フェイスブックが暗号資産ウォレット「Novi」の試験運用を米国とグアテマラで開始

Facebook(フェイスブック)が「Novi(ノヴィ)」と名づけた暗号資産ウォレットの小規模な試験運用を開始した。現時点では、米国とグアテマラの限られた人々のみが、Noviにサインアップして、使い始めることができる。

Facebookは、Diem(ディエム)協会の創設メンバーだ。しかし今のところ、Noviでは同協会のブロックチェーン(Diemネットワーク)上にある同協会のステーブルコイン(Diem)を活用するのではなく、代わりにFacebookはPaxos(パクソス)やCoinbase(コインベース)と提携。これによってユーザーは、Paxosの米ドルステーブルコイン「USDP」を送ったり受け取ったりでき、これらの暗号資産はCoinbaseが管理(カストディ)することになる。しかし、これはあくまでも中間段階であり、Facebookはいずれ、USDPをDiemに置き換えることを計画しているという。

Facebookは当初、暗号資産プロジェクトに対して大きな計画を立てていた。同社は「Libra Association(リブラ協会)」と呼ばれる暗号資産の運営コンソーシアムを設立し、これに参加する企業とと協力して、不換紙幣や国債のバスケットに連動するまったく新しいデジタル通貨「Libra(リブラ)」を発行する計画だった。本来であればLibraは、単一の現実世界の通貨ではなく、複数の通貨を混ぜ合わせたものがベースになるはずだった。

しかし、Facebookは多くの中央銀行から強い反対を受けることになった。彼らは、Libraが一部の国で準主権的な通貨になることを恐れたのだ。協会は2020年、その野心を抑えて、単一通貨のステーブルコインに注力することを発表した。

ステーブルコインとは、時間の経過によって変動することがない固定の価値を持つ暗号資産のことだ。例えば、Libra Associationが「LibraUSD」を発行するならば、1LibraUSDは常に1米ドルと同じ価値を持つことになる。

数カ月後、Libra Associationは再びいくつかの変更を発表、LibraはDiemに名称が変わり、協会名も「Diem Association(ディエム協会)」になった。同様に、Facebookのウォレットプロジェクトも
「Calibra(カリブラ)」からNoviにブランドが変更された。しかし、DiemもNoviも、まだ準備は整っていなかった。

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そして今、FacebookはNoviの試験を実際の一部ユーザーを使って始めようとしている。同社はまず、米国とグアテマラ間の送金に焦点を合わせることにした。送金したいNoviユーザーは、Noviアプリをダウンロードしてアカウントを作成し、デビットカードなどの支払い方法を使ってNoviに入金する。

入金された米ドルは、手数料なしでUSDPに変換される。Paxosが発行するUSDPは米ドルステーブルコインで、以前はパックスダラー(PAX)と呼ばれていたが、Paxosは最近、USDPにブランド名を変更した。

USDPはその価値を確保するために、現金および現金同等物によって担保されている。Noviユーザーの資金は、Coinbase Custody(コインベース・カストディ)によって管理される。つまり、CoinbaseがNoviのユーザーのためにUSDPの資金を保管するということだ。

Noviユーザーは、他のNoviユーザーにUSDPを送ることができる。繰り返しになるが、送金にかかる手数料は必要ない。しかし、お店での支払いや家賃の支払いにNoviを使うことはできない。そのためにユーザーは、現金の必要な場所では、Noviの残高を引き出したり、銀行口座に残高を送金したりできる。

しかし、NoviはUSDPをグアテマラ・ケツァルに変換する際に手数料がかかるかどうかについては言及していない。米ドルステーブルコインのUSDPをグアテマラの通貨単位に両替するには、為替レートを選択しなければならず、それにはスプレッド、流動性、その他のさまざまな変数が関わってくるからだ。

また、Noviは展開したいと考えるすべての市場で、フィアット / クリプトのオンランプおよびオフランプ(法定通貨と暗号資産の交換サービスを提供する場)を設けなければならない。

Facebookによれば、これはNoviの始まりに過ぎないという。それは第一に、まずはグアテマラと米国(アラスカ、ネバダ、ニューヨーク、米領ヴァージン諸島を除く)の一部のユーザーにのみ試験的に提供されるということ。そして第二に、FacebookとDiem Associationは、いずれ独自の暗号資産を立ち上げる計画を諦めていないということだ。

「我々のDiemに対するサポートに変更はなく、Diemが規制当局の承認を得て発行できるようになれば、NoviにDiemを導入して運用を開始するつもりであることを明確にしておきたい。私たちは相互運用性を重視しており、きちんと行いたいと考えています」と、NoviプロジェクトのリーダーであるDavid Marcus(デヴィッド・マーカス)氏はTwitterで述べている。

Facebookが暗号資産Libraの発行計画を発表したのは、2019年6月のこと。それ以降、暗号資産のエコシステムは大きく変化した。特に、いくつかのステーブルコインが信じられないほどの人気を博しており、Tether(テザー)とUSD Coin(USDコイン)の流通量は現在、合わせて1000億ドル(約11兆5000億円)を超えている。そんな中で、Diemが既存のステーブルコインに追いつき、新たなユースケースを開拓できるかどうか、興味深いことになりそうだ。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

暗号資産のPaxosがステーブルコインをPAXからUSDPに名称変更

暗号資産(仮想通貨)、Paxos Standard(PAX)の母体であるPaxos(パクソス)は、同社の暗号資産の名称変更を発表した。Paxos Standardは、Pax Dollarとなり、近々みなさんお気に入りの暗号資産取引所やウォレット、エクスプローラーなどで新しいティッカーシンボル「USDP」で識別できるようになる。

名称を除き、USDPは基本的にPAXと同一だ。他のステーブルコインと同様に、USDPは法的通貨と比べて時間とともに変動しないように設計されている。USDPの価値は米ドルに紐付けられている。1USDPの価値は常に1米ドルだ。

ステーブルコインには数多くの利点がある。送金は暗号資産をウォレットからウォレットに移すだけという簡単さだ。仲介銀行の情報を入力することも、現地の規制の心配をする必要もない。世界には銀行口座を持たない人がたくさんいる。ステーブルコインと暗号資産ウォレットには、伝統的銀行口座の代替手段になる可能性がある。

ステーブルコインはDeFiプロジェクト(分散型金融)を活用するためにも使える。例えばDeFiのレンディングプールに拠出して、手持ちステーブルコインの利息を得ることができる。

USDP以外にも人気のステーブルコインとしてUSD Coin(USDC)やTether(USDT)がある。見ての通り、時間とともに命名規則が現れている。実際Paxosは、自社のステーブルコインの名称変更はこの理由からだと言っている。

Paxosは、新たにトークンを発行するたびに、一定の米ドルと米ドル同等物を銀行口座に入金する。現在Paxosは米ドル同等物として短期償還の米国政府債券を利用している。同社の債券は監査法人が定期的に監査している。

Paxosは自社を規制遵守に注力している会社として位置づけようとしている。最近同社はUSDP、USDC、USDTの違いを強調したレポートを書いた。同社によれば、USDCとUSDTはそのリザーブ(裏付け資産)を理由に規制された資産とみなすべきでないという。Paxosは、業界で最も適法な企業となって企業顧客が優先パートナーとしてPaxosを選ぶことを望んでいる。

数日前、Circle(サークル)は、USDCはUSDCリザーブを現金および現金同等物に切り替えると発表した。今後暗号資産各社から、ステーブルコインのリザーブ戦略について話があることは間違いない。

画像クレジット:Kris Hoobaer / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nob Takahashi / facebook

PayPalと提携したPaxosが暗号資産インフラとサービス拡大で約326億円を調達

Paxos(パクソス)はOak HC/FTがリードしたシリーズDラウンドで3億ドル(約326億円)を調達した。これによりPaxosの評価額は現在、24億ドル(約2612億円)だ。同社は顧客に暗号資産(仮想通貨)プロダクトを提供したい法人顧客のためのインフラ構築とホワイトラベルのサービスを手がけてきた。

中でも、Paxosは暗号資産機能でPayPal(ペイパル)と提携した。2020年10月以来、PayPalの顧客はBitcoin(ビットコイン)、Ethereum(イーサリアム)、Bitcoin Cash(ビットコインキャッシュ)、Litecoin(ライトコイン)の購入、保持、売却ができる。PayPalの子会社Venmo(ベンモ)はちょうど数日前に同じ暗号資産機能を加えた

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PaxosのシリーズDラウンドにはDeclaration Partners、PayPal Ventures、Mithril Capital、Senator Investment Group、Liberty City Ventures、WestCapが参加した。

Paxosは暗号資産取引や決済、管理、トークン発行能力などさまざまなプロダクトを提供している。専門とする顧客はRevolut、Crédit Suisse、Société Générale、StoneXなど主に大企業だ。

Paxosは可能な限り規則を順守しようとしている。そしていくつかの国や分野の規制に引き続き従うつもりだ。

例えば同社はPaxos National Trust Bankを立ち上げて米国の証券取引委員会の清算機関登録に申し込む計画だ。シンガポールでは、主要決済機関ライセンスに申し込んでいる。この規制関係の取り組みは、安全な暗号資産の機会を求めているより多くの法人顧客との提携を育む。

同社はまた、Paxos Standard (PAX)という自前のステーブルコインも立ち上げた。ステーブルコインはBTCやETHのような暗号資産だ。しかしPAXの価値はUSD(米国ドル)で示される。いつでも1PAXは1USDだ。他の人気のステーブルコインとしてはTetherとUSDCがある。

Paxosはまた、独自ブランドのステーブルコインの発行も可能にしている。例えばBinanceは自社プラットフォームでBUSDを発行するのにPaxosと協業した。想像がつくだろうが、1BUSDの価値は1USDだ。

Paxosは金に支えられたデジタル資産であるPAX Goldでも知られている。Ethereumブロックチェーンで機能する限り効率的であるはずの金ETFの代替だ。

最後にPaxosはitBitという自前の暗号資産取引所を持っている。CoinMarketCapによると、itBitは一握りのものだけを扱う。消費者向けではなく、Paxosの他のプロダクトを動かしている。

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Paxos資金調達暗号資産

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi