会社の会議にAmazon Echo(要するに音声操作デバイス)を持っていく、というシナリオはどうだろうか? つまり今月の南部地区での売上の数字が必要になったとしよう。今までならノートパソコンを開き、Excelを忙しく操作することになったはずだが、その代わりにEchoに尋ねるだけでいい。デバイスは即座に数字を答えてくれる。
ビジネス・シーンの主流になるにはまだ距離があるとはいえ、こういうシナリオは次第に現実化しつつある。
Amazon Echo(やGoogle Home Mini)が普及するにつれ、人々はコンピューターを音声で操作することに慣れてきた。過去の例に照らしても、消費者の態度に大きな変化をもたらすような現象は、やがて、ビジネスの場にも現れることが確実だ。
キーボード、タッチスクリーンに加えて音声も利用するAIセールス・ツールのTactのCEO、Chuck Ganapathiによれば、「われわれが利用するデバイスに革新が起きている。今後は音声を利用することが理にかなった方向だ」という。「スマートフォンにマウスは付属していない。電話するときにいちいちキーボードで入力しようとは思わないだろう。スマートウォッチもそうだ。それどころかAlexaデバイスにはスクリーンも必要ない。デバイスとのコミュンケーションはこれまでに比べてはるかに直感的になる」とGanapathはいう。
先月末のAWS re:InventカンファレンスのキーノートでAmazonの最高技術責任者、ワーナー・ヴォーゲルズは「われわれはこれまでテクノロジー上の制約のせいでコンピューターとのコミュンケーションがひどく不便なものになっていた」と指摘した。Googleで何かを検索しようとすればキーワードをタイプ入力するしかなかった、それしか方法がなかったからだ、ヴォーゲルズはいう。
「今後のデジタル・システムとのインターフェースは機械の都合が優先されることはなく、人間が中心となっていく。人間が自然に持つ能力を中心としたインターフェースをデジタル・システムに設けることで環境のあらゆる部分が活性化される」という。
Amazonはもちろんこの方向を後押しすることに熱心だ。re:InventではAlexa for Businessがクラウド・サービスとして発表された。もちろん他のクラウド企業も音声機能をデベロッパーに提供し始めている。 ビジネス・サービスやアプリに音声サービスを組み込みたいからだ。
AmazonがAlexa for Businessで初めてビジネス・シーンを直接のターゲットする動きを示したのに対し、他のスタートアップはこれより早く、Echoをビジネスに統合する実験を行っている。たとえば、ビジネス・インテリジェンスとアナリティクスのツールを提供するSisenseは 2016年6月に早くもEchoをインターフェースに採用している。
しかし大手クラウド事業者が提供するサービスがいかに魅力的でも、社内データを外部に出すことを好まない企業も多い。このことはさる11月にCiscoがSpark向けにVoice Assistant for Sparkを提供したことでも明らかだ。企業がインハウスで音声を利用できるようにするこのテクノロジーは5月に1.25億ドルで買収したMindMeldが開発したもので、ビジネスの会議で一般に必要とされるタスクを音声で命令できるようにするのが狙いだ。
また11月にはビジネス向け音声駆動ソフトとハードを開発するスタートアップのRoxyは220万ドルのシード資金を得ている。同社はまず手始めに接客を重要な要素とするサービス産業をターゲットとしている。もちろんRoxyの狙いはサービス産業にとどまるものではないが、同社が最初に得た貴重な教訓は、社内情報をAmazon、Google、Apple、Microsoftのような大手外部企業に渡そうとしない会社も多いということだった。多くの会社は顧客データや顧客とのやりとりを社内のみに留めておこうとする。こうしたニーズに対してRoxyが提供する音声インターフェースは有力なソリューションとなるだろう。【略】
2018年を迎えてこうした実験は有力クラウド事業者のサービスとしても、スタートアップ企業の独自のソフトウェアとしてもも数多く出てくるだろう。もちろんキーボードとマウスがいきなり無用となるということではない。しかし音声が便利な場面で音声をインターフェースに利用するというのは自然な成り行きだ。多くの場面で音声はタイプの手間を省き、コンピューターとのコミュンケーションをさらに自然なものとするだろう。
画像: Mark Cacovic/Getty Images
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)