コアラの個体数を常時調べることはオーストラリアの人たちにとって当然のように重要だが、いつも森の中の木の上にいる連中をどうやって数えるのか? ドローンとAIを使うのだ、もちろん。
クイーンズランド工科大学(Queensland University of Technology、QUT)の新しいプロジェクトは、前からよく知られているいくつかのテクニックを新しいやり方で組み合わせて、あの有名なふわふわ有袋類の野生状態の個体数を調べる。まず、ドローンに赤外線画像で熱を感知するビデオカメラを乗せる。そして撮影した映像を、コアラのような熱痕跡を見つけるよう訓練されたディープラーニングのモデルに見せる。
QUTは前にも、これと似たやり方で、絶滅危惧種の海牛ジュゴンの個体数を、海岸の航空写真と機械学習で調べたことがある。しかし今回は、それよりずっと難しい。
この研究のペーパーの共著者Grant Hamilton博士が、ニューズリリースで言っている。「ビーチにいるアザラシと木の上にいるコアラでは、違いがとても大きい」。ジュゴンという言葉を避けたのは、知ってる人が少ないからだ。
博士は曰く、「木の上や森の中という複雑性も、今回の研究課題のひとつだった。難しいから、おもしろい。ドローンを飛ばして動物の数を数える、という単純な仕事ではなく、ものすごく複雑な環境で、それをやらなければならなかったのだ」。
チームはドローンを早朝に飛ばして、外気の寒いところと、木の中の、コアラの体温で温かいところとの明瞭なコントラストの撮像を求めた。ドローンは、木の上辺を刈る芝刈り機のような航路で飛行した。そうして、広い範囲のデータを集めた。
赤外線画像(左)と関心領域を高輝度にするニューラルネットワークの出力
その映像を訓練済みのディープラーニングシステムに通すと、コアラの体温で温かくなっているところのサイズや密度を認識し、車やカンガルーなどそのほかの物は無視した。
初期のテストでは、システムの精度をコアラの推測位置や実測による地上データと比較した。そのために調べる参照動物には、GPS装置や電波発信タグをつけた。その結果、この機械学習によるコアラ検知システムは約86%の精度であることがわかり、「コアラを見つける名人たち」の70%という精度を上回った。精度だけでなく仕事も早い。
博士曰く、「人間が1日かけて調べる範囲を、2時間で調べる」。しかし人間のコアラ発見名人や地上チームをリプレースするわけではない。「人が行けない場所もあるし、逆に、ドローンを飛ばせない場所もある。人力とドローンが互いに補完できる最良の方法を、見つける必要がある。コアラは広範囲にわたって絶滅に瀕しているし、そのほかの多くの種もそうだ。彼らを救う魔法のような特効薬はない」。
クイーンズランドの1つの地区でテストしたら、今度はオーストラリア東海岸部の他の地域で試す予定だ。今後は、コアラ以外の危惧種動物の個体数調査に使える、温度のヒートマップ以外の別の識別子も加える計画である。
彼らのペーパーは、今日発行されたNature Scientific Reportsに載っている。