Brexの22歳の創業者コンビが、2年未満で10億ドルのビジネスを構築した道のり

ブラジル生まれのHenrique Dubugras(写真右)とPedro Franceschiが、16歳で出会ったときに、彼らを結びつけたのはコーディングへの愛と、Mark Zuckerberg風の野心を理解してくれない厳しい母親に対するお互いの欲求不満だった。

まあ公正を期すならば、彼らの母親たちの心配が始まったのは、10代になったばかりの息子たちが、特許侵害を警告する通知を受け取ってからなのだが。FranceschiがiPhoneに対する最初の「脱獄」方法を発見した際に、Appleから受け取った法的警告は、少なくともそのことを裏付けている。

彼らの両親は、息子たちにハッキングをやめ、オンラインを徘徊することをやめるように懇願した。

だが彼らは聞き入れなかった。

本日(米国時間10月5日)、この22歳のコンビは、彼らの成功した2番めの有料ビジネスであるBrexに対して、1億2500万ドルのシリーズCを発表した(評価額は11億ドル)。Greenoaks Capital、DST GlobalそしてIVPがこのラウンドを主導しているが、これによって彼らがこれまでに調達した資金は2億ドルに達する。

サンフランシスコに拠点を置くBrexは、スタートアップの創業者たちに、個人保証や保証金の差し入れなしに、コーポレートクレジットカードへのアクセスを提供するサービスだ。同社はまた、PayPalの創業者であるPeter Thielや、Visa Carl Pascarellaの元CEOであったMax Levchin、その他いくつかの有名VCからの支援も受けている。

Brexはこれまで見た中で、最もエキサイティングなスタートを切ったものの1つです」と発表の中で語るのは、IVPのSomesh Dashだ。

今回のラウンドは、彼らを史上最も若いユニコーン創業者にして、猛烈な速さでユニコーンテリトリーに突入した例外的なスタートアップたちの仲間へと押し上げた。Brexは2017年の冬に創業され、2018年6月にサービスが公開されたばかりなのだ。

どのように成し遂げられたのか?

「私は過去2回失敗しています、そしてこれまでに1つに成功し、あと1つに現在成功しつつあります」と、BrexのCEOであるDubugrasは、長い経歴を並べながら、TechCrunchに語った。

私たちのほとんどが、高校1年の生活はどのようなものだろうと心配しているだけの14歳という年齢で、Dubugrasが抱いていた関心は、次のビジネスの試みをどのようなものにしようかというものだった。彼は既にオンラインゲームを成功させていたが、それに対する特許侵害通知を受け取った後に、それを終わらせることを余儀なくされた。

当然ながら、彼はゲームから得た現金を使って会社を設立した。ブラジルの学生が、アメリカの学校に入学申請をすることを助ける教育スタートアップである。彼自身はスタンフォードに入学することを望んでいたので、ブラジルの若い生徒たちが、どのように米国の大学に申請を行っているのかがすぐにわかった。

ある面では同社は成功した。それは80万人のユーザーを獲得したが、収益をあげることはできなかった。ビジネスをスケールアップできるほど、彼は幸運ではなかったのだ。

「ブラジルには、15歳の人間に喜んで資金を提供してくれるようなVCはあまりいないのです」とDubugrasはTechCrunchに語った。

このエデュテックを畳んだあと、彼はFranceschiと出会った。Rioからやってきた10代のブラジル人だ(なおDubugrasはサンパウロ出身である)。FranceschiはイノベーションへのDubugrasの渇望を理解し、彼もまた成功に飢えていた。2人は会話を始め、やがてFranceschiがもっていた決済への関心に基いて、彼らは「ブラジルのStripe」を目指すPagar.meを始めた。

Pagar.meは3000万ドルを調達し、100人のスタッフを集め、売却されたときには最高15億ドルの取引を処理していた。ついに彼らは本当の成功を手に入れたのだ。新しいことを始める時が巡ってきた。

「シリコンバレーにきて何かを作りたいと思っていたのです。なにしろここでは何もかもが大きくクールにみえましたから」とDubugrasは語る。

そして彼らはシリコンバレーにやってきた。2016年の秋に、2人はスタンフォード大学に入学した。ほどなくして彼らは、Beyondという名前の仮想現実スタートアップの大きな夢と共に、Y Combinatorに参加した。

「私たちは3週間でそれを諦めたと思います」とDubugrasは語った「私たちは、その事業を開始するための適切な創業者ではないことに気付いたのです」。

彼は、Y Combinatorが、彼らが何に向いているかを気付く手伝いをしてくれたと言う ―― それが決済だ。

自分たちも創業者であることから、DubugrasとFranceschiは、起業家たちが直面する巨大な問題を深く認識していた。それはクレジットカードへのアクセスだ。大手銀行は中小企業を、積極的には引き受けたくないリスク対象だとみなしているため、創業者はしばしば窮地に追い込まれる。DubugrasとFranceschiは、自分たちのアドレス帳に、スタートアップ起業家たちの大きなネットワークを持っていただけでなく、特に創業者たちのためにデザインされたクレジットカードビジネスを構築するために必要な、フィンテック上の洞察力を有していた。

そこで彼らは2017年4月にBeyondを廃業し、Brexが生まれたのだ。スタートアップはすぐに勢いを得ることができたので、2人はスタンフォードを退学し、ビジネスをフルタイムで進めることにした。

金融アクセスの簡素化

Brexは個人保証や保証金を必要とせず、サードパーティのレガシー技術も使用していない。そのソフトウェアプラットフォームはゼロから構築されたものだ。

それは、企業に対して出費に対する統合的な情報を提供することで、企業経費に関する面倒な部分を簡素化する。たとえば、各企業のCEOは毎月末に、全社でUberやAmazonに対して使われた金額がいくらかを簡単に知ることができる。

さらに、Brexは起業家に対して、他のものよりも10倍も高い与信限度額を与えることができ、カードを発行することができる。少なくとも仮想カードはオンライン申請が終わった直後から利用できるようになる。

「私たちは初期のStripeが提供していたものにとても似たものを提供します。ただしはるかに速く。なぜならシリコンバレーの企業はお金を稼ぐのは得意ではないのに、お金を使うのは得意だからです」とDubugrasは説明する。

資金調達の発表の一部として、Brexは、創業者たちの必要性と出費パターンを考慮した、リワードプログラムを始めることを明かした。その計画に続いて、彼らは手に入れた資本金を使ってエンジニアを雇用し、テクノロジー企業以外のクライアントに向けて、ビジネスを成長させる方法を探ろうとしている。

「企業向けクレジットカードの世界を席巻したいのです」とDubugrasは言う。「世界中のすべての企業に、ビジネス経費を使う際には、Brexカードを使って欲しいと思っています」。

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(翻訳:sako)

画像クレジット: Brex

チケット売買もビットコインで——コインチェックがチケットキャンプに対応

8月12日に単位価格が4000ドルを超えたビットコイン。そのビットコインを決済に使える場面が、また増える。ビットコイン決済サービス「Coincheck Payment」を提供するコインチェックは8月17日、ミクシィグループのフンザが運営する「チケットキャンプ」にCoincheck Paymentを導入。ライブやイベントなどのチケットを、ビットコイン決済で購入することができるようになった。日本のチケット業界では初のビットコイン決済対応となる。

チケットキャンプは利用者数500万人を超える、チケット売買のサービス。チケットキャンプでのビットコイン決済は全世界のビットコインウォレットに対応し、PCブラウザ、スマートフォンブラウザで利用できる。チケットキャンプのiOS/Androidアプリにも、今後対応していく予定だという。コインチェックが提供する「Coincheckウォレット」ではシステム上から直接決済が可能。またCoincheckウォレット以外のウォレットを利用する場合は、支払い時に表示されるQRコードを読み込むことで決済ができる。

コインチェックでは、これまでにもCoincheck Paymentを国内外へ提供してきた。現在、Coincheck Paymentで決済可能なサービスには、DMM.comの各サービスや、寄付金の受付電気料金の支払いなどがある。7月にはAirレジ向け決済サービス「モバイル決済 for Airレジ」にも導入され、メガネスーパーなどでビットコイン決済対応を開始している。

コインチェックは2012年の設立。2014年8月から仮想通貨取引所「Coincheck」の運営を行ってきた。8月10日には、Fintechスタートアップへの投資育成プログラム「Coincheck investment program」を開始。ブロックチェーンや仮想通貨、Fintech事業を開発・運営する法人・個人を支援していくと発表している。

決済サービスの巨人Worldpayが、100億ドルでVantivからの買収提案を受諾

VantivならびにJPMorganが、買収のためにアプローチして来ていることを、決済会社のWorldpayが認めてからわずか1日後、本日(米国時間7月5日)同社はそのうちの1社Vantivからの提案に合意したことを発表した。Vantivは1株あたり3.85ポンドを提案しているため、合計として約77億ポンド(100億ドルに少し欠ける)を同社に支払うことになる。WorldpayはVerifone、PayPal、Stripe、などを筆頭にする多くのオンラインならびにPOSペイメント企業と競合している。

(本日の発表では、Worldpayの株式1株につき3.85ポンドとされたが、最終的な正確な価格は、取引が終了した時点でのVantivの株価に依存するということを、Worldpayは私に述べている。Vantivはニューヨーク証券取引所で取引されており、もし取引が進めばWorldpayはロンドン証券取引所から上場廃止されることになると、Worldpayは本日発表した。Worldpayの株主たちは、取引終了時にVantivの株の約41%を所有することになる)。

このニュースは、Worldpayの株式を、昨日の投機的取引で大幅に上昇させた後、下落させた

両社は現在、英国の規制に従って、8月1日までに完了させるデューディリジェンスプロセスに着手しており、その傍ら彼らは契約の理由を概説している。

「WorldpayとVantivの取締役会は、WorldpayとVantivの補完的な事業を組み合わせることの、魅力ある戦略的、商業的および財務的合理性を知っています」と、Worldpayはマーケットに発表した声明で述べた。「この実質的な合併は、ダイナミックなマーケットに巨大な世界規模の決済グループを誕生させます。強力なペイメント機能、プロダクト、垂直的専門知識と世界のeコマースマーケットの中で取引を支える強力な流通経路、そして米国と英国マーケットにおける店舗ならびにオンライン機能が提供されます」。

確かに、この取引は競合他社のネジを締め上げるだろう。電子商取引は基本的に低利益で大規模な事業だが、Vantivはこの取引で規模を手に入れる。同社は、そのビジネスは米国、欧州、アジア太平洋および南米を網羅し、そこには「世界最大級のeコマース企業や、欧州と米国における相当な商取引基盤が含まれる」ことになる、としている。

今回の取引に伴う、いくつかの統合も見込まれている。「WorldpayとVantivの取締役会は、株主価値の創出を助けてくれる、コストシナジーの大きなチャンスを見ています」とWorldpayは語っている。

両社は事実上合併し、Charles Druckerが会長と共同CEOを兼ね、Philip Jansenがもう一人のCEOに、Stephanie FerrisはCFOに就任する。

昨日(米国時間7月4日)に述べたように、現在Worldpayはオンラインや物理店舗向けの決済サービスを提供するたくさんの既存金融スタートアップと競合している。しかし同社自身は新しいハイテクの波に乗った企業ではない。むしろ既存の銀行によって、混乱を回避するために設立されたサービスの1つなのだ。

最初のドットコムウェーブ以前の1989年に、英国のNatWest Bankの子会社として始まり、最終的にNatWestとRBS(ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド)の合併に伴いRBSの一部となった。その後、RBSが危機に陥った際に、救済のために欧州委員会との間で締結された売却契約の一部として、2009年に独立した。

上場は2015年に行われた。

Worldpayは、サービスに対する悪意のあるハッキングで紙面を賑わすこともあったが、決済事業の開拓者としての動きも続けて来ている。例えばVRペイメントのプロトタイプの開発や、安全なスマートフォンベースの決済サービス(これは携帯電話の非接触チップを使った読み取り機能とアプリで構成されていて、追加のハードウェアは不要)の開発などを行なって来た。

VantivにはWorldpayと共通する出資者がいる。現在では商取引企業の買収では米国最大手のAdvent Internationalだ(同社は昨年一種の批判に晒されている:同社がFanDuelとDraftKingsから決済処理を受けた時、進行中だった両社に対する訴訟の場に呼び出され、それらが賭博サービスか否かについての喚問を受けた際に話題になったのだ)。

Worldpayは、米国最大のVantiv社が、より多くの市場へ拡大できるよう支援する。Worldpayによれば、同社は現在約40万の顧客にサービスを提供し、146カ国と126の通貨で決済処理を行なっている。なかでも英国は、すべての事業のマーケットシェアが40%を超える最大の国だ。

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(翻訳:Sako)

決済サービスのStripeが新たに1億5000万ドルを調達、評価額は90億ドルに

kk

ウェブサイトやアプリに、数行のコードを挿入するだけで決済機能をAPI経由で搭載できるサービスを提供しているStripeは、新たにシリーズDで1億5000万ドルを調達し、資金調達前の評価額が90億ドル、調達後の評価額は92億ドルに達した。

スタートアップ界のいわゆる”ユニコーン企業”が過大評価されているのではないか、とたくさんの人が疑問に思っている中、この調達額はStripeにとって大きな意味を持つ。なお、Visaと協力して行った昨年夏のラウンド時の同社の評価額は50億ドルだった

資金調達に加え、Stripeは合計2億5000ドル分の回転信用枠(リボルビングクレジットファシリティ)を、J.P. Morgan Chase & Co.、Goldman Sachs Group Inc.、Morgan Stanley、Barclays PLCとの間に設定しようとしている。金利が低迷している今のうちに、借入自体ではなく、借入の上限額を引き上げておこうというのが同社の狙いだ。しかし資金が必要でなければ、Stripeはこの枠を利用しなくても良い。

今回の資金調達に関するニュースは、面白いタイミングで発表された。というのも、先週の木曜日は買い物客が増える休暇の初日で、プラットフォーム経由の全ての決済から手数料をとっているStripeのような会社は、この時期に1年で一番大きな売上を期待することができるのだ。サンクスギビングデーには、売上が2016年に入って初めて20億ドルの超えると予想されている。

中には、ニュースが静かになる休暇中の週末に、このニュースが発表されたことを不思議に思っている人もいるかもしれない。なお、最初にこのニュースを報じたメディアはThe Wall Street Journalだった。

しかし、私はこのタイミングでの資金調達の発表には意義があると感じている。Stripeはいずれ株式を公開するか、同社よりも大きなEC(もしくはテック…もしかしたらGoogle?)企業に買収されることを念頭においているため、今回の発表でStripeは、オンラインショッピング界にとって大事なこの時期に、「Stripeがここにいるよ。これからEC業界を席巻していくよ」と伝えようとしているのだ。

Alphabetブランドの下に検索・モバイル事業を置くというGoogleの組織改編後に、Google Capitalから名称変更を行い、今回初めてStripeに投資した”CapitalG”と、以前から投資家として名を連ねていたGeneral Catalystの2社が今回のラウンドのリードインベスターを務めた。その他にも、Sequoia Capitalや、以前から同社に投資を行っていたものの、名前が明かされていない投資家が同ラウンドには参加していた。

2010年にアイルランド出身のPatrick・John Collison兄弟(それぞれCEOとプレジデントを務めている)によって設立され、サンフランシスコを拠点とするStripeは、今回の調達資金を含め、これまでに約4億6000万ドルを外部から調達している。

同社のビジネスの中心は決済サービスではあるものの、今後金融サービスプラットフォームへと進化していくために、Stripeは決済以外のサービスの開発も進めている。

例えば、アメリカ国外からアメリカ籍の企業を設立するためのサービス詐欺防止ツール、企業の支払をスピード化するツール、Stripeのプラットフォームを利用したマーケットプレイスなどの開発が行われている。Stripeは自社のプラットフォームを利用して、利幅を増やす(決済サービスだけでは少額の利益しかあげられない)と共に、顧客との接点を増やそうとしているのだ。

その点に関しStripeは、今回の調達資金をディベロッパー向けツールの開発や企業買収時に使えるツールなど、実業家をサポートするような機能をプラットフォームに追加するために使っていくと話している。さらにスタッフの増強も行っていく予定だ。

Stripeは次に何をローンチするのか名言していないが、詐欺防止ツールのRaderを10月末にリリースした際に、John Collisonは、EC業界にいる人たちの信頼感を高めるために、売る側・買う側両方をさらに保護していくためのサービスが今後発表されるかもしれないと、ほのめかしていた。

「この分野のサービスの開発は活発に行われており、私たちがやりたいと思っていることもたくさんあります。まだ利用者保護サービス(を単独のサービスとしてローンチするかどうか)の可能性は断念していませんが、今後ユーザーがどのようにこのサービスを利用して、何がうまくいって、何がうまくいかないかというのを観察していきたいと考えています」

ネットビジネスの運営やオンラインコマースへのアプローチとして、仕組みが複雑なサービスをシンプルにすることでPayPalのような企業へ対抗するという、Appleが得意とするやり方をStripeはもっと広く活用しようとしている。

先月Collisonに話を聞いたところ、Stripeのミッションは「ビジネスを成長させる上で直面する複雑な問題を簡素化することです。そのため、今後ローンチされるStripeのプロダクトは、そこに特化したものが多くなると思います。何がビジネス上の問題なのか、なぜ成長スピードが思うように伸びないのか、そして私たちはその状況に対して何ができるのか、というのが私たちの考え方なんです」と語っていた。

Stripeはまだ、世界中のユーザーの数や売上額、Stripeプラットフォーム上での決済総額などは明らかにしていない。しかし同社は、現在ユーザーが110ヶ国にいて、アメリカのインターネット人口の半分にあたる人々の決済をこれまで処理してきたと話している。

つまり、かなり広範囲に渡る顧客が、Stripeのサービスを少なくともひとつは利用したことがあり、そのユーザーには有名なネット企業も含まれているのだ。具体的にはSAP、Macy’s、Missguided、 GE、Adidas、Docusign、Slack、Medium、Daily Mail、Yelp、NASDAQ、UNICEF、「他にも先の大統領選の両候補者」などがStripeのサービスを利用している。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

「スタートアップに一番優しい決済を」——手数料率を抑え審査も早い、PAY.JPの新プラン

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BASEは9月6日、オンライン決済サービス「PAY.JP」で、特定のベンチャーキャピタルおよび事業会社の紹介を受けたスタートアップのための優遇制度「PAY.JP Seed」を開始した。同時に、一般事業者向けに月額費用1万円で決済手数料を抑えた新プランの提供も開始する。

月額費用1万円で決済手数料2.59%〜に抑えた新プラン

まずは一般事業者向けの新プラン「PAY.JPプロプラン」を見ていこう。PAY.JPはウェブサービスやネットショップにクレジットカード決済機能を無料で簡単に導入できる開発者向けの決済サービス。反社会的勢力ではないこと、販売されているものが合法であることといった最小限の条件をチェックすることで、利用開始時の審査が最短即日で完了するのが特徴だ。

2015年9月のサービス開始から約1年、PAY.JPでは初期費用・月額費用無料、決済手数料はVISA、MasterCardが3.0%、JCB、AMEX、Diners Club、Discover Cardが3.6%の単一プランのみを提供してきた。

今回追加された新プランでは決済回数の多い事業者向けに、初期費用は無料のまま、月額費用1万円で、決済手数料をVISA、MasterCardで2.59%、JCB、AMEX、Diners Club、Discover Cardで3.3%に抑える。また、振込サイクルを月2回と早め、資金繰りもサポートする。

プロプランの追加について、BASE代表取締役の鶴岡裕太氏は「中長期的に見て、料率を上げて利益を確保することよりも、サービス利用のボリュームを増やし、ID決済の『PAY ID』やECサイトのプラットフォーム『BASE』も合わせた市場を大きくしていくことが重要と考えている。短期的なもうけよりスタートアップの支援を優先するのも同じ考えからだ」とする。

月額無料で手数料率も抑えたスタートアップ優遇制度、PAY.JP Seed

では、そのスタートアップ支援制度はどのような内容だろうか。PAY.JP Seedは、金融機関との交渉の手間や開発のための人員が割けず、また審査の壁の高さから決済サービス導入をためらうスタートアップ企業のために提供される。通常は与信や審査に時間がかかりがちな新しいビジネスモデルでも、BASEが提携するベンチャーキャピタルや事業会社の紹介があれば、同サービスを申し込める。9月6日現在の提携企業は、ANRI、East Ventures、Global Brain、さくらインターネット、Skyland Ventures、TLM、メルカリの各社となっている。

審査を簡便化することについて鶴岡氏は、「スタートアップの事業リスクは、トランザクションを見なければ分からない。最初の審査に時間をかけてその時点だけで判断して終わり、ではなく、我々は取引を常に確認し、実績を見て判断していく」とも話している。

月額費用は申込日から1年間は無料で、月額1万円のPAY.JPプロプランと同じ決済手数料でPAY.JPが利用可能。入金サイクルも月2回で、資金繰り面でもスタートアップを支援。導入時にはSlackによる技術サポートも行われる。

「日本では起業そのものよりも決済手段の導入フェイズ、特に審査期間の長さ・手数料率の高さ・技術サポートが得られないという3つの面でのハードルが高い。PAY.JP Seedで“スタートアップに一番優しいオンライン決済”を提供することで、最初に使ってもらえる決済として選択され、その後も利用し続けられる決済サービスでありたい」(鶴岡氏)。

現金、クレジットカードに限らない“新しいお金”の姿も模索

つい先日発表されたAnyPayの正式ローンチコイニーの新サービス提供とWeChat対応など、決済関連のサービスが盛り上がりを見せる中、BASEでは、スタートアップから中規模以上のマーチャントまで広くターゲットとして視野に入れているという。

6月にPAY IDを提供開始した際にも「質量を持った『現金』をリプレイスしうるプラットフォームを拡大する」と話していた鶴岡氏。今回の取材でも改めて、現金をなくせるプラットフォームに意欲を見せた上で「クレジットカードだけではない。オフラインも対象にした“新しいお金”のあり方を模索している。期待していてほしい」と話した。

「東南アジアのStripe」日本人創業者の長谷川氏が率いるOmiseがシリーズBで1750万ドルを調達

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バンコクを拠点とし、Stripeに似た決済事業を展開するOmiseがシリーズBで1750万ドルを調達した。この資金を活用し、東南アジアでの事業を更に拡大する方針だ。

同社の決済ゲートウェイシステムを使えば、オンラインでのクレジットカード決済を簡単に導入することができる。東南アジアの主要6ヵ国ではそれぞれ異なる決済システムを導入する必要があり、オンラインのクレジットカード決済を導入するのは困難だった。それを解決するのがOmiseの決済システムなのだ。現状のところ、Omiseのサービスはタイと日本で利用可能だが(Omise CEOは日本人の長谷川 潤氏だ)、来月にはインドネシア、シンガポール、マレーシアにも事業を拡大する予定であり、同国でクローズド・テストを行っている最中だ。それに加えて、ベトナム、フィリピン、ミャンマー、ラオス、カンボジアへの事業拡大も視野に入れている。

今回のラウンドは東南アジアのフィンテック企業としては最大級の規模となる。日本のSBI Investmentがリード投資家を務め、他にもインドネシアのSinar Mas Digital Ventures(SMDV)、タイのAscend Money(通信会社Trueの子会社)、そして既存投資家のGolden Gate Venturesもラウンドに参加した。Omiseはこれまでに、2015年5月のシリーズAで調達した260万ドル、当時設立直後だったシンガポールのGolden Gate Venturesから去年10月に受け取った出資金(金額非公開)を合わせ、合計2500万ドル以上の資金調達を完了している。

Omise(日本語のように「おみせ」と発音する)は2014年に長谷川氏とタイ人のEzra “Donnie” Harinsut現COOによって設立された。二人は旅行中のホームステイ先で知り合った仲だという。

Omiseは東南アジアのEコマース企業のポテンシャルを引き出す役割をもつ。東南アジアのEコマースはリテール全体の5%にも満たないのが現状であるが、6億人以上の人口をもち、裕福な中間層が増え続けるこの地域のEコマースには大きな可能性が秘められている。Rocket Internet傘下のLazada(別名「Amazonのクローン」)をAlibabaが10億ドルかけて買収したのはそれが理由でもある。また、Googleが発表したレポートによれば、今後10年間の東南アジアの「オンライン・エコノミー」は毎年2000億ドルの規模となるだろうと予想されている。その東南アジアのオンラインショップで利用される決済サービスとしての地位を築くのがOmiseの目標なのだ。

ライバルは大勢いる。昨年に700万ドルを調達し、Facebookと共同してソーシャル・コマースを試験中の2C2Pなどがその例だ。Stripeも東南アジアで事業を展開している。ただ、完全なローカリゼーションというよりも、Atlasプロジェクトを通して海外からアメリカ国内へのEコマースを拡大するというのがStripeのアプローチのようだ。

東南アジアではオンライン決済の60%が現金決済であり、現地企業は現金決済にフォーカスしている。その一方で、Omiseが扱うのはデジタル決済のみだ。その理由としてHarinsutは、東南アジアにもキャッシュレスな未来がやってくるからだと話す。そして、完了までに何日もかかり、手動での操作も必要な現状の決算手段よりも速くて簡単なソリューションを目指しているのだ。

彼はTechCrunchとのインタビューで、「私たちは顧客から小売店への支払いだけでなく、小売店から業者への支払いにもフォーカスしています。現状では、(業者への支払いが完了するまでに)1日かかりますが、私たちが目指すのは即日送金です。すべてを自動化して、書類を作成して銀行に持っていくという手間も省きます。そのプロセスでは人間の手が一切必要ありません。そうすることで、ヒューマンエラー、時間、コストを減らすことを目指しています」と語った。

OmiseにとってEコマースは最も明らなビジネスチャンスだ。しかし、今後は大企業向けのビジネスにも注力していきたいと長谷川氏は語る。Omiseが日本で事業を展開しているのはそれが理由でもある。日本企業が東南アジアに進出するケースがとても多いからだ。

「Eコマース向けの事業は成長しています。しかし、私たちの収益の大半は大企業向けのビジネスから生まれています」と彼は話す。「小さなスタートアップ向けのビジネスはまだ発展途上です。サステイナブルなビジネスを構築するために、航空会社や保険会社、通信会社などの大企業向けの事業にフォーカスしています。それにはBDO-on-demandなどの会員制サービス、Eリテール、Eガバメントなども含まれます。そこが今のターゲット・セグメントなのです」。

Omiseは決算資料を公開していないが(頼んでみたもののダメだった)、Harinsutによれば来年には損益分岐点に達しそうだとのことだ。しかし問題はサステイナブルな水準まで利益を上げられるかどうかだと彼は語る。Omiseの収益は取引ごとに受け取る3.65%の手数料だ。100万タイバーツ(約303万円)未満の送金には約1ドルの料金がかかる。大口の顧客向けにはフレキシブルな料金パッケージも用意されている。

Omiseにとって東南アジアが最重要マーケットであることには間違いないが、将来的にはオーストラリア、ニュージーランド、韓国、香港などへの事業拡大も視野に入れている。

長谷川氏は「インド市場にもとても興味があります」と語る。「とても大きな市場ですし、今でもEコマースと金融機関には大きなギャップが存在しています。私たちが進出するスペースも残されているでしょう」。

このところOmiseは人員の増強にも力を入れている。June Seah(Visa APAC出身)とMichael Bradley(Visa子会社のCyberSource出身)がOmiseの顧問に就任したのだ。Bradleyは併せて同社の最高コマーシャル責任者(CCO)にも就任している。この2名に加えて、同じくVisa CyberSource出身のSanjeev Kumarが最高プロダクト責任者(CPO)に、Groupon APACのLuke Chengが最高財務責任者(CFO)にそれぞれ就任している。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook