Googleが、家庭用Wi-Fiルーター『Google Wifi』日本版を発表しました。本体を複数連携して使う、いわゆる「メッシュWi-Fi技術」をコンセプトとした、手に乗るサイズの小型ルーターです。
発売は4月26日。価格は1台が1万5000円、3台パックが3万9000円。米国では2016年11月に登場し、そのユニークなコンセプトやちょっとかわいい本体デザインから注目されていたモデルの日本版がいよいよ発売となります(なお本日開催された発表会では、出席者より「どうしてここまで遅くなったのか」という質問が出ましたが、Google側の回答はノーコメントでした)。
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(TechCrunch Japan編集部注:全画像はEngadget 日本版記事でご覧いただけます)
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ルーターとしては、対応無線規格はIEEE 802.11ac/a/b/g/n。2.4GHzと5GHzの同時使用に対応したタイプです。速度は「(11ac)2×2 Wave2」との表現があります(11acでの5GHz側接続は最高866Mbpsと考えて良さそうです)。
またユニークな点として、設定にスマートフォンかタブレット(対応OSはAndroid 4.0以上、またはiOS 8以上)が必須となりますが、それらと通信するためのBluetooth Smart機能も備えます。
高性能モデルでは重要視されるSoCに関しては、詳細は不明ながら、ARM系の4コアCPU搭載品であると明記。RAM容量は512GB、本体内ストレージは4GBのeMMC接続フラッシュメモリを搭載するなど、基本性能も充実します。
Google Wifiを他のルーターと比べた場合、主な特徴は2点。1点目は、上記のようにスマホアプリの使用を必須としたことなどによる、セットアップや運用の簡便さ。2点目は複数台連携を前提とすることで、高性能ルーターでは宿命とも言えるアンテナと本体の大型化を避けた点です。
まずは、Google Wifi専用アプリ(名称もGoogle Wifiです)から紹介しましょう。
主な機能としては、基本設定をはじめ、ネットワークチェック(接続状況の確認)や、家族利用に便利な端末ごとの使用時間制限(スケジュール機能による自動切断にも対応)、特定端末の速度優先設定をはじめとする各種端末管理、来客時に便利なゲストネットワークの構築などとなります。
このあたりだけを見ると大きな特徴はありませんが、特筆すべきは操作の快適さ。他のルーターでもアプリによる設定が可能なモデルはありますが、多くのモデルはWebブラウザからの(反応がイマイチ遅い)専用設定ページを経由して……という操作が基本。
対してGoogle Wifiアプリでは、スマートフォンを使っているいつものリズムで操作が可能。一通り設定などを確認してみても、処理待ちが長く、待っているのかハングアップしているのかを疑ってリロード……といったイライラとは無縁でした。
またユニークなところでは、「ネットワーク名に絵文字などが使える点」なども特徴として挙げられました。
半ば余談ですが、興味深かったのが通信品質チェックの細かさ。インターネット速度の計測、複数台使用時のメッシュWi-Fi接続品質、実行端末とのWi-Fi速度(実測)と、調べたいところが一通り計測できる仕様です。
さらにインターネット速度に関しては、アプリ側の通知で速度に応じ「なかなか高速です」といったメッセージを表示するなど、開発陣に俺ら――新しいWi-Fiに接続すると真っ先に回線速度を調べるタイプの人間――がいるのか? と思えるほどの充実度です。筆者は発表会でチェックしていて「さすがGoogle」と、妙に感心させられました。
もう一つの特徴である「メッシュWi-Fi前提の設計」ですが、こちらによる恩恵が本体の小型化です。
本体サイズは直径が106.12mm、高さが68.75mmという、てのひらに乗る大きさ。重量も340gと比較的軽く、部屋のインテリアを邪魔しにくい設計です。動作状態を示すLEDも、中央に柔らかめの灯りがともる仕様となっており、いい意味でルーター然としていません。もちろん冷却はファンレスで可能な設計。動作音も発生しません。
また、ACアダプタとの接続がUSBタイプC端子になっているという、ユニークな特徴も。ACアダプタ側の出力値は5V/3Aのため、いざという時はモバイルバッテリーでの運用も可能です。
さて、否が応でも気になるのは、本機が快適に通信できる面積の目安でしょう。こちらは1台で「マンションや中規模住宅」として約85平方メートル(m2)以下を推奨。2台連携では「大きめの住宅」な85~170m2、セット購入もできる3台では、170~255m2で「さらに大きい・複雑な構造の住宅」をカバーする、とのこと。
さて、メッシュWi-Fiで重要なこととして「複数台あるルーター(あるいは中継器)間の接続状態をいかに安定させるか」という点があります。ここが弱ければ機器間が通信速度のボトルネックになって、ともすれば1台の大型ルーターのほうがいい、ということになりかねません。
Google Wifiの技術的な特徴として、このメッシュ間の通信設定をバックグラウンドで常時行い、いわゆる「ユーザーが意識せずとも上手くやってくれる」状態が基本となっているところが挙げられます。裏を返せば凝った設定は不可能なのですが、ここは設定難度の高さから家庭用では敬遠されがちだったメッシュWi-Fiを家庭用として導入できたポイント、と呼べるところでしょう。
なお、この「通信設定の自動化とリアルタイム設定」に関してはクライアント機器との間でも「ネットワークアシスト」の名称で導入されており、最適な通信チャンネルや帯域を自動選択し、積極的に切り替え。部屋の中を動いて通信するといった回線の状況が変動しやすい状況でも、可能な限り実効速度が落ちないよう、バックグラウンドで設定を変更します。
このようにGoogle Wifiは、米国版の発売から1年以上が経過しても、いまだにライバル機種では導入されていない、ユニークな思想や設計を備えた機種。またWi-Fiに関する自動設定を積極的に活用して快適さに繋げるなど、「ネットワーク屋」としての側面も持つGoogleならでは、と呼べるポイントも備えます。
価格は比較的高価ではありますが「Wi-Fiを快適に使いたいが、家族から機器の置き場所にダメ出しをされることが多くて……」という方などにとっては、数少ない選択肢の一つとなりそうなモデルです。
Engadget 日本版からの転載。