新たな画像誘導手術システムを開発するZeta Surgicalがステルス状態から脱して約6億円調達

ボストンを拠点とするZeta Surgical(ゼータ・サージカル)は先日、ステルス状態から脱して520万ドル(約6億800万円)のシード資金調達を発表した。Innospark Ventures(イノスパーク・ベンチャーズ)が主導したこのラウンドは、Y Combinator(Yコンビネーター)とPlug and Play Ventures(プラグ・アンド・プレイ・ベンチャーズ)による25万ドル(約2900万円)のプレシードに続くものだ。

同社はハーバード大学の卒業生であるJose Maria Amich(ホセ・マリア・アミチ)氏とRaahil Sha(ラーヒル・シャ)氏によって設立された。2人は現在、それぞれCEOとCTOを務めており、ハーバード大学医学部脳神経外科のWilliam Gormley(ウィリアム・ゴームリー)准教授が、同社の最高医学責任者を務めている。同チームのミッションは、手術室の外で行われる非侵襲的な手術のために、正確な医用画像ガイダンスを提供することだ。

脳室開窓術や神経調節療法のような手術を手始めに、Zetaは同社の技術で精度を上げ、参入障壁が低くなることによって、このような手術の民主化に貢献できると信じている。

「現在、我々が行う手術には、一方では精度が高くても、もう一方に属する手術では技術や精度がまったく欠如しているという、大きな断絶があるのです」とゴームリー氏は語る。「その理由は、これらの手術の多くが緊急手術であり、そのような患者を治療するための技術が開発されていないためです。アミチ氏とシャ氏がもたらすものは、そんな技術です。この技術は、覚醒していて実際に動き回る患者に対し、外科医チームをほとんど必要とせず、非常に迅速に適用することができます。私たちがやっていることとどれだけ違うか、言葉で言い表すのは難しいですが、このような患者にとっては、すべてがまったく変わるということです」。

画像クレジット:Zeta Surgical

Zetaシステムには、外科医が低侵襲な脳外科手術をピンポイントで行えるように支援するために開発された複合現実(MR)オーバーレイが含まれている。これに組み合わて使用できるオプションのロボットシステムは、市販のDoosan(ドゥサン)製ロボットアームを独自のツールと組み合わせて活用している。同チームは、医用画像の表示にヘッドセットも検討したが、このような手術にはまだ十分な精度がないと判断したという。

「ARとVRの両方のシステムを検討しましたが、現時点では標準的な画面ベースのナビゲーションを採用することにしました」と、シャ氏は語る。「その理由のいくつかは技術的なものです。ARシステムには、外科手術に必要な精度が足りません。ARのオーバーレイは可能ですが、脳外科手術に必要なほどの精度は得られません」。

このスタートアップ企業は、北米とアジア市場を視野に入れ、ボストンとシンガポールで非臨床試験を完了させている。2022年前半にはFDA(米国食品医薬品局)への承認申請を予定しており、承認が計画通りに進めば、夏の終わりから秋の初めには製品版を発売する予定だ。

「今回のラウンドでは、2つの主要な成果物に焦点を合わせています。1つは、装置の初期臨床試験を完了させることです」と、アミチ氏は説明する。「そしてもう1つは、FDAの認可を受け、認可後に最初の臨床パートナーたちとともに実用を開始することです。それには何よりもまず、システムの完全な開発を完了させなくてはなりません。そのためにはチームを拡大し、新しいエンジニアを雇用することが必要になります」。

画像クレジット:Zeta Surgical

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ヒトの幹細胞から培養し作った心筋細胞を利用、自動的に泳ぐロボット魚をハーバード大ウィス研究所が製作

ヒトの幹細胞から培養し作った心筋細胞を利用、自動的に泳ぐロボット魚をハーバード大ウィス研究所が製作

Michael Rosnach, Keel Yong Lee, Sung-Jin Park, Kevin Kit Parker

米ハーバード大学ウィス研究所の研究チームが、ヒトの心筋細胞の性質を利用し、自動的に泳ぐロボット魚を作り上げました。このロボット魚は、ヒトの幹細胞から培養して作り出した心筋細胞を、魚の形をしたゼラチン製模型の脇腹に埋め込んだもの。心筋細胞は糖分を動力源として、心臓が鼓動を打つように収縮をリズミカルに繰り返す性質を持っており、それがここでは魚の泳ぐ動作を生み出します。

筋肉はイオンの流入で収縮をする性質を持っています。これは通常、神経インパルスがトリガーとなって起こります。しかし、研究者はロボット魚に対して特定の波長の光に反応してイオン流入を起こす、光活性化イオンチャンネルのはたらきを持つタンパク質をいくつか発見し、ロボット魚の両脇の心筋細胞の一方が青い光で、もう一方が赤い光で収縮するように仕組みました。これにより、ロボット魚に青と赤の光を交互に当てることで、身体を左右にくねらせ、泳ぐ動作を誘発できました。

ヒトの幹細胞から培養し作った心筋細胞を利用、自動的に泳ぐロボット魚をハーバード大ウィス研究所が製作

Michael Rosnach, Keel Yong Lee, Sung-Jin Park, Kevin Kit Parker

また、研究者らは別の方法も作り出しました。それは心臓の構造から着想を得たもので、2つの脇腹の心筋細胞を中央で繋ぐ心筋細胞の球を作り、それが収縮を制御するペースメーカーの役割を果たすような仕組みです。この方法では、ペースメーカーとなる中央の細胞で始まったイオンの流入が両脇の心筋細胞に拡がり、収縮を引き起こすようになっています。

この方法の場合、普通に考えれば両脇の筋肉が同時に収縮するかとも思われますが、実際にはどういうわけか両側の細胞が互いに収縮するタイミングを調整するようになりました。心筋細胞は筋肉が収縮をした時、伸長を促すための受容体が活性化されることで、伸ばす動作に転じる性質があります。この性質によって、右側の筋肉が収縮をした際に反対、つまり左側の細胞が伸び、次のサイクルでは左が収縮した際に、右側の細胞が伸びるようになりました。この動作は、それぞれが勝手に動いていれば周期のズレからだんだん同期が取れなくなっていきますが、中央のペースメーカーとして機能する細胞が、左右それぞれの動きの同期を保つ役割を果たしました。

このロボット魚は、上のようなやり方で3か月にわたって壊れることなく泳ぐ動作を続けることができました。しかも、製作から1か月の時点までは心筋細胞の成長により筋肉が増強して性能的な向上がみられ、1秒間にその体長よりも長い距離を泳げるようになったとのこと。

この研究で生み出されたバイオロボット魚は、鑑賞するぶんには多少面白いかもしれませんが、将来的に何らかの用途に使うことを想定したものではありません。それでも、ヒトの心臓は死ぬまでに数十億回拍動を繰り返すことから、非常に高い耐久性を必要とする用途に応用するための可能性が、この研究によって少しは拡がったと言えるかもしれません。

(Source:Wyss Institute for Biologically Inspired Engineering at Harvard UniversityEngadget日本版より転載)

学生に無償でプログラミングを教えるLABOTの「CODEGYM Academy」に渋谷区も後援を表明

学生に無償でプログラミングを教えるLABOTの「CODEGYM Academy」に渋谷区も後援を表明

プログラミング学習サービスCODEGYM(コードジム)を運営するLABOT(ラボット)とNPO法人CLACKは9月28日、2021年5月より福岡市などの後援で実施してきた学生向け無償プログラミング教育支援プロジェクト「CODEGYM Academy」(コードジムアカデミー)に、新たに渋谷区が後援を表明したことを発表した。また、現在第2次募集を行っている。

LABOTは、日本で初めてISA(学資ローンに代わる所得分配契約。在学中は授業料の支払いが免除され、就職後に所得に応じた支払いを行う制度)を採り入れたコンピューターサイエンスとプログラミングのオンラインスクール。2021年5月からはNPO法人CLACKと共同で、コロナ禍で勉学や就職に苦悩する高校生、大学生を対象に「CODEGYM Academy 2021年コロナ学生緊急支援」を実施。同社によると、無償のプログラミング教育を提供し、現在503名の学生が受講しているという。

教材には、ハーバード大学が提供するコンピュータ・サイエンス科目「CS50’s Introduction to Computer Science」を使用している(LABOTは、翻訳コントリビューターとしてハーバード大学CS50の日本語版翻訳プロジェクトをCC BY-NC-SA 4.0ライセンスのもと日本語化・無償公開)。またこのプロジェクトには、GMOインターネットグループやスマレジをはじめ、アクセンチュア、HR Brain、Googleなど17社ほど企業の協賛がある。

第2次募集の概要は以下のとおり。

  • 募集人数:最大1000名(最少催行人数150名)
  • 受講料:スポンサー企業による支援により無償。PC、インターネット接続環境、副教材などの実費は受講者が負担。入校にあたり1万円の保証金の支払いが必要だが、退校・卒業時に全額返金する。また修了確定者は199ドル(約2万2200円)を支払うことで「CS50」履修証明書が取得できる
  • 応募期間:2021年9月1日〜9月30日午後11時59分59秒
  • 適正検査:2021年10月2日実施。高校数Ⅰ/ 数A相当の知識水準の論理思考問題を含むウェブテスト
  • 内定通知:2021年10月9日予定

開催期間は2021年11月6日から2022年3月末。毎週土曜日の9時から19時にオンライン授業が行われる。

応募対象は、家庭環境、学歴、性別、人種、国籍に関わらず、プログラミング学習と新たなキャリア習得に強い意欲のある日本全国の学生。ただし外国人は日本国内での就労資格を持つ人。コロナ禍で学業、進路、キャリアに影響を受けている、また家庭環境などの経済的事情を抱えている2023年卒、2024年卒予定の大学生、短大生、高専生、専門学校生、高校生など。2020年3月以降2021年9月末までに新型コロナによる経済的理由で退学した、または進学を諦めた人も含まれる。また10月2日のテスト、10月16日の入学オリエンテーションも参加必須となっている。

締め切りまであと1日。詳しくはこちらをどうぞ(ページ下部にまとめられている)。

サムスンとハーバード大学がヒトの「脳をコピペ」できる半導体チップの研究を発表

サムスンとハーバード大学が人間の「脳をコピペ」できる半導体チップの研究を発表

VICTOR HABBICK VISIONS/SCIENCE PHOTO LIBRARY via Getty Images

サムスンとハーバード大学の研究者らは、ヒトの脳の仕組みを半導体チップ上で模倣するための新しい方法に関する研究を発表しました。

Nature Electronicsに掲載された論文では、研究では人間の脳が持つ情報処理特性、たとえば消費エネルギーの低さ、学習効率の高さ、環境への適応力、自律的な認知プロセスなどといった仕組みを模倣するためのメモリーデバイスを作る方法が解説されています。

と言っても、われわれ一般人の脳みそではなかなか理解できない話であることは間違いないので、超絶簡略化して説明すると、そのデバイスは、ナノ電極アレイを用いて脳の神経細胞の接続状態をマッピング、複製し、高度に集積した3次元ソリッドステートメモリー網上に再現、各メモリーセルは、マッピングされたニューロンごとの接続強度を反映したコンダクタンス(電気の流れやすさ)を保持します。つまり脳の神経ネットワークをコピペする、というわけです。

脳の中で大量の神経細胞がどのように配線されているかはほとんどわかりません。そのため研究ではチップ上に脳を正確に模倣するのでなく”インスピレーション”によって設計しているとのこと。とはいえ、ナノ電極アレイ技術は神経細胞の電気信号を高感度で効率的に記録可能で、コピー作業、つまり神経の接続状態の抽出もかなり正確にできると研究者は説明しています。

このしくみがうまく機能するなら、自ら新しい概念や情報を吸収し、上京に適応していける本物の脳のようにふるまう人工知能システムの実現がぐっと近づく可能性もあると研究者らは述べています。ただ、人の脳は約1000億のニューロンと、その1000倍のシナプスがあるため、理想的なニューロモルフィックコンピューティングチップを作るには約100兆個ものメモリーセルを用意しなければなりません。もっといえば。それら全てにアクセスして動作させるために必要なコードも必要です。とはいえサムスンの研究は、実際に学習して自律的に思考するAIの実現へ歩を進めるものになるかもしれません。

(Source:Nature Electronics。Via SamsungEngadget日本版より転載)

着用者の新型コロナ感染を検出できるセンサー搭載マスクをMITとハーバード大の研究者らが発表

着用者の新型コロナ感染を検出できるマスクのプロトタイプをMITとハーバード大が発表

MIT

マサチューセッツ工科大(MIT)とハーバード大学の研究者らは6月28日(現地時間)、約90分以内に着用者の新型コロナウイルス感染有無を診断できるフェイスマスクのプロトタイプを発表しました。マスクには使い捨てのセンサーが取り付けられており、このセンサーは他のマスクにも装着が可能。また、新型コロナウイルス以外の検出にも応用可能です。

このセンサーは、もともとエボラ出血熱やジカ熱などのウイルスを検出するために研究されていたもの。ペーパー診断用に開発した、凍結乾燥させた細胞機構をベースにしています。ようするに、有機材料で作られたバイオセンサーです。タンパク質やRNAなどの生体分子が凍結乾燥(フリーズドライ)の状態で含まれており、これが水分によって活性化されると、標的となるウイルスの分子と相互作用を起こし、色の変化などでウイルスの有無を検出できる仕組みです。

当初はウイルスに晒される機会の多い医療従事者向けに開発していたもの。白衣に取り付けることでウイルス暴露を検出できるウェアラブルセンサーとして、2020年初頭にはすでに完成していたとのこと。その後すぐに新型コロナのパンデミックが発生し、これを検出するためのマスクの開発に着手したとしています。

マスクの内側に装着することで、呼気中の唾液に含まれるウイルスを検出可能。なお、プライバシーに配慮し、色の変化は内側でのみ確認できるようになっています。

ハーバード大学の研究員Peter Nguyen氏は、ゴールドスタンダード(精度が高く信頼性があり広く容認されている手法)である高感度PCR検査と同程度の感度で、COVID-19の迅速な分析に使われる抗原検査と同じくらいの速さで検出できるとしています。

また、新型コロナウイルス以外にも、インフルエンザやエボラ出血熱、ジカ熱など、他の病原体を検出するセンサーも取り付けられるほか、もとの用途通り、衣服に装着しての利用もできるとのことです。

まだ試作品の段階ではありますが、承認プロセスなどを経て製品化を考えている外部グループからも関心を寄せられているとのことなので、意外と早く世に出てくるかもしれません。

(Source:MIT NewsEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:医療(用語)新型コロナウイルス(用語)センサー(用語)ハーバード大学(組織)マサチューセッツ工科大学 / MIT(組織)

NVIDIAとハーバード大がゲノム解析を短時間低コストでこなすAIツールキット「AtacWorks」開発

NVIDIAとハーバード大がゲノム解析を短時間低コストでこなすAIツールキット「AtacWorks」開発人の体内のほとんどの細胞は数十億の塩基対を核に押し込んだDNAの完全なコピーを持っています。そして身体の個々の細胞は、タンパク質の中に埋まっているDNAから必要な部分だけを外部からアクセスしやすくして、たとえば臓器、たとえば血液、たとえば皮膚など、異なる機能を持つ細胞になるための遺伝子を活性化します。

NVIDIAとハーバード大学の研究者らは、仮にサンプルデータにノイズが多く含まれていても(がんなどの遺伝性疾患の早期発見によくあるケース)、DNAのアクセス可能な部分を研究しやすくするためのAIツールキット「AtacWorks」を開発しました。

このツールは、健康な細胞と病気の細胞についてゲノム内の開かれたエリアを見つけるためのATAC-seq(Assay for Transposase-Accessible Chromatin with high-throughput sequencing)法と呼ばれるスクリーニング的アプローチをNVIDIAのTensor Core GPUで実行し、32コアCPUのシステムなら15時間ほどかかるゲノム全体の推論をたったの30分で完了するとのこと。

またATAC-seqは通常なら数万個の細胞を分析する必要がありますが、AtacWorksをATAC-seqに適用すれば、ディープラーニングで鍛えたAIによって数十の細胞だけで同じ品質の分析結果を得ることができます。たとえば研究チームは、赤血球と白血球を作る幹細胞を、わずか50個のサンプルセットを分析するだけで、DNAのなかのそれぞれの産生に関連する個別の部分を識別できました。

ゲノムの解析にかかる時間とコストを削減できるようになる効果から、AtacWorksは特定の疾患につながる細胞の病変やバイオマーカーの特定に貢献することが考えられます。また細胞の数が少なくてもゲノム解析ができるとなれば、非常に稀な種類の細胞におけるDNAの違いを識別するといった研究も可能になり、データ集積のコストを削減し、診断分野だけでなく新薬の開発においても、開発機関の短縮など新たな可能性をもたらすことが期待されます。

(Source:Nature Communications、via:NVIDIAEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:バイオテック
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