サイクリストの安全性のために自動運転車が守るべき基準を同技術のArgoが発表

自動運転車技術を提供するArgo AI(アルゴAI)が、権利擁護団体のLeague of American Cyclists(LAB)と共同で、自動運転車がどのようにサイクリストを識別し対応すべきかについて示すガイドラインを作成した。自動運転業界がテスト段階から商業化へと移行し、今後数年でより一般的になろうとしている今、他のAV企業が模範とできるような基準を設定しようというのが目的である。

関連記事:Cruiseがサンフランシスコで無人運転ロボットタクシーサービスを開始

世界保健機関(WHO)の推計によると、毎年4万1000人のサイクリストが道路交通関連の事故で死亡している。自動運転車により大幅に減ると期待されている衝突事故だが、優れたコーディングがなければそれが叶うことはない。自動運転車は、発生し得る物体や状況を分類および特定する膨大なデータベースから学習する仕組みだが、Argoのガイドラインでは自転車、自転車用インフラ、自転車法に特に留意してモデルをトレーニングすることを重視している。

Argo AIの社長兼共同創業者であるPeter Rander(ピーター・ランダー)氏は声明の中で次のように話している。「コミュニティメンバーとの信頼関係を構築し、一貫した安全な行動によってサイクリストに安心感を与えられる自動運転システムを開発するための、当社の献身的な取り組みの一環としてこのガイドラインを作成しました。他の自動運転車開発者にもこのガイドラインを採用してもらい、リスクの高い道路利用者とのさらなる信頼関係を築いていきたいと考えています」。

現在、米国およびドイツの一部で自動運転テスト車両を運行しているArgoは、LABのコミュニティと連携して一般的なサイクリストの行動や車との関わり合い方ついての聞き取りを実施。ArgoとLABは、自動運転システムがサイクリストを検知し、サイクリストの行動を予測し、安定した運転を行うための6つの技術ガイドラインを策定した。

関連記事:ウォルマートがフォード、Argo AIと共同で自律走行車の配送サービスを開始

サイクリストは明確な対象クラスであるべき

サイクリストを個別のジャンルとして扱い、分類すれば、自動運転システムが学習すべき多様な自転車画像が収集できる。システムはさまざまな位置、方向、視点、速度の自転車画像を使って学習する必要がある。またこれにより自転車やライダーの形や大きさの違いも把握できるようになるとArgoは伝えている。

「スクーターや歩行者とは異なり、自転車の動きには自転車ならではの特徴があるため、自動運転システム(SDS)が自転車を正確に検出し、知覚システム内のコアオブジェクトとして自転車を指定する必要があります」と同社はいう。

サイクリストの典型的な動きを読む

自転車は予測不可能な動きをするものである。車線を超えたり、自転車をひいて歩いたり、道路上の障害物を避けるためにちょこちょこ動き回ったり、一時停止の標識で止まったり、歩道から道路に飛び出したりと、その動きはさまざまだ。優れた自動運転システムは、彼らの意図を予測するだけでなく、それに応じた対応を準備しておく必要があるのである。

「SDSには、サイクリストのあらゆる動きを把握した、サイクリストに特化した行動予測モデルを活用する必要があります。自動運転車がサイクリストに遭遇した場合、サイクリストが進路に選択するであろう複数の軌道を生成し、SDSがサイクリストの行動をより適切に予測して対応できるようにするのです」。

自転車インフラと地域の法律を地図上に表示

自動運転システムでは、周囲の環境を把握するために高精細な3Dマップを利用することが多い。Argoはその環境の一部として、自転車インフラや自転車に関する地域や州の法律が表示されるべきだと考えている。これにより、自転車レーンを塞いでいる停車中の車を避けるために車線に入ってきたり、赤信号を無視したりする自転車の動きを自動運転システムが予測し、自転車レーンから安全な距離を保つことができるというわけだ。

サイクリストから見たシステムの動きは一貫性があり理解しやすく、安全性が高くなければならない

サイクリストがAVの意図を明確に理解できるように、自動運転技術はごく自然な動きをするべきである。追い越しや合流、曲がる準備をする場合に、片側の車線を走行しながら車両の位置を調整したり、方向指示器を使用したりするというのがその例である。

また自転車の近くを走行する場合は「現地の制限速度に応じた保守的で適切な速度を守り、現地の法律と同等以上の幅を保ち、その幅と速度を維持できる場合にのみ自転車を追い越すべき」とArgoは伝えている。

また、自動運転システムは自転車が転倒した場合に備え、車を止めたりそらしたりできるよう自転車と一定距離を保つべきである。

不確実な状況に備え、積極的に減速する

自動運転システムは自転車の意図、方向、速度の不確実性をよく理解する必要があるとArgoは考えている。例えば、車両と反対方向に走行している自転車が同じ車線を走っている場合なら、車両が減速するように訓練すべきだと同社は提案している。

実際、自動運転システムは、不確実な状況のほとんどのケースで車両の速度を下げ、可能であれば車両とサイクリストの間に距離を置くべきだ。特に自転車を対象としていない場合でも、不確実な場合に速度を落とすというのはAV開発の世界ではすでにかなり標準的なことになっている。

サイクリングシナリオのテストを継続

自動運転の安全性を向上させるには、テストを継続的に続けるというのが一番の近道だ。自動運転技術の開発者は、自転車に特化したバーチャルテストとフィジカルテストの両方を継続すべきだとArgoとLABは提案している。

「バーチャルテストプログラムは、シミュレーション、リシミュレーション、プレイフォワードという3つの主要なテスト手法で構成され、自律走行車とサイクリストの関わり合い方を常に徹底的にテストする必要があります。これらのシナリオは、車両とサイクリストの行動の変化に加え、社会的背景、道路構造、視界の変化なども考慮する必要があります」。

通常、クローズドコースや公道で行われるフィジカルテストとは、開発者がシミュレーションを検証し、システムがバーチャルと同じように現実世界で動作することを確認するためのものである。Argoは、開発者がAVをテストする際には可能性の高いシナリオだけでなく「エッジケース」と呼ばれる稀な状況も想定すべきだと考えている。多くの都市の複数の公道でテストを行い、多様な都市環境からシステムを学習させることで、レアケースとコモンケースの両方を生成することができるのである。

安全性を極め、世間に受け入れられるために

より多くのAVが道路を走る日を迎えるためには、社会から受け入れられるという大きなハードルを越える必要があるが、現時点で自動運転車両の安全性に納得している人はさほど多くない。実際、市場調査会社Morning Consult(モーニング・コンサルト)の調査によると、約半数の人がAVの安全性は人間が運転する車に比べてやや劣る、あるいはかなり劣ると答えている。

自動車をすべての道路利用者にとって安全なものにするというのは、単なる前半戦に過ぎない。Argo AIのような企業は、人々が自分たちの車を安全だと信じてくれるように説得しなければならないのである。そのためには、業界全体で安全対策を標準化することが1つの方法なのかもしれない。

画像クレジット: Jared Wickerham/For Argo AI

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

ウォルマートがフォード、Argo AIと共同で自律走行車の配送サービスを開始

米国時間9月16日、Walmart(ウォルマート)、Argo AI(アルゴAI)、Ford(フォード)は自律走行車による配送サービスをテキサス州オースティン、フロリダ州マイアミ、ワシントンD.C.で開始すると発表した。

顧客はWalmartの注文プラットフォームから食料品などをオンラインで注文する。ArgoのクラウドベースのインフラストラクチャがWalmartのオンラインプラットフォームと統合されて、注文が転送され顧客の自宅へ配送するスケジュールを決める。開始当初は商用サービスの提供は各都市の一部のエリアのみで、その後広げていく。テストは2021年中に開始する。

WalmartとFordは2018年秋に配送サービスのPostmatesとともに限定的なテストを実施した。このテストはマイアミでで実施され、自動運転車を想定した車を使って食品配送に関するユーザーエクスペリエンスを研究するものだった。Argo AIはこのテストには関わっていなかった。

今回の連携ではArgo AIの自動運転テクノロジーを統合したFordの車両が使われる。Argo AIの共同創業者でCEOのBryan Salesky(ブライアン・サレスキー)氏によれば、今回の目的は自律走行車による配送サービスの可能性を広く示すことだという。

今回の発表には、自律走行車を使って人や場合によっては荷物を運ぶ商用サービスを開始するための、Fordの研究と開発の方針が現れている。同社は専用の自律走行車を現実にどう運用するかについてビジネス面のテストをしてきた。2016年にはArgo AIを支援し、Argo AIとともに自動運転システムの開発とテストをしていた。

今回の発表から、オースティンとマイアミが初期の商用化計画の中心地となることもわかる。

2021年夏にArgo AIとFordは、マイアミとオースティンを皮切りに今後5年間で多くの都市でLyftの配車サービスネットワークに1000台以上の自動運転車を展開する計画を発表した。Argoの自律走行テクノロジーが搭載された初のFordの自動運転車は、2021年中にはマイアミでLyftのアプリから利用できるようになると予想される。

画像クレジット:Photo by Jared Wickerham/Argo AI

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Kaori Koyama)

フォルクスワーゲンとArgo AIが初のID Buzz自動運転テスト車両を公開

小型商用車の開発と販売を手がける独立したVWブランド、Volkswagen Commercial Vehicles(フォルクスワーゲン・コマーシャル・ビークルズ)と、自動運転テクノロジー会社のArgo AI(アルゴAI)は米国時間9月5日、ID Buzz AD(自動運転)の初バージョンを公開した。

ミュンヘンで開かれるイベント、IAA MOBILITY 2021に先駆けて開催されたVWナイトイベントで、2社は共同開発した全電動自動運転のバンを今後4年間でテスト・商業展開する計画を明らかにした。計画している最初のテスト車両5台の1台であるプロトタイプの試験はすでに始まっていて、ミュンヘン近くのノイファーンにあるArgoの開発センターならびにミュンヘン空港近くにある同社の9ヘクタール(9万平方メートル)あるクローズドコースで続けられる。試験は、欧州の運転コンディション特有のさまざまな交通状況と、米国にあるArgoのテストトラックを想定して行われる。

「当社の5年にわたる開発と、大きく、複雑な米国の都市でのオペレーションから学んだことに基づいて作り上げており、MOIAとの自動運転商業ライドプールサービスの立ち上げ準備のためにミュンヘンの路上で間もなくテストを開始することを楽しみにしています」とArgo AIの創業者でCEOのBryan Salesky(ブライアン・セールスキー)氏は声明文で述べた。

モビリティソリューションで地方自治体や地域の公共交通事業者と協業しているVW Groupの子会社であるMOIAは、2025年に自動運転ライドプールシステムの一環としてハンブルグでID Buzzを商業展開する。ライドプールサービスは都心部の混雑を和らげるために自律システムのパワーを活用する。

自動運転専門の部門を別に設け、Argo AIの株式を獲得したVolkswagen Commercial Vehiclesはイベントで、自動運転システム経由のライドシェア(相乗り)が交通の流れの管理でいかに役立つかデモンストレーションしてみせた。

「LiDAR6台、レーダー11台、カメラ14台を車両のあちこちに備える環境認識システムは人間のドライバーが運転席からとらえることができる以上のものを把握できます」とVolkswagen Commercial Vehiclesの自動運転責任者、Christian Senger(クリスチャン・センガー)氏はイベントで述べた。

VWは2017年に、ファミリーキャンパーバンとして懐かしさを呼び起こすクラシックなマイクロバスに未来的な要素を加えたID Buzzをコンセプトカーとして発表した。Buzzのルーフの上に設置されているArgo独自のセンサーであるArgo LiDARなど、自動走行に必要なすべてのものを含んでいる最終プロダクトの外観は、アイコン的キャンパーとは少し異なる。Argo AIによると、同社のLiDARは1300フィート(400メートル)以上離れたところにある物体を検知できる。Argoは4年前にLiDAR企業のPrinceton Lightwaveを買収した。これによりArgoは、黒い車両など低反射率の物体をとらえて感知し、そして正確に認識することができるよう、最小の軽粒子である単一光子を感知できる特許取得済みのGeigerモードテクノロジーを備えた新しい高精度センサーを製造できるようになった。

関連記事:Argo AIの新型LiDARセンサーでフォードとVWによる自動運転車の大規模な実用化が加速する予感

VWの声明文によると、Argo AIのシステム全体は、コンピューターが車両の周囲360度を見ることができるようにするセンサーとソフトウェアで構成され「歩行者や自転車、車両の動きを予測し、経験を積んだドライバーが運転するように車両が安全かつ自然に走行することができるよう、エンジン、ブレーキ、ハンドル操作システムに指令を送る」。

Argoの技術が人間輸送に今後使用される例は今回が初ではない。ArgoとFord(フォード)は2021年7月、今後5年間で少なくとも1000台の自動運転車両を配車サービスLyft(リフト)のネットワークを使ってマイアミやオースティンといった都市で展開する計画を発表した。また同月、カリフォルニア州公共事業委員会はArgoにドライバー付きAVパイロット許可証を発行し、Argoはカリフォルニア州の公道でテストできるようになった。VW GroupがArgo AIへの26億ドル(約2860万円)の投資を最終決定してからほぼ2年、Argo AIの直近のバリュエーションは75億ドル(約8240億円)となった。

関連記事
Argo AIがカリフォルニア州で自動運転車に一般客を乗せる許可を取得
フォードとVWが出資する自動運転スタートアップArgo AIの評価額は7830億円

画像クレジット:Volkswagen Group

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

Argo AIがカリフォルニア州で自動運転車に一般客を乗せる許可を取得

Ford(フォード)とVW(フォルクスワーゲン)が投資する自動運転車技術のスタートアップであるArgo AI(アルゴAI)は、カリフォルニア州の公道で同社の自動運転車に人々を無料で乗せることができる許可証を取得した。

承認された申請書によると、カリフォルニア公益事業委員会(CPUC)は7月初め、いわゆる運転手付き自動運転車の試験許可証を発行した。米国時間7月30日に同委員会のウェブサイトに掲載された。ArgoとFordはその1週間前、マイアミとオースティンを皮切りに、今後5年間で多くの都市でLyft(リフト)の配車ネットワークに少なくとも1000台の自動運転車を投入する計画を発表していた。

この許可は、州の自動運転車乗客サービス試験の一環だ。Argoは従来の自動運転車試験を超えて拡大を目指す少数の企業グループの一員となった。この動きは、業界、あるいは少なくとも一部の企業が商業運転に向けて準備を進めていることを示している。Argoは、2019年からパロアルト周辺でフォード車を使って自動運転技術の試験を行っている。同社は現在、カリフォルニア州で約12台の自動運転試験車両を有する。また、マイアミ、オースティン、ワシントンDC、ピッツバーグ、デトロイトでも自動運転試験車両を保有している。

Aurora、AutoX、Cruise、Deeproute、Pony.ai、Voyage、Zoox、Waymoが、CPUCの運転手付き自動運転車乗客試験プログラムへの参加許可を得た。このプログラムでは、人間の安全管理者がハンドルを握ることが義務付けられている。この許可を得た企業が乗車料金を請求することはできない。

Cruiseは、CPUCから運転手なし許可証を取得した唯一の企業だ。この許可証があれば、人間の安全管理者がハンドルを握らなくても試験車両で乗客を送迎できる。

CPUCの運転手付き許可証を取得することは、カリフォルニア州における商業化への道のりの一部にすぎない。同州は、CPUCとカリフォルニア州自動車局(DMW)の規制のハードルを越えることを求めている。それぞれの機関は独自の段階的な許可制度を設けている。人間が運転しないロボタクシーの乗車料金を徴収する前に両機関の規制のハードルを越えなければならない。

DMVは、自動運転車の公道試験を規制し、許可証を発行している。DMWが発行する許可証には3つのレベルがある。まず1つ目は、安全管理者が運転する自動運転車の公道試験を許可するもの。60社以上がこの基本的な試験許可を取得した。

次の許可証で運転手なしの試験を行うことができ、その後、商業運転を行うための展開許可証が発行される。人間の管理者がハンドルを握らない運転手なし試験許可証が新たなマイルストーンであり、州内で商用のロボタクシーや配送サービスを開始しようとする企業にとって必須のステップだ。AutoX、Baidu、Cruise、Nuro、Pony.ai、Waymo、WeRide、Zooxは、DMVから運転手なし許可証を取得した。

DMVでの最後のステップは、Nuroだけが達成している展開許可だ。この許可によりNuroは商業規模で展開している。Nuroの車両は乗客を乗せず、貨物だけを積載できるため、CPUCの許可プロセスを回避することができる。

一方、CPUCは2018年5月、自動運転車で乗客を輸送するための2つの試験プログラムを認可した。Argoが許可を獲得したばかりの運転手付き自動運転車乗客サービス試験プログラムは、企業が特定のルールに従う限り、自動運転車による配車サービスの運営を認めるものだ。乗車料金の請求はできず、人間の安全運転手による運転が必要で、一定のデータを四半期ごとに報告しなければならない。

CPUCの2つ目の試験では、運転手なしの乗客サービスが可能で、Cruiseが2021年6月に獲得した

このように、商用のロボタクシーを実現するためには、DMVとCPUCからの許可をすべて取得する必要がある。

[原文へ]

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi