ウクライナ侵攻を受けた自動車メーカーの動きまとめ

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、世界各国がロシアに対する制裁を強化している。その結果、多くの自動車メーカーを含め、企業はロシアでの事業活動を制限、停止、あるいは完全に撤退している。

本稿では、ロシアからの撤退決定など自動車メーカーの対応を紹介する。

ロシアでの生産を停止している自動車メーカー

MSCやMaersk(マースク)など多くの海運大手や物流会社がロシア発着のコンテナ輸送を停止したため、自動車メーカーはサプライチェーンの混乱により生産停止を余儀なくされている。

直近ではトヨタ自動車が3月3日、ロシアの工場での生産を4日から停止すると発表した。同社はサンクトペテルブルクに工場を1つ持ち、主にロシア市場向けのRAV4とCamryのモデルを生産している。

Daimler Truck(ダイムラートラック)は現地時間2月28に、ロシアのトラックメーカーKamaz(カマーズ)との合弁事業を含め、ロシアでのすべての事業活動を停止すると発表した。これまでロシア市場向けに3万5000台のトラックを生産してきた同JVは、2009年にMercedes-Benz Trucks Vostok(メルセデス・ベンツ・トラックス・ボストーク)とFuso Kamaz Trucks Vostok(ふそうカマーズ・トラックス・ボストーク)の2つの独立したJVとしてスタートしたが、2017年にこの2社が合併した。そして今後はKamazとの提携によるトラックは生産されず、Daimlerもこのトラックメーカーに部品を供給しない、とロイターは伝えている

また、Daimlerがスピンオフする前の親会社Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)も、Kamazの株式15%を売却すると発表した。

スウェーデンのトラックメーカーAB Volvo(ABボルボ)はロシアでの生産をすべて停止し、Ford Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)も現地時間3月1日、追って通知するまでロシアでの事業を停止すると発表した。Fordはロシアの自動車会社Sollers(ソラーズ)との合弁事業を除けば、ウクライナで重要な事業を展開していないが、Fordは2019年にSollersに支配権を譲渡した

フランスの自動車メーカーRenault(ルノー)は現地時間2月25日、物流圧迫により部品不足が生じたため、ロシアにある自動車組み立て工場の一部の操業を停止すると発表した。調査会社IHS Markitによると、Renaultはロシアの自動車生産の40%近くを占めている。

Renaultは減産の具体的な内容を明らかにしていないが、ロシアには3つの自動車組み立て工場がある。モスクワ工場で生産されているロシア人向けの主なモデルは、Kaptur、Duster、Nouveau Duster、Arkana、Nissan Terranoだ。Renaultは、日産および三菱と戦略的提携を結んでいる。また、ロシアの自動車メーカーAvtoVAZの支配的株式を持っている。

韓国のHyundai Group(現代グループ)はサンクトペテルブルクの工場で年間約23万台を生産しており、ロシアの自動車生産の27.2%を占めている。ウォールストリート・ジャーナルによると、同社はサプライチェーンの混乱により、3月1日から5日にかけてサンクトペテルブルクの自動車組立工場を休止するが、来週には操業を再開する予定だ。同紙は、今回の閉鎖は、ロシアのウクライナ侵攻や経済制裁とは関係がないものだと報じた。現代自動車にとってロシアは大きな市場であるため、できることなら操業停止しないよう試みる可能性もある。

Volkswagen(フォルクスワーゲン)傘下のチェコの自動車メーカーSkoda Auto(シュコダ・オート)は、供給不足のため国内工場の生産を一部制限すると発表したが、ロシアでの事業は継続されている。ロシアは2021年、Skodaにとって2番目に大きな市場だった。

「ロシアとウクライナでの販売戦略については、現在、集中的に議論しているところです。最近の情勢から、ウクライナとロシアの両方における販売台数は減少することが予想されます」とSkodaは述べ、ロシアまたはウクライナ市場から撤退するかどうかは、最終的にVWが決定することになると指摘した。

日本の三菱自動車は3月1日、ロシアでの生産を停止する可能性があると発表した。三菱はPSA Peugeot Citroën(PSAプジョー・シトロエン)と合弁事業契約を結んでいて、ロシア・カルーガの組立工場でプジョー、シトロエン、三菱の車両を生産している。

販売・輸出停止

欧米の対ロ制裁の一環として、ロシアの多くの銀行が、国境を越えた迅速な決済を可能にする安全なメッセージシステムSWIFT(国際銀行間通信協会)から締め出された。その結果、ロシア国内の自動車ディーラーやバイヤーが外国車を買えなくなり、外国企業は外国車を売れなくなった。

三菱自動車は、ロシアでの生産を停止する可能性に加え、同国での自動車販売も停止する可能性があると述べた。トヨタは、ロシアへの輸出を停止すると発表した。

米国の自動車メーカーGeneral Motors(ゼネラル・モーターズ)とスウェーデンの自動車メーカーVolvo Cars(ボルボ・カーズ)は現地時間2月28日、追って通知するまでロシアへの自動車輸出をすべて停止すると明らかにした。Volvo Group(ボルボ・グループ)は、売上の約3%をロシアの購買者から得ており、同国に1つの工場を持っている。

国際的な自動車メーカーで初めてロシアへの自動車出荷を停止したVolvoは声明の中で「EUと米国による制裁を含め、ロシアとの材料取引にともなう潜在的なリスク」があるため、出荷を停止したと述べている。

GMはロシアで年間約3000台を販売し、現地に工場は持っていない。

Volkswagenのロシア部門は、追って通知するまで、あるいは欧州連合と米国が科した制裁が明確になるまで、ディーラーへの納車を一時停止する。

同じくドイツの自動車会社BMWは、3月1日時点でロシアへの輸出を停止しており、供給面での制約が予想されるため、同地での生産を停止すると明らかにしている。

Harley-Davidson(ハーレーダビッドソン)は同日、ロシアでの事業と、同国へのオートバイ出荷を停止したと発表した。このブランドは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が乗っているところを写真に撮られたことがある。ロシアは米国のバイク会社にとってあまり重要な市場ではなく、ロシアには10店舗ほどしかディーラーがない。

英国の高級車メーカー、Jaguar Land Rover (JLR、ジャガー・ランドローバー)とAston Martin(アストン・マーティン)も、取引問題を理由にロシアへの車両出荷を一時停止した。JLRは2021年にロシアで6900台を販売したが、これは世界販売の2%未満だ。Aston Martinは、世界販売台数におけるロシアとウクライナの割合は合わせたても1%だと述べた。

地政学的な状況や自動車メーカーの対応は常に変化している。最新情報については再びチェックして欲しい。

画像クレジット:Anton Vaganov / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

高級SUV「レンジローバー」の電気自動車が2024年に登場

Land Rover(ランドローバー)は、そのラインナップに高級SUV「Range Rover(レンジローバー)」の電気自動車を、2024年に加える計画があることを明らかにした。

この発表は、第5世代モデルにあたる新型レンジローバーの公開に併せて行われた。デザインが一新された新型レンジローバーは、無線によるソフトウェア・アップデートのサポートなど新たな技術を満載しており、プラグイン・ハイブリッド車や電気自動車にも対応するその新開発のフレキシブルなアーキテクチャは、ランドローバーから将来登場する新型モデルのベースとしても使われる予定だ。

ランドローバーは、この近々登場する電気自動車について、多くの情報を開示していない。だが、ブランドの親会社であるJaguar Land Rover(ジャガー・ランドローバー)の動きを観察していた人であれば、この事態を予測していたかもしれない。振り返れば2017年に、JLRはJaguar(ジャガー)とランドローバーの両ブランドから2020年以降に発表されるすべての新型車に、電気自動車またはハイブリッド車を設定すると述べていたからだ。

ランドローバーによると、新型レンジローバーは、まずマイルド・ハイブリッド・バージョンが発売になり、やや遅れて(米国では2023年に)プラグイン・ハイブリッド・バージョンが追加されるという。

2023年に登場するExtended Range(エクステンデッド・レンジ)プラグイン・ハイブリッドは、48ボルトのマイルド・ハイブリッド技術を採用した直列6気筒エンジンと、105kWを発生する電気モーター、そして38.2kWh(使用可能容量は31.8kWh)のリチウムイオンバッテリーを搭載し、システム合計で最高出力440psを発生。電気のみで最長100kmの距離を走行可能だ。

画像クレジット:Land Rover

2022年に発売になる新型レンジローバーには、標準 / ロングホイールベースのボディ、6気筒/ 8気筒のパワートレイン、2列5人乗り/ 2列4人乗り/ 3列7人乗りの座席オプションなど、さまざまなバリエーションが用意されている。

米国向けの2022年モデルでエントリーグレードとなるマイルド・ハイブリッドの「レンジローバーP400 SE」は、最高出力400ps、最大トルク550Nmを発揮する3.0Lガソリンターボ直列6気筒エンジンを搭載し、ベース価格は10万4000ドル(約1180万円)。そして最上級グレードは、ロングホイールベースのボディに最高出力530psと最大トルク750Nmを発揮する4.4LガソリンツインターボV8エンジンを搭載した「P530 First Edition」で、こちらは16万3500ドル(約1860万円)からとなっている。いずれも価格には税金およびディーラーまでの輸送費1350ドル(約15万円)は含まれていない。

新型レンジローバーにおけるもう1つの注目すべき技術的なハイライトは「Electrical Vehicle Architecture(EVA 2.0)」と呼ばれる新しい電気系アーキテクチャが採用されたことで、これによって70以上の電子モジュールにおける無線ソフトウェアアップデートが可能になったという。つまり、ランドローバーはこの無線アップデートを介して、新型レンジローバーに新しいアプリなどの機能を追加したり、既存の機能を改良したりできるようになるということだ。これはテクノロジー中心の時代に対応したいと考える自動車メーカーにとって重要な機能である。

新型レンジローバーには、音声アシスタントとしてAmazon Alexa(アマゾン・アレクサ)が搭載されており、最新ニュースを読み上げたり、ドライバーがカレンダーにアクセスできる他、一部の車載機能の制御や、自宅の照明の点灯、Alexa対応の他のデバイスとの接続などが可能だ。

また、スマートフォンの見た目や機能を、車内に設置された画面に表示して使うことができる「Apple CarPlay(アップル・カープレイ)」と「Android Auto(アンドロイド・オート)」も、新型レンジローバーの前席中央に備わる車載タッチスクリーンで利用できる。

画像クレジット:Land Rover

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)