世界に先駆け有機半導体レーザー評価用サンプルの製造・販売を目指す、九州大学発のKOALA Techが4億円調達

世界に先駆け有機半導体レーザー評価用サンプルの製造・販売を目指す、九州大学発のKOALA Techが4億円調達

福岡県拠点のKOALA Tech(Kyushu OrgAnic LAser Technology)は6月29日、総額4億円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家のBeyond Next Ventures、既存投資家のSony Innovation Fund、QBキャピタル、田中藍ホールディングス、新規投資家のFFGベンチャービジネスパートナーズ、新生企業投資、テックアクセルベンチャーズ、SMBCベンチャーキャピタル。

調達した資金を基に、有機半導体レーザーダイオード(OSLD。electrically pumped Organic Semiconductor Laser Diode)のエンジニアリングサンプルの製造・販売、アライアンスの構築、人材採用を加速させる。

調達した資金の用途

  • 有機半導体レーザーダイオード(OSLD)のエンジニアリングサンプル/モジュールの製造・販売:ビジネスチャンス拡大を目的に、完成品・デバイスメーカーやソリューションインテグレーターに対してOSLDの技術紹介を行うためのエンジニアリングサンプルの製造・販売を目指す。同サンプルを用いた検討により、実装へ向けた課題抽出と解決、製品モジュール供給のための実証を行う
  • 戦略的ビジネスアライアンスの構築:OSLD技術の実装は、戦略的パートナーとの実装へ向けた検討が不可欠。2021年2月三井化学と有機半導体レーザー材料に関する共同研究開発契約を締結しており、今後も重要なパートナー企業との関係を構築する
  • OSLD技術の対象市場の拡大:OSLD技術を展開する初期のターゲット市場は、近赤外レーザーを用いた生体認証市場。有機EL(OLED)ディスプレイに直接実装できることから、ディスプレイに新たなセンシング機能を付加可能。前述エンジニアリングサンプルの供給により、単一モジュールでの用途を拡大すべく、ヘルスケア市場などの新たな市場を開拓する
  • 人材採用の強化:研究開発、知財、ビジネス開発、経営管理等をより円滑に進めるためのチーム強化を行う

2019年3月設立のKOALA Techは、九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センターが世界に先駆けて実現したOSLD技術の実用化を目指す、九州大学発スタートアップ。

同社によると、有機半導体レーザーは、無機半導体レーザーでは困難とされる「可視~近赤外域の任意の波長でレーザー発振」を可能とするものという。特に近赤外レーザーは、生体認証や光学センサーなどの分野で新たな応用展開が期待されるほか、柔らかい有機材料を使うことでフレキシブルデバイスへの利用にも適しているそうだ。

KOALA Techは、1日でも早い社会実装を目指し、これまでNEDO-STSをはじめ各種助成金制度を利用し近赤外有機半導体レーザーの原理実証(PoC)を進めてきており、可視・近赤外域のOSLD技術の開発に加え、有機レーザー素子の長寿命化に向けた新たな有機レーザー材料の開発にも取り組んでいるという。

また、近年高精細・フレキシブルディスプレイとして注目される有機EL素子(OLED)をはじめ、有機電子デバイスプラットフォームに高い互換性を備えるレーザー光源を実現するとしている。これによって、有機半導体デバイス分野における顧客へ新しいソリューションを提供するという。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:KOALA Tech(企業)九州大学(組織)生体認証 / バイオメトリクス / 生体情報(用語)OLEDOSLD / 有機半導体レーザーダイオード(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

英個人情報監督局が公共の場でのライブ顔認証による「ビッグデータ」監視の脅威に警鐘を鳴らす

英国のデータ保護規制当局最高責任者はライブ顔認識(live facial recognition、LFR)を公共の場で無謀かつ不適切に使用することについて警鐘を鳴らした。

公共の場でこの生体認証監視を使用することについて、個人情報保護監督官のElizabeth Denham(エリザベス・デナム)氏は「エンゲージメントの規則」と題する活動の開始点として見解を発表し、データ保護規制当局はLFRの利用計画に対して多くの調査を実施したが、すべてのケースで問題が発覚したと述べた。

「ライブ顔認証テクノロジーが不適切に、過剰に、あるいは無謀に使用される可能性について深く憂慮しています。機密性の高い個人情報が、本人の知らないところで、本人の許可なしに大規模に収集された場合、その影響は計り知れません」と同氏はブログの投稿で警告した。

「これまでの用途としては、公共の安全性の懸念に対応したり、生体認証プロファイルを作成して絞り込んだターゲットにパーソナライズされた広告を配信するといったものがあります」。

「調査対象となった組織の中でその処理を完全に正当化できた組織は1つもなく、実際に稼働したシステムのうち、データ保護法の要件に完全に準拠していたものは皆無でした。すべての組織はLFRの使用を中止する選択をしました」。

「CCTV(Closed-Circuit Television、監視カメラ)と違って、LFRとそのアルゴリズムは、映っている人を自動的に特定し、その人に関する機密性の高い情報を推測します。そして即座にプロファイルを作成してパーソナライズされた広告を表示したり、毎週食料品店で買い物をするあなたの画像を万引犯の画像と比較したりします」とデナム氏はいう。

「将来は、CCTVカメラをLFRで置き換えたり、ソーシャルメディデータやその他の『ビッグデータ』システムと組み合わせて使用する可能性もあります。LFRはCCTVの強化版なのです」。

生体認証テクノロジーを使用して個人をリモートから特定すると、プライバシーや差別のリスクなど、人権に関する重大な懸念が生じる。

欧州全体で、自分の顔を取り戻そうといった、生体認証による大衆監視の禁止を求めるさまざまな運動が起こっている。

顔認証にターゲットを絞ったもう1つのアクションとして、2021年5月、プライバシー・インターナショナルなどが、物議を醸している米国の顔認証企業Clearview AI(クリアビュー・エーアイ)の欧州での営業を停止するよう求める法的な異議申し立てを行った(一部の地域警察部隊も例外ではない。スウェーデンでは、2021年初め、Clearview AIの技術を不法に使用したという理由で警察がDPAによって罰金を課された)。

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欧州では生体認証監視に対して一般市民が大きな反対の声を上げているが、議員たちはこれまでのところ、この論争中の問題の枝葉末節をあれこれいじくりまわしているだけだ。

欧州委員会が2021年4月に提示したEU全体の規制では、人工知能の応用に関するリスクベースのフレームワークが提案されているが、法執行機関による公共の場での生体認証監視の利用については一部が禁止されているに過ぎない。しかも、広範な適用例外が設けられていたため、多くの批判を招いた。

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党派を問わずあらゆる欧州議会議員から、ライブの顔認証などのテクノロジーの公共の場での使用の全面禁止を求める声も上がっている。また、EUのデータ保護監督庁長官は、国会に対し、公共の場での生体認証監視の使用を、少なくとも一時的に禁止するよう求めている。

いずれにしても、英国はEUから離脱したため、EUが計画しているAI規制は英国には適用されない。英国政府が国のデータ保護体制を緩和する方向に舵を切るかどうかはまだわからない。

ブレグジット後に英国の規制体制の変更について同国政府が調査会社に依頼した最近のレポートでは、英国GDPRを新しい「英国フレームワーク」で置換して「イノベーションと公共の利益のためにデータを開放する」こと、そしてAIおよび「成長分野」に有利な修正を行うよう主張している。そのため、ブレグジット後、英国の官僚たちがデータ保護体制の修正に手を付けるかどうかが人権ウォッチャーたちの主要な関心事となっている。

「Taskforce on Innovation, Growth and Regulatory Reform(イノベーション、成長、規制改革に関するタスクフォース)」と題するレポートでは、自動処理のみに基づく決定に従わない権利を市民に与えるGDPRの第22項の完全削除を支持しており、(個人情報保護監督庁[INFORMATION COMMISSIONER OFFICE、ICO]からと思われる指導を受け)「自動化プロファイリングが合法かどうか、公共の利益を満たすものかどうかに焦点を移した表現」で置き換えることを提案している。ただし、英国政府はデナム氏の後任人事についても検討しており、デジタル相は、後任には「データを脅威ではなく、我々の時代の大いなる機会とみなす大胆な新しいアプローチ」を採って欲しいと考えていると述べた。つまり、公正、説明責任、透明性とはさようならということだろうか。)

プライバシー監視機関によると、現在のところ、英国でLFRを実装しようとする者は、英国のデータ保護法2018と英国一般データ保護規則(つまり、EU GDPRの英国版。ブレグジット前に国内法令となった)の条項に準拠する必要がある。具体的には、英国GDPR第5条に明記されているデータ保護原則(合法性、公正、透明性、目的の制限、データの最小化、保存の制限、セキュリティ、説明責任など)に準拠する必要がある。

この見解には、監督機関は個人が権利を行使できるようにしなければならないとも書かれている。

「組織は最初から高水準のガバナンスと説明責任を実証する必要があります。これには、LFRを使用することが、導入先の個々のコンテキストにおいて、公正、必要、かつ適切であることを正当化できることも含まれます。侵害性の低い手法は機能しないことを実証する必要があります」とデナム氏は書いている。「これは重要な基準であり、確固とした評価を必要とします」。

「組織はまた、潜在的に侵害的なテクノロジーを使用するリスクとそれが人々のプライバシーと生活に与える影響を理解し評価する必要があります。例えば正確性と偏見をめぐる問題によって、人物誤認が起こり、それにともなって損害が発生することを理解する必要があります」。

英国がデータ保護とプライバシーに関して進む方向についての広範な懸念という視点から見ると、プライバシー監視機関がLFRに関する見解を表明したタイミングは興味深い。

例えば英国政府が後任の個人情報保護監督官に、データ保護とAI(生体認証監視などの分野を含む)に関する規則書を喜んで破り捨ててしまうような「御しやすい」人物を任命するつもりだとしても、少なくとも、LFRの無謀で不適切な使用にともなう危険性を詳述した前任者の見解が公文書に記載されている状態では、そのような政策転換を行うのはかなり気まずいだろう。

もちろん、後任の個人情報保護監督官も、生体認証データがとりわけ機密性の高い情報であり、年齢、性別、民族などの特性を推定または推論するのに使用できるという明らかな警告を無視できないだろう。

あるいは、英国の裁判所がこれまでの判決で「指紋やDNAと同様、顔生体認証テンプレートは本質的にプライベートな特性をもつ情報である」と結論づけており、ICOの見解のとおり、LFRを使用すると、この極めて機密性の高いデータを本人に気づかれることなく取得できるという点を強調していることも当然認識しているはずである。

またデナム氏は、どのようなテクノロジーでも成功するには市民の信頼と信用が必要であるという点を繰り返し強調し、次のように述べている。「そのテクノロジーの使用が合法的で、公正かつ透明性が高く、データ保護法に記載されている他の基準も満たしていることに市民が確信を持てなければなりません」。

ICOは以前「警察によるLFRの使用について」という文書を公開しており、これがLFRの使用に関して高いしきい値を設定することになった(ロンドンメトロポリタン警察を含め、いくつかの英国の警察部隊は、顔認証テクノロジーの早期導入者の1つであり、そのために、人種偏見などの問題について法的苦境に陥った部隊もある)。

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人権運動家にとっては残念なことだが、ICOの見解では、民間企業や公的機関による公開の場での生体認証監視の使用の全面禁止を推奨することは避けており、監督官は、このテクノロジーの使用にはリスクがともなうが、極めて有用となるケース(行方不明の子どもを捜索する場合など)もあると説明している。

「テクノロジーにお墨付きを与えたり禁止したりするのは私の役割ではありませんが、このテクノロジーがまだ開発中で広く普及していない今なら、データ保護に然るべき注意を払うことなくこのテクノロジーが拡散しまうのを防ぐ機会が残されています」と同氏は述べ、次のように指摘する。「LFRを導入するいかなる意志決定においても、データ保護と利用者のプライバシーを最優先する必要があります」。

また、デナム氏は次のように付け加えた。現行の英国の法律では「ショッピング、社交、集会などの場で、LFRとそのアルゴリズムを使用することを正当化するには、高いハードルをクリアする必要があります」。

「新しいテクノロジーでは、利用者の個人情報の使い方について市民の信頼と信用を構築することが不可欠です。それがあって初めて、そのテクノロジーによって生まれる利点を完全に実現できます」と同氏は強調し、米国ではこの信頼が欠如していたために、一部の都市で、特定のコンテキストでのLFRの使用が禁止されたり、ルールが明確になるまで一部の企業がサービスを停止することになったことを指摘した。

「信頼がなければ、このテクノロジーによってもたらされる利点は失われてしまいます」と同氏は警鐘を鳴らした。

このように「イノベーション」というもっともらしい大義を掲げて英国のデータ保護体制を骨抜きにする方向へと慌てふためいて舵を切ろうとしている英国政府だが、1つ越えてはならない一線があることを忘れているようだ。英国が、EUの中心原則(合法性、公正、均整、透明性、説明責任など)から国のデータ保護規則を「解放」しようとするなら、EUとの規制同盟から脱退するリスクを犯すことになる。そうなると、欧州委員会は(締結したばかりの)EU-英国間のデータ適合性協定を破棄することになるだろう。

EUとのデータ適合性協定を維持するには、英国はEUと実質的に同等の市民データ保護を維持する必要がある。このどうしても欲しいデータ適合性ステータスを失うと、英国企業は、EU市民のデータを処理するのに、現在よりはるかに高い法的なハードルを超える必要が出てくる(これは、セーフハーバー原則プライバシー・シールドが無効化された後、米国が今まさに体験していることだ)。EUのデータ保護機関がEU英国間のデータの流れを完全に停止する命令を下す状況もあり得る。

このようなシナリオは英国企業と英国政府の掲げる「イノベーション」にとって恐ろしい事態だ。テクノロジーに対する市民の信頼とか英国市民が自らプライバシーの権利を放棄してしまってよいと思っているのかどうかといったより大きな問題について検討する以前の問題である。

以上の点をすべて考え合わせると、英国政府にはこの「規制改革」の問題について徹底的に考え抜いた政治家が本当にいるのかどうか疑わざるを得ない。今のところ、ICOは少なくとも政府に代わって考える能力をまだ維持している。

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タグ:イギリス顔認識生体認証個人情報

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

全米で失業保険用に導入された顔認識システムが申請を次々拒否、本人確認できず数カ月受給できない人も

全米で失業保険用に導入された顔認識システムが申請を次々拒否、本人確認できず数カ月受給できない人も

imaginima via Getty Images

米国では失業保険を不正受給しようとする詐欺行為を防止用に申請者が本人かどうかを確認するための顔認識システムを導入しています。ところが、この技術が本人を正しく認識できないケースが発生しており、失業手当の支給を拒否された人々からは不満の声があがっています。AIによる顔認識技術は、一般的に女性や有色人種を見分ける能力が白人男性に比べると劣ると言われています。

問題のケースでは、失業手当を申請した人がID.meにおける顔認識で本人確認ができなかったために手続きを保留され、問題解消のためにID.meにコンタクトを取ろうとしても数日~数週間も待たされたりしているとのこと。

SNSではID.meへの不満や苦情の投稿が数多く見受けられます。カリフォルニア州では昨年の大晦日、すでに失業手当を受け取っていた140万人のアカウントが突然無効化される現象が発生。再度ID.meで顔認識を通さなければ手当を受給できなくなりました。この手続きにも数週間待たされる人が相次ぎ、その間生活費のやりくりを強いられました。このような問題は各地で起こっており、コロラド、フロリダ、ノースカロライナ、ペンシルバニア、アリゾナ州でもID.me導入前は問題なく手当を受給できていた人が、ID.meに顔認識で弾かれ、長くて数か月も手当を受け取れない状態に置かれた例が報告されています。

ViceメディアのテクノロジーニュースサイトMotherboardはID.meのCEOブレイク・ホール氏への取材で、ホール氏がID.meの技術は「99.9%の有効性」があると述べたと伝えています。ホール氏によると、ID.meの顔認識は大量の顔写真サンプルから調べたい顔を探すのではなく、運転免許証などに表示される顔写真との比較を行うようになっているとのこと。また肌の色はこの顔認識には影響しないとのことです。

そのため、ホール氏は「顔認証の失敗は技術の問題ではなく、例えば、申請に使う写真の顔が一部見切れているような写真を使って認識に失敗している」と主張「ID.meで本人確認ができなかった対象者はいません」とまで述べています。

しかし実際に認識が通らなかった人にとっては、この説明は納得いくものではないでしょう。ある人は指示されたとおりに手続きをしたものの、認証拒否が3度も続き、何の説明もなくシステムから閉め出されてしまったと訴えています。どうしたものかと思いID.meのサポートチャットにコンタクトを取るも返答はなく、州の担当者に問い合わせてもID.meに確認せよの一点張りで3週間も放置されました。そして堪忍袋の緒が切れてSNSでID.meへの不満をぶちまけたところ、すぐに先方から連絡が来て数日後に身元確認が通ったと、この人は述べています。

Motherboardによると、ホール氏はID.meのシステムを売り込むため、米国の失業手当の不正受給の額を例に挙げて宣伝しています。しかしホール氏の言うその額は、この2月には1000億ドルと言っていたのが、その数週後には2000億ドルと述べられ、翌月には3000億ドルと主張するようになっていたとのこと。Axiosによる最新の報告では4000億ドルものお金が失業手当詐欺的に受給されているとID.meが述べていると伝えています。ホール氏はこの数値の変化について「データポイントが増えたためだ」と説明しています。しかし、この主張のどれに対しても、額をどうやって算出したかについては返答していません。

米労働省の報告では、2020年3月から10月の間に、不正の可能性がある失業手当の不正受給で摘発した額はを56億ドルとされています。より最近のデータでは損失額が実際にはもっと大きいことが示唆されていますが、省は 「数百億ドル」と見積もっています。

ID.meのテクノロジーで何が起こっているにせよ、この事件は、連邦政府と州政府が顔認識を制限したいと望んでいる理由のひとつを浮き彫りにしているようです。プライバシーやセキュリティに問題がなくとも、また「99.9%の精度」とうたわれるシステムであっても、多くの人々が本来得られるはずのサービスを拒否される可能性があるということです。本当に99.9%の精度でこれならば、特に市民の生活に関わる手続きを行うシステムには、今後はさらに高い精度を導入前に求めなくてはならなくなりそうです。

(Source:MotherboardEngadget日本版より転載)

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タグ:顔認証 / 顔認識(用語)生体認証 / バイオメトリクス / 生体情報(用語)プライバシー(用語)

これで誰でもディズニープリンセス、ARアプリへの捧げ物はあなたの生体情報!?

先週末、あなたのお友達は、次々とみんなをピクサーのアニメーションキャラクターに変身しましたとさ。これは熱にうなされて見た夢ではなく、あなただけに起こったわけでもない。

Snapchatは米国時間6月10日、ARを使ってあなたを「アナ雪」のサブキャラクターのように見せる「Cartoon 3D Style Lens」をリリースした。Snapchat(スナップチャット)では、2億1500万人以上のユーザーが「Cartoon 3D」レンズを利用し、17億回以上再生されている。TikTok(ティックトック)独自のARアニメーション効果はSnapchatほど説得力があるわけではないが、人々はTikTokを利用して、自分がディズニープリンセスになっている動画を共有している。プリンセスになったのだから、当然の流れだ。

ディズニー風のARトレンドがバイラルに広まったのは今回が初めてではない。2020年8月、Snapchatの新規インストール数は2850万で、4120万だった2019年5月以来のヒット月となった。2020年8月初旬にSnapchatが「Cartoon Face」レンズをリリースし、ペットを「Disneyfy(ディズニーキャラ化)」するのにそれを使えるとユーザーが気づいたのは偶然の一致ではないかもしれない。TikTokでは「#disneydog」というタグがプラットフォーム間で4090万回再生された。その後Snapchatは同年12月に「Cartoon」レンズをリリースすることで、再びバイラルの金を掘り当てた。このレンズでは、以前よりも人間の顔がよりリアルに表現されるようになった。

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Sensor Towerによると、Snapchatの世界的なインストール数は2020年の残りの期間を通じて前月比で上昇し続けていたが、12月にはインストール数がわずかに減少した。それでも、同月のSnapchatのダウンロード数は3600万だった。現在、最新の「Cartoon Style 3D」レンズが再びバイラルになった後、SnapchatはApp Storeの無料アプリチャートで6位となった(TikTokは2位)。しかし、2021年5月のSnapchatのダウンロード数は3200万で、4月の3400万から減少している。一方、TikTokの2021年5月のインストール数は8030万で、4月の5930万から増加している。

画像クレジット:Snapchat(TechCrunchによるスクリーンショット)

しかし1位の枠には、先週末のアニメの爆発的ヒットにも影響を与えた新しいアプリがある。
2021年3月にリリースされた「Voilà AI Artist」は、私たちをアニメバージョンに変えるこれまた別のプラットフォームだ。SnapchatやTikTokのARを使ったエフェクトとは異なり、Voilàはフォトエディターだ。ユーザーはセルフィーをアップロードし、広告(広告なしバージョンは週3ドル、約330円)を見た後、自分がアニメの登場人物になったような姿を見られる。

「Voilà AI Artist」は、2021年3月には世界で400回しかダウンロードされなかった。それが5月には100万ダウンロードを突破し、今月の最初の2週間だけで1050万回以上ダウンロードされているとのこと。

ここでもまた「Disneyfy」トレンドで繰り返されたイテレーションと同様、Voilàのようなアプリは新しいものではない。2019年に流行した「FaceApp」は、自分が年老いて白髪やシワになったときの姿を人々に見せるものだった。同アプリは、AIでセルフィーを編集するためにユーザーの写真をクラウドにアップロードしていたため、プライバシー論争の中心となった。FaceAppは「パフォーマンスとトラフィック上の理由」から「更新された写真をクラウドに保存することがある」が「ほとんどの画像」は「48時間以内」に削除されると声明を出した。しかし、これらの曖昧な表現は私たちの頭の中で警鐘を鳴らし、60年後の自分の姿を見ることの裏にひょっとしたら悪意が潜んでいるのでは、と考えさせられた。その2年前にFaceAppは、ユーザーの肌の色を明るくする「hotness」フィルターを発表し、人種差別的なAIを使用したことを謝罪した。カナダのWemagine.AI LLPが所有するVoilàも、そのAIがヨーロッパ中心主義であると批判されている。これらのアプリは人気が高まるにつれ、私たちの文化が持つ最も有害な類のバイアスを支持することにもなりかねない。

画像クレジット:Voilà

FaceAppと同様、Voilàもインターネットへの接続を必要とする。また、Voilàの規約では、ユーザーはVoilàに対して「アップロードされたコンテンツおよび生成されたコンテンツをホスト、保存、任意の方法で使用、表示、複製、変更、適応、編集、公開、配布するための、非独占的、世界的、ロイヤリティフリー、サブライセンス可能、および譲渡可能なライセンス」を付与することになっている。基本的には、あなたが画像をプラットフォームにアップロードした場合、Voilàはその画像を使用する権利を得るが、所有権はないということだ。このようなアプリでは、珍しいことではない。例えば私たちがInstagram(インスタグラム)に写真をアップロードすると、その画像を使用する権利を同社に与えることになる。

それでも、Voilàのようなアプリは、私たちはかわいいディズニープリンセスになれるという知識と引き換えに、いったい何を放棄しているのか考えさせてくれるのでそれは良いことだと思う。2021年6月初め、TikTokは米国でのプライバシーポリシーを更新し、同アプリがユーザーのコンテンツから「バイオメトリック識別子および生体情報を収集することがある」と規定した。これには「faceprints and voiceprints(顔の記録と声紋)」が含まれているが、TikTokはこれらの用語を定義していない。TechCrunchはTiktokにコメントを求めたが、なぜ今になってバイオメトリックデータの自動収集を可能にするように規約が変更されたのかは確認できなかった。バイオメトリックデータとは私たちを識別する身体の特徴、測定値、特性を指し、それには指紋も含まれる。

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VoilàがApp StoreでNo.1の座に上り詰めたとき、SnapchatがピクサーにインスパイアされたARレンズを再発表したのも不思議ではない。Facebook(フェイスブック)のARプラットフォーム「Spark(スパーク)」も新機能を搭載し、先週のWWDCではApple(アップル)がARソフトウェア「RealityKit」の大幅なアップデートを発表した。しかし、これらのトレンドは、私たちがディズニーを懐かしんでいるというよりも、顔を変えるARに慣れてきていることを示している。

【更新】米国時間6月14日東部標準時午後3時40分にSnapchatの「Cartoon 3D」レンズの使用統計を追加した。

カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:Snapchat拡張現実生体情報

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Aya Nakazato)

TikTokが米国ユーザーの「顔写真や声紋」を含む生体情報の収集を表明

米国時間6月2日水曜日に発表されたTikTok(ティックトック)の米国におけるプライバシーポリシーの変更では、同社のソーシャルビデオアプリがユーザーのコンテンツから「生体識別子および生体情報を収集する場合がある」という項目が新たに追加された。これには「フェイスプリント(顔写真)やボイスプリント(声紋)」などが含まれると説明されている。TikTokにコメントを求めたところ、製品開発におけるどのような理由でユーザーから自動的に収集する情報に生体情報を加える必要が生じたのかは確認できなかった。しかし、そういったデータ収集活動を始める場合には、ユーザーに同意を求めると述べている。

生体情報収集の詳細については、同ポリシーの「自動的に収集する情報」の下に新たに追加された「画像および音声情報」セクションの項目として記述されている。

これは、TikTokのプライバシーポリシーの中で、アプリがユーザーから収集するデータの種類を列挙している部分であり、すでにかなり広範囲にわたっている。

新しいセクションの最初の部分では、TikTokがユーザーのコンテンツに含まれる画像や音声に関する情報を収集する場合があるとし「ユーザーコンテンツに含まれる物体や風景の識別、顔や体の特徴と属性の画像内の有無や位置、音声の特徴、テキスト化した会話内容など」と説明している。

気味が悪いと思うかもしれないが、他のソーシャルネットワークでは、アクセシビリティ(例えば、Instagramの写真の中に何が写っているかを説明する機能)の強化やターゲティング広告のために、アップロードされた画像の物体認識を行っている。また、AR(拡張現実)効果の演出のためには、人物や風景の位置を認識する必要があり、TikTokの自動キャプションは話し言葉をテキスト化することで実現している。

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また、このポリシーでは、新たなデータ収集は「映像の特殊効果、コンテンツモデレーション、人口統計学的分類、コンテンツや広告のリコメンデーション、個人を特定しないその他の処理」を可能にするためとも述べている。

新しい項目の中でも特に気になるのは、生体情報の収集計画の部分だ。

そこには次のように書かれている。

当社は、お客様のユーザーコンテンツから、フェイスプリントやボイスプリントなど、米国の法律で定義されている生体識別子および生体情報を収集することがあります。法律で要求される場合、当社は、そのような収集を行う前に、お客様に必要な許可を求めます。

この声明自体は、連邦法、州法、またはその両方を対象としているのかどうかを明確にしていないため、曖昧なものとなっている。また、他の項目と同様に、TikTokがなぜこのデータを必要とするのか説明しておらず「フェイスプリント」や「ボイスプリント」という言葉の定義さえもない。加えて、どのようにしてユーザーから「必要な許可」を得るのか、同意を得るプロセスは州法や連邦法を参考にするのかについても言及はない。

これは憂慮すべきことだ。というのも、現在のところ、生体認証情報プライバシー法を制定しているのはイリノイ州、ワシントン州、カリフォルニア州、テキサス州、ニューヨーク州など、ほんのひと握りの州にすぎないからだ。TikTokが「法律で要求される場合」にのみ同意を求めるのであれば、他の州のユーザーはデータ収集について知らされる必要がないということになりかねない。

TikTokの広報担当者は、生体情報の収集における同社の計画や、現在または将来の製品にどのように関わるかについて、詳細は明らかにしていない。

「透明性に対する継続的なコミットメントの一環として、当社が収集する可能性のある情報をより明確にするために、今回プライバシーポリシーを更新した」と同担当者は述べる。

そして、同社のデータセキュリティへの取り組みに関する記事、最新の透明性レポート、アプリ上でのプライバシーの選択についての理解を深めることを目的として最近立ち上げたプライバシーとセキュリティのページを紹介した。

画像クレジット:NOAH SEELAM/AFP via Getty Images

今回の生体情報に関する開示は、TikTokが一部の米国ユーザーの信頼回復に取り組んでいる時期と重なる。

Trump(トランプ)政権時、連邦政府は、TikTokが中国企業に所有されていることから国家安全保障上の脅威であるとして、米国内での運営を全面的に禁止しようとした。TikTokは、この禁止令への対抗として、TikTokの米国ユーザーのデータは、米国内のデータセンターとシンガポールにのみ保存していることを公表した。

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同社はまた、北京を拠点とするByteDance(バイトダンス)が所有しているにもかかわらず、TikTokのユーザーデータを中国政府と共有したことも、コンテンツを検閲したこともないと述べている。また、頼まれても絶対にしないとしている。

TikTokの禁止令は当初、裁判所で却下されたものの、連邦政府はその判決を不服として控訴した。しかし、Biden(バイデン)大統領が就任すると、同政権はトランプ政権の措置を再検討するため、控訴プロセスを保留した。そして、6月4日現在、バイデン大統領は、監視技術に関連する中国企業への米国の投資を制限する大統領令に署名しているが、同政権のTikTokに対する立場は不明のままだ。

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しかし、今回の生体情報収集に関する新たな開示は、ソーシャルメディアアプリがイリノイ州の生体認証情報プライバシー法に違反したとして、2020年5月に提起されたTikTokに対する集団訴訟における9200万ドル(約100億円)の和解を受けたものであることは注目に値する。この集団訴訟は、TikTokがユーザーの同意なしに個人情報や生体情報を収集・共有したことをめぐる、同社に対する20件以上の個別訴訟とも併合されていた。具体的には、特殊効果を狙ったフェイスフィルター技術への使用に関するものだ。

そういった状況のため、TikTokの法務部門は、アプリによる個人の生体情報収集に係る条項を追加することで、将来の訴訟に対する予防策を手早く講じたかったのかもしれない。

今回の開示は、米国向けのプライバシーポリシーにのみ追加されたものだ。EUなど他の市場では、より厳しいデータ保護法やプライバシー保護法があることも忘れてはならない。

この新しいセクションは、TikTokのプライバシーポリシーの広範な更新の一部であり、他にも旧版のタイプミスの修正から、セクションの改訂や新規追加まで、大小さまざまな変更が加えられている。しかし、これらの調整や変更のほとんどは、簡単に説明できる。例えば、TikTokのeコマースへの意欲を明確に示す新しいセクションや、ターゲティング広告に関するApple(アップル)の「App Tracking Transparency(アプリのトラッキングの透明性)」に対応する調整などが挙げられる。

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大局的に見れば、TikTokは、たとえ生体情報がなくても、ユーザーやコンテンツ、デバイスに関するデータをふんだんに持っている。

例えば、TikTokのポリシーには、ユーザーのデバイスに関する情報を自動的に収集するとすでに記載されている。その情報には、SIMカード・IPアドレス・GPSに基づく位置データ、TikTok自体の利用状況、ユーザーが作成・アップロードしたすべてのコンテンツ、アプリから送信したメッセージのデータ、アップロードしたコンテンツのメタデータ、クッキー、デバイス上のアプリやファイル名、バッテリーの状態、さらにはキーストロークのパターンやリズムなどが含まれている。

これは、ユーザーが登録したり、TikTokに連絡したり、コンテンツをアップロードしたりしたときに送られる「ユーザーが提供することを選択した情報」とは別だ。この場合、TikTokは、ユーザーの登録情報(ユーザー名、年齢、言語など)、プロフィール情報(名前、写真、ソーシャルメディアアカウント)、プラットフォーム上でユーザーが作成したすべてのコンテンツ、電話やソーシャルネットワークの連絡先、支払い情報、加えてデバイスのクリップボードにあるテキスト、画像、動画を収集する(Apple iOS 14の警告機能により、TikTokや他のアプリがiOSのクリップボードのコンテンツにアクセスしていることが発覚したことはご記憶にあるだろう。今回のポリシーでは、TikTokは「ユーザーの許可を得て」クリップボードのデータを「収集する場合がある」としている)。

プライバシーポリシーの内容自体は、一部のTikTokユーザーにとっては、すぐに気がかりになるものではなく、むしろ、バグだらけのロールアウトに関心が集まった。

一部のユーザーは、プライバシーポリシーの更新を知らせるポップアップメッセージが表示されたものの、そのページを読もうとしても読めなかったと報告している。また、ポップアップが繰り返し表示されるという報告もあった。この問題は全ユーザーに共通ではないようだ。TechCrunchによるテストでは、このポップアップに関する問題は発生しなかった。

【追加レポート】Zack Whittaker(ザック・ウィッタカー)

カテゴリー:ネットサービス
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画像クレジット:SOPA Images / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)