1MWの電力を150時間供給できる長時間持続蓄電技術を米国ミネソタ州第2位の電力会社が導入へ

グリッド用に長時間持続しつつ超低コストの蓄電技術を開発しているForm Energy(フォームエナジー)は、米国ミネソタ州に本拠を置くGreat River Energy(グレートリバーエナジー)とのパイロットプロジェクトの開発に向けて契約を締結した。

ミネソタ州第2位の電力会社であるGreat River Energyのミネソタ州ケンブリッジの施設が、バッテリー技術を開発するスタートアップによる長時間持続蓄電技術の最初の商業展開になるわけだ。

From Energyの蓄電池システムは、1MWの電力を150時間供給できる点が重要だ。ほとんどのグリッドスケールストレージプロジェクトで現在使用されているリチウムイオン電池を凌駕する。リチウムイオン電池システムは2〜4時間持続する。

電力供給時間が徐々に伸びれば、電力貯蔵施設がピーク時のみ稼働する発電所に取って代わることができる。そうした発電所はグリッドからの需要への調整弁となっており、石炭と天然ガスに頼っている。

「長時間持続する蓄電ソリューションは、大規模配備されている従来の蓄電池システムとは一線を画し、クリーンな電力システムにおいてまったく異なる役割を果たすだろう」と低炭素エネルギーシステム工学を研究するプリンストン大学のJesse Jenkins(ジェシー・ジェンキンス)助教授は声明で述べた。「リチウムイオン電池は急激な出力増大に対応できるが、数時間で電力が枯渇する。何日も出力を維持できる真の低コストの長時間蓄電ソリューションは、風力と太陽光発電の欠点を補うことになる。その欠点のために化石燃料による発電が必要とされてきた。こうした技術が、信頼性が高く手頃な価格の100%再生可能電力システムを現実のものにする可能性がある」。

4900万ドル(約54億円)を超えるベンチャーファイナンスに支えられてきた。投資家には、MITの投資ビークル「The Engine」、イタリアのエネルギー会社Eni Spaのベンチャーキャピタル部門であるEni Next、Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏の持続可能性投資会社であるBreakthrough Energy Venturesなどが名を連ねる。Form Energyは「水系空気」蓄電池システムという新しい蓄電技術を開発した。

「Form Energyにおける我々のビジョンは、再生可能エネルギーの力を解き放ち、独自の長期貯蔵技術でグリッドを変革することだ。このプロジェクトは、信頼性を犠牲にすることなく、手頃な価格で再生可能な未来のビジョンが実現可能であることを証明するための大胆な一歩だ」とForm Energyの最高経営責任者であるMateo Jaramillo(マテオ・ジャラミロ)氏は声明で述べた。

電力会社に対するFormのセールスポイントは、革新的な蓄電技術にとどまらない。独自のアナリティクスソフトウェアを使用して電力会社を診断し、電力ポートフォリオを最適化する。このソフトウェアは、システムレベルで高い普及率の再生可能エネルギーをモデル化して、蓄電池を再生可能エネルギーとどう組み合わせれば低コストで電気を作ることができるのかを分析し、発電会社により良いリターンをもたらす方法を理解するために開発された。

「Great River Energyは、この重要なプロジェクトでForm Energyと提携できることをうれしく思う。送電網を流れる再生可能エネルギーがますます増える。商業的に実現可能な長時間持続する蓄電池は、再生可能エネルギーによる電力が常に利用可能になるよう保証できれば、信頼性を高めることができる。こうした蓄電池は、極端な気象条件が数日間続くようなときに特に重要性を増す。長時間持続する蓄電池はまた、不安定なエネルギー価格に対する優れたヘッジとなる」とGreat River Energyの副社長兼最高電力供給責任者のJon Brekke(ジョン・ブレッケ)氏は声明で述べた。

両社の声明によると、今回のプロジェクトをForm Energyの蓄電システムの第1号案件とし、さらに展開していく予定とのことだ。

画像クレジット:Yagi Studio / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

AlphabetのムーンショットプロジェクトMaltaが企業として独立、Bill GatesらのBEVから$26Mを調達

AlphabetのムーンショットファクトリーXで生まれた再生可能エネルギー保存プロジェクトMaltaが企業として自立し、Breakthrough Energy Venturesが率いるシリーズAのラウンドで2600万ドルを調達した。〔moonshot, 仮訳: “未来学的な”〕

Concord New Energy GroupとAlfa Lavalが、この投資に参加した。

Project Maltaは昨年、AlphabetのX(旧Google X)でローンチし、ひとつまたは複数の送電網全体を完全にサポートするような、大規模なエネルギー保存施設の構築を目指した。Alphabetから独立した今、同社はMalta Inc.と呼ばれる。

Malta Inc.は、再生可能エネルギーや化石燃料から得られた電力を、リチウムイオン電池よりも長期間保存できるシステムを開発した。その電熱保存システムは最初に、風力や太陽熱、化石燃料などから得られた送電網上のエネルギーを捕捉する。集められた電気がヒートポンプを駆動し、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する。その熱は溶融塩に保存され、一方冷気は冷却された不凍液に保存される。送電網が電気を必要とするときは、そのエネルギーを電気に変換する。

Maltaによると、そのシステムは電気を数日から数週間保存できる。

Maltaは今回得られた資金で既存企業とのパートナー事業を興し、同社がXで開発し完成させた詳細設計を、初めてのパイロットシステムとして、本格的な産業用施設へ実現させたい、としている。

MaltaのシリーズAをリードしたBEVは、2016年に、Breakthrough Energy Coalitionによって創業された。それは、Microsoftの協同ファウンダーBill GatesやVCのKleiner Perkins Caufield & Byersの会長John Doerr、 AlibabaのファウンダーJack Ma、Amazonの協同ファウンダーでCEOのJeff Bezos, そしてSAPの協同ファウンダーHasso Plattnerらによる投資家グループだ。

画像クレジット: hugociss/Moment

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ゲイツ、ベゾス他18人のリーダーがグリーンテック・ファンド、Breakthrougに10億ドル出資

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ビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾス、ヴィノド・コースラ、ジャック・マ、ジョン・ドーアとさらに15人の著名なビジネス・リーダーが新しいBreakthrough Energy Ventures(BEV)に出資することを決めた。このファンドは向こう20年で新しいクリーン・テクノロジー企業に総額で少なくとも10億ドルを投資する。

Breakthroughのウェブ・サイトによれば同社の目的は「世界中の人々に信頼できて安価な電力、食料、製品、輸送機関を温室効果ガスの排出なしで届けること」だという。

BEVはシード資金から上場直前まで含めてあらゆる段階のグリーンテックのスタートアップに投資する。主として関心を持つ分野や発電、製造、農業、建築、運輸の各部門だ。

クリーンテックは以前シリコンバレーでブームになったことがある。2008年にはベンチャーキャピタルの投資総額が61億ドルになったが、その後〔リーマンショックの〕不況に襲われてしまった。ベンチャーキャピタルの出資や政府の各種の補助を受けようとする起業家にとってクリーンテックはタブーに近くなった。

これにともなって多数の企業が地球を救う上で(あるいは出資者に還元する利益で)見るべき貢献をすることに失敗して消えていった。自動車用の高効率の太陽光発電パネルの開発を試みたSolyndraApteraやリサイクル燃料のKiorなどがそうだ(誰かこういう会社を覚えているだろうか?)。

しかし世界の人口が増え続け、それに従ってエネルギー需要も拡大する中で、クリーン・エネルギーの重要性が見直されてきた。クリーンテックは再度関心を集めており、ベンチャーキャピタリストもクリーンテックを毛嫌いする態度を改めつつある。

BEVは2015年にパリで開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で発足した Breakthrough Energy Coalitionというグループの公式なベンチャー投資機関だ。

BECはテクノロジー、金融分野の有力メンバーをこぞったグループで、クリーンテックの公的援助、調査研究活動に力を入れている途上国のスタートアップを中心に2020年までに総額300億ドルを投資することを約束している。

BEVはベンチャーキャピタルを正式に発足させたことを発表すると同時に、Landscape of Innovationと名付けられたイノベーシュンのロードマップをリリースした。これは「公的組織、民間組織が温室効果ガス排出の削減への取り組む際のガイドライン」となることを意図しているという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+