電子回路設計/シミュレーションサービスCircuitLabは、立ち上げから1周年を迎え、月間のアクティブユーザ数70000にまで成長した。今Y Combinatorの2013冬のクラスで勉強している同社は、単純に計算すると6秒に一回ずつ回路シミュレーションを動かしていることになる。電子工学系のサイトがこのように大成功している理由は、ツールが基本的に無料であることと、教育用のツールとしてとてもよくできているからだろう。また、最近増えているハードウェア系のスタートアップが、プロダクトの企画設計段階で十分利用できるツールでもある。
CircuitLabの強みは、電子回路の設計をその最初の第一歩から支援できるところにある。そのために協同ファウンダのMike RobbinsとHumberto EvansはCircuitLabを、回路図を描いてシミュレートすることが、マニュアルを一冊も読まずに、そして難解でユーザアンフレンドリーなレガシーのデスクトップアプリケーションを使わずに、Web上だけでできるようにした。だからCircuitLabでは複数のエンジニアがそれぞれ異なるマシンやブラウザを使っていても、シミュレーションなどの共同作業ができる。これまでのPSpice、Multisim、LTSpiceなどのツールでは、それは不可能だった。
CircuitLabのツールのオープンな性格は、その初期から、教育機関や研究機関の関心を惹いた。無料でもあるので、教師は教室で自分の生徒/学生たちに使わせ、その場でシミュレーションをさせられる。彼らが教室に持ってくるマシンは、メーカーや機種を限定されない(ブラウザがあってWebにアクセスできればそれでよい)。EvansとRobbinsは電話インタビューで、教育方面に口コミで広まりつつあると言ったが、それには生徒/学生間の口コミ(リコメンデーション)も含まれるようだ。
“うちの最大のユーザは教育機関だ。学校や大学で、これまで使われていたデスクトップソフトを駆逐しつつあるようだ”、とRobbinsは説明する。“教師たちの最大の問題は、Macを持ち込む生徒/学生が多いのに古いツールはWindowsオンリーで、それらよりもさらに古いヘンなソフトすらある。今や学生/生徒たちがめいめい、違うソフトを使っていることが、教える側の悩みのタネだったのだ”。
CircuitLabにとっては、一人の教師に気に入られると一挙にユーザが数十名増えるというメリットがある。今、大学で電子工学を専攻した学生が一人前になるまで5年はかかるから、今の世代の学生たちが次世代の学生にCircuitLabをすすめる効果もある。しかしRobbinsによると、CircuitLabの使われ方はもっと多彩だ。大規模な製品では、それぞれの部品が個々に設計〜シミュレートされることもある(たとえば電源回路とメインボード)。Robbinsによると、どんなタイプの回路でも設計〜シミュレーションできることが、CircuitLabに強みの一つだ。
CircuitLabは最近、二社と提携を結んだ。ひとつはElectronics.StackExchange.com、ここでは組み込みシステムの回路設計とシミュレーションに利用されている。もうひとつはEE TimesとEDNの発行者、これらは電子回路設計の専門誌として指導的な存在だ。このような健全な提携関係とYCのサポートにより、同社の今の立ち位置は非常に良好だ。
類似サービスとしてUpverterなどがあるが、しかしEvansとRobbinsによると、CircuitLabが対応するのはあくまでも設計の初期段階のみ。だからこの世界には今後もっと多様な競争関係や補完関係があるべきである、と。たしかにこの世界では、既存の有力ツールは過去10〜20年間ほとんど変化も進化もしていないのだから、若いスタートアップたちによってもっと本格的で大々的な世代交代が起きてもよさそうだ。
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))