Google、iOSにGboardをリリース―ブラウザなしでアプリ内から検索可能なキーボード

2016-05-13-gboard-still-emojigif

今朝(米国時間5/12)、GoogleはGboardと呼ばれるiOS向けの新しいアプリを リリースした。これはその名前のとおり、カスタム・キーボードで、ユーザーはブラウザを立ち上げずにこのキーボード内から直接Google検索ができる。

開発が進んでいることは今年の始めから噂になっていた。当初の報道は正しかったようだ。新しいキーボードは噂どおり、Googleが簡単になるだけでなく、高速なスワイプ入力やGIF検索なども可能になる。また絵文字や入力単語予測などの機能も備えている。

もちろんGboardのもっとも興味深い点は自社のサービスとの密接な連携だ。

キーボード左上隅に配置されたカラフルなGのアイコンをタップすると、ユーザーはキーボード内から直接Google検索を実行でき、ブラウザまたは適切なGoogleアプリが自動的に起動されて結果が表示される。

この機能は交通機関の時刻表、ニュース記事、レストランやショップ、レシピなどを検索している場合にことに便利だ。たとえばリアルタイムでチャットしてる最中に検索結果をそのままチャット窓にペースとすることができる(ただしそのためにはGboardにまず位置情報にアクセスすることを許可しておく必要がある)。

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この場合、検索結果は上に見るようにカード方式でアプリとキーボードの間に表示される。検索結果ごとに1枚ずつのカードが作成される。

情報カードをタップすると、即座にチャット、メール、ノートその他ユーザーがその時点で利用しているアプリ内にカードの内容がペーストされる。この内容は単なる文字列ではなくリンクになっており、閲覧者はタップしてアプリを起動することができる。住所であればGoogleマップで位置が表示されるし、電話番号であれば、レストランに直接電話することができる。もちろんウェブを検索することも可能だ。

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もしURL付でペーストすることが必要ない場合は、iOSの編集機能を使ってペーストすることができる。この場合ハイパーリンクは含まれず、カードはそのまま画像として貼り付けられる。カードはデザインが優れている上に情報も詳細だ。レストランの営業時間や地図、フライトのスケジュール、今日の天気、その他ユーザが通常必要とする情報はなんでも分かる。

このアプリはGIF検索もサポートしている。GoogleはRiffsyと提携してGIFを使いやすくカテゴリーに分類している。ただしGIFファイルの検索自体はGoogle自身が実行している。普通に絵文字を検索したい場合はスマイリー〔ニコちゃんマーク〕アイコンをタップすればよい。しかしGIFを検索したい場合は、代わりにキーボード下部のボタンを押してそのセクションを開く。

GIF検索セクションにはRiffsyの協力で数多くのカテゴリーが設けられており、 high five〔ハイタッチ〕、 thumbs up〔親指を立てる〕、hair flip〔髪を揺らす〕、mic drop〔わざとマイクを落とす〕、 shrug〔肩をすくめる〕等々が検索できる。GIFはカテゴリーだけでなくキーワードでも検索できる。

気に入った検索結果を見つけたらタップするだけで内容が必要が場所にペーストされる。

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絵文字の使用でもGoogleは新しい試みをしている。数多くの絵文字を延々とスクロールしていくのではなく、「ダンス」とか「ワイン」というようなキーワードで検索すると、即座にその絵文字が表示される。

新しいキーボードでは通常のタッチ入力もできるし、慣れれば高速なスワイプ入力もサポートされている。スワイプ入力では必要なキーの上に指を離さず滑らせる。単語の区切りでいちいちスペースバーを押す必要はない。

スワイプ方式は特に片手での入力に適しており、MicrosoftもiOS向けキーボードのWord Flowでこのメリットを強調している。

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iOSの標準キーボードの代わりにGboardを使う際の最大の欠点はマイクが内蔵されていないことだ。 実はAppleはサードパーティーがキーボードにマイク機能を組み込むことを禁止している。このためGboard内からOK Googleと呼びかけることや、Siriに質問することができない。

一般ユーザーの大半がモバイル・アプリ経由でデジタル情報に接しているようになったことを考えるとGboardのローンチは非常に重要だ。eMarketerによれば、平均的ユーザーは一日あたり、 3時間15分アプリを利用するのに対して、ブラウザを使うのは 51分に過ぎないという。

もちろんキーボードがGoogleサービスと深く結びつくようになることはデータの所有権やプライバシーについての懸念を生じさせる。このアプリの場合、ユーザーは検索履歴やユーザー辞書をクリアすることができる。【略】

Gboardはすでに公開済みで iTunes App Storeから無料でダウンロードできる。当面は英語版のみだが、将来は他の言語もサポートされると Googleは述べている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Microsoft、キーボードアプリWord FlowのiOS版を公開

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Microsoftは、単語予測キーボードのiOSアプリを公開した。Appleのモバイルエコシステムの人気に乗じて、自社のモバイル生産性分野の影響力を高めようとしている。

Word Flowアプリは、Microsoftの社内実験プロジェクト部門であるGarageが開発したもので、米国のApp Storeで公開した ― 欧州ではまだ利用できない。

今月始め、同社はiOSユーザー向けにベータ版のサインアップを開始したが、今回は米国ユーザー向けとなった。アプリは当初自社スマートフォンプラットフォーム(Windows Phone)のために開発され、デスクトップ製品であるWindows 10にも提供された。

次の単語の予測に加え、Word Flowアプリはスワイプ入力 ― Swype等のキーボードアプリと同様 ― による高速テキスト入力も約束している。やや目新しいのが片手タイピングモードで、キーボードを円弧状に表示することで親指だけを使った入力を容易にする。ユーザーはWord Flowキーボードの外観をカスタマイズすることもできる。

キーボード技術は、MicrosoftがWindows Phoneプラットフォームの初期段階から、先行するライバルから市場シェアを奪う方法の一つとして探究してきた分野だ。キーボードに力を入れた理由の一つは、当初AppleはデベロッパーにiOSシステム全体で使えるキーホード開発を認めておらず、またiPhoneネイティブのキーボードに新機能を追加するのが遅く、他社につけ入る隙を与えていたことだ。

しかし、クパチーノは2014のiOS 8でシステムワイドのキーボードに対する方針を変更し、外部デベロッパーに開放すると共に、自社キーボードにも機能を追加した(独自の単語予測機能等)。一方、Microsoftのモバイル市場シェアに勢いをつけAndroid-iOS複占に風穴を開けるという希望は実現することなく、アプリ開発でモバイル市場に大きな足跡を残すことに注力せざるを得なくなった。

この戦略をさらに進めるべく、同社は2月にロンドン拠点のキーボードメーカーで次単語予測の先駆者、SwiftKeyを2.5億ドルで買収した。当時同社は、Swiftkeyの技術を既存のWord Flow技術に組み込むと共に、自社製品を横断する中核技術として採用すると言っていた。

MicrosoftはSwiftKeyアプリも継続して提供すると言っている。機能はWord Flowと明らかに重複するが、前者の方が多数の利用を期待できる。Microsoftに買収された時点で、SwiftKeyはAndroid、iOSおよびSDK(殆どがAndroidプラットフォーム)合わせて約3億台のデバイスにインストールされていた。

Word FlowはMicrosoft唯一のキーボード製品ではない。Garage部門はこれまでにもHubと呼ばれるキーボードアプリをiOS向けに提供している。ただしこのキーボードは、マルチタスキングやOffice 365ユーザーがOneDriveやSharePoint等他のMicrosoftサービスを検索できるようにすることで生産性を高めることに焦点を当てたものだった。そのため、バルセロナ拠点のキーボードスタートアップ、ThingThing等のオープンな生産性向上キーボードほどには興味を引かない。

メッセージングアプリが、プラットフォーム上のプラットフォームとして拡大する力を見せつける中(例えばWhatsAppは月間10億アクティブユーザーを記録)、キーボードのような生産性アプリがその規模に達することは殆ど期待できない。

実際、SwiftKeyのMicrosoftへの売却を見ても、生産性アプリの成長がずっと困難で限界があることがわかる(そうなると、Microsoftがはるか前の2011年に買収した有名メッセージングアプリのSkypeの開発や市場シェア拡大に注力してこなかったことへの疑問が持ち上がってくる)。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook