ヒューレット・パッカード・エンタープライズがスパコン大手クレイを1430億円で買収

HPE(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)Cray(クレイ)を13億ドルで買収することを発表した。これによりHPEはCrayのハイパフォーマンスコンピューティングを取り込むことになり、おそらく将来の量子コンピューティングに向けて足がかりを得ることになる。

買収額は1株35ドルで、昨日の終値29.81ドルに5.19ドルのプレミアムを乗せた。

Crayは1970年代に設立され、一時は米国のスーパーコンピューター業界を引っ張っていたが、時代は変わってマーケットがシフトしたいま、今回の買収は理にかなうものだ。

Constellation Researchの創業者で主任アナリストのRay Wang氏は「買収はマーケットのハイエンド部分の統合となる。HPEにとっては賢い買収だ。Crayはしばらくの間損失を計上してきたが、素晴らしいIPポートフォリオと、量子時代の鍵を握る特許を持っていた」とTechCrunchに対し語った。

HPEの会長でCEOのAntonio Neri氏は買収をWang氏のようにはとらえていなかったが、両社を統合することにチャンスを見出した。「我々のワールドクラスのチームとテクノロジーを合体させることで、次世代の高度なハイパフォーマンスコンピューティングに向けて取り組むチャンスを手にし、また人々の暮らしや仕事を向上させるための重要な役割を担う」と発表文で述べた。

CrayのCEOで会長のPeter Ungaro氏もその意見に同意している。「CrayとHPEのコンビネーションで、急成長中のハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)業界とAI業界のリーダーになる。そしてどちらの社も単独ではつかめなかったであろう多くのチャンスを生み出せる」と、今回の買収を発表したブログ投稿に書いた。

Moor Insights & Strategyのプリンシパル・アナリストであるPatrick Moorhead氏は、HPCは急成長マーケットの1つであり、HPEはそこで存在感を出したいことを暗に示してきたと語る。「私はこの買収に驚いていない。この買収の成功度合いは2社の統合によって決まるだろう。HPEはスケールアップと消費モデルを持ち込み、Crayは専門性とコネクティビティのIPを持ち込む」と説明した。

買収が今後どのように作用するかは不透明だが、この手の買収は2社が1社になるため、通常オペレーション部門での解雇を伴う。また、CrayがHPEの一部になるため、この買収がCrayの顧客に影響するかどうかも不透明だ。しかしHPEは、新たに得る資産をCrayの新プロダクトと組み合わせて使いながらハイパフォーマンスコンピューティングのプロダクトをつくる計画を持っている。

HPEは、2014年にHPが2社に分割されたときに組織された。HPはプリンター部門を、HPEは企業部門を受け持っている。

今回の買収は今後、規制当局のチェックを経るが、すべて順調に進めばHPE会計年度の2020年第1四半期に完了すると見込まれている。

イメージクレジット: Courtesy of Cray

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(翻訳:Mizoguchi)

浮動小数点演算1回は100京分の1秒、IntelとCrayが超高速次世代スパコンを共同開発中

「今のスマホは昔のスパコンだ」とよく言われる。しかし今の本物のスーパーコンピューターの能力はもちろんスマートフォンなどとは比べモノにならない。Intel(インテル)と Cray(クレイ)はエネルギー省の5億ドル(約553億円)の契約を獲得し、最大級のスーパーコンピューターを共同開発している。このマシンがいよいよエクサフロッップスを実現する

Auroraプログラムはいわゆる「エクサスケール」のコンピューティングシステムで、2021年にアルゴンヌ国立研究所に納入される。エクサ(exa)という接頭辞はものすごく巨大な数、10の18乗を表す。浮動小数点演算1回に100京分の1秒しかかからないわけだ。

読者の手元のデバイスに使われている最新のCPUはおそらくギガフロップス級の速度だろう。 1000ギガが1テラであり、その1000倍がペタ、さらに1000倍でやっとエクサの単位に到達する。たしかに半導体回路製造テクノロジーの驚異的な発達によってわれわれは非常に高機能のスマートフォンやタブレットを使えるようになった。しかし本物のスーパーコンピューターは文字通り桁違いに強力だ(これはCPUの場合で、GPUはもう少し込み入った話になる)。

ただし、そのスパコンも現在の世界最速は200ペタフロップス程度で、昨年TechCrunchが紹介したオークリッジ国立研究所で稼働するIBM Summitシステムだ。

しかしなぜエクサスケールのスパコンが必要なのか?ペタフロップス級で能力は十分ではないのか?実はペタフロップスでは間に合わないのだ。地球温暖化が特定の地域の雲の発達に与える状況をシミュレーションするには現在のスパコンの能力では足りない。こうしたシミュレーションの必要性が新たなスパコンの能力拡張競争を生んでいる。

気候シミュレーションは特にコンピューターのリソースを消費する処理だ。モデルの各点ごとに複雑な計算を必要とするため、当初のモデルはきわめて目が粗いものだった((最近の成果はたとえばこちら)。こう考えてもいい。ボールが地面にぶつかってはね返る。この現象は簡単にシミュレーションできる。では巨大なスケールのシステムに含まれるすべての分子についてこの計算が必要だとしたらどうだろう? 気候シミュレーションとなれば各ノードの相互作用、重力、気圧、温度、地球の自転、その他あらゆる要素を考えねばならない。2つの恒星が衝突するしたら?

コンピューターの能力がアップすればシミュレーションはそれだけ正確になる。 Intelのプレスリリースによれば、「天文学上の巨大なスケールの現象をシミュレーションしたり、化学物質が個々の細胞に与える影響を再現することで新しい効果的な薬品を開発したりできる」ようになるという。

IntelによればAuroraはアメリカにおける最初のエクサスケールのシステムだという。ただし中国はすでに1年前からエクサスケールを目指して開発を始めていた。中国のスパコンは現在でも世界最速クラスであり、この目標が達成できないと考える理由はない。

アルゴンヌ国立研究所がこのシステムを使って何をするつもりなのか興味があるところだ。そこで同研究所のサイトで公表されている研究テーマ一覧ざっと眺めてみたが、「何もかもほとんどすべてのジャンル」という印象だった。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

CrayのスパコンがMicrosoft Azureにやってくる

クラウド・コンピューティングに意外なニュースが飛び込んできた。MicrosoftはCray提携し、同社のスーパーコンピューターとストレージをAzure から利用できるようにする。

Crayと聞けば、多くの読者は70年代から80年代にデザイン過剰のスーパーコンピューターを作っていた会社を思い浮かべるかもしれない(あの円筒形のタワー状本体の周囲にベンチが設置されたモデルだ)。

Crayは90年代には何度か浮沈を繰り返し、所有者も変わったが、その後、XCCSシリーズの成功で地位を取り戻した。最新モデルはNvidia GPUとIntelのCPUを採用し標準規格のスーパーコンピューターとなっている(一部のマシンはFPGAも採用している)。単一キャビネットのピークパフォーマンスがペタフロップ級のマシンに仕上がっている。

当然ながら、こうしたマシンは非常に高価だ。Crayのターゲットは現在もハイパフォーマンスを必要とする大学や研究機関だ。最近Crayのマシンは機械学習関連の作業で使われることが多い。

そうはいっても、数分で完了するようなバッチ・ジョブ1本のためにCrayをレンタルすることはできない。そこでMicrosoftとCrayはスーパーコンピューター・システムをMicrosoftのデータセンターに設置し、ユーザーがAzureクラウドサービスを通じてCrayのマシンに容易にアクセスできるようにしようと準備中だ。同様に、今後スーパーコンピューターを必要とするかもしれないユーザーも、Azureを利用すればCrayシステムを利用できる。Microsoftの広報担当者が私に語ったところでは、「Crayマシンはそれぞれが顧客のニーズに合わせて設定をカスタマイズできるようにする」ということだ。

今日(米国時間10/23)、Azure担当のMicrosoftコーポレート・バイスプレジデント、Jason Zanderはブログに 「Microsoft Azureは数多くのエンタープライズで採用され、その能力を十分に証明してきた。ユーザー各社はわれわれのクラウド環境で戦略的にもっとも重要度の高いタスクを実行している。今回は新たにCrayと共同することにより、Azureには専用のスーパーコンピューター能力が与えられる【略】」と書いている。

実はCrayがデータセンターにマシンを設置するのはこれが2度目だ。1991年ごろからCrayはMarkleyというあまり有名でないデータセンターに設置されている。Markleyはアメリカとヨーロッパでトータルで27万平方メートルにもなるデータセンターを運用している。

画像: Yiming Chen/Getty Images

〔日本版〕トップ画像はCrayfish(ザリガニ)とCrayをかけたもの。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Crayの新スパコン、XC50はシングル・キャビネット・タイプで1ペタフロップスを達成

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Crayは新しいスーパーコンピューター、XC50を発表した。これはXC40の後継モデルで、同社のシングルキャビネットタイプとして初めてピーク速度1pflops(ペタフロップス)を達成したという。XC50はNVDIA Tesla P100 GPUアクセラレータ、次世代のIntel XeonとXeon Phiをサポートする。想定使用目的にはディープラーニング・アルゴリズムの処理などが含まれる。Crayではこうした目的でのニーズが高まったことが同社のシステムでGPUの活用に力を入れるようになった原因だとしている。

ペタフロップス・スケールのコンピューティングは天気予報、システム・シミュレーション、量子論を応用した化学、生理的レベルでの頭脳活動のシミュレーションなど最新かつもっとも処理能力を必要とするを計算処理を助ける。Crayのプレスリリースによれば、スーパーコンピューターは人工知能、ディープラーニング・アプリケーションの分野でますます広く利用されるようになっているという。AIや機械学習は単なる研究プロジェクトを超えて次世代のコンシューマ向けサービスの中心になっていきそうだ。

XC50が最初に設置されるのはスイス国立スーパーコンピューティングセンター(CSCS)で、Piz Daintのニックネームを持つ現行のXC30のアップグレードとなる。同センターにはPiz Doraと呼ばれるXC40が稼働しており、XC50はこれと連動して新しいXC50システムが構築される。総合的なスピードで世界最速のコンピュータの一つとなるという。

一方、Crayはアメリカのエネルギー省アルゴンヌ国立研究所とアルゴンヌ・リーダーシップ・コンピューティング施設でコードネームThetaと呼ばれる新しいSC40スーパーコンピューターを開発中だ。ストレンジャー・シングの研究を始めるのだろうか?

〔日本版〕 Pizはスイス南東部で話されるロマンシュ語で「山、峰」の意味。なお原文のArgonne National LibraryはArgonne National Laboratoryのこととみて翻訳。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Crayの最新のスーパーコンピューターはOpenStackを搭載してオープンソースのビッグデータツールを動かす

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Crayといえば、スピードとパワーをつねに連想するが、同社の最新の計算怪物Cray Urika-GX systemは、ビッグデータのワークロード専用に設計されている。

しかも、そのベースシステムはオープンソースのクラウドプラットホームOpenStackで、その上でビッグデータを処理するHadoopやSparkなどのツールが仕事をする。

Seymour CrayがCray社を立ち上げたのは70年代の初頭だが、その後のコンピューティングの進化を同社はよく認識している。作っているのは相変わらずハイパワーのコンピューターだが、今ではクラウドコンピューティングという強敵がいる。人びとはコンピューターを買わずに、その都度必要なぶんだけ利用して、料金を払う。

そんな強敵と戦うためにUrkia-GXは2ソケットのIntel® Xeon® v4(Broadwell)を16〜48ノード搭載し、そのコア数は最大で1728、DRAMは最大で22TBを持つ。ストレージは35TB PCIe SSDと192TBのハードディスクを、ローカルストレージとして持つ。

しかも同機はCray特有の高速マシンであるだけでなく、差別化要因として、顧客企業が求めるビッグデータ処理ソフトウェアの完全セットアップサービスがつく。HadoopやSparkだけでなく、顧客が求めるものは何でもインストールし、構成し、実働状態にしてから納品する。

また、同社独自のグラフデータベースCray Graph Engineを標準で搭載する。それは複雑なビッグデータ分析において、既存のグラフソリューションの10倍から100倍は速いそうだ。グラフというデータ構造はいろんなものを複雑に結びつけたり比較する処理に適していて、たとえばeコマースのサイトでは顧客が買った物と似たものを見つけたり、逆にそんな物が好きな友だちをソーシャルネットワーク上に見つけたりという、複雑な関係操作が得意だ。

今クラウドに人気があるのは、ITの面倒な部分をすべてクラウドベンダが肩代わりしてくれるからだ。そのことを認識しているCrayは、クラウド上のSaaSではなく、オンプレミスのSaaS、ソフトウェアのインストールから構成〜実働までのすべての面倒を見るサービスに徹しようとしている。それは、Urika-GXとビッグデータ分析に関して、上で述べたとおりだ。しかもソフトウェアのアップデートも、半年ごとにCrayがすべてやってくれる。

顧客が日常使うのはシステムの最上層のアプリケーションだが、その下の部分は顧客企業のIT部門を手伝いながら主にCrayが担当する。ソフトウェアのメンテナンスのお世話をする、という言葉は単純だが、顧客が上の方の、Crayがせっかくインストールしたソフトウェアの上で黙って勝手なことをして、おかしなことになっても、その修復がCrayの仕事になるから、たいへんだ。

でもCrayのプロダクト担当SVP Ryan Waiteによると、同社は顧客と一緒に仕事をしていく歴史が長いから、どんなにわかりにくい問題が生じても十分対応できるそうだ。

費用についてWaiteは、そのほかのビッグデータ処理ソリューションとそれほど変わらない、と言う。みんなが考えるほど、高くはない、と。ということは、Crayコンピューターの数百万ドルというプライスタグは、すでに過去のものか。彼によると、価格はハードウェアとソフトウェアの組み合わせ次第で変動幅が大きい、という。言い換えると、顧客のニーズ次第、ということだ。

というわけで、まだ表面的なことしか分からないが、Crayが今でも強力なコンピューターのプロバイダであることは確実だ。かつてのギークたちの夢は、どっこい、まだ生きていた。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))