英国宇宙庁が不要な衛星2機の除去プログラムに日本の宇宙スタートアップ「アストロスケール」を選定

スペースデブリ(宇宙ごみ)除去などの軌道上サービスに取り組むアストロスケールホールディングスは10月26日、英国の宇宙庁UKSAの低軌道上の非協力物体(運動制御が不能になったドッキング機能を持たない衛星)2基の除去を検討するプログラム「COSMIC」(コズミック)に選定されたことを発表した。これは、ドバイで開催されている国際宇宙会議においてUKSAが行った発表を受けてのこと。

アストロスケールは2020年8月25日、軌道上での模擬デブリ(クライアント)の捕獲に成功している。この際使用された、民間企業としては世界初のデブリ除去技術実験衛星「ELSA-d」(エルサディー)のミッションで培われた技術がCOSMICで活かされる。ELSA-dは、本体である捕獲機(サービサー)と模擬デブリとをともに宇宙に打ち上げ、捕獲実験を行った。デブリは磁石でサービサーとドッキングする仕組みになっている。現在、ELSA-dは、サービサーの自律制御機能による「非回転状態のクライアントの捕獲」や「回転状態のクライアントの捕獲」の実証実験の準備が進められている。

これと並行して、欧州宇宙機関(ESA)の通信システム先端研究「Sunrise」(サンライズ)プログラムにおいて、複数のクライアントを捕獲し除去できるELSA-M(エルサ・エム)の開発を、ロンドンの通信衛星コンステレーション企業OneWebと進めている。

COSMICでは、このELSA-Mのサービサーを仕様変更して使われる。いったん低軌道に打ち上げられたELSA-Mは、クライアントの軌道へ移動してクライアントを捕獲し、廃棄用軌道まで降下してクライアントを大気圏に放出する(最終的に大気圏に再突入させることで燃え尽きさせる)。そして次のクライアントの軌道まで移動して、捕獲、放出を繰り返す。このミッションでは、軌道上での修復作業も想定されていて、宇宙空間での宇宙状況把握の実証実験も行われるとのことだ。

日本を本社と研究開発拠点を構えるアストロスケールは、イギリス、アメリカ、シンガポール、イスラエルに事業展開をしている。

ウォズニアック氏の宇宙企業「Privateer」は混雑化して危険な宇宙のGoogleマップを目指す

現在、地球低軌道上(LEO)には、壊れた衛星やロケットの破片、多段式ロケットや宇宙ミッションの残骸など、何百万個もの宇宙ゴミが散乱しているが、これを一掃することを目的としたベンチャー企業が次々と誕生している。Steve Wozniak(スティーブ・ウォズニアック)氏と共同で宇宙ベンチャーを設立したAlex Fielding(アレックス・フィールディング)氏によると、LEOの清掃は重要な課題だが、1つ問題があるという。宇宙ゴミ(スペースデブリ)の多くは、実際にどこにあるのかわからないということだ。

「軌道清掃企業は、地球低軌道上にあるほとんどの物体がどこにあるのか一致した意見がなく、それぞれの瞬間に3~400km程度の精度以上で把握することができません」とフィールディング氏はTechCrunchに語った。

フィールディング氏とウォズニアック氏は、新会社「Privateer」を設立して、この知識のギャップを解消しようとしている。これまでステルス状態にあったこの会社は、9月にウォズニアック氏がYouTubeにアップした1分間のプロモビデオへのリンクをツイートしたことで注目を集め、Privateerは宇宙空間の物体の清掃に力を入れるのではないかとの噂が広まった。

しかし、それは微妙に違っていた。「Privateerは実際には、宇宙をきれいにするという目標でスタートしたわけではありません」とフィールディング氏は説明する。「私たちは、宇宙のGoogleマップを作ることを目指してスタートしたのです」。

フィールディング氏とApple(アップル)の共同創業者ウォズニアック氏のコラボレーションは、今回が初めてではない。2人は2000年代初頭に、物体の物理的な位置を追跡する技術を開発する無線ハードウェア企業Wheels of Zeus(WoZ)を設立している。

「20年前、私たちがそれ(WoZ)を始めたとき、宇宙にあったものの半分はゴミでした」とフィールディング氏は語る。その後、状況はさらに悪化していった。「今の世界では、(軌道上には)もっともっと多くのものがあり、その中でも特に危険なものはほぼすべてが低軌道にあり、非常に高速で移動していて、ほとんどの場合よく追跡されておらず、理解されていません」。

宇宙ゴミの危険性は依然として存在する。5月、国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士が、モジュールの1つに取り付けられたロボットアームに幅5mmの穴が開いているのを発見した。アームは機能していたが、ISSが衝突を避けるための操作をしなかったことから、当たった物体は、米国宇宙軍の宇宙監視ネットワークが追跡できないほど小さい軌道上の数百万個の物体の1つであると考えられる。

Rocket Lab(ロケット・ラボ)やSpaceX(スペースX)のような打ち上げ企業が、かつてNASAのような公的機関が独占的に行っていたサービスを今は提供しているのと同じように、Privateerはこうした膨大なデータギャップを埋められるかもしれない。

Privateerは、最初から早いペースで取り組みを進めている。同社は、2022年2月11日に「Pono 1」と名づけられた最初の小型衛星を打ち上げる予定だ。Pono 1の大きさは約3U(約30cm)で、非光学式センサー30個と光学式カメラ12個の合計42個のセンサーを搭載する。非光学式センサーは、4ミクロンの精度を実現する。衛星本体は炭素繊維を用いて3Dプリントで作られ、そうすることによりチタンと同等の剛性を持つ単一の固体部品になるとフィールディング氏はいう。推進剤の代わりに、磁気トルカという衛星姿勢制御用の電流を発生させる小型装置を使って方向を制御する予定だ。

Pono 1衛星は4カ月間だけ運用され、そのあと軌道離脱して地球の大気圏に戻り焼失する。2番目の衛星であるPono 2は、4月末に打ち上げられる。Privateerは、両機の打ち上げのためにすでに打ち上げ業者を決定し、必要な承認を得ている。

これらの打ち上げに加えて、Privateerは、軌道上のロジスティックスとサービスを提供するスタートアップであるAstroscaleとすでに協力関係にあり、現在、宇宙ゴミ除去衛星のデモを行っているとフィールディング氏は述べている。また、Privateerは、米国宇宙軍とのパートナーシップも締結した。

フィールディング氏は、宇宙の完全なGoogleマップを追求しないことは、単なる怠慢ではなく、命取りになるかもしれないという。「私は普段は楽観主義者ですが、今でも非常に恐れているのは、遅すぎたのではないか、2年以内に軌道上で最初の有人宇宙飛行士の犠牲者が出るのではないかということです。そう考える理由は、地球低軌道での(物体や活動の)急増にあります」。

関連記事:日本の宇宙スタートアップAstroscaleが宇宙で軌道上デブリをつかまえて放すデモに成功

画像クレジット:Maciej Frolow/Photodisc / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

日本の宇宙スタートアップAstroscaleが宇宙で軌道上デブリをつかまえて放すデモに成功

米国時間8月25日、Astroscaleは現在軌道上にある同社の宇宙掃除のデモ用衛星が、磁石を使ったシステムでクライアントの宇宙船をつかまえて放す作業に成功し、今後の前進に向けて重要な一歩を刻んだ。

2021年3月に打ち上げられたELSA-d(End-of-Life Services by Astroscale-demonstration)ミッションは、同社の軌道上のデブリ除去技術を検証することを目的としている。デモを行なうための装備等一式はカザフスタンからソユーズロケットで打ち上げられ、宇宙ゴミを除去する「サービサー」と、かんじんの宇宙ゴミを模した「クライアントという2つの宇宙船が含まれている。

関連記事:東京の宇宙スタートアップAstroscaleが軌道上デブリ除去衛星「ELSA-d」を打ち上げ

同社の説明によると「宇宙ゴミ除去と一般的な軌道上サービスにおける大きな課題は、クライアントのオブジェクトをドッキングしたりつかまえることです。今回のテストデモでは、故障した衛星などのクライアントをドッキングするELSA-dの能力の実証に成功しました」。

本日のデモンストレーションでは、Astroscaleの将来の製品の見本でもあるサービサーが、他の宇宙船を磁力でつかまえて放すことに成功した。

しかしELSA-dのデモのミッションはこれで終わりではない。Astroscaleがそれを完全な成功と呼べるためには、同じつかまえて放す課題をさらに3回クリアする必要がある。さらにその次には、サービサーは相当な距離から、クライアントを安全に放して再び捕捉する必要がある。その後、Astroscaleは同じ放してつかまえる過程を試みるが、今度はクライアントの衛星が、コントロール不能で転がり落ちていく宇宙のオブジェクトをシミュレートする。そして、同社が「診断とクライアント捜索」と呼ぶ最後の捕捉デモでは、サービサーがクライアントを至近距離で点検していったん離れ、また近づいてつかまえる。

画像クレジット:Astroscale

軌道上のデブリという問題に取り組んでいる企業は数社あるが、デブリ除去のデモミッションを打ち上げたのは同社が初めてだ。NASAによると現在、国防総省のグローバル宇宙監視センサーは2万7000ほどの軌道上デブリを追跡している。宇宙船の打ち上げと関連の費用が下がり続けているため、宇宙ゴミの量は今後増え続ける一方だろう。

以下の動画では、ミッションのオペレーションチームがテストのデモを説明している。

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画像クレジット:Astroscale

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

東京の宇宙スタートアップAstroscaleが軌道上デブリ除去衛星「ELSA-d」を打ち上げ

日本の宇宙スタートアップAstroscale(アストロスケール)が、軌道上のデブリを捕獲して安全に除去することを目的とする、同社のELSA(End-of-Life Services by Astroscale、エルサ)技術の実証ミッションのために、ELSA-d(エルサd)衛星を打ち上げた。Astroscaleの実証実験パッケージには、2つの独立したペイロードが搭載されている。1つは、未来の本番宇宙船の役目の「捕獲衛星」、もう1つは、将来は顧客の依頼を受けて軌道から除去される役目の「デブリ模擬衛星」だ。

このAstrocaleのペイロードは、18カ国から集められた他の商業衛星38基とともに、カザフスタンを米国時間3月22日早朝に離陸したソユーズロケットを使って打ち上げられた。2013年に日本人起業家の岡田光信氏が創業したAstroscaleの宇宙船が、軌道に乗るのは今回が初めてだ。Astroscaleは、2017年に小規模デブリの測定を目的とした超小型衛星を打ち上げたが、発射ロケットのプログラムにミスがあったため、そのミッションでは18個の衛星すべてが軌道に到達できなかった。

今回のELSA-dミッションは、さらに野心的な取り組みであり、Astroscaleが最終的に商業化を目指している技術の、軌道上での積極的なデモンストレーションを行うものだ。ミッション内容には、捕獲衛星と模擬衛星の間でドッキングとリリースを繰り返す操作が含まれていて、模擬衛星には捕獲衛星のドッキング手続きを支援するための強磁性プレートが組み込まれている。

Astroscaleは、今回のデモンストレーションで、捕獲衛星が顧客役の模擬衛星を探し出して位置を特定し、損傷の有無を検査した上で、上述のようにドッキングを行う。なおその際には、対象が安定した軌道を維持している場合と、姿勢を制御できずに宇宙空間で回転している場合の両方のシナリオを想定している。

英国内に、Astroscaleが設置した地上センターから制御されるこのミッションには、多くのものがかかっている。長期的な商業活動だけでなく、スタートアップはJAXAと提携して、日本の宇宙機関史上初の軌道上デブリ除去ミッションを行うことになっている。このミッションでは、ロケットの使用済み上段ロケットに相当する大きな物体を、軌道上から除去する世界初の試み行う予定だ。

カテゴリー:宇宙
タグ:Astroscaleスペースデブリ日本

画像クレジット:Astroscale

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(文:Darrell Etherington、翻訳:sako)

日本の宇宙開発スタートアップAstroscaleがスペースデブリ除去実証衛星を2021年3月のミッションに向け輸送

日本の宇宙開発スタートアップであるAstroscale(アストロスケール)は、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地にELSA-d宇宙船を輸送し、2021年3月の打ち上げ(未訳記事)に向けてソユーズロケットに搭載する予定だ。このミッションはアストロスケールにとって特に重要なものであり、同社が提案している宇宙持続可能性サービス事業の基礎となるスペースデブリの除去技術を、初めて宇宙空間で実証することになる。

アストロスケールによるELSA-dは、軌道上のスペースデブリ除去に関する同社のビジョンを可能にする2つの主要な技術を実証する小型衛星ミッションだ。1つ目はGPSやレーザー測位技術を含む測位センサーを使用し、スペースデブリの位置を特定してドッキングするというものとなる。今回はいわゆる「捕獲機(サービサー)」衛星が、デブリの代わりになる同時に打ち上げられた「ターゲット」衛星を見つけて接続する。

アストロスケールはミッションの最中に何度も「サービサー」による「ターゲット」とのドッキングとリリースを行い、宇宙空間を漂う物体を識別して捕捉し、制御軌道へと離脱する技術を示そうと考えている。これにより、同社のビジネスモデルにおける技術の実現可能性を証明し、将来の商業運用に向けての準備することになる。

アストロスケールは2020年10月に5100万ドル(約52億8000万円)を調達したと発表しており、これまでの調達額は1億9100万ドル(約197億8000万円)となっている。また6月にはEffective Space SolutionsのスタッフとIPを取得(未訳記事)しており、ELSA-d宇宙船が実証するLEO事業に加えて、静止衛星サービス部門を構築するために使用する予定だ。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Astroscale

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

2021年には軌道上での燃料補給や製造が理論から現実へ変わる

軌道上を周回中の人工衛星や宇宙船に燃料補給したり、修理したり、さらには新しい機能を追加するというアイデアは、一般的には「理論としては素晴らしい」ものとされてきた。しかし、Maxar Technologies(マクサー・テクノロジーズ)、Astroscale(アストロスケール)、Orbit Fab(オービット・ファブ)のリーダーは、TechCrunch主催のTC Sessions: Spaceにて、2021年はそれが現実になる年だと語った。少なくとも現実的にはなるという。

ひとたび軌道に打ち上げられた衛星は、通常は減価償却する一方の固定資産とみなされる。次第に時代遅れとなり、やがて燃料が尽きれば軌道を外れる運命にある。だが、少し調整してやれば、いろいろなかたちで、桁外れに高価な宇宙船の寿命を延ばすことができる。新しい衛星を打ち上げるコストを思うと、そうしたビジョンが魅力的に見えてくる。

「打ち上げコストは下がり、同時に打ち上げ頻度、つまり宇宙に物を送り届けるケイデンスが高まっています」とMaxar Technologiesのロボティクス担当ジェネラルマネージャーLucy Condakchian(ルーシー・コンダクチェイン)氏は指摘した。「なので、小さな部品や、小さなペイロードや、その他もろもろのものが打ち上げられるようになれば、宇宙で物を組み立てることが可能になります。衛星の役割を変更することもできるでしょう。実際に動力システムの交換、カメラ装置やコンピューター関連要素の交換など、どんなことも、上に行ってやればいいのです」。

それこそが、MaxarとNASAが来年、これまでRestore-L(レストアエル)と呼ばれていたOSAM-1(オザムワン)で実証実験を進めようとしていることだ。この宇宙船は、軌道上でアイテムの保守、組み立て、製造を行う。ちなみにOSAMという名称は、Orbit(軌道)、Service(保守)、Assemble(組み立て)、Manufacture(製造)の頭字語だ。

「私たちに何ができるのかを宇宙で実証できれば、『はい、できますよ』という段階に達して、その道のずっと先にある好機の展開が期待できるようになります」とコンダクチェイン氏。同社の火星着陸専用ロボットアームは汎用性が実証されているので、その衛星用アームも幅広く活躍できると考えて差し支えないだろう。

Maxarは将来の宇宙船への機能の追加を目指しているが、それに対してAstroscale US(日本企業エアロスケールの米国法人)の社長Ron Lopez(ロン・ロペス)氏は、今の老朽化した宇宙インフラに期待を寄せている。

「軌道上での点検サービスを開発している企業はたくさんあります。それは、すでに軌道上を巡っているが、そうしたロボティック機能を持たない、あるいは将来、衛星のオーナーや運用者が軌道に留まらせるか否か判断する際に、そのようなロボティック機能を追加できる予算がない衛星を対象としています」と彼は説明する。

「この能力には、さまざまな使用事例があります」と彼は続けた。「例えば、衛星に異常が発生して保険を請求するときは、何が起きたのか、そして宇宙の状況をしっかり見極める必要があります。宇宙を飛び交う物体の増加が、みなさんの大きな懸念要素になっていることも、私たちはもちろん認識しています。何がどこで、何をしているのか、またそれが宇宙の他のオブジェクトに危険を及ぼさないかどうかを把握することが、非常に重要です」

シリーズE投資で5100万ドル(約53億円)を調達したAeroscaleは、数カ月以内に、軌道上の宇宙ゴミ(スペースデブリ)を検知して除去する実証実験ミッションを開始する。ゴミと言っても、ISSの船外活動で落とした予備のネジみたいなものではなく、軌道上に放置され、仕事もなく漂い続けている運用を終えた衛星などだ。それは何年間も宇宙に居座る。それらは、ちょっと押してやりさえすればよい。それで地球低軌道は、安全できれいになる。

Orbit FabのCEOで創業者のDaniel Faber(ダニエル・ファーバー)氏は、そもそもそうした状況に陥らないよう「宇宙のガソリンステーション」と彼が呼ぶものを構築しようとしている。ガソリンスタンドと言っても、地上にあるものとは少し違う。むしろ、ジェット機に燃料を補給する空中給油機に近いと言えば、なんとなく理解してもらえるだろうか。

「Orbit Fabが想定する未来は、宇宙経済が大いに協力的に賑やかになることです。すべての宇宙船にロボットアームを装着したところで、それは実現しません。何か不具合が発生したり壊れたりすれば、牽引トラックがどうしても必要になります。ロボットによる複雑なサービスも必ず必要になります。しかし現状では、点検保守を受けるように作られているものはありません。そのため、どんなタイプの宇宙船でも牽引できるトラックが必要なのです」と同氏は話す。

「衛星用ガソリンタンカーの製造は叶いませんでした。衛星に給油口がないからです。なので、私たちはそれを作りました」と同氏は同社のRAFTIコネクターについて説明した。現在、数十の提携企業がこれを各社の衛星に採用することにしている。「顧客の衛星に燃料補給できるようにするためには、その他の製品や技術を開発する必要もありました」。

同社のタンカーは、初めての軌道上テストを行う。その時期はもうおわかりだろう。来年だ。先日新たな資金調達を発表し、同社のシードラウンドは総額で600万ドル(約6億2000万円)に達した。それがテストの実現に拍車をかけたようだ。2021年は、宇宙産業のさまざまな分野にとってビッグな年になる。しかし、とりわけこの分野では、可能性が実証される時となり、その先の大な発展につなが年になることだろう。

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カテゴリー:宇宙
タグ:人工衛星、Maxar Technologies、Astroscale、Orbit Fab
画像クレジット:Maxar/NASA

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(翻訳:金井哲夫)

軌道の持続可能性を保つAstroscaleが約54億円を調達、静止衛星長寿命化や軌道上デブリ除去など業務を多様化

軌道上サービスとロジスティクスを提供するAstroscale(アストロスケール)がシリーズEのラウンドで5100万ドル(約53億7000万円)を調達し、これまでの総調達額が1億9100万ドル(約200億円)になった。日本企業であるAstroscaleは、軌道上機器類の寿命終了に関して新たなソリューションを提供する。すなわちそのソリューションとは、耐用年数を終えた宇宙船や人工衛星などを安全に軌道から取り除く容易な方法を提供し、衛星や衛星群を製造する企業の増加にともなって増えつつある軌道上デブリの一部を掃除して、軌道の運用をより持続可能にすることである。

Astroscaleはその後ミッションを拡張して、静止衛星の寿命延長も手がけている。これもまた、軌道上の活動の爆発的な増加が予想される中で、軌道の運用環境をより持続可能にしていくサービスの重要な一環だ。同社は2020年初めに、Effective Space Solutions(ESS)と呼ばれる企業のスタッフと知財の買収を発表したが、それは「宇宙ドローン」を開発している企業だった。その宇宙ドローンは既存の大型静止衛星のインフラに対して軌道上サービスを提供し、燃料の補給や修理を行う。

ESSは、Astroscale Israelのベースで、静止衛星の寿命延長も業務にしてグローバル企業になりつつあるAstroscaleの、新しい国際オフィスでもある。米国時間10月13日の投資はaSTARTがリードし、資金は今後のグローバルオフィスの設立と、チームを140名以上に増員するために使われる。

人工衛星などが軌道上で寿命を終えて発生したデブリを除去するAstroscaleの技術は、その最初のデモを2020年後半に行う予定だ。装置の打ち上げにはロシアのソユーズロケットが使われる。そのシステムは、軌道から除去するターゲットのデブリを見つけて掴まえる2基のスペースクラフトを用いる。

カテゴリー:宇宙
タグ:Astroscale資金調達日本

画像クレジット: Astroscale

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa