デジタル化、リモート化が進むビジネスオペレーションをモダナイズするRattle、就業時間短縮で好評

テクノロジー企業の従業員たちは、いつも消費者向けのすばらしいアプリを開発しているが、社内におけるお互いのコミュニケーションは、使いにくいアプリで困っていることが多い。

中規模から大規模ほどの企業では、社員たちは1日の時間の4分の1もしくは3分の1を社内コミュニケーションに費やしているため、これは深刻な問題だ。

現在、サンフランシスコに本社を置くあるスタートアップが、ビジネスサービスをより便利に利用できるソフトを構築しようとしている。

Rattleは、現代の記録管理や情報プラットフォームのサイロ化した性質を対応するために、リアルタイムで協力的な「接続性のある組織」を構築していると、同名スタートアップの共同創業者兼最高経営責任者Sahil Aggarwal(サヒール・アガーワル)氏は、TechCrunchのインタビューで語っています。

「Salesforceを例にとると、Salesforceにデータを書き込むことと、Salesforceからデータを取り出すことの2つを行っています」とアガーワル氏は説明する。「Rattleは、Salesforceからのすべてのインサイトをメッセージングプラットフォームに送信し、メッセージングサービス内のデータをSalesforceに書き戻すことを可能にします」。

画像クレジット:Rattle

 

Rattleのユースケースは、もっといろいろなサービスで可能だ。たとえば電話の通話を認識して個人にそれをログするよう促し、そこから生ずる商機をSlackで追えるようにするようにもできる。

「SlackとSalesforceの統合から初めましたが、その買収によってその真価は実証されました。それは企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を急速に進めるでしょう」とアガーワル氏はいう。彼がこのスタートアップを思いついたのは、以前の企業で社内チームのために作ったアプリケーションが大好評だったからだ。

関連記事:SalesforceがSlackを約2.9兆円で買収、買収前の企業評価額は2.6兆円強だった

3月にローンチしたそのスタートアップは、すでに試用した企業の70%ほどが正規ユーザーになっている。顧客は50社を超え、その中にはTerminusやOlive、Litmus、Imply、Parse.lyなどがある。

Rattleの導入後、「導入部分の応答時間(リードレスポンスタイム)が75%、主要なプロセスが数日から数分に短縮されました」とLogDNAのGTM Ops ManagerであるJeff Ronaldi(ジェフ・ロナウディ)氏はいう。

Rattleは米国時間8月31日に、LightspeedとSequoia Capital Indiaからの280万ドル(約3億1000万円)のシードラウンドを発表した。Ciscoの執行副社長でDisneyの取締役Amy Chang(エイミー・チャン)氏と、Outreachの初期の投資家Ellen Levy(エレン・レヴィ)氏、Brex & Cartaの初期の投資家Jake Seid(ジェイク・セイド)氏、ユニコーンのSaaSであるChargebeeの創業者Krish & Raman(クリシュ&ラマン)氏らが参加している。

LightspeedのパートナーであるHemant Mohapatra(ヘマント・モハパトラ)氏は声明で次のように述べている。「世界中の企業は、営業、マーケティング、人事、ITなど、さまざまなプロセスに縛られています。デジタル化やリモートワークの増加にともない、プロセスやその遵守状況は時間の経過とともに乖離していきます。Rattleのチームが、このパズルの最も重要なピースである、プロセスに巻き込まれた人々に絶え間なくフォーカスしていることに感銘を受けました。これほどまでに顧客から愛されている企業は稀であり、Rattleと一緒にこの旅に出られることを光栄に思います」。

同社のサービスの利用料金は、社員1人あたり月額20ドル(約2200円)から30ドル(約3300円)となる。同社は今回の資金をプロダクトの拡張と、より多くのエンタープライズアプリケーションの統合に当てる計画だ。

画像クレジット:Rattle

原文へ

(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

弁護士・法律事務所向けクラウド案件管理システム「LEALA」開発・運営のレアラが総額1億円のシード調達

弁護士・法律事務所向けクラウド案件管理システム「LEALA」開発・運営のレアラが総額1億円のシード調達

弁護士・法律事務所向けのクラウド案件管理システム「LEALA」を開発・運営するレアラ(LEALA)は8月24日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資による総額1億円の資金調達を発表した。引受先は、DNX Venturesおよび米セールスフォース・ドットコムCVC「Salesforce Ventures」(セールスフォース・ベンチャーズ)。

調達したに資金より、LEALAの機能拡充と顧客満足度の向上を目的とした組織基盤の強化を図る。開発および顧客支援体制の強化により、顧客のフィードバックを反映したLEALAの機能拡充や改善を加速するとともに、弁護士・法律事務所の成功を支援する。

LEALAは、Salesforceを開発基盤として、弁護士・法律事務所向けに特化して開発されたクラウド案件管理システム。顧客、案件・契約、タイムチャージ、法律書面・請求書、対応履歴などの情報をすべて一元化し、効率的なコラボレーション実現のための社内SNS機能を搭載。対応漏れを防ぐためのアラートや進捗可視化、スケジュール・ToDo管理からリスト抽出、集計・分析などの戦略立案まで、業務効率化と業務品質向上の両立や組織基盤の形成のための強力な支援ツールとしている。

Salesforceが約3兆円で買収したSlackとの初の統合を発表

2020年12月にSalesforceSlackを277億ドル(約3兆300億円)で買収したとき、Salesforceには大きな計画があるはずだと思わずにはいられなかった。米国時間8月17日、Salesforceは同社顧客の利便性を向上させる統合の第一歩を発表した。

SalesforceのSlack担当シニアバイスプレジデントであるRob Seaman(ロブ・シーマン)氏は、Slackは同社を前進させるコミュニケーションプラットフォームであると考えている。シーマン氏は「Slackを、Salesforceユーザーとそのコミュニケーション、業務、ワークフロー、プロセスとアプリにおけるメインのエンゲージメントの場にしたいと真剣に考えています」と語る。

同氏は「我々が今回発表するのは、セールス、サービス、マーケティング、分析に適したSlackのビジョンに対応する新しい機能です。こうした分野のために我々が取り組んでいるのは、この新しい世界においてセールス、サービス、マーケティングの組織をどのような形にできるか、どのような形にすべきかをベストプラクティスと体系化の両方に関して明確に示すことです」と述べた。

外部のエンタープライズアプリを統合できるSlackの優位性を活かすことで、連携してSalesforceのさまざまなタスクの高速化と自動化を図り、状況に応じて切り替えをしなくてもすばやく簡単に使えるようにすることを目指している。

手始めとして、Sales Cloudに専用のディールルームが設けられる。これは財務などの社内部門や製造チーム、外部パートナーなど、コンプレックスセールスに携わるあらゆる人がセールスサイクル全体を通してSlack内に集まり、販売活動全体の動きに関して常に最新情報を把握できる場だ。

シーマン氏は次のように説明する。「ディールルームは、SalesforceからSlack内で顧客やパートナーも含めて誰もがつながって効果的に業務ができる、とてもシンプルな方法を表したものと考えています。このような場面でSlack Connectは(外部パートナーを接続することができ)極めてパワフルです。結果としてセールスサイクルを劇的に短くできると思います」。Slack Connectは2020年に発表されたサービスで、これを利用するとSlackユーザーが社外の人とつながることができる。

統合すれば、複雑な取引に関わっているセールスチームのメンバーが日々最新情報を得ることができる。情報は自動でSlackに集められ、これには各人の日々のタスクリスト、ミーティング、取引の優先度などが含まれる。

サービスチームは、Salesforceがスウォーム(「群れ」の意)と呼ぶ部屋に集まり、具体的な質問や問題についてお互いに助け合うことができる。取扱製品が多い企業では、回答をすばやく得ることができて特に役に立つだろう。SalesforceのAIプラットフォームであるEinsteinで関連するコンテンツを推奨することはできるが、もっと具体的な質問があってそれに関する知識を持つ人がいるならスウォームが有用だろう。サービスチームのメンバーは、すばやく質問に答えたり問題を解決したりすることのできる専門家を検索してスウォームに招待することも可能だ。

マーケティング部門にも恩恵があり、Salesforceが2018年に買収したDatoramaを活用してインテリジェントなインサイトを得られる。マーケティングキャンペーンに変更があれば、マーケッターはSlack内で定期的に最新情報を把握できる。

そして、Salesforceが2019年に157億ドル(約1兆7200億円)で買収したTableauとの統合もある。こうして改めて見るとSalesforceは買収に貪欲な企業だ。マーケッターがキャンペーンの最新情報を把握するのと同様に、Tableauで重要と思われるデータがアップデートされるとすぐにSlackがアップデートされる他、重視している指標に関するその日のまとめもSlackで見ることができる。

シーマン氏は、今回の発表は第一歩でSlackとのさらなる統合は2021年9月に開催される顧客向けカンファレンスのDreamforceで、そして今後数カ月間で公表すると約束した。同氏は「これはほんの始まりで、今回発表したセールス、サービス、マーケティング、分析の4つの分野に関するSalesforceとSlackの統合は今後広がり続けます。そしてさらにSalesforceの(製品ファミリーである)あらゆるクラウドや業界向けソリューションも統合に取り組んでいます」と述べた。

関連記事
SalesforceがSlackを約2.9兆円で買収、買収前の企業評価額は2.6兆円強だった
Slackが企業間共有チャンネル作成機能「Connect」を発表、管理が面倒なゲストアカウント不要に
Salesforceがビジュアルデータ分析のTableauを1.7兆円で買収

カテゴリー:ネットサービス
タグ:SalesforceSlack買収チャットツール

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Kaori Koyama)

現場作業員にスマートモバイルアシスタントアプリを提供するYoureka Labsが約9.3億円調達

モバイルフィールドサービスのスタートアップ企業であるYoureka Labs Inc.(ユーリカ・ラボ)は、シリーズAラウンドで850万ドル(約9億3000万円)の資金を調達した。この投資ラウンドはBoulder Ventures(ボルダー・ベンチャーズ)とGrotech Ventures(グロテック・ベンチャーズ)が共同で主導し、Salesforce Ventures(セールスフォース・ベンチャーズ)も参加した。

メリーランド州を拠点とする同社は、IBM Cloud(IBMクラウド) & Watson Platform(ワトソン・プラットフォーム)でゼネラルマネージャーを務めていたBill Karpovich(ビル・カルポヴィッチ)氏がCEOに就任したことも正式に発表した。

Youreka Labsは、Salesforceをはじめとする人工知能や自動化技術を活用してカスタマー・リレーションシップ・マネジメントの変革に特化したクラウドコンサルティング事業を行っている親会社のSynaptic Advisors(シナプティック・アドバイザーズ)からスピンアウトした会社だ。

同社は、現場で働く人々がより安全かつ効率的に仕事をこなせるようにするためのスマートモバイルアシスタントを開発している。これには、ガイド付き手順書、スマートフォーム、写真やビデオのキャプチャなどが含まれる。また、YourekaはField Service Mobile(フィールド・サービス・モバイル)のような既存のSalesforceモバイルアプリケーションにも組み込まれており、エンドユーザーは1つのモバイルアプリから操作できるようになっている。

Yourekaは現時点では、ヘルスケア、製造業、エネルギー・公共事業、官業という4つのユースケースを特定している。Shell(シェル)、P&G、Humana(ヒューマナ)、Transportation Security Administration(米国運輸保安庁)などの企業や機関と提携しており、同社のテクノロジーは、現場の同僚と知識やプロセスを共有することを可能にすると、カルポヴィッチ氏はTechCrunchに語った。

「例えばヘルスケアの分野では、医師からの複雑な医療評価を、シンプルなモバイルアプリにデータを集約することで役に立つ形にして、現場で働く看護師に送り出します」と、カルポヴィッチ氏は続けた。「これにより、看護師は自分が医師でなくても、優れた仕事ができるようになります」。

カルポヴィッチ氏は、シリーズAの資金調達を実施した理由について「そろそろ自分たちの力でやってみる時期」だからと語っている。同氏のもとには投資家から関心が寄せられており、この資金があれば会社をより迅速に前進させることができる。現在、同社はSalesforceのエコシステムに注力しているが、これは時間の経過とともに変化する可能性があると、同氏は付け加えた。

今回調達した資金は、同社の活動範囲と製品を拡大するために使用される。カルポヴィッチ氏は、今後半年から1年の間にエンジニアリング部門のチームを倍増させることで、そのプラットフォームを拡大することができると期待している。Yourekaは現在、100社の顧客を抱えているが、これをさらに成長させるために、カルポヴィッチ氏はマーケティングにも投資したいと考えている。

すでに特定されているユースケースに加え、金融サービスや保険、特に損害を査定する業務に同社の潜在的需要があると、カルポヴィッチ氏は見ている。同社の顧客は今のところ米国に集中しているが、カルポヴィッチ氏は英国や欧州での展開も計画している。

同社は2020年に300%の成長を遂げたが、これはフィールドサービスにおいて、この種のツールが必要とされているためだと、カルポヴィッチ氏は考えている。Yourekaは、エンドユーザーごとに月額課金するライセンスモデルの他、アプリを作成する人のための管理者用ライセンスも用意しており、こちらもユーザーごとの月額課金制となっている。

「企業が適切なスキルを持った人材を見つけることができないために、現在250万件の求人が出ています」と、カルポヴィッチ氏はいう。「私たちの製品は、これらの仕事にアクセスできるようにします。AIが人の仕事を奪うという人もいますが、私たちはAIを使って人の仕事を強化します。90%の知識を持ち、経験の少ない人に、を与えることができれば、非常に多くの雇用機会を切り開くことができるでしょう」。

関連記事
アップルがiPhoneエミュレーションソフトメーカーCorelliumへの訴訟を取り下げ
CRANQは外部から移入したテキストソースコードのオーサリングを楽にするビジュアルIDE
RDBをノーコード化して人気上昇のAirtableが初めての買収でデータ視覚化のBayesを獲得

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Youreka Labs Inc.資金調達アプリSalesforce

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Salesforceは配信メディア「Salesforce+」発表、ビジネスコンテンツのNetflixを狙う

Salesforce(セールスフォース)はSlack(スラック)を280億ドル(約3兆1000億円)の巨大買収を行ったばかりで、その過程で多額の負債を生み出したが、それは多額の資金を支払ったことが理由ではない。

米国時間8月10日、このCRMの巨人は、Salesforce+(セールスフォースプラス)でストリーミングメディアに参入することを発表した。Salesforce+は、ビデオに焦点を当てた今後のデジタルメディアネットワークであり、同社の発表によれば「世界中の視聴者にDreamforce(ドリームフォース、Salesforceの年次コミュニティ会議)の魔法をすばらしいスピーカーとともにお届けします」というものだ(それがすばらしいものであるか否かは、見る人の目で決まるが)。

2020年来Salesforceは、各企業が完全なデジタルエンティティへの迅速な変革を行おうと苦労しているところを目撃してきた。Slackの買収は、進化する市場に対するSalesforceの対応の一部だが、同社は、24時間体制でビジネスコンテンツを提供するオンデマンドビデオサービスでさらに多くのことができると考えている。

Salesforceの社長でCMOのSarah Franklin(サラ・フランクリン)氏は、公式投稿の中で、彼女の会社は「新しいデジタルファーストの世界で成功する方法を再考する必要があった」と述べている。その答は、より大きなSalesforceコミュニティを、新しいライブおよび録画されたビデオの強化でまとめることに関係しているようだ。

Salesforceのグローバルブランドマーケティング担当シニアバイスプレジデントであるColin Fleming(コリン・フレミング)氏によるQ&Aの中では、彼はそれを会社がずっと共有してきたコンテンツを進化させる方法だと述べている。「パンデミックを受けて、私たちは人びとがコンテンツを消費しているメディアの状況を調べ、その結果B2Bの場におけるホワイトペーパーの時代は、もはや人びとにとって興味をひかないものであると判断しました。私たちはクッキー不要の未来を見つめています。そして消費者の世界を見て、Salesforceのためにそれを振り返り『なぜ私たちもこれについて考え直さないのか』と問いかけています」とQ&Aの中で語っている。

会社が注ぐ労力は小さなものではない。Axios(アクシオス)によれば、立ち上げを支援するために、プロジェクトには「50人の編集主幹」がいて「Salesforceの何百人もの人々が現在Salesforce+に取り組んでいる」とのことだ。

特に注目すべきは、Salesforceには短期的にはSalesforce+の収益化計画がないということだ。このサービスは無料で、外部の広告は掲載されない。Salesforce+は、9月のDreamforceとともに公開され4つのチャンネルが提供される、それらはニュースとアナウンス用のPrimetime(プライムタイム)、トレーニングコンテンツ用のTrailblazer(トレイルブレイザー)、サクセスストーリー用のCustomer 360(カスタマー360)、業界固有の情報提供用のIndustry Channels(インダストリー・チャンネルズ)だ。

同社は、この発表をDreamforceと組み合わせることで、Salesforceが作り上げてきたものへの関心を引きつける役に立つことを期待している。Dreamforceでのお披露目後、Salesforce+は興味深い領域へと進む予定だ。それにしても、Salesforceの顧客やその大規模なビジネスコミュニティは、同社が「あらゆる役割、業界、基幹業務に魅力的なライブコンテンツとオンデマンドコンテンツ」と呼び「魅力的なストーリー、思慮深いリーダーシップ、専門家のアドバイス」と表現するものをどれくらい本気で望んでいるのだろうか?

Salesforceは、歴史上最も成功したSaaSファーストの企業と見なされているため、人びとが耳を傾けたいと思っているという意見はあるかもしれない。5月の最新の四半期決算報告では、同社は前年同期比23%増の59億6000万ドル(約6597億円)の収益を発表し、年間収益予想は250億ドル(約2兆7670億円)に近づいた。同社はまた、多額の現金を生み出している。しかし、現金を豊富に持つからといって、この新しいストリーミングの取り組みが、リターンも限られた膨大なコストがかかる金食い虫となるのではないかという疑問を消し去ることはできない。

このサービスは、LinkedIn(リンクトイン)フィードにビデオ形式で命が吹き込まれたもののように聞こえるかもしれない。少なくとも、これはおそらく史上最大のコンテンツマーケティングスキームだが、ビジネスユニットとして、または将来のその他の収益化計画(広告など)を通じて、それ自身で利益を得ることができるのだろうか。

CRM Essentials(CRMエッセンシャルズ)の創業者で主席アナリストであるBrent Leary(ブレント・レアリー)氏は、Salesforceがこの冒険で広告収入に注目し、すべてをSalesforceプラットフォームに結び付けようとしているのだという。「顧客は、個別のショーのスポンサーになったり、ショーを宣伝したり、場合によってはショーでコラボレーションをしたりすることができます。そうしたオプションをROIで追跡しながら、ショーから生成された各種の引き合いに直接結び付けることができます。これをすべて1つのプラットフォームで行うことができるのです。そして、コンテンツは添えられた広告とともに続きます」とレアリー氏はTechCrunchに語る。

それがこの冒険の最終的な目標であるかどうかはまだわからないが、Salesforceは、少なくとも現実の世界ではDreamforceコンテンツに対する市場の欲求があり、最後にライブイベントを開催できた2019年には10万人以上が関わったことを実証している。こうした文脈を考慮すると、パンデミックにより、ほとんどの従来のカンファレンス活動はデジタル運営に移行した中で、Dreamforceおよび関連するタイプのコンテンツをビデオ形式で1年中利用できるようにすることは、ある程度意味があるだろう。

実は、会社がマーケティング予算への大幅な追加を正当化する方法を興味深く見守っている。ビデオ製品からのROIの計測は、直接収益化されない場合には、それほど簡単ではない。そして遅かれ早かれ、それはビジネスに直接的または間接的な影響を与えるか、ベンチャーの目的に関して株主からの質問に直面する必要に迫られることになるだろう。

関連記事
20歳になったSalesforceから学ぶ、スタートアップ成功の心得
SalesforceがSlackを約2.9兆円で買収、買収前の企業評価額は2.6兆円強だった

カテゴリー:ネットサービス
タグ:SalesforceCRM動画ストリーミング

画像クレジット:MediaNews Group/The Mercury News/Getty Images

原文へ

(文: Alex Wilhelm、Ron Miller、翻訳:sako)

Salesforceが熱いRPAに参入、Servicetraceを買収してMulesoftと提携

ここ数年、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の動きが熱くSAPやIBM、ServiceNowなど投資やM&Aが盛んだ。UIPathは2021年4月に大型のIPOを実施し、時価総額は300億ドル(約3兆3000億円)を超えている。Salesforceはいつこの動きに加わるのかと筆者は思っていたが、米国時間8月2日、同社はドイツのRPA企業であるServicetraceを買収する意向を発表し、RPAの世界に足を踏み入れることになった。

Salesforceは2018年に65億ドル(約7104億5000万円)でMulesoftを買収したが、SalesforceはServicetraceをこのMulesoftの一部にする意向だ。両社は買収額を明らかにしておらず、それほど大きな金額ではない模様だ。Servicetraceが加わればMulesoftのAPI統合とは良い組み合わせで、Mulesoftのツールキットにオートメーションのレイヤーを追加できるだろう。

MulesoftのCEOであるBrent Hayward(ブレント・ヘイワード)氏は買収に関するブログ投稿で「MuleSoftにServicetraceが加わることで、優れた統合、API管理、RPAプラットフォームを提供でき、どこからでもつながれるエクスペリエンスを実現するSalesforce Customer 360が大幅に強化されるでしょう。新しいRPA機能はSalesforceのEinstein Automateソリューションを拡張し、サービスや販売、製造などのあらゆるシステムでエンド・ツー・エンドのワークフローオートメーションを可能にします」と書いている。

SalesforceのAIレイヤーであるEinsteinを使うと企業はモダンなツールで特定のタスクを自動化できるが、RPAはもっと旧来型の業務に適している。この買収は、Salesforceが古いオンプレのツールとモダンなクラウドソフトウェアの切れ目を埋めるための新たなステップになるかもしれない。

CRM Essentialsの創業者で首席アナリストのBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、この買収によってSalesforceのDXツールが新たな局面を迎えるという。同氏は次のように説明する。「Salesforceがこれまでの最大規模であるSlackの買収をしてから次の買収までにそれほど時間はかかりませんでした。しかし増加する多様な情報源から得られるリアルタイムのデータによって有効性を発揮するプロセスやワークフローのオートメーションは、DXで成功するための鍵になりつつあります。今回の買収はSalesforceとMuleSoftにとって、このパズルに欠かせないピースです」。

Salesforceの市場参入は遅かったように思えるが、2021年5月にTechCrunchが掲載した投資家に対するアンケート記事の中でCapitalGのゼネラルパートナーであるLaela Sturdy(ラエラ・スターディ)氏は、我々はRPAの可能性について表面をすくっているにすぎないと語っていた。

スターディ氏はアンケートに次のように回答した。「この分野の成熟について考える段階にはまだまだ至っていません。実際、RPAの計り知れない可能性を考えると、採用は始まったばかりです。さまざまな業界に存在する膨大なユースケースを探り始めた企業がほとんどです。RPAを取り入れる企業が増えれば、多くのユースケースが見えてくるでしょう」。

ServicetraceはRPAの概念が生まれるよりもかなり前の2004年に創業した。資金調達についてはCrunchbaseにもPitchBookにも掲載されていないが、同社のウェブサイトからは充実した製品群を有する成熟した企業であることがうかがえる。同社の顧客には富士通、Siemens、Merck、Deutsche Telekomなどがある。

関連記事
独ソフトウェア大手のSAPがベルリンのビジネスプロセスオートメーションのスタートアップ「Signavio」を買収
買収ラッシュのServiceNowが今度はインドのRPAスタートアップIntellibotを獲得
SalesforceがSlackを約2.9兆円で買収、買収前の企業評価額は2.6兆円強だった

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:SalesforceServicetrace買収RPAMuleSoft

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Kaori Koyama)

Slackの新音声・動画ツールは買収完了後のSalesforceプラットフォームにうまくフィットする

忘れるのは簡単だが、Salesforce(セールスフォース)は2020年末におおよそ280億ドル(約3兆1240億円)でSlack(スラック)を買収し、この取引はまだ完了していない。完了がいつになるのか正確なところはわからないが、Slackは最終的にSalesforceの一部になるのを待つ間も、新たな機能を加えてプロダクト計画を発展させ続けている。

ちょうど米国時間6月30日朝、Slackはこのところ話していた新しいツールを正式に発表した。ここには、6月30日から利用できるようになったSlack Huddlesという音声ツールや、ビデオメッセージ、Slack Atlasというディレクトリーサービスが含まれる。

関連記事
SalesforceがSlackを約2.9兆円で買収、買収前の企業評価額は2.6兆円強だった
Slackが新しいオーディオビデオ機能を発表、コロナ禍を経て変化する仕事のあり方を反映

これらのツールは、取引完了時にSlackがSalesforceの一部になったとき、プラットフォームの機能性を高めるのに役立つと証明されるはずだ。Salesforceのプラットフォームに統合されたとき、Huddlesやビデオツール(あるいは会社内部と外部組織の閲覧向けのSlack Atlasすら)の統合がどのように機能するか想像するのは難しいことではない

SlackのCEOであるStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏は、コミュニケーションに関する当局の制限があるためにSlackとSalesforceはまだ協業を始めていないと話すが、これらのツールがSalesforce Service CloudやSales Cloudなどと連携して機能し、ユーザーがSalesforceにあるデータをSlackのコミュニケーション能力と合体させ始めるのを必ず目にするはずだ。

「(Salesforceの)大きなSoRから(Slackの)コミュニケーションへのワークフロー、そして会話が行われているところにデータを表示するといったところに変化があります。セールスやマーケティング、サポートなど顧客とのやり取りにおいてこれらの機能を間接的に活用することに多くのポテンシャルがあると考えています」とバターフィールド氏は述べた。

2020年導入された、社外の人とやり取りできるようになるSlack ConnectをSalesforceが利用するかもしれない、とも同氏は話した。

関連記事
Slackが企業間メッセージングを容易にするセキュリティ機能を新導入、ビデオ・音声埋め込み機能も実験中
SlackとSalesforceの幹部が一緒になったほうがいいと考えたワケ

「Slack Connect内に全機能をそろえています。会話をきちんと開始する、問題を解決する、(顧客と)コミュニケーションを取るもっといい方法としてビデオを使うのにHuddlesを活用したときに得られるものと同じメリットを手にします」と同氏は説明した。

これらの発表は、仕事の未来、そして買収がらみのものとに分けられるようだ。Salesforceのプレジデント兼COOのBret Taylor(ブレット・テイラー)氏は、買収を発表した2020年12月にその取引についてTechCrunchに語ったとき、その点を確かに認識していたようだ。同氏は2社が仕事のフェースを変えることに直接取り組んでいるとみている。

「Customer 360向けの次世代インターフェースになるためにSlackが本当に欲しいというとき、我々が意味するところは2社のシステムを合体させるということです。我々が現在身を置いている、どこででもデジタルで働ける世界ではチームが分散していて、どのようにこうしたシステム周辺でチームを集めるのでしょう。コラボレーションはかつてないほど重要になっています」とテイラー氏は述べた。

CRM Essentialsの創業者でプリンシパルアナリストのBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、2社が一緒になることで仕事方法の未来が明らかに出現する、と話す。「自宅からミーティングやコラボレーションを行うためにウェブカメラとマイクの前でますます多くの時間を費やすようになっているとき、今日のSlackの発表のような動きは、仕事の将来に関しトレンドとなっているものに応えるものです」とリアリー氏は話した。

Huddlesは、多すぎるミーティングや意見のタイピングによるスクリーン疲れをSlackがなんとかしようとしている1例だ。「こうした『オーディオファースト』の能力により、うまく機能させようと追加で何かすることなしに、ただ口で伝えられるようにして要点が得られれば、意図するところをタイプしようとしなくてもよくなります」と同氏は話した。

さらにリアリー氏は「ただ人々が話せるようにするだけでなく、人々に話しかけながら沸き起こる感情や心の状態をより理解して、チャットのテキストの裏にある意図や感情を推測しなくてもいいようにします」と付け加えた。

EngadgetでKarissa Bell(カリサ・ベル)氏が指摘したように、Huddlesはビジネスの文脈でDiscordのチャット機能のようにも働く 。これはSalesforceのプラットフォームに統合されたときにSalesforceツールにとってかなり有用かもしれない。

当局が買収を精査している間、Slackはプラットフォームやプロダクトの開発を続けている。巨大な買収取引が完了しても、Slackはもちろん独立会社として引き続き事業を展開するが、クロスプラットフォームの統合がかなり行われるのは確かだろう。

そうした統合がどのようなものになり得るのか、たとえ経営陣が公に語れなくても、買収取引が完了した暁にはSalesforceとSlackでは、さらには概して仕事の将来にとって、これらの新しいツールがもたらす可能性について多くの刺激があるはずだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:SlackSalesforce買収

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

SalesforceとAWSがパートナーシップの拡大を発表、さらなる双方向の統合を実現

Salesforce(セールスフォース)とAWSは、それぞれのカテゴリーで最も成功しているクラウド企業だ。ここ数年、2つの巨大なクラウド企業は発展的なパートナーシップを築いてきた。両社は米国時間6月23日、データの共有と2つのプラットフォームを横断するアプリケーションの構築を容易にするための、新たな統合機能の計画を発表した。

Salesforceのプラットフォーム担当EVP兼GMであるPatrick Stokes(パトリック・ストーク)氏は「両社はこれまでにも、2つのサービス間での安全な共有などの機能を提供するために協力してきましたが、 顧客からはさらに踏み込んだサービスを望む声が寄せられていました。本日の発表はその実現に向けた第一歩です」と話した。

関連記事:セールスフォースがService CloudにAmazon Connectを導入

「(パートナーシップの初期段階は)本当に大成功でした。Salesforceの製品群とAmazon(アマゾン)の製品群の両方で、2つのソリューションがお互いにうまく補完し合うようにするため、顧客がどのようなことを実現したいのか、お互いから、そして共通の顧客から多くのことを学んでいます。そして、顧客からはさらなる要望が寄せられており、パートナーシップの次の段階に進めることをうれしく思っています」とストークス氏は説明した。

さらに「目標は、両社のプラットフォームを統合し、AmazonのサービスとSalesforceのプラットフォームのすべての力を融合させることです」と述べた。今回の機能は、それを実現するための次のステップになるかもしれない。

この機能には、プラットフォーム側とアプリケーション側の両方の開発者を支援するために両社が取り組んでいるいくつかの新機能が含まれている。まず、開発者は、AmazonのデータをSalesforce内で仮想化することができ、そのためのコーディングを手作業で行う必要がない。

「具体的には、Salesforceプラットフォーム内でAmazonのデータを仮想化します。S3バケットやAmazon RDSなど、何を扱っていても、データを仮想化して、Salesforceプラットフォーム上のネイティブデータと同じように表示させることができます」とストークス氏はいう。

同様に、Amazon上でアプリケーションを構築する開発者は、Salesforceのデータにアクセスし、それをAmazon上でネイティブに表示できるようになる。このために、2つのシステム間のコネクターを提供して、データがスムーズに流れるようにする必要があり、そのためには多くのコーディングが必要になる。

また、両社はイベント共有機能も発表しており、AmazonとSalesforceの両方の顧客が、両プラットフォームを横断するマイクロサービスベースのアプリケーションを簡単に構築できるようになる。

「SalesforceとAmazonのプラットフォームのサービスを横断するマイクロサービス指向のアーキテクチャーを、やはりコードを書くことなく開発することができます。そのために、すぐに使えるコネクターを開発しており、必要なイベントをクリック&ドラッグすることができます」。

また、アイデンティティおよびアクセス管理の観点から、ガイド付きのセットアップでプラットフォームにアクセスできるようにする計画も発表した。さらに両社は、Amazon ChimeコミュニケーションツールをService Cloudやその他のSalesforceサービスに組み込み、AWSの機械学習技術を利用してバーチャルコールセンターなどを構築するアプリケーションに取り組んでいる。

Amazonのグローバルマーケティング担当副社長であるRachel Thorton(レイチェル・ソートン)氏は、2つの巨大なクラウドがこのように連携することで、開発者は2つのプラットフォームにまたがるソリューションを簡単に作成できるようになると話す。「開発者がより速く、より革新的になれば、企業にとってもチャンスが広がり、より良い顧客体験を生み出すことができると思います」とソートン氏は述べた。

Salesforceが、Microsoft AzureGoogle Cloud Platformなど、他のクラウドプロバイダーとも広範なパートナーシップを結んでいることは注目に値する。

Salesforceの発表ではよくあることだが、これらの機能はすべて本日発表されたもので、まだ開発段階であり、ベータテストの開始は2021年後半、GA (General Availability)は2022年中を見込んでいる。両社は、2021年後半に開催されるカスタマーカンファレンス「Dreamforce」および「re:Invent」で、このパートナーシップに関する詳細を発表する予定だ。

関連記事:セールスフォースがMarketing CloudをMicrosoft Azureに移行すると発表

カテゴリー:ネットサービス
タグ:SalesforceAWS

画像クレジット:sefa ozel / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

オフィス再開に向けて大手テック企業はそれぞれ柔軟なワークモデルを検討中

先週、Apple(アップル)は、2021年9月以降社員を週3日のペースでクパチーノのキャンパスに出勤させる予定だと発表した。自宅で仕事をするという柔軟性に慣れてしまった社員の中には、それに反対する者もいた。

パンデミック以前には、一部の例外を除き、ほとんどの社員が毎日オフィスに出勤していた。しかし、2020年3月に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生し、従業員が在宅勤務を余儀なくされると、企業はすぐに同じ建物の中に座っていなくても、スタッフの高生産性は維持できることに気がついた。今やこの流れを押し戻すことは難しいように思える。

個々の企業にとって完全なリモート勤務と、個別に定義するハイブリッド(たとえばAppleのように、オフィスにいる日もあれば自宅にいる日もある)勤務とのバランスを取るのは決して簡単ではなく、一律の答えは存在しない。実際、今後は流動的になっていくのかもしれない。

そこで、各社のアプローチの違いを知るために、Apple以外の大手テクノロジー企業5社に、オフィス再開についてどのように考えているか聞いてみたところ、各社とも何らかのハイブリッドワークを採用しようとしていることがわかった。

  • Google(グーグル)はAppleと同じように、オフィスで3日、家で2日というアプローチをとっている。「私たちは、ほとんどのGoogler(グーグラー、グーグル従業員)が約3日をオフィスで過ごし、2日を自分の好きな場所で過ごすハイブリッドなワークウィーク体制に移行します。オフィスに来ている時間はコラボレーションに集中するため、製品分野や機能によって、チームがオフィスに集まる日を決めることができます。もちろん仕事の性質上、週に3日以上現場にいなければならない役割もあるでしょう」と、GoogleとAlphabet(アルファベット)のCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)は、最近のブログ記事の中で書いている。
  • Salesforce(セールスフォース)は、社員の役割に応じて幅広い選択肢を用意している。ほとんどの社員は、ほとんどの時間を自宅で仕事をし、週に1~3日、同僚との共同作業や顧客とのミーティング、プレゼンテーションのためにオフィスに出社することができる。また、オフィスの近くに住んでいない人はフルリモートで、自ら選択した人や仕事でオフィスにいる必要がある人は週に4~5日出社することもある。
  • Facebook(フェイスブック)はリモートワークを拡大しており「6月15日より、Facebookは会社全体のすべてのレベルにリモートワークを開放し、リモートでできる役割の人は誰でもリモートワークを申請できます」と従業員に書面で伝えている。
  • Microsoft(マイクロソフト)はこの件をマネージャーに任せているが、ほとんどの役割は少なくとも部分的にはリモートで行うことになるだろう。最近のアナウンスでは従業員に対して「私たちは、現場にいることが必要な従業員もいれば、職場から離れた場所で働くのに適した役割やビジネスもあることを認識しています。しかし、ほとんどの職種では、マネージャーとチームがうまく機能していることを前提に、一部(50%未満)の時間の在宅勤務を、現在の標準だと考えています」と伝えている。
  • Amazon(アマゾン)は当初、ほとんどオフィス内での勤務という方針を検討していたが、今週従業員にもっと柔軟なワークスケジュールを提供することに決定したことを発表した。「当社の新しい基準は、週3日のオフィス勤務(具体的な勤務日はリーダーチームが決定)とし、週2日まではリモートで勤務できる柔軟性を残します」と、同社は従業員へのメッセージで述べている。

大手のテック企業は、ほとんどの社員が出社時間をある程度自由に決められるようになっているが、ポストパンデミックに向けてスタートアップ企業はどのように仕事を捉えているのだろうか。私が話を聞いたスタートアップ企業の多くが、オフィス中心のアプローチを想定しておらず、リモートファーストのアプローチをとっている。Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)が最近、ポートフォリオのスタートアップ企業226社を調査したところ、ポートフォリオ内の企業の3分の2が、大企業と同様のハイブリッドなアプローチを検討していることがわかった。実際に、87社が週に1〜2日程度の出勤を考えており、また64社はオフィスをまったく持たず、集まりは社外で行うだけだった。一方「自宅での仕事は一切行わせない」と答えたのはわずか18社だった。

Constellation Research(コンステレーション・リサーチ)のアナリストで、長年にわたり分散型勤務を研究してきたDion Hinchcliffe(ディオン・ヒンチクリフ)氏は、テック企業はパンデミックの最中にその効果を確認できたことで、柔軟なワークモデルを採用する可能性が高まっていると述べている。

そして「多くのハイテク企業は、オフィスを再開するに当たりある程度の柔軟性を維持するでしょう。これは特に多くの従業員からの評判が良いからです。また、心配されていた生産性の低下も、ほとんど杞憂に終わったのです」と語る。しかし、彼はそれがすべての企業に当てはまるわけではないことも強調した。

「ある種の企業、特に保護すべき知的財産をたくさん持っていると考える企業や、その他の機密性の高い仕事をしている企業は、自宅で仕事を続けることには消極的になるでしょう」と続ける。しかし、そうした企業の多くは、この15カ月間、そのような活動を続けてきたのだ。Appleのようにハイブリッド化することは、その議論をさらに混乱させるだけだろう。

「その中にはもちろん、以前から在宅勤務を推奨していないことで有名なAppleも含まれています。週に3日はオフィスに出勤するという新しい方針は、彼らに少しは安心感を与えるでしょうが、実際には本当に安心することはできません」とヒンチクリフ氏はいう。

もちろん、企業はポリシーを設定することができるが、従業員からの反対がないとは限らない。Appleは今回それを確実に学んだ。労働者たちは、雇用主に指定された場所ではなく、自分で働く場所を選びたいと考えているようだ。特に、労働市場が逼迫しており、力が従業員側にシフトしているような状況では、在宅勤務のオプションを提供することが、競争上の優位性となる可能性がある。

これがどのように進んで行くのか、また従業員がどれだけ企業に対してより柔軟な働き方の実現を促す力を持っているのかを観察することは、興味深い。今のところ、ほとんどの企業はパンデミック以前に比べてはるかに大きな柔軟性を持っているものの、すべての企業がいつまでも従業員に完全に自宅で仕事をして欲しいとは思っているわけではないだろう。また企業は自社と従業員にとって何が最適かを判断していく必要がある。

関連記事:リモートワークは「自宅監禁」から柔軟性のある「どこでも勤務」に変わっていくべき

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:AppleGoogleFacebookSalesforceAmazonリモートワーク

画像クレジット:Susumu Yoshioka / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:sako)

SalesforceがZoom会議時にセールス情報をオーバーレイ表示する機能を追加

パンデミックは明らかに私たちの仕事のやり方に影響を与え、特に営業への影響は大きかった。Salesforceは米国時間3月24日朝、Sales Cloudにいくつかのアップデートを行った。その中の1つSalesforce Meetingsは、Zoomでのミーティング用スマートオーバレイで、オンラインミーティングで見込み客と対話しているときの営業チームに情報やアドバイスを提供する。

Salesforceの執行副社長でCRMのゼネラルマネージャーであるBill Patterson(ビル・パターソン)氏によると、同社は営業チームがこのようなタイプの対話を効果的に管理し、デジタルの利点を生かせるようにしたいと、かねてから考えていたという。

「Salesforceだけでなく、現在、すべての営業組織が、営業という仕事が完全に変わってしまったという認識を持っている。すべての人が理解し、おそらく意外だと感じているのは、時間を限定されず、場所も特定しない営業のやり方が極めて有効であることだ」とパターソン氏は語る。

Salesforce Meetingsはそのためのオーバレイ情報を提供する。もっとゆっくり話した方が良いといったアドバイスを提供したり、ミーティングで決まった行動計画をToDoリストにまとめて会の終わりに出席者に配布し、その後のやり忘れがないようにしたりする。

Salesforce Meetingsはその実現のために、Salesforce全体に浸透しているインテリジェンスレイヤーであるEinsteinを利用している。特に利用しているのが、Einstein Conversation Insightsと呼ばれる新しいツールだ。デベロッパーのための機能としても提供されているもので、デベロッパーはこのツールを使って独自のソリューションを作ることもできる。

営業担当者がこのツールをお節介すぎると感じたら、各個人が情報の信頼水準を調整し表示する情報の両をコントロールすることもできる。

関連記事:SalesforceがSlackを約2.9兆円で買収、買収前の企業評価額は2.6兆円強だった

パターソン氏によると、同社は現在のところZoomと協力しており、Zoomの開発チームと密接に協力して、実現するために必要なAPIとSDKを提供しているという。将来的にはWebExやMicrosoft Teamsと互換性を持たせる計画もあるという。

このアイデアはパンデミックの前から存在し、開発も進めていたが、新型コロナウイルスには人の仕事を急がせる効果があり、この機能だけでなく、本日発表されたPipeline Inspectionなどその他の機能も急ピッチで開発が進められている。それは、AIを利用して営業のパイプラインを分析する機能だ。取引の時間軸上の変化を調べて、商談前進のために指導や管理者のサポートが必要だった部分を見つける。

CRM Essentialsの創業者で主席アナリストのBrent Leary(ブレント・リアリー)氏によると、オンラインのミーティングでそんな情報を特定できるようになれば、CRMに関する考え方が変わるだろうという。

「私が関心を持ったのは、ビデオミーティングとコラボレーションの密接な統合が、今や営業で利用されていることだ。ミーティングにおける対話はCRMシステムに入ってこないから、それが自動的に捕捉できるのはすごいことだ」とリアリー氏はいう。

Salesforce Meetingsは米国時間3月24日から利用可能になり、Pipeline Inspectionは夏にリリースされる。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:SalesforceZoomCRM

画像クレジット:Salesforce

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

好調な四半期決算にもかかわらずSalesforceの株価は6.3%下落

ウォールストリートの投資家たちは、気まぐれな野獣になり得る。Salesforce(セールスフォース)がその例だ。CRM(顧客情報管理)大手の同社は米国時間2月25日、四半期決算の売上高が58億2000万ドル(約6204億円)だったと発表した。前年同期比20%増だ。同社はまたクローズしたばかりの2021年会計年度の総売上高が前年比24%増の212億5000万ドル(約2兆2652万円)だったことも明らかにした。おまけに、2022年会計年度のガイダンスでは250億ドル(約2兆6649万円)とした。文句のつけようがない。

より多い四半期の売上高を望めば、Salesforceはそれを上回るものを出す。より高い成長率と確固たる売上高の予想を望むなら、それも達成する。実際、四半期決算は非の打ち所がない。同社はうまくやっており、この規模と年数の組織としては目覚ましい速度で成長している。そして今後も引き続き好成績と成長が見込まれる。

ウォールストリートはこのきらびやかな決算にどう反応したか?6%超の株価下落だ。同社が将来を約束するような決算を発表したことを考えれば、かなり悲惨な日だ。

画像クレジット:Google

何が起こっているのか。投資家が単に、同社の成長は持続可能ではないと考えたのかもしれないし、あるいは2020年末にSlackを270億ドル(約2兆8781億円)で買収したときに払いすぎたのかもしれない。また、今週の冷え込んだマーケットに人々が過剰に反応しただけなのかもしれない。しかし、もし投資家が高成長の企業を探しているのなら、Salesforceはそれに応えている。

関連記事:SalesforceがSlackを約2.9兆円で買収、買収前の企業評価額は2.6兆円強だった

Slackは高価だったが、2月25日の決算には売上高2億5000万ドル(約266億円)超とある。ランレートは10億ドル(約1065億円)で、年間経常収支が100万ドル(約1億円)超の有料顧客を100社超抱える。そうした数字は最終的にSalesforceの収益に加わる。

Canaccord GenuityのアナリストであるDavid Hynes Jr(デビッド・ハインズJr)氏は投資家らのこの決算への反応に困惑した、と書いた。筆者と同様、同氏は多くのポジティブな要素を見出していた。それでもウォールストリートはネガティブな要素に注意を向けることにし、同氏が投資家へのメモに記したように「グラスはまだ半分ある、ではなく『もう半分空だ』」ととらえた。

「株価は明らかに、証拠を見るまで信じないというモードです。つまり、ファンダメンタルが実際にしっかりしていて、Slackは機会を狙っていたが(確かに高い)急激な成長悪化を覆う意図はなかった、という考えを投資家が受け入れるにはもう数四半期かかりそうだということを意味します」とハインズ氏は書いた。

2月25日のアナリストとの決算会見の間、クレディスイスのBrad Zelnick(ブラッド・ゼルニック)氏はSalesforceがパンデミックによる経済停滞からの脱出をいかに加速させられるのか尋ねた。同社の最高経営責任者で最高レベニュー責任者のGavin Patterson(ギャビン・パターソン)氏は、世界がパンデミックから脱却するときはいつでもSalesforceは準備できている、としている。

「私に言わせれば、当社は営業部隊という点で、その能力を構築しています。当社はそうした需要をうまく利用するために直接の営業部隊にかなり投資しています。需要に応えられるとかなり自信を持っています。ですので、あなたは今日、事業は力強く、パイプラインも強いもので、次の年に向けて自信を持って臨んでいるというメッセージを我々から受け取るでしょう」とパターソン氏は話した。

Salesforceの役員たちは明らかにそれなりの理由があって自信に溢れていたが、投資家側には懸念が残り、それが株価下落、終日軟調となって現れた。ハインズ氏が指摘したように、投資家たちの方が間違っていたと証明し続けるのはSalesforce次第だろう。ウォールストリートの否定論者が今日考えていたことにもかかわらず、今週発表したような成績の四半期が続く間は大丈夫なはずだ。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Salesforce決算発表

画像クレジット:Ron Miller / TechCrunch

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

Salesforceの元マネジャーが同社内の「自覚なき差別」と不平等を告発

Salesforce(セールスフォース)の元デザイン研究上級研究員で2021年2月始めに退社したCynthia Perry(シンシア・ペリー)氏は、自身の辞職届けをLinkedIn(リンクトイン)に掲載し、彼女に対する会社の不快な対応を詳細に記した。Protocol誌が最初に報じた。文中、ペリー氏は黒人である彼女が在籍中「無数のマイクロアグレッション(自覚なき差別)と不平等な扱い」を経験したことを訴えた。

最終的にペリー氏は会社を辞め、その理由について彼女が一部の社員らから、「正気ではないように見せかけられ、操られ、いじめられ、無視され、ほとんど協力を得られなかった」ためだと語った。相手の名前は明らかにしていてない。

「Salesforceは、私にとって安心して仕事に来られる場所ではありません」と彼女は書いた。「そこは本当の自分でいられる場所ではありません。そこはこれまで自分を投じてきた場所ではありません。そこはチャンスに満ちた場所ではありません。そこは万人が平等な場所ではありません。そこは健全な生活が尊ばれる場所ではありません」。

Salesforceは平等の重要性を長年主張してきた。2016年、SalseforceはTony Prophet(トニー・プロフェット)氏を史上初の最高平等責任者に任命した。その約1年前、CEOのMark Benioff(マーク・ベニオフ)氏は、同社の多様性に関する最大の関心事は「女性の問題」だと語っている。

Salesforceはジョージ・フロイド氏の死亡の後、黒人支持を表明した数ある会社の1つだった。

関連記事:テック業界はジョージ・フロイドの死をどう受け止めたのか

「今、私たちはこれまで以上にお互いを仲間として助け合い、正義と平等のために声を上げなくてはなりません」と当時同社はツイートで述べている

しかし会社内を見ると、Salesforceでは米国において黒人はわずか3.4%であり、管理職の黒人はわずか2.3%であることを2020年11月のダイバーシティレポートが示している。

「プライバシー上の理由から、従業員の個人的問題についてはコメントできませんが、『平等』は当社にとって最重要な価値の1つであり、22年ほど前に創業して以来、会社の内外両方でその推進に専心しています」とSalesforce広報担当者がTechCrunch宛の声明で語った。

ペリー氏の1件は、テック企業での不快な経験について黒人女性IT技術者が意見を述べた最新事例だ。2020年、Ifeoma Ozoma(イフェオマ・オゾマ)氏とAerica Shimizu Banks(エアリカ・シミズ・バンクス)氏はPinterestの人種差別と性差別を訴えた。その後、Timnit Gebru(ティムニット・ゲブル)博士はGoogleのAI部門における多様性問題について発言したことで解雇されたと語った。それはGoogleの元多様性採用担当者、April Curley(エイプリル・カーリー)氏が、会社を「人種差別のでたらめ」と非難したことでGoogleが自分をクビにしたと主張した直後のことだった。

関連記事:GoogleのAI倫理研究チームの共同リーダーが部下宛てメールが原因で解雇されたと語る

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Salesforce差別

画像クレジット:Ron Miller

原文へ

(文:Megan Rose Dickey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

セールスフォースへのデータ入力をシンプルにするScratchpadがシリーズAで13.7億円獲得

Scratchpad(スクラッチパッド)は、Salesforce(セールスフォース)上にノーテーションのレイヤーを配置し、営業担当者がSalesforceに情報を簡単に入力できるようにするアーリーステージのスタートアップだ。米国時間2月3日、Accelが参加し、Craft Venturesが主導した1300万ドル(約13億7000万円)のシリーズAを発表した。

ScratchpadはTechCrunchが2020年10月に報じた360万ドル(約3億8000億円)のシードラウンドを含め、これまでに合計1660万ドル(約17億5000万円)を調達した。共同創業者でCEOのPouyan Salehi(プーヤン・サレイ)氏は資本を増やすつもりはなかったと述べているが、投資家は同氏のビジョンと資金が製品ロードマップの加速に役立つことを理解していた。

「正直なところ、再び資金調達することは本当に私たちのレーダーには入っていませんでした。実質的にシードと考えていたラウンドから時間が経っていませんでした。ランウェイはまだ大分残っていましたが、ボトムアップでユーザーの増加が見られ始めました。このボトムアップの動きが本当に定着し始めました」とサレイ氏は筆者に語った。

同氏は、リードインベスターのDavid Sacks(デイビッド・サックス)氏はやろうと考えていたことを本当に成し遂げ、取引はかなり簡単にまとまったと語った。サックス氏は複数のスタートアップを自ら成功に導いた。実際、ScratchpadがCraftの目を引いたのは、ポートフォリオ企業からScratchpadについて聞いたためだ。

ボトムアップアプローチは確かに開発者ツールやナレッジワーカー向けのソフトウェアで見られる。だが企業が営業担当者に特定のツールを直接利用させるのではなく、営業マネージャーを通じて販売を目指すことはよくある。エンドユーザーを早めに関与させるこのアプローチにより、エンドユーザーは有料バージョンについて管理職にアプローチする前に営業チームのメンバーとの関係を築くことができる。

通常、営業チームは自分たちに押しつけられたツールを好まない。そうしたツールは本質的にはデータベースであり、視覚的なインターフェイスを備えていても実際の仕事の進め方とは一致しない。Scratchpadは、営業チームがワークフローをうまくこなすためにいつも使っているスプレッドシートやメモアプリケーションのようなインターフェイスを提供するが、Salesforceに直接接続する。

有料で提供するのは、すべてのデータをまとめ営業チームで起こっていることの全体像を把握する方法だ。ScratchpadのデータはSalesforceデータベースに自動的にリンクするため、ユーザーは確実にSalesforceを使用することができる。

同社は、個々の営業担当者のワークスペースを構築する最初の作業を完了した。次のフェーズで、また今回の資本によって一部カバーされるのは、チームのワークスペースを構築すること、およびデータが個人からチームビューにどのように流せば、管理職が個々の担当者の仕事についてより多くの洞察を得ることができるかを検討することだ。これにはメモが含まれる。メモは通常Salesforceには含まれていないが、顧客とのやり取りに関する多くの情報を提供する。

これが何千人ものユーザーの共感を呼んでいる(ただし、サレイ氏はまだ正確な顧客数を共有したくないようだ)。顧客にはAutodesk、Brex、Lacework、Snowflake、Twilioが含まれる。

サックス氏は、プロダクトがウイルスのように広がっていく様子が好きだという。「営業担当者がScratchpadを使い始めると2つのことが起こるようになります。毎日の習慣になり、チームメートと共有するようになります。この『ウイルス拡散現象』は珍しいものであり、製品と市場の適合性が非常に高いことを示しています」と同氏は声明で述べている。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Scratchpad資金調達Salesforce

画像クレジット:sanjeri / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

Salesforceのプレジデント兼CPOにVlocityの元CEOデビッド・シューマイヤー氏が昇格

筆者は2020年に、Salesforceが成熟したエンタープライズ企業を買収するのは、新しいテクノロジーのためだけではなく経営陣として優れた人材を確保することにもつながっているという記事を投稿した。筆者の指摘を証明するかのように、米国時間2月1日にSalesforceはVlocityのCEOだったDavid Schmaier(デビッド・シューマイヤー)氏がプレジデント兼CPO(最高製品責任者)に昇格したと発表した。

シューマイヤー氏が創業したVlocityを2020年にSalesforceが13億3000万ドル(約1400億円)で買収し、その際に同氏はSalesforceに加わった。この両社は良い組み合わせだと思われた。Vlocityは金融サービス、ヘルスケア、エネルギー、公共機関や政府、NPOといった特定の業界を対象としたSalesforceのソリューションを販売していたからだ。

結果としてシューマイヤー氏は、Salesforceの製品群も会社もよく知ることになった。2020年6月、同氏はSalesforce Industries部門のCEOに任命された。この部門はVlocity買収後に発足したものだ。2020年の任命時に同氏が筆者に語った通り、そのつながりは明らかだった。

シューマイヤー氏はこう語った。「私は30年以上のキャリアにわたってさまざまな合併や買収に関わってきました。今回の買収は私が見てきた中で最も特異なものです。我々はSalesforceプラットフォーム上で6種類の業界向けアプリケーションを構築してきたので、製品がすでに100%統合されている状態だからです。つまりすばらしいことに、製品はすでに100%Salesforceです。したがって、今後はもっとシンプルになるでしょう」。

CRM Essentialsの創業者でプリンシパルアナリストのBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、シューマイヤー氏がVlocityを作ってきた経緯を考えると今回の昇格はSalesforceや業界の方向性からして当然の成り行きだったと語る。リアリー氏は筆者に対し「ここ数年、業界に特化したソリューションの開発がこの分野の大手プレイヤーにとって重要になってきました。シューマイヤー氏の昇格は、垂直市場を生み出すことがSalesforceのプラットフォームと未来にとっていかに重要かをあらためて表しています」と述べた。

この昇格に関するSalesforceのウェブサイトのQ&Aで、シューマイヤー氏は2020年に企業が直面した困難について語っている。「2020年が困難な年であったことは間違いありません。我々はオールデジタルでどこにいても仕事ができるこの世界で事業をしており、物事はかつての世界には戻らないでしょうし、戻るべきではありません。代替策がないときに企業に何ができるのか、その明るい兆しが見えてきました。企業は自社の顧客とこれまでとはまったく違うやり方でつながることが急務です」。

そうした企業をSalesforceがどう支援するのかを明らかにするのが、新しいポジションに就いたシューマイヤー氏の仕事になるだろう。

Salesforceの経営陣に最近、異動がいくつかあったことには注目だ。米国時間2月1日には、長くCFOだったMark Hawkins(マーク・ホーキンス)氏が退職したことも発表された。同社の最高法務責任者だったAmy Weaver(エイミー・ウィーバー)氏が後任となる。その前週にはSalesforce Service Cloud担当としてHearsay Socialの共同創業者でCEOだったClara Shih(クララ・シー)氏が入社した。

関連記事
セールスフォースが顧客管理システム開発のVlocityを約1460億円で買収
Salesforceが買収したCRMツール開発のVlocity創業者をインダストリー部門のCEOに任命

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:SalesforceVlocity

画像クレジット:Salesforce

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Kaori Koyama)

Salesforce主導でインドのHRプラットフォームDarwinboxが15.6億円調達、アフリカ進出も検討

クラウドベースの人材管理プラットフォームを運営するインドのスタートアップDarwinboxは、インドと東南アジア市場でのさらなる拡大を目指して、新たな資金調達ラウンドで1500万ドル(約15億6000万円)を調達した。

インド南部のハイデラバードに本社を置くこのスタートアップの新しいラウンド(シリーズC)は、米国セールスフォース・ドットコムの投資部門であるSalesforce Ventures(セールスフォース・ベンチャーズ)が主導した。これは、Salesforce Venturesのインドでの数少ない投資の一つだ。Lightspeed IndiaやSequoia Capital Indiaなどの既存の投資家もこのラウンドに参加しており、設立して5年の同社のこれまでの資金調達額は約3500万ドル(約36億3000万円)となる。

Tokopedia、Indorama、JG Summit Group、Zilingo、Zalora、Fave、Adani、Mahindra、Kotak、TVS、National Stock Exchange、Ujjivan Small Finance Bank、Dr.Reddy’s、Nivea、Puma、Swiggy、Bigbasketなど、500社以上の企業がDarwinboxのHRプラットフォームを使用して、60カ国で100万人以上の従業員にさまざまな機能を提供していると、Darwinboxの共同創業者であるChaitanya Peddi(チャイターニャ・ペディ)氏はTechCrunchの取材に対し述べた。これは2019年末にサービスを提供していた50カ国・約200社からの増加だという。

ペディ氏は、同社は常にSalesforceからインスピレーションを得てきたと語り、この巨大企業からの投資は「父親からお墨付きをもらった子供のようなもの」と述べている。

今回の資金調達により、新型コロナウイルスがアジア諸国に広がり不透明感に包まれていた過去一年は、同社にとって最も成功した年となった。その顧客が世界的なパンデミックをナビゲートするために混乱した中で、当初打撃を受けたが、最後の2四半期はこれまでで最高の業績となった、とペディ氏は語った。

全体として、同社の収益は、最後に資金調達を行った2019年9月から300%増加している、とペディ氏は述べている。「HRテックとSaaSの領域では、インドで収益の面ではSAPとOracle(オラクル)にしか後れを取りません」と同氏は語った。

同社の初期バッカーであるLightspeed IndiaのパートナーであるDev Khare(デヴ・カーレ)氏は、Darwinboxは、デジタルトランスフォーメーションを目の当たりにしているアジアのコングロマリット、政府機関、高成長企業やアジアで事業を展開する多国籍企業に好まれる人材管理ソリューションになっていると述べた。

Image Credits: Darwinbox

Darwinboxのプラットフォームは、従業員の「採用から退職まで(hiring to retiring)」のサイクル全体のニーズに対応するように構築されている。Darwinboxは新規採用者のオンボーディングを処理し、彼らのパフォーマンスを把握し、離職率を監視し、継続的なフィードバックループを提供している。

また、従業員同士のつながりを維持するためのソーシャルネットワークや、電話からの素早い音声コマンドで休暇の申請や会議の設定ができるAIアシスタントを顧客に提供している。

ペディ氏によると、同社はこの新たな資本を投入して、中東アジアやアフリカなどの新興市場を中心に、さらに数カ国に進出し、サービスを拡大していく予定だという。「我々は、当社のプラットフォームの力を活用して、さらに多くのことに挑んでいきます。当社は製品主導の企業であり、焦点はこの分野でのイノベーションであることに変わりありません」と彼は語った。また同社は、無機的成長のために小規模な企業を買収する機会を模索することにもオープンである、と同氏は述べている。

「インドは世界で最も若い人口を抱えており、2050年には世界の労働年齢人口の18%以上を占めると予想されています」とSalesforce Indiaの会長兼CEOであるArundhati Bhattacharya(アルンダハティ・バタチャリヤ)氏は声明で述べている。「このため、ワークフォースに焦点を当てたDarwinboxのようなテクノロジープラットフォームが非常に重要になります。Darwinboxがこの分野で成長と革新を続ける中で、Salesforceが彼らの旅路をサポートしていることを誇りに思います」。

Salesforce Venturesのパートナーで国際部門の責任者であるAlex Kayyal(アレックス・カヤル)氏は、TechCrunchのインタビューで、Salesforceはパートナーシップを組んだスタートアップ企業をSalesforceの顧客、経営幹部、ネットワークに紹介したりして、さまざまな方法でスタートアップの事業拡大を支援していると語っている。

「当社には、クラウドソリューションやデジタルトランスフォーメーションを求める、最も革新的で破壊的な顧客基盤があります。ですから、Darwinboxのような企業を当社の顧客基盤に紹介する機会を得られることは、我々にとって非常に嬉しいことです」とカヤル氏は語った。Salesforce Venturesは、インドでのさらなる投資機会を模索している、と同氏は述べている。

関連記事:2021年働きがいのある米国のテック企業、スタートアップベスト10(Glassdoor調べ)

カテゴリー:HRテック
タグ:インド 資金調達 セールスフォース

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

2021年最も働きがいのある米国のテック企業、スタートアップベスト10(Glassdoor調べ)

Glassdoor(グラスドア)が2021年に「最も働きがいのある米国企業」の年間ランキングを発表した。その中から大企業(従業員数1000人以上)と中小企業で、上位10社のテック企業を抜き出してみた。

大企業のリストは、従業員数1000人以上の企業の中から、そこで働く従業員のフィードバックに基づいてランキングが作成されている。Glassdoorでは、従業員がその会社のCEO、出世の機会、報酬と福利厚生、文化と価値観、ワークライフバランスといった項目で企業を評価している。大企業でランクインするためには、各属性ごとにそれぞれ75件以上の評価を得る必要がある。中小企業ランキングでは、会社が75件以上の評価を必要とする。

それでは、Glassdoorによる米国で働きたいハイテク企業トップ10をご紹介しよう。カッコ内には、ベスト100企業における各社の総合順位と平均従業員評価が記載されている。

2021年テック系企業ベスト10

1位 NVIDIA(エヌビディア)[総合2位、4.5点]
2位 HubSpot(ハブスポット)[総合4位、4.5点]
3位 Google(グーグル)[総合6位、4.5点]
4位 Microsoft(マイクロソフト)[総合9位、4.5点]
5位 Facebook(フェイスブック)[総合11位、4.4点]
6位 LinkedIn(リンクトイン)[総合13位、4.4点]
7位 DocuSign(ドキュサイン)[総合15位、4.4点]
8位 KnowBe4(ノウビフォー)[総合16位、4.4点]
9位 Salesforce(セールスフォース)[総合17位、4.4点]
10位 RingCentral(リングセントラル)[総合18位、4.4点]

そしてGlassdoorの中小企業ランキングよると、2021年に就職すべきテック系スタートアップのトップ10は以下のとおりだ。

2021年テック系スタートアップベスト10

1位 Ike(アイク)[総合3位、4.9点]
2位 Harness(ハーネス)[総合6位、4.9点]
3位 Lendio(レンディオ)[総合8位、4.9点]
4位 Jobot(ジョボット)[総合9位、4.9点]
5位 Lower(ローワー)[総合10位、4.9点]
6位 Orchard(オーチャード)[総合16位、4.8点]
7位 SimplrFlex(シンプラフレックス)[総合17位、 4.8点]
8位 Flockjay(フロックジェイ)[総合21位、4.8点]
9位 Wonolo(ウォノロ)[総合24位、4.8点]
10位 Thrasio(スラシオ)[総合27位、4.8点]

【注記】総合14位にランクインしたAsana(アサナ)は公開企業であるため、このリストから除外した。また、Ping Identity(ピン・アイデンティティ)も、従業員数が1000人近くに達しており、まず間違いなくスタートアップの段階を超えているため、このリストから除外している。

カテゴリー:その他
タグ:ランキング

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

マニュアル検索組織化のZoominが21.8億円調達に成功、Salseforce他と提携

ソフトウェアその他のテクノロジー・プロダクトを作ろうとするときマニュアルなどの製ドキュメンテーションが最頭に浮かぶことは少ない。 しかしバグが見つかったり何かの理由でがプロダクトが正しく機能しなくなるとドキュメンテーションがどれほど重要か嫌というほど思い知らされる。求める項目が見つからない場合の焦燥はひどいものになる。

ドキュメンテーションのスタートアップ、ZoominはAI利用を利用して自然言語による質問で答えを素早く効率的に発見できるプラットフォーム構築を目指している。同社はこれまでステルス・モードで運営されていたが、戦略的投資家を獲得し2100万ドル(21.8億円)を調達したことを12月27日に発表した。共同ファウンダー、CEOのGal Oron(ガル・オロン)氏は私に取材に対し「Zoominはマニュアルや利用ガイドなど企業活動の中でいちばん退屈な部分に焦点を当てています」とジョークを飛ばした。 しかしこうした情報資産はユーザーが探し始めれば黄金なみの価値を持つようになるという。

Bessemer Venture Partners、戦略的支援者でもあるSalesforce Ventures、Viola Growthの3社が資金調達ラウンドをリードした。ZoominはGal Oron氏、Gelb Saltzman(ゲルブ・サルツマン)氏、Hannan Saltzman(ハナン・サルツマン)氏によってイスラエルで設立され、ステルスで活動した後、事業をニューヨークに展開した(CEOのOron氏もニューヨーク在住)ためラウンドは2つの部分に分かれていた。Oron氏はこう述べた。

われわれは創立4年になりますが一切PRを行ってきませんでした。これはプロダクト開発と最初のユーザー獲得に全力を挙げていたためです。その結果、数十社の大企業と契約できました。また評価も急上昇しているため、表舞台に登場すべき時期だと考えたわけです。

現在、ZoominはDell、McAfee、Imperva、Automation Anywhereなどをユーザーとしている。ユーザーはZoominプラットフォームを利用することによってコンテンツを効果的に整理し、社内だけでなく製品顧客のサポート窓口のスタッフの作業を効率化している。またユーザー企業はDIYオプションを起動すると自分自身でウェブサイト、カスタマーフォーラム、メール、チャット、ソフトウェアやアプリ自体のヘルプなど関連情報が表示されるあらゆる場所でZoominの機能を利用できる。

Zoominが追求しているのはこういった点だ。つまりマニュアルなどの技術文書はコンテンツとしてはきわめて魅力に乏しいがソフトであれハードであれ製品を利用するために必須の要素となる。特にユーザーが何らかの問題に直面した場合は特にそうだ。

問題はこうした文章の多くがその場の思いつきで書かれており他のユーザーがアクセスしたり解読したりするのが困難であるという点だ。ドキュメントから特定のトピックを簡単かつ素早くの見つけ出す方法がない。しかも関連文書は様々な場所に散らばっている。コンテンツに紐づけられたエントリポイント自体も、コンテンツそのものと同様に断片化されている可能性が高い。

Oron氏は「Dell自身、ユーザーがどこから情報を見つけようとするのか管理できていません」と言う。つまり情報はDellが運営するサイトだけでなくソフトウェア製品のヘルプ、サードパティーのフォーラムやソーシャルメディア上に散在している。

ユーザーがどこから検索しても、Oron氏が「ユーザーごとにカスタマイズされた体験」と呼ぶものを提供することがZoominの目的だ。 つまりZoominはユーザーが通常どんなエントリポイントを使っているか、また通常何を探そうとするかを学習しユーザーに素早く正しい回答を与える。アプリ内でヘルプ・ウィジェットとして表示されることもあるし、フォーラムの場合ならそこに参加しているカスタマーサポートスタッフがZoominのエンジンを使用してエンドユーザーの質問への回答を探すことになる。

これまでZoominは主とsてB2B分野のカスタマーサービスの世界で利用されてきた。つまりZoominのユーザーはビジネス/エンタープライズ顧客に提供する知識を総合し、整理するために利用されてきた。しかしOron氏は「今後はビジネス以外の消費者にもまったく同じように適用可能です。時間とともに人気が高まっていくはずです」と期待している。

「われわれはZoominを消費者向けプロダクトにしていきたいと考えています。Amazonでショッピングしたり、Netflixでビデオを見たりするのと同じくらい簡単にZoominを利用できるようにしたいわけです」という。

「ナレッジベース管理」、「ナレッジ・オーケストレーション」などと呼ばれる領域は、さらに広範なカスタマーサービスの一部だ。当然そうした分野にはZendeskHubspotなど多数の大企業が存在する。またナレッジベース整理のためのソリューションを構築しているテクノロジー企業にはProProfs、Helpjuice、Instrktivなどがある。

Salesforceが戦略的投資家なのは興味深い。同社はコミュニティやサービスクラウドでこうしたサービスを構築していないためZoominが緊密なパートナーとなってオプションを提供している(ZoominはSalesforce以外にはOracleのサービスクラウド、Zendesk、Jira、SharePointなどの他の多くのプラットフォームでも採用されている)。

Salesforce Ventures Internationalの責任者でパートナーのAlex Kayyal(アレックス・ケイバル)氏ははこう述べている。

Salesforce Venturesは、エンタープライズクラウド企業からの野心的なアイデアを後援していいます。プロダクト関連ドキュメントの利用エクスペリエンスを向上させるためのZoominの取り組みをサポートできることを嬉しく思っています。 Zoominの革新的なチームと「コンテンツのアクセシビリティを向上させる」そのビジョンに強い期待を寄せています

投資家は、Zoominなどが最近努力している分野に強い関心を示している。リモートワークで進展するにつれてカスタマーサービスへの問い合わせが爆発的に増え、質問の緊急性を判断し、すばやく回答していくためにシステムに大きな負荷がかかっている。これはZoominにとってチャンスを意味する。

Bessemer Venture Partners のパートナー、Amit Karp(アミット・カープ)声明で「デジタル化の波はプロダクトのドキュメントに到達していることは明らかです。プロダクト関連の技術的コンテンツが指数関数的に拡大し続ける現在、企業はZoominを使用することによってコンテンツを戦略的資産として活用できるのです」と述べている。

Zoominは今回の資金調達ラウンドにおける会社評価額を明らかにしていない。

画像: NicoElNino / Getty Images

原文へ

カテゴリー:
タグ:

滑川海彦@Facebook

277億ドルのSlack買収をめぐる世間の意見とは

先日、Salesforce(セールスフォース)とSlack(スラック)の取引が正式に発表されたが、その数字はにわか信じがたいものだった。Salesforceは270億ドル(約2兆8000億円)以上を投じてSlackを買収し、Salesforceのファミリー製品へと取り込んだ。Salesforceに欠如している重要な鍵をSlackが握っていると同社は見ており、Slackを手に入れるために驚くほどの金額を費やした理由はそこにあるという。

Slackの獲得によってSalesforceは、CEOのMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏が「すべてへのインターフェース」と呼び、長年熟考を重ねてきたものを手に入れることができた。同社は2010年に自社で解決しようとソーシャルツールChatterの構築を試みたものの、それが大々的に日の目を見ることはなかった。しかし、Slackでそれがついに実現することになる。

「私たちは10年以上前から常に、ソーシャルエンタープライズに対するビジョンを持っていました。弊社のCustomer 360と統合された、アプリケーションとエコシステムを備えた協同的で生産的なインターフェイスとはどのようなものなのか、という課題に特化したDreamforcesを開催したこともあったほどです」とベニオフ氏は振り返る。

皮肉にもSalesforce Parkのすぐ隣のビルにSlackの本社があるという。コラボレーションにはもってこいのロケーションである(あるいは、単にSlackを使うという手もあるが)。

Chatter から Slackへ

Battery Ventures(バッテリーベンチャーズ)のジェネラルパートナーであるNeeraj Agrawal(ニーラジ・アグラワル)氏によると、ベニオフ氏は何年も前からエンタープライズソーシャルに関心を持っており、今回の方法はそれに対する同氏なりの答えだという。「Chatterを覚えていますか?ベニオフ氏はこのトレンドに非常に的確でした。彼は約7~8年前にYammerをMicrosoftに奪われ(Microsoftが12億ドル/約1250億円で買収)、その後Chatterを立ち上げました。これは大きな賭けだったもののうまくいかなかった。SlackはChatter 2.0と呼んでも良いでしょう」とアグラワル氏は言う。

Tact.aiのCEO兼共同創業者であるChuck Ganapathi(チャック・ガナパティ)氏は、2009年にSalesforceでChatter製品のプロダクトリーダーを務めていた。同氏はTechCrunchに共有してくれた近日公開予定のブログ記事で、Chatterの失敗要因には様々な理由がるものの、大きな要因はやはりSalesforceがしょせんデータベース専門家の集まり以外の何者でもなく、エンタープライズソーシャルは大きく異なる分野だったからだと書いている。

「問題の多くは技術的なものでした。SalesforceはOracle(オラクル)出身者がリレーショナルデータベースを基盤に設立したデータベース中心の会社です。DBアプリケーションとChatterやSlackのような構造化されていないコミュニケーションアプリケーションは、コンピュータサイエンスの全く異なる分野であり、重複している部分がほとんどありません」と同氏は書いている。そのため、アプリケーションを正しく構築するための専門知識が欠落していた上に、当時市場には多くの類似製品が出回っていたため、Chatterが日の目を見ることはなかったのだと同氏は感じている。

しかし、Salesforceプラットフォームにソーシャルを組み込むというベニオフ氏の野心が失われることはなかった。ただ、それを実現するためにはさらに10年ほどの歳月と莫大な資金が必要だったわけだが。

相性の良し悪し

以前SalesforceでAppExchangeを運営していたOperator Capital(オペレーターキャピタル)のパートナーLeyla Seka(レイラ・セカ)氏は、SlackとSalesforceの統合には将来性があると見込んでいる。「SalesforceとSlackが一つになることで、世の中の企業がより効果的に連携して仕事をするために役立つ強力なアプリケーションを提供することができるでしょう。COVID-19によって、従業員が仕事をするためにはデータがいかに重要かが露わになっただけでなく、仕事を成功させるためにはコミュニティと繋がれることが非常に重要であるということが明確になったと思います。この2社の融合によってまさにそれが実現するのではないでしょうか」とセカ氏は言う。

CRM Essentials(CRMエッセンシャルズ)のプリンシパルアナリストBrent Leary(ブレント・リアリー)氏もその買収価格には驚きを隠せないようだが、今回の買収には、たとえそれを手に入れるために多額の金額を払わなければならないとしても、欲しいものを追い求めることを決して恐れないSalesforceの姿勢が表れていると述べている。「Salesforceはこの取引きに関して微塵の恐れもないということが分かります。彼らのプラットフォームにこの製品を追加することで大きな見返りがあると確信しているからこそ、この買収にこれだけの大金を投じるのでしょう」。

Slack側にとっては、企業のビッグリーグへの近道だろうとリアリー氏は考える。「Slackについては、AMOSS(Adobe、Microsoft、Oracle、SAP、Salesforce)と競合していた立場からそのうちの1社となったわけで、またチームを組む上で最も理にかなっていたのがSalesforceだったのだと思います」。

SMB Group(SMBグループ)のアナリスト兼創設者のLaurie McCabe(ローリー・マッケイブ)氏もリアリー氏の見解に同意しており、Salesforceは価値を見出したら躊躇しないのだと話している。「今回のケースでは、Slackが非常に強力な力を発揮することになります。Salesforceは、CRMやTeamsなど成長を続けているMicrosoftのクラウドポートフォリオに対抗し、より効果的に競争することが可能になるでしょう」と同氏は言う。

今後のお金の流れ

Battery Venturesのアグラワル氏は、収益の創出がこのディールにおける全目的であり、だからこそ大きな変化をもたらすために10億ドル単位の非常に高額なプライスを支払うことも厭わなかったのだろう言う。最終的にはMicrosoftに追いつくか、少なくとも時価総額で1兆ドル(約104兆円)に到達することが目標だと同氏は予測する。

ちなみに今のところ投資家らがこの取引きを好意的に受け止めている様子はなく、株価は記事執筆時の12月3日だけで8%以上下落しており、先週の感謝祭休暇前にSalesforceがSlackに興味を持っているという噂が浮上して以来16.5%下落している。これは180億ドル(約1兆876億円)以上の時価総額の損失を意味しており、おそらく同社が期待していたような反応ではないだろう。しかしSalesforceの規模は十分に大きく、長期戦を闘う余裕があるため、Slackの助けを借りて財務目標を達成することができるだろう。

「時価総額1兆ドルに到達するためにSalesforceは今、MSFTに正面から挑まなければなりません。これまで同社は製品面ではほとんどの場合、独自のコースに留まることができました。[…]市場規模1兆ドルを達成するためにSalesforceは、2つの巨大市場での成長を試みる必要があります」とアグラワル氏は述べている。この2つとは、ナレッジワーカー/デスクトップ(2016年のQuip買収を参照)かクラウド(Hyperforceの発表を参照)のことである。同社の最善の策は前者であり、それを手に入れるために並外れた額を支払うことも厭わないだろうとアグラワル氏は言う。

「今回の買収により、Salesforceは今後数年間において20%以上の成長率を維持できるようになるでしょう」と同氏。最終的にはそれが収益の針を動かし、時価総額を上昇させ、目標達成に貢献すると同氏は見込んでいる。

注目すべきは、Salesforceの社長兼CEOであるBret Taylor(ブレット・テイラー)氏が、SlackをSalesforceの製品ファミリーにしっかりと統合する計画がある一方で、スタンドアロン製品としてのSlackの底力と有用性を認識しており、それを妨げるようなことは何もするつもりはないと述べたことだ。

「基本的には、Slackがテクノロジーにとらわれないプラットフォームであり続けられるようにしたいと考えています。Slackは毎日何百万人もの人々に利用されており、地球上のあらゆるツールをつなげてくれていることを理解しています。非常に多くの顧客が独自のカスタムツールを統合しており、これを使用するチームの中枢神経系にもなっています。私たちは決してそれを変えたくはありません」とテイラー氏は述べている。

ここまで大規模な取引きの良し悪しを現時点で判断するのは難しい。テイラー氏が言うようなSlackの独立性を確保しつつ、両社がどのように調和をとっていくのか、またSlackをSalesforceのエコシステムに上手く組み込むことができるのかなどを見極める必要がある。もし両社が呼吸を合わせることができ、SlackがSalesforceのエコシステムを完成させることができるのなら、この取引が成功に終わる可能性は十分にある。しかしもしSlackがイノベーションを止め、企業の重鎮の重圧に耐えられなくなってしまったら、今回の金額は無駄使いに終わってしまうかもしれない。

どちらに向かうかは、乞うご期待である。

関連記事:SlackとSalesforceの幹部が一緒になったほうがいいと考えたワケ

カテゴリー:ソフトウェア

タグ:Slack Salesforce 買収

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

Salesforceがカスタマーサービスのリモート化を助けるクラウドツールを発表

パンデミックが猛威を振るう中、世界の多数の企業がCSA(カスタマーサービスを行う社員や契約社員)の分散リモート化を図った。しかしこれが労働力管理の悪夢を生み出している。 CSAが少数の箇所に集約されている場合でさえ多数のリクエストをルーティングし、適切に管理することは簡単な作業ではなかった。ところが大勢の要員がリモートワーク化すると困難は何倍にもなる。

Salesforceはこの問題を解決するためにService Cloud Workforce Engagementと呼ばれる新しいサービスを開発した。SalesforceのエグゼクティブバイスプレジデントでCRMアプリケーション担当ゼネラルマネージャーのBill Patterson(ビル・パターソン)氏は「新型コロナウイルス流行によりCSA要員がリモート勤務となり、さらに顧客側もオンライン化しているため、大量の顧客に対処することは会社にとって大問題となっていると指摘した。パターソン氏はこう書いている。

我々のService Cloud Workforce Engagementは、カスタマーサポートセンターに適切なリモート処理のためのソリューションを与える。全体が単一のプラットフォームであり、たとえ明日なにが起きようとSalesforceのユーザーは柔軟かつ高い耐久性をもって事態に対応することができる。

他のSalesforceのサービス同様、このソリューションもいくつかのコンポーネントで構成されている。まずService Forecast for Customer 360というサービス需要の予測ツールがある。これはAIを利用して(未訳記事)カスタマーサービス要求数を推測し、必要な社員数を計算する。これはクリスマスやブラックフライデー、サイバーマンデーなどあらかじめサービスリクエストの増加が予測される場合だけでなく、予期しないタイミングで急上昇が発生した場合も迅速に対応計画の策定することができる。

次のコンポーネントはOmnichannel Capacity Planningだ。これは予測された全体の需要に基づいてチャット、メールなど多数のチャンネルに要員を最適に配置することを助ける。

最後にカスタマーサービス要員が特定の要求に対して正しい回答ができるよう教育するためのコンポーネントがある。 同社の説明によればこうだ。

社員のパフォーマンスを向上させるために企業は要員の勤務中に直接簡単な学習ガイドを配信することができる。これによりカスタマーサービス迅速に人員を集め、さらにオンラインで継続的にトレーニングを実施することができるようになる。

このService Cloud Workforce Engagementツールは2021年上半期に一般ユーザーにリリースされるという。

関連記事:SalesforceがSlackを約2.9兆円で買収、買収前の企業評価額は2.6兆円強だった

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Salesforceカスタマーサービス

画像:PeopleImages / Getty Images

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

SlackとSalesforceの幹部が一緒になったほうがいいと考えたワケ

Salesforce(セールスフォース)今週、Slack277億ドル(約2兆8850億円)で買収したとき、それはある意味でスタートアップのおとぎ話の終わりだった。Slackはシリコンバレーのスタートアップが思い描く成功のファンタジーを生きたまま体現していた。Slackはゲーム会社からスタートした(未訳記事)。同社は14億ドル(約1460億円)を調達し、評価額は0ドルから70億ドル(約7300億円)の評価額IPOを果たし、スタートアップ創業者が持つ希望リストのすべての項目をチェックした。

そして今週、突然SlackはSalesforceの一部となり、莫大な金額を市場から引き抜いた。

この取引を実現させるために裏にあった作戦を知ることはできないかもしれないが、興味深いのは、SlackのCEOであるStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏は、今週のインタビューで、Salesforceの社長兼COOであるBret Taylor(ブレット・テイラー)氏に接触した際、Slackを売却するつもりはないと語ったことだ。むしろ彼らはSalesforceから何かを買いたいと思っていた。

「実際、パンデミック初期の頃にブレットと話して、私たちにQuipを売る気があるかどうか聞いてみたことがある。それは私たちのためになると思っていたし、彼らの計画がどうなっているのかも知らなかったから。彼は私に連絡すると告げ、それから6カ月後に返事をくれたんだ」とバターフィールド氏はいう。

その時点で話は反転し、両社は一連の話し合いを始め、最終的にはSalesforceがSlackを買収することにつながった。

大金、大きな期待

Salesforceの観点から見ると、テイラー氏はSlackとの契約により、純粋なCRMからマーケティング、カスタマーサービス、データビジュアライゼーション、ワークフローを含む、何年もの間、拡大してきた同社プラットフォームのすべての要素を統合することができるためお金を払う価値があったとテイラー氏はいう。また、SlackがあればSalesforceは他の製品で欠けていたコミュニケーションレイヤーを得ることができる。顧客やパートナー、同僚とのやり取りがほとんどデジタルになったときに、このコミュニケーションレイヤーは特に重要になると述べている。

「私たちが本当にSlackをCustomer 360の次世代インターフェースにしたいといっているのは、これらすべてのシステムを統合するということだからです。チームが分散し、これまでなかったほどコラボレーションが重要になっている現在、どこにいても仕事ができるデジタルな世界で、これらのシステムを使ってどのようにチームをまとめていけばいいのでしょうか」とテイラー氏はいう。

バターフィールド氏は、人々が仕事の過程で何をしているのか、これらの記録とエンゲージメントのシステムの中でマシンが裏で何をしているのか、そしてSlackがどのようにして人とマシンの間のギャップを埋めるのに役立つのか、ということに自然なつながりがあると考えている。

Slackをビジネスプロセスの中心に置くことで、Salesforceのような複雑なエンタープライズソフトウェアで生じる摩擦を解消することができるとバターフィールド氏はいう。メールやリンクをクリックしてブラウザを開き、サインインして、最終的に必要なツールにアクセスするのではなく、1つのSlackメッセージに承認を組み込むことができる。

「1日に何百ものアクションがあるということは、スピードを上げる絶好のチャンスもあるということです。それがインパクトをもたらします。承認を行う担当者が時間を節約できるだけでなく、ビジネス全体の運営のスピードにも影響があります」とバターフィールド氏はいう。

Microsoftとの競合

両社とも、今回の契約はMicrosoft(マイクロソフト)との競合を目的としたものだとは述べていないが、SlackとSalesforceが力を合わせることを決めた根本的な理由はおそらくそこにある。両社は別々であるよりも、一緒にいたほうがうまくいくかもしれないが、いずれにもマイクロソフトとの複雑な過去がある。

Slackは何年にもわたってマイクロソフトと同社のTeamsと継続的な戦いを続けてきた。バターフィールド氏は2019年夏、同社がOffice 365で無料のTeamsを不当にバンドルしているとして、EUで提訴していた(未訳記事)が、同年のThe Wall Street Journalにおけるインタビューの中で、マイクロソフトはSlackにとって脅威だと考えていると語っている。誇張はさておき、2つのエンタープライズソフトウェア会社の間には緊張と競争がある。

Salesforceとマイクロソフトの間にも長い歴史がある。初期の頃は訴訟を起こしたり(Reuters記事)、2014年にSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏が就任してからは、史上で激しい競争を繰り広げたり、時には仲良く一緒に仕事をしたりしていた。今回の取引では、この文脈を無視することはできない。

Battery VenturesのジェネラルパートナーであるNeeraj Agrawal(ニーラジ・アグラワル)氏は最近のTechCrunchからのインタビュー(未訳記事)で、今回の契約は少なくとも部分的にはMicrosoftを捕らえるためのものだと語っている。

「1兆ドル(約104兆1600億円)という時価総額を達成するためには、SalesforceはMSFTに真っ向から立ち向かう必要があります。これまで同社は製品の点ではほぼ独自のスイムレーンに留まることができています」とアグラワルはTechCrunchに語った。

バターフィールド氏は、明らかな競争相手を目にしながらも、今回の契約はライバルと競争する上で自社を有利な立場に置くためのものではないと否定した。

「少なくとも私にとって、それが理論的根拠の重要な部分だとは思いません」とバターフィールド氏は述べ、「マイクロソフトとの競争は大げさに考えられています。私たちにとっての課題は物語でした」と付け加えた。

バターフィールド氏は、企業向けIT、保険、銀行業界の大手顧客のリストを挙げているが、Slackが当初注目を集めていた開発者チームに支持されていたという物語は以前から存在していた。Salesforceの現実がどうであれ、Slackは間違いなくエンタープライズコミュニケーション分野のあらゆる企業と競争する上で有利な立場にあり、Salesforceの一部となるが、両社はまた、ある程度の分離を維持する方法を見つける必要がある。

Slackを独立性をもたせる

テイラー氏は、現在のSlackの顧客が今回の買収をどのように考えるかについて注意深く見守っていることを認識しており、Salesforceはブランドと製品の独立性を尊重する一方で、既存の同社へのフックを作成し構築する方法を見つけ、CRMの巨人がその多額の投資を最大限に活用できるようにしなければならないだろう。

それは簡単なことではないだろうが、2018年に65億ドル(約6770億円)で買収したMuleSoft(未訳記事)や2019年に150億ドル(約1兆5620億円)以上で買収したTableauといったSalesforceが最近、行った大型買収にも同じような独立性が見られる。バターフィールド氏が指摘しているように、これら2つの企業はブランドアイデンティティと独立性を明確に維持しており、Slackのロールモデルになっているとテイラー氏は考えている。

「チャットクラウドなどと呼ばれても誰も助けてくれないので、(MulesoftとTableauには)そういう独立性のレイヤーがあるということです。彼らはSalesforceのために多くのお金を払ってくれたので、私たちがすでに行ったことをもっとしてほしいと思っています」という。

テイラー氏の意見はここでは非常に重要だが、彼は確かに似たような言葉でそれを見ている。

「私たちは、開発者のための真に統合された価値の提案、真に統合されたプラットフォームを実現したいと考えていますが、同時にSlackの技術的独立性、テクノロジーにとらわれないプラットフォームとそのブランドも維持したいと考えています」と、テイラー氏は述べた。

一緒にいたほうがいい

両社は協力することで、SlackのコミュニケーションをSalesforceのエンタープライズソフトウェアの優れた能力と統合してより良いものにする可能性があると考えており、テイラー氏はSlackがワークフローと自動化で両社を結びつけるのに役立つと考えている。

「自動化について考えるとき、イベントドリブンであり、これらの長期的なプロセスについて考えます。人々がSlackプラットフォームで何をしているかを見ると、基本的にはワークフローやボットなどを組み込んでいます。SalesforceプラットフォームとSlackプラットフォームの組み合わせは、最高の自動化インテリジェンス機能を持っていると思います」とテイラー氏は述べている。

この2人が買収を進める上で直面している課題は、このような大規模買収にともなうすべての期待に応えることであり、それを成功させることだ。

Salesforceは大規模な買収を数多く経験しており、うまくいったケースもあればそうでないケースもある。両社にとって、この買収の成功は不可欠なものだ。それを確実なものにできるかどうかは、テイラー氏とバターフィールド氏にかかっている。

関連記事
SalesforceがSlackを約2.9兆円で買収、買収前の企業評価額は2.6兆円強だった
ビジネスチャットのSlack、 さらに4億ドルを調達中――ポストマネーは70億ドル以上か
NYSEに上場するSlackのIPO価格は26ドルに
SlackのバタフィールドCEOがマイクロソフトの「比較広告グラフ」を非難
今日でCEO就任満5年、サティヤ・ナデラがMicrosoftの企業文化を一変させた秘密
Slack買収の噂が渦巻く中、Salesforceの大型買収6件をチェック
Salesforceがビジュアルデータ分析のTableauを1.7兆円で買収
Salesforceによる買収検討との報道を受けてSlack株価が急騰中

カテゴリー:ネットサービス
タグ:SlackSalesforce買収

画像クレジット:Justin Sullivan, Stephen Lam/Getty Images; Slack/Salesforce

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)