累計会員数50万人突破を記念しpaizaが実態調査結果を発表、女性の割合増加・最高スキルランクの年収は平均83万円アップ

累計会員数50万人突破を記念しpaizaが実態調査結果を発表、女性の割合増加・最高スキルランクの年収は平均83万円アップ

ITエンジニア向けの転職、就職、学習プラットフォーム「paiza」(パイザ)を運営するpaizaは3月22日、2022年3月で累計登録者数が50万人を突破したことを発表した。直近1年間の登録者増は約10万人、利用企業数は3000社を超えた。

これを記念して同社は、登録者の属性や転職の動向などの実態調査の結果をまとめた特設サイトを公開した。

利用者は20〜30代が中心、女性の割合は1割超

利用者は、20〜30代が中心で全体の8割を占めている。女性の割合も増加傾向にあり、現在は1割超えとなっている。また、ユーザーが経験しているプログラミング言語のランキングも公開。
累計会員数50万人突破を記念しpaizaが実態調査結果を発表、女性の割合増加・最高スキルランクの年収は平均83万円アップ累計会員数50万人突破を記念しpaizaが実態調査結果を発表、女性の割合増加・最高スキルランクの年収は平均83万円アップ

「paizaスキルチェック」の総受験回数は1700万回超、スキルランク最高位のSランク獲得者は全登録者の3%

paizaでは、オンラインのプログラミングテスト「paizaスキルチェック」を受験することで6段階評価のスキル証明がもらえる。こうした「スキルの可視化」が転職や就職の決め手ともなる「paizaスキルチェック」の総受験回数は1700万回を超えた。スキルランクの最高位であるSランクの獲得者は、全登録者の3%だった。
累計会員数50万人突破を記念しpaizaが実態調査結果を発表、女性の割合増加・最高スキルランクの年収は平均83万円アップ

スカウトの1人当たりの受信数はSランクが237通、応募内定率はSランクが26%

転職と応募内定率については、スキルランクが高いほど有利であることが顕著に示されている。「paiza」では、登録者のスキル証明を見た企業から登録者にスカウトのメールが来ることになっている。そのスカウトの1人当たりの受信数は、Sランクが237通ともっとも多い。また応募内定率も、Sランクが26%ともっとも高い。
累計会員数50万人突破を記念しpaizaが実態調査結果を発表、女性の割合増加・最高スキルランクの年収は平均83万円アップ

Sランクでは、1人当たりの平均アップ額が83万4000円に

転職時に提示される年収は、65%の人がアップしている。スキルが高い人ほど額が高く、Sランクでは1人当たりの平均アップ額は83万4000円に上った。

【コラム】「大量退職時代」はテックワーカーがキャリア代理人を利用するきっかけになるか?

大量退職時代(The Great Resignation、ザ・グレート・リジグネーション)は、テックワーカーに彼らの力を再認識させた。給料は上がり、人材需要は高まり、もしあなたがStripe(ストライプ)のエンジニアなら、アイデアのタネもないうちからプレ・シード会社を支援してくれる投資家が少なくとも3人いる。

しかし、求人熱の高まりは、進路決定をやさしくするわけでは決してない。もしあなたがShopify(ショッピファイ)のクリエイティブ・ディレクターか、Thrasio(スラシオ)のプロダクト責任者なら、オファーが殺到するだろう。

Free Agency(フリー・エージェンシー)は、2019年にSherveen Mashayekhi(シャービーン・マシャエキ)氏とAlex Rothberg(アレックス・ロスバーグ)氏が共同設立したスタートアップで、スタートアップ人材に対する熱望をビジネスの糧にしようとしている。テックワーカーも、ハリウッドスターやスポーツ選手が代理人から受けているのと同じようなサービスの恩恵に預かれるはずだ、とこのスタートアップは考えた。Free Agencyは、プロダクト、エンジニアリング、マーケティング、デザインなどの分野にわたり、中級から上級幹部レベルの候補者に代理人サービスを提供する。これまでに同社は、4700回の面接で候補者を支援し、交渉の結果獲得した提示給与総額は2億ドル(約229億4000万円)に上るとFree Agencyは推定している。

例えばFree Agencyが手がけたあるクライアントは、プロダクト担当シニアディレクターとして90万ドル(約1億円)の報酬を得て前職の総報酬から53%急増した。その過程で同社は、Snapchat(スナップチャット)、Coinbase(コインベース)、Lyft(リフト)などの企業と計21回の面接を設定し、クライアントは求職活動中1通の応募書類もメールも送る必要がなかった。

「当社のネットワークと仕事検索エンジンを使って、クライアントが寝ている間に面接を設定しました」とマシャエキ氏はメールに書いた。

このエージェントモデルは、ハリウッドでは比較的よく見かけるものだが、テック業界はサードパーティーを通じたキャリアマネージメントという発想をまだ受け入れていない。転職マーケットプレイスを設立し、Toptal(トプタル)やStella.ai(ステラ・エーアイ)などの求人会社で働いた経験を持つマシャエキ氏は、人材活用におけるテクノロジー利用は、伝統的に雇用者を喜ばすためのもので、従業員のためではないと話す。

「もしあなたが人材テック分野のエンタープライズ向けスタートアップのファウンダーなら、雇用者のところへ行って『私のツールを買ってください』と『マーケットプレイスにお金を払ってください』というほうが簡単です。なぜなら相手は問題の緊急性を理解しているから」と彼はいう。「雇用者は、そのお金が雇用と従業員維持の問題を解決することを理解していますが、候補者は歴史的にそういうお金の使い方をしてきませんでした」。

「スパム」を送ったり候補者の「パターンマッチ」をするために雇用者から料金を取るのではなく、Free Agencyは候補者の目的のみに焦点を当てている。同社は、候補者に初年度報酬の5~10%程度を請求して利益を得る。

一方雇用者は、Free Agencyが1週間に最大5人の候補者を紹介するサブスクリプションサービスを無料で利用できる。キャリアを管理するためにリクルーターに金を払えと従業員にいうのは大きな頼み事だ。しかも、候補者は今の職に満足していれば、そのサービスを少なくとも数年間、おそらくもっと長い間必要としない、

マシャエキ氏は、Free Agencyは入社時だけでなく、社内異動、能力向上など昇進サイクルを通じて候補者を手助けすることで価値を示すことができると強調する。現在同社は積極的にプロダクトを拡充しており、エンジニアリング・チームはキャリア・オペレーティング・システムの開発を進めている。そこではユーザーが求人情報や勤務評価、報酬評価などを行える。

もう1つの疑問は、Free Agencyは同社のサービスを最も必要としている人たちに提供するのか、という点だ。歴史的に過小評価され、概してネットワークとのつながりがなく重要な情報を得られない人たちだ。それとも、すでに十分つながりのある人たちをもっとよいところに着地させる手伝いをするだけなのか。

「率直に言って、Free Agentsに登録されている人たちの多様性の内訳は可もなし不可もなしです」とマシャエキ氏がメールで語った。同社は営業、顧客獲得、および市場開拓プログラムを展開してこれを変えようとしている。現在同社のプラットフォーム上にいる代理人は60%が女性で、20%が過小評価グループ出身だ。

こうした疑問符をつけられながらも、Free Agencyは2021年12月、1000万ドル(約11億5000万円)のシリーズAラウンドをアーリー・ステージ投資会社、Maveron(マベロン)のリードで完了した。さらに、Free Agencyのクライアント20社も出資しており、他にKevin Durant(ケビン・デュラント)氏のThirty Five Ventures、Resoloute、Bloomberg Beta、Kygo(カイゴ)氏のPalm Tree Crewなども参加した。同社は以前に、535万ドル(約6億1000万円)のシードラウンドも完了している。

それでもFree Agencyの最終テストは、管理された職探しを積極的に外部委託しようとい候補者を十分な数集められるかどうかだ。大量退職時代は、転職希望者がFree Agencyのようなサービスを試してみる推進力になっているかもしれないが、一度、波が去った後、求職者がどこまで確信を持てるかは不透明だ。

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画像クレジット:Gary Waters / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

リモートでのエンジニア発掘、採用、管理を支援するTuringが約98億円調達、転勤望まぬエンジニアからの需要急増

コーンフェリーの調査によると、テクノロジー業界のエンジニア人材を巡っては需要が供給を上回る深刻な状況が続き、2030年までに乖離は広がり、8500万件のポジションが埋まらない見通しだ。より包括的かつグローバルなアプローチで人材を発掘、採用、管理することでこの流れを食い止めることができると考えるスタートアップが、自社のプラットフォームの構築を継続するため、大規模な資金調達を米国時間12月20日に発表した。

AIを使ってエンジニアの発掘、評価、採用、入社、リモートでの管理(人事やコンプライアンスの面も含む)を「タレントクラウド」という大きなプラットフォームで行うTuring(チューリング)が、シリーズDラウンドで8700万ドル(約98億円)を調達した。このラウンドで11億ドル(約1250億円)のバリュエーションがついた。WestBridge Capitalがこのラウンドをリードし、前回の出資者であるFoundation Capital、新規投資家のStepStone Group、AltaIR Capital、戦略的投資家のHR Tech Investments LLC(Indeedの関連会社)、Brainstorm Ventures, Frontier Ventures, Modern Venture Partners, Plug and Play Scale Fundも参加した。このラウンドは応募超過となったため、同社はバリュエーション40億ドル(4520億円)でSAFEノートも募集した。こちらも応募超過となった。

今回の資金調達の背景には、Turingの力強い成長がある。世界各地にいる、転勤ができない、あるいは転勤を望まないエンジニアからの需要が急増したのだ。創業者でCEOのJonathan Siddharth(ジョナサン・シッダールト)氏はインタビューで、候補者総数が2020年1年間で9倍に増え、140カ国、100万人のエンジニアや開発者が、プロジェクトを探しているか、すでにプロジェクトに携わっていると話した。(2020年、同社が3200万ドル[約36億円]の資金調達を発表したとき、このプラットフォームには18万人の開発者がいるとのことだった)。現在、約100のテクノロジーと15の職種をカバーしており、エントリーレベルからエンジニアリング・ディレクター、CTO候補まで、幅広い職種をカバーしているとシッダールト氏はいう。

関連記事:エンジニアをリモートで調達・管理するAIベースのプラットフォーム開発のTuringが約33億円調達

人気の職種は、フルスタックエンジニア、フロントエンドやバックエンドの言語を専門とするエンジニア、そしてサイトの信頼性を高めるエンジニアだ。近い将来、Turingはプロジェクト管理などの隣接分野にも進出し、新製品への道を開く予定だ。企業がTuringを使って個々人をチームとして管理するのではなく、チーム全体を管理できるような製品だ。

このプラットフォームに対する需要も拡大している。顧客はテクノロジー企業から、ビジネスのさまざまな側面の運営や構築を支援するエンジニアを必要とする非テクノロジー企業まで、多岐にわたっており、Johnson & Johnson、Coinbase、Rivian、Dell、Disney、Plume、VillageMDなどが含まれる。

「私たちは今、リモートファーストの世界に生きており、誰もがその価値を享受しようと競っています」とシッダールト氏は話す。

Turingは、採用とリモートワークに関するいくつかの基本的な前提に基づいて設立された。その前提は現在の市場環境で受け入れられ、新型コロナウイルス感染症がおそらく恒久的に位置づけを変え、姿を変えた。パンデミック以前も、リモートワークが受け入れられることもあったが、多くの場合、企業は実際にインフラを整え、人々がオフィス環境で一緒に働けるようにするだけでなく、できるだけ多くの時間を過ごすよう奨励した。そのために、無料でおいしい食事、ビリヤード台やその他の娯楽、一眠りしたいときの仮眠室さえ用意した。

こうしたことは、オフィスカルチャーに関する凝り固まった考え方の中で広がっただけでなく、募集や採用にも影響を与えた。仕事のためには引っ越すものであったし、会社と従業員は大がかりなビザの手続きを経なければならなかった。しかも、ベイエリアのような特定のハイテク拠点への転居を求められることが多かった。これは、地域のインフラや家賃、市や町の大きな社会構成に大きな負担をかけることを意味した。

新型コロナがゲームを完全に変えた今、私たちはみな、仕事をするために、しかも仕事を首尾よく進めるために、そうしたことが本当に必要だったのかどうかを自問している。

Turingは、そのような問いかけに事実上、響き渡る声で「ノー」と答えるプラットフォームだ。

「Twitter、LinkedIn、Siemensはリモート化を進めており、その理由は明白です」とシッダールト氏は話す(いずれもTuringの顧客ではなく、リモート化を進める企業の例だ)。「今やエンジニアのプールを利用することができます。賢い人々は他の人がいないところに目を向けています。また、分散型チームの成功も証明されています」。

しかし、リモートマネジメントが簡単だというわけではない。エンジニアのパイプラインを構築し、彼らを評価する方法を考え、彼らと連絡を取り続ける必要がある。そのため、Turingが構築されたのは、発掘のためだけではなく、その他のハードスキルやソフトスキル支援のためでもある。シッダールト氏によると、ほとんどの人は有期のプロジェクトで登録するが、中には組織内のもっと長期的な、さらには正社員のポジションで働く人もいる。このような人材不足の問題に取り組んでいるのは、Turingだけではない。

Fiverr、Upwork、LinkedIn、その他多数のプラットフォームで、エンジニアがどこにいても簡単に探し出すことができる。Turingが構築したプラットフォームは、エンジニアと関わる際に生じる、より特殊なエンド・ツー・エンドのニーズに対応する(この点では、先にデザイナーやクリエイターの採用・管理プラットフォームで資金調達を行ったSupersideと少し似ている)。

StepStone GroupのパートナーJohn Avirett(ジョン・アビレット)氏は「世界中の開発者にすばらしい機会を提供するというTuringの野心的なビジョンは刺激的です」と声明で述べた。「『インテリジェント・タレント・クラウド』は、アクセスを民主化し、契約を結ぶ以上の永続的なつながりを作る驚くべき方法です。彼らは、そのプロセスを、個人と採用する企業のための長期的なキャリアプランにまで洗練させました」。

「Turingは、巨大な業界のあらゆる『脚』を製品化しており、その顔と認識を将来にわたって恒久的に変えました」とFoundation CapitalのAshu Garg(アシュ・ガルグ)氏は付け加えた。

画像クレジット:Busakorn Pongparnit / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

複業・転職マッチングOffers運営のoverflowが3億円のシリーズA調達、2022年開始を目指し人材管理SaaS開発

複業・転職マッチングOffers運営のoverflowが3億円のシリーズA調達、2022年開始を目指し人材管理SaaS開発

エンジニア・デザイナー・PMなどプロダクト開発人材の複業・転職マッチングプラットフォームOffers(オファーズ)を運営するoverflowは12月14日、シリーズAラウンドにおいて3億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、FFGベンチャービジネスパートナーズ、DNX Ventures、アカツキ「Heart Driven Fund」、三菱UFJキャピタルなど。調達した資金は、既存事業の成長および新規事業立ち上げを目的とした積極的な人材採用にあてる。

同社は2019年よりOffers(ユーザー登録ページ企業登録ページ)を開始し、これまで累計300社、1万人を超えるユーザーが利用しているという。今回、その次なるサービスとして、新たな人材管理SaaSを2022年の開始を目指し開発を進めると明らかにした。Offersと新サービスによって、採用から評価までワンストップで管理を行えるようにすることで、同社提唱の新採用手法「複業転職」を軸にした採用市場の活性化をリードするとしている。

転職した過去の顧客に接触できるようになる、予測マーケティングと営業インテリジェンスツールのUserGemsが約23億円調達

商談に関心を示さない相手に割く時間を削減しつつ、商談が成立する可能性がある見込み顧客と接触する方法を見つけることは、営業とマーケティングの世界においていわば究極のゴールである。この度、UserGems(ユーザージェムズ)という名のスタートアップが、AIとデータマッピングを組み合わせて、B2Bの営業・マーケティングで手応えが得られそうな顧客候補を予測、特定するプラットフォームを開発、2000万ドル(約23億円)を調達したことを発表した。このプラットフォームにより、以前に取引があったが現在は別の仕事に転職している顧客と接触することが容易になる。この種の課題に取り組むセールステックに好機が訪れているようだ。

今回のシリーズAラウンドは、Craft Ventures(クラフト・ベンチャーズ)がリードし、Battery Ventures(バッテリー・ベンチャーズ)とTiger Global(タイガー・グローバル)が新たに参加した。また、以前から同社に投資しているUncork Capital(アンコーク・キャピタル)や、個人エンジェル投資家も参加しており、同ラウンドの調達額は合計2240万ドル(約25億5000万円)となった。

UserGemsは現在、Procore(プロコア)、Medallia(メダリア)、UserTesting(ユーザーテスティング)、Sisense(サイセンス)、BrightTALK(ブライトトーク)など、90社ほどの中堅企業を顧客に持つ。今回調達した資金は、製品開発と人材に投資する予定だ。

サンフランシスコに本社を置くUserGemsには、アイデアやビジネスが予期せぬ場から生まれて創業に至ったという興味深い背景がある。

UserGemsのCEO兼共同創業者であるオーストリア人のChristian Kletzl(クリスチャン・クレッツル)氏は、ノースウェスタン大学でMBAを取得してシカゴに住んでいた時、当時欧州のPwC(ピーダブリューシー)で働いていた双子の弟Stephen(スティーブン)に、米国に移住して一緒にスタートアップを立ち上げようという話を持ちかけた。

彼らは、書籍、電化製品などの中古品をより効率的に販売するeBay(イーベイ)やCraiglists(クレイグリスト)と同じ業界に参入すべく、ShelfFlip(シェルフフリップ)というeコマースソリューションを開発した。当初、彼らはこのアイデアでY Combinator(Yコンビネーター、YC)に応募し、合格したのだが、ShelfFlipのコンセプトはそれ以降、跳躍する様子はなかった。

クリスチャンは次のように語る。「私たちはShelfFlipでYCに参加したが、YC参加中にそのアイデアを捨てた。YC参加中に方向転換をした企業が数多くあることを知って力を得て、もう一度、新しいアイデアを一から考えた。数多くのYC同期企業やその他の企業と話をして、SmartHires(スマートハイヤーズ)のアイデアを生み出した」。SmartHiresは、同じ投資ポートフォリオ内のスタートアップの情報を参照できるネットワークだ。

TechCrunchは以前にこちらの記事で、2015年冬期のYCに参加した彼らのSmartHiresについて取り上げている。

クリスチャンとスティーブンのクレッツル兄弟が開発したSmartHiresには、顧客(特に、クリスチャンが「SmartHiresのメインの柱」の1つと呼ぶ顧客)が、ある企業から別の企業へと転職していくのをトラッキングできるソフトウェアが含まれている。スタートアップでは社員の入れ替わりが激しい。そのため、クレッツル兄弟がこのアイデアをYC同期に話したところ、SmartHiresに対してというより、そのアイデアに対して熱心な反応が返ってきた。

「私たちが実際に立ち上げた会社よりも、そのアイデアに関心を持った人の方が多かった。そこからUserGemsが生まれた。つまり、YC参加中に私たちは2回も方向転換をしたことになる」とクリスチャンは回想する。

UserGemsは「営業とマーケティングの動向」と「労働力の最新の動き方」という2つの基本的なアイデアに基づいて開発されている。

労働力に関しては、終身雇用の時代のみならず、同じ企業に数年務める時代もすでに終わりを迎えて久しく、今は「大退職時代」に入っている、とクリスチャンは指摘する。

UserGemsは、Google検索からニュース記事まで多岐にわたる公開された情報源から情報を収集、処理しているが、同社がトラッキングのために利用するデータベースやウェブサイトによると、最低でも20%の人が毎年転職するという。つまり、ある人が現在就いている職に翌年もとどまっているかどうかを定期的に予測するのは難しいということだ。

営業・マーケティングについては、デジタル時代の最中でデータドリブン化が飛躍的に進んだ。人々に関する情報をかつてなく大量に入手できるようになり、大人数に対して一斉にマーケティング目的の接触を図る作業を管理するソフトウェアや、それを実行するチャンネル、その成果を測定する分析ソリューションなども、かつてなく増えている。それでも、企業についてすでに知っている、あるいはその企業が売るものにすでに関心を持っている人にアプローチした方が、営業・マーケティングが成功する「命中率」は、各段にアップする。

UserGemsは基本的に、これら2つの状況を合わせたソリューションだ。営業・マーケティングツールとして、企業がすでに使用しているCRMと統合し、その企業と以前取引があった顧客をトラッキングすることにより、その顧客が別の職場に移っても取引が継続できるようにして「マーケティング対象の最有力候補」を作る。「これこそ、営業プロセスで使える宝の山だ」とクリスチャンは語る。

UserGemsが行っていることは、ある意味では新しいことではない、とクリスチャンは指摘する。優秀な営業担当者は元来、有望な営業先の記録を常に保持して定期的にチェックしている。その作業を基本的に誰でも「大規模に」行えるようにしたのがUserGemsだ。

これは、UserGemsが構築したプラットフォームの第1段階にすぎない。営業先の情報が集まると、ユーザーが誰と接触しているかを機械学習アルゴリズムが学習しはじめ、類似商品の利用状況や他のシグナルに基づいて、次にアプローチすべき営業先がレコメンドされるようになる。そのようにして、ユーザーは購買へとつながる可能性がより高い営業先を見きわめることができる。

UserGemsは、一方では、ZoomInfo(ズームインフォ)、LinkedIn(リンクトイン)など、特定の企業にいる的確な見込み顧客を探せるプラットフォームと競合している。また、もう一方では、一般的に「予測的営業」と呼ばれるセールステック分野で、急激に成長中のスタートアップであるPeople.ai(ピープルドットエーアイ、新型コロナウイルス感染症の影響で多少成長に陰りが見えたものの、持ち直して現在の評価額は10億ドル(約1140億円)を超えている)、LeadIQ(リードアイキュー)、6sense(シックスセンス、現在の評価額は20億ドル[約2280億円]以上)などと同業である。しかし、この分野は、頻繁に転職が繰り返される現在の傾向がこれからも続き、そのことが営業面での課題をさらに複雑にすることを考えると、その課題を解決するためのよりスマートなアプローチが今後も注目を集める分野だと言える。それこそ、エンタープライズ向けスタートアップの大型追加投資ラウンドにいくつも参加してきたTiger Globalのような投資会社がUserGemsに早期から投資している理由の1つだ。

Craft Venturesのパートナー兼COOであるBrian Murray(ブライアン・マレイ)氏は、声明の中で次のように語っている。「B2B営業・マーケティング担当者は現在、営業先のことを深く理解する点で困難に直面している。彼らの大半が、同じ方法で見込み案件を創出し、一般的な内容の営業用メールやそれに続くメールを何百通も送っている。多くの営業チームが目標を達成できず、顧客獲得コストが跳ね上がっていくのはそのためだ。UserGemsは、過去のユーザーが将来の商機であり、急成長中のチームにとって紛れもない価値を持つ財産となって、パイプラインを拡大し、勝率を高め、顧客離れを減らすということを理解している」。

画像クレジット:MicroStockHub / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)