今年初めに発表されたように、GoogleがAndroidデバイスにRCS(Rich Communication Service)を導入する。RCSはアップグレード版のSMSとも言えるだろう。Googleにとって初のパートナーとなるのは通信キャリアのSprintで、Androidデバイスを使用するSprintのユーザーは今日からRCSメッセージング・サービスを利用できるようになる。
RCSを利用することで、従来のSMSよりも優れたメッセージ体験ができる。改良されたグループ・チャット、高解像度の写真のシェア機能、レシートの読み込み、タイピング・インディケーターなどがその例だ。
Googleがこの計画を最初に発表したのは、2015年9月にRCSのプロバイダーであるJibe Mobileを買収した時だ。Googleによれば、今回Sprintが提供する新しいサービスはJibeのクラウド・プラットフォームによって実現されているという。
Sprintと契約しているユーザーは、Googleの「Messenger」を使ってRCSを利用することができる。デバイスにAndroid KitKat以上のバージョンが搭載されていること、デフォルトのSMSアプリケーションとしてMessengerを利用していることが条件だ。
Sprintから提供されているLGとNexusの端末を利用している場合、RCSへのアップグレードは自動的に行われる。それ以外のデバイスを利用するユーザーであっても、Play StoreでMessengerをダウンロードすればRCSを利用することが可能だ。
Google純正のスマートフォンであるPixelにはMessengerがプリインストールされているため、SIMフリーのPixelにSprintのSIMカードを入れていればRCSを利用することができる。
Googleによれば、来年以降にSprintから販売されるすべてのAndroid端末には、デフォルトのSMS/RCSアプリとしてMessengerがプリインストールされる予定だ。
SprintのAndroid端末のユーザーは、ライバルであるAppleのiMessageや他のサードアプリで利用されているような機能を楽しむことができる。例えば、最近のMMSはグループ・メッセージ機能に対応しているが、グループに名前をつけたり、グループのメンバーを追加したり、自身がグループを抜けたりということはできない。しかし、RCSにはそのような機能も備わっている。
それに加えて、従来の100倍もの容量の写真やビデオを送信できる機能や、既読機能、そして相手がタイピング中であることを知らせてくれるタイピング・インディケーターなども備わっている。
RCSのテクノロジー自体は新しいものではなく、それが最初に利用できるようになったのは2007年頃だ。しかし、GSMAによれば、現時点でRCSを導入している通信キャリアは全世界で49社しかない。だが、これまでのRCSスタンダードには古いイテレーションが含まれており、Universal Profileと呼ばれるRCSの新基準をサポートするのはSprintが初めてだという。
また、GoogleがRCSをサポートするのもこれが初めてのことだ。(もちろん、今はGoogleの傘下となったJibeは古いバージョンのRCSをサポートしていた)。
RCSをサポートすることでGoogleはAppleのiMessageへの対抗策を手にした一方、RCSは世間一般に浸透している技術ではないという問題がある。すべてのAppleデバイスで利用できるiMessageとは違い、RCSの場合はユーザーが契約する通信キャリアによっては利用できないこともある。しかも、古いAndroidスマートフォンではRCSを利用することは出来ない。言い換えれば、少なくとも現時点では、この発表が与えるインパクトは限定的だということだ。
Googleは「今後数カ月のうちに」他のキャリアとのパートナーシップも発表する予定だとしているが、そのキャリア名と発表時期は明かさなかった。
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また、今回の発表によってGoogleの「メッセージング戦略」がさらに分かりづらくなった。結局、Googleがもっとも力を入れているのはどのアプリなのだろうか?
RCSを利用するためには、ユーザーはGoogleのMessengerアプリをデフォルトのクライアントに設定しなければならない。しかし同時に、Googleはチャット・通話アプリであるHangoutも提供している。さらには、先日発表したAlloのことを、AIアシスタントを搭載した未来のメッセージング・アプリだとも呼んでいる。AlloもPixelスマートフォン、Pixel、Pixel XLにプリインストールされるアプリの1つだ(HangoutをデフォルトのSMSアプリとして設定することはできるが、Alloはできない)。
Alloと、そのビデオ版であるDuoはクロスプラットフォームのアプリではあるものの、WhatsApp、Facebook Messengerなどが市場を独占している今となっては遅れをとった感が否めない。
また、GoogleはiMessageに対抗するために必要なインフラを持ち合わせていない。
Appleのエコシステムにはハードウェアだけでなくソフトウェアも含まれており、そのエコシステムを利用するユーザーはiMessageを使わざるを得ない。しかも、そのプラットフォームには新しいApp Storeも加えられる。
Googleの説得によって、今後より多くのキャリアがRCSをサポートする可能性はあるが、それには時間がかかる。しかも、RCSを利用するためにはアプリをアップグレードし、デフォルト設定を変更する必要があること、さらにはデバイス自体を買い換える必要があるかもしれないことを考えると、iMessageがAppleのエコシステムの中心である一方で、RCSがエコシステムの中心的な存在になることはないだろう。また、RCSが利用可能なデバイスと、そうでないデバイスの間で分断化が続いていく。Googleが作り続ける、その他のメッセージング・アプリとの分断化は言うまでもない。
[原文]
(翻訳:木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter)