最近の旅行ビジネスでは、AribnbやTripAdvisorなどの有力サービスが直前でも簡単にさまざまな予約を可能にするインスタント・ブッキングに参入しつつある。これは特にアジアで、香港のKlookなどのスタートアップが大成功を収めていることに刺激された面が大きいだろう。しかしインスタント・ブッキング・アプリがこう増えてはもうニッチは残っていないのではないか?
実はFunNowはそう考えて方向を転換した。旅行者をターゲットにするのではなく、このサービスはローカルを対象とする。つまり都市の居住者に新しいアクティビティを楽しんでもらうのが目的だ。今日(米国時間8/13)、台北を本拠とするFunNowはシリーズAのラウンドで500万ドルの資金調達を行ったことを発表した。ラウンドのリーダーはAlibaba Entrepreneur Fundで、CDIB、 Darwin Venture、Accuvestが加わっている。資金は東南アジアと日本に事業を拡大するために用いられる。
FunNowは2015年に創立された後、昨年6月のエンジェル・ラウンドを含めてこれまでに650万ドルを調達したことになる。登録メンバーは50万人、3000社のベンダーが毎日2万種類以上のアクティビティーを提供しているという。共同ファウンダー、CEOのT.K. Chenは海外展開について「現在、香港、東京、大阪、沖縄、クアラルンプール、バンコクに注力している」と述べた。
今回のシリーズAで注目すべき点はAlibabaの存在だ。 Tencentが支援するライバル、Meituan-Dianpingが香港で株式上場を準備している中で、Alibabaの参加はFunNowのO2O能力(オンラインでオフラインサービスの予約、支払いを行う)を大きく強化したといえる。
Alibaba Entrepreneurs Fundは非営利法人で、将来Alibabaのエコシステムに貢献する可能性のあるスタートアップの育成を目的としている。Alibabaの各種O2Oアプリは中国でMeituan-Dianpingからできるかぎりシェアを奪うことを狙っている。ChenはFunNowとの協力はこの面でもシナジーを生むとしている。【略】
いかにAlibabaの参加があるにせよ、 FunNowが多数のインスタント予約アプリとどのように競争していく戦略なのかは誰もが興味を持つところだろう。この市場ではKlook、KKdayなどが有力だが、他にもVoyagin、GetYourGuide、Culture Trip、Peek、それにAirbnb自身のExperiences機能などが存在する。
Chenによれば、FunNowが現在もっとも力を入れているカテゴリーは直近のホテル等の予約だという。台北では一夜ないし数時間のホテル、温泉への滞在を提供している。マッサージその他の温泉における伝統的サービスやレストラン、バー、さらには音楽フェスティバルなどの予約もカバーするという。
Chenによれば、ツーリストというよりむしろローカル住民に楽しい時間を提供するという戦略はFunNowのユーザー・エンゲージメントを大きく高めており、毎月の粗収入の70%はリピート・ユーザーからのものだという。30%は最初に利用したユーザーだが、その60%は30日以内に戻ってきてさらに利用している。FunNowでは2018年の売上を1600万ドルに届くと予測しているが、これは2017年の3倍に上る。
FunNowのユーザーの平均年齢は若く、25歳から35歳が多い。「われわれはUberに似ている。ターゲットはレストラン、温泉、マッサージ、ホテル、イベントなど身近で楽しい活動を予約したいと考えている人々だ。われわれは消費者のその場の思いつきを重視している。われわれが仲介する予約の大部分が15分から」1時間後のものだ。データでいえば、FunNowの予約の80%は1時間以内のものだ」とChenは述べた。
FunNowではプラットフォームをローカル・ユーザー向けに最適化している。特許を取得したアルゴリズムによって予約をマーチャント・データベースのエントリーとリアルタイムで同期させ、オーバーブッキング、ダブルブッキングを防いでいるという。Chenによれば、ユーザーは自身の地理的所在地によって現在利用できるエントリーを閲覧できる。情報は0.1秒以内にリアルタイムでアップデートされるので、ユーザーはエントリーをクリックした後ですでにすでに誰かが予約していたという事態を防げるという。FunNowではサービスを提供するベンダーを事前に審査し、プラットフォームに加えた後も星印が3.5以下になるとリストから削除する。
将来KlookやKKdayといったインスタント予約アプリがターゲットをツーリストから地元居住者に拡大してくればライバルとなり得る。しかしChenは「こうしたスタートアップは拡大しつつあるツーリスト市場における半日から1日以上のツアーをターゲットにするはずだ」と考えている。
Chenは「こうしたスタートアップがローカル住民をターゲットすることになれば、マーチャントとなるホテルやレストランをひとつずつシステムに加えていかねばならないだろう。またそのシステムもマーチャントにとって使いやすくエラーの起きにくいものである必要がある。しかしマーチャントがひとたびわれわれのシステムを利用すれば、別のシステムを導入することは考えにくい。オーバーブッキングを避けるためには相互の調整を図る必要があるからだ」という。
「こうした点は先に動いたFunNowに大きな優位性があるが、われわれはテクノロジーをさらに改良していく。レストランなどはたとえ1分差であっても先着の客に席を提供してしまい、オーバーブッキングという結果をもたらす可能性がある。これは何として避けねばならない」とChenは語った。
〔日本版〕FunNowのサイトは日本語ページも用意している。日本でのサービスは今のところホテル予約がメインのようだが、台北のページでは食事、温泉、マッサージなどジャンルが多い。
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(滑川海彦@Facebook Google+)