最大287万通りのカスタムサラダを自動供給する調理ロボをCRISPとTechMagicが共同開発、2022年7月末の店舗導入目指す

最大287万通りのカスタムサラダを自動供給する調理ロボをCRISPとTechMagicが共同開発、2022年7月末の店舗導入を目指す

カスタムサラダレストランCRISP SALAD WORKSを展開するCRISPは10月4日、食産業向けのロボットやソフトウェアを提供するTechMagicと共同で、最大287万通りのカスタムサラダを作る調理ロボットの開発と実装を目指した契約の締結を発表した。現在は、すでに開発に必要な初期技術検証を完了しており、2022年7月末の店舗導入を目指している。

このロボットは、TechMagicが開発し、CRISPの店舗でサラダ調理工程を「1人単位で自動化」するというもの。このロボットがもたらすのは次の3つ。

  • モバイルオーダーとの連携:モバイルオーダーアプリや、店頭に置かれたキャッシュレス・セルフレジ「CRISP KIOSK」と連動して最大287万通りのカスタムサラダを調理する
  • トッピングの計量と供給の自動化
    レメインレタス・チキン・ナッツ・チーズなど、27種類の不定型なトッピングを自動計量し、サラダボウルの準備から盛り付けまで、ベルトコンベア上で作業を行う。サラダボウルをパートナー(スタッフ)が受け取るまでの一連の動作を自動化
  • 安定した品質とスピード:2022年7月末の導入時には、CRISP SALAD WORKS麻布鳥居坂店にて、1時間あたり60食の提供スピードを目標にしている

最大287万通りのカスタムサラダを自動供給する調理ロボをCRISPとTechMagicが共同開発、2022年7月末の店舗導入を目指すこうした自動化により、スタッフをより創造性の高いLTV(顧客生涯価値)を高める接客に振り向け、そこに「時間と意識を集中」させるとしている。これは、CRISPの目指す「新しいレストラン体験」に通ずるものだ。また、深刻な人手不足に悩む食産業での、単純作業の自動化により貴重な人材を有効活用し、新たな食インフラを創造するというTechMagicの理念にも通じるものとなる。最大287万通りのカスタムサラダを自動供給する調理ロボをCRISPとTechMagicが共同開発、2022年7月末の店舗導入を目指す

TechMagicは、「テクノロジーによる持続可能な食インフラを創る」をミッションとして、2018年2月に設立。食を取り巻く企業が直面する人手不足を解消し、生産性の高い社会を実現するために、ハードウェアとソフトウェア両方の技術を高度に融合した各種プロダクトの企画、設計、製造、販売、保守を行っている。

2014年7月設立のCRISPは「レストラン体験を再定義することで、あらゆる場所でリアルなつながりをつくる」をビジョンに掲げ、CRISP SALAD WORKSの展開を通じて、テクノロジーで顧客体験を最大化し、非連続な成長と高い収益率を実現する新しい外食企業「コネクティッド・レストラン」を作ることを目指している。

NASAが宇宙空間でゲノム編集技術「CRISPR」実施に成功、微重力下でのDNA損傷修復メカニズム研究

ASAが宇宙空間でのゲノム編集技術「CRISPR」実施に成功、微重力下におけるDNA損傷の修復メカニズムを研究する方法を開発

Sebastian Kraves and NASA

NASAの宇宙飛行士クリスティーナ・コック氏は、CRISPR-Cas9と呼ばれる遺伝子編集を宇宙空間で行うことに初めて成功しました。

この実験では、ISS内で培養した酵母の細胞のDNAに、二本鎖切断と呼ばれる特に有害なDNA損傷を生じさせ、放射線などによる非特異的な損傷では得られない、微重力状態におけるより詳細なDNA修復メカニズムを観察しました。コック飛行士は2020年2月に地上へ帰還しており、実験もそれ以前に完了していたものの、その結果が出るのについ最近までかかったとのこと。

重力のない、またはほとんどない場所での長期間の生活は、様々な場面で生命活動に変化をもたらす可能性があります。とくに地磁気による保護のない宇宙空間では飛行士は常に宇宙線(地球外の宇宙空間からの放射線で、生物へ大きな影響をもたらす重粒子線を多く含む)に晒されることになり、それによるDNAへの影響は避けられません。

そのため、この実験を足がかりに宇宙空間でのDNA修復にまつわるさらに多くの実験研究への道が開かれ、十分な知見が蓄積されれば、将来の有人火星探査やさらに深宇宙への有人探査が現実的なものになるかもしれません。

今回の研究は、宇宙でCRISPR-Cas9によるゲノム編集に成功した初めての例であり、生きた細胞に外部からの遺伝物質を取り込ませる形質転換に成功した初めての例でもあります。そして将来の研究で、電離放射線によって引き起こされる複雑なDNA損傷をよりよく模倣してさらに研究を重ねられるようになることが期待されます。人類が火星やその先へと向かうのに、CRISPR-Cas9が重要な役割を担うことになるかもしれません。

(Source:EurekAlertEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:バイオテック
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CRISPR-Cas3技術を応用したバクテリオファージを開発するLocus Biosciences

抗生物質耐性は、全世界の健康にとって今日最大の脅威である。しかし、Locus Biosciences(ローカス・バイオサイエンス)は同社のテクノロジーであるcrPhageが新たな解決策を提供すると期待している。

ノースカロライナ州のResearch Triangle(リサーチ・トライアングル)に拠点を置く同社は、CRISPR-Cas3-enhancedバクテリオファージの大腸菌に起因する尿路感染治療への利用に関する臨床試験がフェーズ1bで有望な結果を得られたことを発表した。元Patheon(パセオン)の幹部で現在LocusのCEOであるPaul Garofolo(ポール・ガロフォロ)氏らの指揮の下、同スタートアップは2015年、CRISPR技術のあまり知られていない応用による、増大する抗菌薬耐性への取り組みを目標に設立された。

CRISPR-Cas3技術は、よく知られているCRISPR-Cas9とは機序が大きく異なる。Cas9酵素にはDNAをはさみのようにきれいに切り離す能力があるのに対し、Cas3はどちらかというとパックマンのように、ストランドに沿って動きながらDNAを切り刻んでいく、とガロフォロ氏は説明する。

「これまで使われていたほとんどの編集プラットフォームでは、これを使うことができません」と彼は述べ、それはCas3を巡る競争があまりないという意味だと付け加えた。「だからしばらくの間保護されていて、秘密にしておくことができると知っていました」。

ガロフォロ氏率いるチームは、CRISPR-Cas3を人体内の有害バクテリアの編集に使うのではなく、破壊するために使いたいと思っている。そのために、Cas3のDNA破断機構に注目し、他の細菌を攻撃して破壊するウイルスであるバクテリオファージを強化するために使った。共同ファウンダーで最高科学責任者のDave Ousterout(デイブ・オウスターアウト)氏(デューク大学で生物医学の博士号を取得している)も、このテクノロジーがバクテリアを破壊する著しく直接的で目標を定めた方法をもたらすと考えている。

「大腸菌を攻撃するこのCas3システムと、その結果得られる二重の作用機序で強化することによって、私たちはバクテリオファージを、実質的に大腸菌のみを除去する極めて強力な手段に作り上げました」。

その特異性は、抗生物質に欠けているものの1つだ。抗生物質は体内の有害な細菌だけを標的とするのではなく、出会った細菌すべてを死滅させる。「私たちは抗生物質を服用する際、良い細菌の影響を受けている体の別の部分について考えていませんでした」とガロフォロ氏は語った。しかしLocus BioscienceのcrPhage技術の精度の高さは、標的となる細菌のみが消滅し、人体の正常機能に必要な細菌は影響を受けないことを意味している。

この特異性の高いアプローチが病原体やあらゆる細菌による疾患に有効であるばかりでなく、ガロフォロ氏らは自分たち方法が極めて安全なのではないかと感じている。細菌にとっては致命的だが通常バクテリオファージは人体には無害だ。体内でのCRISPRの安全性もすでに確立している。

「それが私たちの秘伝のソースです」とガロフォロ氏は述べた。「これで、置き換えようとしている抗生物質よりも強力な薬品を作ることが可能になり、しかもファージという人体に何かを投与する方法として世界一安全とも言えるものを使うのです」。

この新技術が病原体や感染症の治療に役立つことは間違いないが、ガロフォロ氏は、免疫学、腫瘍学、神経学なども恩恵を受けることを願っている。「 ある種の細菌が胃腸のがんや炎症を促進することがわかってきました」と彼は語った。もし、研究者が症状の根本原因である細菌を特定できれば、crPhage技術が効果的治療法になる可能性がある、とガロフォロ氏とオウスターアウト氏は考えている。

「もしこの件について私たちが正しければ、感染症や抗菌薬耐性だけでなく、がんの克服や認知症の発病遅延にも役立てることができます」とガロフォロ氏はいう。「私たちが生きるために細菌がどのように役立っているかという考えが変わろうとしています」。

カテゴリー:バイオテック
タグ:Locus BiosciencesCRISPR医療

画像クレジット:KATERYNA KON/SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

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(文:Sophie Burkholder、翻訳:Nob Takahashi / facebook

遺伝子回路テクノロジーでガン制圧を目指すSenti Bioがバイエルから109億円を調達

Senti Biosciencesは、ライフサイエンス分野の世界的企業であるBayer(バイエル)がリードした資金調達ラウンドで1億500万ドル(約109億円)を調達したことを発表した。同社はプログラム可能なバイオプラットフォームによって新しいガン治療法の開発を行っている。

同社は新しい計算生物学的手法を用いて人体の特定細胞を正確に標的とする細胞・遺伝子治療法を開発している。

ハーバード医学部の出身でMITで准教授を務めたSenti BiosciencesのCEOであるTim Lu(ティム・ルー)氏は、同社のテクノロジーを伝統的な手続き型プログラミングとオブジェクト指向プログラミングの違いにたとえてこう述べている。「『Helloworld』を表示するだけのプログラムでは意味がありません。オブジェクト指向ならifステートメントを駆使したプログラミングができます」という。

Senti Biosciencesでは複数の受容体を標的とする遺伝物質を合成することで体内の遺伝物質を識別し、病変部に正確に薬剤を到達させること目標としている。「細胞の単一受容体ではなく【略】我々は2つの受容体を対象にできます」とルー氏は述べた。

同社は当初、遺伝子回路テクノロジーのプラットフォーム上に体内のガン細胞を標的にしてそれらを駆逐する「キメラ抗原受容体ナチュラルキラー(CAR-NK)」細胞を合成する治療法を開発している。現在の細胞・遺伝子治療は、ナチュラルキラーT細胞を利用している。これは、体内の白血球内に存在し、人体に有害なウイルスや細菌などの異物を排除する免疫プロセスで重要な役割を果たす。

ところがT細胞を利用したの治療法は、患者に毒性をもたらす可能性がある。極めて危険な免疫暴走を誘発するをリスクだ。CAR-NK細胞を利用すれば同様の効果を得ながら免疫暴走という副作用を大きく低減できる。

ルー氏によれば「我々の治療法は遺伝子回路とは独立のものですす。遺伝子回路は個人に特異的です。【略】CAR-T細胞またはCAR-NK細胞を使った治療では【略】(ガン細胞という)標的を発見して薬剤を送り届け他の正常な細胞に影響を与えないようにします。我々は遺伝子回路にロジックを組み込み、CAR-NK細胞が1つではなく2つの標的を識別できるようにします」という。

Senti Bioがターゲティング能力を強化するのは、抗ガン剤が体内の病変細胞だけに作用し、変異していない健康な細胞が破壊されることを防ぐためだという。

共同ファウンダーのルー氏、MITの同僚であるJim Collins(ジム・コリンズ)教授、ボストン大学のWilson Wong(ウィルソン・ウォン)教授、また合成生物学の専門家であるPhillip Lee(フィリップ・リー)氏らの数十年にわたる研究の集大成がSenti Biosciencesに結実したという。

ルー氏は遺伝子回路テクノロジー開発の現状をこう解説する。

遺伝子治療の現状は、半導体素子開発の初期と比較できます。研究段階ではさまざまな要素技術が開発されていました。しかし世界に影響を与えるためには産業として成立する規模が実現される必要がありました。

そこでルー氏ら共同ファウンダーはMIT、ボストン大学、スタンフォード大学からのライセンスを受け、開発作業を研究室レベルから産業レベルにアップすべくスタートアップを設立した。

「(Seinti Bioを)創立したとき、我々が持っていたのはいくつかのツールとノウハウでした」とルー氏はいう。それはまだ完成したプラットフォームには遠かった。

バイエル他の投資家による資金投入により、同社は新しい制ガン療法の商業化に進む準備ができた。

同社は声明で「最初の製品は急性骨髄性白血病、肝細胞ガン、その他の詳細はまだ明かせないが、各種の固形腫瘍を対象とした治療法になる」と述べている。バイエルのベンチャーキャピタル、Leaps by Bayerの責任者Juergen Eckhardt(ユルゲン・エックハルト)医学博士はこう述べている。

Leaps by Bayerの使命は、何百万人もの人々の生活をより良い方向に変える可能性のある画期的なテクノロジーに投資することです。合成生物学は次世代の細胞・遺伝子治療の重要な柱になると信じています。遺伝子回路設計と最適化におけるSenti Bioのリーダーシップは、ガンの予防と治療、また失われた組織機能再生という我々の目標に理想的に適合します。

ルー氏ら共同ファウンダーは、同社のプラットフォームをガンだけでなく他の疾病治療その他の用途のための細胞療法を開発するために有効と考えている。これについては(バイエル以外の)製薬会社とも提携して製品化を進めるつもりだという。ルー氏は声明でこう述べている。

過去2年間、Senti Biosciencesのチームは信頼性の高い薬剤製造ラインを開発するために何千もの高度な遺伝子回路を設計、構築、テストしてきました。現在まで治療が困難な液状および固体腫瘍に適応するる同種異系CAR-NK細胞療法に焦点を当ててきました。今後、2021年にはIND(新薬臨床試験)申請の準備を開始するなど、プラットフォームテクノロジーと製造パイプラインのさらなる進歩が達成できるものと期待しています。

今回のラウンドによりSenti Biosciencesの資本は1億6000万ドル(約166億円)弱となった。ルー氏は「この資金は製造プロセスを強化し、大手製薬会社との提携作業を加速するために用いられます」と述べた。

現在のスケジュールでは2022年後半から2023年初頭に新薬臨床試験開始申請を行い、2023年中に実際の臨床試験を開始する計画だ。

遺伝子回路開発は急成長中の分野だ。Cell Design Labsは2017年にGilead Sciencesが5億6700万ドル(約588億円)で買収した。この分野に取り組んでいる他の企業にはCRISPRテクノロジーを利用したCRISPR Therapeutics、Intellius、Editasなどがある。

関連記事:UCバークレー校のダウドナ教授がノーベル化学賞を受賞、CRISPR遺伝子編集が新型コロナなど感染拡大抑止に貢献

カテゴリー:バイオテック
タグ:Senti BiosciencesDNACRISPR資金調達

画像クレジット:KTSDESIGN/SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

UCバークレー校のダウドナ教授がノーベル化学賞を受賞、CRISPR遺伝子編集が新型コロナなど感染拡大抑止に貢献

米国カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)のJennifer Doudna(ジェニファー・ダウドナ)教授が、CRISPRテクノロジーの共同開発者であるEmmanuelle Charpentier(エマニュエル・シャルパンティエ)教授とともにノーベル化学賞を受賞した。 TechCrunchは9月に開催したTechCrunch Disrupt 2020で、ダウドナ教授にCRISPRテクノロジーと新型コロナウイルス対策への応用について詳しく話を聞く機会があった。またダウドナ教授はこのテクノロジーが医学全般、ことに将来のパンデミック対策として役立つ可能性についても強調した。

ダウドナ教授は以下のように説明している。

CRISPRテクノロジーで最も興味あるのは、現在の新型コロナウイルスだけでなく、将来現れるかもしれない別のウイルスも容易に検出ターゲットとすることができる点です。

私たちはすでに新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスを同時に検出できるようにする戦略で研究を進めています。 これ自身重要な意味を持つのは明らかですが、CRISPRはプログラムを書き換えて別のウイルスをターゲットとするよう素早くピボットすることができます。

これは多くの人が留意しなければならない点だと思いますが、ウイルス性のパンデミックがまったく消え去るということはありません。現在の新型コロナウィルスは将来のパンデミックに対する警告と考えるべきでしょう。私たちは将来の新たなウイルスによる攻撃に対する防衛体制を科学的に整えておくことが必要です。

最近の応用について考えると、CRISPRは新型コロナウイルスの検査体制を飛躍的に拡充できる可能性がある。このテクノロジーはスピードや信頼性を含め、検査の本質を根本的に変えるかもしれない。第一線で活動する医療専門家、医療機関の能力を大きく拡大するだけでなく、パンデミックへの対処体制にも革命をもたらす可能性がある。

ダウドナ教授は以下のようにも述べている。

私の経験からいって今年中にCRISPRを応用した新型コロナウイルスの検査方法が提供できると思います。当初、このテストには病院等の検査室で行われるでしょうが、医療の第一線におけるCRISPRの検査を実現すべく、カリフォルニア大学バークレー校のInnovative Genomics Institute、サンフランシスコ校のGladstone医療センターなどと共同して開発を続けています。 これは病院だけでなく介護施設や寮などあらゆる場所で検査に利用できる小型のデバイスとなるはずです。唾液や綿棒で拭ったサンプルを使った迅速なテストができるようにしたいと考えています。

ダウドナ教授へのインタビューの詳しい記事はこちら。教授はCRISPRについて感染蔓延に対する応用面だけでなく。開発の背景や意義について詳しく解説している。

カテゴリー:バイオテック
タグ:新型コロナウィルス、COVVID-19、ノーベル賞、CRISPR

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

「遺伝子編集技術CRISPRは新型コロナ治療に欠かせない」とダウドナ教授は語る

最新の遺伝子編集技術、CRISPRの共同開発者であるJennifer Doudna(ジェニファー・ダウドナ)教授がDisrupt 2020に登場し「(CRISPRは)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以降のパンデミックに対する戦いで最も有効なツールの1つになる」と述べた。CRISPRはコンピューターソフトウェアと同様、目的に応じて柔軟にプログラムの組み替えが可能であり、やがて無数の治療法と検査法に応用されるだろうという。

ダウドナ教授はバーチャルカンファレンスにおけるインタビューで「CRISPRはすでにいくつかの分野で確実な成果を上げている」として明るい見通しを述べた。

「このテクノロジーが独特な存在である理由の1つは極めて柔軟性が高く、遺伝子編集において多様な目的のために利用できる万能ツールだという点だ。またウイルスを構成する要素を、的確に検知をするためにも利用できる。CRISPRはワクチンを作るために必須のものとなる」という。

これらの可能性は、CRISPRの本質による。このテクノロジーは、ウイルス中の特定の遺伝子配列ないし構造を極めて精密に探し出して操作することができる。特徴的な配列を発見し、切断することによってウイルスを不活性化できるのと同時に、ごく微量の検体からウイルスを発見するために用いることができる。

「これは、バクテリアがウイルスを探知する方法を利用するテクノロジーだ。我々はこのメカニズムをパンデミックの原因となるウイルスの検知に役立てることができる」という。

ダウドナ教授によれば、CRISPRの利点は3つある。第1は特定の遺伝子配列の検知だ。現在のウイルス検査の手法は、酵素とタンパク質の反応を利用している。しかしこの手法は間接的な証拠に過ぎず、特定のウイルスの存在を直接示すものではない。そのため信頼性とスピードは著しく制限される。ウイルスが細胞に侵入していても、特定の酵素と反応するようなタンパク質を生成し始めるまで検知できない。これに対してCRISPRはそのウイルスに特有な遺伝子配列そのものを検知するため、はるかに確実な発見ができる。「ウイルスの検知を、従来よりスピーディーかつ確実に行うことができる。ウイルスの存在を示す証拠が直接的であり、ウイルスの濃度との相関度も高いからだ」という。

第2にCRISPRタンパク質を利用したシークエンシングは、検索対象とするターゲットを容易に変更できる。「我々はCRISPRシステムのプログラムを簡単に書き換えることができる。新型コロナウイルスが突然変異しても、変異しない部分を検知の対象にすることができる。我々はすでにインフルエンザと新型コロナのウイルスを同時に検知する実験を進めている。これ自身もちろん非常に重要なテクノロジーだが、同時に将来現れるかもしれない別のウイルスに対しても簡単にピボットして検出ターゲットとすることができるはずだ。

 

上は非常に長いGIF画像。CRISPR CAS-9タンパク質がウイルスのDNAを探索し、特定の場所を発見して切断する様子を示している。(画像クレジット:UC Berkeley)

「今後もウイルス性パンデミックが、完全になくなることはないだろう。今回のパンデミックはいわば警告だと思う。次の新しいウイルスによる攻撃に対処する科学的な体制を整えておくことが重要だ」。

第3のメリットは、CRISPRベースの薬剤は製造にあたって用意すべき素材が、他のテクノロジーの場合よりもはるかに容易に入手できることだ。ワクチンにせよ、治療薬にせよ、多くの人々に迅速に供給するするためにはこの点が極めて重要になる。

CRISPRの実用化にあたって壁は、理論的なものではなく実際的なものだ。現在はまだ研究室における実験段階であり、人間の現実の疾病予防や治療に用いるためには、まだ長い審査過程が残っている。一部では人間に対する治験が始まっているし、新型コロナウイルス関連で審査がファーストトラックに載せられたものも多い。しかしコストの問題を別としても、まったく新しいテクノロジーであるだけに、実際に治療に利用できるようになるまでにはまだ時間がかかる見込みだ。

「これらの点が、バイオテクノロジーの進歩にあたって最も重要な課題になる。CRISPRを経済的な価格で、できるだけ多数の人々に提供できるようにすることが必要だ。将来、CRISPRが標準的な医療となって症例の少ない遺伝的疾病の治療ができるようになることを期待している。そのためには本格的な研究開発が必須となる」。

このテクノロジーを進歩させる最も有望な方向は、CRISPR Cas-Φ(ファイ)だ。基本的な仕組みは同様だが、Cas-Φの酵素は、はるかにコンパクトだ。もともとCas-Φはバクテリアなどの単細胞生物がウイルスやプラスミドから自己を防衛するためのメカニズムだからだという。「バクテリアが、独自のCRISPRを持ち歩いているとは誰も想像していなかった。しかし(我々が発見したところによれば)それは事実だ。興味深いのは、オリジナルのCRISPRよりはるかにサイズが小さいタンパク質である点だ。巨大タンパク質はターゲット細胞に導入することが難しい。CRISPR Cas-Φを利用して、コンパクトで効率が高い遺伝子編集ツールを作成できる可能性がある」。

ダウドナ教授のチームはCRISPRだけでなくCRISPR Cas-Φの共同発見者の1つであり、応用の可能性についてさらに詳しく説明してくれた。下にDisrupt 2020におけるインタビュー全体をエンベッドしておいたのでぜひご覧いただきたい。

カテゴリー:バイオテック

タグ:Disrupt 2020 CRISPR DNA COVID-19 新型コロナウイルス

画像クレジット:Alexander Heinl/picture alliance / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook