アップルがApple Newsを提供するニュースパブリッシャーのアプリ内購入の手数料を引き下げ

米国時間2021年8月26日、Apple(アップル)は、Apple News(アップルニュース)アプリに参加し、一定の条件を満たすサブスクリプション制の報道機関に対し、App Store(アップストア)で認定された自社アプリ内での購入にかかる手数料を15%に引き下げられる、新しいプログラムの開始を発表した。通常、Appleのサブスクリプションベースのアプリケーションのモデルでは、App Storeにおける最初の1年間は30%の標準手数料率が適用され、2年目には15%に下がる。しかし、同日発表されたAppleの新しいNews Partner Program(ニュースパートナープログラム)では、プログラムに参加する報道機関の手数料は初日から15%になる。

ただし、このプログラムへの参加条件には、Appleにとって有利ないくつかの注意事項がある。参加資格を得るためには、報道機関はApple Newsでのプレゼンスを維持し、コンテンツをApple News Format(アップルニュースフォーマット、ANF)で提供しなければならない。ANFとは、Mac(マック)およびiPhone(アイフォン)などのAppleのモバイルデバイス用に最適化されたJavaScript Object Notation(JSON)形式のことで、Apple Newsの記事を作成するために使用される。通常、報道機関のウェブサイトやCMS(コンテンツマネジメントシステム)にあるニュース記事を、Apple NewsがサポートするJSONフォーマットに変換するためには、ちょっとした設定が必要になる。WordPress(ワードプレス)やその他の主要なCMSでは、そのプロセスを容易にするためのプラグインが用意されている。

一方、既存のApple Newsの4つの市場(米国、英国、オーストラリア、カナダ)以外に本社を置く報道機関は、代わりにRSSフィードをAppleに提供することで、プログラムへの参加資格を満たすことができる。

App Storeにおいて15%の手数料が適用されるパートナーアプリは「プロが執筆したオリジナル」のニュースコンテンツ配信に使用されなければならず、Appleのアプリ内購入システムを使用して自動更新可能なサブスクリプションを提供する必要がある。

画像クレジット:Apple

報道機関がApple Newsへの接続を確立するためには、ある程度の初期作業が必要だが、ほとんどの主要な報道機関がすでにAppleのプラットフォームに参加している点は注目される。つまり、それらの報道機関は、自社アプリにかかる手数料削減のために、これまでに加えて作業をする必要はない。しかし、このプログラムは、報道機関の広範なビジネスにおける財務的な効果を高めることから、Apple Newsのエコシステムに継続して参加することを後押しする働きもある。

この点については、報道機関の間でも意見がわかれるようだ。付帯条件なしでApp Store手数料の減額を望む報道機関もあるだろう。

一部の報道機関では、Apple Newsのエコシステムに縛られることで、自身のビジネスに対するコントロールを失ってしまうのではないかと心配しているところもある。例えば2020年、New York Times(ニューヨーク・タイムズ)は、Appleが同社が望むような読者との直接的な関係を認めないため、読者を同社のアプリやウェブサイトに誘導したいとして、Apple Newsとの提携を解消すると発表した。

しかしAppleは、報道機関のビジネスを邪魔するものではないと主張するだろう。同社は、報道機関がコンテンツを収益化するペイウォールの仕組みを提供し、加えて販売した広告から得られる広告収入を100%確保できるようにしている(もし、すべてを売り切れない場合や、同社に販売を代行してもらいたい場合は、同社に手数料を払う代わりに広告収入の70%を確保する)。さらに、Apple News+(アップルニュースプラス)サブスクリプションサービスの場合、サブスクリプション収入の分配率ははるかに高いが、これは「ボーナス的な収入」だと主張することもできる。なぜなら、報道機関自身が獲得できなかった顧客に対して、Appleがサービスを販売するからだ。

Appleの新しいNews Partner Programの開始は、AppleがApp Storeビジネスをどのように管理しているかについて規制当局監視しているで行われた。最近では、米国および韓国などの主要なApp Store市場において、反競争的な問題を解決することを目的とした法案が提出されている。

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このような市場の変化を察知したAppleは、すでにApp Storeの手数料を調整することで、Epic Games(エピックゲームズ)との間で係争中の訴訟のような反トラスト法違反の苦情や訴訟から身を守る対策を講じていた。2020年、AppleはApp Store Small Business Program(アップストア・スモールビジネスプログラム)を開始し、アプリ内購入の手数料を30%から15%に引き下げたが、これは収益が100万ドル(約1億1000万円)までの開発者に限られていた。

このプログラムは小規模な報道機関の助けにはなったかもしれないが、一部の大手報道機関がまだ不満を持っていたことは明らかだった。2020年11月に小規模ビジネス向けの手数料引き下げが発表された後、AP(エーピー)、New York Times、NPR(エヌピーアール)、ESPN(イーエスピーエヌ)、Vox(ヴォックス)、Washington Post(ワシントン・ポスト)、Meredith(メレディス)、Bloomberg(ブルームバーグ)、NBCU(エヌビーシーユー)、Financial Times(フィナンシャル・タイムズ)などを代表とする報道機関の業界団体「Digital Content Next(デジタル・コンテンツ・ネクスト、DCN)」は、その翌月に権利擁護団体でありロビー組織である「Coalition for App Fairness(アプリ公平性のための連合、CAF)」に参加した。

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これらの報道機関は、以前からApple CEOのTim Cook(ティム・クック)氏に手数料の引き下げを求める書簡を送っていたが、収益の分配については、分配額の大きさ以外にも不満を持っていた。サブスクリプションについては、アプリ内購入としてAppleのサービスの利用を強いられることも望んでおらず、この「Apple税」によって消費者向けの価格を上げざるを得ないとしている。

これらの報道機関が、Apple News Partner Programの開始に対して、どのような反応を示すかはまだわからない。

このプログラムは、App Storeの料金を下げる方法を提供するものではあるが、Appleのプラットフォームとそのルールに対する報道機関の広範な不満を解消するものではない。それどころか、料金の引き下げが、報道機関をAppleのエコシステムにさらに閉じ込めてしまうプログラムに結びつけられている。

また、Appleは同日、善意の意思表示として、3つの主要なメディア関連の非営利団体への支援を再開すると発表した。Common Sense Media(コモン・センス・メディア)、News Literacy Project(ニュース・リテラシー・プロジェクト)、Osservatorio Permanente Giovani-Editori(オッセルバトリオ・ペルマネンテ・ジョーバニ・エディトリ)だ。これらの非営利団体は、公平で独立したメディアリテラシープログラムを提供しており、Appleは、人々がスマートかつ積極的にニュースを読むことができるようにするという、大きな目標の実現に向けて重要な働きをしていると考えている。同社はまた、他の団体によるメディアリテラシープロジェクトについても後日発表するとしている。しかし、コミットメントの資金規模は明らかにしておらず、また、過去にこのような団体に対して提供した金額についても言及していない。

Appleのサービス担当上級副社長のEddy Cue(エディ・キュー)氏は、声明の中で「Apple Newsのお客様に、報道機関パートナーからの信頼できる情報を提供することは、当初からの優先事項だった」と述べている。そして「10年以上にわたり、Appleは、お客様が当社の製品やサービスを介してニュースコンテンツを楽しむためのさまざまな方法を提供してきた。世界数十カ国では数百のニュースアプリがApp Storeから入手できる。また、報道機関がコンテンツを紹介するためのツールを提供し、何百万人ものApple Newsユーザーにすばらしいサービスを提供するためにApple News Formatを作成した」と同氏は付け加えた。

本プログラムの詳細および申請書は、News Partner Programのウェブサイトから入手できる。

Japan編集部注:Apple Newsは本記事公開時点である2021年9月現在、日本未対応

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

【インタビュー】数学者が紐解く偽情報の世界

偽情報に誤報、インフォテイメントにalgowars(アルゴワーズ)。メディアの未来をめぐるここ数十年間の議論に意味があるとすれば、少なくとも言語には刺激的な痕跡を残したということだろう。個人の心理的状態や神経学的な問題から、民主主義社会についてのさまざまな懸念まで、ソーシャルメディアが我々の社会にもたらす影響に関するあらゆる非難と恐怖がここ何年もの間、世間を渦巻いている。最近Joseph Bernstein(ジョセフ・バーンスタイン)氏が語った通り「群衆の知恵」から「偽情報」へのシフトというのは確かに急激なものだったと言えるだろう。

そもそも偽情報とは何なのか。それは存在するのか、存在するとしたらそれはどこにあるのか、どうすればそれが偽情報だとわかるのか。お気に入りのプラットフォームのアルゴリズムが私たちの注意を引きつけようと必死に見せてくる広告に対して我々は警戒すべきなのか?Noah Giansiracusa(ノア・ジアンシラクサ)氏がこのテーマに興味を持ったのは、まさにこのよう入り組んだ数学的および社会科学的な疑問からだった。

ボストンにあるベントレー大学の教授であるジアンシラクサ氏は、代数幾何学などの数学を専門としているが、計算幾何学と最高裁を結びつけるなど、社会的なトピックを数学的なレンズを通して見ることにも興味を持っていた。最近では「How Algorithms Create and Prevent Fake News(アルゴリズムがフェイクニュースを生み、防ぐ仕組み)」という本を出版。著書では今日のメディアをめぐる課題と、テクノロジーがそれらの傾向をどのように悪化させたり改善したりしているかを探求している。

先日筆者はTwitter Spaceでジアンシラクサ氏をお招きしたのだが、何とも儚いTwitterではこのトークを後から簡単に聴くことができないため、読者諸君と後世のためにも会話の中で最も興味深い部分を抜き出してみることにした。

このインタビューはわかりやすくするために編集、短縮されている。

ダニー・クライトン:フェイクニュースを研究し、この本を書こうと思った理由を教えてください。

ノア・ジアンシラクサ:フェイクニュースについては社会学や政治学の分野で非常に興味深い議論がなされています。一方でテック系サイドではMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏が「AIがすべての問題を解決してくれる」などと言っています。このギャップを埋めるのは少し難しいのではないかと感じました。

ソーシャルメディア上の誤報について、バイデン大統領が「誤報が人を殺している」と言ったのを耳にしたことがあるでしょう。このように、アルゴリズムの側面を理解するのが難しい政治家たちはこのようなことを話しているのです。一方、コンピューターサイエンスの専門家らは細部にまで精通しています。私は筋金入りのコンピューターサイエンスの専門家ではないので、その中間にいると言えるでしょう。ですから一歩下がって全体像を把握することが私には比較的簡単にできると思っています。

それに何と言っても、物事が混乱していて、数学がそれほどきれいではない社会との相互作用をもっと探究したいと思ったのです。

クライトン:数学のバックグラウンドを持つあなたが、多くの人がさまざまな角度から執筆しているこの難しい分野に足を踏み入れています。この分野では人々は何を正しく理解しているのでしょうか。また、人々が見落としているものとは何でしょうか。

ジアンシラクサ:すばらしいジャーナリズムがたくさんあります。多くのジャーナリストがかなり専門的な内容を扱うことができていることに驚かされました。しかし、おそらく間違っているわけではないのですが、1つだけ気になったことがあります。学術論文が発表されたり、GoogleやFacebookなどのハイテク企業が何かを発表したりするときに、ジャーナリストたちはそれを引用して説明しようとするのですが、実際に本当に見て理解しようとすることを少し恐れているように見えました。その能力がないのではなく、むしろ恐怖を感じているのだと思いました。

私が数学の教師として大いに学んだことですが、人々は間違ったことを言ったり、間違えたりすることをとても恐れています。これは技術的なことを書かなければならないジャーナリストも同じで、間違ったことを言いたくないのです。だからFacebookのプレスリリースを引用したり、専門家の言葉を引用したりする方が簡単なのでしょう。

数学が純粋に楽しく美しい理由の1つは、間違いなどを気にせずアイデアを試してみて、それがどこにつながっていくのかを体験することで、さまざまな相互作用を見ることができるということです。論文を書いたり講演をしたりするときには、詳細をチェックします。しかし数学のほとんどは、アイデアがどのように相互作用するかを見極めながら探求していく、この創造的なプロセスなのです。私は数学者としての訓練を受けてきたので、間違いを犯すことや非常に正確であることを気にかけていると思うかもしれませんが、実はそれはとは逆の効果があるのです。

それから、これらのアルゴリズムの多くは見た目ほど複雑ではありません。私が実際に実行しているわけではありませんし、プログラムを組むのは難しいでしょう。しかし、全体像を見ると最近のアルゴリズムのほとんどはディープラーニングに基づいています。つまりニューラルネットワークがあり、それがどんなアーキテクチャを使っているかは外部の人間として私にはどうでもよく、本当に重要なのは予測因子は何なのかということです。要するにこの機械学習アルゴリズムに与える変数は何か、そして何を出力しようとしているのか?誰にでも理解できることです。

クライトン:アルゴリズムを分析する上での大きな課題の1つは透明性の低さです。問題解決に取り組む学者コミュニティの純粋数学の世界などとは異なり、これらの企業の多くは、データや分析結果を広く社会に提供することについて実際には非常に否定的です。

ジアンシラクサ:外部からでは、推測できることには限界があるように感じます。

YouTubeの推薦アルゴリズムが人々を過激派の陰謀論に送り込むかどうかを学者チームが調べようとしていましたが、これは良い例です。これが非常に難しいのは、推薦アルゴリズムにはディープラーニングが使われており、検索履歴や統計学、視聴した他の動画や視聴時間など、何百もの予測因子に基づいているためです。あなたとあなたの経験に合わせて高度にカスタマイズされているので、私が見つけた研究ではすべてシークレットモードが使用されていました。

検索履歴や情報を一切持たないユーザーが動画にアクセスし、最初におすすめされた動画をクリックし、またその次の動画をクリックする。そのようにしていけばアルゴリズムが人をどこへ連れて行くのかを確認することができるでしょう。しかしこれは履歴のある実際のユーザーとはまったく異なる体験ですし、とても難しいことです。外部からYouTubeのアルゴリズムを探る良い方法は誰も見つけられていないと思います。

正直なところ、私が考える唯一の方法は、大勢のボランティアを募り、その人たちのコンピューターにトラッカーを取り付けて「インターネットを普段通り閲覧して、見ている動画を教えてください」と頼む昔ながらの研究方法です。このように、ほとんどすべてと言っていいほど多くのアルゴリズムが個人のデータに大きく依存しているという事実を乗り越えるというのはとても困難なことです。私たちはまだどのように分析したら良いのか分かっていないのです。

データを持っていないために問題を抱えているのは、私やその他の外部の人間だけではありません。アルゴリズムを構築した企業内の人間も、そのアルゴリズムがどのように機能するのか理論上はわかってはいても、実際にどのように動作するのかまでは知らないのです。まるでフランケンシュタインの怪物のように、作ったはいいがどう動くかわからないわけです。ですから本当の意味でデータを研究するには、そのデータを持っている内部の人間が、時間とリソースを割いて研究するしかないと思います。

クライトン:誤報に対する評価やプラットフォーム上のエンゲージメントの判断には多くの指標が用いられています。あなたの数学的なバックグラウンドからすると、こういった指標は強固なものだと思いますか?

ジアンシラクサ:人々は誤った情報を暴こうとします。しかし、その過程でコメントしたり、リツイートしたり、シェアしたりすることがあり、それもエンゲージメントとしてカウントされます。エンゲージメントの測定では、ポジティブなものをきちんと把握しているのか、それともただすべてのエンゲージメントを見ているのか?すべて1つにまとめられてしまうでしょう。

これは学術研究においても同様です。被引用率は研究がどれだけ成功したものかを示す普遍的な指標です。例えばウェイクフィールドの自閉症とワクチンに関する論文は、まったくインチキなのにも関わらず大量に引用されていました。その多くは本当に正しいと思って引用している人たちですが、その他の多くはこの論文を否定している科学者たちです。しかし引用は引用です。つまり、すべてが成功の指標としてカウントされてしまうのです。

そのためエンゲージメントについても、それと似たようなことが起きているのだと思います。私がコメントに「それ、やばいな」と投稿した場合、アルゴリズムは私がそれを支持しているかどうかをどうやって知ることができるでしょう。AIの言語処理を使って試すこともできるかもしれませんが、そのためには大変な労力が必要です。

クライトン:最後に、GPT-3や合成メディア、フェイクニュースに関する懸念について少しお話したいと思います。AIボットが偽情報でメディアを圧倒するのではないかという懸念がありますが、私たちはどれくらい怖がるべきなのか、または恐れる必要はないのか、あなたの意見を教えてください。

ジアンシラクサ:私の本は体験から生まれたものなので、公平性を保ちながら人々に情報を提供して、彼らが自分で判断できるようにしたいと思いました。そのような議論を省いて、両方の立場の人に話してもらおうと思ったのです。私はニュースフィードのアルゴリズムや認識アルゴリズムは有害なものを増幅させ、社会に悪影響を与えると思います。しかしフェイクニュースを制限するためにアルゴリズムを生産的にうまく使っているすばらしい進歩もたくさんあります。

AIがすべてを解決し、真実を伝えて確認し、誤った情報を検出してそれを取り消すことができるアルゴリズムを手に入れることができるというテクノユートピア主義の人々がいます。わずかな進歩はありますが、そんなものは実現しないでしょうし、完全に成功することもありません。常に人間に頼る必要があるのです。一方で、もう1つの問題は不合理な恐怖心です。アルゴリズムが非常に強力で人間を滅ぼすという、誇張されたAIのディストピアがあります。

2018年にディープフェイクがニュースになり、GPT-3が数年前にリリースされた際「やばい、これではフェイクニュースの問題が深刻化して、何が真実かを理解するのがずっと難しくなってしまう」という恐怖が世間を取り巻きました。しかし数年経った今、多少難しくなったと言えるものの、予想していたほどではありません。主な問題は何よりも心理的、経済的なものなのです。

GPT-3の創造者らはアルゴリズムを紹介した研究論文を発表していますが、その中で、あるテキストを貼り付けて記事へと展開させ、ボランティアに評価してもらいどれがアルゴリズムで生成された記事で、どれが人間が生成した記事かを推測してもらうというテストを行いました。その結果、50%に近い精度が得られたと報告されています。すばらしくもあり、恐ろしいことでもありますね。

しかしよく見ると、この場合は単に1行の見出しを1段落の文章に展開させたに過ぎません。もしThe Atlantic誌やNew Yorker誌のような長文の記事を書こうとすると、矛盾が生じ、意味をなさなくなるかもしれません。この論文の著者はこのことには触れておらず、ただ実験をして「見て、こんなにも上手くいったよ」と言っただけのことです。

説得力があるように見えますし、なかなかの記事を作ることは可能です。しかしフェイクニュースや誤報などについて言えば、なぜGPT-3がさほど影響力がなかったかというと、結局のところそれはフェイクニュースがほとんどクズ同然だからです。書き方も下手で、質が低く、安っぽくてインスタントなものだからです。16歳の甥っ子にお金を払えば、数分で大量のフェイクニュース記事を作ることができるでしょう。

数学のおかげでこういったことを理解できるというよりも、数学では主に懐疑的になることが重要だから理解できるのかもしれません。だからこういったことに疑問を持ち、少し懐疑的になったら良いのです。

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画像クレジット:Valera Golovniov/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)

情報通(informed.)になりたい?欧州メディアのベテラントリオがニュースメディア業界の問題に挑む

ニュースは社会にとって欠かせないものだが、その制作には驚くほど費用がかかる。広告料金が業界全体で低下しているため(今夏は明るい兆しがない)、パブリッシャーは収支を合わせるためにペイウォールに頼るところが増えている。唯一の問題は、読者が人類全体の思考を渡り歩くことを可能にしたオープンなインターネットが、怒れる番人によって閉ざされた塀で囲まれている庭の連なりに変化したことだ。筆者が3年前に語ったサブスクリプションの地獄は、実際に加速する一方だ。

地獄の修復にはそれなりの努力が必要だが、欧州のニュースやメディアに精通した3人のベテランが、これに挑戦しようとしている。

Benjamin Mateev(ベンジャミン・マテフ)氏、Martin Kaelble(マーティン・ケイルブル)氏、Axel Bard Bringéus(アクセル・バルド・ブリングェウス)氏が共同でinformed.(公式ブランディングは大文字なし、ピリオド必須)をローンチした。ベルリンを拠点とするこのスタートアップは、著名な有料ニュースサービスの上位レイヤーになりたいと考えている。Read Listと呼ばれる、ニュースやオピニオン記事のキュレートされた「プレイリスト」と読者を結びつけ、オリジナルのサマリーで補強する。同社は1月に設立され、現在はベータ版だ。ローカルショップの468 Capitalから「現代の標準ではかなりのプレシード」を調達している。

興味深いのはそのチームである。ブリングェウス氏は以前Spotifyに6年間在籍し、同社の急速な海外展開の中で最終的にはグローバルマーケットの責任者を務めた。直近では、欧州の有名企業EQT Venturesのディールパートナーを務めている。一方、マテフ氏は、Microsoftの買収によってToDoリストプラットフォームWunderlistのリードエンジニアとなり、オピニオンニュースサイト The Europeanの製品責任者を務めた。ケイルブル氏はCapitalなどで長年にわたりビジネスジャーナリストを務めてきた。

informed.の創業者マーティン・ケイルブル氏、ベンジャミン・マテフ氏、アクセル・バルド・ブリングェウス氏(画像クレジット:informed.)

さまざまなキャリアで成功を収めてきたこのトリオは、一歩離れた視点で、2021年付近のニュース業界の多様な課題を解決する方法を模索した。彼らは「ダイアリースタディ」を実施し、人々にニュースの中で何を読んだかを追跡するよう求め、何千人もの人々を対象に調査を実施した他、メディア幹部や投資家とも話し合いを持った。

その結果、メディア企業のペイウォールはここ数年ほぼ成功しているが、コア読者がサブスクリプションを購入しているため、その成長は鈍化していることがわかった。「新型コロナウイルス以降、そしてトランプ政権以降、ほぼすべてのパブリッシャーがペイウォール戦略で壁に直面しています」とブリングェウス氏はいう。「彼らの多くは自社のコンテンツを自分たちのコア地域で直接収益化することができているので、私たちのような非競合的なサードパーティと協力することに非常に前向きです」。

同時に、Z世代の若者たちは質の高いニュースを熟読したいと思うようになっているが、有名サイトのいくつかで法外な購読料を支払うための手段を欠いている。「彼らは読みたいと思っていますが、経済的に余裕がありません」とマテフ氏。筆者は幾分懐疑的に、私たちの華々しい子孫たちがバイラルなTikTokで質の高いニュースを読みたいと思っているかどうか尋ねたが、マテフ氏は、同社のエビデンスはイエスを強く示していると語った。「そこに興味深いものがあります【略】古いパブリッシャーは、若い人たちの間で高い評価を得ています」。

Informed.はThe Washington Post、The Economist、Financial Times、Bloombergと協力しており、これらの情報源からの記事をRead Listにまとめ、独自のニュースサマリーをイベントに追加する。例えばある日のプラットフォームには、カブール空港からの最新ニュースだけでなく、この中央アジアの国の危機の歴史と展望を語る厳選された深堀り記事やオピニオン記事が含まれた、アフガニスタンに関するRead Listがあると想像できるだろう。「スナック程度でもいいし、望むなら食事としても味わうことができます」とブリングェウス氏はその設計について表現した。

同氏の馴染み深いSpotifyのプレイリストとの類似点はあるが、ニュースは音楽のような性質を持つものではないと指摘する。「ニュースでは、すべてのニュースが必要というわけではありません。また、ニュースは傷みやすいので、クラスタ化する必要があります」。

informed.のロゴとブランディングデザイン(画像クレジット:informed.)

同社はモバイルファーストのプロダクトを年内にローンチする予定だが、ベータテストには今すぐ登録可能だ。最終的に同社は、自社のニュースサマリーを無料で提供する一方で、すべてのライセンスコンテンツを有料で提供するフリーミアムモデルを追求しようとしている。チームは価格設定をテスト中で、現時点ではローンチ価格を決定していない。

これは、過去のスタートアップたちや、あらゆるiOSデバイスに足がかりを持ちながらほとんどユーザーの支持を得られていないApple News+のような大規模企業のイニシアティブの墓石が乱立する領域に挑む、大胆なイニシアティブだ。その痛ましい歴史はさておき、ここでの希望はタイミングが味方をしていることだ。新世代のニュース読者は品質を強く求めており、パブリッシャーはトランプ後のニュース界での成長と引き換えに、オーディエンスに対するコントロールを手放す準備ができている。成功すれば、同社は間違いなく第一面のニュースになるだろう。

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画像クレジット:fpm / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)

音声プラットフォーム「Voicy」でリスナーから音声配信者への直接課金が月間1000万円を突破

音声プラットフォーム「Voicy」でリスナーから音声配信者への直接課金が月間1000万円を突破

音声配信プラットフォーム「Voicy」(ボイシー。Android版iOS版)を提供するVoicyは8月24日、リスナーから音声配信者(パーソナリティー)への直接課金が、月間1000万円を突破(2021年8月時点)したことを発表した。

リスナーは、有料配信(プレミアム)を行うパーソナリティーに月額料金を支払うことで限定配信が聞ける「プレミアムリスナー」になれるが、直接課金とはその支払いを意味する。現在、プレミアム配信を行っているパーソナリティーは80名以上。月間流通総額は2021年年初から比較すると2倍に延びているという。

Voicyは日本で初めて「ボイスメディア」という音声フォーマットを確立。各分野の専門家、企業経営者、ワーキングマザーなどさまざまな立場の人たちが、気軽に録音して公開できる「音声の大衆化」を実現した。ただし、配信したい人はパーソナリティーとして応募し、審査を受けなければならない。審査通過率は5%と厳しいが、そのおかげで高いクオリティーが保たれているといえる。「プレミアムリスナー」には、「声のプロ」を育成する目的もあるとのこと。

今回の発表は「声のニュースリリース」でも聞くことができる。

犯罪ライブ配信「Citizen」が地域ジャーナリズムに取って代わることはない

地元で起こった犯罪を撮影するアプリCitizenが、1時間あたり25ドル(約2760円)で極秘にジャーナリストを雇って、犯罪現場の映像をサードパーティのウェブサイト経由でアプリからライブ配信していることがわかった。やれやれ。

Citizenが2016年に初めてApp Storeに登録されたときはVigilanteという名前で、透明性によって不正と戦うプラットフォームと銘打ってマーケティングを展開していた。というと聞こえはよいが、実際には、犯罪現場を探し出すよう故意にユーザーを煽って、その現場を報告させるというものだった。Vigilanteは、Apple(アップル)のアプリ開発者レビューガイドラインの「アプリはその使用によって身体に害を及ぼすことがあってはならない」という条項に違反しているとしてApp Storeから削除された。

もちろん、これでこの悪質なアプリの芽は摘まれるはずだった。が、大災害の後のゴキブリのように、このアプリも生き残っていた。VigilanteはCitizenと名前を変えて、利用者は犯罪現場に介入しないものとするという免責条項を追加してApp Storeに再登録を果たし、引き続きVCから資金を調達している。このアプリは現在、App Storeの同アプリページによると、クラウドソース型事件記録簿ということになっており「警察が対応する前に発生中の犯罪を市民に知らせる」のだという。しかし、このような行き過ぎた自警行為は、市民に安心感をもたらすどころか、混乱に拍車をかける可能性がある。アプリユーザーによる犯罪報告は、単なる間違いで済めばよいが、下手をすると人種差別につながり兼ねないことはいうまでもない。このアプリは911番通報からデータを取得しているが、911番通報の情報はすべて確認されているわけではないため、誤通報の原因となる可能性がある。

Citizenの代表は、このアプリは不審人物の通報を禁止しており「未確認のコンテンツや利用者によって報告された犯罪」は訓練を受けた専門家のレビューを受け許可されるまで配信されないと主張している。しかし、ほんの数カ月前、CEOのAndrew Frame(アンドリュー・フレーム)氏はライブ動画で放火犯と疑われる人物を追跡したCitizenのユーザーに情報提供料として3万ドル(約330万円)を支払ったが、結局その人物は犯人ではなかったことが判明した。

Citizenは十分なユーザー数が確保されないと機能しないため、同社はこのアプリを使うよう一般市民を囲い込もうとますます躍起になっている。SensorTower(センサータワー)によると、Citizenは、Black Lives Matter抗議活動の拡大に乗じて、2020年6月に月間最高ダウンロード数を記録した(米国全体が警察の残忍な行為に抗議する中、67万7000人の市民が警察アプリをダウンロードした)。しかし、その翌月のダウンロード数は20万7000件に低下し、以降、2020年3月は29万2000件、2021年3月は28万3000件と、ダウンロード数は頭打ちになっている。

Daily Dot(デイリー・ドット)は6月「ランドン」とうい名前のユーザーが1日に複数の犯罪現場からライブ配信を行ったという記事を掲載した。こうした犯罪現場に偶然出くわす頻度からして、この人物は単なる熱狂的なアプリユーザーではないように思われた。昨日もニューヨークポストに、1日で6つの犯罪現場をCitizenでライブ配信した「クリス」という名前の別のユーザーの記事が掲載された。Citizenによると、ランドンもクリスも、Street Team(ストリートチーム)のメンバーとしてアプリでの犯罪通報を行っているという。

「Citizenではいくつかの都市にチームを配置しています。これらの都市では、Citizenプラットフォームの動作方法をデモし、まさに犯罪が発生しようとしている状況での責任のある配信行為の見本を示すためにアプリを利用できます。最終的には、これらのチームが、効果的、有用かつ安全に配信を行う方法をユーザーに示すことになると信じています」とCitizenの広報担当は語った。

Citizenはアプリの立ち上げ以来、ストリートチームを配置しており、その事実を隠そうとしたことはないと同社の広報担当はいう。しかし、このストリートチームの仕事はCitizenのウェブサイトでは求人されておらず、Flyover Entertainmentというサードパーティのリクルート業者がJournalismJobs掲示板でCitizenの名前を出さずに求人広告を出している。NYU Journalismのウェブサイトでも、同じような求人広告を掲載しているが、こちらにはCitizenという名前が明記されている。Citizenによると、これらはどちらも、Citizenのストリートチームの求人広告だという。報酬は、ロサンゼルスでは10時間のシフトで250ドル(約2万7000円) / 日、ニューヨークでは8時間のシフトで200ドル(約2万2000円) / 日(25ドル[約2700円] / 時)となっている。

「放送記者たちには安全に責任を持って放送してきた経験があります。これこそストリートチームのメンバーに必須の条件です」とCitizenの広報担当は語り、これらの求人広告がCitizenのウェブサイトではなくサードパーティの求人掲示板に掲載されている点については、Citizenは本職の記者を求めていたからだという点を強調した。ただ、自社のウェブサイトでも本職の記者を募集することはできたと思われる。

監視による自警主義に対する懸念はさておき、ローカルニュースは瀕死状態であるし、Citizenは個人ジャーナリズムに替わるものとして開発されたわけではない。もちろん、地域の新聞も犯罪を報道するわけだし、詳細を調べるために報道記者を犯罪現場に送るというCitizenのやり方も前例のないことではない。しかし、ニュース報道と、監視アプリを使った犯罪現場からのライブ配信とでは意味が違う。しかも、Citizenは本職の記者が配信したのか、それとも一般市民が配信したのかを質問されない限り明らかにしない。「透明性の向上」を謳い文句にしているアプリにしては、求人広告に自社名を明記しないというのは透明性が高いとは思えない。また、福利厚生も有給もないのに、しっかりとした放送スキルを要する不定期のフリーランスの仕事にしては、時給25ドルというのはかなり低い報酬と言わざるを得ない。

現在、Citizen’sは、成長を目指す最新の試みとして、月額19.99ドル(約2200円)のProtectと呼ばれる有料サービスを提供している。このサービスを利用すると、ユーザーは、自分のカメラからProtectエージェントに自分の居場所とライブストリームを送ることができる。Citizenによると、Protectエージェントには、前警察官や911オペレーターが在籍しており、緊急時には「緊急対応部隊」を派遣できる。これは、個人向けの911オペレーターに料金を支払っているようなものだ。今でさえお粗末な警察システムのお粗末な代替システムのような感じだ。ユーザーが犯罪を恐れるほど、自分たちの身を守ってくれると信じて月額サブスクリプションサービスに料金を支払う動機も高まる。ニューヨーク市議会議員のJustin Brannan(ジャスティン・ブラナン)氏は、次のように書いている。「自分の近辺で起こった犯罪を絶えず把握できれば、都市の犯罪発生率が現在歴史的低水準になっているとはいえ、ユーザーは多少は安心できます。ただし、脱走したトラが実はアライグマだったなどということもあります」。

おそらくシリコンバレー育ちのテック企業では、1世紀近くの長きに及ぶ米国の警察の残忍行為、人種プロファイリング、監視を抑えることはできないのかもしれない。犯罪を減らすには、すべての人が医療施設を利用でき仕事にありつけ手頃な価格の住宅を購入できるようにしたほうが、よほど効果的なのかもしれない。答えは誰にもわからない。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:CitizenジャーナリズムマスコミアプリApp Store透明性犯罪

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)