を望んでいる業界があるのだとしたら、それは金融業界だろう。

銀行も無知ではない。JP Morgan Chaseのトップの責任者であるJamie Dimonは今年、株主に向け、既存の銀行サービスに取って代わろうとする「何百のスタートアップを引き連れて、シリコンバレーが迫ってきている」と話した。

当面の間、銀行は残るだろう。しかし、その多くをミレニアル世代のリーダーとするスタートアップが、同じミレニアル世代をアーリーアダプターとして巻き込み、金融業界の心臓を狙っているのは確かだ。金融業界の今後の振る舞いで、この国の最も重要な資産を誰が担うかが変わってくるだろう。

ミレニアル世代が資産形成に抱く想い

どの世代も資産形成の目標を持っている。ここ数十年、誰もが共通して持っていた目標は、家や車を所有して独立することと、退職後に必要な社会保障と年金を補うための資産形成だった。

当たり前だが、銀行はこの思いを汲み取り、多種多様な金融商品を提供してきた。不動産ローン(これは増加し続けて、全員がその破滅を目撃した)、持家担保ローン、投資、退職後の資産形成のアドバイスといったプロダクト開発、そして地域の支店を通したカスタマーとの関係性を築くのに銀行は力を入れた。

ミレニアル世代は異なる目標を持っている。しかし、金融機関はこの世代が必要とするプロダクトを提供し、彼らを取り込むまでには至っていない。この世代についてまず言えることは、この国の歴史上、 学生ローンが最高額に達しているということだ。これはつまり、現在銀行が提供しているプロダクトの大部分は、この世代と関連性が薄いことを示唆している。家のような規模の大きい物の購入の優先順位は下がるか、完全に見送られるからだ。

驚くことに、伝統的な金融機関の学生ローンに関する取り組みでは、ほとんどイノベーションが見られない。一方、SoFi、 Earnest、 CommonBondといったスタートアップは、この分野で大きなイノベーションを起こしている。何故だろうか?銀行が、新卒者や潜在的な新規顧客に「口座を開設して、学生ローンを低い利息のもので再検討し、返済額を大幅に削減できるようにしましょう」と開口一番に言ったのなら少しは良くはならないのだろうか?

カスタマーサービスについては後述するが、既存の金融機関には、市場にある大きな隔たりが見えていないのは明確だ。

大手銀行も投資アドバイスに関しては、注力してきているようだ。契約業者を介して、あるいは直接口座から投資を自動的に行うサービスが増えている。WealthfrontやBettermentのようなFintechのスタートアップのようにだ。このようなツールは、ミレニアル世代をターゲットとして開発されたものが多い。ミレニアル世代はコンピューターが資産を扱うことに安心感を持っていて、投資ポートフォリオはバランスを重要視する。(結果的に、世界的な金融危機も生き延びることができたのだ。)

他にも伝統的な銀行がこの世代に提供できる最適な金融商品はまだたくさんあるだろう。 Affirmのようにクレジットスコア(クレジットの信用度を表す指標)の新しいモデルを提唱する企業は、新しく労働市場に参入した若者がローンを得るのに役立つだろう。Robinhoodのような企業は、株取引の手数料の徴収は時代遅れだと示そうとしている。銀行がミレニアル世代を取り込む機会はまだまだあるが、彼らがこのデモグラフィックに注意を向けていないことは非常に残念だ。

そうは言っても、話しかけないでほしい。

確かに、私たちは銀行の取り組みに期待しているが、話をしたいということではない。私は人生で一度しか銀行の支店を、とても満足した状態で去ったことがない(無料でキャンデイーをもらった日だろう)。自動投資プラットフォームは、手数料が低いこととリスクが分散されていることだけを理由に普及しているのではない。今までの投資アドバイザーは自分が何を売っているのか把握していなかったのも理由の一つだ。(だが、それでも彼らはその仕事で裕福になっていた。)

既存の銀行は、銀行業務の多くをインターネット、少なくともATMからでも行えるようにしてきた。対面での取引は、驚くほどコストが付随するものだからだ。しかし、どこもまだモバイルとウェブでのバンキングの利点をフルに活用したユーザーエクスペリエンスとプロダクトを提供しているとは言いがたい。

Simple Bankは、 昨年BBVAに買収されたスタートアップだ。彼らは、全てのことをモバイルで完結させようとしていた。大成功には至らなかったが、この分野のポテンシャルを示した。 「ATMのUber」と呼ばれるNimbl や他の銀行サービスを提供するスタートアップの登場は、数年前まで途方もないと思われていたサービスを実現しようとしている。

私は全ての銀行サービスをモバイル端末で利用できる銀行がほしい。助けが必要な場合は、ボタンひとつで銀行員と連絡が取れるようなカスタマーサービスがほしい。自分に関連しないサービスが並んだ50種類以上のオプションのある金融商品一覧ではなく、自分専用に設計された一連の金融商品を提供してほしい。

資産の移動は10秒で完了させたい。画面遷移を10回もしない方法で。

シンプルなプロセスに関連することがもう一つ。対面での接点が減ることで、金融商品の複雑さが削減されるだろう。銀行に行く度に長くて煩雑な、今月のおすすめ口座タイプなどの説明を受けるが、どれも複雑な手数料が絡みついている。これらは、私を困惑させるのでとても好きになれない。シンプルが一番だ。

誰もが欲している銀行サービス

分かっている。ミレニアル世代は、やっかいなカスタマーだ。しかし皮肉なことに、誰もがこのようなサービスを望んでいる。コンシューマーは、自分の資産をモバイルやタブレット端末から管理し、銀行の支店へ足を運んで銀行員と話す回数を減らしたいと思っている。価格が不透明で複雑な銀行手数料が好きな人もいない。

これまでと違うのは、ミレニアル世代は、銀行以外の選択肢を求めているということだ。市場にそのようなサービスしかないというのはもう認められないのだ。新しいスタートアップがイノベーションを起こしているのなら、それを試したいと思う。ミレニアル世代の言葉を理解しようとしない伝統的な金融機関ではなく、同じ言葉を話すスタートアップを選びたいと思う。

ウォール街の金融機関がこの新しい環境に適用できないのだとしたら、それはミレニアル世代を取り込むことができなかったからではない。それは、ウォール街が全てのカスタマーのためにイノベーションを起こせなかったということだ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

問題解決のためのプロダクトデザインを実践する


編集部記Ashish Krishnaは、Crunch Networkのコントリビューターである。また、彼はMammothの共同ファウンダーでデザイナーを務めている。
彼の執筆した他の記事:What Happens At AngelPadHow to join the network

私はデザインとスタートアップが大好きだ。この2つの要素が出会う時、魔法のように素晴らしい企業が誕生すると考えている。例えば、Braun、 Apple、 Airbnb、 Medium、 YouTube、 SquareやNestなどだ。ビジネスとデザインと技術的なスキルの適正量が組み合わさることで、これらの企業は大成功を収めることができた。

しかし、多くの人はデザインにまつわる多様な基本要素やフレームワークに惑わされ、デザインを必要以上に複雑に考えているように思う。デザインはシンプルで、工程は反復できるものであり、スタートアップが重要視すべきものだ。Mammothでは、デザインは考える方法であり、問題を解決するためのクリエイティブな手段だと考えている。ユーザーの共感を得たり、構造化されていないチャンスを表面化する手段であるとも考えている。私たちの実践しているアプローチは以下の通りだ。

プロセス、スペック、美しい表現というものにとらわれ過ぎないこと。
市場に素早く適応し、学習して構築するスピード感が重要だ。Photoshopで製作したモックや文書がピクセル一つ一つまで完璧である必要はない。完璧を求めるべきものは、ユーザーに届けるプロダクトであってモックアップではない。最終的にユーザーはPhotoshopの単独のファイルではなく、プロダクトを見ることになる。スペックや製品は重要だが、エクスペリエンスをデザインすることに集中すべきだ。

画面ではなく、ストーリーをデザインする。
デザイナーは画面のデザインを依頼されることが多いだろう。例えば、サインアップした直後のページ、サインアップのフロー、レファラル機能の画面などだ。デザイナーとしては、それらを個別の画面で考えるのではなく、ストーリーとして捉えることが重要だ。ストーリーには、登場人物や文脈や感情がある。ユーザーの全体のサービスにおける旅路を考えることだ。ユーザーの目標を達成すること(初めて来たユーザーから何回も訪れるようになるユーザーになるまで、とも言える)を考え、サインアップさせるというような目的だけにとらわれないことだ。

仮説を持ってデザインをする。
学習し、数字でデザインするということだ。スタートアップを運営しているのなら、立ち上げ当初、必ずユーザーの問題を理解し共感していて、それを解決する重要な仮説を立てたはずだ。多くの大企業とは違い、スタートアップではデザイナーと開発チームはマイルストーンに合わせてプロダクトを製作するのではない。スタートアップのデザイナーは毎日プロダクトを製作してユーザーに届けるものであるという意識で仕事をすべきだろう。

仮説を検証するために何を測るかを把握しておくことだ。Mixpanel、Heap、Google Analyticsといったアナリティクスツールを試し、ユーザーにとって今のデザインがどのように受け取られているのかを検証する。パフォーマンスを分析し、当初の仮説と比較し、考察を深めよう。何が起きているのかを探り、そこから学び、ユーザーにプロダクトを製作して届けるというプロセスを何回も繰り返していくことだ。

Facebookでプロダクトデザインのディレクターを務めるJulie Zhoが投稿した 洞察に富んだ記事では、良いデザイナーと経験を積んだデザイナーのデザインプロセスの違いを図で表している。スタートアップでプロダクトをリリースした後のプロセスこそ、デザインの仕事の難しさがあることを表現している見事な記事だ。重要なのは反復学習することだ。

グループでデザインをするのではなく、グループの意見を鑑みたデザインをすること。
UXのサイクルの中で、プロダクトや機能開発のチームと連携することは重要だ。しかし、自分で最終的に決定することを忘れないことだ。グループでデザインしたプロダクトデザインに良いものはない。全員の意見を聞き、それぞれの考え方を尊重しつつ、そこから得られた洞察をもってデザインすることに意味がある。

開発者は盟友だ。
デザイナーと開発者は、互いがいなければ成立しない。開発者がモックに命を吹き込むことで、機能やプロトタイプが実現する。開発者が好きな飲物とドーナッツを差し入れ、魔法をまとった製品を協力して作り出せる良い関係を築こう。

カスタマーサポートの一端を担う。
カスタマーサポートのリーダーを務めるのは更に良い。ソーシャルメディアやサポートフォーラムでユーザーと毎日話すことになる。何をすべきか、あるいは何をすべきではないかという理解が深まるだろう。文脈に沿った調査や研究室での実験ほどの効果は得られないかもしれないが、何が上手くいっていて、何が上手くいっていないか、そしてユーザーがプロダクトに何を求めているかが良く分かるようになる。

鉛筆やペンをもっと使うこと。
Sketch、PhotoshopやHTML/CSSに直行しないことだ。デジタルツールをいかに使いこなしていたとしても、ペンで書いた方が5倍は早いだろう。ペンでのスケッチの方が安いし、フィードバックが得やすく、何度でも試すことができる。

学習(いつでも、どんな時でも)
アナリティクスツール、Git、HTML、CSS、といつもはそこまで重要視していない左脳用の合理的なツールは、スタートアップにとって、とても重要なものだ。開発、検証、プロダクトを科学的に検証するチーム(もしあれば)と連携するなど、自分から積極的に動いて学ぶことだ。大きな組織で働いているのなら、一つの分野に特化するのも良いだろう。しかし、スタートアップのデザイナーには、デザイン以上のことも多く求められる。自らがプロダクトマネージャーになったり、フロントエンド開発を行ったり、カスタマーサポートを先導したりすることは、会社にとっても、そして自分にとっても価値があることだろう。

自分と周りの人たちを大切にすること。
スタートアップでの仕事は大変なことも多い。時には子供と遊んで笑ったり、パートナーや伴侶とディナーに出かけたり、ちょっとした時間にテニスで身体を動かしたり、ワインを飲んだりしよう。デザインを楽しもう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

現在のテクノロジー・バブルは破裂必至―最大の痛手を受けるのはベンチャーキャピタリストではない

2015-05-27-bubblewillburst

編集部:この記事は税務、会計のための企業評価コンサルタントArancaのシニア・マネージャー、Manish Goyalと同社の会社評価部門の責任者、Bharat Ramnani の寄稿。

シリコンバレーは時限爆弾の上に座っているのだろうか? テクノロジー界はバブルなのかどうかをめぐる論議は激しさを増している。いわゆる「ユニコーン」、つまり投資家から何十億ドルもの資金を集めながらそれを正当化するような利益を返さないスタートアップが最近、何社も登場していることが論争の火に油を注いでいる。

いまやベンチャーキャピタルの世界ではユニコーンは珍しい存在ではない。CB Insightsのレポートによれば、現在アメリカで企業評価額が10億ドル以上になるスタートアップは103社もあるという。その大半は黒字化に近いところまでも行っていない。サンドヒル・ロードのベンチャーキャピタリストたちは「次のFacebook」を探すのに熱中するあまり、さしたる根拠のないコンセプトに法外な額の小切手を切っている。営業利益率、損益分岐点、将来のキャッシュ・フローといった着実な数字は後部座席に追いやられた格好だ。

強気筋の一部は警告を発するものに対して「テクノロジー投資がわかっていない不平屋の素人だ」というレッテルを貼っている。しかしMark Cubanはそうではない。この伝説的ベンチャーキャピタリストは、広く論議を巻き起こしたブログ記事で、「現在、過去最悪のバブルが起きている」と主張している。これはやはり極端な意見だという声が強い。しかし同時に、現在のバブルは―バブルだとして―2000年のドットコム・バブルとは根本的に性格が違うことに注意する必要がある。

それでは、このバブルで最も痛手を被りそうなのは誰だろうか? われわれの分析によると、一般に考えられているのとは違って、ベンチャー投資家の被害はさほど深刻なものとはならず、最も深刻な犠牲者はスタートアップのファウンダーと社員だ。

「次のFacebook」

投資家は遠い先に実現するかもしれないイノベーションに夢を託して、地に足のついた数字―企業のファンダメンタルの検討を窓から投げ捨ててしまったようだ。それに呼応して、Uberなど一部のスタートアップは利益を度外視して、新しい市場の立ち上げとシェアの獲得にしゃにむに突っ走っている。

投資ラウンドを重ねるごとにUberのようなスタートアップの会社評価額がロケットのように急上昇したスピードはどんな楽観主義者の予想も上回るものだった。 Uberは わずか6ヶ月で170億ドルから400億ドルになった。

これは正真正銘のバブルだ。 しかしこのバブルの破裂は投資家の金、特に一般投資家の金を一夜にして紙くずに変えるのだろうか? どうやらそうはならないようだ。

このテクノロジー・バブルの主たる推進力はスタートアップ後期のベンチャー投資で、公開市場にはある程度の理性が残っているように見えるのは興味ある点だ。2000年のドットコム・バブルのときには、売上ゼロの会社が株式上場に走ったものだが、今はテクノロジー・スタートアップが上場するまでの平均時間ははるかに長くなっている。上場の数が大幅に減った結果、上場した企業が黒字化に成功する率が高まっている。

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上場とベンチャー投資の比較。テクノロジー分野における1億ドルを超す投資と上場の件数 (世界) ソース:Renaissance Capital

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上場とベンチャー投資件数の比較。2000年以降のアメリカ。ソース: PwC/NVCA MoneyTree Report, Bloomberg

上のグラフでも分かるように、ベンチャー投資の件数と額は急上昇しており、もうじき2000年のペースに届く(バブルだ)。しかしNASDAQのインデックスが5000に近づき、株価収益率も36.5まで上昇しているものの、株式市場に関しては2000年代の狂乱ぶりにははるかに及ばない。つまり今回のテクノロジー・バブルが破裂しても2000年のドットコム・バブルのように一般投資家が何十億ドルもの投資を一夜にして失うという事態は起こりそうにない。

誰が打撃を受けるのか?

このバブルは近く破裂することが必至だ。非常識な評価額によるメガ投資のトレンドが破裂したときに打撃を受けるのは株式市場の一般投資家ではなく、プライベートな投資家だ。しかしドットコム・バブルのときは違って、今回はベンチャーキャピタリストは被害の矢面には立たないですみそうだ。

この点を理解するには、テクノロジー・スタートアップが10億ドル以上の評価額を得た代表的な例を詳しく見ていく必要がある。

Source: VC Experts

ソース: VC Experts

投資条件から計算された評価額(Implied Valuation)はすべて10億ドル以上だが、実際に投資された金額ははるか低い。さらに投資条件に含まれるliquidation preferences(会社が現金化される際にベンチャーキャピタリストの優先取り分を定める条項)が入ってくると、ベンチャー投資家はさらに手厚く守られることになる。

テクノロジー・スタートアップに対する数百件のベンチャー投資ラウンドでわれわれは会社評価額決定の専門家として意見を述べてきた。その中にはユニコーンも含まれる。われわれの見るところ、最近ベンチャー・キャピタリストはこうした投資におけるタームシート(投資条件規定書)にliquidation preferences以外にもparticipation rights(残余財産分配における株主としての参加権)などの権利を盛り込もうとしている。もしスタートアップの事業が目論見どおりに成功しなかった場合でも投資額を取り戻し、できれば利益を得ようとするさまざまな手段が講じられている。「お前たちは評価を取れ、こっちは現金を取る」という昔から言われる警句のとおりだ。

残念ながらベンチャーキャピタリスト以外の株主やストックオプションの持ち主にはこういう保護は及ばない。スタートアップの社員はベンチャー資金投資後の高い会社評価額をベースに自分のストックオプションの価値を算定する。しかしこの価値は名目的なものに過ぎず、オプションが無価値になるケースはきわめて多い。ファウンダーでさえ、往々にして数十億ドルの価値があるはずの持ち株が実際には紙の上の評価にすぎなかったと気付かされる。

UberとAirbnbの例でいえば、Uberの共同ファウンダー2人と幹部の1人、Airbnbの3人の共同ファウンダーがForbesの今年の「大富豪リスト」に載っている。言うまでもないが、彼らの「資産」は名目的な(それもベンチャー資金投資後の)会社評価額に基づく株式の価値にすぎない。その額は会社が今現実に売却される場合に想定される額を大幅に上回っている。

仮にUberやAirbnbが過大な会社評価額に見合う成長を達成することに失敗し、 たとえば、投資後評価額の10分の1の額で買収されたとする。その場合でもベンチャーキャピタリストはliquidation preferenceによって投資額を取り戻し、さらに利益を得ることも可能だ。しかしファウンダーや社員が「手にした」と思った数十億ドルは紙の上の泡と消えることになる。

〔日本版〕上の表によればUberの「計算上の評価額」は440億ドルで、それに対する実際の投資額は12億ドル。評価額の10分の1、44億ドルで買収された場合、liquidation preferencesが1.0倍なのでベンチャーキャピタリストは44億ドルから優先的に12億ドルを得る。タームシートの内容によっては44億ドルの大部分がベンチャーキャピタリストの手に渡り、ファウンダーや社員には利益がほとんどないという事態も十分に起こり得る。

最大の被害者

一言でいえば、テクノロジー・スタートアップの評価額を法外に吊り上げているのは「次のFacebookやTwitter」を探すベンチャーキャピタリストたちが感じるFOMO 〔Fear Of Missing Out=チャンスを逃がすことへの恐れ〕だ。その上、ベンチャーキャピタリストは上に述べたように自分たちの投資に対する保護策を講じているので、大きなリスクを冒しているとは感じていない。以前のベンチャーキャピタリストは評価額を決める際にある程度は実態に応じた数字を使ったものだし、liquidation preferencesその他の条項も半分は形式的なものだった。しかし、今やこうした条項は大きな意味を持ち始めている。

結局こういうことだ。人々は負けたたときのリスクがごく小さいのであれば、成功の確率が低いが成功すれば儲けの大きい賭けを追求するようになる。ベンチャーキャピタリストは巨大な評価額を付けた会社の株の数十分の1を買うかもしれないが、その評価額で会社全体を買うことは絶対にない。

スタートアップ投資のエコシステムではベンチャーキャピタリストが圧倒的に優位なプレイヤーなので、社員はもちろん、ファウンダーも弱い立場にある。アメリカではベンチャーキャピタルが投資する会社で1250万人が働いており、その数は増え続けている。こうした人々がスタートアップで働く動機の大きな部分がストックオプションへの期待だ。会社が目論見どおりに長期的に成長を遂げて買収や上場によってエグジット〔現金化〕されたときの巨額の報酬を当てにしているわけだ。

ごく近い将来、こうしたインフレの評価額は厳しいテストjにさらされることになるだろう。そして古き良き、現実の収益性に基づいた会社評価手法に立ち戻らざるを得ないに違いない。もちろんスタートアップの一部は成功するだろうが、失敗する例も多く出るだろう。失敗の割合がどのくらいひどいものになるかはまだ予測できない。ただ言えるのは、ベンチャーキャピタリストの大半は利益を上げられないまでも、投資額は守れるだろうということだ。逆に多くのファウンダーたち、社員たちは巨額の資産を手にしてと思ったのもつかの間、それが紙の上の数字に過ぎなかったことを知って落胆するだろう。

投機的バブルは「愚か者の競争」を必要とする。そしてバブルの破裂のタイミングが最大の打撃を受ける人々を決める。 現状では最大の打撃を受ける候補者はベンチャーキャピタリストではなく、ファウンダーと社員だ。

画像: jesadaphorn/Shutterstock

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


【以上】

シリコンバレーに「横並び(年功)給与システム」復活の兆し―男女格差撤廃にも効果

2015-05-26-lockstepsalaries

60年代の終わりと共に消えたものが復活しつつある。

シリコンバレーにはTechCrunch TVでも紹介しているとおり、無料ランチやヨガのクラスを提供するなどユニークな職場が多い。同時にシリコンバレーは東海岸の大企業の固定的な給与体系を捨て、市場競争と交渉による給与決定システムを取り入れている。この仕組が理想的に働くなら、各人はその生産性の市場価値に見合った給与を受け取ることになるはずだ。しかしこの個別交渉による給与決定システムは、破綻したわけではないものの、近年厳しい批判にさらされている。

特に問題となっているのは、広汎な調査によってテクノロジー労働者における男女の賃金格差がはっきり裏付けられたことだ。 MicrosoftのCEO、サティヤ・ナデラは「女性は適正な給与を受けていると会社を信頼する必要がある」と発言して厳しく批判された。

テクノロジー業界における給与システムの振り子は逆方向に振れ始めている。一人一人の従業員に市場競争による価値を見出して給与を決定する方式から横並び(lockstep)給与方式への転換だ。一部の従業員はこうした画一的な方式に不満を感じているが、企業経営者、人事専門家は横並び賃金がもつ非常に重要なメリットに目を向ける必要があるだろう。

横並び(Lockstep)給与

横並び給与の考え方は単純だ。同一職種、同一職位の従業員には同一の給料表を適用し、経験年数に応じて昇給させる。大学新卒採用の社員は全社を通じて同一の給与を受け、すべての副社長も同一の給与を受ける。昇給には上位の職位に昇進するか、会社にとどまって在職年数を増やすしかない。

このシステムは現在のアメリカでも広く採用されている。政府、自治体のの職員はほとんど全員がこのシステムだ。職種、職位、在職年数ごとに受ける給与が厳密に決まっている。エリートの専門職の場合も横並び給与が多く見られる。特に法律事務所ではアソシエートは全員が在職年数だけで決まる同一賃金を受けるのが普通だ。

横並び給与体系には非常に大きなメリットがある。その第一は、昇給がゼロサム・ゲームではなくなるため、社内の協調性を大きく高めることだ。特にスタック・ランキングによる業績評価を行っている会社とは著しい差が出る〔スタック・ランキングは従業員の実績を相対評価によって分類し、最低分類の社員を解雇する人事管理方式。Microsoftの社内に協調性が欠けている最大の原因と批判されてきた。スタック・ランキングは2013年にバルマーのCEO退任を機に廃止された〕。

横並び給与方式については、当然ながら「パフォーマンスがどうであれ来年の給与が決まっているなら社員のモチベーションが下がり、真剣に働かなくなるのではないか?」という懸念が起きるだろう。

しかしこの問題を回避する方法はいろいろある。その一つは「昇進しなければメリットがない」という法律事務所のモデルだ。法律事務所で働く弁護士の目標は給与制のアソシエートから事務所の利益の配分を受けるパートナーに昇進することだ。しかしパートナーに昇進できるのはアソシエートのごく一部しかない。そのため給料はほぼ同一でもアソシエート間で激しい競争が起きる。

Pしかし、さらに重要なのは目先の昇給より良心的な仕事をすることを優先するような気風を生む企業文化かもしれない。プロフェッショナルの世界では給与が横並び方式で決められていてもパフォーマンスで競争する文化をもつ組織が珍しくない。

1対1の給与交渉なしの透明な職場環境

横並び給与方式には社内の「共食い文化」をなくす以外にも、2つの大きなメリットがある。横並び方式であれば個別給与交渉が必要なくなり、職場の透明性が大きく改善される。まず第一に効果的に昇給交渉ができる人間は少ない。優秀だが給与交渉が下手な社員はいくらでもいる。また企業幹部は常に昇給交渉に対応しているから経験が豊富であり、個別の社員は多くの場合交渉で太刀打ちできない。

その結果、まったく同程度の実績で同内容の仕事をしている社員間で驚くほどの給与の差が往々にして生まれる。

実際この点がシリコンバレーだけでなくアメリカ全体で非常に大きな問題となっている。女性は男性に比べて昇給交渉をしない傾向があることが数多くの調査で明らかになっている。女性が昇給交渉で消極的な原因にはいろいろな要素が影響しているだろうが、これが男女の賃金格差の重要な原因になっていることは間違いない。

昇給を個別交渉で決めるシステムは女性に不利益をもたらすだけでなく、労使関係にも悪影響を与える。新しい会社に入るときに、まず給与交渉をしなければならないというのは気まずい経験だ。これから一緒に働くパートナーとなる相手と、まだ気心もしれないうちに、給料にあと何ドルが上乗せするよう議論しなければならない。横並び給与方式ならこういう圧力はずっと少なくなる。

給与交渉の廃止は、組織内の透明性を高めるという効果もある。これは社内政治を抑制するのに効果的だ。一部のスタートアップ、たとえばBufferでは全社員のサラリーを公開しているが、多くの人はこれはやり過ぎだと居心地悪く感じるだろう。

一方、横並び給与方式であれば、同一職位で同一在職年数の社員の給与は同一だ。これは同僚を出し抜いて有利な昇給給与を勝ち取ろうとする社内政治の原因を取り除き、仕事そのものへの集中度を高めるだろう。

シリコンバレーでの動向

シリコンバレーでも横並び給与方式は新しいものではない。多くの大企業はなんらかのかたちで職種、職位、経験年数によって給与が決められる横並び方式を採用している。こうした大企業でも個別の給与交渉の余地がなくはないが、多くの場合、急成長が期待されるプロジェクトに転じて職位そのものの昇進を狙ったほうが効果的だろう。

さらに重要な変化はスタートアップの場合だ。近年、スタートアップは優秀なエンジニアを獲得するため、ありとあらゆる有利な条件を提示して激しい競争を繰り広げてきた。しかし現在ファウンダーたちの間で、こうしたアプローチに伴う好ましくない副作用が認識されている。

たとえば、Marc Loreが創業したeコマースのスタートアップ、Jetでは横並び給与モデルが採用されている。Loreは「われわれのところでは同レベルの仕事をしている社員は同一の給与を受ける。それを全員が知っている」と説明する。Loreは女性の賃金格差に対処することにも意欲的だ。「女性は男性ほど積極的に昇給交渉をしない傾向のために不利益な立場にある。これはまったく不公正だ。わが社ではいったんある職位に就けば決まった給与を受け取る。交渉によって昇給することはない」という。

交渉によって給与を決めることを信奉している一部のスタートアップのファウンダーたちには悪夢かもしれないが、こうした交渉による給与決定システムが現在どんなパフォーマンスを示しているのか冷静に検討すべき時期だ。横並び給与(Lockstep)方式はマッドメン の時代の遺物ではない。現代のテクノロジー・スタートアップが公正かつ透明な職場環境を求めるなら、極めて有効な給与システムとなり得るはずだ。

画像: Tax Credits/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Eメールが生き残ることを証明する3億6500万の理由

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編集部記 :Len Shneyderは、Message SystemsのIndustry Relations部門のディレクターを務めている。Eメールマーケティング、配信とデジタルマーケティング分野において10年以上の経験がある。

直近の5四半期の間で、投資家はEメール関連企業に対して前向きな姿勢を示してきた。アナリティクス、インフラ、広告やサービスまで、Eメール関連企業に累計3億6450万ドルの資金が流れ込んだ。新しく資金が投じられた企業の最近の成長ぶりは、Eメールがスタートアップやその他の法人にとっていかに堅実で、信頼されて重要なものであるかを証明している。

順に追っていくと、堅実な働きぶりが評価されたResponsysExact Targetは素晴らしいエグジットを達成した。Campaign Monitorは、巨額の資金調達ラウンドを行った。これらは、Eメール関連企業の価値を示唆している。

マーケティングクラウドの拡充

マーケティングクラウドだけでも、Salesforceのマーケティングクラウド (Exact Target)、Oracleのマーケティングクラウド (Responsys、 Eloqua)、Adobeのマーケティングクラウド (Adobe、 NeoLane)、IBMのExperience One [これもマーケティングクラウド](CoremetricsUnicaDemandTecXtifySilverpop)などがある。これらの取り組みから、法人向けのデジタルメッセージ技術に対する需要が高いことは明らかだ。各社が行った何十億ドルでの企業買収は、マーケティング分野への投資と同じ意味を持っている。投資家が今後も、自社のマーケティングフレームワークの拡充のために近い将来、企業買収を計画していたとしても何ら不思議はない。

モバイルアプリとソーシャルネットワークでさえ、Eメールの力を借りている。

StatistacomScoreによる2014年のモバイル端末での人気アプリの調査では、Eメールアプリ(主にGmailアプリ)が10位以内に入っていた。他に10以内に入っていた固定通信アプリはFacebookだけだった。もちろん、その分野の覇者であるFacebookが一番で、Eメールは次点だ。とはいうものの、Facebookも自社サービス内で起きていることをユーザーに伝え、戻ってくるのを促すためにEメールを活用している。彼らが送信するEメールの量は、ひとつの企業のEメールトラフィックとしては他のどこよりも多いかもしれない。

他の例としては、LinkedInが挙げられる。彼らもサービスの至る部分で、ユーザーを自社サービスに惹きつけておくためにメールを活用している。LinkedInはユーザーがサイトに作成したコンテンツのエンゲージメントの獲得と拡散にメールを上手く活用したパイオニアだ。

LinkedInは、3億6400万人以上のユーザーを抱え、定期的なユーザーとのコミュニケーションで彼らをつないでいる。誰かがユーザーのプロフィールを見た時、ユーザーの現在の仕事と似た仕事の募集要項が掲載された時、その他のメールの自動配信の要件が満たされた場合もユーザーにメールで連絡している。

Eメールのプロバイダーはまだ重要

前述の3億6450万ドルの投資額の大部分は、Campaign Monitor(2億5000万ドル)、Autopilot(1000万ドル)とIterable(120万ドル)に渡った。これらの系統は多少異なるが、Eメールサービスプロバイダーやマーケティングを自動化するスタートアップで、企業がEメールキャンペーンの管理と配信を補助するサービスを提供している。

EメールのROI(投資対効果)は、1ドルの投資に対して40ドル から45ドルの効果と算出されている。企業は、一定の分野に特化したメールサービスへの投資に前向きだ。これらの企業や他のESPメールサービスプロバイダーが提供するサービスは多岐に渡っている。

例えば、プロの戦略マーケティングから、アトリビューションモデリング、マルチチャンネルのキャンペーンツール、更にはユーザーへのドリップマーケティングやキャンペーンの作成を簡単に自動化する、自社で使用できるフロントエンドのツールなどがある。このようにメール配信とビジネスを連携するのは専門的な分野であり、多くの企業がアウトソースしたいと考えるものだ。

クラウドへの移行

Eメールは定義上はクラウドテクノロジーではあるが、実際には、どこかで誰かが不規則なキューで動くSMTPサーバーを運営管理していた。オープンソースのソリューションでは、星の数ほど大量のEメールを送るための方法を開発しようと試みてきた。

しかし、大規模なメール配信の要求を満たすには、複数の受信ドメインとそれぞれの要件に関する専門知識が必要だった。Message Systems (2700万ドルの資金調達)とSendgrid(2000万ドルの資金調達)は、DIYが得意な世代の企業のために、APIで利用できる、クラウド上にEメールのためのインフラを構築した。彼らは、規模の経済を活用できるクラウドテクノロジーの開発に力を入れてきたのだ。

アナリティクスと、多種多様なEメールサービスの台頭

Eメールは、クロスプラットフォーム、クロスデバイスで、究極のクロスチャネルで通用する媒体だ。 Litmusによると、Eメールの半数は、モバイル端末で開封されるそうだ。これは、Eメールは、Eメールの内容に限らず、使用されたデバイス、開封後のメールのライフスパンとコンテンツ機会といった情報の全てが重要であるということだ。

Return Path(3500万ドル)のような企業は、送信したメールの強力なトラックと計測ツールを提供し、キャンペーンの問題の特定や効果を測定している。Eメール配信、計測と次の行動に結びつくデータ分析の三拍子揃った時に開かれる可能性が、投資家を惹きつけているということだ。

Email Copilot(130万ドル)は、配信の問題に焦点を当てている。5通に1通は、目標の受信者に届かない。全体のメールの開封率、直帰率やその他の指標の分析は、送信者が問題などを予見し、回避することにつながり、リアルタイムでの情報が手に入る。LiveIntent (2000万ドル)は、メール内広告のプラットフォームを展開し、インボックス内での動的な体験を提供している。モバイルのアプリ内のような体験をメール内のコンテンツに持ち込もうとしているのだ。

ベンチャーキャピタルによるEメールへの投資は、全体の一部にすぎない。Eメール市場は、それよりもずっと大きいだろう。今は巨大なマーケティングクラウドの一部となった、補助的なサービス、あるいはプロのコンサルティングサービス企業の買収額を足したら、マーケティングコミュニケーションとテクノロジーの分野がいかに大きいものかが分かる。

このような大型取引から分かることは、メール、アナリティクス、インボックスのパフォーマンスとユーザーエクスペリエンスがそれぞれ向上していて、投資家を惹きつけているということだ。彼らは、メール内の広告枠取引の可能性、またクラウドベースのメールのプラットフォームあるいはインフラへの移行における可能性を注視しているだろう。メールは死んでいないのだ。そして、ビジネスの対人間のコミュニケーション手段だけではなくなったということだ。

メールは動的で豊富なメディアの一部を担い、有効なコンバージョンの手段だ。メールが特別なのは、メールの投資対効果は、長い間他に類をみない水準であったということだ。これからもコミュニケーションツールの筆頭であるだろうし、その重要性は変わらない。Eメールへの継続した投資、グロース、拡充と進化が見込まれる。Eメールは健在だ。そしてこれからも生き残る存在だ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

テクノロジー業界での女性の地位向上のために今日からできること

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編集部記:Leyla Sekaは、Salesforce Deskのシニアバイスプレジデントとジェネラルマネージャーを務めている。

ここ数ヶ月の間に、シリコンバレーで女性が成功できる立場にあるかどうかの議論が多くなされてきた。テクノロジー業界の女性のストック・オプションを含む給料から役員に登用する女性の人数を増やすという内容まで様々な女性の立場の向上を後押しする内容について検討されている。多くの女性が自分の成功を自らの手で獲得し、女性同士で助け合いがなされてきているのは、とても希望が持てるものだ。私たちが自分たちのため、子供たちのため、互いのために、今日から状況を前向きに変えるためにできることはもっとあるように思う。

考え方を変える

男性らしい、女性らしいという意識は幼少期の頃から刷り込まれる。特に女子に対してのメッセージが強い。多くの女子は、賢いこと、特に数学に長けていることをかっこいいとは思わない。ティーネージャーは、女子のイメージにあてはまることを強く望むのだ。私も髪を巻いて、派手な色のトップスにGuessのジーンズを履いていたのはそのような理由からだった。大学の時、プログラミングと経済の授業が選べた時も、もちろん経済を選んだ。プログラミングは男性のものだと思っていたからだ。

女性でプログラミングを勉強していた人も周りにはいなかったし、誰もプログラミングを薦めることはなかった。シリコンバレーで成功するのに必ずしもエンジニアである必要はないが、これから何かを始めようと思うのならプログラミングから始めるのは良い選択だと思う。多くの女性が、居心地が良いと感じる場所から飛び出し、新しいテクノロジーやスキルを学ぶことを躊躇っているように感じる。

主張する

多くの女性は、職場では控えめであるべきだと考えているようだ。ミーティングは男性が取り仕切り、彼女たちは部屋の後方に静かに座っていることが多い。新しく採用した従業員に私が給料を提示すると、男性は増額を要求する時もあるが、彼女らは「ありがとう」と言うに留まる。私も同じように思っていた。私はSalesforceのApp Exchangeの運用を5年ほど任されていたが、私は新たな挑戦を求めていた。同時に不安もあった。私は自社のビジネスユニットを運営したいと思っていたが、そうしたいと言うのが怖かったのだ。会社の中に他にもっと適任がいるだろうと信じ込んでいた。

彼らは私より先を行っているのではないか?思い詰め、会社の外での仕事を探すようになったが、その頃、私は上司とこのことについて話すことを強要された。私の予想に反し、彼は私の背中を押した。彼は私を昇進させ、Desk.comの運用を任せたのだ。彼は私がその挑戦を受ける準備が整っていることを知っていたからだ。私の思い上がりではなかったようだ。他の女性も、頑張ってきたのなら、それ相応の成功を手に入れるべきだと思う。私たちの主張は聞き入れられるべきだ。給料も相応の額をもらい、組織の階段を登る機会があるべきだろう。

自分のブランドを築く

自信があったとしても、自分の地位を更に高めるためにできることはまだあるだろう。毎週ネットワーキングに参加して、自分を支えてくれる理解者を何人も得ることだ。また、タイムリーな問題やトレンドに対して、自社ブログやLinkedInに投稿し、会話に参加することも重要だ。

Desk.comの採用面接を行う際、私は必ず候補者をGoogleで検索し、オンラインでの活動やどのような視点を持っているかを確認する。(なので、自分のチームの人たちには、プロフィール写真に猫の写真を使用したり、知られて恥ずかしいようなことはSNSに投稿したりしないようにアドバイスしている。)

また、Desk.comに関わる社員に対し、自社ブログで自分の考察や専門性を世界に打ち出すことを薦めている。彼らの参加を促すため、毎月自社のブログで最もページビューを得た記事の執筆者に賞品を渡している。

優先順位を付け、自信を持つこと

自分を上手く売り込むことに成功したとしても、それでも時折難しい選択を迫られることもあるだろう。人がどう言ったとしても、一人でできることには限界がある。重要なことを行い、他のことはアウトソースしたり、誰かに依頼したりしなければならない。これは、仕事上でもプライベート上でも言えることだ。繰り返しの作業ではなく、イノベーションを引き起こすプロジェクトを優先しよう。

事実から目を背けないでほしい。女性を取り巻く環境が一晩にして劇的に変わることはないということだ。私たちは、殻を破り、互いに協力し、自分の足で立ち、正当に認め合う文化を作っていかなければならない。私たちの仲間、娘、その後に続く女性たちが、皆、成功を手にすることができるように。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

Bitcoinのブロックサイズ問題、新星とマイニングを巡る攻防


Bitcoinは今重要な分岐点にいる。世界規模で重要な存在として持ち上がろうとしているのと同時に、存在の継続が危ぶまれる問題に直面している。どの問題を指しているかって?愚問だ。いつも通り、全ての問題が一気に噴出しようとしている。私もこれが冗談であって欲しいと思っている。

Bitcoinを為替相場だけで判断する者は、2015年内の相場は225USドル前後を行き来し、非常に安定した期間に入ったと騙されていることだろう。しかし、ここ数ヶ月で多くのことが起きた。それらを、項目ごとに分けると以下のようになる。

Bitcoinのプロトコル変更に関する協議が大きな波紋を呼んでいる。この分野に関わっている人の中には、変更が行われなければ、近い将来、とんでもない被害を引き起こすと予見している。

Bitcoinのブロックサイズを増量するという議論だ。簡単に復習しておこう。Bitcoinは、ブロックチェーンと呼ばれる分散したデータで構成されている。「ブロック」とは、数百の承認された取引履歴の集まりだ。それぞれのブロックは、前のブロックとつながっていることから、ブロックチェーンと呼ばれている。現在、一つのブロックには1メガバイトの上限がある。これにより世界中で行われるBitcoinの取引は、 毎秒、7取引程度に限定する効果を発揮している。しかし、ネットワーク容量の上限を超えた場合、仮想通貨のメルトダウンが起きるのではないかと懸念されている。

ブロックサイズの問題は、Bitcoinのコミュニティーにとって根深い問題だ。なぜなら「マイナー(採掘者)」と呼ばれるBitcoinの取引を認証し、それによりBitcoinの支払いを受ける人は、この変更で利益が減ることになるかもしれないからだ。Bitcoinは、マイナーの統治、あるいは統治の欠如と言える問題に直面している。Michael CaseyがWall Street JournalのBitBeatのコラムに掲載している記事に詳細がまとめられている。

それまで姿を隠していた(潤沢な資金を持つ)Bitcoinスタートアップの21が、世界を制覇するための計画を公表した。

Andreessen HorowitzのパートナーBalaji Srinivasanが、1億1600万ドルのスタートアップで大胆な計画を立てているとは思っていたが、その通りだったようだ。彼の目標は「全ての手をBitcoinのマイナーに」ということだ。21は、独自のBitcoin採掘チップを開発していて、直に次世代型のサーバーやモバイル端末に導入することを目論んでいる。「採掘機能を埋め込むことで、最終的にBitcoinは、CPU、帯域幅、ハードドライブの容量、RAMといった基本的なシステムリソースと同列のものとして確立することになる」と記している。これが大胆でないと言うのなら、他に何があるのだろうか?とても感嘆した。

しかし、この大胆な計画に懐疑的な人も少なくないようだ。

 (訳:21チップの導入による経済への影響。スケールと中央への集約による負の経済は大きな問題だ

もちろん、それには理由がある。まずBitcoinの採掘には相当なエネルギーが必要のため、モバイル端末への搭載が適当かどうかは疑わしい。Srinivasanは「採掘機能が埋め込まれるということは、どの端末でも、1Satoshiを特定のアドレスに送信するだけで、ネットワークの承認ができるようになる」と伝えている。しかし、今はまだ通常のBitcoinのプロトコルの性質上、そのような取引が処理されることはないだろう。また、21.coは当初のビジネスモデルからピボットして、このモデルに行き着いたことも考慮に入れておくべきだろう。「この企業は、熾烈なBitcoinの採掘ビジネスで、利益を得る困難さに直面し、ピボットせざる負えなかった」。

しかし彼らの登場は、喜ばしいことでもある。Bitcoinの熱烈な信者は、未だに定義が曖昧な「機械と機械間のマイクロ取引」に無限の可能性を感じている。(これは悪いことではないと思う。私自身もこの可能性に期待している部分もある。)21の発表があるまで、何百万というデバイスがBitcoinを利用して、取引を行う世界がどのように実現するのか、誰も明確にイメージすることができなかったのだ。

(ハードウェアの採掘チップではなく、安い電力が利用できる場所をハブとしてBitcoinを採掘し、Bitcoinウォレットのソフトウェアを介して仮想通貨を端末に送付すれば良いと思う人もいるだろう。それも一理ある。ただ変動する数のデバイスに通貨を絶え間なく送るという採掘プロセスは、想像以上に柔軟で分散できるものなのだ。中央となるハブを必要としない独立した採掘プールでは特にそれが顕著である。)

世界中の多くの人が魅力的に思う、初めてのBitcoinが使えるアプリがようやくローンチされた。

Bitcoinの熱狂的なファンでなくてもBitcoinが便利だと分かるアプリの誕生を多くの人が待ち望んでいた。そして遂に、一つのサービスが誕生した。何千というBitcoinの開発者が額に手を当て「なんで今まで思いつかなかったんだ?」と思うような、驚くほどシンプルなアプリだ。

MeerkatやPeriscopeと同じような流れでStreamiumが誕生した。「ライブ配信でお金を得よう」というコピーが付いている。Bitcoinウォレットのアドレスを掲載するだけで、世界中のどこにいる視聴者からでも代金を受け取ることができる。PayPalや銀行口座、クレジットカードの認証といった仲介サービスは何ひとつ必要ない。

多くの人が使うようになるかと聞かれたら、そうではないかもしれない。しかし、Bitcoinの魅力が何であるかを伝えるには充分だ。Bitcoinを使うことで便利になる状況を想像することができるだろう。例えば、リモートで何かを学んだり、重大な出来事が行われている現場の中継を見たりする時の取引が簡単になる。難しい技術的な知識は必要ない。

(Streamiumがアルゼンチンで誕生したのは、偶然ではないだろう。今のところアルゼンチンでは世界中のどの地域よりも、Bitcoinが主要な決済手段として受け入れられている。

ウォール街がBitcoinを試し始めた。

ニューヨーク証券取引所は、Bitcoinの指標をローンチした。NASDAQは、「ブロックチェーン技術を活用」する計画を発表した。Goldman Sachsは、BitcoinのスタートアップCircleの 5000万ドルが集まった資金調達ラウンドに参加した。勝算があるのだろう。しかし、同時に懸念もしている。

Bitcoinの採掘は、Bitcoinの重荷であり、頭痛の要因でもある。

私は、仮想通貨に楽観的な見方はしていない。Bitcoinの未来は不確実なもので、大惨事を引き起こす可能性もある。そして、それはBitcoinの採掘が要因だ。

(訳:同感。ビットコインのファンとしては、インセンティブに依存しないことに本来の意味がある。でなければ、名が知られていないCitiBankだ。)

採掘というのは、考えてみると、理解しがたいものだ。Wikipediaによると「理論上は成立しないが、実践することで成立する」と書いてある。データセンターは世界中に分散していて、そこには誰かが制作した無数のチップの大群が、毎秒何千兆ものHashcashの計算を猛烈な勢いで行っている。新しく発掘した仮想通貨と引き換えに、Bitcoinのネットワークを支えているのだ。

結果的にBitcoinは、極端に採掘を集約したい流れとマイナーによる重要なプロトコルの進化を妨げる流れの中で上手く舵を取らなければならない。このように聞くと、採掘はBitcoinのアキレス腱のようだ。正確には、Bitcoin自体が致命的な弱点のあるヒーロー、アキレスなのだ。採掘はBitcoinを動かすエンジンで、このコンピューター主導のネットワークを強力なものとしている。そして採掘のインセンティブが、一つのコンピューターで始まった奇妙なソフトウェア実験を世界規模の仮想通貨のネットワークに成長させた。そして遂にBitcoinのネットワークは何十億ドルの価値を持つまでになった。

(Bitcoinとそれに類似するネットワークの魅力は、完全に分散されたシステムが持つ確固たる力にあると思う。 電子通貨に限ったことではない。他にもこのようなシステムが成功している事例が出てきている。)

(訳:Satoshiの法則:全ての一点集中型のシステムは崩れ去り、分散型のシステムに置き換えられる。)

しかし、やはり同時に「採掘の問題が気になって眠れない」とBitcoinの中核となる開発者Gregory Maxwell も、昨年私が参加したカンファレンスで認めていた。彼と仲間の中核となる開発者は、Bitcoinの日に日に大きくなる傷口を修復して、革新を続けようと 、ある程度は動いているようだ。だがBitcoinのマイナーは彼らの足を引っ張っている。マイナーが全体のネットワークの前進を妨げないことを期待しよう。実に興味深い時期に私たちはいる。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

「○○の死」は、殆どが過大評価

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編集部注: Raghav Sharmaは、消費者とファイナンシャルアドバイザーを結びつけるサービス、GuideVineの共同ファウンダー・CEO。彼は起業家、コンサルタント、銀行家でもあった。

テクノロジーの世界では誰もが何かの「死」を熱望する。

少なくとも、それがメディアを見てわかることだ。ゲーミフィケーションの「死」、ケーブルの「死」、ビデオゲームの「死」、デトロイト自動車産業の「死」。不動産業、自動車ディーラー、現金、紙 ― すべてがビジネス殺人の被害者だ。いくら気取ってみても、人は殺戮が好きだ。

人はカオスも好きだ。他に、あの「破壊」妄想をどう説明できようか?TechCrunch自身、毎月30以上の新しいスタートアップを紹介しており、その多くが既存業界を「破壊」したいと考えている。TechCrunch Disruptイベントは言うに及ばず。誰かに「あなたはその分野を破壊している」と言うことは、今や最大級の賞賛だ。

それはどうもありがとう、もちろん私は既存の企業を破壊します!ぶち壊すのを手伝ってくれますか?

しかし困ったことがある。CEOとして、私は何かを死に追いやることを目的としていない。たしかに、優れたスタートアップは人に汗をかかせる。非効率と時代遅れと自己満足の中で、山ほどの混乱と反省を生みだす。

しかし最終的には、もうかる業界を破壊して作り直すのではなく、成功するスタートアップは業界を近代化し、既存企業を向上させつつ顧客体験を根本的に改善することを目指す。私は、犠牲者が出ないと言っているのではないが、何かを殺すことより、人々にとって物事を良くすることに集中したいだけだ。そして、最終消費者に良い情報とその情報を使う力を与えることは、現行の業界を根本的に改善する結果につながる。

われわれが「破壊」と言う時に、何を本当に言いたいかを考えてみるとよい。1995年にClayton Christensenがこの用語を提唱した時、彼が意味したのは、全く新しい市場を創造し、最終的に従来のテクノロジーに取って代わるイノベーションを意味していた。旧来の企業は顧客と売上を失い、フェードアウトする。

しかし、昨年New Yorker誌でJill LeporeがChristensenの理論に反論した。彼女は、Christensenのフレームワークは、後に誤りであることが証明される事例のいいとこ取りをした結果だと指摘した。Leporeによると、イノベーションを起こせないとされる企業は、テクノロジーに遅れないために自社製品を漸進的に変化させることに何の問題もないという。

何を信じるにせよ、真の破壊は驚くほど稀である。Netflix(Blockbusterの冥福を祈る)、Craiglist(三行広告お疲れさま)、WhatsAppとSkype(さらば国際通話カードと「長距離電話」)等、実際に従来品を置き換えたものの隠には、消えていったあるいは伝統的業界と共に走っている何百というスタートアップがいる。現行プレーヤーたちは、死んでいく代わりに、あらゆるリスクをスタートアップにとらせた後、彼らのアイデアを使って自分たちの製品を近代化するために、リバースエンジニアリングをしたりスタートアップを丸ごと買収して生き延びる。

では、現在最も魅力的で最も評判が高く世界を変えているスタートアップについて話そう。Twitterはジャーナリストに取って代わらなかった。情報を従来と異なる補完的な形で流布しただけだ。TruliaとZillowは不動産屋に取って代わらなかった。人々が既に絞られた候補リストを持って不動産屋へ行き、その先を専門家に任せるようになっただけだ。誰も自動車ディーラーを「破壊」しなかった。TrueCarとAutoTraderは、消費者が車を比較しやすくし、ディーラーは車に適切な価格をつけ在効庫を管理するのが楽になった。

殆どのウェブサイトで、PayPalは従来のクレジットカードと共に選択肢の一つとして置かれている。ClassPassは消費者がフィットネスクライブを試せるようにしただけだ。ZocDocは人々を認定医師とつなぐ。そして、Seamlessが唯一破壊した物は、玄関ドアの下に差し込まれるテイクアウトメニューのチラシだ(私はこれを永遠に感謝している)。

Elon Muskでさえ、Teslaでデトロイトに取って代ろうとしていないと言っている。彼は電気自動車を標準化して遍在化させるためにデトロイトの助けを必要とすることになる、だから特許をオープン化した。おそらく彼はよくわかっている。

苦闘しているのは、本気で業界全体をぶち壊そうとしている会社のようだ。金融サービスほどそれが真実であるところはない。昨年Accentureは伝統的銀行に対して、若い顧客の10人に4人は無店舗銀行に切り換えるつもりだと緊急警告を発したが、それはネットに強く流行に敏感な顧客10人のうち6人は乗り換えないことを意味している。

あらゆる顧客にとって本当に必要なのは、シームレスなテクノロジーであり、銀行はそれを自分で作ることもパートナーから手に入れることもできる。そのパートナーはDwollaかもしれない。Dwollaは規制のハードルを越えて今月BBVAと提携し、 Simpleの後に続いた。

あるいはLearnVestは、資産運用業界を破壊する大計画を持っていた。同社は先月、LearnVestのテクノロジーを活用したいNorthwestern Mutualに買収された(ただし私は彼らがNorthwestern Mutualの現在インフラをオーバーホールするつもりはないと思う)。

Andy Rachleffは、昨年彼のロボアドバイザー会社、Wealthfrontに「破壊」の御旗を掲げ、思いを語る文章の中で40回以上この単語を使った。現在ロボアドバイザー上位10社で90億ドル以上を管理しているのはすばらしい成果だ。しかし残念ながら、2012年に全世界で管理されていた64兆ドルには、まだほど遠い ― 1%の100分の1である。
造反するロボ・アドバイザーたちの管理パーセンテージが伸びるのを見る機会はおそらくないだろう。なぜなら先月Schwabは、驚くほどWealthfrontそっくりのサービスを提供開始したからだ。WealthfrontのCEO Adam NashはSchwabを非難し、彼らの料金体系は倫理にもとると主張した。しかし、それは真の問題から目をそらしているように思える。SchwabはWealthfrontを「破壊」し返しただけだ。

ロボアドバイザーの死という声が聞こえてくるのも当然だ。

こと重要な、熟練を要する仕事、例えば家探し、信用管理、健康管理、薬の処方、そしてもちろん資産管理については、生きていて息をしている専門家の役割が必ず存在する。

スタートアップが社会に大きな価値をもたらさない、と言っているのではない。新たなテクノロジーは足手まとい ― 顧客サービスが悪く、水準以下の商品を提供し、効率の悪い会社 ― を廃業に追いやり、最も価値があり有用な会社を残す。重要なのは破壊ではなく、消費者のために業界を近代化して価値を高めることだ。

これを業界再構築の機会と促え、無邪気に業界をぶち壊そうなどと考えないスタートアップは、長い目で見て可能性がある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Microsoft、Facebook、Google、Apple―オンライン音声通話を制するのは誰か?

2015-05-22-voice

編集部: この記事はモバイル・アナリティクスのInvocaのセールス、マーケティング、サービス担当執行副社長Eric Holmenの寄稿。

Facebook、Google、Appleその他のビッグ・ネームたちがにわかにボイス・コミュニケーションの世界に殺到し始めた。特にモバイルでの音声通話での競争が熱くなっている。人間にとって一対一の音声会話がどれほど重要であるかに皆が突然気づいたかのようだ。ソーシャルネットワークサービスの中で音声通話こそもっとも価値の高い分野だ。

テクノロジー企業は音声分野で激しい陣取競争を始めている。既存のVoIPプロバイダばかりでなく、テクノロジーの最先端を行く巨大企業が先を争って参入を図っている。Microsoftはいち早く音声通話の重要性を認識し、2011年にSkypeを買収して地歩を固めた。Skypeは現在、1日当たり490万のアクティブ・ユーザーがおり、これはFacebookの8億9000万に比べれば少ない。しかしSkypeはFacebookのユーザーとは別種の、いわば“Social 3.0”的な利用法だ。

Facebookは2010年以降、電話事業に参入するのではないかという噂を打ち消してきた。しかし音声通話、特にモバイル音声通話を抜きにして「人々を結びつける」ビジネスは成立しえないとすぐに悟ることになった。最近FacebookからリリースされたFacebookの公開情報を利用して発信者の身元を表示するHelloアプリは、モバイル音声通話におけるソーシャルネットワークの価値を高めるものだ。Helloのスマート検索を利用すれば、ユーザーは簡単に必要な相手を探し出し、ワンタッチで電話をかけることができる。〔メッセンジャーには今日、チャットIDが導入された。〕

Facebookのメッセンジャー・アプリの成長は目覚ましいが、収益化のためにはテキストや画像に加えて、本当に役立つ音声通話機能の統合が欠かせないだろう。実際、音声通話関連でFacebookはHello以外にも努力を重ねている。昨年2月にはWhatsAppを190億ドルで買収して世界を驚かせた。当時、この買収価格は非常識だと批判されたものだが、今やWhatsAppは音声通話機能も含めた総合的なコミュニケーション・ツールに進化しており、理にかなった買い物だったことが明らかになっている。

しかしこの分野で大きな努力を払っているのはFacebookだけではない。Googleもコミュニケーションのあらゆる分野の制覇を目指して全力を挙げている。たとえば、Project Fi は携帯キャリヤと提携して無線インターネット接続のカバー範囲、料金、サービス内容に革命を起こそうという試みだ。Google Voiceの次の段階といえるだろう。

一方、Appleは音声通話に関しては自社独自のハード、ソフトの改良に専念している。YosemiteとiOS 8に導入された電話連携機能(continuity)はオンライン音声通話とスマートフォンでの通話をシームレスに統合することで、Appleをこの分野のトップに立たせた。ユーザーはiPhoneにかかってきた電話をMacで引き継ぐことも、その逆も簡単にできるようになった。

さらにAppleはiPhoneのエコシステムにAppleウォッチを加え、コミュニケーションのマルチ・デバイス化をさらに進めている。ユーザーが一つのデバイスないしプラットフォームに閉じ込められることを望まないことをAppleはよく認識しており、ユーザーの持つあらゆるチャンネルでシームレスに会話が継続できるよう機能を強化している。.

こうしたトップ・プレイヤーは音声通話の強化に百億ドル単位の巨額の投資を行っている。この分野の規模はきわめて大きいので、これを制するものは投資額をはるかに超える見返りを期待できるわけだ。 この音声通話の軍拡競争で誰が勝者となるのか、今後も注意深く見守る必要があるだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

停滞ステージをいかに乗り越えるかが、スタートアップの命運を分ける

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編集部記Eric Paleyは、Founder Collectiveのマネージングパートナーである。

シード資本が口座に入金されると、どのスタートアップも楽観的な思考に支配される。ファウンダー、チームメンバー、投資家、全てが、一つのビジョンに心を踊らせ、そのスタートアップが世界を変えるような大企業に成長すると信じている。

全てが順調に行って、プロダクトの結果が素晴らしければ、その楽観的な思考は、真の幸せに変わる。大勢から集めた賭けに皆で成功することほど喜ばしい体験はないだろう。どのスタートアップの理想であり、起業した者全員が熱望していることだ。

しかし、壮大なビジョンの実現を約束して資金調達を行ってからユニコーン企業の評価を得るまでの過程で、どのスタートアップも必ずと言って良いほど、忍耐を必要とする試練に立ち向かうことが求められる。この「停滞ステージ」が長いほど、スタートアップの重要な人間関係に負荷がかかり、誰もが思い描いた理想像が遠のいていくように感じる。

ストレスは破綻する大きなリスクを招く。投資家にもファウンダーにもストレスがかかるが、共同ファウンダー間、あるいはマネジメントチームのメンバー内で、その停滞ステージから抜け出すために考えるソリューションが違う場合は注意が必要だ。このステージでの行いが、そのスタートアップが生き延びるか、息絶えるかの道を決定するだろう。

「停滞ステージ」にいることを自覚する

根気強さが求められる停滞ステージは一般的にはこのような様子だ。スタートアップが資金調達に達成した後、遅れはあったものの、やっと市場にプロダクトを出すことができた。全員がそのプロダクトがヒットすることを期待しているが、結果は落ち込むほどではなかったが、成功とも呼べないものだった。

しかし心配することはない。チームは、何を直すべきかを知っていると今のところは思っている。そもそもローンチしたのは使用できる最小限のプロダクトであり、ここでの目的はそこから学びを得ることだ。遅れはしたものの、優秀な人材からたくさんの学びを得ることができた。プロダクトの修正するのにいくらかの時間が必要だ。

またいくらか遅れが発生したものの、新しいバージョンをリリースした。結果は前回より良かったが、誰もが期待していた目標にはまだ遠い。このプロセスが繰り返され、その間にチームメンバーの幾人かは去っていった。何を直せば良いか分かりそうな人を採用して救世主の認定Tシャツを渡すが、ピースが増えても複雑なパズルを解くことができないように感じている状態だ。

この例は、プロダクトに焦点を当てているが、的確なセールスのアプローチ方法、マーケティングチャネルの開拓、オペレーション計画、ビジネスモデル、サプライチェーンを探しあてるのにも、同じように停滞を余儀なくされることがある。会社の試練が何にせよ、明確な進捗が感じられない場合、ファウンダーとそのスタートアップは更なる忍耐を強いられることになるだろう。

停滞ステージから抜け出す

残念ながら、どんなに順調に見えるスタートアップでもこのような試練を通らなければならない。ファウンダーと役員には、この避けられない停滞スタージを共に抜け出すにはどうしたら良いかを考える必要がある。

周りのリーダーシップへの信頼度がこのステージを攻略する鍵となる。もし投資家やチームメンバーが芳しくない結果や、繰り返されるプロセスの中で、リーダーへの信頼を失うことになったら会社はとても不安定な状態になるだろう。

停滞ステージでできる最大の間違いは、問題の存在を否定することと誤ったソリューションで全てが上手くいくと装うことだ。

投資家は助けや必要な支えを提供することもできるが、問題に対する意見が対立したり、問題解決の失敗が繰り返されたりすることで、ファウンダーへの信頼が失われていく。ファウンダーが本当にソリューションを持っているのか、そしてそのスタートアップを導くことができるのか、疑念が生まれてくる。疑り深いチームメンバーは、他の仕事を探し始めるだろう。不信感がスタートアップをゆっくりと追い詰めるのだ。

停滞ステージを切り抜けるためのポイントをまとめた。

短い方が良い。最も重要で最も分かりやすいことは、停滞している期間は短い方が良いということだ。前に進んでいる明確な指標があれば、物事を進めるのが簡単になる。小さな成功でも、それを認識することがとても重要だ。大きな課題に対して常に前に進んでいるという感覚は、社内に問題解決に近づいているという自信を与え、忍耐を受け入れられるようになる。停滞ステージを切り抜け、一段階進んだという成功体験は、次の停滞ステージを耐え抜く力を会社に与えることにもなる。

共通認識を持つこと。2つ目は、役員とチーム内で会社が取り組むべき課題を正確に認識することだ。誰かが進捗があったと感じていても、投資家やファウンダーやその他のチームメンバーが、解決すべき課題を異なる視点から見ていて、会社の進捗につながっていないと否定されることほど、ストレスの貯まることはない。

プロダクトに対して近眼にならないこと。 3つ目は、プロダクトの進捗について共有する時、投資家のプロダクトに対する反応を過大評価しないこと。投資家はプロダクトの専門家ではない。彼らは、会社を前に進めるのならどんなプロダクトの仮説に対しても大抵、前向きな反応を示すだろう。そして、カスタマーの反応が芳しくないプロダクトの変更バージョンを何回も見せないことだ。

プロダクトにおける変更点は、仮説であって進歩ではない。投資家は、実質的な結果を見るまで喜びはしないだろう。何度も思わしくない結果しか残せないプロダクトのバージョンを見続けたら、どこかの時点から、投資家はファウンダーへ不信感を募らせることになる。ファウンダーのプロダクト戦略の考え方が、そのスタートアップを次のステージに進めるのに最適ではないと思うようになるだろう。

停滞ステージでは、資金調達は行わないこと。停滞ステージにいる間は、資金調達は絶対に避けるべきだ。既に投資している投資家は新たなチェックにサインするのを躊躇うだろうし、他の投資家に対しても自信を持って投資を薦めることができないからだ。資金調達中、どこかの時点で何かが順調に進まず、停滞ステージに突入することが必ずあるということを覚えておくべきだろう。

そのことを念頭に入れ、成功を確信している時期に試練に耐え抜くのに必要な資金を調達することだ。停滞ステージで資金が尽きることはスタートアップにとって致命傷となる。

生き抜くこと。私は、停滞ステージを何年も耐えられる企業も数ヶ月で耐えられなくなってしまう企業も見てきた。停滞ステージは不可避なもので、投資家、ファウンダー、チームメンバーとの信頼関係という面で、破綻する高いリスクに晒される期間であり、この期間がビジネスの成功と失敗に大きな影響を与える。

この期間に投資家やチームメンバーからの信頼を失うと、重圧に耐え切れずに白旗を上げることになる。共に助け合い、課題とソリューションの計画を明確にし、一定の進捗を見せ続けることができれば、成功のために必要な停滞ステージの期間を無事乗り切ることができるだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

オンライン講義のMOOCが大学に取って代わることができない理由

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大学はもう存在していないはずだった。過去10年間、高等教育はシリコンバレーの標的だった。世界的な金融危機以降ずっと、この業界は倒して刷新しなければならないものだったのだ。

しかし何年もの努力の甲斐もなく、2015年になった今でも、単位の取得やコースを履修する方法は何ひとつ変わっていない。

MOOC(Massive Open Online Cousesの略、大規模に開かれたオンライン講義)は、新しいオンライン教育の流れを牽引する存在だった。2011年から2012年ごろに人気を博し、高等教育は追いやられることになるという論調が広まった。だが、MOOCは失敗したようだ。認知度を表したグラフを見てほしい。

CourseraとUdacityのGoogle検索トラフィック

CourseraとUdacityのGoogle検索トラフィック

 

Google Trendsを使って、MOOCで最も知られているCourseraとUdacityを検索してみると、2つの検索トラフィックは横ばいのままで、新規のユーザー獲得が弱々しいことを示している。(VCはスタートアップの口コミでの認知度を把握するのに検索トラフィックを指標とすることが多い。友人から新しい企業について聞いたら、企業名をGoogleかApp Storeで検索する人が多いからだ。)

どのファウンダーも反論するように、トラフィックという一つの指標ではその企業の全てを計ることはできないが、この指標が最も重要であることには違いない。特に教育のような分野では、多くの人に認知されて、実績が証明されることがスタートアップの成功に直結する。

改革はどうなってしまったのだろうか?教育は間違いなく私たちの社会生活において重要な活動だ。私たちの経済は知識で成り立っていて、現代社会の繁栄を支えているといっても過言ではない。この課題について大学アカデミアの頂上にいる人から、全国のカラフルなコワーキングスペースにいる人まで、多くの抜群に賢い人たちが取り組んでいる。どこで何を間違えたのだろうか?

世界が気が付いたことは、人は人らしい行動を取り続けるということだ。スタートアップの世界ではこの事実に直面することが良くある。MOOCの教育プロダクトとそれを用いて学習する過程に、ユーザーのモチベーションを維持し、学習の意義を提供することに失敗したため、大学のように人々を学習に集中させ、教育を施すことができなかった。

モチベーションという課題

MOOCへの批判を一つ取り上げる。コースの修了率が驚くほど低いことだ。コースにもよるが、サインアップから修了までの割合が一桁であることが頻繁に起きている。履修するか離脱するかの、コースが始まった最初の週で大幅な離脱が見られるのだ。

新しい形でオンライン教育を提供するMOOCは、どちらの意義も失ってしまった。授業を無料にすることで、コースの内容をつまらないと感じたり、難しいと思ったりした時、続けるインセンティブが少ないのだ。

しかし、この数値でMOOCを判断するのはそもそも間違っている。ウェブサイトの直帰率と同じだからだ。そこは考慮に入れるべきだ。

ただ、モチベーション(そして忍耐)は、学習に欠かせない要素だ。離脱率はMOOCの教育プロダクトの品質を示す数字でもあるが、そもそも大人が継続的な学習に対して力を入れることの限度を示している重要な指標だとも言える。

ソフトウェアスタートアップには受け入れがたい内容であるのは理解している。スタートアップ業界におけるスキルを高めるために自発的に学習する人の割合は大学以外の場所では、世界のどこよりも高いだろう。しかし、大学が生涯学習を人々に教え込もうと多くの時間を費やすのには理由がある。多くの人にとって、それは自然とできるものではないからだ。家族や仕事に従事すること(つまり、人生)は、継続的な学習に時間を費やす重要性を軽く上回るのだ。

時間をかけることができないのもそうだが、開かれたオンライン教育のもう一つの課題は、学習内容を直接的な結果に結びつけられなかったことにある。つまり、仕事でのパフォーマンスの向上、昇進、新しい職を得るということだ。プログラミング以外でも投資に対して高いリターンが期待できそうな独自の分野がありそうだが、働く人のキャリアと直結するように制作されたコースは少ないようだ。

Google Trendsや他のメディアの情報から、MOOCはアメリカ以外の地域で成功していることが示唆されている。スキルを高めるために経済的なインセンティブが強くある一方で、欧米のように教育環境が充実していない地域では上手くいっているようだ。

自発的なモチベーションと環境がないと、オンライン教育プロダクトは効果を発揮しない。オンラインコースの多くは、学習効果と経済的な文脈で明確な付加価値があると認識されない場合、本や記事を読むのと同列で比較され、注目を得るのは難しくなる。

学習の意義

モチベーションの問題は、最初から分かっていたはずでもある。図書館や本は、全米のどこでも1世紀以上前から利用することができた。動画講義は本より良い学習手段かもしれないが、オンラインやメールで講義を販売していた企業も長いこと存在していた。高額なものではあったが、教育を求める人はそれを手に入れる手段があったのだ。

開かれたオンライン教育は始まったばかりであるが、これまでの試行錯誤の中で、モチベーションの他にもうひとつ必要不可欠な要素も分かった。それは、学習の意義が見出だせるかということだ。つまり、学生の日々の活動の中で学習活動を最も優先し専念すべき活動であること、あるいはその日の中の思考活動を学習に優先的に充てる理由があるかということだ。

学習の意義とモチベーションは深く関連している。毎日学習を意識的に決断して行うのではなく、必ずデフォルトで学習に時間を費やすということだからだ。さらに学習に集中することで、学習内容や理論の中につながりを見出し、知識をより深く掘り下げることができる。

大学に物理的に通うということは、自動的に学習することが優先される。大学のキャンパス、授業のスケジュール、キャンパスでの学生たちの集まりは、私たちの意識を学習へと向ける力があるのは間違いない。

また、授業料に大金を支払っているために経済面からの意義も生まれる。教育機関のカプランやフェニックス大学のようなこれまでオンライン教育を提供してきた大学に学生が通うのには経済的な意義もあるからだ。学生が教育を受けるのに支払っている料金は安いものではない。私たちはお金に敏感だ。特に何千ドルという額が一度に銀行口座から去ったり(あるいは、学生ローンとして累積したり)するのに注意深くなる。

新しい形でオンライン教育を提供するMOOCは、どちらの意義も失ってしまった。授業を無料にすることで、コースの内容をつまらないと感じたり、難しいと思ったりした時、続けるインセンティブが少ないのだ。物理的に通わないために、友人が授業への出席を促したり、パフォーマンスが悪ければそれを咎めたりする社会的な効果も生まれない。

コースを受講しているという感覚を与えるため、いくつかのプロダクトは複数の生徒が同時に講義を受ける形式を取った。Courseraが力を入れているこのモデルは、少なくとも表面上は成功しているようには見えない。オンライン教育の持つ便利さも阻害しているとも言える。

開かれた教育は必要だ。教育の内容は、できるだけ多くの人に、できるだけ低価格で届けるべきだ。知識は無料であるべきものだ。しかし開かれているからといって他のウェブサイトと同様に置かれていては、生徒は人生の中で学習を優先して取り組むべき理由が見出だせない。

これまでの結果から、まだ誰も答えを得られてはいないようだ。ウェブが誕生してから、オンラインでのコミュニケーションツールは充実し随分と使いやすくなった。しかし、数十人のメンバーで使用できて、知識を深めるためのコミュニティーを支えられる高品質のツールはまだ無い。競合となる伝統的な教育機関に対抗できる、学習の意義を認識できる仕組みをウェブに持ち込む必要がある。

教育2.0は起きるのか?

EdTech(教育テクノロジー)のようにスタートアップが活気づいている分野は他にもあるが、EdTechは急いで達成できるものではないようだ。買い物やオンラインで人と交流するのとは違い、多くの人にとって学習することは自然とできる活動ではない。学習サイトを作れば、勝手に人がやってくると考えるのは早計だ。

大学での体験に匹敵するサービスを作るために、インターネットの特徴を最大限に活かした上で、モチベーション維持の方法や学習の意義を伝える方法を適切に組み合わせたサービスを考えなければならない。

これを代表する企業も生まれてきている。例えば、Duolingoは定期的な反復学習とゲーミフィケーションの要素を合わせ、語学学習者に継続的なコースの学習を促している。このモデルは、物理的に学習している時の要素を取り入れていて、学生がコースを続けるのに必要なモチベーションレベルを維持できているようだ。数年後、本当に上手くいったかどうかの結果が分かるだろう。

教育は、私たちの社会全体の繁栄に直結する重要なものだ。シリコンバレーがこの手付かずの大きな課題に対して、リソースを投じるのは正しいことだ。しかし、人間をあるがままに理解した上で、個人がそれぞれ成し得たいことを達成するのを助けるツールやテクニックを探し出す必要があるだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

自動車業界は1985年のIBMと同じ道を辿ろうとしている

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編集部記:Tien Tzuoは、Zuoraの共同ファウンダーでCEOだ。

モバイル端末の契約台数は、全世界の人口を超えつつある。インターネットにつながる次世代型の端末はどのような形をしているのだろうか?ヒント:それは4つのタイヤが付いているだろう。

Gartnerは、2020年までに2億5000万台の車がインターネットに接続するようになると予測している。それはつまり、公道を走る3台に1台はインターネットとつながっている計算になる。その頃までに、車のデジタル自己診断、情報とエンターテイメントを兼ねたインフォテインメントチャンネル、洗練されたナビゲーションシステムの市場規模は、現在の470億ドルから2700億ドルに膨らむだろう。

唯一の問題は、現在の自動車業界は1985年のIBMと同じ道を辿ろうとしていることだ。

自動車業界は、ダッシュボードをGoogleとAppleに明け渡すことに合意しているようだ。

1985年、ビッグブルーの愛称を持つIBMは、40万人(今日のAppleの従業員数のおよそ5倍)を雇用していた。最も近い競合のDigital Equipmentでも、およそ4分の1の従業員数しかいなかった。当時のAppleは、歴史上最も有名になった人事判断、スティーブジョブズの解雇を行ったばかりで混迷していた時期だ。パーソナルコンピューターの市場規模は誰もが小さいものだと思っていたが、IBMのパソコンはその市場を独占していた。彼らのパソコンに対応していることが業界のルールだった。市場優位性は明確だった。IBMはハードウェアを掌握し、あとはまともなグラフィックスを追究したユーザーインターフェイスを必要としているだけだった。

同じ年、Microsoftにはおよそ2000人の従業員がいた。彼らはWindowsを市場に投入した。IBMのパソコンビジネスの終焉の始まりだった。1990年代初頭には、IBM社製のパソコンはルールではなく、その他大勢となり、業界の全てはWindowsを中心に回るようになった。

それが起きた後、自分のパソコンがIBM社製のパソコンかどうかは問題ではなくなった。Windowsを使うことができれば、それで良かったのだ。1996年には、Microsoftの市場規模は720億ドルまで上り、一方のIBMは600億ドルに留まった。

Horace Dediuのこの表が全てを物語っている。

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Dediuが指摘するように「プラットフォームを掌握しなければ、パソコンのハードウェアはコモディティに過ぎない。それでは利潤も少なく、競争は激しい。自社の運命をコントールすることはできない」。

現在の自動車業界もまさにこの問題に直面している。IBMはオペレーティングシステムをMicrosoftに独占されたため、競争に敗れた。自動車メーカーは彼らと同じ道を辿ろうとしている。カスタマーが良し悪しを判断するだろうが、自動車業界は、ダッシュボードをGoogleとAppleに明け渡すことに合意しているようだ。

特に争いも起きなかった。トヨタ自動車を含め、反対している企業も数社あるが、20社以上の自動車メーカーはインフォテインメントとメッセージ機能において、権利をAndroid AutoやApple CarPlayのいずれか、あるいは両方に渡してしまった。これは最終的に車の鍵をシリコンバレーに明け渡すことになりかねない。車はコモディティになり、その車がCarPlayやAndroid Autoを搭載していれば、どの自動車で運転するかは気にならなくなるかもしれない。

歪なクローズドのシステムが形成されることが問題なのではない。常識的に考えるとこのままでは車がタイヤにのったモバイル端末になってしまうことを懸念している。ドライブという体験を追求することの重要性を訴えたい。

あらゆるセンサーを連携させ、それぞれの車が他とは違う特別なものであると訴求することができたらどうだろうか?ドライバーに、どんな環境にも対応した走りができることを訴求したり、燃料を効率的に使うスマートシステムを採用し、財布にも環境にも優しい車であると訴求したりすることはできないだろうか?

自動車業界は、Google MapsやSpotifyに留まらず、更に先のビジョンを提示する必要があるだろう。それはどのようにできるだろうか?

  • 新しいサービスを導入し、ドライバーに継続的に新鮮な驚きを提供する。TeslaのModel Sのファームウェアの変更ログの文書は興味深いので、ここから見てほしい。

    Teslaのドライバーは、ここ数年の間に、車が音声での指令を認識したり、リアルタイムの交通情報を取得して自動的にサスペンションを調整できたりすることを知り驚いただろう。

  • ドライバーの運転パターンを認識し、より適切な運転を促す。例えば、急なブレーキ、突然の車線変更やスピードの出し過ぎなどを防止することができるようになるだろう。Automatic は、危険な運転パターンをみつけて、注意を促すデバイスを制作している。このデバイスは、自動車の自己診断ポートとつなげて使用する。10代のドライバーを持つ親にとっては注目のデバイスだ。また、エンジンのアラートを解析したり、燃料効率を向上させる通勤経路を提案することもできる。

  • 走行距離と連動した、低価格の保険とメンテナンスパッケージを提供する。 Metromile は、走行マイルに応じた保険を可能とするデバイスを販売している。カスタマーは年間500ドルほど節約することができる。彼らは最近Uberと提携し、ドライバーはプライベートで走行した分の保険料だけを支払うことができるようになった。

  • ディーラーを支払いカウンターからジーニアスバーに変える。 GMのOnstarサービスでは、車の診断結果を毎月ディーラーにメールで送付している。ドライバーが店舗に到着する前から、車の詳細を手に入れ、準備を整えることができる。

  • 自宅やオフィスとつながるスマートな車にする。 Mercedes-Benzのドライバーは、車のダッシュボードからサーモスタットNestを調節することができる。AT&Tのドライバーは、ドアのロックを解除したり、自宅のセキュリティーカメラを確認したり、オフィスのコーヒーポットのスイッチを入れることができる。

最も重要なのは、自動車業界がドライバーにドライブの楽しみを改めて訴求する施策を行うことだ。1985年の二の舞いであってはならない。自動車業界は、ダッシュボードを掌握できないのなら、IBMと同じ運命を辿るだろう。

写真:Erin Cadigan / Shutterstock.com

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

ユニコーンのもっと良い見つけ方を考える

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編集部記:Tom Jacobsは、Kepler AnalyticsのCTOを務めている。

もちろんAirbnbは何十億ドルに値する。何にも使用されていない、価値ある不動産が多くあるのだ。賃料を捻出するのに苦労している人も多くいるし、ホテルは高額だ。

もちろんUberだって何十億ドルにも値する。タクシーは、酷いし、高額で、信頼できない。最後に乗ったタクシーは清掃されてすらいなかったと思う。

2009年頃、Airbnbを最初に聞いた時のことを思い出して欲しい。その頃私は、Airbnbを使ってサンフランシスコのスタジオ型アパートの部屋を貸し出したのを覚えている。1ヶ月間の会社の仕事兼旅行で海外に行くことになったからだ。その時は、このサービスについて深く考えなかった。1ヶ月分の家賃を支払わなくて済んだのは良かったが、Craigslistでも同じことができると思った。ただ、Airbnbには綺麗な写真がたくさん掲載されていて、物件を掲載するステップごとのウィザードは便利だった。かといって、Airbnbと同じだけCraigslistにも投資を検討していたと思う。

ボタンを押すと黒い車がやってきて、好きな所まで送り届けるスタートアップにアドバイスをしているとTravisから聞いたときもそうだ。面白いプロジェクトだとは思ったが、自分を含め他の多くのユーザーが使用しているところを想像することはできなかった。自分自身タクシーにはあまり乗らないし、頻繁に乗るには高い上、そのサービスは通常のタクシーの二倍の価格だったからだ。「ユーザー同士だったらどうだろうか。近くにいるユーザーが自分の車で他の誰かを送り届けるとか」とお金に特に厳しい友人は言っていた。

2015年の今から振り返ってみると、これらの企業が何十億ドルに値する理由は明らかだ。そして、あの時、腎臓も売り払ってでも全ての資産を彼らに投資すべきだったことが分かる。彼らは毎日、何百万ドルの大金を動かしているのだ。

2009年の時点では分からなかった。今私たちが持っている知識を一旦忘れ、2009年当時でも分かる、Airbnb、Uber、Twitter¹、Dropboxなどのスタートアップに投資すべき重要な判断ポイントを探す思考実験を行いたいと思う。そして2015年現在、そこで得られた考察を元に、今あるアイディアを改めて見てみたい。

共通するパターンを探すのではない。ユニコーン企業になるためには、独自の特徴的な洞察とタイミングが必要不可欠だからだ。しかし、今ある企業の中から5年後には一日に何百万ドルを動かしたり、何千万人の人が毎日時間を割いて使うサービスを見つけるのに、それらの企業に共通する事実を探っていきたい。

つまり、ユニコーン企業をどのように見つけるかを考えたい。

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VCの毎日の仕事の90%も、このような思考実験と、ポテンシャルを感じる人と話すことで構成されていると思う。

AirbnbとUberには、明らかな共通点ももちろんある。使用されていない資産の存在に気づき、基本的なスキルを備えていた。そして人々の年間支出の上位3つの内2つに目をつけた。(家賃:18%、食費:17%、交通費:16%)。あとは、自社のサービスを展開するのを妨害する社会的な圧力を克服するだけで良い²。

他のユニコーン企業に共通するテーマは、以下のようにまとめた。

Dropbox、 Box、 Evernote、 Slack:コンピューターは便利なものだ。

DeliveryHero、 Instacart、 Spotify:今すぐ欲しいから。

Atlassian、 MongoDB、 IronSource: ソフトウェアでビジネスが加速する。

Square、 Stripe::物事がすごく便利に、すごく簡単になった。

CloudFlare、 AWS: インターネットは現在進行形で起きている。レベルアップすべき。

Shopify、 Automattic、SurveyMonkey、 HootSuite:えっ、ということは、家からでも自分で会社を運営できるってこと?

Xiaomi、 Dianping、 Meituan、 Koudai、 Lashou、 Sogou: 中国は大きくて、オンラインに移行している。

Pinterest:コンピューターって楽しいもの、だよね?

評価額が10億ドルびったりの企業も多いが、リストに載るだけでも価値があるだろう。

現在「今すぐ欲しいから」のカテゴリーに注目が集まっているのは周知の通りだ。クッキー専用のUberなんかは、次の四角獣になるかもしれない。

私がこの企業群に共通する大きなトレンドは、驚くほど多くの人にテクノロジーが浸透したことで、それまでなかった人の動きや習慣を上手く捉えたことだ。(シリコンバレーは本来そういう所だ。誰でも安価で手に入れられるようになった新しい発明品を使って面白いことをしようとする文化がある。)

誰もがiPhoneという小さなコンピューターをポケットの中に入れ、強力なデスクトップブラウザが情報をプッシュし、サーバーもパワフルで安価なものが無数にある。それにも関わらず、今まで誰も銀行、電話、レストラン、人といったリアルの世界とコンピューターをつなげなかったのか分からないくらいだ。

ユニコーン企業を予想することは、次の10年で突然トレンドとなるもの、そして急拡大、急成長を遂げるものに賭けるということだ。

過去5年間で、どこからともなく現れたサービスが私たちの毎日の時間の使い方を刷新した。ソーシャルメディアにメッセージサービスだ。そしてインターネットは高速になり、どこからでも使用できるようになった。(最後のは突然出てきたものではなく、これから増強され、ステップ関数があてはまるようになるだろう。)

しかし私にとって、次の10年で注視したいと思う面白いトレンドは、「家からでも自分で会社を運営できるってこと?」の分野だ。

アメリカの労働人口の30%はフリーランスの仕事をしていた。それが今では40%に近づいている。これまで自分のスキルを活かして良い生活をするために、品質の高いプロダクトやサービスを作るには、大企業に勤めなければならなかった。歴史上、今ほどそれなりの規模の組織を運営したり、信頼できる価値の高いサービスを作ったり、一人でも自宅から簡単にできる時代はないだろう。技術者でない人でも、会社を設立し、プロダクトやサービス、スキルを提供することができるようになった。それも設備投資に何千ドルをかけるようなリスクを負わなくても済むのだ。

言葉を変えれば、これは「ソロプレナー(ソロの起業家)」の台頭だ。

Uberの運転手、Airbnbで部屋を貸し出す人、Etsyの販売者(プロダクトを手作業で制作するのは、セレブがそれに価値を見出して、1000倍の価格で買い取るようなことが起きなければ、最高のビジネスモデルとは言えないかもしれないが。)はそのようになりつつある。

あなたは、次の予想しない大波は何だと思うだろうか?2015年のスタートアップのアイディアの中で、次の波に乗れるラッキーな企業はどこだろうか?投資するまで胸に秘めておこう。


¹ Twitterに言及するつもりはなかった。Twitter自身、Twitterが何かを把握していないし、彼らが何故何十億ドルの価値があるかに単純な回答はない。Twitterがあれば、違う国の人ともつながることができる。私は、5000万人のオタクと起業家の済む国に移り住んだ。そこでは、友人と街で会えば、毎日ディスカッションをしている。どの街で生まれたかは関係なく、それぞれの考えがあって、この街にいるのだ。そのようなつながりを求める人が多いから、Twitterは何十億ドル企業に成長することができた。ユーザーエンゲージメントがあり、会社もユーザーのことを深く知ることができるから、お金も自然と流れこむ。
² もちろん、成功の大部分は運だろう。誰かがどこかの時点でそれを使いたくて、それにお金を払い続けた。そしてファウンダー個人のビジョンの強さもある。GroovesharkやPicPizは、SpotifyとInstagramの競合だが、両者には雲泥の差がある。完全な運任せではない。正しいビジョンと毎日全てが順調に進んでいるかを確認できるリーダーが必要なのだ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

そのスタートアップで働くべきかを判断するためのチェックリスト

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How Do I Know if I Should Take a Job at a Startup?

編集部記:James Altucherは、投資家、プログラマー、作家であり、複数回に渡り 起業家でもあった。彼の最新の著作は「Choose Yourself Guide To Wealth」だ。

誰かに「この会社に投資しますか?」と聞かれた時のあなたの答えは、そのスタートアップで働くべきかの答えとほぼ同じだろう。他にも考えておきたい項目をいくつか追加した。

スタートアップの仕事を検討しているなら、このチェックリストを参考にしてほしい。

A)そのスタートアップのCEOは、以前にもビジネスを作ったことがあるか?

この項目は必ずしも正確なものではない。例えば、Mark ZuckerbergもLarry Pageも最初の会社だった。しかし、興味深い統計がある。85%のスタートアップは失敗する。もしCEOがスタートアップを以前にも立ちあげて売却した経験があるのなら、その数字は25%まで下がる。この統計を覚えておくと便利だろう。

B)充分な資産があるか?
「充分な資産」には2つの意味がある。

  1. 最低一年、運営するための充分な資金があるか。これは重要なことだ。もし、6ヶ月未満の資金しかない場合は、そのスタートアップはもう店じまいだと考えて良い。このことからも最初のAの項目が非常に重要になる。優秀なCEOはこの事実を知っている。
  2. 「充分な資産」とは、人やファンドから二回目の出資を得られるかどうかを指す。そのスタートアップに友人と家族から得た一年分の資金しかないのだとしたら、一年で資金がショートするリスクがある。他にもっと良い仕事があるのに、わざわざそのリスクを負う必要はない。

充分な資産がある場合、もう一つ言えることは、そのスタートアップとCEOには、資金を調達し、ビジョンを売る能力があるということだ。

C)ビジョンに共感するか? 

これには、いくつか違う見方がある。

  • CEOに強いビジョンを作るクリエイティビティがあり、且つそのビジョンを他者に上手く伝えられる高いコミュニケーション能力がある
  • プロダクトがあなたも使用できるものなら、そのプロダクトを実際に使いたいと思うか
  • 自分でプロダクトを使うことはできないが、何万人にとって便利なものであるということが容易に想像できるか

良い例と悪い例を紹介しよう。

良い例:Tesla。Elon Muskの化石燃料の使用を削減するというビジョンに共感する、あるいはTeslaに乗りたい、あるいは電動自動車や家庭用充電のPowerwallが、何万人の生活を便利にすると感じるなら、Teslaで働くべきだ。

悪い例:以前、コンシューマーが見たい広告を選択できるというアイディアのピッチを受けた。私は、このアイディアが何万人にとって便利なものになるとは思わなかった。私だったら、そのような企業では働かない。(彼らは、多くの投資家を集めることに成功していた。)

私は最近、ビタミンや医薬品を蒸気にして摂取できる技術を開発したスタートアップに投資した。私自身もプロダクトを使用し、ビタミンB12、ビタミンD、トランスレスベラトロールを摂取している。そして、この技術が何万人の役に立つことが容易に想像できる。アメリカ全体でビタミンDの摂取が足りていない上、人間の身体は錠剤からビタミンを摂取するのに向いていないからだ。

D)バリュエーションが妥当かどうか?

スタートアップで働く場合、ストックオプションを得ることも想定され、会社に貢献するほどその量は多くなるだろう。

どうすれば、最新ラウンドのバリュエーションが妥当なものか分かるだろうか?

一旦、調達した金額は忘れよう。(上記で既に解決済みの項目だ)

バリュエーションの全額をあなたが手にした場合を想定してほしい。その金額で、より多くの人を集めることのできる魅力的なプロダクトを作ることができるだろうか?例えば、460億ドルあったらUberを圧倒するプロダクトができるだろうか?それは難しいかもしれない。しかし、多くのスタートアップを見てみると、そのスタートアップのバリュエーションを全額持っていれば、もっと良いプロダクトを作ってリプレースできそうだと思うことが多い。

バリュエーションより低い金額で簡単にリプレースできてしまいそうな企業で働くべきではない。

また、バリュエーションを信じるなら、ベンチャーキャピタルの提示した金額ではなく、「409A(ストックオプション用)バリュエーション」を重要視すること。分からなければ、Google検索することだ。

E)学ぶことがあるか?

Sergey Brinが採用面接をするときの心がけは素晴らしい。彼は最初の数分でその候補者を採用するかどうかが分かるという。

残りのインタビュー時間は、面接の相手から何か一つ学びを得ることに費やすそうだ。

他の全ての判断を誤って、最悪のシナリオを辿ったとしても、仕事を始めてから、学びを最低一つは得ることを心がけることだ。スキルを増やして、次のもっと良い仕事に移るために。

私は、スタートアップではないが、HBOで仕事をしていた。3年間の仕事の中で多くの事を学ぶことができた。テクノロジー、エンターテイメントからテレビプロダクションについてまで広範な経験を得て、HBOを去る時にはスキルが付き、自分の会社を大きく育てる糧となった。

F)誠実な対応を行っているか?

私は年に多くの会社を訪れるが、その会社に誠実さがあるかを見ている。

どのようにパートナーと接しているか

企業文化は全てトップダウンに行き渡る。もしビジネスを始めたチームに精神的なつながりがないのだとしたら、全社を通して、そのようなつながりは生まれない。二人の共同ファウンダーが運営するスタートアップへの投資を検討していた時のことだ。一方のCEOが、もう一方のCEOのうわさ話をしているのを耳にした。私は、そこに投資をしないことにした。

従業員はどのようにクライアントと接しているか

JetBlueのファウンダーの伝記は読むべきだ。彼は毎晩、翌朝3時までカスタマーサービスに届いたEメールに返信していた。また、月に一度、長距離の航空便に搭乗し、最後部の席の人から先頭の席の人まで順に回って、何か彼らのフライトに問題がないかを聞いていた。従業員もそのようにして採用したという。彼はCEOだが、会社に属する全員がカスタマーに対して同様の態度を示すべきだ。

昨年、私がある法律事務所を訪れた際、カスタマーの文句を言ったり、冗談を言ったりしているのを耳にした。私がそのような企業と仕事をしたり、そこで働いたり、投資したりすることはない。企業とカスタマーは、一つのエコシステムに属していることを忘れないことだ。自社とカスタマーは対峙する関係ではない。

将来の上司とその人達の上司
上司は候補者の採用判断をする時「長距離のフライトでその人の隣の席に座りたいか」というようなことを基準にしている場合が多い。将来の上司を決める際も、同じ基準で考えるべきだ。あなたが彼らを必要とするより、彼らの方があなたを必要としている。これは事実だ。なので、好ましく思う人でなければならない。

そして、エコシステムだということを今一度思い出して欲しい。将来の上司が会社の他の人たちとどのように接しているかを見ることだ。全てのうわさ話の類は最悪だ。彼らは、一緒に働く人を尊重しているかどうかを確かめよう。そうでなければ、その人やその会社と働くべきではない。

G)デモグラフィックの動きを追っているか?

ウォーレン・バフェットは価値志向型の投資家ではない。1960年代の初頭から、彼はそのような投資をしていないにも関わらず、多くの人は彼が価値志向型の投資家だと思っている。

ウォーレン・バフェットは、デモグラフィック志向の投資家だ。バフェットの言葉を2つ紹介する。

「その会社が20年存続するなら、買うのに適した株だろう。」

「強いデモグラフィックの動きに後押しされているなら、その会社のマネジメント能力がそんなに良くなくても、良い業績が期待できる。」

例えば、Boldの本はムーアの法則に則って成長している分野を掲載している。ロボティクス、物のインターネット、3Dプリンターなどだ。他にも注目すべき分野がある。例えば、現状とても混沌としているヘルスケアの分野を刷新しようとする企業もこれに含まれる。

具体例:私は、既存のタクシー業界を牽引している企業に資金を貸すような企業より、Uberで働きたいと思う。大手ホテルのMarriottよりAirbnbで、GMよりTeslaで働きたいと思う。

H)長いトンネルの先に光はあるか?

面接で上場時期はいつか、と聞くことはできない。

その企業がエグジットする時期を予想することは難しい。優れた会社は、エグジットするまで7年から10年程度かかる。正確に言うと、優れた会社は7年から10年待つべきなのだ。何故かというと、本当に優れた会社なら、マーケットより確実に早いスピードで成長を遂げている。株主と従業員のために得られる価値を最大化することを考えるのなら、会社をぎりぎりまでプライベート企業のままにしておくべきだからだ。

しかし、問題もある。従業員はスタートアップに平均3.1年しか留まらない。(これは、ストックオプションの権利行使の期間と関連しているのかもしれないが、明確には分からない。)

7年から10年、待てるかどうか考えるべきだろう。私だったら、マネジメントチームがそもそもエグジットに興味があるかを聞き出したいとも思う。エグジットに興味がないCEOもいるからだ。

I)利益が出ているか?

利益が出るまでの道筋が明確かどうかを確認すべきだろう。中には、利益が出るまで何年もかかるスタートアップもある。全体の収益ではなく、純利益が多く上がっている会社は福利厚生が充実しているだろう。

例えば、Googleにはシェフがいるが、Walmartにはいない。

– – –

そのスタートアップで働くべきかのチェックリストは以上の通りだ。忘れないで欲しいのは、大事なのは「自分」だということだ。自分のニーズを理解すれば、自由に選択すえうことができるだろう。仕事における自信を深め、一緒に働く人と良い関係を築けるかどうかを重視すべきだ。

言葉を変えれば、満足できる仕事を選ぶべきだということだ。そう思えるなら、それはその仕事を選ぶ充分な理由になるだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

Facebookプラットフォームの変遷

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編集部注:Ben SchippersHappyFunCorpの共同ファウンダー。大規模なモバイル・ウェブエコシステムに影響を与えるソフトウェアの開発に日々努力している。

最近のF8カンファレンスで、Mark ZuckerbergがFacebook Messengerは新たなデベロッパープラットフォームになると発表したのを聞きながら、私は2007年にFacebook自身がプラットフォームになったことを思い出した。当時のFacebookは違っていた。大量の友達を招待して数多くのゲームをプレイさせ、プラットフォームを通じて新しいタイプのアプリケーションを作ることができた。Facebookプラットフォームの2007年は、西部開拓時代によく似ていた。ソーシャルグラフを探ったり作ったりするには楽しい時代だった。

それは大会社がAPIを開放することによって、友達同志で情報を交換したりゲームをプレイしたりシェアしたりする新しい方法を提供した、最初の成功例だった(少々トラブルもあったが)。その頃開発に関わっていた者として、Messengerプラットフォームを通じてその一部が再現できることを大いに期待している。

しかし、今の状況は少々違う:多くのことが変わったが、決して悪いことではない。2007年のFacebookはとにかく動く速さが違っていた。当時カンファレンスでリリースされたプラットフォームと同レベルの開発をMessengerプラットフォームで行うためには、あと数回のリリースが必要だろう。2015年のFacebookはより成熟しており会社は上場されているため、リリースに関してずっと慎重になっている。早く作りたいデベロッパーにとっては苛々させられるかもしれないが、これは必要なことだ。

初期のプラットフォームで、システムがオープンすぎることは明らかだった。デベロッパーらはスパムを放ち、ユーザーのデータを不適切に利用し、人間味のない浅薄なユーザー体験を与えることが多かった。時間と共に、Facebookはゆっくりだが着実に主導権を取り戻してきた。

何百人もの「友達」を招待し、牧場で遊んだりマフィアを手助けさせたりするのは楽しかったが、こうしたゲーム体験の本質は、友達のニュースフィードにできるだけ多くのコンテンツを押しつけることであり、友達同志の深いオンライン関係を生み出すことではないと常に感じていた。

そうした経験を通じて、Messengerプラットフォームが異なる使命を持って登場したことは明らかだ:友達と直接かかわる優れた製品と体験をデベロッパーが作ることだ。Messengerの資料が示唆する本質は、集中した、明確な、構造的に健全な体験を作ることであり、それは2007年にはなかった考えだ。

Facebookが初期プラットフォームから成長してきたように、デベロッパーの開発方法も成長している。Messengerプラットフォームは、Parse、Facebook Connectおよび強力なディープリンク機能が殆どすぐに使えるよう統合されており、全く新しいタイプのクリエイティブなアプリケーションを作れる新プラットフォームとして最適だ。

最近の決算会見でZuckerbergは、全VoIP利用者の10%に当たる6億人のユーザーが使っていることを公表し、Messengerが2007年のプラットフォームと同様、戦略的配布方法の極めて有効な選択肢であることを説明した。

現バージョンのMessengerプラットフォームは、GiphyHappyAlchemyおよびApptly等のターン型ゲームやカスタマイズドメディア配信で活用されている ― 他のプラットフォームが苦戦してきた分野だ。デベロッパーは様々な形でシンプルな発想を強いられ、スパム性の低い友達や友達グループとのより親密な体験を作ることを余儀なくさせられる。

Facebookがこの成長するデベロッパーツールに、今後も深い統合を加え続け、戦略的クロスプラットフォーム統合を進めていけば、Facebookはデベロッパーの間で長期的な勝者になれるだろう。

Messengerの高度に集中し制御されたプラットフォーム展開も、まだ始まりにすぎない。2007年版のFacebookプラットフォームの方が規模は大きかったが、今起こりつつあるこの新しい開発スタイルは、すぐにずっと大きい影響力を持つことになるだろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

スマートフォン革命に取り残された人のためのタッチフリーモバイル端末

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編集部記:Oded Ben Dovは、触らなくても使用できる世界初のスマートフォンSesame Enableの共同ファウンダーでCEOだ。このスマートフォンは、障害者が障害者の為に制作した端末だ。

旅行中で休むための時間にも関わらず、ひっきりなしに来るメールやテキストで鳴り続けるスマートフォンを海に捨ててしまいたくなる衝動にかられたことはないだろうか?

私たちの多くが接続した世界から離れたいと思い、今では「デジタルデトックス」のための旅行市場まで誕生している程だ。しかし、私たちとスマートフォンの関係は愛憎が拮抗するものでも、最終的には愛が勝つ。

1日、2日以上電源コードから離れることは想像できないだろう。モバイルでの接続は、現代社会で生きるために必要不可欠になっている。ビル&メリンダ・ゲイツ財団の 調査から、毎日2ドル以下で生活している人たちでさえ、必要であれば食費を抑えてでもモバイル端末を保有するそうだ。

スマートフォンはもはや私たちの身体の一部といっても過言ではないが、一部の人たちはこの流れに取り残されてしまった。大勢の身体が不自由な人たちのコミュニティー、例えば、四肢麻痺、ALS、脳性麻痺を患っている人たちだ。この人達は、スマートフォンでFacebookに投稿したり、ゲームをしたり、アプリをダウンロードするのもそうだが、通話やテキスト、ネットを見たり、メールを読んだりすることも難しい。

モバイル端末は、収入レベル、年齢、性別に関わらず、私たちの社会生活、キャリアの形成に必要なものとみなされている。エンターテイメントに関しては大部分を占めている。言葉を変えれば、モバイル端末は、もはや通話のためのものだけではなくなったということだ。

一本の電話が私の人生を変えた

3年ほど前、私の電話が鳴った。電話は、私のキャリアの道筋を大きく変える声の持ち主とつながっていた。その当時、私はゲームの開発をしていて、ジェスチャーだけで遊べるiPhone用のゲームを紹介するためにテレビ番組に出演した。

電話相手は、実質的に私に電話をかけることは不可能だった。彼は電話を持つことも電話番号を押すこともできず、それをするには誰かの助けが必要だった。Giora Livneは自己紹介で、7年前の事故がきっかけで四肢麻痺になったことを説明した。電気技師をしていたGioraは、私をテレビ番組で見かけ、このジェスチャー技術は、彼のような人たちの助けになると気がついた。

「唐突なお願いかもしれません」とGioraは、彼と一緒に世界初のタッチフリースマートフォンを開発しないかと私を誘った時に言った。その後数ヶ月で、Sesame Enableを企画し、ローンチした。このスマートフォンは手を使わずとも、頭の動きだけで操作ができる。手が麻痺している、あるいは動きが限定されている人でもスマートフォンを使用できるのだ。

Gioraからの電話を受けるまで、スマートフォンは贅沢品だと私は思っていた。

私たちの多くは、デジタル消費の飽和点まで到達し、接続を切りたいとまで感じている。Microsoftのシニア調査員で作家のDanah Boydは「How to Take an Email Sabbatical(Eメールから休憩を取るには)」でアドバイスをしているし、Randi Zuckerbergは「デジタル休み」を支持 している。多くの人は、電源を抜く方法を考え、常に接続されている時代から自分を隔離する方法を探す一方、Gioraのような人はその世界に接続する機会すら与えられていなかった。

ギャップは広がるばかり
テクノロジーが私たちの身近になるほど、不自由な人はどんどん取り残されている。

モバイルコミュニケーションは、私たちの社会を構築する要素だ」とミシガン大学で通信についての研究を行う教授Scott Campbellは言う。Scottは、スマートフォンを持つことで得られるメリットを3つ上げた。安全と安心感、毎日の活動を整理する能力、そして社会的な活動をする機会だ。

ベータ版のテストユーザーから、最後の要素が最も重要であることが分かった。当初私は、患者の多くは実用的な理由からモバイル端末を使用したいのだと考えていた。それもその通りだと彼らは話してたが、最も彼らにとって重要だったのは、誰かとプライベートで通話をすることだった。Gioraもプライベートな通話を何年もすることができなかった。私が出会ったティーネージャーや子どもたちは他の友達のようにCandy Crushを遊んだり、(ベータ版のテストユーザー、Oriの笑顔は何事にも代えがたい。)Facebookを使いたかったのだ。

この分野でのイノベーションも進んでいる。

昨年、耳が聞こえない人のコミュニケーションを円滑にするMotion Savvy Uni が登場した。手話を音声に変換し、音声をテキストに変換する、この分野で初めてのタブレット用ソフトウェアだ。Uniの音声認識技術は人が話している言葉を、耳が聞こえない、あるいは聞くのが難しい人のためにテキストに変換する。そして耳が聞こえる人向けには、ジェスチャーのモーション認識技術で手話を音声に変換する。

何万人もの需要を認識し、Project Rayは目が見えない人のための視覚を必要としないスマートフォーンを開発した。このスマートフォンは触覚と声と音でコントロールすることができる。彼らのためにデザインされたこのモバイル端末は、目が不自由でも電話をかけたり、テキストメッセージやEメールのやりとりしたりできる。更には、カレンダーのリマインダー設定、GPSのナビ、リモートアシスタンス、色認識ツール、絵画の説明などの機能も使用することができる。

多くの人はモバイル端末に苛立ちを覚え、接続を切ったり、離れることを望むが、私はGioraと出会い、たくさんの人にとってスマートフォンやタブレットは、ただの不必要な贅沢品ではないことに気がつくことができて光栄に思っている。ここ10年で最も私たちの生活を変えたテクノロジー端末は、物理的に触れることが困難な人を含め、誰もが使えるものになるべきだ。彼らが最もそれを必要としているのだから。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

バブルから身を守る堀を作れ:現代の金融環境を生き抜く

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編集部注:Pravin VaziraniはMenlo Venturesのマネージング・ディレクター。クラウド、SaaS、およびEコマース分野を専門とする。現在彼の投資先および役員を務める企業は:Carbonite (NASDAQ: CARB), FiveStars, Glympse, Lumosity, Nexenta, Poshmark, Stance, The Black Tux, およびvArmour。

2週間前、NASDAQは2000年3月の史上最高値を更新した。一方、評価額10億ドル以上の「ユニコーン」非公開企業は現在50社以上ある。非公開テクノロジー企業はかつてないほど簡単に早く資金を利用できるようになった ― 評価額1億ドル以上(15年前なら「超弩級」IPOと考えられていた)の資金調達ラウンドは、今や非公開企業では当たり前になりつつある。

われわれは本当に1999年のように盛り上がっているのだろうか? これはブームなのかバブルなのか?そして何よりも大切なのは、今日の起業家がどうこれに対処すべきなのかである。

初期から成長期のIT企業に焦点を合わせた4億ドルのファンド、Menlo Ventures XIIを完了したばかりのわれわれは、そんな疑問についてしばらく考えてみた。当社の39年に及ぶ経験の中で一つ明らかな事実は、テクノロジーは循環的ビジネスであるということだ。過去の時代と比較する誘惑にかられるものの、今われわれがサイクルのどこにいるかを正確に知ることは著しく困難ないしは不可能である。現在と1990年代の間には一定の類似性もあるが、重大な違いがいくつかある。

第一に、今日のインターネットビジネスモデルは、十分な検査を受け、十分に理解されている。広告、プレミアム定期購読サービスやマーケットプレイス取引手数料等手段はどうあれ、「人数」を収益化する方法は多くの企業によって正確に示されている。

第二に、2015年のインターネットユーザー数は1999年のおよそ10倍であり、そのユーザーたちは当時よりも10倍オンラインでお金を使っている。2015年に世界で15億人いるスマートフォンユーザーはもちろん当時存在しなかった。UberやPoshmarkのような会社は1999年には生まれようもなかった。こうして、オンラインで時間もお金も費やすことに慣れたユーザーを収益化する膨大なチヤンスが生まれた。

スフレを焼く時に(オーブンが強力だというだけの理由で)いきなり260度まで温度を上げることは、質の高い商品を早く作る方法ではない。

そして、今日の急成長IT企業の評価額を高すぎると考える向きもあるかもしれないが、1999年と比べれば影が薄い。1999年のテク系IPOの年間売上中央値は1200万ドルで、評価額の対売上倍率の中央値は26.5倍だった。2014年には、年間売上9000万ドルで倍率は6.2倍だった。

しかも今は、アクセス可能なオンライン市場はずっと大きく、モバイルエコシステムは繁栄し、ビジネスモデルも確立している。われわれが向かっているのは継続するブームであり崩壊ではないという事実を裏付けている。

しかし、公開非公開を問わず株式市場が短期的にどう振舞うかを知ることは不可能だ。この内在する不確定さを踏まえると、本当の問題は企業がどうこれに対処するべきかにある。

会社の周囲に堀を作れ

注目されている私企業にとって、今日の有利な金融環境を活用することは賢明な行動である。Menlo Venturesは、Uber、MachineZone、Dropcam、Warby Parker等業界をリードする企業に投資する幸運に恵まれ、当社の初期投資より著しく高い評価額で大型調達ラウンドを成功させた。

大型の調達ラウンドを実施することは、会社を作りそれを守る効果的な方法だ。もし今日の資金環境が悪化すれば、後を追うライバルたちは資金調達が困難になる。

現状がいつまでも続くと思うな

テクノロジー界で唯一明白な事実は「変化」だ ― 今日のいわゆる「バブル」市場は一夜のうちに弾けるかもしれない。成長を加速するための選択肢は、強力な資金調達環境に基づき〈機を見て〉実行することが重要である。

しかし、将来を実現するために益々大規模で高額になるラウンドに頼る事業計画は、大惨事を意味することもある。もしあなたが自分の周囲に深い堀を作ることに固執しすぎると、自分自身がそこへ落ちてしまうかもしれない。

本末転倒の経営判断をするな

起業家は、調達できる資金の額でビジネスのやり方が決まると考えてしまうことがあまりに多い ― 本来はその逆だ。どの会社にも成長するために守るべき自然な歩調があり、それは外部の資金環境にはよらない。腕利きのエンジニアやセールスマンやマーケティング幹部を、与えられた時間に何人雇って教育できるかには限界がある ― 雇用を急ぎすぎることは、採用基準のハードルを下げることを意味する。

消費者を相手にするビジネスでは、ユーザー体験やユーザー維持などの基本的事柄に取り組むべき時期に、有料マーケティングを使った超速成長モードに入ることは長期的に有害である可能性が高い。スフレを焼く時に(オーブンが強力だというだけの理由で)いきなり260度まで温度を上げることは、質の高い商品を早く作る方法ではない。

どの会社にとっても、正しい判断は状況によってまちまちであり、特定の市場、競合状態その他無数の要因によって異なる。起業家と取締役会にとって重要なのは、常に自分たちの状況を評価し続け、マクロ環境と企業に特異な要素の両方を考慮して、長期的価値を最大化する決断を下すことだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook