主要メディアはゲーマーゲート騒動の教訓から何ひとつ学んでいない

8月15日、ニューヨーク・タイムズは、5年前のゲーマーゲート騒動を振り返り、その影響を考える記事を発表した。背筋が寒くなるような、しかし非常に啓蒙的な記事だ。ぜひ読んで欲しい。とてもよい考察がなされており、実際は数本の素晴らしい記事で構成されているのだが、「Everything is Gamergate」(何もかもがゲーマーゲート騒動)というタイトルは、騒動自体、そして騒動の中でのネット暴徒によるヘイトの嵐が、今までとこれからの文化戦争やメディア戦争の原型となったことを表している。

だが悲しいことに、ニューヨーク・タイムズがここに教訓を示しているにも関わらず、同紙自身、またその他のメディアも、実際にそれに学んだ気配は見られない。

ゲーマーゲート騒動を、メディアを戦場に利用した文化戦争の典型と指摘する記事は他にもある。そのひとつが、2014年、カイル・ワーグナー(Kyle Wagner)氏がDeadspinに書いたものだ。情け容赦のない非常に厳しい即時的分析は、見事に未来を予測していた。なかでも重要な部分を抜粋しよう。

ゲーマーゲートとは(中略)比較的小さいながら非常に声の大きなビデオゲーム愛好家のグループだ。ゲーム業界に倫理監査の実施を求めることが目的だと主張していたが、実は一部の人間が複数の女性に対して組織的に行った犯罪的ハラスメント事件だった。(中略)しかし、なぜこれが注目を集めたのかと言えば、何世代にもわたり社会的反動勢力が悪用してきたものと同じ、システムの簡単な抜け穴につけ込んだからだ。それはつまり、双方の意見を聞くべしという報道機関の純粋で根深い信念だ。(中略)ネオナチを自認するような人間以外は、みな善意で活動していると見なすという考え方だ。

最後の一文は、すでに正しくないことを私たちはみな知っている。その考え方は楽観的すぎる。2年前、ニューヨーク・タイムズは、「近所に住むネオナチ信奉者」を題材にした記事の中で、「ネオナチは善意で活動している」ことを認めたい意志を明白にしていた。これは、“仲良し”(Quartz)、“同情的”(Business Insider)、“容認”(ニューヨークタイムズの読者ほか)などと非難された。

Deadspinのワーグナーの記事に戻ろう。

ゲーマーゲート騒動におけるジャーナリズムの高潔さを求める声は、ゲームメディアの組織的腐敗とはまったく関係がない。……私たちが“偏向報道”と呼ぶところの批判的メディアの流派による発信は、特別に何かを主張するものではなく、おそらくまともに取り合うほどのものでもない。当人たちが抱える不満を和らげるために、それは審判を決め込み、彼らの肩越しに事態を覗き込んでいるに過ぎない。その功罪は別として、次回はもっといい話が聞けるようになる。
それが何を招いたか? こうだ。本日早朝、ニューヨーク・タイムズは、“無礼な会釈作戦”と呼ばれる組織的なゲーマーゲート運動にIntelが降参した様子を取材した。

下は5年前のニューヨーク・タイムズの記事だ。こちらの書き出しはこうだ。

性差別主義とジャナーリズムの倫理を巻き込んだ激論が、ビデオゲーム・コミュニティに吹き荒れてから1カ月と少しの間、それは組織的な運動となり、ゲームサイトから広告を引き上げるよう企業に圧力をかけるまでに拡大した。
この運動は、ここ数日の間にチップメーカーIntelに、ゲーム開発者のためのサイトGamesutraから広告を引き上げる決断を下させるという大勝利を収めた。
Intelの決定は論争を呼び、ゲーム業界での女性の扱いと、ネット暴徒の力に人々の関心が集まることになった。この論争は8月、女性ゲーム開発者に振られた元ボーイフレンドの投稿などもあり、さらに激化した。

ワーグナーの結論は、必然的にこうなった。

物事はこの道筋に沿って続いた。慎重に、常に中立性を意識しつつ、ロボトミーを施して、(中略)双方の意見を聞いた。その結果、リー・アレクサンダーの解説は、今日のゲームの多元主義と同じ比重で、彼女を黙らせることに執着する運動についても語る内容となった。(中略)暴虐的で偽善的なメディアの陰謀論の話となり、その瞬間、人々は確信し、“討論”のどちら側に付くかを決した。

それ以来、数々の悪意の運動と同じく、ゲーマーゲート騒動に続いてさまざまな“モット城郭”戦法が登場した。それは……

大胆な物議を醸す主張をする。誰かがそれに反論してきたら、あなたは明白に議論の余地のない意見を述べただけだと主張する。つまり、明らかに正しいあなたに対して反論した彼らは馬鹿者だということだ。その論争が片付くと、再び大胆に物議を醸す主張を行う。

ここで言うモット(土塁)とは、不愉快で滅茶苦茶な動機だ。ゲーマーゲートの場合は、悪意に満ちた女性嫌悪が動機だった。そして城郭とは、まったく主旨の違う議論のことだ。ゲーマーゲートの場合は「これはゲーム・ジャーナリズムにおける倫理の問題だ」とすり替えられた。彼らはその城郭の議論を利用して信頼を勝ち取ったのだが、それはまったくの悪意であった。彼らの本当の関心は、あの忌まわしい動機にあったことは、敵も味方も断言しないまでも、暗黙に理解されていたからだ。

これは、現在も多くの論争の手本にされている。なぜなら、主要メディアを徹底的に操作できる効果的な方法として生き続けているからだ。“不満を煽る政治”、“エリートが認めるアメリカの衰退”、または操作され、ねつ造された危険な難民”に関する論争は、どれもが正当な不満または善意の議論としてメディアは扱い続けている。むしろこれは、民族主義と外国人恐怖症と正面から対峙せずに済ませるための根拠の薄い言い訳なのだ。

モットがうっかり尻尾を出すことも少なくない。米市民権移住局の長官が、まさに先日話していたように、自由の女神に刻まれた有名な詩には「ヨーロッパから来る人たち」とある。しかし、この城郭の欺瞞が一般に支持されている。

もう一度言う。欺瞞だ。これは意図的に悪意に基づく発言だ。さらに言うなら、本当の動機は、オープンな鋭い感覚で調査を行う人にすぐさま見破られる。善良なジャーナリストは、こんな歪んだ欺瞞を額面どおりに受け取ってはいけない。証拠もなく善意と思い込んではいけない。ニューヨーク・タイムズは、5年前のゲーマーゲートで、明らかにそこでミスを犯し、罠にはまった。そこでワーグナーは、こう書いている。

ゲーマーゲート騒動で私たちが得たものは、こうした小競り合いが、将来どのように大きく発展するかを垣間見たことだ。言葉の凶器とインターネットのコメント欄という攻城兵器は、私たちの文化を圧迫している。周辺地域のみならず、中心部をもだ。

彼はまったく正しい。しかしながら、ニューヨーク・タイムズの中核にもその頂点にも、目立った学習の跡は見られない。ゲーマーゲート騒動の後の5年間と、「読者がナチ信奉者を容認していると私たちを非難」してから2年間、ニューヨーク・タイムズは、まったく同類の悪意の論争を、あたかも意味のある、重要な、正当なものであるかのように相も変わらず扱っている現状を、他にどう説明すればよいのだろう? もっとも最近の大失敗したトップ記事がわかりやすいが、それは意図的に目をそらしている氷山のほんの一角に過ぎない。

その見出し事件の直後、編集長のディーン・バケット(Dean Baquet)氏は驚くべきことをCNNに話した。「私たちの役目は、レジスタンスのリーダーになることではありません」と。言い換えれば、ゲーマーゲート騒動に関する今回の素晴らしい解説を掲載したこの新聞社は、そこから何も学んでいないということだ。

ニューヨーク・タイムズの役割は、レジスタンスを先導することだ。特定の政党や個人を敵に回す必要はない。危機的な物事に抵抗することだ。徹底的な分析を行い、人を欺くモット城郭議論に立ち向かうことだ。しかし彼らは、悪意の運動に操られていることを認めようとしない。そうした運動のひとつが、アメリカの政界を支配するまでに成長している事実を受け入れようとしない。この伝統ある新聞社は、いつ目を覚ますのだろう。

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(翻訳:金井哲夫)

国の安全保障問題を監視するジャーナリズムは国家の敵なのか?

6年前、英国情報機関の職員がロンドンの新聞社ガーディアンに押し込み、米国安全保障局(NSA)の内部告発者エドワード・スノーデンが持ち出した高度な機密情報を保存していると彼らが目星を付けたコンピューターを破壊するよう、同紙のスタッフに命じた。

ガーディアンは、漏洩した極秘文書を返すよう米当局から圧力をかけられていた英国政府と「数週間にわたる緊迫した交渉」を重ねた末、編集部員たちが、ガーディアン社の地下でグラインダーやドリルを使ってコンピューターを破壊し、二度とデータが読み出せないようにした。米国と英国は、機密情報を共有し合う密接なパートナー関係にある。米国内を含め、NSAの文書のコピーが複数存在していた事実があるにも関わらず、同紙は拒否すれば懲罰的な法的措置を受けるか起訴される状況に追い込まれた。

「ガーディアンにとって、スタッフを守れる唯一の方法は、自社のコンピューターを破壊することでした」とガーディアンの記者Luke Harding氏は話す。

この数年間、なぜ報道の自由が重要なのかを語るときにこの事件を引き合いに出してきたが、米国人の反応は決まって「まさか、そんなことがあったのか?」というものだ。

ガーディアンのような事態は米国では起こりえない。国の安全保障問題を追う記者が、機密情報を持っていたり、政府関係者から機密情報が提供されるのは珍しいことではない。それは、権力や法の乱用を暴くためのものだからだ。米国の憲法で唯一名指しされている職業である米国の報道記者は、たとえ何が起ころうとも、責任を追及する力を保持する希望の星なのだ。

しかし、一番新しいジュリアン・アサンジの告訴は、そうした報道の自由を脅かすものとなっている。

ジュリアン・アサンジは、嘘つきで、誤報を振りまく人間として知れ渡り、多くの人たちからはとんでもない野郎だと嫌われているが、最新の告訴が公表されてからは、彼の最大の批判者から擁護されるようになった。

アサンジは、スパイ活動法のもとで機密扱いとなっていた情報を公表した容疑で起訴された、初めての人間となった。スパイ活動法は、世界大恐慌の10年も前に成立した法律で、外国のスパイや政府内の内部告発者の起訴を目的としている。

「これはまさに、国の安全保障を監視する記者とそのニュース媒体が政府関係者やその関連企業に頻繁に求めてきたことだ」と、ハーバード・ロー・スクールの教授であり元政府弁護人、Jack Goldsmith氏はLawfareに書いている。

実際、私も同じことをした。2017年、NSAから5年間にわたり5回の情報漏洩があった際に、私は政府のRagtimeプログラムRed Disk情報プラットフォームに関連する機密情報を入手して公表した。記者が、記者としての仕事をしたことで捜査を受けたという話はちらほら聞いてはいたが、100年前にスパイ活動法が成立してから今まで、機密情報を持っていたり公表したことで記者が起訴されたという話は一度も聞いたことがない。

秘密の拷問施設や、匿名の情報源や内部告発者から提供された政府による世界規模の監視活動のような機密情報を公表した報道機関や記者が、自分たちも同様に起訴されるのではないかという不安から、起訴状に慌てふためいたことは驚きに値しない。

ワシントンポスト紙の編集者Marty Baron市は、声明の中でこう話している。「古くはペンタゴン・ペーパーズの事件からさらに遡って、ジャーナリストは、政府が機密と考える情報を受け取り公表してきた。不正行為や権力の乱用が暴露してきた。ジュリアン・アサンジの新たな起訴で、政府は法的根拠を笠に着て、この重要な仕事を危険にさらし、米国憲法修正第1条(言論の自由)の本来の目的を蔑もうとしている」

アサンジは、元陸軍情報分析官Chelsea Manning(チェルシー・マニング)から提供されたロイターのカメラクルーを含む民間人の殺害に関する外交公電や軍の動画といった高度な機密情報をウィキリークスを通して公表した。マニングは、スパイ活動法により起訴され、後に減刑されるまで投獄されていた。アサンジに対する政府の最新の告訴の内容は、「情報提供者の氏名を編集しなかった」ために「米国の安全保証に深刻な危機をもたらした」というものだ。

アサンジを口うるさく批判する人たちは、米政府は「彼が行った最後の善行」で彼を起訴したと言っている。彼が公開した記事で、アサンジは自らの名前と評判に泥を塗った。とりわけひどかったのは、盗み出した恥ずかしい電子メールを公表し、ロシアと手を組んでヒラリー・クリントン氏の大統領選挙戦を台無しにしたことだ。

だがこれは、機密情報の公開という容疑にはまったく関係がない。

米国司法省は、アサンジは「ジャーナリストではない」と言っている。しかし、言論の自由と報道の自由を保障した米国憲法修正第1条は、その人がジャーナリストか否かの区別はしていない。

「憲法修正第1条は、ジャーナリストに特権を与えるものではない」と、国家安全保障弁護人Elizabeth Goitein氏は言う。「言論または報道の自由の剥奪を禁じることで、言論する人、書く人、報道する人、出版する人を公平に保護している」と、彼女はワシントンポスト紙のコラムに書いている。

言い換えれば、アサンジがジャーナリストかどうかは関係ないのだ。

米国の法律の下では、その人が記者であろうとなかろうと、同じ自由が守られてる。ジャーナリストもそうでない人も関係なく、機密情報を受け取り公表すれば、いかなる米国人も起訴しようと走る米政府を、もう誰も止められない。

「これは、ジュリアン・アサンジの問題ではありません」と、著名な政治家であり、いくつもの上院情報委員会のメンバーでもあるロン・ワイデン上院議員は言う。「これは、機密情報を受け取った人とそれを公表した人を起訴するための、スパイ活動法の使い方の問題です」

「アサンジの訴訟は、憲法修正第1条が守ってくれない活動に対して危険な前例、つまり、最も慎重で高い手腕を持つプロのジャーナリストでも、国家安全保障に関連する機密事項の取材を躊躇させてしまう前例になりかねない」と、テキサス大学スクール・オブ・ローのSteve Vladeck教授はコラムに書いている。

ワシントンポスト紙が5月24日に伝えたところによると、オバマ政権も、数年前にアサンジを起訴に持ち込もうと考えていたが、起訴すれば、実績ある報道機関の記者たちも、まったく同じように起訴しなければならなくなることを心配していたという。

しかし、トランプ政権がアサンジを起訴した今、かつてトランプ大統領によって「人民の敵」との烙印を押されたジャーナリストたちは、すぐにでも国家の敵にされてしまう恐れがある。

Bloombergの中国スパイチップのスクープはどこまで信頼できるか――ハイテク・エスピオナージュの闇を探る

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(翻訳:金井哲夫)

優れたジャーナリズムを育てる育成事業Google News Initiativeがアジア太平洋地域でも活動を開始

Googleはアジア太平洋地域のメディアを支援するために、同社のGoogle News Initiativeを同地域で展開する計画だ。

GNIと呼ばれるこの事業は、“デジタル時代の優れたジャーナリズムを育成”するために、同社が将来性を認めたメディア企業や団体に助成金を交付する。2015年に始まったヨーロッパでは1億7000万ドル、そしてアメリカでは今年前半に3億ドルが投じられた。フェイクニュース防止のためにYouTubeも助成対象となり、GNIはそのために2500万ドルを確保した。

アジア太平洋地域に関してGoogleはその規模を明言しないが、新しくて革新的なビジネスモデルと収益源を開発しているパブリッシャーに最大で30万ドルを助成する、と言っている。

Googleで報道と出版関連のパートナーシップを担当しているKate Beddoeは、ブログ記事でこう述べている: “有料会員制や賛助制度、新しいデジタル製品やサービスなどで読者からの収益を増やそうとするプロジェクトの提案を募集している。Google内部とそのほかのテクノロジー業界の役員たちが申請を審査し、選ばれたプロジェクトには最大で30万ドルを出資、プロジェクトの総費用の最大70%を支援する”。

同社のスポークスパーソンによると、助成金は分割で交付される。交付が決定した応募者には助成金が何度かに分けて交付され、彼らの経験を広範なコミュニティと共有しなければならない。それは、オンラインやイベントにおける資料の作成配布の形でもよい。その情報交換のねらいは、アジア太平洋地域のメディアがお互いから学び合い、持続可能なアイデアや経験談をより広く共有することにある。

ファンドは今日(米国時間11/20)発表されたが、実際の交付は2019年からだ。

応募申込は、専用の窓口で、11月28日から1月9日までに行なう。Googleによると、12月11日に同社のシンガポールオフィスでタウンホールミーティングを行なうときに、詳細を発表する。それはここから、ライブでストリーミングされる。

アジア太平洋地域のメディアを助成金で支援しているのは、Googleだけではない。ブロックチェーンメディアのスタートアップCivilは最近、アジア対象の100万ドルのファンドを発表したが、同社はその後、予定のICOをキャンセルしたため、今後の動向が不明だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Facebook、購読トライアルやダイジェスト配信などジャーナリズムのための機能を発表

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偽造ニュース問題やFacebookでパブリッシャーが読者と継続的な関係を築く難しさにより、Facebookとジャーナリズム業界との関係はぎくしゃくしている。そこで本日Facebookは今後公開するニュース機能のロードマップを公開した。「The Facebook Journalism Project」という名で、ジャーナリズムの分野でFacebookがコミットすることをまとめている。

これにはいくつかの施策が含まれている。インスタント記事のダイジェストをパッケージ化し、ユーザーが購読できるようにする機能、有料購読前に無料トライアルが行える機能、パブリッシャー側の開発者とのハッカソン、ジャーナリスト向けのFacebook機能のチュートリアル、ニュースリテラシーや偽造ニュースへの認識を高める公共広告、虚偽の情報が広まることへの予防策などだ。

またFacebookは、同社が買収したCrowdTangleへのアクセスを無料で提供する。CrowdTangleはジャーナリズム向けのツールで、記者がトレンドになっていることを見つけたり、ソーシャルでの反応を計測したり、情報源やインフルエンサーを特定したりすることができるツールだ。また、ジャーナリストが自分の通常のユーザープロフィールからシェアした動画の基本的なアナリティクス情報を得ることができるようになる。Facebookページで提供しているインサイトツールの簡略版と言える。

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この取り組みで、パブリッシャーがFacebookの外の読者とも継続的な関係を築くことを助け、パブリッシャーの投稿がフィードに埋もれることを避けたい考えだ。また、新たなプロダクトの開発を促し、仕事に役立つツールへの自由なアクセスを提供しつつ、一般のユーザーに対しては良識のある読者であるために心がけるべきことを伝えていく。

「パブリッシャーが私たちとのより深いコラボレーションを望んでいることをはっきりと認識しています。単にパートナーシップではなく、プロダクトやエンジニアリング面においてもということです」とFacebookのプロダクトディレクター Fidji Simoは話す。

重要なのは、 Facebook Journalism Projectで、パブリッシャーがコモディティ化することを防ぐことができるかもしれないことだ。Facebookで消費するコンテンツが大事で、その記事を書いた記者が誰であろうと関係ない状態を避けるということだ。

パブリッシャーに大切なものを返す

多くのユーザーがFacebookのモバイルからニュースを読むようになっている。そのためFacebookが2015年5月にインスタント記事をローンチした時、モバイルでの記事のロード時間を短縮する機能が評価された。 外部のウェブサイトのロードに10秒かかるというようなことはなくなり、Facebookは瞬時にロードする定型化した「読みやすい」記事フォーマットの提供を始めた。

この機能だけを見た時、パブリッシャーにとって有利なもののように見えた。より多くのユーザーが記事をクリックすることになり、記事がロードするまでのバウンス率も減る。Facebookがインスタント記事で表示できる内容や広告の数を制限し、1記事あたりのビューが減ったとしても、それを上回る効果が期待された。

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インスタント記事。左の画像は以前のインスタント記事の仕様。パブリッシャー独自のウェブサイトに比べ、カスタマイズできる部分が限られていた。

しかしこれには目立たない二次効果があった。パブリッシャーの個性を殺していた。特徴的なブランドが強調され、独自のビジュアルスタイルを打ち出し、パブリッシャーの他の記事を読者に訴求できるウェブサイトと比べ、Facebookのインスタント記事はどれも同じように見えた。

これはパブリッシャーと読者の関係性を弱め、コンテンツのクリエイターを誰でも代わりが務まるゴーストライターに変えてしまう懸念がある。人々は徐々に特定のパブリッシャーを探し、サイトに直接アクセスして、講読料を支払ったり、イベントに参加したりする代わりに、ニュースフィードに流れる記事を無計画に読むだけになってしまいかねない。

ニュースを全方位から改善する

以下がFacebookの施策の一覧だ。太字にした2つの施策は、ジャーナリズム業界にとって期待が持てる内容だ。

  • 記事パッケージ
  • ローカルニュースへの投資
  • 購読トライアル
  • Facebookとパブリッシャーとの共同ハッカソン
  • Liveの使用方法など、記者向けFacebookのジャーナリズム機能の研修
  • FacebookページからLive配信を使用するための権限管理機能。寄稿者など非管理者でも機能を使用できるようにする
  • Live動画APIをユーザープロフィールにも適用
  • CrowdTangleへの無料アクセス
  • First Draft Partner Networkとの拡張的なパートナーシップで目撃者の特定を可能にする
  • ニュースリテラシー促進のための公共広告
  • 偽造ニュースへの対抗措置

まだ最適な開発方法を探していて、施策が具体的でないものもある。ただ、中でもこの2つの施策が大きな可能性を持っていると言える。

Facebook's new Head Of News, former TV anchor Campbell Brown

Facebookのニュースヘッドに就任したCampbell Brown。ニュース番組の司会を務めた経歴を持つ。

インスタント記事のパッケージ機能は、ユーザーがニュースフィードで流れてきた特集記事をクリックすると、中にいくつかの記事がまとまっているものだ。同じテーマに関する記事やその日の主要ニュースのダイジェストを届けることを想定している。ユーザが購読すると、ダイジェストがリリースされた時に通知を受け取ることができる。この「パッケージ」機能はThe Washington Post、Fox News、El Pais、Hindustan Timesと現在検証しているという。

もう1つは、ユーザーがインスタント記事の有料購読の無料トライアルにサインアップするためのフォームを用意している。Facebookはドイツのニュース団体BILDとこの機能を検証している。

今はパブリッシャーにとって利益を上げるのが難しい時代だ。しかし、もしFacebookが質の高いジャーナリズムを促進し、彼らに利益が渡る方法を構築できるのなら、ニュースフィードは面白く、豊富なニュースがある状態にすることができるだろう。FacebookのニュースヘッドにCampbell Brownが就任した。Facebookはパブリッシャーに対し、ジャーナリズムを考慮していると口約束するだけでなく、今後のロードマップに沿ってそれが本心であると証明していくことが期待される。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website

ニュースを記事単位で購入できるBlendleが100万ユーザーを獲得

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ニュースを記事単位で購入できるBlendleが100万ユーザーを獲得した。Blendleは複数の新聞社から発行されたニュースを同社の広告フリーのプラットフォームにまとめ、そのニュースを記事単位で販売している。1記事あたりの金額は数セント程だ。

Blendleがこのユーザー数を獲得するまでにかかった時間は、たったの2年ほどだ。記事を読むために会員費を支払う必要のあった従来のデジタルメディアのビジネスモデルを一から作り直すことを目的に、Blendleはジャーナリズムのマイクロペイメント・プラットフォームを2014年4月にヨーロッパでローンチした。

月間アクティブユーザーの数は公表していないものの、Blendleの編集マネージャーのMichaël Jarjourによれば、現在のアクティブユーザー数は「数十万人」だという。また、有料会員へのコンバージョン率はこれまでと変わらず20%のままだと彼は付け加えた。

同社の出身地であるオランダとドイツにおいて出版社とのパートナシップを築き上げたのちに、今年3月にはアメリカ市場にもビジネスを拡大したベータ版)。この1年間の成長率は300%にものぼり、今年末までには2000万記事の販売を達成する見通しだ。

Jarjourによれば、Blendleは今後しばらくの間さらなる地域拡大はせず、アメリカとドイツ市場にフォーカスをしていく方針だという。「今、私たちが最も注力している市場はアメリカとドイツです。この二つの市場を攻略するのは非常に難しいのです」と彼は話す。

Blendleユーザーの大半は30歳の人々で構成されている。これまでの最大の年齢グループは35歳であり、同社がより若い世代に読まれる記事を提供してきたことを表している。

Blendleのユニークな特徴の一つは記事の払い戻しに対応しているという点だ。読んでみて気に入らない記事があれば、ユーザーは料金の払い戻しを要求することができる。ただし、その場合には気に入らなかった理由を明確にする必要がある(そして明らかに払い戻し機能を悪用していると考えられるユーザーはプラットフォームから追放される仕組みだ)。Jarjourによれば、プラットフォーム全体の払い戻し率は約10%であり、アメリカ市場においてはそれ以下であるという。払い戻し率は「ほとんど一定の数字」だと彼は話す。

Blendleはユーザーの購入履歴のマネジメントもしている。例えば、ユーザーがある新聞社から発行された記事を複数購入し、その合計の購入金額がその発行元の定期購読料を超えた場合、その発行元の他のコンテンツが無料で読めるようになる。その背景にあるのは、記事をえり好みするために余分なお金を払う必要はないという考え方だ。

人気度だけをベースにしてニュースを発信するソーシャルサービスとは違い、Blendleでは人の手によって記事を選別しているのも特徴だ。Blendleは専門の編集チームを抱え、彼らが記事を選別することで「ハイクオリティのジャーナリズム」を実現しているのだ。

また、ユーザーの好みによってコンテンツをカスタマイズするBlendle Premium Feedと呼ばれるフィードも開発中だ。購入履歴からユーザーの好みを予測するアルゴリズムと、社内編集チームによる記事の選別を組み合わせることで実現されている。アルゴリズムによるオススメ機能を人の手で補完することで、コンテンツのクオリティを確保しているのだ。そして、ユーザーの視野を狭めるフィルターバブル(ユーザーが自分の考え方や思想に合った情報しか受け取れず、それ以外の情報から隔離されること)という現象を避けるのが目的でもある。

Blendle Premium Feedで提供される記事のほとんどはアルゴリズムによって選別された記事だ。その数は12記事ほどだが、それに人の手によって選別された「フィルターバブル防止用の」記事が3つほど加えられる。この新機能を発表したブログ記事で書かれている通り、Blendle Premium Feedはユーザーの好みと情報の多様性の両天秤策であることに間違いはない。この機能はまだテスト段階であり、そのテスト結果については「励みになる結果だった」と話している。

「フィルターではなくクオリティー」が独自のセールスポイントであるとすれば、アプリにフィルタリング機能を取り入れるのには非常に慎重なアプローチが必要だ。既存のユーザーをがっかりさせることなく、新機能の良さを理解してもらう必要があるのだ。だからこそ、Blendleのカスタマイズ・フィードの今後の成り行きには注目だ。

Jarjourはこの新機能について、「Blendle Premium Feedでは(アプリ内で答える)ユーザーの好みと、過去の購読履歴を分析することで得るユーザーの好みの予測を組み合わせることで、ユーザーの記事に対する興味の度合いを割り出します。新しい記事を一つ一つ分析することで(記事のタイプ、複雑さ、感情)この予測機能を実現させているのです。数カ月に及ぶアルゴリズムのトレーニングの結果、記事のカテゴライズの精度を高めることに成功しました」と説明する。

「編集者が選別した記事をフィードに加えることによりフィルターバブルを防止しています。また、記事の人気度やユーザーの好みという要素だけではなく、サプライズの要素も加味するようにアルゴリズムが設計されているのです」。

少なくとも「近い将来」に限っては、純粋なアルゴリズムによるオススメ機能がBlendleに導入されることはないだろう。「人間によるキュレーションはBlendleのコア要素であり続けるでしょう。15人のジャーナリストが合計で1日40時間、週7日の時間を費やして記事を選別することで、読まれるべき記事でありながら、定期購読料という壁の向こう側に隠れてしまっている記事を見つけ出そうとしているのです」。

Blendle Premium Feedは「今後数カ月中には」導入される予定となっている。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook