保護犬猫のマッチングサイト「OMUSUBI」やペットライフメディア「ペトこと」を展開するシロップは1月29日、複数の投資家を引受先より総額2億円を調達したことを明らかにした。今回の投資家にはジェネシアベン チャーズ、セレス、コロプラネクスト、三浦崇宏氏(GO代表取締役)のほか、社名非公開の上場企業や匿名の個人投資家も含まれる。
シロップは2015年設立のペットテックスタートアップ。今回調達した資金を活用して人材採用を強化するとともに、蓄積したデータなども活用して既存事業のサービス拡充を進める計画だ。
なお同社では昨年4月に既存投資家やチュートリアル・徳井義実氏ら複数の個人より8000万円を調達。それ以前にも複数回に渡って数千万円規模の調達を実施済み。今回も含めると累計調達額は約3.5億円となった。
ペット版Pairs「OMUSUBI」は会員1万人突破
現在シロップの事業の軸となっているのは冒頭で触れた2つのサービスだ。
保護犬猫と飼い主をつなぐOMUSUBIは「ペット版のPairs」と言えばわかりやすいだろう。仕組み自体は非常にシンプルなマッチングサービスではあるが、保護団体の完全審査制を取り入れ、密なカスタマーサポート体制を構築することで譲渡トラブル回避や譲渡率向上を目指してきた。
審査済みの登録保護団体数は昨年4月から約2倍に増え、100団体を突破。会員数も1万人を突破している。
大きなアップデートとしては昨年8月にデータレコメンド機能「相性度診断」を追加。ユーザーからライフスタイルや好きなタイプなどの嗜好データを収集し、犬や猫のプロフィールデータと照合して相性度を可視化する仕組みを導入したところ、月間応募件数が2倍以上になったという。
「犬や猫は100種類以上いて種別の特徴や性質はそれぞれ異なる。それを度外視してしまうことがミスマッチにも繋がるが、事前に全てを把握することは難しいのでデータを活用してマッチングをサポートしている。たとえば最初は何となく猫を希望していたが、嗜好データなどを踏まえると実は犬の方が相性が良く、実際にマッチングに至ったケースもある」(シロップ代表取締役の大久保泰介氏)
現在は保護犬猫を対象にしているが、ゆくゆくはそれ以外の犬猫と飼い主のマッチングにも広げていくことを検討しているそうだ。
このOMUSUBIが人とペットとの“出会い方”を変えるサービスであるのに対し、ペトことはメディアを通じてペットの“育て方”を変える。獣医師などペットの専門家150名以上が執筆・監修している点が1つの特徴で、オススメのお出かけスポットやグッズから、獣医療や栄養知識まで幅広いコンテンツを提供。最大時のMAUは160万人だ。
ビジネスの観点ではタイアップ広告やOMUSUBIと連動したソーシャルグッド・SDGs文脈のプロモーションのほか、記事経由での宿泊施設の予約やAmazonでのグッズ購入によるアフィリエイトも一定の規模に達しているというのは前回も紹介した通り。現在は正式展開に向けて準備中ではあるものの、昨年にはフード領域の新サービスとしてドッグフードのD2C「PETOKOTO FOODS」を開発した。
昨年9月にベータ版をスタートしたものの、事前予約申し込みが600名を超えるなど継続的な安定供給が難しくなったため販売体制の構築に向けて中断。まずは限定的に販売を再開し、春頃を目処に規模を拡大していく計画だという。
データ活用で飼い主とペットに最適化した情報を提供へ
大久保氏が今後の注力ポイントにあげていたのが、前回に引き続きデータの活用だ。特にペトことにおいては春頃からデータを用いたパーソナライズ機能を実装する予定。「蓄積されてきた飼い主やペットのデータを活用するフェーズ」(大久保氏)に差し掛かり、ユーザーごとにマッチした情報を配信していく。
まずは情報(記事コンテンツ)とフードが中心。ペトことで得られたデータから最適なカロリー量を提案し、フードを定期配送することでペットの健康をサポートできる仕組みを作りたいという。
今回調達した資金もペトことの情報コンテンツの拡充や開発強化、D2Cフードの体制強化に向けた人材採用に投資をしていく計画。また少し先の話にはなるが、OMO文脈の取り組みとしてリアルなドッグカフェを開設するような構想も大久保氏の中にはあるようだ(まずはポップアップ型で)。
「ペトことを使えば自分とペットに最適化された情報が出てくるという体験を作っていく。いずれは自分たちに合ったキャンプ場がレコメンドされ、その予約まで一気通貫でできるようにしたいと考えている。ペットライフにおいて点となる機能をどんどん増やしながら、それらをデータを軸につなぎ合わせて線にしていきたい」
「社内のメンバーは全員が犬や猫の飼い主で思いは強い。『人が動物と共に生きる社会をつくる』というミッションを掲げているが、犬・猫自身や飼い主を含む動物を好きな人だけでなく、苦手な人も支え合える社会を作るのが目標。信念を持って取り組んでいきたい」(大久保氏)