加熱するインドのモバイル決済市場で奮闘するスタートアップ

インドで最も収益のあるスタートアップ企業はPaytm(ペイティーエム)である。その創業者でありCEOのVijay Shekhar Sharma(ヴィジェイ・シェカール・シャルマ)氏は、最近の記者会見で以下の現実的な質問を投げかけた。

「デジタルモバイル決済対応の商業モデルについてどう考えるか。どのように収益を上げるか?」シャルマ氏が問いかけた相手は、国内でデジタル決済の革命をもたらしたUnified Payments Interface(UPI、統合決済インタフェース)の主要設計者の一人であるNandan Nilekani(ナンダン・ニレカニ)氏だ。

これは、多数の地元のスタートアップ企業および国際的な大手企業が答えを求める何十億ドルもの価値のある質問である。そのうち多くの企業は積極的に、小売業者へのサービス提供、融資商品やその他の金融サービス構築に焦点を移している。

2016年後半、現金に支配されていたこの国でニューデリー当局が多くの紙幣を無効にした。この突然の動きは、何億もの人々を数カ月にわたりATMに向かわせた。

PaytmMobiKwik(モビクイック)といった少数のスタートアップ企業にとって、この現金危機は、たった数ヶ月間で何千万ものユーザーを獲得できることを意味していた。

PaytmやMobiKwikの初期のシステムとは異なり、インドは銀行間での決済インフラを整備するために銀行と協力し、利用者と銀行間の仲介者としての「モバイルウォレット」の役割を果たすのではなく、ユーザーの銀行口座間で直接取引が行えるように働いた。

シリコンバレーの各社はすぐこれに注目した。何年にもわたって、Googleやその手の企業は、何億ものユーザーを擁する多くのアジアやアフリカ市場での決済行動を変えるように試行を重ねてきた。

例えば、パキスタンでは、ほとんどの人が電話通話やインターネットにアクセスするためのクレジット額を増やしたいとき、いまだに近所の店に駆けつける

中国は外資系企業に対して門戸を閉ざしているが、インドでは多くの米国大手企業が数十億ドルを投入して、さらなる数十億のユーザーを探している。これはほぼ自明なニーズだった。

「中国とは異なり、私達は国内外の中小企業と大手企業に均等な機会を提供してきた」とUPIの背後にある決済機関であるNPCIのCEOであるDilip Asbe(ディリップ・アスベ)氏は語った。

それゆえ、インドでの大いなる実験への参加レースが始まったのだ。投資家もこれに追従している。CBInsightsという調査会社によると、インドのフィンテックスタートアップ企業は昨年、27億4000万ドル(約2959億円)を調達した。ライバルの中国での調達額は36億6000万ドル(約3950億円)だった。

また、5億人以上のインターネットユーザーを擁する市場における賭けは、すでに成功し始めた。

非営利団体でボランティアとして決済インフラの開発支援を行ったことのあるNikhil Kumar(ニキール・クマール)氏は、あるインタビューで、「UPIをプラットホームとして見た場合、この種の成長はかつて見たことがない」と語った。

創設からちょうど3年後となる10月、UPIは1億人のユーザーを集めて、10億件を超える取引を処理した。それは、先月に国の最大の銀行が破綻したにもかかわらず、3月において12億5000万件の取引に達した以来、その成長が持続している。

「それはすべて、それが解決しつつある問題に行き着く。欧米市場を見ると、デジタル決済は主に個人が加盟店に送金することに焦点を合わせている。UPIはそれを実現するだけでなく、P2P決済や、幅広いアプリ間での決済も可能にしている。相互運用が可能なのだ」と、クマール氏は語った。彼は現在、中小企業が容易にデジタル決済を受け入れやすくするためのAPIを開発する、Setu(セツ)と呼ばれるスタートアップ企業で働いている。

2017年9月18日、GoogleのNext Billion Users担当副社長のCaesar Sengupta(シーザー・セングプタ)氏はGoogleのデジタル決済用モバイルアプリ「Tez」をニューデリーでリリース発表(写真:Getty Images via AFP PHOTO / SAJJAD HUSSAIN)

Google Payアプリは、6700万人を上回る月間アクティブユーザーを擁している。同社はUPIパイプラインが大変魅力的であることに気付き、米国でも同様のインフラを構築するよう推奨している。

8月、連邦準備銀行(FRB)は国内におけるより高速の支払に対応する、新たな24時間体制の銀行間即時グロス決済サービスの開発を提案した。11月、Googleは米国FRBにUPIのような即時決済プラットホームを導入するよう推奨した

「たった3年間で、UPIを通して流れる取引の年間ランレートは、約190億ドル(約2兆530億円)と見積もられた8億件の月間取引を含めて、インドの国内総生産の約19%になった」と、GoogleのGovernment Affairs and Public Policy担当副社長のMark Isakowitz(マーク・イサコヴィッツ)氏は書いた。

Paytm自身は、毎年Paytmを使って取引をする1億5000万人を超えるユーザーを集めた。当プラットホームは全体的に3億のモバイルウォレットアカウントおよび5500万の銀行アカウントを擁しているとシャルマは語った。

ビジネスモデルの追求

しかし、1億人を超えるユーザーが設置しているにもかかわらず、決済会社は、利益を上げるどころか損失を減らすために奮闘している。

昨年末のベンガルールのイベントにおいて、Google PayおよびNext Billion User Initiativesの責任者およびビジネスチーフであるSajith Sivanandan(サジット・シヴァナンダン)氏は、現在のインドでの国内規則では、Google Payはクリアなビジネスモデルなしで運営することを余儀なくされていると語った。

モバイル決済会社は、国内で版図を拡張する戦略として、ユーザーからはいかなる料金も取り立てなかった。政府からの最近の指令は、ユーザーと業者の間でUPI取引を利用することを促進するための決済会社への優待を終らせた。

Googleのシヴァナンダンは、すべての利害関係者に対して運営によるインセンティブを保証するために、「決済業者が利益を上げる方法を見つけること」を地元の決済機関に強く要請した。

今までに30億ドル以上を集めPaytmは、2019年3月末の会計年度に5億4900万ドル(約590億)の損失を報告した。

ソフトバンクとAlibaba(アリババ)によって支援された同社は近年、Paytm Mall、eコマースベンチャー、ソーシャルコマース、金融サービスツールであるPaytm Money、および映画・チケット発売のカテゴリーを含むいくつかの新しいビジネスへと拡張した。

今年、Paytmは加盟店へのサービスを拡充し、電卓とバッテリーパック装備のQRチェックアウト・コード表示スタンド、音声確認機能で取引を行えるポータブルスピーカー、およびスキャナ・プリンタ内蔵のPOSマシンなど新しいガジェットを発表した。

TechCrunchとのインタビューにおいて、シャルマはこれらの機器はすでに加盟店から相当な需要を獲得していると語った。同社は、これらのガジェットをサブスクリプションサービスの一環として提供しており、安定した収益の確保に貢献している。

賃貸、保険、および投資サービスを提供する同社のMoneyツールは300万人を超えるユーザーを集めた。この件に詳しい、今週会社を退職したPaytm Moneyのチーフ、Pravin Jadhav(プラヴィン・ジャダヴ)氏は語った。Paytmのスポークスマンはコメントを控えている(インドのニュース元であるEntrackrはその後の展開を初めて報告している)。

インドの決済市場の別の主要なプレーヤーであるFlipkart(フリップカート)のモバイル決済サービスPhonePe(フォンペ)は、現在1億7500万人を超えるユーザーと800万人を超える業者にサービスを提供している。同社の共同設立者およびCTOであるRahul Chari(ラウール・チャリ)氏は、「このアプリは、他のビジネスがユーザーにリーチするプラットフォームとして役立つ」とTechCrunchとのインタビューで説明した。そのアプリの不動産対象部分は削減されていないと彼は付け加えた。

しかし、スタートアップ企業が新しいカテゴリーへ拡大することは、現在、いっそうより多くのライバルに直面し、しっかりした足場を得るにはより多くの金銭が必要とされることを意味している。例えば、ソーシャルコマース分野において、PaytmはNaspers(ナスパーズ)の支援するMeesho(ミーショー)数社の新規参入企業が競合しており、強力な支援を受けているOkCredit(オーケークレディット)とKhataBook(カタブック)が現在の簿記市場をリードしている。

2カ月前に7500万ドル(約80億円)を集めたBharatPe(バラットペ)は、家族経営の店舗をデジタル化し、運営資金を提供している。そして、すでにユニコーン企業となったPineLabs(パインラブス)、そしてMSwipe(エムスワイプ)はそれぞれのPOSマシンで市場を満たした。

2017年2月4日土曜日、インドのベンガルールの道端にある屋台で、その店主がM-Swipe Technologies Pvt提供のMswipe端末を持って写真に納まっている(撮影:Dhiraj Singh/Bloomberg via Getty Images)

「彼らには選択肢がない。支払いは、現金化できるe-コマースや賃貸などのビジネスへのゲートウェイだ。Paytmの場合、同社の初期の賭けはPaytm Mallだった」とConvergence Catalystという調査会社の創立者かつチーフアナリストであるJayanth Kolla(ジャヤント・コーラ)氏は語った。

しかし、Paytm MallはAmazon IndiaおよびWalmartのFlipkartという巨人との競争で奮闘した。昨年、Mallはオフラインからオンラインおよびオンラインからオフラインというモデルに転向し、顧客による発注は地元のストアからサービスを受けるようにした。また、会社は昨年eBayから約1億6000万ドル(約170億円)を獲得した。

以前に、Paytm Mallで働いていた上層管理者は、「そのゴールポストが長年の間に常に移動しているので、ベンチャーが成長すべく奮闘している」と語った。最近は車の所有者が高速道路料金を素早く決済できるFASTag(ファスタグ)というシステム販売に力を入れ始めている。事情に詳しい関係者は、企業の少なくともあと2人の上層部が離れようとしていると語った。

コーラは、現在100を超える企業が同じ観衆を追っている、インドのモバイル決済市場の力関係は、10年以上前からの国内通信事業市場を彷彿させると語った。

「テレコム市場に4〜5人のプレーヤーしかいなかった時は、高収益になるという彼らの期待はずっと高いものだった。彼らはものすごい勢いでスケーリングしていた。それらは世界で最低のARPU(約2ドル、約200円)とともに成長し、それでも高収益だった」

「しかし、参入者が一夜にして十数まで増加し、新しいプレーヤーがより手頃なプランを加入者に提供し始めた瞬間、収益性が不確定になり始めたのだ」と彼は語った。

それをしめくくるものとして、インドで最も富裕な人物によって経営されたテレコムオペレータであるReliance Jioが2016年に参入、世界で最安価の関税計画が実施された国内で、再度市場をひっくり返し、何人かのプレーヤーに市場を去るか、破産を宣言するか、資本を強化することを余儀なくさせた。

インドのモバイル決済市場は現在同様な経過をたどっているとコーラ氏は語った。

クレディ・スイスの試算では2023年までに1兆ドル(約108兆円)に成長するとされるインドのモバイル決済市場で、そのシェアを争う十分な数のプレーヤーがいなかったならば、インド国内で4億人を超えるユーザーを擁する最も人気のあるアプリWhatsAppが、数カ月以内にインドでモバイル決済サービスを展開することになる。

関連記事:WhatsAppの世界最大のマーケットであるインドのユーザー数は4億人

前述の記者会見では、ニレカニ氏はシャルマ氏およびその他プレーヤーに賃貸のような財務サービスに焦点を合わせるよう助言している。

不幸なことに、ニューデリーで先月から3週間のロックダウンが命じられることとなった新型コロナウイルスの感染拡大は、何百万人もの人々がこうしたサービスを利用する能力に影響を与えることになりそうである。

「インドは、1億を超えるマイクロファイナンス口座があり、街角で野菜の行商をしたり、モールで売られているサリーに刺繍をしたりするような、ギグエコノミーの労働者が毎週現金でサービスを提供している。労働者の4人に3人が、他人のため、または家族経営の会社や農場で気軽に働くことで生計を立てている。「長期のシャットダウンは、2兆1000億ルピー(285億ドル、約3兆750億円)の負債を返済する彼らの能力を損い、世界最大のマイクロファイナンス産業を危険な状態に追いやるだろう」とBloombergコラムニストであるAndy Mukherjee(アンディ・ムケルジー)氏は記している

画像クレジット: Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳: Dragonfly)

モバイル決済アプリのLydiaが医療機関などに寄付できる機能を導入

フィンテックスタートアップLydia(リディア)は本拠地のフランスで330万人ものユーザーを抱える、同国を代表するモバイル決済アプリだ。それゆえに同社は、当初2020年夏のデビューを予定していた機能のリリースにこの10日間ほど懸命に取り組んできた。その機能とは、チャリティーや病院への寄付を行うためのものだ。

Lydiaユーザーは米国時間4月6日、17のチャリティーから選んでお馴染みのLydia決済手順で送金できるようになった。友達や家族に送金するような流れだ。

寄付は0.5ユーロ(約59円)から可能で、そのつど完了する。定期的な寄付の設定やまとめた寄付は不可だ。

Lydiaはつい最近、少額融資や携帯電話保険、火災保険・公共料金支払いのための無料クレジットといった金融商品のマーケットプレイス「the market」を導入した。マーケットのメニューはプロフィールタブの中に埋もれていた。そして現在、同社はメニューをユーザーアカウントと決済履歴の横のタブに置かれており、その中に寄付のボタンが加わった。

別の方法で寄付することもできる。決済画面で金額を入力して「次へ」をタップするときに、いつもの受取手が並んでいるリストからチャリティを選んで送金することができる。この機能は現在Android端末で利用でき、間もなくiOS端末でも使えるようになる。iOSユーザーは目下、the marketのメニューからのみの利用となる。

Lydiaは17のチャリティを選んでいるが、今後さらに増える見込みだ。リストには公立病院(パリ、ナント、ストラスブール、グルノーブル、リール、ニース)、健康にフォーカスしているチャリティ、そして一般的な公益チャリティ(フランス財団、Fondation 101、世界の医療団、Epic、Action contre la Faim、フランス赤十字社、アベ・ピエール財団、対がん連盟、Réseau Entourage、La Maison des Femmes de Saint-Denis)がある。

もしあなたがLydiaユーザーでなくても、ウェブブラウザからクレジットカードやデビットカードでLydiaの決済を使うことができる(もちろんチャリティのウェブサイトから直接寄付しても構わない)。

また多額の寄付をし、所得税で控除を受けたい場合は、チャリティに直接依頼しなければならない。Lydiaは仲介するだけなので控除を受けるための書類を発行できない。

Lydiaは最終的にはチャリティに寄付する際、その額から手数料を差し引くつもりだ。しかし新型コロナウイルス(COVID-19)危機対応として6月30日まで手数料を免除する。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Mizoguchi

モバイル決済のOrigami Payが総額66.6億円のシリーズC調達、 銀聯とも提携

origami01近年さまざまなモバイル決済サービスが登場する中、2012年から事業を進めてきたOrigami Payが9月20日、シリーズCラウンドの資金調達を発表した。出資総額は66.6億円で、これまでの投資ラウンドを累計すると88億円となる。これにより同社は、開発・ビジネス人材の強化と事業領域の拡大などの取り組みを進めるという。

シリーズCの資金調達先は、SBIインベストメント、トヨタファイナンス、信金中央金庫、銀聯国際、クレディセゾン、日本ユニシス、ジェーシービー、大垣共立銀行、三井住友カード、DG Daiwa Venturesとなっている。SBIインベストメントとDG Daiwa Venturesについては、各社が運営する投資ファンドからの出資となる。

同日にOrigami Payは、ゆうちょ銀行、SBJ銀行(10月以降開始予定)、じぶん銀行、静岡銀行(8月開始)、第三銀行(8月開始)、三重銀行(8月開始)、北越銀行 、みちのく銀行との提携も発表。すでに提携していたみずほ銀行、三井住友銀行、大垣共立銀行、青森銀行を含め、Origamiアプリと各銀行口座を連携させることで、OrigamiでのQRコード決済の際に、リアルタイムに口座から決済代金を引き落とせるようになる。

さらに、アメリカン・エキスプレス、JCB、Diners Club、Discoverのカードブランドとの連携も明らかになった。こちらも提携済みの、みずほ銀行、三井住友銀行、大垣共立銀行、青森銀行、VISA、Mastercardを含め、Origamiアプリにカード情報を登録することで、代金の支払時にOrigami のクーポンや割引などの特典も受けながら、クレジットカードのポイントなどのポイントを取得可能になる。

同日発表された中で最も注目を集めそうなのが、銀聯国際(ユニオン・ペイ)との連携だ。ユニオン・ペイとは、中国ではアリペイやWeChat Payに次ぐ規模だが、日本を含むアジア地域ではかなり普及している決済システム。今回の提携により、2019年第一四半期には、アジア太平洋地域、北米、中央アジア、中東、アフリカなど24の国と地域の750万店を超える店舗で、ユニオン・ペイのネットワークを利用してOrigami Payでの決済が可能になる。もちろん国内でも、Origami加盟店での銀聯QR決済を利用できるようになる。

そのほか、台湾のペイメントサービス「JKOPAY(街口支付)」とも連携し、台湾からの訪日客がクレジットカードの国際間の取引手数料を支払うことなく、日本でJKOPAYをそのまま使用できるようになる。

ウォレットアプリの「Kyash」がリアルカードを発行、Visa加盟店舗で利用可能に

個人間で送金や請求ができるウォレットアプリ「Kyash」を提供するKyashは6月7日、全国のVisa加盟店で利用できるリアルカードの発行を開始した。

2017年4月に個人間で送金や請求が無料でできるアプリとしてスタートしたKyash。受け取ったお金はアプリ内で発行されるバーチャルカード「Kyash Visaカード」に貯まり、オンラインVisa加盟店での決済時や、モバイルSuicaにチャージすることでコンビニや交通機関などで利用できた。

そして今回のリアルカードの発行によりコンビニやスーパー、飲食店といった実店舗での決済時にもKyashを使えるようになる。以前TechCrunchでも紹介した通り、Kyashでは実店舗での決済対応を見据えて2018年3月にUIを刷新。5月にはGoogle Payに対応し、今夏以降は国内のQUICPay対応店舗で支払いができるようになることも発表したばかりだ。

また決済時にインセンティブを提供するプログラムも開始。決済金額の2%を翌月にKyashの残高としてキャッシュバックし、そのまま送金や決済に利用できるようにする。これはリアルカードの決済だけでなく、アプリ内で発行されたバーチャルカードでの決済も対象だ。

Kyashではウォレットアプリとしての使いやすさ向上を目指し、今後も機能追加や外部連携を進める方針。「キャッシュレス社会の実現に貢献するべく、サービスの拡大に努めてまいります」としている。

ウォレットアプリの「Kyash」がリアルカードを発行、Visa加盟店舗で利用可能に

個人間で送金や請求ができるウォレットアプリ「Kyash」を提供するKyashは6月7日、全国のVisa加盟店で利用できるリアルカードの発行を開始した。

2017年4月に個人間で送金や請求が無料でできるアプリとしてスタートしたKyash。受け取ったお金はアプリ内で発行されるバーチャルカード「Kyash Visaカード」に貯まり、オンラインVisa加盟店での決済時や、モバイルSuicaにチャージすることでコンビニや交通機関などで利用できた。

そして今回のリアルカードの発行によりコンビニやスーパー、飲食店といった実店舗での決済時にもKyashを使えるようになる。以前TechCrunchでも紹介した通り、Kyashでは実店舗での決済対応を見据えて2018年3月にUIを刷新。5月にはGoogle Payに対応し、今夏以降は国内のQUICPay対応店舗で支払いができるようになることも発表したばかりだ。

また決済時にインセンティブを提供するプログラムも開始。決済金額の2%を翌月にKyashの残高としてキャッシュバックし、そのまま送金や決済に利用できるようにする。これはリアルカードの決済だけでなく、アプリ内で発行されたバーチャルカードでの決済も対象だ。

Kyashではウォレットアプリとしての使いやすさ向上を目指し、今後も機能追加や外部連携を進める方針。「キャッシュレス社会の実現に貢献するべく、サービスの拡大に努めてまいります」としている。

Googleがインドでローカルモバイル決済サービスを始める模様

インドに本拠を置くニュースサイトKenのレポートによると、インドに焦点を当てつつあるGoogleは、来週早々にもローカライズされたデジタル決済サービスを導入する計画だ。

報告でGoogle ‘Tez’(「迅速」という意味)と呼ばれるこのサービスは、既存のGoogle WalletやAmdroid Pay以上に包括的な支払手段を提供する。例えば、Tezは、政府によって支えられた支払いシステムであるUnified Payments Interface(UPI)や、その他の消費者向け支払いサービスであるPaytmやMobiKwikなどへのサポートを提供する予定だ。明らかに最初から専用アプリとして提供されるようだ。

Googleはコメントを拒否した。

Googleは米国以外では支払いに対して大きな努力はしておらず、インドでの消費者のプレゼンスは強いものの、インドからの収益に関してはまだ特筆すべきものはない。そうした点を考慮すると、これは大変なことである。

強気に出る理由は沢山ある。インドのインターネットユーザーベースとスマートフォンセールスの急速な成長を受けて、同国は既に世界2番目の巨大スマートフォン市場になっている。そしてデジタルペイメントはロケットのように急速に上昇し2020年迄には年間5000億ドルにも達するだろうと言われている —— この予想はBCGと(…ここでドラムロール…)Googleによるものだ

その可能性は既にFlipkartWhatsAppTruecallerのようなテクノロジー企業を引き寄せ、その世界での展開が始まっている。しかしその消費者サービスと(インドでは支配的なスマートフォンOSである)Androidと組み合わさった徹底したプロダクトによって、Googleは優勢になる可能性がある。

情報源によれば、Kenは政府の書類を掘り起こして、GoogleがTezという名前のプロダクトをインドで公開する情報を掴んだのだと言う。また、興味深いことに、国際的な展開も計画されているように見える。なぜなら検索の巨人はTezの商標を少なくともインドネシアとフィリピンで登録しているのだ。

Googleは、インドで相当量の開発リソースを使っている。また最近では、それ以上に東南アジアに対してそのNext Billion Users (NBU:次の10億ユーザー)プログラムを通してリソースを投入している。この中には無料の公共/鉄道駅Wi-Fiデータ最適化バージョンのYouTube、そして手頃な価格の端末用のAndroid OneおよびAndroid Goオペレーティングシステムなどが含まれる。またNBUチーム立ち上げのためにインドシンガポールで人材を確保し地域の技術的才能を磨き上げようとしている。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: JON RUSSELL/FLICKR UNDER A CC BY 2.0 LICENSE (IMAGE HAS BEEN MODIFIED)

モバイル決済利用率は日本6%、米国5.3%、そして中国では98.3%――日銀レポート

スマートフォンやモバイル端末を使った「モバイル決済」は盛り上がりを見せつつある。最近の話で言えば、Apple PayでSuicaが使えるようになり、すでにAlipayやLINE Payに対応する「モバイル決済 for Airレジ」も2017年夏頃からビットコイン支払いにも対応すると発表した。

また、日本政府は2020年までに訪日外国人観光客を4000万人にする目標を表明している。そうなれば、特にAlipayやWeChat Payなどが普及する中国からの観光客に対応するためにも、日本でもモバイル決済が使える環境の整備が期待されているところだろう。

そんな中、日本銀行は店頭でのモバイル決済の動向をまとめた調査レポート「モバイル決済の現状と課題」を6月20日に発表した。

なお、モバイル端末に差し込むクレジットカードリーダを使ったサービスを”モバイル決済”と呼ぶこともあるが、ここでいうところのモバイル決済とは、端末をかざしたり、コードを読み込んだりして決済を行うことを指す。

決済可能な端末数

本レポートによれば、決済機能を搭載したモバイル端末の数は増え続けている。駅の改札口などでお馴染みのFelica方式で決済可能なモバイル端末は2007年から上昇し続けており、2017年3月時点では3000万台を超している。

ただ、カード型電子マネーの発行枚数の上昇スピードの方が高いため、全体における比率は2012年から低下し続けている。

なお、QRコードやバーコードを使う方式(Chase Pay、Alipay、WeChat Pay、LINE Payなど)や、Bluetoothを用いる方式(Origami Payなど)は、統計が整備されていないなどの理由から、この数からは除外されている。

モバイル決済の利用状況

日銀が2016年11〜12月にかけて実施した第68回「生活意識に関するアンケート調査」によれば、モバイル決済を「利用している」と答えた日本人は全体の6%にとどまる。また、「機能はあるが利用していない」と答えた人も全体の42%存在するという。

つまり、日本のモバイル決済は、控えめに言ってもほとんど普及していないということだ。

ただ、これは他の先進諸国でも同じことが言える。本レポートでは、米連邦準備理事会(FRB)が2015年11月に実施した調査、およびドイツのブンデスバンクが2014年に実施した調査の結果を紹介している。それによれば、モバイル決済を「利用する」と回答した人は米国で全体の5.3%、ドイツでは2%と低い。

一方で、従来の金融サービスが十分に行き届いていない一部の新興国では、モバイル決済の普及率が圧倒的に高い。ケニアでは、携帯電話加入者の約76.8%(2015年6月)がモバイル決済を利用。中国で行なわれた調査では回答者の98.3%が過去3ヶ月間にモバイル決済を「利用した」と答えたという。

その他要点まとめ

本レポートから読み取れる他の要点を以下にまとめた。

  • モバイル決済を利用していると答えたのは、20代から50代男性が多い。これは他の先進国でも同様。地域別で見ると関東圏が高い。
  • 日本の電子マネー利用額は他の先進諸国と比べても圧倒的に高い(2015年で約4.4兆円)。それにクレジットカードとデビットカードでの決済を加えたカード決済額全体を見ると、2016年度で56.6兆円となっている。
  • 日本人は多くの決済用カードを持つ(平均7.7枚)が、それほど多くの金額を使っていない(GDP比で見ると世界14位)。
  • モバイル決済を利用しない理由として多かったのは、「セキュリティに対する不安」と「現金やクレジットカードの方が便利」というものだった。
  • 店頭に設置された非接触ICタイプの電子マネー決済端末の台数は、2016年9月時点で約195万台。
  • 規格の違いや対応店舗の少なさといった制約があるなか、日銀は「先行き、実質的に利用可能なネットワークの拡充に向けた、関係者の取り組みが重要となっていくと考えられる」とコメント。関連事業者への激励叱咤ともとれる。

より詳しい内容は、こちらからダウンロードできるレポート本文を見てほしい。