Slack買収を投資家が見守る中、セールスフォースが予測を上回る成長

米国時間12月1日の市場閉鎖後、Salesforce(セールスフォース)が会計2021年度第3四半期(2020年10月31日締め)の決算を報告した(Salesforceリリース)。CRMの巨人は売上54億2000万ドル(約5660億円)を計上、前年同期から20%上昇した。純利益は10億8000万ドル(約1130億円)、1株当り利益は1.15ドルだった。

Yahoo Financeによると、アナリストは1株当り利益0.75ドル、売上52億5000万ドル(約5490億円)と予測していた。

Salesforceの株価は時間外取引で下落し、本稿執筆時点で3.6%値を下げている。値下がりの原因が第3四半期の結果なのか第4四半期のガイダンスを上方修正したためなのか、新たな2022年度予測なのか、それとも最近発表したSlack買収なのはわからない。

直近のTechCrunchの記事によると、SalesforceはSlack(スラック)を277億ドル(約2兆8940億円)の現金および株式で買収した。この件はSlackの株価に即座に影響を与え、ニュース直後に1ポイントを本日下げた後、買収の噂がリークされて以来50%近く跳ね上がった。

Slackの株主は忍耐が報われることになる。この大型買収が会社の成長を後押しするかどうかはSalesforceのリーダーシップにかかっている。

Salesforceは12月2日、会計2021年度第4四半期の売上を56億6500万~56億7500万ドル(約5920〜5930億円)と予測していることを投資家に伝えた。これは1年前の同期に比べて約17%の上昇だ。同社は2022年度第1四半期にも約17%成長すると予測している。

しかしSalesforceは、会計2022年度全体で21%の成長を見込んでいる。どうやって加速するつもりなのか?同社の予測にはSlackが組み込まれている。

会計2022年度の通年売上ガイダンスでは、Slack Technologies, Inc.買収におけるパーチェス法による会計処理による約6億ドル(約630億円)、契約見込み第2四半期後半、Acumen Solutions, Inc.のパーチェス法による会計処理による約1億5000万ドル(約160億円)、契約見込み第2四半期内の結果が含まれている。

そういうわけでSalesforceの投資家は2回の17%成長の四半期の後、投資先企業は翌年度21%成長へと加速することになる。それは企業価値277億ドルということのか?

関連記事:SalesforceがSlackを約2.9兆円で買収、買収前の企業評価額は2.6兆円強だった

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SalesforceがSlackを2.9兆円で大型買収

年間収益が最近200億ドル(約2兆880億円)を突破したCRMの強豪であるSalesforce(セールスフォース)は米国時間12月1日、Slackを277億ドル(約2兆8740億円)で大型買収し、エンタープライズソーシャルに深く踏み込んでいくと発表した。先週には保留中の買収の噂が浮上し、Slackの株価が急騰していた

Salesforceの共同創業者であり最高経営責任者(CEO)のMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏は、今回の買収について言葉を濁さなかった。「これは相性抜群の縁組みです。SalesforceとSlackはともにエンタープライズソフトウェアの未来を形作り、あるゆる人々がオールデジタルで世界中のどこでも仕事ができるように、働き方を変えていくでしょう」とベニオフ氏は声明で述べた。

SlackのCEOであるStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏も、将来の上司に劣らず喜びを表現している。「ソフトウェアがあらゆる組織のパフォーマンスにおいてますます重要な役割を果たすようになるにつれ、私たちは複雑さを減らし、パワーと柔軟性を高め、最終的にはより高度な調整と組織の俊敏性を実現するというビジョンを共有しています。個人的には、これはソフトウェアの歴史の中で最も戦略的な組み合わせだと思っています。一緒に始めるのが待ち遠しくて仕方ありません」と、バターフィールド氏は声明で述べている。

すべての企業の、すべての従業員はコミュニケーションをとる必要があるが、Slackはそれを巧みに強化させることができる。さらに、Slackは顧客やパートナー企業との外部コミュニケーションも円滑にする。Salesforceのような企業とその製品群にとって、それは非常に有益なものになるはずだ。

最終的に、Slackは買収の機が熟していたのだ。Slackは株式公開後、2020年に入る頃にはその価値の約40%を失っていた。直近の決算報告(未訳記事)後には、同社の価値は16%下がり、Salesforceの買収がリークされる前は、1株あたりの価値が直接上場の基準価格よりも数ドル高いだけだった。2020年7月31日までの2つの四半期の間に1億4760万ドル(約154億1600万円)の純損失を計上し、Slackの魅力的でない公開評価と収益性への曲がりくねった道は、今回のような買収の標的となっていた。ここでの唯一の驚きはその価格だ。

YahooとGoogleファイナンスの両方によると、Slackの現在の評価額は250億ドル(約2兆6100億円)強で、時間外の価格変化が非常に小さいことを考えると、市場が同社にある程度効果的な価格を付けたことを意味する。Slackは、買収が明らかになる前の評価額から約48%上昇した。

また、今回の新たな買収により、Salesforceはかつてのライバルであり、時には友人でもあったMicrosoft(マイクロソフト)と肩を並べ、そして競い合う(未訳記事)ことになる。同社のMicrosoft Teamsは市場でSlackと直接競合する製品だからだ。マイクロソフトは、過去にSalesforceが今回支払う金額の数分の1でSlackの買収を断念した(未訳記事)が、ここ数四半期はTeamsを重要な優先事項としており、エンタープライズソフトウェア市場の一片たりとも他社に譲ることを嫌っている。

Slackが他の企業とは一線を画していたのは、少なくとも当初は、他の企業向けソフトウェアとの統合が可能だったからだ。これにボットやインテリジェントなデジタルヘルパーを組み合わせれば、同社はSalesforceの顧客に集中的に仕事ができる中心的な環境を提供できる可能性がある。必要なことはすべてSlackでできるからだ。

今回の買収はSalesforceにとって、2016年に7億5000万ドル(約783億円)で買収したQuipに続くものだ。QuipはSaaSの巨人にドキュメントをソーシャルに共有する方法をもたらした。Slackの買収と組み合わせれば、Salesforceは自社内のオプションであるChatter(エンタープライズソーシャルの初期の試みで現実にはまったく普及しなかった)よりも、はるかに堅牢なソーシャルストーリーを伝えることができる。

注目すべきは、マイクロソフトがSlackに興味を持っていると報じられたのと同じ2016年に、SalesforceがTwitter(ツイッター)に興味を持っていたことだ。最終的には、株主の反対を受け、ソーシャルプラットフォームの物議を醸している側面を扱いたくないということで買収から手を引いた。

Slackは2013年に設立されたが、その起源(未訳記事)は2009年に設立されたGlitchというオンラインマルチプレイヤーゲーム会社にまで遡る。このゲームは最終的には失敗に終わったが、このスタートアップは会社を作る過程で社内メッセージングシステムを開発し、それが後にSlackへと発展した。

その歴史的な成長によってSlackは非公開の間に10億ドル(約1044億円)以上を調達し、2019年の株式公開前に70億ドル(約7310億円)もの評価額を獲得した。「Glitchがユニコーンになった」ストーリーは単純に見えるものの、Slackはマイクロソフトだけでなく、Cisco(シスコシステムズ)、Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)、さらにはAsanaやMonday.comといった企業との競争に常に直面している。

Slackにとって、公開市場への道のりは誇大広告と予想外の期待に満ちていた。同社はすでにSalesforceと同じくらい有名だった。当時、そのデビューはインディーズ会社としての長い期間の始まりだと感じられた。しかしそうはならず、その期間は巨額の小切手によって切り詰められてしまった。これが「食うか食われるか」のテック業界だ。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Slack買収の噂が渦巻く中、セールスフォースの大型買収6件をチェックしてみた

先週SalesforceがSlack買収を考えているという噂が流れた。米国時間11月30日、CNBCは「買収はほとんど完了しており、明日にも発表される可能性がある」と報じている(CNBC記事)。実現すれば超大型買収になるはずだが、SlackはSalesforceにとって最初の大規模な買収ではない。我々はこの機会にSalesforceの大型買収を確認しておくことが必要だろうと考えた。

Salesforceはすでに年間収入が200億ドル(2.1兆円)を超えている。同社は過去に多数の買収を行って収入を拡大し、さらに大きな市場を獲得してきた。

過去最大の買収は、昨年、2019年のTableau買収で価格は157億ドル(約1兆6000億円)だった。 これによりSalesforceは、同社に欠けていたデータ視覚化テクノロジーを獲得した。巨大な既存市場を持つSalesforceはデータ視覚化のニーズに不足することはなく、この買収は売上拡大に大きく貢献した。さる8月にTechCrunchとのインタビューでSalesforceのCEO、プレジデントを務めるBret Taylor(ブレット・テイラー)氏はTableau買収が同社の成長を実現する重要な要素だと語っている。ちなみに同氏自身、2016年の7億5000万ドル(約780億円)のQuip買収を機にSalesforceに加わった。テイラー氏はこう述べている。

Tableauはビジネス面でもテクノロジー面でも戦略的に重要な要素です。企業がデジタル化するに従って、顧客ニーズを的確に理解するためにデータを視覚化して理解することが必須になってきました。これは今後ますます重要になります。

Salesforceの大型買収案件の2位には2018年の65億ドル(約6800億円)のMuleSoft買収(未訳記事)だ。Salesforceはこの買収でエンタープライズ向けSaaS企業としてそれまで持っていなかったデータへのアクセスが可能になったMuleSoftを活用して、事業部ごとのオンプレミスや複数のクラウドに分散して存在するデータを統合することが可能になった。TableauとMuleSoftという2つのメガディールを組み合わせることによって、エンタープライズデータを視覚化し、スマートCRMアシスタントのSalesforce Einsteinサービスにさらにデータを供給できるようになった。

2016年には28億ドル(約2900億円)でeコマースのDemandwareを買収した。同社はSalesforceに組み込まれてCommerceCloudになった。すると2020年のパンデミックで大小の企業がビジネスをオンラインに移行することを余儀なくされた。このためeコマースプラットフォームは飛躍的に重要性を増すこととなった。

2013年には25億ドル(約2600億ドル)でExactTargetを買収(未着)したが、これはSalesforceとして初のビリオンダラー(10億ドル級)買収となった。これが後にMarketingCloudに発展する。この買収により電子メールを利用したマーケティング事業に参入した。パンデミックで顧客と非対面でコミュニケーションを維持することが重要になった2020年にデジタルマーケティングの重要性は再度増大している。

2019年にはMuleSoftの買収完了の数日にSalesforceはまた財布を開き、ClickSoftware買収(未訳記事)に13億5000万ドル(約1400億円)を支払った。これはカスタマーサービスとフィールドサービスを含むサービスクラウドを重視することを意味した。 この買収自体はフィールドサービスに関するもので、同社は出張メンテナンスなどのフィールドサービスを重用な事業とする顧客多数にアクセスできるようになった。

最新のビリオンダラー級買収は(Slack買収の噂を別にすれば)、2020年初頭に13億3000万ドル(約1400億円)のVlocity買収だ。Vlocity買収は、SalesforceのコアビジネスであるCRM(顧客関係管理)分野に対する強化策だった。 このプラットフォーム上に構築された通信、メディア、エネルギーなどのバーティカル市場をSalesforceに統合することができた。適合性は極めて高かったといえる。 Vlocityのプラットフォームを使用することでSalesforceはこれらのバーティカルの構築、強化を継続することができ、専門市場における地位の強化につながった。

現時点ではまだ断定はできないが、Slackの買収が実現する可能性は高い。Salesforceの買収攻勢が続く中、Slack買収が実現すればTableau買収よりさらに巨大なものとなることが予想される。

【TechCrunch Japan編集部】円表示は2020年12月1日現在の104.3円による概算

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SalesforceによるSlack買収検討との報道を受けてSlack株価が急騰中

Salesforce(セールスフォース)が人気の職場チャットSlack(スラック)の買収に関心を持っている(The Wall Street Journal記事)というニュースを受けて、Slackの株価は米国時間11月25日に急騰した。

Yahoo Financeのデータによると、Slackの株価は25%近く上昇している。この記事執筆時点でSlackの株価は36.95ドル(約3860円)で、企業価値は約208億ドル(約2兆2000億円)だ。有名な元ユニコーン企業である同社の2019年の株価は最低が15.10ドル(約1580円)、最高が40.07ドル(約4200円)だった。

逆に、Salesforceの株はニュースを受けて低調で、記事執筆時点で3.5%下げている。サンフランシスコ拠点のSaaSパイオニアであるSalesforceは買収のアイデアで印象付けることができなかったか、あるいは2019年のIPOレベルの株価に戻すことになるかもしれない買収の価格について心配されているのだろう。

CRM(顧客情報管理)マーケットにおいて確固たる地位を築き、さらに大きなプラットフォームプレイヤーになることを熱望している巨大ソフトウェア企業のSalesforceがなぜSlackを買収したいのか。メリットはあるかもしれないが、すぐにははっきりしない。メリットとしては、2社のプロダクトを互いの顧客に売り込んでさらなる成長に結びつけるというのが考えられる。Slackは急成長のスタートアップの中で幅広いマーケットシェアを持っているが、その一方でSalesforceのプロダクトは多くの大企業に利用されている。

TechCrunchは買収の可能性についてSalesforce、Slack、そしてSlackのCEOにコメントを求めている。返事があればアップデートする。

Salesforceは2016年にQuip(クイップ)を7億5000万ドル(約783億円)で買収し、これにより書類共有やコラボの機能を手に入れたが、Salesforce Chatterが唯一のソーシャルツールだ。Slack買収でSalesforceは確固たる企業向けのチャットサービスを、そして顧客とツーリングの間で多くの相乗効果を手に入れる。

しかしSlackは常に、ただのチャットクライアント以上のものだった。企業がワークフローを埋め込めるようにしているが、これはSalesforceのセールス、サービス、マーケティングなど一連のプロダクトにぴったり合うだろう。2社がともにSalesforceエコシステムの内外で協業して、スムーズで統合されたワークフローを構築できるようになる。理論上はSalesforceもできるが、2社が合体すればインテグレーションはより強固なものになるのは間違いない。

さらには、買収によりSalesforceは収入のエンジンを動かし続けるために常に求めていた確実な収入源を得ることになる、とConstellation ResearchのアナリストHolger Mueller(ホルガー・ミューラー)氏は話す。「SlackはSalesforceのプラットフォームを強化するのに良い候補かもしません。しかしさらに重要なことに、使用増とSalesforceプロダクトの『頻繁な使用』を意味しています。コラボはCRMにとってだけでなくベンダーの成長中のwork.comプラットフォームにとって大事なのです」とミューラー氏は述べた。元友達から敵になったMicrosoft(マイクロソフト)に報復する方法となるだろう、とも話した。

これはSlackがこの数四半期、マイクロソフトからかなりの砲火を浴びているからだ。レッドモントに本社を置くソフトウェア大企業のマイクロソフトはTeamsサービスの競争にリソースを注いだ。TeamsはSlackのチャットツールと、Zoomのビデオ機能に挑んおり、この数四半期でかなり顧客数を伸ばしてきた。

Slackを大規模テック企業のコーポレートホームとすれば、マイクロソフトが企業向けソフトウェア売上高のリバイアサンの下でSlackを砕くことはないかもしれない。そして時にMicrosoftの味方であるSalesforceは急成長中のSlackを拡大しつつある自社のソフトウェア収入に加えることを気にしないはずだ。

この買収の実現は、価格にかかっている。Slackの投資家は情報が漏れる前の1株あたりの価格にかなりのプレミアムを上乗せしなければ売却したがらないだろう。

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(翻訳:Mizoguchi

セールスフォースは数週間前に1000人レイオフを発表したが来年1.2万人を新規雇用

奇妙なタイミングだ。Salesforce(セールスフォース)は8月末、売上高50億ドル(約5230億円)、年換算では初の200億ドル(約2兆1000億円)というインパクトのある四半期決算を発表した翌日に従業員1000人のレイオフを明らかにした。この2つは注意を引くものだった。

同社のCEO兼共同創業者のMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏は9月18日、同社が今後6カ月で新たに4000人を、来年にかけて1万2000人を採用するとツイートの中で発表した。複数の要素が混ざっているメッセージのようだが、おそらくより必要としているエリアへのリソース再割り当てについて言っているのだろう。

マーク・ベニオフ:Salesforceは、今後6カ月間で4000人、、来年は1万2000人の仕事を追加する予定です。ソフトウェアの未来を定義する5万4000人の従業員を擁する強力なグループに参加してみませんか。セールスフォースは世界で最も急成長しているトップ5のエンタープライズソフトウェア企業です。jobs@salesforce.com @salesforcejobs

セールスフォースは雇用についてそれ以上のコメントはしなかったが、新型コロナウイルスの感染蔓延が顧客に影響をおよぼしているにもかかわらず、同社はかなり好調だ。先の四半期決算で同社は、一部の顧客が景気後退により支払いが困難になっているために売上高の成長は緩やかになるだろうとの見通しを示した(未訳記事)。

それゆえに、CRM巨大企業の同社が8月に四半期決算を発表したときに、状況をものともせずかなりの好成績だったことは驚きだった。同社は1000人のレイオフを明らかにしたが、対象者に社内で別のポジションを見つけるよう60日の猶予を与えると表明した。レイオフ対象となった従業員に新しい適切な仕事を提供し、従業員はさまざまなポジションから選ぶことができる。

レイオフ発表時の同社の従業員数は5万4000人で、レイオフする人数は全体の1.9%にあたる。来年1万2000人を採用すれば、来年の今頃の従業員数はおおよそ6万5000人になる。

画像クレジット: Ron Miller/TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi

Salesforceはどのようにして200億ドルの年換算売上高を予定より早く達成したのか

Salesforce(セールスフォース)は1999年に創業し、後にSaaSやクラウドコンピューティングと呼ばれるものに早期に取り組んだ1社だ。8月25日に、SaaSの巨人の(四半期)売上高は50億ドル(約5250億円)を超え、年換算で初めて200億ドル(約2兆1000億円)に達し、大きな節目を迎えた。

Salesforceの売上高はこの数年堅調に推移しているが、2017年11月に売上高が100億ドル(約1兆500億円)に達したとき、CEOのMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏はすぐに200億ドル(約2兆1000億円)の目標を設定した。その後5年で、その目標をいとも簡単に達成した。同氏の当時の発言は以下の通りだ。

実際、これまでで最も急速に成長し100億ドルを達成した法人向けソフトウェア企業として、次は2022年度までにオーガニックで200億ドル以上に成長することを目標としている。これまでで最も速く200億ドルを達成する法人向けソフトウェア企業になる計画だ。

成功をもたらした要素は数多くある。Salesforceプラットフォームの進化と同時に、積極的な買収戦略を採用した。企業がこれまでになく迅速にクラウドに移行したことも寄与した。ただSalesforceが2017年に掲げた高い目標を早期に達成できたのは、パンデミックの中でも独自の責任ある資本主義を実践したからだ。

プラットフォーム戦略

同社の売上高の成長には多くの要因があるが、大きいのはプラットフォームだ。プラットフォームはCRM、マーケティングオートメーション、カスタマーサービスなどの一連のソフトウェアツールを提供するだけではない。顧客はSalesforceが構築した独自のソフトウェアスタックを利用して自身のニーズを満たすソリューションを開発することもできる。

Salesforceの社長兼最高執行責任者であるBret Taylor(ブレット・テイラー)氏は、プラットフォームが会社の成功に大きな役割を果たしたと語る。「実際、当社のプラットフォームは、さまざまな形でSalesforceの推進力の大部分を支えている。1つは、社内でもよく話し合ったが、プラットフォームのテクノロジーの特徴そのものだ。つまり、ローコードで、価値を生みだすまでの時間が短い」

「ローコードプラットフォームとソリューションを迅速に立ち上げる能力がこれまで以上に必要とされる。我々の顧客はこれまで以上に迅速にビジネスの変化に対応する必要があるからだ」と付け加えた。

同氏は、Salesforceを基盤として構築され先月公開したnCinoを代表的な例として挙げた。同社はSalesforceを基盤としており、AppExchangeマーケットプレイスで入手できる。顧客となる銀行に対し、Salesforceが開発した機能をベースとしたオンラインビジネスを行うためのツールを提供する。

買収戦略

1999年に導入した中核のCRM製品に加え、同社はマーケティング、販売、サービスツールのセットを幅広く構築してきた。それらと同時に、同社の成功に貢献したもう1つの大きな要因は、 製品ロードマップに沿って多くの企業を買収したことだ。

買収の中でも最大のものは、約1年前に完了した157億ドル(約1兆6500億円)のTableau(タブロー)のディールだ。テイラー氏はデータがデジタル化を進めるとみており、それはパンデミック中に広く見られたことでもある。Tableauがその中で重要な役割を果たす。

「Tableauは非常に戦略的だ。収益面からも技術戦略面からも」と同氏は述べた。企業のデジタルシフトが進むにつれ、データを視覚化によって理解し、顧客のニーズを深く把握することがこれまで以上に重要になるからだ。

「基本的に企業がオールデジタルの世界で成功するために必要なのは、急速な変化に対応する能力だ。つまり、データを中心とした文化を作り出す必要がある」と同氏は語った。そうすれば企業は新しい顧客の要求やサプライチェーンの変化などに迅速に対応できる。

「すべてにデータが関わってくる。Tableauが前四半期に大きく成長した理由はデータを使った会話だと思う。会社全体が、あるいは経済全体がデジタル化されていくと、データがこれまで以上に戦略的になる」と同氏は語る。

この買収と、2018年に65億ドル(約6800億円)で買収したMuleSoftが、同社にデータを捉えて視覚化する方法をもたらした。データが企業のどこに存在するかを問わない。「MuleSoftとTableauの補完関係は強調する価値があると思う。MuleSoftは、レガシーシステム上であれ、モダンシステム上であれ、すべての法人データのロックを解除する。そしてTableauがデータの理解を可能にする。当社はデータを中心に完璧なソリューションを生み出すことができるため、全体として非常に戦略的な価値提案だと言える」とテイラー氏は述べた。

心ある資本主義

ベニオフ氏は、8月25日のMad Money(CNBCの番組)に出演した際、慈善事業とボランティア活動を会社の中核として位置付けているにもかかわらず、依然として株主に確かな利益をもたらしていることに喜びを感じていると述べた。Mad MoneyのホストであるJim Cramer(ジム・クラマー)氏に次のように語った。「これはステークホルダーキャピタリズムの勝利だ。上手くやりつつ善をなすことが可能なことを示している」。 これは同氏が過去にも頻繁に表明していることで、良き企業市民としてコミュニティに還元しながら、なおかつ金を稼ぐことができると主張している。

56グループの創設者・プリンシパルアナリストであり、CRM at the Speed of Light(邦訳「CRM 実践顧客戦略」)の著者であるPaul Greenberg(ポール・グリーンバーグ)氏は、この価値観が同社とその他大勢を分かつものだと述べる。「Salesforceの優れた能力に加え、私が同社の並外れた成長が深刻に減速しないと考えている理由の大部分は、同社がテクノロジービジネスを企業の社会的責任と一致させることに成功していることによる。それが同社を抜きん出た存在にしている」とグリーンバーグ氏はTechCrunchに語った。

昨日(8月25日)の数字は2021年第1四半期に続くものだ。同四半期後、同社は弱気の業績見込みを発表した。同社の一部の顧客がパンデミックの影響により財務的に苦しんでいたためだ。ふたを開けてみれば影響はなかったようで、第3四半期の見込みも順調に見える。同社によれば、第3四半期売上高の予想は52億4000万ドル~52億5000万ドル(約5500~5510億円)で、前年同期比約16%増だ。

ベニオフ氏はパンデミックが始まったときに90日間はレイオフをしないと約束した。90日はすでに経過しているが、The Wall Street Journal(ウォールストリートジャーナル)が8月25日、Salesforceが5万4000人の従業員のうち1000人の削減を計画していると報じたことは注目に値する。対象となった従業員には職探しのために60日間が与えられた。

200億ドルに到達する

確かに200億ドル(約2兆1000億円)の年換算売上高に到達したことは、その目標を達成した速度と同様に重要だ。しかしテイラー氏は、ベニオフ氏がその目標を設定した2017年とは異なる会社に進化していると見ている。

「当社が成長できた理由は、ビジョンを実際に実現するためのオーガニック成長、イノベーション、買収によるものだと思う。これらがかつてないほど重要になっていると思う」と同氏は言った。

プラットフォームの変化を見れば、1つの傘の下で異なるカスタマーエクスペリエンスを提供する機能を備え、顧客に対し開発に必要なツールを提供することが重要だったことがわかると同氏は述べた。

「当社は企業として、カスタマーリレーションシップマネジメントの意義を常に再定義してきたと思う。セールスチームが営業機会を管理することだけではない。カスタマーサービス、eコマース、デジタルマーケティング、B2B、B2Cといったものを含むすべてだ」と同氏は語った。

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi

Salesforceは売上5300億円超えの記録的四半期の一方で約1000人をレイオフ

奇妙なタイミングのように感じるが、Salesforce(セールスフォース)は同社が約1000名の従業員をレイオフするという米国時間8月26日の報道を認めた(Wall Street Journa記事)。5万4000人という強力な労働人員の約1.9%にあたる人数だ。このニュースは、米国時間8月25日に同社が四半期売上が50億ドル(約5333億円)を初めて超えた記録的四半期決算を報告(セールスフォースプレスリリース)した直後に発表された。

実際、ウォール街はセールスフォースの実績に色めき立ち、株価は8月25日に26%の急騰を記録(CNBC記事)し、会社の価値を大きく高めた。こうした驚きの金銭的成功と本日のニュースの折り合いをつけるのは一見困難に思える。

しかし実際には8月25日の業界アナリスト向けの電話会見で、プレジデント兼CFOのMark Hawkins(マーク・ホーキンス)氏が漏らしていたことだった(The Money Fool記事)。ただし同氏はL(レイオフ)のつく単語そのものを使うことはなかった。代わりにこの差し迫る変革を、リソースの再配置と表現した。

同時にホーキンス氏は今後1~2年における投資戦略の変更について語った。「これは、事業優先度に適合しない分野を見直し、成長に向けてリソースを再配置することを意味している」と同氏が会見で話した。

この内容は、TechCrunchがニュースを確認したときにセールスフォース広報が話した内容と正確に一致している。「当社は会社が成長を続けるためにリソースを再配置する。これには継続的な雇用、戦略的分野強化のための一部従業員の配置転換、および事業優先分野にあてはまらない職の一部削減などが含まれる。影響を受ける社員に対しては、社内外を問わず次の職場を見つける手助けをする」と広報担当者は語った。

ちなみに、今年セールスフォースのCEOであるMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏が、90日間は大規模なレイオフを行わない(未訳記事)と誓約していたのは今となっては注目に値する。

現在は、その90日という期間ははるか前に過ぎており、会社は何らかの人員整理を行うべき時がきたと決断した。

これをServiceNow(サービスナウ)のCEOであるBill McDermott(ビル・マクダーモット)がベニオフ氏のツイートから数週間後に、今年いっぱい1人の社員もレイオフしない(未訳記事)ことに加えて、年内に全世界で1000人を雇用し、夏のインターンを360人受け入れる と約束した発言と比較するのも興味深い。

画像クレジット:Ron Miller/TechCrunch

関連記事:Salesforce’s Benioff pledges no ‘significant’ layoffs for 90 days(未訳記事)

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

オラクルとセールスフォースのCookie追跡がGDPR違反の集団訴訟に発展

米国時間8月14日、データブローカー大手のOracle(オラクル)とSalesforce(セールスフォース)による広告のトラッキングとターゲティングのためのサードパーティ製Cookieの使用は、英国とオランダで発表された集団訴訟(クラスアクション)形式の訴訟の焦点となった。

この訴訟では、リアルタイム入札型広告オークションを実施するためにネットユーザーを大量に監視することは、個人データの処理に同意することをめぐるEUの厳格な法律に適合するとは考えられないと主張している。

訴訟当事者によると最終的に主張が認められて勝訴すれば、集団請求は100億ユーロ(約1兆2600億円)を超える可能性があると考えている。

英国では、データの権利に関連するケースで集団的損害賠償を追求するための確立されたモデルがないことを考えると、この訴訟は法的なハードルに直面する可能性も出てくるが、変化の兆しはある。

非営利財団のThe Privacy Collectiveは米国時間8月14日、オランダ・アムステルダムの地方裁判所で1件の訴訟を起こし、オラクルとセールスフォースが第三者のトラッキングCookieにやその他のアドテクノロジーを介した人々の情報の処理と共有において、EUの一般データ保護規則(GDPR)に違反していることを告発した。

このオランダでの訴訟は、法律事務所のBrandeisが主導するもので、GDPR違反に関連した集団訴訟としてはオランダ史上最大となる。この財団は、両社によって個人データが同意と認識なしに使用されたオランダ国民全員の利益を代表することになる。

同様の訴訟が今月下旬、英国・ロンドンの高等裁判所にも提出される予定で、GDPRと英国のPECR(Privacy of Electronic Communications Regulation)に言及することになっている。この裁判は、法律事務所のCadwaladerが主導する。

GDPRの下では、個人データを処理するためにEU市民に同意を得るには、必要な情報を提供したうえで、同意するかどうかを自由に選択できるようにしなければならない。この規則はまた、個人情報のコピーを受け取ることができるなど、個人情報に関する権利を個人に与えられている。

今回の訴訟では、このような要件に焦点が当てられている。テック大手のサードパーティ製のトラッキングCookieであるBlueKaiやKrux、Amazon、Booking.com、Dropbox、Reddit、Spotifyなどの人気ウェブサイトでホストされているトラッカー、その他多数のトラッキング技術が、ヨーロッパ人のデータを大規模に悪用するために使用されていることを主張している。

オラクルのマーケティング資料によると、同社のData CloudとBlueKai Marketplaceプロバイダーのパートナーは、約20億人のグローバルな消費者プロファイルにアクセスできる。なお、TechCrunchが6月に報告したように、BlueKaiはデータ侵害に遭い、数十億件の記録がウェブ上に晒された(未訳記事)。

一方セールスフォースは、そのマーケティング・クラウドが毎月30億件以上のブラウザやデバイスと「相互作用」していると主張(セールスフォースサイト)している。なお、オラクルは2014年にBlueKai(ad exchange記事)を、セールスフォースは2016年にKruxを買収(未訳記事)した。

イングランド&ウェールズの集団代表であり請求者でもあるRebecca Rumbul(レベッカ・ルンブル)博士はTechCrunchとの電話会談で、この訴訟について「オラクルとセールスフォースがウェブサイトに配置したCookieによって自分のデータが処理される方法に、普通の人が本当に十分な情報を得たうえでの合意を与えることができる方法はないと思います」と述べている。

同博士はさらに「Cookieの同期や個人データの集約など、Cookieが動作する可能性のある、おそらくは非常に悪質な方法が多数存在します。かなり深刻なプライバシーの懸念があります」と続ける。

リアルタイムビディング(RTB、Real-Time-Bidding)プロセスは、トラッキングCookieと技術の組み合わせによって、ダイナミックな広告オークションが裏で動いているウェブサイトをユーザーが閲覧しすると、個々のユーザーのプロファイルをリアルタイムにやり取りして、各ユーザーに適した広告をリアルタイムに表示するわけだ。これは近年、英国を含む多くのGDPR関連の訴えの対象となっている(未訳記事)。

これらの訴えは、RTBによる人々の情報の取り扱いが規制に違反していると主張している。なぜなら、個人のデータをほかの多くの組織に配信することは本質的に安全ではないからだ。逆にGDPRでは、そのサイトの設計および初期設定によってプライバシー保護の要件を満す必要があることが定められている。

一方、英国の政府外公共機関であるICO(Information Commissioner’s Office、情報コミッショナーオフィス)は、アドテクノロジーには合法性に問題がある(未訳記事)と1年以上前から認めてきた(未訳記事)。しかし規制当局はこれまでのところ法律に則って対処せず、訴えを放置(未訳記事)してきた。なお昨年、アイルランドのDPC(Data Protection Commissioner、データ保護委員会)は、同様の苦情を受けてグーグルのアドテクについて正式な調査を開始(未訳記事)したが、国境を越えた申し立てについては統一されたGDPRの裁決は出ていない(未訳記事)。

ルンブル博士によればRTBを標的とした今回の2つの訴訟は「セキュリティの申し立てに焦点を当てたものではなく、ユーザーの同意とデータアクセスの権利に関するものがほとんど」とのこと。同博士は、技術の巨人に対してクレームを持ち込むことの「ダビデ対ゴリアテ」(弱小な者が強大な者を打ち負かす)という事情を考慮して、自分たちの権利を行使する方法として規制当局へ苦情を申し立てるよりも、訴訟を起こすことを選択したことを認めている。

「私のような一人の人間がオラクルに苦情を申し立てるために英国ICOを利用しようとしても、オラクルのような大企業に対して一度にすべての問題を申し立てられるほどのリソースを持っているわけではありません」とルンブル博士はTechCrunchに語った。

「この問題を証明するという意味では非常に多くの労力が必要であり、その対価として得られるものは非常に少ないでしょう。集団代表訴訟を採ることで、私は英国でトラッキングCookieなどの影響を受けたすべての人を代表して訴訟を進められます」と続ける。

「今回の賠償金額は、オラクルの資金力や膨大な訴訟のコストを考えると効果があると考えています。単に賠償金を得ることが目的ではなく、このような大規模で公開された場で争うことで、願わくば個人情報の取り扱いに対する業界標準が変化させたいと思います」とルンブル博士。

「セールスフォースとオラクルが今回の戦いに破れた場合、うまくいけばアドテク業界全体に波紋が広がり、非常に悪質なCookieを使用している企業に行動を変えるように促すことができるでしょう」と同博士は付け加える。

この訴訟は、ロンドンの裁判所でのMastercardに対する4600万人の消費者を対象としたWalter Merricks(ウォルター・メリックス)弁護士の集団訴訟にも関わった訴訟ファンドのInnsworth Advisorsが資金を提供している。そしてGDPRは、個人が個人情報について法的措置を取ることを可能にすることで、英国の集団訴訟の状況を変えることに貢献しているように見える。GDPRの枠組みでは、第三者が個人に代わって救済を求める訴えを起こすことを支援することもできるのだ。国内の消費者権利法の改正も、集団訴訟を後押ししているようだ。

Innsworth Advisorsのマネージングディレクターを務めるIan Garrard(イアン・ガラード)氏は声明で「英国での集団訴訟制度の発展とEU、EEA(European Economic Area、欧州経済領域)での集団救済が可能になったことで、Innsworth Advisorsは個人データが悪用された何百万人もの個人のために裁判に訴える資金を投入することができるようになりました」と語る。

英国で進行中の別の訴訟では、グーグルに損害賠償を求めている。この訴訟は、プライバシー設定を歴史的に無視していたSafariユーザーに代わって起こされたものだが、これもまたデータの取り扱いに関連した集団訴訟型の法的措置の可能性を高めている。

裁判所は昨年に訴訟を棄却(未訳記事)したが、控訴裁判所はその判決を覆し、英国とEUの法律はデータ管理の喪失に関連する請求をするために「因果関係と結果的損害の証明」を要求しているというグーグルの主張を退けた。

裁判官は、原告は損害賠償を請求するために「金銭的損失または苦痛」を証明する必要はないと述べ、全員が同じ利益を得ることなく集団訴訟を進めることを認めた。

そのケースについてルンブル博士は「自身が関与している訴訟が英国で進められるかどうかについて、保留中の最終判決(おそらく来年)が影響を及ぼす可能性がある」ことを指摘した。

「私は、英国の司法当局がこの種の訴訟に前向きであることを大いに期待しています。なぜなら、個人情報に関する大規模な集団訴訟を起こさなければ、この種の訴訟全体の扉を閉ざしてしまうからです。この種の訴訟は進められないという法的判断が出た場合、 司法が個人情報の取り扱いについて民間企業にどのように依頼できるのか、どのように考えているかを理解したいと思います」と語る。

ルンブル博士には、アドテクに関与する非常に多くの企業があるにもかかわらず、訴訟がオラクルとセールスフォースに焦点を当てている理由も尋ねた。「私は、これらの企業が必ずしも最悪であるとは言っていませんし、このようなことをしている唯一の企業であるとも言っていません。しかし、彼らは巨大で国際的な数百億ドル規模の企業です。彼らは特に、この分野でのプレゼンスを高めるために、つまり自分たちの利益を高めるために、BlueKaiのようなさまざまなアドテクソフトウェアを買収しています」と説明する。

「一連の買収は、デジタル広告分野に進出して巨大なプレーヤーになるための戦略的なビジネス上の決断だったのです。つまり、アドテク市場においては、彼らは非常に大きなプレーヤーなのです。もし両社をこの件で責任を問うことができれば、業界全体を変えることができるでしょう。これがうまくいけば、より悪質なCookieを減らすこともできるでしょう。両社は巨額の収益を上げているので、被害を被っている多くの人を補償をする余裕があるという意味では、ターゲットにするのに適した企業です」と続ける。

ルンブル博士はまた、非営利財団のThe Privacy Collectiveがオンライントラッキングに関連した被害を経験したと感じているウェブユーザーからの話を集めようとしていることも話してくれた。

これらのCookieがどのように機能するかを示す証拠はたくさんあります(未訳記事)が、それは個人レベルで人々に酷い結果をもたらす可能性があることを意味します。それが個人金融に関連するものであれ、中毒性のある行動の操作に関連するものであれ、要するに何であってもすべて追跡可能で、私たちの生活のあらゆる側面をカバーしています」と説明する。

イングランド、ウェールズ、そしてオランダの消費者に、The Privacy Collectiveのウェブサイトを介して、この行動への支持を登録することを勧めている。

声明の中で、オランダの法律事務所のBrandeisの主任弁護士であるChristiaan Alberdingk Thijm(クリスティアン・アルバーディンク・ティイム)氏は「あなたのデータはEUのデータ保護規則に違反して、最高入札者にリアルタイムで売却されています。この広告ターゲティング技術は、ほとんどの人がその影響や、それに伴うプライバシーやデータの権利の侵害に気付いていないという点でやっかいなものです。このアドテク環境の中で、オラクルとセールスフォースは日常的に欧州のプライバシー規則に違反する活動を行っていますが、責任を問われるのは今回が初めてです。これらの事例は、人々の個人情報から莫大な利益を得ていること、そしてこの説明責任の欠如が個人や社会にもたらすリスクに注意を喚起することになるでしょう」とコメントしている。

「何千もの組織が毎週何十億もの入札依頼を処理していますが、データの安全性を確保するための適切な技術的・組織的な対策に一貫性はなく、個人データの国際的な転送に関するデータ保護法の要件をほとんど、あるいはまったく考慮されていません。GDPRは、個人の権利を主張するためのツールを提供してくれます。集団訴訟は、私たちが受けた被害を集計できることを意味します」と英国の法律事務所CadwaladerのパートナーであるMelis Acuner(メリス・アクナー)氏は、別の支援声明の中で付け加えている。

この訴訟についてTechCrunchは、オラクルとセールスフォースにコメントを求めた。

オラクルの副社長兼法務顧問のDorian Daley(ドリアン・デイリー)氏は以下のコメントを残した。

The Privacy Collectiveは、故意に事実の意図的な虚偽表示に基づいて無益な訴訟を起こしました。 オラクルが以前にThe Privacy Collectiveに伝えたように、オラクルはリアルタイム入札プロセス(RTB)で直接の役割を果たしておらず、EUにおけるデータフットプリントも最小限に抑えられており、包括的なGDPRコンプライアンスプログラムを実施しています。このようなオラクルの取り組みを説明をしたにもかかわらず、The Privacy Collectiveは悪意を持って提訴された訴訟を通じて賠償金を請求することを決定しました。 オラクルは、これらの根拠のない主張に対して強い姿勢で臨みます。

セールスフォースの広報担当者は次のようなコメントを残した。

セールスフォースでは、信頼が第一の価値であり、企業の顧客のデータのプライバシーとセキュリティほど重要なものはありません。当社は、プライバシーを最優先に考えてサービスを設計・構築しています。法人顧客には、EUのGDPRを含む適用されるプライバシー法の下で、顧客自身のプライバシー権を保護するための義務を遵守するためのツールを提供しています。

セールスフォースと別のデータ管理プラットフォームプロバイダは、The Privacy Collectiveと呼ばれるオランダのグループからプライバシー関連の訴えを受けました。この訴えは、Salesforce Audience Studioサービスに適用されるもので、ほかのセールスフォースのサービスとは無関係です。

セールスフォースは、The Privacy Collectiveの今回の申し立てに同意せず、正当性がないことを証明したいと考えています。

当社の包括的なプライバシープログラムでは、顧客のプライバシー権を保護するためのツールを提供しています。当社が法人顧客に提供しているツールと当社のプライバシーへの取り組みの詳細については、salesforce.com/privacy/products/をご覧ください。

 

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Salesforceエコシステムのバックアップで知られるOwnBackupが約53.8億円を調達

OwnBackupは、主にSalesforceエコシステムのバックアップと障害復旧システムで知られている。米国時間7月7日、同社は5000万ドル(約53億8000万円)の資金調達を発表した。

このラウンドを主導したのはInsight Partnersで、Salesforce VenturesとVertex Venturesが参加した。同社は1年前に2300万ドル(約24億7400万円)を調達(GlobalNewswire記事)している。同社によれば、これまでの調達金額の合計は1億ドル(約107億5000万円)を超えたという。

OwnBackupのバックアップと復旧の事業の大部分はSalesforceのエコシステムに関わるものなので、Salesforce Venturesが資金調達に参加したことは驚きではない。ただしOwnBackupは、新たに得た資金で事業を拡張しようとしている。

OwnBackupのCEOであるSam Gutmann(サム・ガットマン)氏はTechCrunchに対し「我々はこの2年半の間、Salesforceエコシステムに関わって大きな成長を遂げてきた。VeevaやnCinoといった他のISVパートナーはSalesforceの分野に集中している。しかし我々は今回の資金によって、今後1年間でいくつかの新たなエコシステムに手を広げていく」と述べた。

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が拡大しているが、ガットマン氏によればOwnBackupは成長を続け、直近の四半期では250社の顧客を新たに獲得した。顧客数は2000社以上、従業員は250人を超えたという。

今回のラウンドは5月初めにクローズしたが、困難な時期もあったという。パンデミックによって世界中に、特に米国に影響が出始めた時期だったからだ。既存の投資家が投資を控えた場合に備えて、ガットマン氏は新しい投資家との相談を始めていた。最終的には四半期の数字が堅調で既存の投資家が戻り、このラウンドは予定以上の成果になったと同氏は語る。

「実際、第2四半期は250社以上の新規顧客を得て、過去最高の四半期となった。我々のソリューションの重要性を企業が真に理解し始めたのだと思う」とガットマン氏はいう。

OwnBackupはパンデミックの最中でも採用を続ける計画だが、以前に考えていたほど積極的には採用しないかもしれないと同氏は語っている。多くの企業がそうだが、OwnBackupも採用する計画はあるものの市場を注意深く見ている。ガットマン氏は2020年中に50人の採用を予想しているが、それは現時点で考えられる範囲内でのことだ。

ガットマン氏は、幹部レベルにまで多様な人材を揃えるために経営陣とともに取り組んでいるが、これは難しいことだと語る。「一般の従業員は実際に多様な構成になっていると思うが、リーダーシップチームに関してはウェブサイトで公開しているように残念ながらまだ多様な構成になっていない」と同氏は述べた。

経営陣は採用チームに対して、性別や民族に関わらず多様な候補者を探すよう指示している。従業員の中にはダイバーシティ&インクルージョンのタスクフォースが構成され、社内トレーニング、特に面接テクニックに関するマネージャー向けのトレーニングにあたっている。

ガットマン氏はリモートワークへの切り替えは難しかったと語り、オフィスで従業員に会えないのがつらいという。夏の終わりまでには一部の従業員をオフィスに戻し、秋に向けて徐々に人数を増やしたい考えだが、状況次第だ。

画像クレジット:ajijchan / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)