Brodmann17がローエンドCPUにも対応する自律コンピュータービジョン技術で1100万ドルの投資を獲得

自律走行車両と運転支援技術にとって、高効率なコンピュータービジョン・システムは決定的な意味をもつ要素だが、高価でかさばるハードウエアに依存しないコンピュータービジョン技術を提供する方法(ローエンドのCPUでも利用可能な深層学習ソフトウエア)を開発したあるスタートアップが投資ラウンドを確保し、今年末のサービス開始に向けてギアをシフトアップした。

Brodmann17(ヒトの脳の一次視覚野があるブロードマン領野に由来する)は、OurCrowdが主導するシリーズA投資として1100万ドル(約12億3000万円)を調達した。これには、Maniv Mobility、AI Alliance、UL Ventures、Samsung NEXT、Sony Innovation Fundが参加している。

Brodmann17の高速演算を実現する最先端技術は、物、道路、広範な景観を目で見て対処する人工知能を用いた車載機能全般に利用できるようデザインされている。これは、IntelのMobileye、Boschなど他のOEMが開発したサービス、BMWなどの一部の自動車メーカーと競合するものだ。

自動車は、以前にも増してハードウエアとして認識されるようになった。そのため、上記の企業だけでなく自律運転業界すべての企業は、技術界が経験したことのない巨大な課題に取り組んでいる。自律走行システムは高価であるばかりでなく、大量のエネルギーを消費し、自動車の大きな空間を占拠するため、どの企業も、この問題のひとつでも、できればすべてを解決できる道を探っている。さらに、現在のところ、多くの解決策はクラウドで演算を行うため、数テラバイトものバンド幅を消費し、運転シナリオに許容限度を超える遅延を発生させてしまう。

Brodmann17の宣伝文句によれば、その中核製品は、「軽量」にデザインされた、深層学習をベースとするコンピュータービジョン技術だという。ソフトウエアを基本とするソリューションであるため、小型の、ローエンドの車載プロセッサーでも利用でき、システムにどのようなLidar、カメラ、レーダーが実装されていても、完全に対応できるという(ただ、ローエンドのCPUで使えるとは言え、高速なCPUの場合とは比べものにならない)。

高速化の成績。Brodmann17のFPS。

計画では、Brodmann17の技術は、完全な自律走行を支援するものとして展開されることになっているが、自律走行車両が実用化するのはまだ何年も先の話だ。CEOのAdi Pinhas(深層学習とコンピュータービジョンの専門家であり、Ami​​r AlushとAssaf Mushinskyという2人のAI科学者と同社を共同創設した)は、最初の商業展開は、先進運転支援システム(ADAS)の形で行われるだろうと話している。これは現在、人が運転する自動車の前後のカメラで静止体と物体をより正確に認識できるよう、グローバルな大手自動車メーカーが取り入れようとしている技術だ。

だが、これは決して小さな魚ではない。ADASは、すでに多くの新型車で重要な装備となっているばかりか、その普及率と機能性は今後も成長を続ける。サードパティーから、まるごと、または一部が納入されることが多いADASシステムだが、2017年の時点で市場規模は200億ドル(約22兆3300万円)。2025年には920億ドル(約102兆7340億円)に達すると予測されている。

私は、その本社が置かれているテルアビブで、Brodmann17の創設メンバーと初めて会った。あれは2年前、その街で運営されているサムスンNEXTインキュベーターの片隅で、たった4人で活動していたときだ。彼らは、小さなプロセッサーに収まり、一般的な運転シナリオで遭遇する大小の物体のかすかな雰囲気の違いを大量に特定できる技術の最初のバージョンを見せてくれた。

それが今では、70名のスタッフを抱えるまでに成長した。そのほとんどが技術者で、独自技術の開発にあたっている。しかし、初期の開発ステージから一段上がるために、さらに社員を増やしてゆくという。

Pinhasは、ここ2年ほどの間に、技術界と大きな自動車産業が、自律運転車両のコンセプトに迫る方法に面白い変化が見られたと話している。

一方では、みんなが自律運転に関して可能なことを出し合っている。それは新しい試作車を作ってテストするというロードマップを加速させる明らかな助けになっている。もう一方では、そうした研究が増すことで、完全なシステムが出来上がるまでに、この先どれほどの研究開発が必要になるか、自律運転には今後どのような未知の要素が現れるのかという、現実的な見方ができるようになったという。

「今は、市場が一歩後退したかのように私には見えます。自律運転システムの開発を加速したいと誰もが望んでいますが、同時に、今年のCESで気がついたのですが、レベル5の話をする人が一人もいなかったのです」とPinhasは言う。レベル5とは、自律運転サービスにおける自律度の最高レベルのことだ。CESは、1月に開かれる大規模な技術系見本市で、次世代の輝かしい新サービスが初めて披露される場所でもある。「現状では、レベル4の開発に取り組みつつ、考えることが最適だと感じています。みんなでよく考えて、ロボットタクシーが、高度に洗練されたシナリオでどのように走らせることができるのかを確かめるのです」

そこに、Brodmann17はADASを入れ込む考えだ。それにより、現在実用化されているサービスに力を与える。そしてそのコンセプトを提示しつつ、将来の開発とサービスの足場を固める。

もうひとつ、Pinhasが指摘した面白い進展がある。これまでデータを演算し理解するためには、データのトレーニング量が重要だと考えられていたが、より賢いニューラルネットワークの開発に重点がシフトしているという。「これまでは『誰がいちばんたくさんデータを持っているか』でしたが、今はみんなが持っています」と彼は言う。「今は、トレーニングのためのアルゴリズムが重視されます。専門家たちは、(人間のように「思考する」ようデザインされた)ニューラルネットワークがすべてを解決すると、ずっと考えてきました。しかし今はまだ、そのネットワークのトレーニング方法を解明することが鍵となっている段階です。単にそこへデータを投げ込むだけでは解決しません」。まさにそこは、Brodmann17が長い間フォーカスしてきた分野であり、「他の企業も始めようとしている」ものだ。

Pinhasは、今日の自動車用コンピュータービジョン市場でもっとも進歩しているのはMobileyeだと認めている。とは言え、まだまだ世の中は進化の初期段階であるため、たくさんのイノベーションが誕生する余地があり、スタートアップにも大企業にも、インパクトを与えられる機会が十分にある。それこそ、投資家たちがBrodmann17に興味を抱く理由だ。そしてそれが、このスタートアップが次の段階に必要な資本を得るために、すでに次の投資ラウンドに向けて動き出している理由でもある。

「私たちは、Brodmann17が現在最高水準の深層学習AI企業であると確信しました。この会社には、非常に経験豊富な経営チームがあり、AIアルゴリズムの基礎に大きな飛躍をもたらした、卓越した技術の先進性があります」と話すのは、OurCrowdの共同経営者Eli Nirだ。「Brodmann17の技術は、AIの低計算量実装への扉を開きました。コストと複雑性と価格を大幅に低減し、数多くの分野、業界での利用が可能になります。私たちは、このラウンドを主導でき、この会社の未来の成功に貢献できることを大変に嬉しく思っています」

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(翻訳:金井哲夫)

アメリカ人は自動走行車を怖がっている

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今年1月、AAA(米国自動車協会)は18歳以上のドライバー約2000人を対象に電話調査を行い、ちょっと驚く結果を得た。回答者の75%が、「自分が乗った自動走行車に運転を任せるのは怖い」と答えた。20%はこれを受け入れ、残る5%は空飛ぶ車が出るのを待っていたいようだ。

Googleのテスト車のような完全自動走行車が、人間の介入なしに近くを走り回るという発想に慣れきるまでにはまだ数年かかりそうだ。一方では、ADAS(先進運転支援システム)と呼ばれる半自動運転システムが普及しようとしている。AAAの調査回答者の約半数が、車線離脱警告や、車線維持システム、および適応型クルーズコントロールを信頼している。2022年までに全車種に塔載される自動緊急ブレーキシステムを信頼している人はわずか44%で、自動駐車システムを信頼している人は36%にすぎなかった。

当然のことながら、自分の車で既にこれらのシステムを使っている人たちは、信頼している率が高い。自車でその技術を利用したことのある回答者の数字は、25~30ポイント跳ね上がる。例えば、車線維持システムを使っている人の84%が信頼しているのに対して、自分の車に装備していない回答者では50%だった。

完全自動走行車は殆どの人を恐れさせているが、上述のADAS機能については、次に買う車に付けたがっていると調査結果は示している。しかし、欲しい理由はみな同じではない。ベービーブーム世代は半自動化技術が欲しい理由に安全を挙げているのに対して、新世紀世代は利便性と最先端テクノロジーを欲しがっている。女性がストレスを減らすためにこうした機能を欲しいと答える傾向が強いというのは興味深い。

ADAS技術にさえ抵抗を示す人々の10人中8人以上は、ロボットより人間の方が運転がうまいことを理由に挙げている。(AAAの縦列駐車に関する調査結果は、この人たちの意見とは一致していない)。他に回答者の大きな部分を占める、若者ドライバーと子供を持つドライバーたちは、テクノロジーに余分なお金を払いたくないと答えた。また女性は、技術をよく知らないか、複雑すぎることを心配しているようだ。

今日の人たちがいくら心配しても、こうしたシステムはますます一般的になっていく。調査結果が示すように、ADAS機能を体験したこのあるドライバーは、ますますこれを信頼する。ひとたび車線維持を信じた人にとって、縦列駐車システムを信じるまでの道のりは短い。そしてそこから、ハンドルのない車の中でVR映画を見てくつろげるようになるのは、時間の問題だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ToyotaとLexusのほぼ全車種が2017年までに自動緊急ブレーキを標準で搭載

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先週、政府の道路交通安全局(National Highway Traffic Safety Administration, NHTSA)と、保険業界を代表する道路安全保険協会(Insurance Institute for Highway Safety, IIHS)が合同で、20社の自動車メーカーと三機関(これら二機関+合衆国運輸省)が、自動緊急ブレーキ(automatic emergency braking, AEB)を2022年までに標準装備に含めることで合意した、と発表したToyotaはこれら20社に含まれるが、今週、AEBに関して独自の先進的な姿勢を示した。ToyotaとLexusのほとんどの車種が、2017年までに標準でAEBを装備する、というのだ。2017年は、来年である。

すでに多くの車種がLexus Safety System+とToyota Safety Senseパッケージの一環としてAEBを提供しているが、それらは、水素燃料電池車Toyota Miraiを除き、標準装備ではなく有料のオプションだった。しかし来年の末(まつ)までには、Subaruとの共同開発車Toyota 86とLexus GS、およびToyota 4Runnerを除く全車種に、AEBが追加料金なしで搭載される。なお、ニューヨーク国際オートショーで披露されたPrius Primeは、なぜかSafety Senseが標準装備ではなくオプションになる。

AEBは、Toyotaの一連の安全装備の一環で、LexusとToyotaの25の車種に搭載される。両系列ともに衝突回避システムがあり、衝突の可能性を事前に検知して、運転者の反応が遅ければ自動的にブレーキを操作する。そのほかに、車線逸脱警告や自動ハイビーム機能などもある。

Hondaには同社独自のHonda Sensingと呼ばれるシステムがあり、AEBはCivic Sedanの全モデルに1000ドルのオプションとして提供されている。Toyotaは、そのHondaを大きく跳び越えてしまった、と言えるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

2016年ホンダ・シビック:2万ドルで先進運転支援システムを搭載

2016 Honda Civic Sedan

先日NHTSA(国家道路交通安全局)が、2022年までに自動緊急ブレーキ(AEB)システムをすべての新車に標準装備することを自動車メーカー20社と合意したと発表した時、多くの人たちは今でもこのテクノロジーを搭載した車がたくさん売られていることを指摘した。2016年時点で、これは高級車でのみ利用できる高価な装置だと思っているかもしれないが、Honda Civicセダンはそれに異議を唱える。Honda Sensingシステムは、同社の控えめながら人気の高いセダン全車種に、1000ドルで装着することができる。

まずこれは、自動運転ではない。2万440ドルの2016年Honda Civicの運転席で通勤中に昼寝することはできない。しかしそれは、 TeslaAudiでもまだできない。ここで言っているのは、先進運転支援システム(ADAS)と呼ばれているものだ。Honda Sensingは、その代表的なもので、以下のような機能を備えている。

  • 状況適応型クルーズコントロール(低速走行時の車間距離維持を含む)
  • 衝突被害軽減ブレーキ
  • 車線逸脱警報
  • 前方衝突警報
  • 車線維持補助
  • 路外逸脱抑制機能

技術者らは自動車での利用が一般的になってきたセンサーやカメラを利用することで、テクノロジーを通じて車を包む安全のクッションを拡大しようとしている。Honda SensingおよびAEBでは、Civicの前方にレーダーおよび走査カメラが装備されている。衝突の可能性を検知すると、音声と視覚を通じて運転手に前方衝突警報を発信する。もし運転手が素早く反応しなかいときは、衝突被害軽減ブレーキシステムが作動し、車両を完全に停止させる。同システムの精度は高く、他の車や歩行者を識別することが可能であり、これは完全自動走行への重要なステップだ。

自動走行車ではないものの、新型Civicセダンは高速道路走行中に車線のどこを走っているかを監視している。もし、方向指示器を使わずに中央からずれると、車は静かに元の位置に戻される。合図なしに車線を離れると、進路を戻すよう音声および視覚による警報が発せられる。そして、朝の通勤ラッシュでノロノロ運転している時は、センサーが前方車との間を安全な距離と速度に保つので、3秒ごとにブレーキを踏む必要がない。

HondaのChris Martinによると、同社はこの先進レベルのADASを1000ドルのオプション(Civicツーリングセダンには標準装備)で提供することが可能であり、それは過去2年のモデルで提供してきたからだといった。「量産を決断すれば、価格は下がる」とMartinは言う。Honda Sensingは、CR-V、PilotおよびAccordにも搭載される。

Honda Sensingは、自動走行車への一歩の先を行っている。Hondaは、2020年までの衝突軽減、および2050年までの無衝突を目標としている。この目標の副次効果として、2040年Honda Civicでは昼寝ができるかもしれない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook