テクノロジーの歴史で繰り返し起きてきた現象がまた起きている。あるジャンルの製品があまりに多様化し、無数のメーカーによってありとあらゆる機能とデザインが試されると、ユーザーの選択の基準は最後には価格に収斂してしまう。いったんそういう状況になると、小回りの効く新興メーカーが低価格を武器に既存の大メーカーに挑戦し、大メーカーは高価なハイエンド製品にシフトして売上高を確保しようと試みる。たとえばDellはネットブック市場の不振にDell Adamoで対応しようとした。そしてけっきょくは底なしの価格競争に疲れ果てて全員が倒れることになる。
ノートパソコン、フィーチャーフォン、上記のネットブックなどみなこの運命をたどった。
どうやらこの「死の価格レース」がスマートフォン市場にもやって来たようだ。いっとき絶好調だったLGもHTCも不振が続いている。次にコモディティー化の波に飲まれそうなビッグ・プレイヤーはSamsungだ。今後ひどいことになりそうな予感がする。
私はGalaxyシリーズの大ファンだ。しかし最新のS5には乗り換えなかった。理由はソフトウェアだ。もともとAndroidは完璧には遠い(といえば非難のコメントが殺到しそうだ。こう感じるのは私だけなのだろう)システムだが、マルウェアがはびこり、Play Storeにはガラクタのアプリが大量に並んでますますユーザー体験を損ねている。私は我慢して使っているが、楽しんでいるわけではない。
そのうえSamsungにはライバルが次々に現れている。300ドルのCyanogenmodベースのギーク向けスマートフォンもあれば、HuaweiやLenovoのエントリー・モデルもある。特に中国ではSamsungのシェアが急速にXiaomiに奪われつつある。130ドルと手頃な価格ながらスマートなRedMiハンドセットはSamsungの安っぽいプラスチックのエントリーモデルから魅力を失わせている。KantarWorldPanel ComTechの5月末のレポートによると、4月にはXiaomiは販売台数トップの座を再度奪った。しかも顧客の4分の1はSamsungからの乗り換えだったという。
つまりSamsungはシェアは低いものの天文学的利益を積み上げているAppleから無名のハードウェア・スタートアップまで全員と競争しなければならない。
この好ましからゼル状況はSamsungの売上高の推移に現れ始めている。売上高は9%から11%ダウンし、利益は24%ダウンした。S5は起死回生の特効薬という触れ込みだったが、 そうはならなかった。笑ってしまうのはこのブルームバーグの記事と記事のURLの食い違いだ。〔記事のタイトルは『Samsung、四半期決算はアナリストの予想を下回るも業績回復を予測』だが、URLの文字列には『Samsung予測を下回る―低価格製品が不振』とある〕。ビジネス界は皆Samsungに回復してもらいたいのだが、そういう情勢にはなっていない。
テクノロジー・アナリストのBen Thompsonはこの点について鋭い説明を与えている。まず第一に「ほとんどの消費者は価格を第一に考える」。たとえばMoto GとSamsungのスマートフォンという選択では結局価格がものを言う。無数の類似製品の山の中ではブランドは無力だ。
Thompsonはこう書いている。
結局のところSamsungの最大の問題はソフトウェアで差別化ができていない点だ。そうなれば長期的な競争力の源泉は価格しかなくなる。この点ではHPとDellを先例として学習する必要があるだろう。スマートフォン市場はパソコン市場とよく似ている。独自のOSを搭載したハードウェアのメーカー〔Apple〕だけが巨額の利益を積み上げる一方で、それ以外の全てのメーカーはソフトウェアの支配者に利益を吸い上げられるだけの敗者となってしまう。
と、これが偽らざる実情だ。どんぐりの背比べの参加者で満員となった市場(そうではないと言っても無駄だ)では差別化の要因は価格だけになる。誰もそんな競争はしたくない。しかしけっきょくはそこに落ち込んでいくのだ。今後状況はさらにひどくなるだろう。
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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+)