EUによるロシア国営メディア「ロシア・トゥデイ」と「Sputnik」への禁止令が発効

EU(欧州連合)がRussia Today(ロシア・トゥデイ、RT)とSputnik(スプートニク)に対する禁止令を正式に採択し発効した。メディア規制当局は今後、その遵守状況を監視することになる。EU各国の監視当局は、プラットフォームがロシア政府とつながりのあるメディア企業のコンテンツの配信を続けているということがわかれば、罰金を科す可能性がある。

RTおよびSputnikとそれらの子会社の配信に対する広範な制裁であり、TechCrunchが以前報じたように、従来の放送チャンネル(衛星放送など)だけでなく、オンラインプラットフォームやアプリも対象としている。

現時点では、2社に属するジャーナリスト個人は制裁の対象外だが(RTの編集長はすでに制裁の対象)、この法的文書には迂回防止条項が含まれており、両チャンネルに対する規制を回避しようとしているとみなされた場合などは、最終的に個人がターゲットになる可能性がある。

EU当局者によると、この意味するところは、インターネットプロバイダーは、RTやSputnikのコンテンツが自分たちのプラットフォームに表示されないように積極的な措置を取ることが期待されているということだ。

つまり、根本的には、単に公式チャンネルを禁止するだけでは十分ではないかもしれないということだ。他のユーザーやアカウントが制裁対象のコンテンツをアップロードした場合、ソーシャルメディアやその他のテックプラットフォームには、禁止措置回避行為を防ぐためにさらなる措置を取ることが期待されるかもしれない。

EU当局によると、ソーシャルメディアネットワークやビデオストリーミングサービスに加え、原則としてインターネットサービスプロバイダーも対象となる。

さまざまなデジタル配信チャンネルがあることから、欧州委員会関係者は、両チャンネルの地域配信を直ちにすべて終了させることが困難であることを認めており、ある程度の「漏れ」は予想されると示唆している。ただし、法的には、禁止事項の遵守はもはや当然のことだということも強調している。

EUは、RTとSputnikに対する制裁は期限付きだと述べているが、実際のところ制裁解除には条件が付されているため、少なくともロシアのウラジーミル・プーチン現大統領がクレムリンにいる間は、制裁解除を想像することは困難だ。

というのも、欧州委員会は、制裁解除には、ロシアがウクライナでの侵略をやめ、EUとその加盟国に対するプロパガンダをやめる必要があると定めているからだ。そして、多くのメディア関係者は、RTのようなチャンネルの第一の目的は、まさに反欧米のプロパガンダを制作・増幅することだと指摘する。

なぜEUはRTとSputnikを特別視しているのか。EUは、RTとSputnikを親クレムリンの道具箱の中の重要な偽情報ツールであり、プーチン大統領が西側に不安定化を引き起こす「情報戦争」を展開するために利用していると見ているからだ。

例えば、欧州委員会関係者は、RTとSputnikに与えられている巨額の国家予算(2021年には推定13億ユーロ=約1668億円)などの国家支援について言及し、また、これらのチャンネルの編集の独立性に対する疑念を指摘している。

また、欧州委員会関係者らは、この規制は慎重にバランスをとっているとしている。すなわち、対象としているのは、ロシアが国家として対外的な情報操作や干渉を行うために利用している手段であり、それらの手段の中でも最も際立っておりその責任も明らかな2つだということを強調した。

そしてその主張を裏付けるように、欧州委員会関係者らは一例として、ロシアの「偽情報とプロパガンダのエコシステム」におけるRTとSputnikの役割を分析した米国務省の報告書を引き合いに、この2つの組織は明らかにプーチン大統領のプロパガンダマシンに「不可欠であり、力を与えている」部分だと主張している。

EUの対応、すなわち両メディアの配信を対象とした制裁措置は、意見を検閲するものではない、とも主張している。

さらに、欧州委員会は、過去1年間におけるロシア国内の独立系メディアに対する大規模な弾圧を取り上げ、とりわけ政府に批判的と見られる独立系メディアやジャーナリスト個人の口を封じるために、強硬な国内法、特に「外国の代理人」に関する法律が用いられていると指摘し、プロの記者に対するロシアの脅威を容認できないとしている。

欧州委員会の確固たるメッセージはこうだ。ロシアのウクライナ侵攻によって、欧州委員会の評価は不可逆的に変わってしまった。プーチン大統領のプロパガンダ機関に対するEUの寛容はもう終わった。

EUのUrsula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)委員長は、制裁措置の正式な採択を表明した際の声明で、次のように述べた。「この戦時下においては、言葉が重要です。自由で独立した国に対するこの非道な攻撃をめぐり、大規模なプロパガンダと偽情報を目の当たりにしています。私たちは、クレムリンの擁護者たちが、プーチンの戦争を正当化する有害な嘘を流したり、私たちの連合に分裂の種をまくことを許しません」。

また、EUのJosep Borrell(ジョゼップ・ボレル)外務上級代表は、別の採択を支持する声明の中でこう付け加えた。「クレムリンによる組織的な情報操作と偽情報は、ウクライナへの攻撃における作戦ツールとして利用されています。また、EUの公序良俗と安全保障に対する重大かつ直接的な脅威でもあります。今日、私たちはプーチンの情報操作作戦に対して重要な一歩を踏み出し、EUにおけるロシア国営メディアの蛇口を閉めようとしています。私たちはすでに、Margarita Simonyan(マルガリータ・シモニャン)編集長を含むRTの経営陣に制裁を加えており、この組織がEU内で行っている活動も対象とするのは当然のことです」。

フォン・デア・ライエン委員長は現地時間2月27日、欧州連合(EU)が「欧州における(ロシアの)有害な偽情報を禁止するためのツールを開発している」と述べたことから、欧州委員会の担当者は、今後さらに規制が強化されるか聞かれたものの、特定の政策についてのコメントを避けた。

しかし、欧州委員会関係者らは、民主化行動計画やオンライン偽情報の拡散に対処するための行動規範など、EUが何年にもわたり策定してきたさまざまな施策を挙げた上で、EUは、状況認識や回復力の強化といった分野を含む、一貫した一連の政策アプローチと施策を構築しつつあり、特に外国の情報操作をターゲットとする意向だと付け加えた。

RTとSputnikに対する制裁は、こうした幅広い戦略の一環だとEU当局者らは付け加えた。

RTとSputnikに対する制裁の法的根拠は、欧州委員会によると、共通外交・安全保障政策規則(第29条)に基づく欧州理事会の全会一致による決定と、制限的措置を定めた欧州連合機能条約第215条だ。

情報への自由なアクセスはEU憲章に明記されている基本的権利だ。しかし、欧州委員会は、これらの対象措置はいかなる法的異議にも耐えられると確信していると述べている。

EUの既存のメディアに関する規則は、今回の制裁措置と並行して通常通り運用されることをEU当局者は確認した。

制裁を受ける6社は、RT-ロシア・トゥデイ・英語版、RT-ロシア・トゥデイ・UK、RT-ロシア・トゥデイ・フランス、RT-ロシア・トゥデイ・ドイツ、RT-ロシア・トゥデイ・スペイン語版、そしてSputnikだ。

画像クレジット:picture alliance / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

YouTube、欧州でロシア政府系メディアRTとスプートニクのチャンネルをジオブロッキング

Google(グーグル)は、ロシアの戦争プロパガンダを封じるよう欧州地域議員からの圧力を受け、YouTubeが欧州でロシア政府系メディアのRT(旧ロシア・トゥデイ)とSputnik(スプートニク)をジオブロックすると発表した。

米国時間3月1日、ジオブロッキングを発表したツイートで、Googleの欧州ポリシーチームは「ウクライナで進行中の戦争のため、RTとSputnikに結びついているYouTubeチャンネルを欧州全域でブロックします。直ちに有効となります」と書いている。

我々は欧州委員会にYouTubeの発表に対するコメントを求めている。

TechCrunchが先に報じたように、EUは昨夜、RT、Sputnikおよびその子会社に対する禁止措置が、オンラインプラットフォームを含むすべての全配信経路を対象とすることを確認した。

欧州委員会のThierry Breton(ティエリー・ブルトン)委員(域内市場担当)は現地時間2月28日、GoogleおよびYouTubeのCEOとビデオ通話を行い、両社の取り組みを強化するよう求めていた。

YouTubeは、ロシア政府系メディア2社による何千ものビデオをホストしており、昨日触れたように、RTチャンネルのマーケティングは「YouTubeで最も視聴されているニュースネットワーク」であると謳っている。

今、RTのYouTubeチャンネルを閲覧しようとする欧州の人々は「このチャンネルはお住まいの国では視聴できません」というメッセージに遭遇する。

スクリーンショット:Natasha Lomas/TechCrunch

28日には、Facebook(フェイスブック)、Microsoft(マイクロソフト)、TikTok(ティックトック)、Twitter(ツイッター)が似たような制限を発表した。

しかし、Googleはその対応を検討するのに他社よりも少し時間がかかった。テック巨人は、この遅れについて説明をしていない。

今朝、ジオブロッキングを発表したツイートの中で、Googleはこうも警告している。「完全なシステム立ち上げには時間がかかります。当社のチームは迅速な行動を取るために、24時間体制で状況を監視し続けます」。

つまり同社は、クレムリンとつながりのあるチャンネルの一部のコンテンツは、システムの「立ち上げ」に伴い、短期的には引き続きアクセス可能であり続けることが予想される、と示唆しているようだ。

YouTubeはRTとSputnikのアカウントを禁止したり停止したりするのではなく、ジオブロックをかけるだけなので、ロシアのプロパガンダはもちろん欧州の外では広がり続け、ロシア国内でもまだ利用できる。

だが、このような妥協策を選んだのはGoogleだけではない。

Facebookの親会社であるMeta(メタ)とTikTokも、ロシア政府系メディアのアカウントを完全に停止または禁止するのではなく、ジオブロックすることを選択した。

TwitterとMicrosoftも、それぞれのプラットフォームのニュアンスの違いを反映して、微妙に異なる方法を取った。両社は国家の支援を受けたRTとSputnikのコンテンツの可視性を減らす措置を取ると述べ、実質的にそれらメディアのリーチの自由度を制限している。

Twitterは28日さらに、ラベル表示ポリシーを拡大し、ロシア国家関連メディアへのリンクがあるツイートには通知を追加し、ユーザーに「stay informed(情報に注意 / 情報源を知りましょうという意)」と警告している。

後者がソーシャル(またはブロードキャスト)ネットワークというよりも情報ネットワーク寄りであることを考えると、ラベリングとコンテキストを加えることは適切な対応と思われる。ただし、EUがこれからRTとSputnikを禁止することで、ウェブプラットフォーム各社がさらなる対応を迫られるかはまだわからない。

画像クレジット:Chris Ratcliffe/Bloomberg via Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Den Nakano)

「人材と資金」がEUのスタートアップ政策に対するフランスの戦略のカギ

現在、欧州連合理事会議長国となっているフランス。同政府はこの機会を利用して、テクノロジースタートアップ政策において進展を図ろうと目論んでいる。フランスのデジタル大臣であるCédric O(セドリック・オ)氏はTechCrunchとのインタビューの中で、欧州のテクノロジーエコシステムに関するニュースをいくつか紹介してくれた。

その前に少しだけ振り返ってみよう。ここ数年、EUでは税制や人材確保、投資などに関する法律を見直し、調和させようという取り組みが盛んに行われている。

2021年、欧州委員会と加盟国は「Startup Nations Standard」を発表した。その名が示すように、この新制度は欧州各地のスタートアップ政策の基準を確立することを目的としており、言い換えると、加盟国間で共有できるベストプラクティスのようなものである。

ポルトガルが欧州連合理事会議長国になった際、ポルトガルはさらに一歩進んで「European Startup Nations Alliance(ESNA)」を創設すると発表した。ESNAは「Startup Nations Standard」を担う新たな組織であり、ベストプラクティスをまとめるだけでなく、技術的なサポートや進捗状況のモニタリングも行うというものである。

同じ頃、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が「Scale-Up Europe」という別のグループを立ち上げている。テック企業や投資家、団体がマニフェストに署名し、2030年までに1000億ユーロ(約13兆2100億円)以上の価値を持つテック企業を10社にすることを目標に掲げている。

大規模なVCファンドを10~20作るための新たな金融インセンティブ

フランス政府は2日間の会議の中で、人材の魅力を高めるためにESNAに新たな責務を課すこと、運用額10億ユーロ(約1321億円)以上のレイターステージの投資ファンドを10~20個設立すること、ディープテック分野への投資を強化することなどを発表している。

レイターステージの資金提供から見てみよう。EUの加盟国のいくつかは、European Investment Fund(欧州投資基金、EIF)に出資して新たなファンド・オブ・ファンズを設立すると発表している。

「ヨーロッパの強力なエコシステムを構築するためには、資金調達が重要です。世界中から投資を集めたいとは思っていますが、欧州の資金、欧州の知識、欧州のチームによる欧州のベンチャーキャピタルを実現したいと考えています」とオ氏は話している。

「我々の目標は10億ユーロ以上のファンドを10~20作ることです。現在米国では10億ユーロ以上のファンドが40あるのに対し、欧州では2つとなっています。Eurazeo(ユーラゼオ)とEQTの2つで、フランスのファンドとスウェーデンのファンドです」。

この新たなファンド・オブ・ファンズは、欧州の大規模なレイターステージのファンドにリミテッドパートナーとして投資する計画である。この新しい仕組みにより、ファンドマネージャーはより簡単に新しいファンドを調達できるようになり、例えばEIFがあるファンドに1億ユーロや2億ユーロの投資をすると言えば、この新しいファンドにはより多くの機関投資家が集まるだろうという考えである。

また、Bpifrance(公的投資銀行)のような一部の国立投資銀行は自国のファンドに対しても支援を行っている。フランスでは、民間の保険会社や公的な投資家もTibi(ティビ)氏の取り組みに倣ってレイターステージのファンドに参加しているのである。

今回の発表はヨーロッパ全土に関するもので、加盟国の予算の一部を欧州におけるレイターステージのテック分野への投資に充てることを主な内容としている。

オーストリア、ブルガリア、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、オランダ、ポルトガル、ルーマニア、スロベニア、スペイン、スウェーデンの18カ国がこのEIFのファンド・オブ・ファンズに貢献するという拘束力のない誓約書にすでに署名しており、近日中にさらに多くの国が加わる予定だという。

具体的には、フランスは「フランス2030」の投資計画のうち10億ユーロを振り向けると言い、ドイツは10億ユーロを投資、さらにEuropean Investment Bank(欧州投資銀行)はこのファンド・オブ・ファンズに5億ユーロ(約660億円)を特別に割り当てる他、別途でレイターステージのファンドに直接投資を行うと伝えている。

その他いくつかの国立投資銀行も、大規模なレイターステージファンドに直接資金を投資すると発表している。フランスとデンマークの投資銀行は欧州のレイターステージファンドにそれぞれ5億ユーロを割り当てる計画で、またギリシャも近々計画を発表する予定だという。

10年前に米国の経済を大きく変えたように、デジタルト・ランスフォーメーションがヨーロッパの経済に大きな影響を与えるだろうとオ氏は考えている。

「今、欧州は転換期にあると考えています。そして問題は、その変化を誰が利用していくのかということです。米国の企業なのか、ヨーロッパの企業なのか。それがヨーロッパの企業になるように、できる限りのことをしたいと思っています」。

そして、ヨーロッパ内で大規模な成長資金を調達できるようになることが、この先大規模なテック企業を生み出すことにつながると同氏は強く信じている。「プライベート投資による欧州の大規模なファンドが増えれば、クロスオーバー投資でも、公共投資でも、近いうちにヨーロッパのNASDAQの上昇につながるでしょう」。

画像クレジット:Ministère de l’Économie, des Finances et de la Relance

技術者向けビザの改善

ヨーロッパの多くの国では、すでに技術系人材のための特別なビザプログラムを設けている。例えばフランスには「French tech visa」があり、またスペインではスタートアップビザを含む法的パッケージの立ち上げに取り組んでいる。

しかしそれぞれのプログラムの違いは、近い将来ほぼなくなることになるかもしれない。ESNAは、加盟国がそれぞれの規制が欧州の基準と比べてどうなのかを確認できるよう、ベストプラクティスを共有する計画だからだ。

フランスはさらに一歩進み、専門のチームを持つ「European Tech Talent」サービスデスクを作りたいと考えている。ESNAは各加盟国の移民局に取って代わるものではないものの、将来の移住者がビザを比較できる単一の情報源ができることになるため、外国人の人材を雇用しようとしている技術系のCEOにとっても、特に有用なものとなるだろう。

「こういったプログラムによって何れすべてがつながっていくことを期待しています」とオ氏はいう。

また、ESNAのサービスデスクは、問い合わせを適切な行政機関の適切な担当者に転送してくれるという。オーストリア、ベルギー、キプロス、チェコ、エストニア、フィンランド、ポーランド、フランス、ギリシャ、アイルランド、イタリア、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、ポルトガル、スペインの少なくとも16カ国がこの誓約に署名することに合意している。

技術者に対するこの新たな取り組みは、言わばプロモーションのためのものである。真新しいサイトとどんな質問にも答えてくれるチームがあれば、優秀なエンジニアにとってヨーロッパへの移住はこれまでになく魅力的なものになるかもしれない(一部の国では極右の候補者がかなりの人気を博しているという事実が、この取り組みにダメージを与えているかもしれないが)。

「米国のテクノロジーが成功しているのは、優秀なフランス人、ナイジェリア人、インド人を集める能力に関係しています。ヨーロッパはこのテーマでは遅れをとっています。我々はEUブランドを作っていない。しかし、コロナ後の世界には歴史的なチャンスが広がっています。欧州の福祉モデルと欧州の生活の質は極めて重要な資産となっています」と同氏は話している。

ディープテックへの投資上限解除へ

European Innovation Council(欧州イノベーション会議、EIC)には100億ユーロ(約1兆3251億円)の予算があり、これはかなりの額の資金管理である。EICはヘルスケア、エネルギー、グリーン・イノベーションなど、さまざまな戦略的産業における画期的な技術を支援することになっている。

これまでEICファンドは、ディープテック企業への直接的な株式投資に1500万ユーロ(約20億円)までしか投資できなかった。EUの革新・研究・文化・教育・青年担当委員のMariya Gabriel(マリヤ・ガブリエル)氏は、EICが従来の1500万ユーロの上限を超えてより大きな投資を行えるようになると発表している。

また「EIC Scale Up 100」と呼ばれる欧州のランキングが発表される予定だ。このランキングを活用してEUがあらゆるサービスや経営上の支援を行い、最も有望なディープテックベンチャー企業を支援しようという計画だ。

今回の発表で、フランスとEUはスタートアップ政策における競争促進のビジョンを打ち出している。オ氏は欧州のスタートアップと米国のスタートアップをよく比較するが、ビッグテックに対抗する最善の方法は、ヨーロッパ独自のビッグテック企業を作ることだと同氏は考えている。

「私たちは米国人よりも上手くできると信じています。Back Market(バックマーケット)Ynsect(インセクト)のように、米国企業よりも優れた企業が出てきていますし、それを目指すべきだと感じています。本能的な個人的意見としては、閉ざされた市場ではなく、もっと野心的で競争的なものを支持したいと思います」と同氏は話している。

画像クレジット:Ministère de l’Économie, des Finances et de la Relance

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(文:Romain Dillet、翻訳:Dragonfly)

欧州の半導体法案、スタートアップやスケールアップ企業を対象に最大約2640億円の資金援助へ

欧州連合(EU)の欧州委員会は現地時間2月8日、半導体法案を公表した。2021年秋に予告されていたたこの計画は、半導体生産における地域主権とサプライチェーンの回復力を強化するためのもので、研究開発などの分野を含むEU域内の半導体生産に的を絞った支援パッケージや、この分野の最先端技術に取り組むスタートアップや大企業への資金提供が盛り込まれている。

関連記事:EUが半導体の自給体制の構築を目指す法律を制定へ

法案には、EUの厳しい国家補助規則の緩和も含まれており、加盟国は斬新な「この手のものは初」の半導体工場に財政支援を提供することができるようになる。

法案の包括的目標は、あらゆる種の機械や装置を動かすために現在必要とされているハイテクな半導体に、EUが継続してアクセスできるようにすることだ。

「半導体は、世界の技術競争の中心にあります。もちろん、現代経済の根幹をなすものでもあります」とEU委員長のUrsula von der Leyen(ウルスラ・フォン・デア・ライエン)氏は、法案に関する声明で述べた。EUのパンデミック後の経済回復の遅れは世界的な半導体不足と関連しており、需要が供給を上回っていることが原因だ。

欧州委員会は、世界の半導体生産に占めるEUの割合を、2030年までに現在の9%から2倍以上の20%に引き上げたいと考えている。

欧州委員会は、半導体法が「研究から生産まで」の活発な半導体分野の基礎を築くことを期待していると述べた。一方で、欧州は単独ではやっていけないことも認識しており、同法案は米国や日本など他の半導体生産国との連携を強化することによって、グローバルなサプライチェーンへのアクセスにおける回復力を高めることにも取り組む。それゆえ、フォン・デア・ライエン氏は「バランスの取れた相互依存関係」と語っている(ただし、半導体生産に対する国家支援は、貿易摩擦のリスクをともなうかもしれない)。

資金援助に関しては、EUはすでに、より広範な政策目標(デジタル化、グリーン転換、欧州の研究開発)を支援するために430億ユーロ(約5兆6710億円)超の公的および民間資金を動員しているが、欧州委員会は同法における「Chips for Europe Initiative」のもと、半導体能力支援として110億ユーロ(約1兆4510億円)を「直接提供」する予定だと述べた。これは「2030年まで研究、設計、製造能力における技術リーダーシップ」の資金調達に使われるという。

また、半導体関連のスタートアップのイノベーションのために、欧州のスタートアップの研究開発資金や投資家誘致のための費用を支援する専用の「半導体ファンド」という形で、特別な資金が確保される。

欧州委員会によると、半導体専門の株式投資機関(InvestEUプログラムのもと)も、市場拡大を目指す大企業や中小企業を支援する。

半導体分野のスタートアップや大企業に対する半導体法「支援株式」は20億ユーロ(約2640億円)に達する見込みとのことだ。

投資と生産能力の強化を促すことにより、欧州における半導体供給の安定性を確保するために計画されている枠組みは、高機能ノードやエネルギー効率の高い半導体といった分野での技術革新と投資の促進も目指している。この分野で欧州委員会はスタートアップのイノベーションを促すことも期待している。

半導体法案には、半導体の供給を監視し、需要を推定し、不足を予見するための欧州委員会と加盟国の間の調整メカニズムも含まれている。そして、EUの執行部は加盟国に対し、同法の成立を待つのではなく、調整のための取り組みを直ちに開始するよう促している。

EUの共同立法機関である欧州議会と理事会が、EU法として採択される前に詳細について意見を述べて合意する必要があるため、法案が採択される時期についてはまだ示されていない。

欧州委員会のデジタル戦略担当副委員長Margrethe Vestager(マルグレーテ・ベスタガー)氏は声明で次のようにコメントした。「半導体はグリーンかつデジタルな移行に必要なものであり、欧州の産業の競争力にもつながります。半導体の安全な供給を確保するためには、一国や一企業に依存すべきではありません。欧州がグローバル・バリュー・チェーンの主要な役者としてより強くなるために、研究、イノベーション、設計、生産設備において我々はもっと協力しなければなりません。それは、我々の国際的なパートナーにも利益をもたらすでしょう。将来の供給問題を回避するためにパートナーと協業します」。

また、EUの域内市場担当委員であるThierry Breton(ティエリー・ブルトン)氏は別の声明で「我々の目標は高いものです。2030年までに世界市場シェアを現在の2倍の20%に拡大し、最も洗練されエネルギー効率の高い半導体を欧州で生産するというものです。EU半導体法により、我々は卓越した研究を強化し、研究室から製造工場への移行を支援します」。

「我々は多額の公的資金を動員していて、それはすでに相当額の民間投資を引き寄せています。また、サプライチェーン全体を保護し、現在の半導体不足のように、将来的に経済が打撃を受けるのを避けるために、あらゆる手段を講じています。未来のリード市場に投資し、グローバルなサプライチェーンのバランスを整えることで、欧州の産業が競争力を維持し、質の高い雇用を創出し、増大する世界的需要に対応できるようにします」。

どのような種類の半導体工場が国家補助規則の適用除外となるかなど、法案の詳細については、欧州委員会のQ&Aを参照して欲しい。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】AIイノベーションの推進と規制を同時に実現するために欧州委員会はどうすればよいのか

2021年4月、欧州委員会は人工知能(AI)の利用を規制する初の法案を提案した。この提案に対しては、規制がヨーロッパ連合(EU)におけるAIのイノベーションにブレーキをかけ、米国や中国とのAI分野のリーダーシップ争いの足かせになるという批判が続出した。

例えばAndrew McAfee(アンドリュー・マカフィー、マサチューセッツ工科大学スローンマネジメントスクール主任研究員)は、Financial Timesに「EU propose to regulate AI are only going to hinder innovation(EUの規制提案はIAイノベーションを妨げる)」とする記事を寄稿している。

GDPR(EU一般データ保護規則)を振り返っても、EUの個人情報保護に関する思想的リーダーシップは、必ずしもデータ関連のイノベーションに直結しなかったが、欧州委員会(EC)はこれを念頭に批判を予期しており、規制案と同時にAIに関する新たな協調的計画を発表して、AIのイノベーションに真剣に取り組もうとしている。

AIに関する新たな協調的計画には、EUがAIテクノロジーでリーダーシップを取るための取り組みが盛り込まれている。では、規制とイノベーション促進政策のコンビネーションは、AIのリーダーシップの加速を促進するための要素として十分なのだろうか。

AIイノベーションは適切な規制によって加速する

規制とイノベーションの両方の改善を目標とした今回の組み合わせは、よく練られてはいるものの、問題もある。すなわち、イノベーション促進に関してはR&D(研究開発)のみに焦点を当てていて、規制の対象となる「高リスク」なユースケースにおけるAI利用の促進についてはカバーされていないのだ。

これは見逃せない欠落である。多くの調査研究で、特に利用促進のインセンティブと、適切に設計された法的拘束力がある規制が同時に施行されると、実際にイノベーションが加速される、という結果が出ている。ECはこの研究結果を採り入れて、AIイノベーションのリーダーとなるべきである。

高リスクなAI規制とイノベーションへの投資

今回のEC規制の主目的は「高リスク」なAIシステムに新たな要件を課すことにある。「高リスク」には、遠隔生体認証、公共インフラ管理、雇用・採用、信用度評価、教育などに使用されるAIシステムや、救急隊員の派遣などさまざまな公共部門におけるユースケースが含まれる。

この規制では、これらの高リスクなシステムの開発者に対してAI品質管理システムの導入、すなわち、高品質なデータセット、記録保持、透明性、人による監視、正確性、堅牢性、セキュリティに関する要件に対処できる管理システムの導入を要求している。また、高リスク未満のAIシステムの開発者には、同様の目標を達成するための自主的な行動規範の作成が奨励されることになる。

この提案の創案者は、明らかに規制とイノベーションのバランスを認識していたと思われる。

まず、この提案では、高リスクとされるAIシステムを限定している。なんとなく高リスクと思われがちな保険などのAIシステムは除外し、雇用や融資など、すでにある程度の規制・監視が行われているAIシステムはほとんどが網羅されている。

次に、この提案は大まかな要件を定義しているが、具体的な方法については規定していない。また、厳格な規制ではなく、自己申告に基づくコンプライアンスシステムを取り入れている。

最後に、協調的計画には、データ共有のためのスペース、試験・実験設備、研究・AIエクセレンスセンターへの投資、デジタルイノベーションハブ、教育への投資、気候変動、医療、ロボット工学、公共部門、法執行機関、持続可能な農業のためのAIといったターゲットを絞ったプログラム的な投資など、R&Dを支援する取り組みが大量に盛り込まれている。

しかし、この提案には、他の分野の規制と組み合わせてイノベーションを加速させてきた利用促進に対する配慮が欠けている。

イノベーション促進の前例:米国のEVインセンティブ

では、規制を行いながら、AIイノベーションのさらなる加速を促進するために、ECはどうすれば良いのだろうか。そのヒントとなるのが、米国のEVインセンティブだ。

米国がEV生産の先駆者となることができたのは、起業家精神と規制、そして市場創造のための優れたインセンティブの組み合わせがあったからである。

Tesla(テスラ)は「EVの先陣は魅力的で高性能なスポーツカーであるべきだ」という識見に基づいて、EV産業を活性化させた。

CAFE基準(企業別平均燃費基準:自動車の燃費規制。車種別ではなくメーカー全体で、出荷台数を加重した平均燃費を算出し、規制をかける基準)による規制は、より効率的な自動車を開発するための動機となり、EVを購入する際の手厚い税額控除は、本来あるべき競争の激しい市場力学を妨げることなく、EVの販売を直接促進した。CAFE基準による規制、税額控除、そしてTeslaのような起業家精神に富んだ企業の組み合わせで、技術革新が大きく促進され、EVのモーターは内燃機関よりも安価になると予想されている。

AIインセンティブの正しい理解:推進するべき3つの取り組み

ECでも、AIで米国のEVと同様のことを実現することができる。具体的には、ECは現行の規制に以下の3つの取り組みを追加し、組み合わせることを検討すべきであろう。

新しい規制に準拠した高リスクのAIシステムを構築または購入する企業に対して、税制上のインセンティブを設ける。ECは、経済的・社会的な目標を達成するためにAIを積極的に活用しなければならない。

例えば一部の銀行では、AIを活用し、信用情報の少ない個人の信用力をより適切に評価すると同時に、銀行業務にバイアスを発生させない取り組みを行っている。これは、行政との共通の目標であるファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)を向上させるものであり、両者の利益が一致するAIイノベーションを示すものである。

ECの法制化にともなう不確実性をもっと軽減する。これは、AIの品質管理や公正さに関する、もっと具体的な基準を策定することで、EC自体がある程度実現できる。しかし、AIテクノロジーを提供する企業やユーザーグループが連携して、これらの基準の遵守に向けた実用的なステップを構築できれば、さらに大きな価値があるだろう。

例えばシンガポール金融管理局は、Veritasという銀行、保険会社、AIテクノロジープロバイダーのための業界コンソーシアムを組織し、FEAT(Fairness, Ethics, Accountability and Transparency、公平性・倫理・説明責任・透明性)のガイドラインで同様の目標を達成している。

法が要求するAI品質管理システムの導入を加速するために、これらのシステムを構築または購入する企業に対する資金提供を検討する。この分野では、ブラックボックスモデルの説明可能性、データやアルゴリズムのバイアスによる潜在的な差別の評価、データの多大な変化に対するAIシステムの耐久性のテストとモニタリングなど、学術的にも商業的にも重要な活動がすでに行われている。

ECは、このようなテクノロジーを広く普及させるための条件を整えることで、イノベーションを加速させ、新しい規制への持続的な準拠も確保するという2つの目的を同時に達成することができるはずだ。

ECが積極的に不確実性を軽減して高リスクのAIの使用を規制しながら促進し、AIの品質管理技術の使用を奨励すれば、EU市民を確実に保護しながら、AIイノベーションの世界的なリーダーになることもできるだろう。EUが世界の模範となれるよう、成功を期待している。

編集部注:本稿の執筆者Will Uppington(ウィル・アッピントン)氏は、TruEraのCEO兼共同設立者。

画像クレジット:PhonlamaiPhoto / Getty Images

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(文:Will Uppington、翻訳:Dragonfly)

グーグルがEUの圧力を受けAndroid検索エンジンの選択画面オークションを廃止、無料化へ

Google(グーグル)は、欧州連合(EU)で同社が提供する選択画面の基盤となっている、極めて不評なオークション形式を廃止することを明らかにした。これにより適格な検索プロバイダーが無料で参加できるようになる。

このオークションモデルはGoogleが選んだ「是正措置」だった。2018年にEUからAndroid運用に対する反トラスト法の施行で50億ドル(約5500億円)の制裁金を科されたことを受けたものだ。だがTechCrunchが以前報じたように、競合他社はこのモデルはフェアではないと一貫して主張してきた(記事はこちらこちらこちら)。

関連記事:AndroidのEUにおけるデフォルト検索エンジン指定に批判多数

Androidの選択画面は、デバイスのセットアップ時(またはファクトリーリセット時)に、デフォルトとする検索エンジンの選択候補を域内のユーザーに提示する。選択肢のうち3つの枠は、いずれかを獲得するためにGoogleへの支払額を競う検索エンジン各社の非公開入札内容に応じて決まる。

Google自身の検索エンジンは、EU市場かどうかに関わらず、選択画面で定番の「選択肢」として存在している。

Googleが考案したこの有料モデルは、小規模な検索エンジン企業(Ecosiaの植林検索エンジンのような代替ビジネスモデルを持つ企業を含む)からひどく嫌われているだけでなく、検索市場シェアにおける競争上のバランスを取り戻す上でまったく効果がなかったことから、Googleがそれを断念せざるを得なかったことは驚くにあたらない。

欧州委員会は変化の兆しを見せており、Bloombergは2021年5月に、EUの競争担当チーフであるMargrethe Vestager(マルグレーテ・ベスタガー)氏が、GoogleによるAndroid上の検索とブラウザの競合他社向け選択画面を有効的に機能させるために「積極的に取り組んでいる」と発言したことを報じていた。つまり、明らかに「ファウル」や「機能していないんだ」という繰り返しの叫び声を聞いたのだろう。そして、ようやく行動に移したのだ。

しかしGoogleは、自らの物語を組み立てる枠組みの中で、EU議会との「建設的な議論」を何年も前から続けている、と記している。その内容としては、同社が表現するところでは「当社がAndroidプラットフォームへの投資と提供を無償で長期的に継続できることを確保しつつ、Androidデバイスの選択肢をさらに増やす方法」についてだという。

それはまた、EUに多少の疑念や非難を投げかけようとしているようにも見える。EUが「促進の機会」(滑稽に聞こえる)と呼ぶものを「委員会と協議して」導入しただけだと言っているのだ。(つまり「政府よ、私たちを責めないで、彼らを責めてくれ」ということだ)

Googleはブログの別の箇所で具体的に「欧州委員会からのさらなるフィードバック」を受けて「いくつかの最終的な変更」を加えていると述べており、その中で「適格な検索プロバイダー」の無料参加について言及している。

「画面に表示される検索プロバイダーの数も増やします。この変更は2021年の9月からAndroidデバイスに適用されます」と同社は付言している。

計画された変更は、適格性を判断するためにどのような基準を使用するかなど、新たな疑問を提起している。Googleの基準は透明になるのだろうか、それとも問題を抱えたオークションのように外部から見えないようにするのだろうか?また、ユーザーに提供される検索エンジンの数はどのくらいになるのだろうか。現在の4つよりも多いことは明らかではあるが。

Google自身の検索エンジンがリストのどこに表示されるのか、またすべてのオプションをランク付けする基準(市場シェアは?無作為割り付けか?)も興味深い。

Googleのブログではそのような詳細について部分的に伏されているが、TechCrunchが欧州委員会に問い合わせたところ、かなりの情報が得られた(後述のコメントを参照)。

完全な実装になった時点で、どこか邪悪でダークなパターン設計の詳細が現れるかどうかはまだわからない。

【更新】選択画面の仕組みの詳細はここで見ることができる。この中にはGoogleが垂直検索エンジンは参加できないとしている適格基準の詳細も含まれている。一般的な検索エンジンのみ選択画面への参加が可能のようだ。また、同一企業が所有する複数の検索ブランドを除外し、1つの検索ブランドだけを表示できるようにする。Googleの検索結果と広告をシンジケートしている企業も対象外となった。

これらの変更が「最終的」であると主張することは、Googleの特権ではないことは注目に値する。EUの規制当局は反トラスト法の順守状況を監視する責任があるため、新たな苦情が流れてきた場合には、監視して対応する義務がある。

GoogleのオークションUターンに対して、プライバシー重視の検索エンジンDuckDuckGoはすでに批判的だった。ただし具体的な内容よりは範囲の方が重要だった。

創設者のGabriel Weinberg(ガブリエル・ワインバーグ)氏は、切り替えが3年遅れたことだけでなく、Googleはすべてのプラットフォーム(デスクトップとChromeも)にこれを適用し、設定やファクトリーリセットのために選択画面を切り替えるのではなく、Androidユーザーがデフォルトをシームレスに簡単に切り替えられるようにするべきだということも指摘している(以前報じたとおりである)。

オークションモデルを長らく批判してきた小さな非営利団体Ecosiaは、検索の巨人との戦いがついに実を結んだことを喜んだ。

CEOのChristian Kroll(クリスチャン・クロール)氏は声明文の中でこう述べている。「これはダビデ対ゴリアテの実話とも言えます。ダビデは勝利しました。重要な日であり、Ecosiaにとってまさに祝福の瞬間です。私たちは数年前から検索エンジン市場の公平性を求めてキャンペーンを展開してきましたが、その結果、市場の公平な競争条件に近いものを得ました。今や検索プロバイダーは、独占的な行動に閉め出されるのではなく、自社製品の魅力に基づいて、Android市場でより公正に競争するチャンスを手にしたのです」。

一方、欧州委員会はTechCrunchに対して、多くの競合他社がオークションモデルに懸念を示した後に行動したことを認めている。広報担当者は「そうした懸念に対処するために、選択画面を改善する手段についてGoogleと話し合いを持ちました」と語った。

「選択画面にGoogleが導入した変更を歓迎します。選択画面への追加は、競合他社の検索プロバイダーに対して無料で提供されます」と広報担当者は続けた。「さらに、選択画面には、より多くの検索プロバイダーが表示されることになります。そのため、ユーザーは選択肢の幅を広げることができます」。

欧州委員会はまた、選択画面のプルダウン表示の詳細を少し明らかにし「ほぼすべてのデバイスで、5つの検索プロバイダーが即座に視認できるようになる」と述べた。

「ユーザーの国における市場シェアに基づいて選択され、ランダムな順序で表示されるので、Googleが常に最初に表示されるわけではありません。ユーザーは下にスクロールすると、さらに7つまでの検索プロバイダーを見ることができ、選択画面に表示される検索プロバイダーの総数は12になります」。

「今回の措置は、我々のAndroidに関する裁定に沿った改善策の実施に向けた前向きな動きです」と広報担当者は付け加えた。

同委員会の働きかけによって、これまでよりもはるかに拡大され、よりオープンになった選択画面が、Googleの検索エンジン市場シェアにおける地域のニーズを動かすのに役立つかどうを見るのは、極めて興味深いことだ。

実に興味をかき立てる時期に来ている。

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画像クレジット:Natasha Lomas / TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

EUが大手テック企業の「新型コロナ偽情報対応は不十分」と指摘

欧州連合(EU)は、大手テック企業に対し、各社のプラットフォームにおける偽ワクチン情報の拡散に対する監視の取り組みについて、さらに6カ月間報告するよう要求した。

現地時間6月3日、欧州委員会は「EU全域でのワクチン接種キャンペーンが着実かつペースを上げながら進展する現在、できるだけ多くのワクチン接種を完了するためには今後数カ月が決定的な意味を持つ。この重要な時期に、有害な偽情報によってワクチン接種を忌避する気持ちが助長されないようにするために、監視プログラムの継続が必要である」とするレポートを公表した。

Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)、Microsoft(マイクロソフト)、TikTok(ティックトック)、Twitter(ツイッター)の各社は、EUの(法的拘束力のない)「偽情報に関する行動規範」に参加し、毎月報告書を作成しているが、今後は隔月で報告することになる。

欧州委員会は、4月の各社の報告書(最新版)を公表し、大手テック企業が「危険な嘘」を自分たちだけで取り締まることはできないことが示されたと述べ、ネット上の偽情報に対する取り組みについて、各プラットフォームから(自発的に)提供されているデータの質と内容に引き続き不満を表明した。

EUの価値観・透明性バイスプレジデントであるVěra Jourová(ベラ・ヨウロバー)氏は、声明の中で次のように述べる。「これらの報告書は、偽情報を減らすために各プラットフォームが実施している施策を効果的に監視することの重要性を示しています」「このプログラムを延長することにしたのは、危険な嘘がネット上に氾濫し続けていること、そして偽情報に対抗する次世代の規範の作成に有益であることが理由です。私たちは、強固な監視プログラムと、各プラットフォームの取り組みの影響を測定するためのより明確な指標を必要としています。プラットフォーム単独では取り締まることはできません」。

欧州委員会は2021年5月、自主的な規範を強化する計画を発表し、有害な偽情報を排除するために、より多くの企業、特にアドテック企業が参加することを望むと述べた。

この行動規範の取り組みはパンデミックより前、2018年に開始された。大規模な政治関連の偽情報スキャンダルを受けて「フェイクニュース」が民主主義のプロセスや公共の議論に与える影響に対する懸念が高まっていた年だ。今般、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による公衆衛生上の危機によって、危険な偽情報がネットで増幅されるという問題への関心が加速し、議員の間でも重要視されるようになった。

議員たちは、欧州委員会が「共同規制」と呼ぶ自主的なアプローチを継続することを希望していて、オンラインの偽情報に対する地域的な法的規制を確立することは(今のところ)計画していない。共同規制は、(違法ではないものの)潜在的に有害なコンテンツに対するプラットフォームの行動と関与を促すもので、例えばユーザーが問題を報告したり、削除を訴えたりするためのツールの提供を求めるが、プラットフォームが規制を遵守できなかったとしても直接的な法的制裁を受けることはない。

とはいえ、EUデジタルサービス法(DSA)という、プラットフォームへの圧力を高める新たな手段も用意されている。2020年末に提案されたこの法案は、プラットフォームによる違法コンテンツの取り扱いを規定するもので、欧州委員会は「偽情報に関する行動規範」に積極的に関与するプラットフォームは、DSA遵守の監督当局から好意的に見てもらえるだろうと示唆している。

また、EU域内市場担当委員のThierry Breton(ティエリー・ブルトン)氏は、現地時間6月3日の声明で「行動規範を強化してDSAと組み合わせれば『EUにおける偽情報対策の新たな1ページ』を開くことになる」と述べ、次のように続けた。

「ワクチン接種キャンペーンの重要な時期に、各企業が取り組みに力を入れ、私たちのガイダンスに沿う強化された行動規範への遵守を、できるだけ早く実現することを期待しています」。

規制当局にとって偽情報は依然として厄介なテーマだ。なぜなら、ネット上のコンテンツの価値は非常に主観的なものであり、問題となっているコンテンツがどれほど馬鹿げたものであっても、中央集権的な情報削除の命令は、検閲と見做される危険性があるからだ。

公衆衛生に対する明らかなリスク(反ワクチン接種のメッセージや欠陥のある個人用防護具の販売など)を考えると、新型コロナ関連の偽情報の削除には、確かに議論の余地は少ない。しかし、ここでも欧州委員会は、ワクチンに肯定的なメッセージを発信させたり、権威ある情報源を明らかにさせたりすることで、プラットフォームが行っている言論保護措置を前面に押し出そうとしているように見える。欧州委員会のプレスリリースでは、Facebookはワクチンのプロフィール写真フレームを用意してユーザーにワクチン接種を奨励したとか、Twitterは16か国で開催された世界予防接種週間の期間中にユーザーのホームタイムラインに表示されるプロンプトを導入して、ワクチンに関する会話で500万回のインプレッションを得たことなどが紹介されている。

2021年4月の報告書には、各社が実際に行った削除についても詳しく記載されている。

Facebookは、新型コロナウイルスおよびワクチンの誤情報に関するポリシーに違反したとして、EU域内で4万7000件のコンテンツを削除したと報告したが、欧州委員会は、前月に比べてわずかに減少したと指摘している。

Twitterは、新型コロナの偽情報に関する話題について、4月中に全世界で2779のアカウントに異議申し立てを行い、260のアカウントを停止し、5091のコンテンツを削除したと報告した。

一方、Googleは、AdSenseで1万549のURLに対して措置を講じたと報告しており、欧州委員会はこれを2021年3月(1378件)に比べて「大幅な増加」としている。

この増加は良いニュースなのか?悪いニュースなのか?疑わしい新型コロナ広告の削除数の増加は、Googleによる取り締まりの強化を意味するかもしれないし、Googleの広告ネットワークにおける新型コロナ関連の偽情報問題の大幅な拡大を意味するのかもしれない。

ネット上の偽情報について曖昧な線引きをしようとしている規制当局が今まさに抱える問題は、報告要件が標準化されておらず、プラットフォームのデータへの完全なアクセス権がない状態で、これらの大手テック企業の行動をどのように定量化し、その効果や影響を正しく把握するか、ということにある。

そのためには、各社が内容を選択できる自己申告ではなく、規制が必要なのかもしれない。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:EU新型コロナウイルス偽情報FacebookGoogleMicrosoftTikTokTwitter欧州委員会

画像クレジット:warodom changyencham / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

フェイスブックの広告データ利用について英国と欧州の規制当局が競争規則違反の疑いで調査開始

Facebook(フェイスブック)は、欧州で新たに2つの独占禁止法違反の調査を受けている。

英国の競争・市場庁(CMA)と欧州委員会は現地時間6月4日、ソーシャルメディアの巨人であるFacebookの事業に対する正式な調査開始を発表した。そのタイミングはおそらく協調して合わせたものと思われる。

英国と欧州の競争規制当局は、Facebookが広告顧客やSSO(シングルサインオン)ツールのユーザーから得たデータをどのように利用しているかを精査し、特にこのデータを、クラシファイド広告などの市場で、競合他社に対して不公正な手段として利用していないかどうかを調査する。

英国が欧州連合から離脱したことで、英国の競争監視当局は、EUが実施している反トラスト調査と類似または重複する可能性のある調査を、より自由に行うことができるようになった。

Facebookに対する2つの調査は、表面的には類似しているように見える。どちらも広告データをどのように利用しているかに大きく焦点を当てているからだ(とはいえ、調査の結果は異なるかもしれない)。

Facebookが恐れるのは、英国とEUの規制当局が、共同で調査を行ったり、調査結果を相互参照する機会を得て(いうまでもなく、英国とEUの機関間では多少の調査競争が行われる)、両者から規制措置が取られた結果、より高い次元の監視が同社のビジネスに適用されるようになることだ。

CMAは、Facebookがオンライン・クラシファイド広告やオンライン・デートのサービスを提供する上で、特定のデータの収集・使用を通じて競合他社よりも不当に有利な立場にないかということを調査しているという。

つまり、これらの同種のサービスを提供する競合他社に対し、Facebookが不当な優位性を得ているのではないかと懸念していると、英国の規制当局は述べている。

Facebookはもちろん、オンラインクラシファイド広告とオンラインデートの分野で、それぞれFacebook Marketplace(フェイスブック・マーケットプレイス)とFacebook Dating(フェイスブック・デーティング)というサービスを展開して収益を上げている。

CMAのCEOを務めるAndrea Coscelli(アンドレア・コシェリ)氏は、今回の措置に関する声明の中で次のように述べている。「私たちは、Facebookのデータ利用を徹底的に調査し、同社のビジネスのやり方がオンライン・デートやクラシファイド広告の分野で不当な優位性を築いていないかを見極めるつもりです。そのような優位性は、新規事業や小規模事業を含む競合企業の成功を阻むものであり、顧客の選択肢を狭める可能性があります」。

欧州委員会の調査も同様に、Facebookが事業を展開している市場で、広告主から収集した広告データを利用して広告主と競合し、EUの競争規則に違反していないかということに焦点を当てている。

ただし、調査の対象となる市場で特に懸念される例として、欧州委員会はクラシファイド広告のみを挙げている。

EUの調査にはもう1つの要素がある。それは、Facebookが同社のオンライン・クラシファイド広告サービスをソーシャルネットワークに結びつけることが、EUの競争規則に違反していないかを調べることだ。

これとは別の(国による)動きとして、ドイツの競争当局は2020年末、FacebookがOculus(オキュラス)とFacebookアカウントの使用を結びつけていることについて、同様の調査を開始した。このようにFacebookは、米国で2020年12月に提起された大規模な独占禁止法違反の訴訟に加え、欧州でも複数の独占禁止法違反の調査を受けており、各地で苦しい立場に置かれている。

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欧州委員会は「Facebookとも直接競合する企業が、Facebookでサービスを宣伝する際に、商業的に価値のあるデータを同社に提供する場合があります。Facebookはデータを提供した企業と競合するために、そのデータを利用している可能性があります」と、プレスリリースで指摘した。

「これは特に、オンラインクラシファイド広告プロバイダーに当てはまります。多くの欧州の消費者が商品を売買するプラットフォームであるオンラインクラシファイド広告プロバイダーは、Facebookのソーシャルネットワーク上で自社のサービスを宣伝していますが、同時にこれらの業者は、Facebook独自のオンラインクラシファイド広告サービスである『Facebook Marketplace』と競合しています」。

欧州委員会は、すでに実施した予備調査で、Facebookがオンラインクラシファイド広告サービスの市場を歪めている懸念が生じていると付け加えた。委員会は今後、このソーシャルメディアの巨人がEUの競争規則に違反しているかどうかを完全に判断するため、より踏み込んだ調査を行うことになる。

欧州委員会の競争政策で責任者を務めるEVPのMargrethe Vestager(マルグレーテ・ベステアー)氏は、声明の中で次のように述べている。「Facebookは、毎月30億人近くの人々に利用されており、700万社近くの企業がFacebookに広告を出しています。Facebookは、そのソーシャルネットワークのユーザーや閲覧者の活動に関する膨大なデータを収集することができ、それによって特定の顧客グループをターゲットにすることが可能です。私たちは、特に人々が毎日商品を売買し、Facebookがデータを収集している企業とも競合しているオンライン・クラシファイド広告の分野で、このデータがFacebookに不当な競争上の優位性を与えているかどうかを詳細に調査していきます。現代のデジタル経済において、データを使用して競争を歪めることは、許されるべきではありません」。

今回の欧州の独占禁止法に関する調査についてコメントを求められたFacebookは、次のような声明を発表した。

当社は、Facebookを利用する人々の進化する需要に応えるために、常により良いサービスを開発しています。MarketplaceとDatingは、人々により多くの選択肢を提供し、どちらも多くの大手既存企業が存在する競争の激しい環境で運営されています。我々は調査に全面的に協力し、この調査が無意味であることを証明していきます。

これまで(特に) Google(グーグル)やAmazon(アマゾン)のような他の巨大テック企業に対して複数の調査と取締りを行ってきた欧州委員会の競争当局にとって、Facebookはちょっとした盲点だった。

しかし、ベステアー氏のFacebookに対する看過は、これで正式に終了した(Facebook Marketplaceに対するEUの非公式調査は、2019年3月から続いていた)。

一方、英国のCMAは、アドテック複占の翼を切り落とすという計画に基づき、FacebookやGoogleなどの巨大テック企業に真っ向から狙いを定めた、より広範な競争促進規制の改革に取り組んでいる。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookSNS広告英国欧州EU独占禁止法CMA欧州委員会

画像クレジット:Adam Berry / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

EUが「スタートアップに優しい法案」を加盟国に今週提案、何カ国が署名するのか?

米国時間3月19日の年次Digital Day(デジタル・デー)会議で欧州委員会(EC)は、EU Startup Nations Standard(SNS、EUスタートアップ国家標準)と名づけた「法律文書」を提示する。私の話が退屈で死にそうだと読者が思う前に言っておくと、SNSは「膨大な政治的取り組み」だ。その目的は、スタートアップを作る場所として、欧州連合(EU)を米国などのグローバルリーダーと比べて最も魅力的にすることだ。よって、その影響力を侮ることはできない。

目的は、EU加盟諸国がスタートアップ(その多くがすでにEU内に存在する)のために一連の「ベストプラクティス」政策を施行することであり、内容はスタートアップビザから企業法におけるストックオプションの扱いの改善など多岐にわたる。もし全EU加盟国がECの提案に署名すれば、スタートアップは今よりも有利な条件を得られるようになり、米国(今は英国も)に行くよりもEUに留まることが期待できる。またSNSは、加盟国間で周囲からの圧力が高まることによって、一連の条件が正しく適用されることも意味している。

欧州委員会に近い筋によると、この未公開のSNSは、広範囲に渡り、EU加盟国にいくつかのスタートアップ優遇政策の施行を呼びかけ、EU議長国をポルトガルが務めている期間中に定義される。ポルトガルは最近スタートアップが盛り上がっている国だ。この標準に署名した加盟国は、いくつかの分野で政策を実行することが求められる

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私はSNSがリークした草稿を見たが、そこには、最終案に残るとすれば間違いなく大きい提案になるものが複数あった。例えば署名国はストックオプションに関する国のルールを変更し、従業員の持ち株が現金化されるまでは資本利得税の対象にならないことを保証する必要がある。他にも、スタートアップが議決権のないストックオプションを発行できるようにする、手続きを迅速化して新会社を1日以内に100ユーロ(約1万3000円)で設立できるようにする、EU外のテック人材のためのビザ発給を早める、EUのテック人材を呼び戻すインセンティブを与えることなどが盛り込まれている。さらに7500億ユーロ(約97兆7000億円)の復興・回復ファシリティー(RRF)を利用したスタートアップ支援の奨励、官僚的手続きの減少、regulatory sandbox(対象者を限定した規制の一時緩和)もある。これらは多くのEU加盟国にとって、比較的実現が容易なはずだが、一部にとっては越えなくてはならない法の壁があるだろう。しかし、ほとんどの評論家がこれらの条項は機が熟しており必要なものだと述べている。

EU拠点の活動グループは全般的に、SNSを熱狂的に支持している。Allied For Startupsは「この提案の可能性に大きく期待しています」と私に語った。彼らによると、一連の対策は既存のベストプラクティスを集めたものであり、加盟国にさらなる努力と、やるかやらないかしかない「二者択一」(例えばスタートアップをオンラインで1日以内に立ち上げる)を迫るものだ。ただし彼らの望みがすべて叶うかどうかは不明だ。提案が骨抜きにならないか、どれだけの加盟国が署名するのか、彼らは息を殺して待っている。

他にも、大いに期待しているが懸念もあるというグループがある。Index Venturesが支援する政策イニシャティブのNot Optionalは今週、公開書簡を発行した。欧州の多くの有力投資家、スタートアップ団体、起業家が参加しStripe、Personio、Klarna、Wise、Trustpilot、UiPath、Alanなどのファウンダーが名を連ねた。

書簡はEUのStartup Nations Standardを歓迎し、中でも加盟国に対して「ストックオプションのルールを変更し、スタートアップが人材を惹きつけ、テックビザ発行を迅速化」することを推奨している点を高く評価した。

しかし同グループはEU加盟国に対して、勧告は実際の国家法へと変えることが重要であり、ECの法案のままにすることがないよう強く要求している。

Not Optionalは、EU諸国のストックオプション政策に関する独自のランキングを元に、EU加盟国間でこの件の扱いに驚くべき違いがあることを指摘した。例えばラトビア、エストニアおよびフランスが上位にランクされているのに対して、ドイツ、スペイン、ベルギーのファウンダーは社員の動機づけや人材獲得にストックオプションを使おうとすると未だに、障壁がある。

ブリュッセルのEU本部からは熱狂が伝わってくる一方で、私の情報源によると一部の国、たとえばドイツなどはSNSを何らかのかたちで骨抜きにすることを考えているという。具体的には、ドイツは「スタートアップを1日で」法案に怒りをぶつけている。身元確認に時間がかかる、というのが根拠だ。もっとも、つい最近までEU加盟国であった英国が、少なくとも10年間これを可能にしていることを踏まえると、ドイツの反論には無理があると思われる。

現地時間3月19日金曜日の発表に注目だ。

カテゴリー:その他
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画像クレジット:Sean Gladwell / Getty Images

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nob Takahashi / facebook