ニュース記事の栄養成分表示で偽情報と戦うOur.News

Our.News(アワーニューズ)というスタートアップは、ユーザーをニュースの消費者として賢くするための努力を続けている。言い換えれば同社は、まったく手に負えない、ある大きな問題に立ち向かっている。そのひとつが、インターネット上に蔓延する膨大な量の偽情報だ。Our.Newsの創設者でCEOのRichard Zack(リチャード・ザック)氏は「悲しいことに、それが真実かどうかを故意にわかりづらくする人たちが世界には無数にいます」と話す。

同時に、メディアを信じない人や、ファクトチェッカーを信じない人(さらに、真実では考え方が変わらない人)も大勢いる。これらすべてが、何を信じるべきかを誰も知らない、または自分の信念を後押ししてくれる話だけを単純に信じる人たちばかりの環境に積み上がっている。

「人々に真実を告げても、偽情報と戦うことはできません。信じてもらえないからです」とザック氏。ではどうしたらいいのか?そのひとつが「ニュースの栄養成分表示」だと彼は言う。「良いか悪いかを示すものではなく、買うべきか止めるべきかを指示するものでもありません。その判断は消費者の自由です」。

ある意味このアプローチは、インターネット上の情報源を格付けするNewsGuardと似ている。実際、ザック氏も「私たちはNewsGuardと彼らのやり方を真剣に支持しています」と話している。だが彼は、パブリッシャーの評価が十分でないと指摘する。そこでOur.Newsは、個々の記事のラベル付けを開始したのだ。彼はそれを、どちらもグラハム・ミルズが製造するシリアルであることを知るに足る情報がない中で「ラッキーチャームかチェリオかで迷う」ようなものだと例えた。

別の言い方をすれば、パブリッシャーの話を鵜呑みにしないほうがいいということだ。超一流のメディアでも間違いはある。なので、彼らが何を主張しているのかを理解し、その情報源と、その主張が独立したファクトチェッカーの審査を受けたか否かを知っておくべきだ。

この記事は私たちのデータベースにインデックスされていません、追加しますか?

Our.Newsのラベルは、FirefoxかChromeの拡張機能、またはiOSで使える。このラベルには、Freedom Forumによるパブリッシャーの説明、AllSidesによる偏向評価、記事の情報源、著者、編集者に関する情報、PolitiFact、Snopes、FactCheck.orgなどの情報源によるファクトチェック情報、「クリックベイト」や「風刺」などの分類、ユーザーの評価とレビューといった情報が含まれる。

Our.Newsでは、1日におよそ5000件のラベルを作成し、今日までに60万件にのぼったと話している。もちろん、我々が読む記事にこのラベルが付いてないことのほうが多いが、そんなときでも、Our.Newsはパブリッシャー情報だけでも提示してくれることがある。また、ボタンをクリックしてその記事を彼らのシステムに追加することもできる。

「私たちはあえて、(記事に関する)客観的な事実と主観的な観点を混合しました」とザック氏。「それが解決策だと考えたのです。[中略]主観ばかりでは単なる人気投票になってしまう。客観性だけでは、誰が真実と判断するのか? となります。この2つを私たちは混在させ、すべてを栄養成分表示ラベルに凝縮したのです。それにより、ニュースの消費者は、より早く自身の判断ができるようになります」。

彼はまた、ユーザーによってこのラベルの扱い方が異なることに気がついた。たとえば、それでもファクトチェッカーは信用できないという人もいるが、パブリッシャーに、通常のコメント欄よりも体系化された形で意見を伝える方法を提供するという価値はあると、ザック氏は主張している。

また、ユーザーによる評価は、評価した人のラベルへの関与度に基づいて比重が変わるという。パブリッシャーの情報、情報源、ファクトチェックを読み飛ばした人による評価は、それらすべての情報を慎重に考慮した人の評価よりも価値は低めになる。

こうした現在の消費者向けの情報配信に加え、Our.Newsは、パブリッシャーやその他の業者がラベルを組み込めるサービスも開始した。ザック氏によるとこれは「ニュースパブリッシャー、コンテンツ収集サイト、ソーシャルネットワーク、記事を公開してるあらゆる組織」が利用できるという(これが同社の収入源にもなる)。

彼らの願いは、Our.Newsのパートナーたちがこのラベルを使うことで、読者がコンテンツをもっと楽に信頼できるようになり、そうした読者からの意見が集めやすくなることだ。ある程度のカスタマイズが可能だが、パブリッシャーはラベルの実際の内容を変更することはできないとザック氏は念を押していた。

関連記事:Facebookのファクトチェッカーは精を出す(未訳)

画像クレジット:Jon S Flickr under a CC BY 2.0 license

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(翻訳:金井哲夫)

インド政府が異論噴出の法案への支持を求める偽キャンペーンで炎上

インドの政権与党であるインド人民党(BJP)は、異論噴出の法案への支持を求める虚偽の疑いが濃厚なTwitterキャンペーンで非難されている。

まずは話の背景を解説しておこう。インド政府は、先月、イスラム教徒が多数を占める隣国のアフガニスタン、バングラデッシュ、パキスタンからの非イスラム教徒少数派移民がインドの市民権を取得しやすくする市民権法改正法案(CAA)を可決した。

しかし批評家たちはこれを、国民登録制度の法案と結びつけ、インドに住むイスラム少数派を差別し、宗教にとらわれないインドの伝統をなし崩しにするものだと警告している。

この数週間、インド各地では、少なくとも数万人の市民が法案に反対する平和的な抗議活動に参加した。インド政府は抗議を鎮めようと、多くの地域で一時的にインターネットモバイル通信を遮断するなど、これまでのところ法案撤回の意志は示していない。

それどころか、1月4日にインド政府は法案への支持を求めて新しい手に出たようだ。インドのAmit Shah(アミット・シャー)内務大臣は1月2日、「CAA法支持」の意志表明を行う番号に電話をかけるよう国民にツイートした。

すると1月4日になって、数千人のBJP党員たちがTwitterでその電話番号を拡散し始めた。その番号に電話をかければ、就職機会や無料モバイルデータ通信、Netflixの無料アカウント、果ては「寂しい女性」との出会いが得られるといったご褒美が約束されている。

CAA支持を求める4つの写真にわたる物語……
・不在着信でCAAへの支持を示してください
・パーティーの電話番号です。気軽に不在着信を。よろしく……
・今日はすごく退屈なのでフォロワーのみなさんに私の電話番号をシェアします。電話してね
・携帯をなくしました。誰か、この番号に電話して
・電話してね

非常事態の非常手段……

Netflixを6カ月間無料で視たくないですか?8866288662に電話をしてユーザー名とパスワードを取得してください。先着1000名様限りのご優待です

Netflix Indiaこれは完全なフェイクです。タダでNetflixを見たい方は、普通の人がやるように他人のアカウントを使ってください

ハフィントンポストのインド版は、異論の多い法案への支持を集めるためのこの動きを、最新の「BJP策略」と呼んでいる。インドのファクトチェックのための団体BoomLive(ブームライブ)は、これを行っている人の多くは与党に所属していると伝えている

私たちは、BJPとTwitterの広報担当者にコメントを求めている。

議会で法案を通すために、大勢の人間を動員して、セックスや仕事やNetflixのアカウントを餌にして支持を集めるなんてことは、70年の歴史の中で初めて

主張が真実であればの話だが、BJPがTwitterを使って積極的にそのビジョンを宣伝したのはこれが初めてではない。2017年、BuzzFeedは、インドでのTwitterのトレンド、トップ10の中に政治的なハッシュタグが数多く見られ、組織的なキャンペーンの結果であったと報じている

ファクトチェックのウェブサイトであるAlt News(オルト・ニューズ)の共同創設者であるPratik Sinha(プラティック・シンハ)氏は、昨年、Googleドキュメントに保存された声明文にアクセスして内容に手を加えれば、いとも簡単に大勢の政治家を操って特定の内容のツイートをさせることができことを実証して見せた。

先月、カシミールに雪が降った。大変な緊張状態にあり、4カ月以上もインターネットが遮断されている地域なのだだが、米国のTwitterでトレンドになっていた。それが不可解なことに、カシミールがトレンドのリストに載るようになった理由を多くのジャーナリストから質問された途端に、そのトレンドは消えてしまった。

カシミールに関する「トレンド」のことがすごく不思議。8月からインターネットが使えなくなっているのに。広告でもない。@Jack、どうなってるの?

我々が話を聞こうとすると、インドのTwitterの広報担当者は、トレンド・トピックの仕組みを説明しているFAQページを見るようTechCrunchに伝えてきた。だが、私たちが求める答はFAQの中にはなかった。

画像クレジット:Dhiraj Singh / Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

Twitterの政治広告禁止はプラットフォームの本当の問題点を隠す目眩しだ

インターネットのプラットフォームでは、何もかもが逆さまに感じられることがある。政治とパブリッシング、文化と商売、そしてそう、嘘のための真実のすり替えだ。

今週は、Twitter(ツイッター)のCEOであるJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏の周囲に広がる光景に奇妙な逆転現象が起きていた。その製品が何のプラットフォーム(舞台)になっているか(たとえばナチス)を示すモラルの歪曲を真後ろで支えているハイテク企業のCEOとして名高い彼が、政治的発言の倫理性に泥縄のツイートストームを展開したのだ。

実際、彼は、民主主義と社会を擁護する態度を示し、人々の生活に強大な影響力を与える巨大無料プロパガンダ帝国を運営しつつ、現実からはまったく遊離したもう一人のハイテク兄弟であるFacebook(フェイスブック)のMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏の師匠だ。

したがって、完全な逆転とは言えないかも知れない。

要は、Twitterは今後は政治広告を受け付けないという、それだけの話だ。

Jack(ジャック)
私たちは11月15日に、いくつかの例外を含む最終ポリシーを発表する(例えば、有権者登録を促す広告は認められる)。新しいポリシーは、広告主への変更の周知期間を設けるため、11月22日から施行される。

Jack(ジャック)
最後通達。これは言論の自由とは関係ない。問題は、金でリーチを伸ばすことだ。政治的発言のリーチを金を払って伸ばすことには計り知れない悪影響があり、今日の民主主義の社会基盤は、その準備ができていない。これに対処するために、一歩後退することには意味がある。

一方、Facebookは、政治広告のファクトチェックはもう行わないと先日発表した。つまり、Facebookに料金を支払って拡散する限りは、嘘でも構わないということだ。

Facebookの立ち位置は、表面上はハッキリしていると言えないこともない。すなわち「政治に関して、我々は倫理感を持ち合わせていない」と要約できる。おそらく「だから偏向していると責めることはできないよ」と論点をずらそうとしているのだろう。

だが、これは何も不合理な推論ではない。政治キャンペーンに対して倫理的基準を一切設けないことで、Facebookは最も倫理観の乏しく、身勝手な規範しか持たない者たちの味方になっている。そのためその立場は、控えめに言ってもトゥルース・ライト(現実の希薄化)だ(どちらの政治陣営が優勢かを自分で決められる)。

Twitterの立場にも、やはり表面的な明確性がある。全面禁止だ。政治広告も問題提起広告もみなゴミ箱行き。だが私の同僚Devin Coldewey(デビン・コールデウィ)は、それが政治広告なのか(またはそうでないのか)を、さらに数少ない例外には何が該当するかを明確に判断しなければならない状況になると輪郭がぼやける傾向にあると、すぐさま指摘していた。

事実、Twitterの定義には、すでに疑わしい部分がある。例えば、気候変動は政治問題だと明確にしている部分だ。そのため、科学に関する広告も禁止されることになる。その一方で、おそらく大手石油企業からの金にはオープンで、気候変動を招く汚染ブランドの宣伝を許している。そう、めちゃくちゃなのだ。

Will Oemus(ウィル・オリマス)
問題提起広告とは何かをTwitterはどう決めてるのか?

Jack(ジャック)
私たちは、政治広告だけを禁止して、問題提起広告は猶予しようと考えた。だが、政治家だけが訴えたい問題のための広告枠が買えるのでは不公平だと思った。だから、これも禁止する。

Vijaya Gadde(ビジャヤ・ガディ)
現在の定義はこうです。1. 選挙や候補者に言及している広告。2. 国家的に重要な立法上の問題(気候変動、医療、移民、安全保証、税金など)。

Twitterの基準を挑発したり迂回を試みる動きは、必ず起きる。このポリシーは単純に見えるが、そこには同社の策略的な計算と、偏向や道義上の失敗を責められたときの逃げ道を確保するためのあらゆる判断が透けて見える。それでも、コンテンツの基準においては、ルールを定めることは簡単で分別のある行動であり、そうあるべきものだ。こうしたプラットフォームが本当に苦労するのは、その適用段階だ。

それもまた、Facebookが政治広告に関するルールを一切定めないという実験を決断した理由になっているのだろう。政治的発言のお目付役を押し付けられたくないという(はかない)望みのためだ。

それが戦略なのだとしたら、Facebookはすでに呆れるほど愚鈍で何も聞かないふりをする者を目指していることになる。同社は、自身の消極的な姿勢が招いた故意にポリシーに逆らった広告の摘発を強いられるという、今まさに渦中にある広告の悪夢への準備を整えたところだ。自ら望んで腐敗した警察官となったのだ。周囲から、パラパラと拍手が聞こえる。

とは言え少なくともそれは、自らの倫理感を迂回して金儲けをしている自分自身への慰めとしては役に立っている。

Erick Fernandez(エリック・フェルナンデス)
アレクサンドリア・オカシオ・コルテスからマーク・ザッカーバーグへの全質問。予備選挙中の共和党員に向けてグリーン・ニュー・ディールに彼らが賛成票を入れたという広告を私が出すことはできますか?』

Twitterの政治広告に対する逆のポリシーも、すでに述べたとおり批判は免れない。実際、政治広告の全面禁止は、一般の認識度が低いところからスタートする新人候補者に不利になるとの批判が起きている。その議論のエネルギーを、選挙費用の厳格な支出制限を含む、選挙運動資金調達の広範な改革に費やしたほうがましかも知れないが、すべての候補者が平等に戦えるようにして政治活動を再起動したいと本当に考えるならそれも必要だ。

また、不正な資金を厳格に管理できる規制も大切だ。それは、変身マントでマイクロターゲッティングによるハイパーコネクティビティーの姿をぼかしながら、嘘を大衆の真実だと偽って宣伝するために民主主義を買収する、あるいはインターネットプラットフォームのリーチとデータを乱用してプロパガンダの目に見えない種を播いては内部から民主主義を変貌させてしまうことを阻止するものだ。

説明責任を負わず民主主義の監視を受けず、豊富なデータを抱える億万長者から安く影響力を買おうという歪んだ関心が、新しい歪められた普通になっている。しかし、それは間違っている。

別の問題も伝えられている。政治宣伝のプラットフォームとしてTwitterは決してメジャーではないことを考えると、 同社の政治広告の禁止は目くらましだと言える。

2018年、米国の中間選挙の間にTwitterが政治広告で得た収益は、300万ドル(約3億3000万円)に満たない。

Ned Segal(ネッド・シーガル)
質問を受けたので:この決断は金ではなく原則に基づくものです。背景として、2018年中間選挙の際に得た政治広告の収益は300万ドル以下であることを公表している。Q4ガイダンスでも変化はない。私はTwitterで働くことに誇りを持っている!

Rich Greenfield(リッチ・グリーンフィールド)
Facebookは政治広告は収益の0.5パーセントだと言っている。2019年の政治広告の予想収益は最大で3億5000万ドル(約380億円)。Twitterは政治広告は300万ドル以下と言っている。2019年の予想収益の0.1パーセントであることを示している。

もうひとつ、Twitterにオーガニックなツイートとして投稿されたものはすべて、政治的な召集の呼びかけに利用できる。

Natasha(ナターシャ)
もちろん、実質的にはTwitterはみんな政治広告。

このでたらめなオーガニック”なツイートは、Twitter上の正真正銘の政治活動だ(ですよね、トランプさん)。

個人の純粋な気持ちではない、意図した(料金を払っていることが多いが)フェイクである偽のオーガニック”ツイートも含まれる。これはゴーイング・ネイティブ”(現地人に染まる)広告と呼ばれている。嘘を真実であるかのように言い広めることを目的とした偽ツイートだ。ボット軍団(偽アカウント)によって増幅され、見た目は普通のツイートを装い(Twitterのトレンドの話題が標的にされ)拡散される。関心を惹くことを目的とした、真実に逆らい歪める、一般の世論を模したジェスチャーとしての非公式”な広告もどきの構造だ。要するに、プロパガンダだ。

ボットのネットワークで宣伝ができるのに、なぜわざわざTwitterの政治広告に金を出す必要があろうか?

ドーシー氏も、一部の著名な政治家(これもまた基本的にトランプだけど)のツイートにはプラットフォームのルールを適用しないハイテク企業のCEOであることを忘れてはいけない。

なので、Twitterが政治広告を禁止すると言っても、世界の指導者たちのツイートには今後もダブルスタンダードが適用される。具体的には、米大統領の独裁的で右翼思想の政治的目標を達成するための弱い者いじめの暴言や脅しを許していることだが、Twitter社はその矛盾を両立させている。

最近になって、Twitterはポリシーをわずかに変更した。無法な世界的リーダーのツイートのリーチに制限を加えるというのだ。だが、引き続き2つのルールで運用される。

この葛藤を自身のツイートストームの中で前面に押し出したドーシー氏の行動は評価できる。彼はこう書いている。

インターネットによる政治広告は、民間の議論にまったく新しい課題を提示しています。機械学習によるメッセージの最適化やマイクロターゲティング、野花しの虚偽情報、ディープフェイクなど。これらすべてが急激に増大し、発達し、圧倒的な規模に発展しています。

こうした課題は、政治広告のみならず、あらゆるインターネット・コミュニケーションに影響を及ぼします。その根本にある問題に、さらなる負担や複雑性、費用をかけずに対処することが得策です。二兎を追うものは一途も得ず、私たちの信頼にも傷をつけます。

ドーシー氏にしては、よい文章だ。彼とTwitterの長年にわたる言論の自由原理主義のことを思えば、驚くほど良い。同社は、表現の自由をインターネット上に蔓延させるために、故意に目をつぶり耳を塞いで、一般社会による制限に対する盾になることで評価を得た。それがなければ、あらゆるひどいことを増幅させる自由”が、マイノリティーを一方的に傷つけ、言論の抑圧につながってしまう。

いわゆる言論の自由は、リーチの自由とは違うと、ドーシー氏は今になって話している。

今回の政治広告禁止に向けて、政治問題の定義に関するTwitterの判断にはいくつか残念なものもあったが、それは、まだ同じ熱い空気の中でもまれているFacebookやザッカーバーグ氏とは対照的だ。民主主義を、自身が所有する会社ですら忠誠を示すことができない二元論的イデオロギーに売り払うという、つじつまの合わないプラットフォームのポリシーを正当化しようとする姿は、硬直しているように見える。

Facebookの収支報告会の最中というドーシー氏のツイートストームのタイミングは、まさにその点を突こうと意図したものだ。

「ザッカーバーグは、複雑性の中に溺れかけている会社を経営しているにも関わらず、微妙な意味合いも、複雑性も、文化的特異性も関係なく、人は言論の自由に賛成か反対かのいずれかでなければならないと信じさせたいようだ」と、文化史家Siva Vaidhyanathan(シバ・ベイドヒャナサン)氏は、ザッカーバーグ氏の言論の自由に関する宣言”を受けた最近のガーディアンの記事で、道徳観を欠いたFacebookを批判した。「彼は、我々の議論をできる限り抽象的に観念論的にしたがっている。Facebook自身のことをあまり近くから見ないで欲しいと思っている」

言論に関するFacebookの立場は、単に抽象論の中でのみ成立する。その広告ターゲティング事業が、規制されていない曖昧さの中の道徳的な怒りとは無縁の場所でしか運用できないのと同じだ。そこに焼き付けられた偏見(アルゴリズムとユーザーによって生成される)は、目に見えない安全なところに隠されているため、人々は、そのことと自分にもたさされる被害とを結び付けて考えることができない。

次々とスキャンダルを生み出すその企業が、今ではそのでたらめなイデオロギーのために議会から呼び出されるまでになったことは驚きに値しない。ここ数年間のプラットフォーム規模の虚報や世界的なデータ漏洩スキャンダルのおかげで、一部の政治家たちはこの問題に詳しくなってきた。彼らは、Facebookのポリシーが現実世界ではどのような形で実行されるか、つまり不正選挙や社会的暴力だが、それをよく見て体験してきている。

関連記事:政治広告の嘘を容認しているとして英国議会がFacebookを非難(未訳)

これらの、プラットフォームの巨人を問題視するようになった政治家たちには、反社会的なソーシャルメディア事業に直接効く有意義な規制を立案することが期待される。

とりわけ、Facebookの自主規制は、いつだって新手の危機管理広報に過ぎない。本物の規制を、先手を売って回避するためにデザインされている。それは、私たちの関心を逆手に取って収入源を堅持しようとする冷笑的な試みだ。同社は、その有害な言論問題の修正に必要な体系的な改革に着手したことは一度もない。

つまるところ問題は、毒性と分断がエンゲージメントを高め、関心を引き、Facebookに膨大な利益をもたらしているということだ。

Twitterは、そのビジネスモデルからは少々距離を保っていると言ってもいい。その理由は、関心を独占して利益を生み出すことに関して、Facebookの大成功の足元にも及んでいないことの他にも、自分の興味に従ってネットワークを構築したりフォローできる大幅な自由をユーザーに与えていることがある。そこでは、アルゴリズムの介入は受けない(たしかにアルゴリズムを使ってはいるが)。

またTwitterはしばらくの間、改革と自称する道を進んでいたことがある。最近になって同社は、プラットフォーム上で会話的健康の推進に責任を持ちたいと語っている。そこにはすでに会話的健康があると言い切れる人間はいないものの、政治広告の禁止がTwitterに迅速な広報の勝利をもたらしたこととは別に、私たちはついに何らかの行動を見ることになりそうだ。

しかし、本当に骨の折れる仕事は今後も続く。例を挙げるなら、悪意のプロパガンダで公的空間が汚染される前にボット軍団を摘発するという作業だ。Twitterはまだ、その可能性が高まっているとは言っていない。

Facebookも、オーガニック投稿を装った政治的なフェイク・コンテンツの尻尾を捕まえられずにいる。フェイクは、ヘイトと嘘を撒き散らし、私たちの民主主義の負担で儲けている。

その手のコンテンツに関して、Facebookは検索可能なアーカイブを提供していない(今では政治的と判断された有料広告には提供がある)。つまり、グループやページでの無料の投稿という、民主主義を狡猾にハッキングする不正資金の隠れ蓑を提供し続けているということだ。

さらにFacebookは、有料政治広告の影響力を隠していたカーテンを開いて透明化すると宣言してはいるが、みごとに失敗続きだ。その政治広告用APIは、学術研究の世界からは目的に適わないいまだに非難されている。その間も、Facebookのポリシーは、政治家による嘘の広告を容認し、外部のファクトチェック団体への圧力を強めている。

Facebookは、組織的な非認証行為と彼らが遠回しに呼ぶ増幅とリーチ稼ぎのために設定した偽アカウントのネットワークを排除する際に、問題となるプロパガンダが米国内から発せられていて、政治的右派に傾いている場合は、偏向した基準を適用している点でも非難されている。

シバ・ベイドヒャナサン(10月26日付けツイート)
4000もの広告主がブライトバートに金を使わなくなったとき、なぜFacebookがブライトバードに資金を出すようになったかを考えて欲しい。
【訳注:ブライトバードは右派のニュースメディア】

Facebookは、例えば米国の保守系ニュースサイトThe Daily Wire(ザ・デイリー・ワイヤー)の内容を専門に広めているとされているFacebookページのネットワークは「米国の実在の人が運営する本物のページであり、彼らは我々のポリシーには違反していない」と主張し、それを否定している(そうした結論に至った詳細は、私たちには明かされていない)。

同社の広報担当者は、こうも言っている。「将来、Facebookのこうしたページに関する情報を人々がより多く得られるよう、透明化を進めています」

同社が約束しているのは、いまだにさらなる透明化”であって、実際に透明化するとは明言していない。そして、Facebookは、法的拘束力が一切ないポリシーの解釈と適用を行う唯一の裁判官で居続けている。つまり、いかさまの規制だ。

さらにFacebookは、国内でヘイトスピーチを撒き散らす特定の人物による有害なコンテンツを何度か禁止してきたものの、例えばAlex Jones(アレックス・ジョーンズ)氏のInfoWars(インフォウォーズ)ページを削除したとき、まったく同一のヘイト・コンテンツが新しいページで復活するのを止められなかった。または実際に、同じようなヘイト思想を持つ複数の人物が、別のFacebook内の公的空間で別のアカウントを持っていたりもする。ポリシー適用に一貫性がないのはFacebookのDNAだ。

それとは真逆に、ドーシー氏の政治広告に反対する姿勢をとるという判断は、良い意味で政治家的に思える。

また、基本的なレベルにおいて、明らかに正しい行動だった。政治活動で集めてきたよりも、ずっと大きな関心を金で買うということは、豊富な資金を持つ人間に有利に働くために逆進的だ。とは言え、Twitterのスタンスでも、金が流れ続け、政治を汚染しているこの崩壊したシステムを立て直すことはできない。

しかも、オーガニックなツイートの形式に収まっている場合に、Twitterのアルゴリズムが政治的発言をどのように増幅させるかについて、本当に詳しいところはわかっていない。そのため、そのアルゴリズムによって強調されるのが、煽動的な政治的ツイートなのか、または情報を提供し団結を求めるツイートなのかは判然としない。

前述したとおり、Twitterのプラットフォームは、全体が政治広告だと言うことができる。同社は、独自の(そして商業的な)エンゲージメント性”を基準にしたツイートを表に出すか抑制するかの判断を、実際にアルゴリズムにさせている。つまり、ツイートされた言葉をどれだけ広く伝えるか(または伝えないか)を選別ことこそが、Twitterの事業なのだ。

そこに数多くの政治的発言が含まれることは明らかだ。トランプのお気に入りのプラットフォームがTwitterなのは、理由があってのことだ。政治広告を禁止したところで、そこが変わることは一切ない。したがって、今回もまた、ソーシャルメディアの自主規制は、よくても端っこを少しいじくる程度のものと考えざるを得ない。

Twitterが政治広告を禁止したのは、関心を集めることを目的としたインターネット・プラットフォームに焼き付けられている構造的な問題から人々の目を逸らすためだと、皮肉な見方もできる。

世界の民主主義と社会が格闘を余儀なくされている有害な政治的論説の問題は、インターネット・プラットフォームのコンテンツの配信方法と公的な討論の作り方が招いたものだ。そのため、本当の鍵となるのは、これらの企業が私たちの個人情報をどのように使って、個々の私たちが目にするものをどのようにプログラムしているかだ。

私たちが心配しているのは、Twitterの政治広告禁止によってドーシー氏が何かのついでに話した根本の問題”から人々の目が逸れてしまう危険性だ(おそらく彼は、彼らの理念に別の定義を持ち出すであろうが。ツイートストームの中で彼は「私たちのシステムが虚報を広めているという批判を止めさせる努力をしている」と話していた)。

Facebookの、同じ問題に関する一般の診断は、つねに、じつに退屈な責任転嫁というものだ。それは単に、人間の中には悪い者もいるがゆえに、悪いものがFacebookでプラットフォーム化されることもあると言っているに過ぎない。問題の原因を人間性にすり替えている。

別の言い方をしよう。インターネット・プラットフォームが有害なプロパガンダを拡散することに関連するすべての問題に共通する核心は、私たちの関心を操作するために人の個人情報を集めているという根本的な事実だ。

マイクロターゲティングという事業(行動ターゲット広告とも呼ばれる)は、すべての人を、なんらかのプロパガンダのターゲットにする。これは、ドナルド・トランプにやられても、ディズニーにやられても、気分のいいものではない。左右非対称だからだ。不均衡だからだ。搾取的だからだ。そして本質的に反民主主義的だ。

またそれは、産業規模で個人情報をあまねく収集し大量備蓄するよう奨励する。したがってそれは自ずとプライバシーの敵であり、安全を脅かし、大量のエネルギーとコンピューター資源を消費する。なので、環境面から見ても不快なものだ。

そしてそれはすべて、非常に卑しい目的のために行われる。他の人たちがあなたに何かを売りつけるために、あなたの情報を売り渡すというプラットフォームだ。石鹸も政治的意見も同じ扱いだ。

このプロセスをザッカーバーグ氏は、Relevant ads”(関連広告)と命名した。下流で私たちの関心を売るのに必要な個人データを吸い上げるパイプに油を注すための億万長者の巧妙な嘘だ。

マイクロターゲティングは、個人にとっても(気味の悪い広告、プライバシーの喪失、偏向やデータ乱用の危険)、また、まったく同じ理由で社会にとっても不愉快なものだ。さらに、選挙への不当な介入や、苦労して勝ち取った民主主義を敵意に満ちた勢力が踏みにじるなど、社会レベルでも深刻な危険をもたらす。

個人のプライバシーは、公衆衛生と同じ、公共の利益だ。病気や、まさに虚報に対する予防接種は、私たち全員を感染症から守ってくれる。

間違いのないように言えば、マイクロターゲティングは、ターゲット広告の料金をプラットフォームが受け取ったときにだけ実行されるのではない。プラットフォームは、つねにこれを行っている。兵器化されたレイヤーを設け、扱うものすべてをカスタマイズしているのだ。

これが、ユーザーが自由にアップロードした情報を大量に配布しプログラムする方法だ。彼らが日課として作り上げている人々の日常の混沌の中から最大限のエンゲージメントを引き出すために、情報を魅力的でパーソナルな物語に作り替える。それを、人間の編集者を大勢雇うことなく行っている。

Facebookのニュースフィードは、行動ターゲット広告が関心を引きつけ保持するのに使用しているものと同じデータ駆動の原則に依存している。Twitterのトップツイート”も、ビューをアルゴリズムでランク付けしている。

これは、ソーシャル”サービスに詰め替えられた大規模な関心操作のプログラムだ。プラットフォームがインターネットのユーザーをスパイして学んだことを、対立を煽り、個人の関心を縛りつけるために利用している。たとえその目的が、私たちを互いに敵対させることであったとしてもだ。

ある特定の政治的な意見を投稿すると、文字通り秒速で、何年も会っていなかったFacebookの友達”から暴力的な反論が示されるのは、そのためだ。Facebookは、彼らが所有するデータのプリズムを通してあらゆる人を神のように監視しているため、その投稿に強烈なパンチを与えることができる。データは、エンゲージメントを跳ね上げる可能性がもっとも高い順にランク付けされ、関連する”ユーザーに表示するようアルゴリズムにパワーを与える。

本物の友だちのグループにそんな遊び感覚のストーカーが含まれているかどうかは、誰にもわからない。みんなの会話を盗聴し、定期的にチェックして、集めた情報を使って友だちを喧嘩させて楽しんでいるような輩だ。そんな人間がグループの親睦を高めるなんてことはあり得ない。しかしそれがFacebookが監視下に置いたユーザーの扱い方だ。

直近の米議会公聴会で、痛い質問をされたザッカーバーグ氏が気まずそうに沈黙したのも合点がいく。

政治家たちも、ようやくデータのためにコンテンツを扱い社会技術プラットフォームに埋め込まれた本当の根本的問題”を理解し始めたようだ。

私たちを招き入れ、注視してもらうことで永遠の親密な間柄を築こうとするプラットフォーム。しかしそれには、スパイによって学んだ、さらなるスパイ技術と、より早くデータを悪用する技術が使われている。

つまり政治広告の禁止は、聞こえはいいが、目眩しだ。あちらからはあらゆる方向から監視されているにも関わらず、こちらからは彼らが何をしているのか見せないようにしているマジックミラーのようなプラットフォームが、社会に反抗して固持しているものを粉砕できる本物の手段は、プライバシーを完全に守れるカーテンを閉じることだ。個人情報に対するターゲティングを許さないことだ。

投稿や広告を表示させるのは構わない。投稿や広告を、少数の一般的な情報に基づいて、その文脈の中で表示するのもいいだろう。住宅や日用品の広告を見たいかどうか、私たちに聞いてもいい。双方で話し合ってルールを決めるのだ。それ以外のこと、つまり誰と話し、何を見て、どこへ言って、何を言ったかなど、プラットフォームの内外での行動については、厳格に立ち入り禁止とする。

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(翻訳:金井哲夫)

荒らしの手口から正しいメディア・リテラシーを学ぶゲーム

ネット上の偽情報に対抗する最良の薬は、正しく物事が判断できる十分な情報を社会が備えることだ。ただ問題は、そのような普遍的教育に近道がないことだ。

フィンランド国営放送YLEは、ゲーミフィケーションの力を利用することで、注意力を高め、荒らしの手口を理解して、より多くの人が悪質なインターネット上のフェイク情報を見破れるようにしたいと考えた。そうして出来上がったのが、オンラインゲーム(Troll Factory」(トロール・ファクトリー、荒らしの工場という意味)だ。文字どおり、憎たらしい荒らしに成りきることができる。

ゲームは「本物のソーシャルメディアのコンテンツを使用しています」という事前警告から始まる。不快な気持ちになるかも知れないという警告だ。プレイを進めると、ソーシャルメディアで実際に拡散したイスラム恐怖症のスローガンやネタが登場する。なるほどこの警告には、相応の意味がある。

ゲームは、メッセージアプリで会話をするという形をとっていて、トロール・ファクトリーのボスから、仮想スマートフォンで反移民感情を煽るよう命令される。そして、投稿する記事と、それを拡散させる方法を選ぶ。

インターネットで偽情報を流す戦術は、世論の二極化を目的にしている。ゲームでは、ソーシャルメディアで陰謀論を織り込んだネタを流したり、実際の事件を悪用してフェイク情報を拡散させたり、さまざまなデモグラフィックやプラットフォームに向けて憎悪に満ちたコンテンツをマイクロターゲティングしたり、有料のボットを使ってプロパガンダを拡散して、実際よりも人々の嫌悪感が強いように見せかけるといった方法が示される。

トロール・ファクトリーの1週間ぶんの仕事を終えると、あなたのランクと偽記事がどれほどシェアされフォローされたかが示される。そしてこの結果を受けて、あなたが加わった活動をより広い文脈で一般化して、人々に影響を与える手口が解説される。

YLEニューズ・ラボのAIおよびパーソナライズ部門の代表Jarno Koponen(ヤーノ・コポーネン)氏によると、教育と情報の提供を担う非営利の国営公共放送局YLEは、トロール・ファクトリーのフィンランド語版を5月にリリースしているが、国家安全保障機関や学校でも教材として使われるなど国内で大変に高く評価されたことから、続けて国際版(英語版)も発表することに決めたとのことだ。

「フィンランドでの最初の反響は、とても勇気づけられるものでした。必要とされていたという感じです」と彼はTechCrunchに話してくれた。「これは、情報操作を手で触れられて目で見えるかたちにしたものです。私たちには、公共放送局としてこの方法を、フィンランドと海外に提案し、一般の人々がそれぞれの立場で、日常のデジタル環境をよりよく理解できるようにする責務があると信じています」。

「同時に私たちは、ゲーム形式で物語を見せる手法で何ができるかについて、多くの意見を募っています。それを基に、将来によりよい製品を開発していくつもりです。また、例えば世界中の公共放送局とその結果を共有したいと考えています」。

コポーネン氏は、ゲーム化によってフェイクニュースを見破ことができるというケンブリッジ大学の最近の研究を受けて、ゲームが悪質な情報の嘘を見破るというひとつの仮説を検証したいと話していた。

YLEは、偽情報追放のメッセージをドキュメンタリー番組などの昔ながらの教育的な形式で伝えようとせず、なぜゲームという体裁を採用したのかとの問いに対して、彼は「私たちのデータによれば、ニュース記事や従来式のソーシャルメディアの分析結果は大衆には届かず、影響力が小さいからです」と答えた。

「ソーシャルメディアはポケットに入れて、どこへでも持ち歩けます。ソーシャルメディアに関する教育手段も、ポケットに入らなければいけません。特に若い人たちは、なかなか到達し難いオーディエンスです。そのため、若者たちに無党派の情報と、私たちを取り巻く世界の本質を見抜く力を与えるために、物語を伝えるための新しい手段を積極的に開発する必要があります。私たちは、データの視覚化やインタラクティブなシミュレーションなど、さまざまな形式を試しましたが、ゲーム形式の体験がもっとも効果的で魅力的であることを発見したのです」。

「現在は、ソーシャルメディア(TwitterやRedditなど)や私たちのウェブサイトで、ユーザーから直接意見を聞いています」と彼は話す。「うまく表現されているコメントには、こんなものがありました。『これはひどい。でも、それをわからせてくれてありがとう』『怖いけど、すごくよくわかる』。これは特に学校や公共図書館などの子どもたちと関わりを持つ団体や、情報セキュリティーや国家安全保障のプロたちがソーシャルメディアを通じて利用してくれています」。

ソーシャルメディアのプラットフォームは、ボットや不正なコンテンツを排除するためにもっと努力すべきだと思わないかと尋ねると、コポーネン氏はプラットフォームの透明性を高める必要性を挙げたが、やはりメディアリテラシーが巨大ハイテク企業を動かす鍵になると答えた。

「さらなる透明性が、ソーシャルメディアのプラットフォームに利すると私たちは考えます。しかし、人々がより賢明になれば、何が有効で何がそうでないかを自分で判断できる力が備わります。メディアリテラシーを高めることが、ソーシャルメディアプラットフォームの運営や方針に重大な影響を与える鍵になると、私たちは信じています」。

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(翻訳:金井哲夫)

トランプ大統領は何の証拠もなく何百万もの票を操作したとグーグルを非難

大統領は米国時間8月19日の朝、Twitter(ツイッター)でGoogle(グーグル)を激しく非難した。2016年の大統領選挙でヒラリー・クリントン氏に票が傾くようにGoogleが操作したと訴えたのだ。この重大な告発の元になった情報の出所は、何カ月も前の議会証言を蒸し返した古い報告書の中で語られていた仮説に過ぎない。

今朝のトランプ大統領のツイートには、実際の報告書からの引用は一切ないが、保守系監視団体Judical Watchのタグが付けられている。恐らく同団体に調査を依頼しているのだろう。大統領が誰にGoogleを訴えろと言っているのかは、定かではない。

https://platform.twitter.com/widgets.js
ワオ、報告書が今出た!2016年の大統領選挙でGoogleは260万から1600万もの票をヒラリー・クリントンに流していた!これはトランプ支持者ではなくクリントン支持者からもたらされた情報だ!Googleは訴えられるべきだ。だが、私の勝利は実際はもっと大きかったということだ! @JudicalWatch

偶然にも、FOX Newsはそのような報告書が存在することを、5分ほど前に報道している。トランプはまた、先日、さまざまな中傷を受けたとしてGoogleとCEOのSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏を批判した

実際のところ、この報告書は「今出た」ものではなく、大統領が指摘しているような内容も書かれていない。FOXとトランプが言っているのは、おそらく2017年に発表された報告書のことだ。そこでは、2016年の大統領選挙の前哨戦でGoogleや他の検索エンジンに偏りがあったことを執筆者たちが解説している。

なぜ、そのような調査があったことに気がつかなかったのかと不思議に思っている方のために、その理由をお教えしよう。でたらめな調査だからだ。その内容には得るものが何もなく、ある大企業が選挙に介入したと非難するに値する証拠すら示されていない。

執筆者たちは、選挙前の25日間に95人が行った検索の結果を見て、最初のページで偏向の有無を審査した。彼らはほとんどの検索結果で、特にGoogleの結果ではクリントン氏が有利になる傾向にあったとの「クラウドソーシング」による判定を基に偏向を認識したと主張している。ただしその判定方法は説明されていない。

この検索に関するデータ、つまり、サンプル検索とその結果や、なぜそれを偏向と判断したかの理由などは示されていない。ファクトの考察もない。例えば、Googleが日常的に、またはオープンに、その人の普段の検索の内容、報告されている嗜好、地域などに合わせて検索結果を提示していることなどは考慮されていない。

関連記事:トランプ大統領が朝のツイートでGoogleとサンダー・ピチャイ氏を攻撃(未訳)

実際、Epstein(エプスタイン)氏の報告書は、通常の調査報告書の体をまったく成していない。

要約や序論もない。統計上の計算方法の解説もない。用語説明、考察、出典の記載もない。こうした基本的な情報がなければ、同分野や他分野の専門家の査読も叶わないばかりか、まったくの捏造された仮説と判別がつかない。この報告書の真偽を判断できる材料が何ひとつないのだ。

しかしRobert Epstein(ロバート・エプスタイン)氏は、自身のたった1件の報告書を大いに参照している。それは、2015年にPNAS(米国科学アカデミー紀要)に掲載された、故意に操作を加えた検索結果が候補者の情報を探す有権者にどのような影響を与えるかを解説したものだ。この題材に関して、彼は非常に多くの意見記事を執筆している。Epoch TimesやDaily Callerといった最右翼のメディアに頻繁に登場しているが、USA TodayやBloomberg Businessweekなどの無党派メディアにも寄稿している。

この調査で提示された数値には、まったくなんの恩恵もない。計算方法が説明されていない数字の中には、「Google検索でのクリントン支持の偏向は、時を重ねることで、少なくとも260万票がクリントンに移動する結果を招く」とエプスタイン氏が話しているものがある。この主張の裏付けとなる仕組みも正当な根拠も示されていない。あるのは、今回の報告書との共通点がほとんど見られない、2015年の彼の報告所に示された非常に空論に近い見解と憶測のみだ。その数値は、実質的にでっち上げと言える。

つまり、この報告書と呼ばれているものは、じつに異質なのだ。その主張に科学的な正当性を持たない事実無根の文書であり、ほぼ毎月Google批判の論説を掲載している出版社の人間の手によるものだ。これは、雑誌などに掲載されたわけではない。American Institute for Behavioral Research and Technology(行動調査およびテクノロジーのためのアメリカの研究所、AIBRT)という非営利の私的調査機関がネット上で発表したものに過ぎない。エプスタイン氏はこの研究所のスタッフだが、ここは今回の報告書など、もっぱら彼の文章を発表するためだけに存在しているように見える(私の質問に対してAIBRTは、資金提供者の公開に法的義務はなく、公開しない方針だが、「研究所の調査に偏向をきたすような寄付」は受け付けないと話していた)。

報告書の巻末でエプスタイン氏は、この報告書のために収集していたデータをGoogleが操作していた可能性を推測している。Gmailユーザーとそれ以外のユーザーからのデータの差を引き合いに出して、Gmailユーザーのデータは、報告書作成中ではあったが、すべて破棄することにしたという。

おわかりのとおり、非Gmailユーザーが見た検索結果は、Gmailユーザーが見た結果よりもずっと大きく偏っている。おそらくGoogleは、Gmailシステムを通じて我々の協力者を特定し、偏向していない結果が彼らに示されるよう計らったのだ。現時点でそれを確認することはできないが、我々が発見したパターンの説明としては妥当だ。

この仮説を妥当と見るかどうかは、みなさんの判断にお任せする。

これだけでも十分に酷すぎる話だ。しかし、トランプ大統領がこの軽薄な報告書を引き合いに出したことで、さらにファクトが歪められてしまった。大統領は「2016年の大統領選挙でGoogleは260万から1600万もの票をヒラリー・クリントンに流していた」と主張したが、そのようなことはこの報告書にすら書かれていない。

関連記事;ケンブリッジ・アナリティカ、トンランプ、ブレグジット、そして民主主義の死を紐解くNetflixのドキュメンタリー「The Great Hack」(未訳)

この虚偽の主張の根源は、7月にエプスタイン氏が米上院司法委員会に出席したことにあるようだ。そこで彼は、テキサス州選出のTed Cruz(テッド・クルーズ)上院議員からスター扱いされ、投票における技術操作の可能性について専門家としての意見を求められた。それまでこの問題でクルーズ氏を支えていた専門家は、保守系ラジオのトーク番組のホスト、Dennis Prager(デニス・プレガー)氏だった。

またしても、データも調査方法も仕組みも示さず、エプスタイン氏は、Google、Facebook、Twitterなどが影響を与えたかも知れない260万票を「どん底の最低数」と説明している(影響を与えた、またはそれを試みたとは明言していない)。彼はまた、今後の、特に2020年の大統領選挙において「もしこれらすべての企業が同じ候補者を支持したなら、150万の浮動票が、人々が知らないうちに、当局が追跡できないよう紙の資料を残さず、流れる可能性がある」とも話している。

「彼らが用いている手法は目に見えない。潜在意識に働きかけるものであり、私が行動科学の世界で見てきたいかなる効果よりもずっと強力なものだ」とエプスタイン氏は言うが、その手法が何かは、はっきり説明していない。しかし彼は、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏が民主党支持者だけに「投票に行こう」と呼びかける可能性があり、それは誰も知り得ないとも述べた。馬鹿げている。

すなわち、数値がでっち上げであるばかりでなく、2016年の選挙とは何の関係もなく、しかもGoogleだけの話ではなく、これはすべてのハイテク企業が関わることなのだ。たとえもし、エプスタイン氏の論にいくばくかの正当性があったとしても、トランプ大統領のツイートがそれをねじ曲げ、すべてを台無しにしてしまった。何もかもが、真実からは遠くかけ離れている。

Googleは、大統領の批判に対して声明を発表した。「この研究者の不正確な主張は、それが発表された2016年の時点で誤りが証明されています。当時私たちが主張したとおり、私たちが政治的信条を操る目的で検索結果の順位の操作や変更などは行ったことは一度もありません」。

下にその報告書の全文を掲載する。

EPSTEIN & ROBERTSON 2017-A Method for Detecting Bias in Search Rankings-AIBRT(エプスタイン、ロバートソン 2017年 検索結果順位の偏向を見抜く方法 – AIBRT)
TechCrunch on Scribd

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

Facebookはいまだに偽レビューを売買するグループであふれている

Facebookは、そのプラットフォーム上で盛んに行われている偽の商品レビューの売買を一掃できていないと消費者団体Which?の調査が明らかにした。

6月にFacebookとeBayは、英国競争市場庁(CMA)から、偽の商品レビュー記事の販売にもっと真剣に取り組むべきだとの警告を受けた。eBayでは、業者が現金と引き換えに、5つ星の商品レビュー記事を大量に提供していた。一方、Facebookのプラットフォームでは、業者が複数のFacebookグループを運営し、商品や現金(またはその両方)と引き換えに偽のレビュー記事を書くライターを募集していた。

Which?によるこの2つのプラットフォームの追跡調査では、5つ星レビューの販売数がeBayでは「劇的に改善」され、CMAの介入後、発見された5つ星レビュー記事の掲載数は1件にまで減ったことが判明した。

しかし、Facebookグループでの偽レビュー販売の予防に関してはほとんど手つかずの状態だ。Which?は、「今なお購買意欲を煽るレビューの執筆を大規模に奨励している」と彼らが指摘するFacebookグループを数十件見つけている。

下の画像は、私たちがFacebookグループを10秒間検索しただけで発見した広告の実例だ(アメリカのレビュー執筆者を求めていた複数の広告の中のひとつ)。

アメリカ限定、レビュー募集、商品代返金、返金+原稿料$?、興味のある方はパーソナルメッセージを

Which?によれば、偽レビューを取り扱うわずか9つのFacebookページで、7月に5万5000件を超える新規投稿を発見したという。つまり、1日に数百の「または数千にものぼる」投稿が生成されていることになる。

Facebookは投稿数を1万件に制限しているため、実際にはもっと数は多いと同団体は指摘している(10グループのうち3つは上限に達していた)。

Which?はまた、偽レビューを売買しているFacebookグループは、30日間にメンバー数が急増していることも突き止めた。そして、「わずか数分の間に疑わしいグループが数十件、怖くなるほど簡単に見つけられる」という。

私たちも、Facebookのプラットフォームを軽く検索してみたところ、商品レビューを募集するグループがいくつも見つかった。

Which?は、10のグループを詳細に調べた(グループ名は公表されていない)が、そのすべてのグループ名に「Amazon」という文字が入っていた。そしてそのすべてが、30日間にメンバーを増やしている。中には急激に増やしているものもあった。

「ひとつのFacebookグループは、30日間にメンバー数を3倍に増やし、また別のグループ(2018年4月に開始された)はメンバーを倍増させて5000人以上に増加した」と同団体は書いている。「あるグループは、1カ月間に4300人が参加し1万人を超えた。2017年4月から存在しているにも関わらず、75パーセントの増加率だ)。

Which?は、Facebookグループのこのメンバー数の急増は、eBayが偽レビュー業者を彼らのプラットフォームから閉め出したための直接の結果ではないかと見ている。

「総計で10件の(Facebook)グループは、8月だけで10万5669人という驚異的な数にまでメンバーを増やしている。そのわずか30日前は8万5647人だったので、19%近く増加したことがわかる」

これら10グループからは、1日に3500件以上もの、購買心を煽るレビュー記事が3500件以上も投稿されていると同団体は話している。またWhich?は、それらのグループに、Facebookのアルゴリズムが「おすすめ」として提示する同類のグループは、偽レビューを売買しているように思えるグループだったとも言っている。

さらに、これらのグループの管理者は同類の別のグループにも参加していて、オリジナルのグループが閉鎖されたときに移れるようにしているという。

Which?の製品およびサービス部門の責任者Natalie Hitchins(ナタリー・ヒチンズ)氏は「私たちの最新の調査は、プラットフォームで今なお偽レビューグループをはびこらせ、毎日何千件もの投稿を許している現状に、Facebookは組織的な対策を行っていないことを示しています」と話している。

「同社がこのまま、人々を騙す不誠実なレビュー記事によってことさら宣伝される粗悪な、または危険な製品を消費者に晒し続けているのは、とても憂慮すべきことです。Facebookは、報告されたグループへの対処のみならず、そうしたグループを積極的に特定して閉鎖し、今後そのようなものが現れないよう対策を行うべきです」。

「CMAは、インターネットで騙されないよう人々を守るための強制的な行動を今すぐ検討しなければなりません。Which?はこの事態をつぶさに観察し、このような偽レビューグループを追放できるよう圧力をかけてゆきます」と彼女は言い加えた。

声明の中でWhich?の調査について報告しつつ、CMAシニアディレクターであるGeorge Lusty(ジョージ・ラスティー)氏はこう話した。「偽レビューを売り込むFacebookグループの再発は、許しがたいことです。Facebookは即座にこれらの情報を削除し、二度と現れないように効果的な対策を取らなければなりません」

「これは始まりに過ぎません。私たちは、インターネット上の、人々を騙す偽レビューとの戦いを強めてゆきます」と彼は話す。「私たちの多くは、ネットショッピングで何を買おうか選ぶときに、レビューを頼りにしています。それが本物たと信頼できることは、とても重要です。誰かが金をもらって書いたものではいけません」。

Facebookは声明を出し、Which?が報告した10件のグループのうち9件は排除したこと、そして「残りのグループも調査中」であることを主張した。

「私たちは、偽レビューを助長または促進する道具としてFacebookを使うことは許しません」とFacebookは述べている。「私たちは今後も、こうした不正を積極的に防止できるよう、ツールを改良してまいります。これには、技術への投資と、安全とセキュリティーを担当するチームを3万人体制にする対策も含まれています」。

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(翻訳:金井哲夫)