建設職人マッチングの「助太刀」がパーソルや西武信金と提携、各地域の優秀な職人を発掘可能に

建設職人を建設現場のマッチングサービス「助太刀」を運営する助太刀は、パーソルホールディングス西武信用金庫との業務提携を発表した。パーソルホールディングスは総合人材サービスを運営しており、同社のCVCであるPERSOL INNOVATION FUNDは助太刀の株主でもある。西武信用金庫は、東京や埼玉、神奈川の一部を営業地域とする金融機関。

具体的な提携内容は、パーソルホールディングスと取引のある地方銀行や信用金庫、西武信用金庫の顧客である建設会社(建設職人)と施工会社のマッチングを支援する。助太刀が提供している、工事会社、工務店向けプランである「助太刀ビジネス」「助太刀エンタープライズ」では助太刀サービス内にウェブサイトを開設できるほか、全76職種のすべての職人を募集できる機能、キーワードや資格、返信率など18項目の絞り込み検索で相手を探せる検索機能などを備える。同社はパーソルホールディングスや西武信用金庫を通じて、それぞれの工事会社、工務店にこれらのプランの利用を促進し、ビジネス機会創出の手助けをする。

地方銀行や信用金庫は、顧客である工事会社や工務店について借入額や返済実績などを通じて各社の財務状況を把握しており、問題なく融資を受けられている工事会社や工務店は一般的には信頼できる会社と言える。

建設業界では、施工主から発注された建設会社は過去に取引実績がある工事会社や工務店に下請けを出すことが多い。さらに下請けの受注会社も、一部の作業をやはり過去に取引実績がある工事会社や工務店に下請け(孫請け)を出す。このコミュニティに新規の会社が参入するのはなかなか難しいという問題がある。

発注側にしてみれば、新規の会社が所持している資格や受注可能な工事、工事単価などの詳細、経営状態がわかりにくい。そして受注側も、発注側の経営状態などについて同様の不安がある。

今回の提携により、助太刀ビジネスや助太刀エンタープライズのサービスを通じて、融資などで地方銀行や信用金庫などの後ろ盾がある工事会社や工務店を助太刀のサービス上で探し出せる。近所はもちろん近隣地域の優秀な職人や実績のある工務店の発掘が容易になり、ある地域では人手不足、別の地域では仕事が少ないといった建設業界のミスマッチを解消を目指す。

建設現場用スキャンロボ開発するバルセロナ拠点のScaled Roboticsが2.4億円超を調達

産業用ロボットは高価だが、建設現場の作業ミスはもっと高くつく。ビルの建設では数ミリの誤差が積み重なって寸法が合わなくなり、修正に莫大なコストと時間がかかるという事態が起きることがある。建設作業のモニターがロボティクスの大きなターゲットになっているのはそうした理由からだ。数多くのスタートアップがこの新たなフロンティア市場に参入しようと努力を続けている。.

先ごろTechCrunchがベルリンで開催したスタートアップイベントのTechCrunch Disruptのピッチコンテスト「Startup Battlefield」の優勝者でスペインのバルセロナに本拠を置くScaled Roboticsもその1社だ。米国時間2月3日、同社はシードラウンドで200万ユーロ(約2億4200万円)のベンチャー投資を受けたことを発表した。今回のラウンドは、Norwegian Construct VentureとPropTech Fund Surplusがリードした。同社はこれ以前に100万ユーロ(約1億2100万円)のプレシード資金を調達している。

ロボティクス事業への投資のうち、最近大きな部分を占めるようになったのが建設作業だ。昨年あたりから、Built、Toggle、Dustyなどのスタートアップがベンチャーラウンドで投資を受けている。大手のBoston Dynamicsも小型4脚ロボットのSpotにLIDARセンサーを搭載し、商用ロボットとして多様な作業に対応できることをアピールしているが、建設現場もターゲット分野の1つだ。

Scaled Roboticsのロボットは4輪式だが姿勢が低く安定している。上方に伸びた首部分にはレーザースキャナとカメラが搭載され、SLAMテクノロジーにより自動的に建設現場の3Dマップを作製し、設計図をベースにしたモデルと照合し差異がないかチェックする。誤差はセンチ単位で記録される。ロボットは移動能力が高く、さまざまな場所に自走可能だ。現場作業員はこれまでのように三脚にレーザースキャナーを載せた重いツールを担いで歩き回る必要がなくなる。

共同創業者でCEOのStuart Maggs(スチュアート・マグス)氏は資金調達を発表したプレスリリースで「Scaled Roboticsが開発したこのロボットは建設現場の状態をリアルタイムで詳細に記録できるだけでなく、その現場に関連する情報および進捗状態に関する情報を一元的に保存するデータベースとしても活用できる。世界の13兆ドル(約1424兆円)の建設市場においてこのプロダクトはこれまで不可能だったようなリスク管理、安全性の向上に役立つカギとなるというビジョンを抱いている。Surplus InvestとConstruct Ventureという有力な投資家がロボティクスと人工知能により建設現場を変革するというわれわれのビジョンを共有して今回のラウンドが実現できたことは非常にうれしい」と述べた。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook

建設テック向けに投資枠50億円、JAPAN CON-TECH FUNDが始動

カシワバラ・コーポレーションは2月21日、建設系ITスタートアップに投資する「JAPAN CON-TECH FUND」を3月より開始すると発表した。当初の投資枠は50億円。今回の発表に合わせて専用サイトで支援を希望する企業を募集する。さらに、国内外の建設テック情報を発信するウェブメディア「CON-TECH MAG」も開設した。

同社は、山口県岩国市で1949年に創業した建設会社。マンションの大規模修繕事業、リノベーションデザイン事業、ライフライン事業などを手がけている。現在は、岩国市と東京に本社がある。

国土交通省発行の「平成30年度 建設投資見通し」では、建設業界の市場規模は57兆円。これは自動車産業市場に次ぐ規模だが、労働環境の問題などで若い職人が育っておらず、慢性的な人手不足。そして、それに伴う労働環境の悪化という、負のスパイラルとなっている。同社はこの問題をスタートアップの力を借りて解決することを目指す。なお、投資だけでなく、さまざまな建設現場を新技術の実証実験や導入支援のために提供するという。

建設テックはコンテック(Con-Tech)とも呼ばれる造語で、ITの力で建設業界の問題を解決することを目指す分野。国内では、建設現場と職人のマッチングアプリや職人向けプリペイドカードを提供中の助太刀、建設職人向けの情報サイトや工具防犯登録サービスを提供する職人さんドットコム、クラウド施工品質管理システム「ANDPAD」を開発するオクトなどがある。

また先日、米国シリコンバレー発祥のベンチャー・キャピタルであるDCMベンチャーズから約10億円の資金調達を発表したユニオンテックも建設テックの一翼を担う企業だ。

建設テックへ興味を示す投資家の勢いが増している

この著者による他の記事:Austin in January: Cash rich and maturing

建設産業は、最もセクシーな産業とは言えないが、注目すべきは、この業界は2018年に注目を集めただけではなく、投資家たちから多くの資金を引き寄せたことだ。

歴史的に見た場合、この数兆ドル規模の産業セクターは、新しい技術の採用には時間がかかっていた。これは業者たちが、プロジェクト管理に対して全く互換性のない様々なシステムや、家を建設するための旧来の手法、そしてスマートではない材料などに頼っていたためである。

しかし、スタートアップたちの波が、このセクターの中の機会を利用しようと押し寄せている。プロセスの合理化と効率性の向上を目的とした、ソフトウェアソリューションを開発する企業の数は、ますます増えてきている。プレハブ建設は、その世界の革新によって進化してきたし、3Dプリント技術は家を数日で作り上げることができる

投資家たちも注目している。Crunchbaseのデータによれば、米国を拠点とする建設テックスタートアップの調達額は、2017年の7億3100万ドルに比べて、324%増加した31億ドル近くになっている。2018年の数字は印象的なものだが、昨年は大きなラウンドがいくつか行われたために、結果が歪められていることに注意しておくことが重要だ。Menlo Parkに拠点を置くKaterraは、昨年1月のシリーズDラウンドで、1社だけで8億6500万ドルを調達している。これにはSoftBank Vision FundRiverPark VenturesFour Score Capitalが参加している。そして、スマートガラス会社Viewは、11月に11億ドルのシリーズHを終了している。また、クラウドベースの施工管理アプリケーションの(ユニコーン)プロバイダーであるProcoreは、12月にTiger Global Managementから、シリーズHラウンドで、7500万ドルを調達した

最初に挙げた2つの大きなラウンドがなければ、建設セクターが2018年に調達したのは11億3500万ドルだけとなる。これは2017年の調達額にくらべると、55%増加という控えめな数字となる。

業界はM&Aに注目し続けている。大規模なソフトウェア会社は、自社内で車輪の再発明をしようとするよりも、この分野の企業を買収する方が理にかなっていると考え始めている。例えば、昨年の第4四半期に、3次元デザインソフトウェアのプロバイダであるAutodeskは、この分野のクラウドベースの2つのソフトウェアスタートアップを買収する計画を発表した:PlanGridは8億7500万ドル、BuildingConnectedは2億7500万ドルで買収する計画だ。上場ソフトウェア開発企業Trinbleは、昨年7月に施工管理ソフトウェアスタートアップのViewpointを、12億ドルで買収した。

Greylock PartnersのパートナーであるJerry Chenは、この分野に対して強気であり、2019年にはより多くの資金調達と買収が見込まれると予想している。彼の会社は、サンフランシスコに本拠を置くRhumbixに投資した。この会社はその建設作業者たちのためにデザインされたモバイルプラットフォームを成長させるために、2860万ドルを調達した。顧客とユーザーの観点からみて同社にとっては「記録的な年」になった、とChenは語っている。

「2018年は建設テック業界の変革点でした」と、ChenはCrunchbase Newsに語った。「大規模なベンチャー投資と、老舗企業による戦略的M&Aが続いています…そして、2019年には他の大手エンタープライズソフトウェア会社たちが、建設業界に対して、より多くの投資を始めるところを目にすることになるでしょう」。

シカゴに拠点を置く建設テック、IngeniousIOの創業者であるNick Carterは、こうした大きな数字にもかかわらず、真のスタートアップの成長という意味ではまだ先は長いと考えている。その理由の一部は、ある1つのことに由来している:この分野に対してテック創業者や投資家たちが自信を持っていないからだ。

「この分野を理解できている人は多くはありません」と彼は言う。「学習曲線は厳しいものです。企業たちは何百年もの間同じやりかたで建物を建設してきましたが、誰もがその複雑さを理解しているわけではありません」。

また建設業の世界に無秩序な部分が多いという事実も要因の一つだと、Carterは考えている。

「市場の純粋な規模大きさのおかげで、最終的にはお金が建設セクターへと流れ込むことでしょう」と彼はCrunchbase Newsに語った。「そこにはお金があります。あらゆる方向からこの分野に参入しようとしているVCがいますが、彼らは適切な機会を探しているのです。この分野には、たくさんのスタートアップがいるわけではありません」。

建設もまた景気の周期に敏感なビジネスであり、一般的には潜在的な景気後退は投資家を一時的に思いとどまらせるのではないかと、考えなければならない。しかしCarterにとってみれば、景気後退は彼の会社が構築しようとしているような製品の必要性を、さらに生み出すだけである。IngeniousIOのプラットフォームは、人工知能を使用して、Carterが「統合データ駆動アプローチ」と表現する手法を取り込み、建設プロジェクトのプロセスを再定義する。

「予算が厳しいほど、私たちのような会社がより良い仕事をすることができるのです」と彼は言う。「世の中の企業は、管理、拡張、導入に多大なサポートを必要とする、古いアプリケーションの無駄な部分を、この先抱えることはしないでしょう」。

建設業界は、他のようにTwitterで話題になるようなセクターではないかもしれないが、新しい機会を求めて参入しようとしている投資家たちにとって、とてつもない大きさと可能性を秘めている場所なのだ。

画像クレジット: Bill Oxford (opens in a new window)/ Getty Images

[原文へ]
(翻訳:sako)

建設職人マッチングのユニオンテック、設立20年目にして米VCから約10億円調達、なぜ?

ユニオンテックは2月18日、シリーズAラウンドとしてDCMベンチャーズを引受先とする9.7億円の第三者割当増資を発表した。大規模な資金調達は、2016年10月のみずほキャピタルからの1億円に続き2回目、同社としては史上最大規模となる。DCMベンチャーズは、米国シリコンバレー発祥のベンチャー・キャピタル(VC)だ。

写真左から、ユニオンテック代表取締役社長の韓 英志氏、同会長の大川祐介氏、DCMベンチャーズでジェネラルパートナーを務める本多央輔氏

設立20年の建設会社が初のシリーズAラウンド資金調達

ユニオンテックは、2000年にクロス職人だった現会長の大川祐介氏がユニオン企画として設立。当初はクロスや床など内装仕上げの工事業を手がけていたが、ショップやオフィスの内装・管理などの空間事業にも進出し、2004年に現社名に変更した。2005年には設計デザイン事業、2009年にはグラフィック・ウェブデザイン事業に進出するなど、さらに事業を拡大。そして2016年には、施工主(ハウスメーカー、設計事務所、工務店)と職人を結びつけるB to Bのマッチングサービス「TEAM SUSTINA」(現・SUSTINA)のサービスを開始。2018年には、個人と職人を結びつけるB to Cの工事マッチングアプリ「CraftBank」の提供を始めた。

ユニオンテックの沿革

同社は2018年9月3日に新体制を発表。代表取締役社長を務めてきた大川氏が代表取締役会長に、代表取締役社長には取締役副社長の韓 英志氏が就任した。韓氏は、リクルートホールディングスでエグゼクティブマネージャーを務め、投資ファンドの設立や海外でのM&Aを手がけていた人物。2018年4月に同社入社後、約9カ月での社長就任となった。

2000年設立で20年目を迎えた同社が、なぜいまごろシリーズAラウンドでの資金調達なのか?代表取締役会長の大川氏と、代表取締役社長韓氏に話を聞いた。

とにかく建設職人の働き方を変えたい

大川氏によると「DCMベンチャーズの人と人脈、そしてなによりもビジョンに共感した」という。今回の資金調達により、DCMベンチャーズでジェネラルパートナーを務める本多央輔氏が社外取締役に就任し、SUSTINAやCraftBankなどのネット事業について協力していく体制が整った。

建設業界の問題点

創業者社長から会長になった大川氏は現在、建設職人の働き方やイメージの改革に取り組んでいる。「建設業界には職人をきちんと評価する仕組みが必要で、ユニオンテックで利用している人事評価システムを他社に開放します」という。同社の職人評価システムは、作業スキルはもちろん、コミュニケーション能力など多岐にわたり、評価ポイントは数十項目におよぶ。この職人評価システムにより「職人は自分の能力を客観的に判断できる。親方は職人の報酬を決める判断材料に使える。そして、第三者からは職人の与信情報にもなる」と大川氏。

大川氏は建設業界の現状について「40〜50代が主力で若手の職人人口が少ない。働き方改革によって若年層の職人を増やしたい」とも語る。建設業界では、施主(発注者)が決めた期間内で工事を終えなければならず、「納期が遅れると賠償問題になることもあり、期日厳守は当たり前。しかし、人手不足や天候不良などの不可抗力もある。そもそもの納期がギリギリだと、ネットなどを駆使して業務を最大限効率化したところで限界があり、結局は職人にしわ寄せが来る。その結果、残業や夜間作業、休日返上などが発生して労働環境がどんどん悪化していく」と大川氏。

このような建設業界の問題点を解決するため、大川氏は2018年に一般社団法人として「日本SHOKUNIN総研」を設立。同団体では、2019年4月に前述の職人評価システムをベースにした建検(建設キャリア検定)を開始、2019年12月に「ベスト職人賞」と呼ぶアワードを開催予定だ。

さらに同団体では、職人同士の定期的なミートアップも実施している。「建設業界ではこれまでも、例えば地域ごとに左官職人の集まりなどは開催されてきました。しかし、ほかの職種の職人と出会うことが少ないので、なかなか仕事が広がらないんです」と大川氏。こういった問題解決のためにミートアップを主催し、建設業界内の異業種人材交流を積極的に進めている。

ユニオンテックとしても、2018年12月にデニム地の新ユニフォームを発表するなど、3K(きつい、危険、汚い)という建設業界のイメージ払拭を目指す。

市場規模は51兆円超、いまアクセルを踏むとき

代表取締役社長の韓氏は「以前(みずほキャピタル)のように金融機関からの調達も考えたが、SUSTINAやCraftBankに先行投資していくうえで長期的なサポートが望めるDCMベンチャーズを選んだ」とコメント。続けて「ユニオンテックの空間事業は年間30数億円の売上があり、現在はそこから出た利益の数億円を毎年ネット事業に投入している。しかし、それではスピードが遅い。建設業界の現状を早急に打破することを目指し、目一杯アクセルを踏むことを決めた」とのこと。DCMベンチャーズは、シードステージ、アーリーステージの投資を中心とするVCで、創業20年を迎える企業に投資するのは異例だ。

「SUSTINAは現在、7000社ほどの大小の建設会社が登録していますが、2019年5月には1万社を目指したい」と韓氏。前述のようにユニオンテックの空間事業の売上は30億円超だが「実はそのうち40%程度が100万円未満の少額案件なんです。そして、資材の発注や職人の招集などは現在でも電話業務が中心なので効率がなかなか上がらない。こうした業務についてもクラウド化による効率化を図りたい」とのこと。

大川氏は「現在のSUSTINAは、急なスケジュール変更や職人不足など『困ったとき』に使われることが多いサービスですが、もっと使いやすいように改良して施工主や職人がいつでも使えるサービスにしたい」とコメント。前述の新ユニフォームの発表時には、建設業界に「カッコイイ」「稼げる」「けっこうモテる」という新しい3K定義への挑戦も宣言。「工事が設計図どおりに進むことはほとんどなく、AIといえども職人の仕事は奪えない」と、建設ラッシュが続く現在における建設職人の重要性を力強く語った。

市場規模51兆円超と自動車業界に次いで巨大な建設業界。仕事は山ほどあるのに、職人が全然足りていない。ユニオンテックは、職人の働き方改革と職人人口の増加を目指し、リアルとネットで事業を推進していく。

建設業界は51兆円超の市場規模