ケニアの農業ベンチャーApollo AgricultureがシリーズAで約6.5億円を調達

Apollo Agriculture(アポロアグリカルチャー)は、ケニアの小規模農家たちの収益を最大化する支援をすることで、利益を生み出すことができると考えている。

それこそが、Anthemisが主導するシリーズAの資金調達ラウンドで600万ドル(約6億5000万円)を調達した、ナイロビを拠点とするこのスタートアップのミッションなのだ。

2016年に創業されたApollo Agriculture は、運転資金、より高い作物収量のためのデータ分析、主要な資材や機器の購入オプションなどを提供する、モバイルベースの製品群を農家に提供している。

「農家が成功するために必要なすべてを提供します。それは、植える必要がある種子と肥料だったり、彼らがシーズンを通してその作物を管理するために必要なアドバイスだったりします。そして不作の年に農家を守るために必要な保険と……最終的はファイナンシングですね」とTechCrunnchとの電話で語ったのは、Apollo AgricultureのCEOであるEli Pollak(エリ・ポラック)氏だ。

Apolloが対応可能な市場には、ケニアの人口5300万人にまたがる多くの小規模農家が含まれている。同社が提供するものは、農家自身が思い描くプロット上で、より良い結果を達成するための技術と、リソースへのアクセス不足という問題に対する支援だ。

スタートアップが設計したのは、ケニアの農家とつながるための独自のアプリ、プラットフォーム、そしてアウトリーチプログラムである。Apolloは自身が提供するクレジットと製品を提供するために、モバイルマネーM-Pesa、機械学習、そして衛星データを使用している。

ポラック氏によれば、TechCrunch Startup Battlefield Africa 2018のファイナリストだった同社は、創業以来4万件の農家を支援し、2020年には支払いが発生する関係が2万5000件に達すると語っている。

Apollo Agricultureが始動

Apollo Agricultureの共同創業者であるベンジャミン・ネンガ氏とエリ・ポラック氏。

Apollo Agricultureは、農産物の販売とファイナンシング時のマージンから収益を生み出している。「農家は支援パッケージに対して固定価格を支払いますが、その支払期限は収穫時です。ここには必要な費用がすべて含まれており、隠れた追加料金は発生しません」とポラック氏は語る。

シリーズAで調達された600万ドルの使途について彼は「まずは、成長への投資を継続することが本当に重要です。すばらしい製品を手に入れたような気がしています。顧客の皆さまからすばらしい評価を頂けていますので、それをスケーリングし続けたいと思っています」と語った。すなわち採用、Apolloの技術への投資そしてスタートアップ自身の、セールスおよびマーケティング活動の拡大に投入するということだ。

「2つ目は、顧客の方々に貸し出す必要がある運転資金を引き続き調達できるように、バランスシートを本気で強化するということです」とポラック氏は述べている。

現時点では、ケニアの国境を越えたアフリカ内での拡大は構想されてはいるものの、短期的に行われる予定はない。「もちろんそれはロードマップ上にあります」とポラック氏は語った。「しかしすべての企業と同様に、現在はすべてが流動的です。したがって、新型コロナウイルス(COVID-19)で物事が揺れ動くのを見定める間、即時拡大の計画の一部は一時停止しています」。

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アフリカの小規模農家の生産高と収益を向上させようとするApollo Agricultureの活動は、共同創業者たちの共通の関心から生まれた。

ポラック氏は、スタンフォード大学で工学を学んだ後、The Climate Corporation(モンサント傘下のデジタル農業企業)で米国内の農学に従事した米国人だ。「それがApolloに期待をかける理由になったのです。なにしろ私は他の市場を見たときに『おいおい、アフリカ全体ではメイズ、つまりトウモロコシの作付面積が20%も大きいのに、米国の農家に比べてアフリカの農家は驚くほど生産量が少ないぞ』と口に出したのです」とポラック氏は語る。

またポラック氏の同僚であるBenjamin Njenga(ベンジャミン・ネンガ)氏は、自身の成長過程の体験からインスピレーションを得た。「私はケニアの村の農場で育ちました。小規模農家だった私の母は、低品質の種子を使い肥料を使わずに作物を植えていました。毎年エーカーあたりの収穫は5袋しかありませんでした」と、彼は2018年にラゴスで開催されたStartup Battlefield in Africaで聴衆に語りかけた。

画像クレジット:Apollo Agriculture

「私たちは、もし母が肥料とハイブリッド種子を使用したなら、生産量が倍になって、私の学費の支払いが容易になることはわかっていました」。ネンガ氏は、母親はこれらの準備を整えるためのクレジットにアクセスできなかったと説明した。それが彼にとってApollo Agricultureを推進するための動機となっているのだ。

Anthemis Exponential VenturesのVica Manos(バイカ・マノス)氏が、Apolloの最新の調達を主導したことを認めた。マノス氏はTechCrunchに対して、英国を拠点とし主にヨーロッパと米国に投資を行う同VCファームは、南アフリカのフィンテック企業Jumo(ジャンボ)への支援も行っており、アフリカのスタートアップへの投資を引き続き検討していると語った。

Apollo AgricultureのシリーズAラウンドには、Accion Venture Lab、Leaps by BayerそしてFlourish Venturesなども名を連ねている。

農業はアフリカにおける主要な雇用創出産業だが、ベンチャー企業や起業家たちからは、フィンテック、ロジスティクス、eコマースと同じような注目は集めていない。アフリカ大陸のアグリテックスタートアップたちが、資金調達で遅れをとっていることは、Disrupt AfricaとWeeTrackerによる2019年の資金調達レポートに報告されている。

VC資金を獲得した注目すべきアグリテックベンチャーとしては、ナイジェリアのFarmcrowdyIBMと提携したHello Tractor、そしてナイロビを拠点とするゴールドマンの支援を受けたB2B農業サプライチェーンスタートアップのTwiga Foodsなどがある。

Apollo AgricultureがTwigaを競争相手と見なしているかどうかという問いに対して、CEOのエリ・ポラック氏ははコラボレーションを探っていると答えた。「Twigaは将来的にパートナーになる可能性のある会社かもしれません」と彼はいう。

「私たちは高品質の作物を大量に生産するために農家と提携しています。Twigaは農家が収量に対して安定した価格を確保できるように支援するための、すばらしいパートナーになる可能性があります」。

成層圏上の気球からインターネット接続を提供するLoon、初めての商用化をケニアで

Googe(グーグル)の親会社Alphabet傘下のLoonは、遠いへき地などに高高度からのブロードバンド接続を提供する。同社はこのほど、その気球の初めての商用バージョンを、2週間前にケニア政府から得られた承認により、ケニアの人びとのインターネット接続のためにローンチした。気球は目下テスト中だが、その結果を待ちながら数週間後には本番のサービスを開始する予定だ。

Loonはケニアの通信企業Telkom Kenyaとパートナーして、同社の契約ユーザーにサービスを提供する。気球は地球の成層圏の高度およそ2万メートルを飛び、地上局のセルタワーも通信衛星も利用できない遠隔地に、安定性の良い高速インターネット接続を提供する。

LoonのCTO Sal Candido(サル・カンディド)氏が書いたMediumの記事によると、気球はプエルトリコまたはネバダ州から離陸し、長い旅をしてケニアのサービス供用地域へ向かう。気球は気流に乗って最終目的地へ向かうが、それは成層圏風に運ばれる最高速のルートなので、かなり回りくどい旅路になる。具体的なルートは、Loonの自動ナビゲーションソフトウェアが決める。

ケニアに到着したら、機械学習を利用するその同じアルゴリズムが、ターゲット圏域の比較的安定性の良い場所に気球を定置させる。気球は上下に動いて異なる気流を捉え、固定された地理的領域の中で気球はそんな短い旅を繰り返しながら、地上の顧客への24時間の高速安定サービスを提供する。

ただし顧客が気球に直接アクセスするのではなく、パートナーのTelkomのセルネットワークからその接続サービスを利用する。それに対しTelkomは当然ながら課金をするため、アフリカのインターネットアクセス性スタートアップBRCKなどは、それが障碍になる人びともいる、と懸念している。でも、やっと初めて商用化にこぎつけたわけだからLoonにとっては重要なマイルストーンであり、今後デプロイの仕方をもっと多様化していけば、さまざまなビジネスモデルが可能になるだろう。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa