オープンバンキングを利用して信用度の低い消費者にローンを提供するKoyo

オープンバンキングを利用して、信用度の低い人にもローンを提供するフィンテックスタートアップのKoyo(コーヨー)は、Force Over Mass(フォース・オーバー・マス)が主導したデット(借入)とエクイティ(増資)の両方によるシリーズA資金調達ラウンドを5000万ドル(約55億円)でクローズした。このラウンドには既存投資家のForward Partners(フォワード・パートナーズ)、Frontline Ventures(フロントライン・ベンチャーズ)、Seedcamp(シードキャンプ)の他、新規投資家としてForce Over Massをはじめ、GoCardless(ゴーカードレス)の創業者でNested(ネステッド)の共同創業者であるMatt Robinson(マット・ロビンソン)氏や、銀行や金融業界のエンジェル投資家たちが参加した。同社は2019年に行われた前回の資金調達で、490万ドル(約5億4000万円)を調達している。新型コロナウイルス感染流行期間中に、多くの分野の人々が借金を重ねているが、通常は主要なローン会社に断られるような、この下層の消費者から、Koyoは利益を得ているようだ。

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このスタートアップ企業は、消費者向け融資のリスクを査定する際に、信用機関のスコアではなく、オープンバンキングのデータ(銀行取引データ)を使用しているという。言い換えれば、信用機関の評価ではなく、顧客が日々どのようにお金を使っているかを調べるということだ。このアイデアは、通常のサービスが十分に受けられない市場、つまり「シンファイル(thin file)」(クレジットヒストリーが短い、またはまったくない)とか「ニアプライム(near prime)」と呼ばれる顧客に、魅力的な金利と安価な借り入れを提供する。ニアプライムの市場は、英国では1300万人から1500万人に相当する。

Koyoの創業者であり、ロンドンのFrontline Ventures(フロントライン・ベンチャーズ)やベルリンのCavalry Ventures(カバルリー・ベンチャーズ)でVCを務めた経験をもつThomas Olszewski(トーマス・オルショウスキ)氏は、声明で次のように述べている。

新型コロナウイルスの世界的な感染流行が起こった頃に事業を開始したKoyoは、オープンバンキングのデータを革新的に活用することで、より良いリスク判断ができることを証明し、最終的には英国が直面した最も厳しい経済状況の中で事業を成長させることができました。伝統的な金融機関の多くが急速に融資を縮小した時期に、英国の多くの人々に競争力のある金利でクレジットの利用を提供し続けてきたことを、私は誇りに思います。

Force Over MassのパートナーであるFilip Coen(フィリップ・コペン)氏は、次のように述べている。「私たちは、変革をもたらす技術と強力なビジネスモデルを兼ね備えた企業に投資していますが、Koyoはその両方の部門で強くインデックスされました。Koyoは創業から1年半の間に一級品の基盤を築き上げており、私たちはその将来に関われることに興奮しています」。

画像クレジット:Koyo Loans team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

デジタル・レンディング・プラットフォームのBlendの新規公開での評価額は約4400億円超

住宅ローンはセクシーではないと思われがちだが、ビッグビジネスだ。

最近、デジタルで住宅の借り換えや購入をした人は、その背後でソフトウェアを動かしている会社に気づかなかったかもしれない。だが、その会社がBlend(ブレンド)である可能性は十分にある。

2012年創業のBlendは、住宅ローンテクノロジー業界のリーダーとして着実に成長してきた。Blend社のホワイトレーベルテクノロジーは、Wells FargoやU.S. Bankなどの銀行のサイトで住宅ローンの申請をサポートしている。その目的は、プロセスをより速く、シンプルにし、透明性を高めることにある。

サンフランシスコを拠点とするBlend社のSaaS(Software-as-a-Service)プラットフォームは、昨年7月には1日あたり約30億ドル(約3300億円)だった住宅ローンや消費者ローンの取り扱い額が、現在では50億ドル(約5500億円)以上に達している。

Blendは米国7月16日、ニューヨーク証券取引所に上場企業としてデビューした。「BLND」というシンボルで取引される。米国東部時間の午後早い時間に、株価は13%以上上昇し、20.36ドル(約2240円)で取引されている。

7月15日夜、同社は1株あたり18ドル(約1980円)の価格で2000万株を市場に出すと述べていた。これは同社が36億ドル(約3960億円)のバリエーションを目標としていたことを示している。

1月に行われた前回の資金調達時のバリエーションは33億ドル(約3630億円)だった。それは3億ドル(約330億円)のシリーズGラウンドで、CoatueやTiger Global Managementが参加した。また、Blendがユニコーンになったのは、昨年8月に7500万ドル(約82億5000万円)を調達したシリーズFからであることも忘れてはならない。同社は、7月16日の上場までに6億6500万ドル(約732億円)を調達した。

Blendは、6月21日に提出したS-1で、収益が2019年の5070万ドル(約55億7700万円)から2020年には9600万ドル(105億6000万円)に増加したことを明らかにした。一方、純損失は、2019年の8150万ドル(約89億6500万円)から2020年には7460万ドル(約82億600万円)に縮小した。

サンフランシスコを拠点とする同社は2020年、そのデジタル消費者金融プラットフォームを大幅に拡大した。拡大に伴い、貸し手である顧客に新しい機能を提供し始め、あらゆる消費者向け銀行商品を「数カ月ではなく数日で」立ち上げることができるようになった。

今後の見通しとして、同社は収益成長率が「将来的に低下する」と予想している。また、しばらく成長に重点を置くために、すぐに黒字化を達成することは想定していない。また、開示資料によると、2020年には上位5社の顧客が収益の34%を占める。

TechCrunchは先日、共同創業者でCEOのNima Ghamsari(ニマ・ガムサリ)氏に、ユビキタスなSPACや、まして直接上場でもなく、伝統的なIPOに踏み切った同社の決断について話を聞いた。

ガムサリ氏は、同社が「長く続く企業」であることを顧客に示すために、成長を続けるための十分な資金をバランスシートに残しておきたいと考えていた。

「世界最大級の投資家の方々に当社への投資を納得していただかなければなりませんでした。それは、当社がどれだけ長くお客様にサービスを提供できるかを説明するということでした」と同氏は語った。「つまり、最も規制の厳しい業界の1つであるこの業界で、本当に信頼できるソフトウェア・プロバイダーとしての地位を確立したいという思いと、当社の資金需要が結びついたのです」

Blendは住宅ローンのプロセスを支援するソフトウェア会社であり、住宅ローンを提供する会社ではない、とガムサリ氏は強調する。そのため、住宅ローンを提供するフィンテックの一群と連携している。

「多くのフィンテック企業が、インフラとしてBlendを利用しています」とガムサリ氏は言う。

同氏は全体としてこれはBlendにとって始まりに過ぎないと考えている。

「金融サービスの特徴の1つは、いまだにそのほとんどが紙で行われていることです。だからこそ、Blendの成長の大部分は、数年前に始めたこのプロセスをさらに深めていくことなのです」と語る。前述の通り、Blendは住宅ローン商品からスタートしたが、その後も商品を増やし続けている。現在では、自動車ローン、個人ローン、ホームエクイティローンなど、他のローンにも対応している。

「当社の成長の多くは、他のビジネスラインによって支えられています」とガムサリ氏はTechCrunchに話した。「金融業界ではデジタル化の流れがまだ始まったばかりで、開発すべきものがたくさんあります。この業界は比較的規模が大きく、変化に富んでいます」

5月には、デジタル住宅ローンの貸し手であるBetter.comがSPACと合併し、2021年後半に株式公開すると発表した。

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画像クレジット:Blend

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

銀行から直接低金利ローン提案を受けられる「クラウドローン」、6年間で60万円お得に

あなたは、自動車を購入する際には銀行が提供する「自動車ローン」、ビジネススクールに通うときには「教育ローン」、歯のインプラント治療をするときは「医療ローン」を活用できることをご存知だろうか。「金利が低い銀行ローンを上手に活用できている人は、実はかなり少ないと思っています」と話すのは、クラウドローンCEOの村田大輔氏だ。同社は、ユーザーが個人情報を登録するだけで、条件に見合った銀行からの各種ローンオファーを直接受けられるプラットフォーム「クラウドローン」を運営する。

6年間で60万円の差が生まれる

例えば、中古自動車を購入する時のことを考えてみよう。客はディーラーまで足を運んで、試乗をしてみたり、担当者と話をして購入を決定する。その際によく利用されるのが、ディーラーが紹介する「ディーラーローン」。村田氏によると「期間は6年、金利は9%程度」などが平均的だという。

このディーラーローンは、購入と併せて契約手続きができるため便利な一方で「必ずしも消費者にとってベストな選択肢ではない」と同氏は話す。その理由は2つある。まず、金利が高い。ディーラーは信販系のクレジット会社と提携してローンを提供しており「金利の約半分をディーラーが受け取るという構造」と村田氏はいう。そのため、どうしても消費者側の負担が重くなる。次に、顧客はローンを完済するまで、購入した自動車の所有権を持てない場合が多い。つまり、ローンの返済期間中は自動車は「あくまでローン会社の所有物」なので、顧客が何らかの事情で売却したいと思ってもそれは叶わない。

これに対して、銀行が提供する目的別ローンはどうだろうか。例えば「自動車ローン」であれば「車関連の費用向け」など用途は限定されているものの、金利は2%程度。ディーラーローン(9%程度)と比較すると、6年間のうちに支払う金額は60万円ほど少なくなる。また、自動車は購入した瞬間から消費者に所有権が移るので、ローン返済中自由に売却することも可能だ。村田氏は「もちろん、銀行ローンのほうが審査基準は厳しいなどの制約もあります。ただ、あまりに多くの人が銀行ローンの存在を知りません。金利の高いディーラーローンを店舗で勧められるままに契約してしまっている」という。

銀行からローンの提案を受けられる

このような現状を変えることに挑戦するのが、同氏が運営するクラウドローンだ。まず、同ウェブサイトにてユーザーは年収や年代、雇用形態といった基本情報を登録する(名前や住所は登録不要)。すると、同社と提携する地方銀行や信用金庫の担当者がそれらのデータを閲覧し「融資できる可能性が高い」と判断したユーザーに、クラウドローンを経由してローンの提案を行う。基本的に翌営業日までには提案が受けられる。その後、ユーザーは提案を受けた複数の金融機関から一行を選び、ローン申し込みに進むという流れだ。

「従来のローン比較サイトなどとクラウドローンが異なる点は、ユーザーが『自分の条件で融資を受けられる銀行』を知った上で、ローンの申し込みができることです。これまでのように、インターネット上でさまざまなローンを比較検討して、大量に申し込む……そういった手間もなくなりますし、失敗を重ねて信用情報を毀損するリスクも低くなります」と村田氏。同社は、提携する銀行側から成果ベースの収益を得るため、ユーザー側はクラウドローンを利用する際に手数料などは一切かからない。

ただ、ふと疑問に残るのは「信販系と比較して銀行ローンのほうが条件が良いなら、なぜ現状の認知度はそんなにも低いのか」という点だ。村田氏は、それは約10年前に施行された改正割賦販売法の規制のためだという。「銀行は規制により、例えば中古車販売を行うガリバーなどの事業者と手を組んで、ローン商品の紹介することができません」。一方で銀行ではないクラウドローンは、エイチームが運営する中古車買取サイト「ナビクル」や、ウェブクルーが運営する比較ポータルサイト「ズバッと」などと連携し、さまざまな経路からユーザーを獲得している。このように、クラウドローンのようなマッチングプラットフォームが銀行の代わりとなって事業者と連携し、消費者と銀行ローンを結びつけるための橋渡し的存在になっているというわけだ。

クラウドローンCEOの村田大輔氏

情報格差をゼロに

2018年設立のクラウドローンは、これまでに約1万5000人のユーザーが利用しており、ローン申し込み件数は約2万件、申し込み総額は約250億円にのぼる。横浜銀行や名古屋銀行など17の金融機関と提携しており、年内には50行まで増やす予定という。

「今、新型コロナの影響で親が失業したり、アルバイトを続けられなかったりで、学校を辞めてしまう若い人がいます。でもそういう人は、実は銀行の教育ローンをかなり低い金利で借りられることを知らなかったりする。あるいは、不妊治療の高い費用を支払えずに諦めてしまう人がいる。そういう人は、妊活ローンを利用できることを知らないかもしれない……。そんな人たちに向けて、『低い金利で銀行から借りられる選択肢』があることを発信していきたい」と村田氏は想いを語る。

銀行にとっても、金利収入の減少やコロナ禍による融資先の資金繰りの悪化などにより、個人向けローンは収益源の「最後の砦」といえる。消費者、銀行、そしてそれらのマッチングプラットフォームである同社の三方良しを実現するクラウドローンは、もっと多くの日本人が知っておいても良い存在ではないだろうか。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:クラウドローンローン日本銀行

画像クレジット:クラウドローン

ソフトバンクによるBetter.comへの約548億円出資で住宅ローン業界の魅力が証明された

デジタル住宅ローン融資のBetter.com(ベター)は、日本の投資コングロマリットであるSoftBank(ソフトバンク)から5億ドル(約548億円)の資金調達を行い、同社の価値を60億ドル(約6571億円)とした。

この資金調達はいくつかの理由で注目されている。まず、同社の60億ドルという新たな評価額は、2020年11月にシリーズD投資ラウンドで2億ドル(約219億円)を調達した際の評価額40億ドル(約4381億円)から50%アップしていること。2019年8月のシリーズCラウンドで資金調達した当時の6億ドル(約657億円)という評価額からは10倍にもなっている。

2つ目の理由としては、伝統的に「魅力的ではない」業界で、長い間分裂を必要としてきた住宅ローンが、公式にホットであるとさらに証明されたということだ。ソフトバンクが投資すれば、間違いなく人々は注目する。

新型コロナウイルスの大流行と過去最低水準の住宅ローン金利は、誰も予想しなかった方法でオンライン住宅ローン融資の分野を加速させた。これにベンチャー投資における全体的な熱気が合わされば、Better.comがわずか数カ月の間に7億ドル(約767億円)を調達したことも大きな驚きは与えない。

今回の投資によって、2014年の創業以来、Better.comが調達した資金総額は9億ドル(約986億円)を超えた。ソフトバンク以外の支援者には、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)、Kleiner Perkins(クライナー・パーキンス)、American Express(アメリカン・エキスプレス)、Activant Capital(アクティバント・キャピタル)、Citi(シティ)などが含まれている。

The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)によると、ソフトバンクはBetterの既存の投資家から株式を購入し、同社創業者でCEOのVishal Garg(ヴィシャル・ガーグ)氏に、同社に投資する「熱心さの表れ」として、すべての議決権を与えることで合意したという。

2020年10月に開催されたバーチャルイベント「LendIt Fintech(レンディット・フィンテック)USA 2020」で筆者が行った個別インタビューの中で、ガーグ氏は「IPOは間違いなく実現する」と語っていた。

「適切な時にやるつもりです」と、彼は言った。「米国資本主義の核となる信条の1つは、ある会社の顧客がその会社の株を買えるということです」。

そして2021年2月には、Betterが米国での新規株式公開に向けて、Morgan Stanley(モルガン・スタンレー)と Bank of America Corp(バンク・オブ・アメリカ)を起用したと、Bloomberg(ブルームバーグ)が報じた。IPOの前に多額の資金を調達することは珍しいことではない。例えば、後払いや分割払いによる決済サービスを提供するフィンテック企業のAffirm(アファーム)は2020年それを行った

2020年10月にヴァーグ氏が筆者に語ったところによると、新型コロナウイルス感染流行前のBetterは月に約12億ドル(約1315億円)のローンを処理していたが、2020年10月の時点では月に25億ドル(約2739億円)以上の資金を調達し、スタッフも1500人から世界中で約4000人に増えていたという。

「新型コロナウイルス感染拡大が始まったとき、私たちの収益は月に5000万ドル(約54億8000万円)にも満たないものでした。今はその2.5倍です」と、当時ヴァーグ氏は語っていた。

その後、この数字はさらに上昇している。同社の広報担当者によると、Better.comは2021年の第1四半期だけで140億ドル(約1兆5300億円)のローンを提供し、現在は月に40億ドル(約4380億円)以上のローンを提供しているとのこと。ちなみに、同社が2020年の全期間で提供したローンの総額は、250億ドル(約2兆7400億円)だった。また、現在の従業員数は6000人で、2020年10月からさらに2000人増加しているという。

関連記事:米不動産販売が急増しIPOが迫る中、住宅ローンのBetter.comのCTOにダイアン・ユー氏が就任

カテゴリー:フィンテック
タグ:Better.comソフトバンクグループ資金調達ローン不動産

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

College Cashを設立したダラスの起業家が学資ローンの返済に苦しむ人々を支援するために奮闘中

Demetrius Curry(デメトリウス・カリー)氏はこの数年間、夢を追いかけてきた。

彼の起こしたスタートアップCollege Cash(カレッジ・キャッシュ)では、企業がユーザーに頼んで、自社の製品やサービスを強調する写真や動画のマーケティングコンテンツを作成してもらうことができるのだが、コンテンツの作成者は、学資ローンの借金返済に直接つながるクレジットというかたちで企業から報酬を得る。このモデルは、関係する企業に社会的な善意と税制上のメリットを与えるものだ。

ダラスに住む創設者のカリー氏は、彼の娘が最終的に自分で学資ローンの借金を返すことになるだろうと話すのを聞いて、学資ローンの借金問題に取り組むことを思いついた。それからカリー氏は2年間を費やして新たなプラットフォームを構築し、パートナー企業を探し出し、アクセラレータープログラムを利用して、ユーザーを惹きつけ、彼のビジョンに賭けてくれる投資家を根気よく探しだした。

College Cashはこれまでに10万5000ドル(約1100万円)を調達しており、最終的にはシードラウンドで100万ドル(約1億500万円)の資金調達を目指している。

スタートアップのエコシステムに流入する資本が歴史的に高いレベルにある中でさえ、チャンスを見つけるために度々苦労してきたカレー氏にとって、このラウンドで資金調達することは独自の困難があった。VCの投資先としてまだわずかなパーセンテージを占める黒人の起業家に対する差別は、これまであまり目立たなかった。2020年の夏に起きた警察の暴行に対する抗議行動の余波で、多くのベンチャーキャピタル企業が制度的人種差別を非難し、より多くの恵まれない起業家を支援することを約束する声明を発表し、多様な起業家のための新たなプログラムを立ち上げた。

College CashのCEOであるデメトリウス・カリー氏

カリー氏は、問題の規模や発言をしている人の善意は理解しているといいつつ、「十分なサービスを受けていない」創業者の定義について、ベンチャーキャピタルのネットワークはまだ学ぶべきことが多いと考えており、既存の取り組みの多くは、同氏にとって「リップサービス」のように感じられるとのこと。

シリコンバレーは相変わらず名門大学の中退者を崇拝し続けているが、貧困の中で戦ってきた創業者や、機会の少ない地域で機会を見つけてきた創業者の功績を認めることに対して、出資者の関心は低いと、カリー氏はいう。

「同じ場所を探していても、何か違うものを探すことはできません」と、カリー氏はTechCrunchに語った。「『恵まれない創業者』というトピックを見るとき、それは肌の色だけではなく、その人がどこから来て何を経験してきたのかということも重要なのです」。

カリー氏によると、投資家がそのパラメータを適切に調整しようとしない場合、アーリーステージの機会を競い合う際にはいら立たしい思いをすることがあるという。カリー氏が特に不満を感じているのは、多様な創業者を対象としたプログラムに参加するためにさえ、「温かい紹介」を求めなければならないことや、「恵まれない」創業者を対象としたアーリーステージプログラムに応募しても、応募資格がないと言われてしまうことだ。

「私達がここまで来るのに、どれだけの苦労が必要だったか考えてみてください」と、カリー氏はいう。「私はウェブホスティング料を払うために血液を売ってきました。何も私を止めることはできません」。

学資ローンの負債に苦しんでいる人々に、返済の機会を拡大するというCollege Cashの使命は、学業に戻れたことで人生の好転を経験したカリー氏にとって他人事ではない。

数十年前、軍を退役したばかりのカリー氏は、Hardee’s(ハーディーズ)で食事をしているときに見知らぬ人と無作為な会話をしたという。彼が人生にもっと望んでいるものは何かということについて話し合ったこの議論は、彼が学業に戻ってGED(後期中等教育修了程度認定試験)に合格し、後にビジネスの学位を取得するための後押しとなった。その後、金融業界でキャリアを積み、最終的にはCollege Cashを設立して起業家としての目標を追求することにつながったのだ。

College Cashは、現時点では明らかに初期段階のベンチャーだが、カリー氏はこの先に向けて大きな野望を抱いている。彼の次の取り組みは、College Cashのチップ機能をギグエコノミーのプラットフォームと統合すること。その目的は、ユーザーである企業が労働者の学生にチップを渡せるようにし、その人の学資ローンの返済に直接お金を回すことができる仕組みを作ることだ。

カリー氏によれば、College Cashのチームは、この統合を試験的に実行するために「全国のギグエコノミープラットフォーム」と協力し、そのお金が学資ローンの返済に使われることを知った企業はチップを支払う可能性が高くなることを示すフォーカスグループを行っているという。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:College Cashローン学生

画像クレジット:DNY59 / Getty Images

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

モバイルファーストの住宅ローンサービスプラットフォームValonが約52.5億円調達

あなたが住宅ローンを申し込んだことがあるなら、それが最も苦痛をともなう手続きの1つであることは知っているはずだ。ローンの間、遅延することなく支払いし、顧客サービスに対応することはいずれもピクニックのようなものではない。

なのでこのプロセスをより簡単なものに、そしてデジタル化して透明性のあるものにするという目標の下に、この分野に大金が注ぎ込まれるのは驚きではない。

そのためにテックを駆使した住宅ローンサービスのValon Mortgage(バロン・モーゲッジ)は米国時間2月2日にシリーズAラウンドで5000万ドル(約52億5000万円)を調達したと発表した。今日の基準においてこのステージでの規模としては大きい。

以前Peach Streetという社名だったニューヨーク拠点のValonの本ラウンドはAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)がリードした。既存投資家の中からJefferies Financial Group、Fortress Investment Group LLC傘下のNew Residential Investment Corporation 、166 2nd LLC(WeWorkの共同創業者Adam Neumann[アダム・ニューマン]氏のファミリーオフィス)もラウンドに参加した。

Valonはこれまでに連続起業家Kevin Ryan(ケビン・ライアン)氏のAlley Corp、Soros、Kairos、Zigg Capitalといったシード投資家から320万ドル(約3億4000万円)を調達していている。

Andrew Wang(アンドリュー・ワン)氏、Eric Chiang(エリック・チャン)氏、Jon Hsu(ジョン・スー)氏は、米国の住宅ローンの半分以上を支配している「最大のローンサービスソフトウェア企業」による「マーケットの寡占」なるものを打破しようと、2019年6月にValonを創業した。

「我々は、2008年に匹敵する住宅ローン差し押さえ危機の境界線にいます。そしてローンの支払いに苦しんでいる住宅所有者の大半は、自身が持つ選択肢に気づいていません」とValonのCEOであるワン氏は話した。「この締め付けは過去10年で250%近くのサービスコストアップにつながりました。そして手数料は直接借り手に跳ね返ってきます」。

資金調達と時期を同じくして、 Valonは最近、Fannie Mae(ファニーメイ、連邦住宅抵当公庫)から政府支援の住宅ローン扱いの許可を受けた(知らない人のために説明すると、ローンの提供は貸し手に代わって支払いを回収するようなことを意味する)。ワン氏によると、許可はValonが引き続き急成長するのに貢献する。

「1年で契約ゼロから100億ドル(約1兆500億円)の住宅ローンを扱うまでに成長しました」とワン氏はTechCrunchに話した。

Valonは49州でサービスを提供しており、2021年ニュヨークにも進出する。

住宅ローンサービス業界の元投資家として、ワン氏は他のローン回収業者が提供する「サービスの欠如」が不満だった。そして同氏はValonを立ち上げるために、Google(グーグル)、Twilio(トゥイリオ)でプロダクトとエンジニアリングの経験があったチャン氏、スー氏とチームを組んだ。

Valonのクラウドネイティブのプラットフォームは借り手志向のエクスペリエンスと表するものを提供するのが目的だ。貸し手もまた借り手のパフォーマンスを閲覧したりトランザクションデータを照合したりするのにリアルタイムのAPIデータフィードへのアクセスを要望できる。

借り手に金を貸すローン原債権者と異なり、ローン回収業者は15年から30年の間となるローン期間について借り手と話し合う。

「貸し手の代理としてのローン回収、そしてストレスのかかるときに借り手へのサポートとガイダンスの提供のようなものも含まれます」とワン氏は述べた。「従来の住宅ローン回収業者は時代遅れのテクノロジーを使っていて、借り手にそれほど良くないサービスを提供しています。Valonは住宅所有者に透明性とフルサービス能力を提供することでその点を大幅に変えようとしています」。

同社のテクノロジーは全プロセスの垂直統合によりローンサービスコストを最大50%削減する可能性がある、と同社は主張する。同社のプラットフォームは、暗号のデフォルトや侵入感知などの機能を備えるなどセキュリティを「第一原則」としてGoogle Cloud上で構築されている、と同社は述べた。

何百万という米国人が2020年に新型コロナウイルスパンデミックの経済負担のために住宅ローン支払いを停止した。これは支払猶予の要望と抵当物件差し押さえの一時停止につながった。

「パンデミックはマーケットにあるストレスを際立たせ、新時代のローン回収業者の必要性を大幅に加速させました」とワン氏は述べた。「住宅所有者はかなりの経済ストレスに直面し、正しい選択と既存サービスからのサポートを得るのに苦労しました。既存サービスの時代遅れのテクノロジーとリクエスト処理能力のなさのためです。2021年に支払猶予と差し押さえ免除が終わると、ニーズはより差し迫ったものになります」。

2020年半ばにValonの役員会に加わったAndreessen HorowitzのゼネラルパートナーであるAngela Strange(アンジェラ・ストランジ)氏は、Valonがモバイルファーストのローン回収サービスをゼロから立ち上げたと話す。

「住宅所有者は騒々しいウェブサイト、コールセンター、そして往々にして誤情報に直面します。Valonはクリアで透明性のある法規制に則った情報を提供できるソフトウェア駆動の信頼できるアドバイザーを抱えています。電話をかける必要はありません」と同氏は声明文で述べた。

ファニーメイの許可は、Valonが構築したプラットフォームにお墨付きを与えた、と同氏は付け加えた。

Valonは調達した資金を従業員の増加にあて、年末までに3倍の100人にするつもりだ。また、より多くのサービシング権利(MSR)契約を獲得するのにも資金を注入する。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Valon Mortgage住宅ローン資金調達

画像クレジット:Valon Mortgage

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi)

自動車ローン借り換えプラットフォームのMotoRefiが10.4億円調達、パンデミックの中で収益6倍

新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックが北米に拡大する1カ月前、自動車フィンテックのスタートアップであるMotoRefiは、新たに約900 万ドル(約9億3000万円)の資金で武装し、借り換えプラットフォームを大衆に提供しようと準備を進めていた。

CEOのKevin Bennett(ケビン・ベネット)氏と同社を支える投資家たちは、自動車ローンの総額が1兆2000億ドル(約124兆5000億円)に上る米国人にサービスを提供するチャンスがあると考えていた。彼らが予想していなかったのは、新型コロナウイルスによる需要の急激な増加と、パンデミックがもたらした不確実性と混乱だった。

2017年にQED Investorsから誕生したMotoRefiは、最適な金利を見つけること、以前の貸し手への返済、車両の所有権の再登録など、すべてのプロセスを処理する自動車借り換えプラットフォームを開発した。同社は、新型コロナに端を発した2つのトレンドの融合により、事業をターボチャージしてきた。経済全体でのフィンテックの採用が加速していることと、パーソナルファイナンスへの注目度が高まっていることである。

今、投資家たちは自動車ローンの借り換え需要の急増を最大限に活用するために、同社にさらに多くの資金を注ぎ込んでいる。

MotoRefiは米国時間1月22日、Moderne Venturesが主導するラウンドで1000万ドル(約10億4000万円)を調達したと発表した。Moderne VentureのパートナーであるLiza Benson(ライザ・ベンソン)氏が取締役会に加わることになる。

ベネット氏は、2020年の出来事についてこう語った。「多くの人が今、どうすればお金を節約できるのかと周りを見回しています。自動車ローンの借り換えは歴史的にパーソナルファイナンスの中では比較的認知度が低いカテゴリーですが、2020年にはそれに対する関心は本当に高まり、加速しました」。

たとえば自動車ローンの借り換えに関するGoogle検索は2020年、前年比で約40%増加したと同氏は付け加えた。

同社の収益は6倍に増加し、従業員は3倍の150人以上になり、プラットフォーム上の融資業者の数はこの1年で2倍になったという。MotoRefiは、2020年に2億5000万ドル(約259億円)以上の自動車ローンを借り換えたと同氏は述べた。

「実際には1年で2回の資金調達は計画していませんでした」とベネット氏は述べている。「しかし、市場の投資家の立場から見ると、成長はかなり目立っていました」。

ベネット氏によると、MotoRefiは現在42州とワシントンD.C.で事業を展開しているという。この新しい資本は、従業員の雇用とサービスの拡大に充てられる。

MotoRefiはこれまでに2400万ドル(約25億円)以上を調達している。同社は2020年2月、シリーズAラウンドで860万ドル(約8億9000万円)の資金を調達した。このラウンドはAccompliceとLink Venturesが共同で主導し、後に940万ドル(約9億8000万円)まで成長した。Motley Fool Ventures、CMFG Ventures(CUNA Mutual Groupの一部)、Gaingelsもこのラウンドに参加した。そのシリーズAラウンドは、MotoRefiが2019年3月に発表した470万ドル(約4億9000万円)のシードファンディングに続くものだ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:MotoRefiローン資金調達

画像クレジット:Tom Merton / Getty Images(Image has been modified)

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(翻訳:Nakazato)